JP2009543035A - 子癇前症のバイオマーカー - Google Patents
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Abstract
本発明は、妊娠患者において子癇前症を検出し、且つ妊娠初期においてリスクを有する患者を同定するためのヒスチジン及びケトン体のような新規バイオマーカー及びその使用方法に関する。
Description
本発明は、妊娠患者において子癇前症を検出するとともに、妊娠初期においてリスクを有する患者を同定するための新規バイオマーカー及びその使用方法に関する。
ヒト特異的妊娠障害である子癇前症(PE)の病因は十分に理解されていない。該疾患は妊娠のほぼ10%に発現し、母親(血管機能障害により)と胎児(子宮内発育制限により)の両者に影響を及ぼし、胎児の分娩によってのみ阻止され得、全早産の最大15%を占める。通常、該症候群は在胎20週後に顕在化し、母親及び胎児に高リスクを与え、母親と胎児の罹病及び死亡の主要原因である。
PEは高血圧及びタンパク尿の発症の他にも全身性血管収縮による臓器損傷のエビデンスを特徴とする。分娩後のこれらの徴候の緩和は該疾患の確定的な指標である。高血圧は該障害の結果であって原因ではなく、高血圧とタンパク尿の両方の発症が子癇前症患者を妊娠性高血圧のみを起こしている患者と判別する。症状及び徴候には、頭痛、腹痛、尿量の減少、息切れ、手及び顔面浮腫、視覚障害、錯乱及び不安、悪心及び嘔吐が含まれ得る。子癇前症は妊娠の約0.2%において痙攣(子癇)ももたらし得、昏睡のような合併症、稀に妊産婦死亡と関連し得る。
PEの発症には複数の病因が関与し、例えば、異常な胎盤形成に起因する内皮機能障害又は活性酸化種の侵蝕に起因する酸化ストレスなどである。内皮機能障害及び酸化ストレスの複数の指標が提示されている。例えば、スーパーオキシドジスムターゼ酵素(SOD)は活性酸素種に対する主要な防御機構であり、従って、血中SOD濃度の低下が酸化ストレスの簡易な感受性マーカーとして用いられている。タンパク質ベースのアッセイにて提示されている他のマーカーには、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、一酸化窒素合成酵素(nitic oxide synthase)並びにビタミンC、E及びβ−カロチンのような外因性化合物が含まれる。
酸化状態の指標として低分子量系を用いることも従来技術から公知である。例えば、システイン及びメチオニンのようなアミノ酸を含む血清中チオールは、ROSによる酸化を特に受けやすい。内因性抗酸化物質であるグルタチオンの酸化バランスは、グルタチオンの還元型と酸化二量体であるジグルタチオンとの比率を求めることにより、酸化ストレスレベルを確定することができる。これらの血漿中濃度は、正常な妊婦より妊娠高血圧を患う女性においてはるかに低いことが見出されている。
無制御脂質過酸化もPEと関連し、ROSによる多価不飽和脂肪酸の脂質ヒドロペルオキシドへの侵蝕及び変換が、PEにおける血管内皮機能障害をもたらす初期因子であることが示唆されている。高濃度の(脂質ラジカルの再配置による)共役ジエンのような脂質過酸化の小分子一次生成物、並びにマロンジアルデヒド及びイソプロスタンのような安定な二次生成物は、PEのような妊娠における高血圧疾患の良好なマーカーであることが示されている。高毒性小分子であるマロンジアルデヒド(MDA)は脂質過酸化マーカーであるのみならず、DNAと相互作用し、変異原性となる可能性も有する。両因子とも既にPEの重症度と個々に相関している、マロンジアルデヒド濃度(また、従って、脂質過酸化)と自己免疫応答とに相互関係があることも示唆されている。
多くの代謝産物が子癇前症の発症と相関することが報告され、未解明なことはこれらの相互関係である。メタボノミクスはこれを確定すると同時に、最終的に早期診断をもたらし得る、病状の新規バイオマーカーを提供する可能性を有する。
本発明は、妊娠患者における子癇前症の特異的予測のための新規バイオマーカーを提供する。
本発明の第一の態様に従って、妊娠患者において子癇前症を診断し、又は子癇前症を発症する可能性を予測する方法が提供され、該方法は、前記患者から得られる試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の存在について前記試料を分析するステップと、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップとを含み、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示す。
本明細書の記載及び特許請求の範囲全体にわたり、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」及び該語の変形、例えば、「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「含むが、それに限定されない」という意味であり、他の部分、付加物、成分、整数又はステップを除外することを意図しない(また、除外しない)。
本明細書の記載及び特許請求の範囲全体にわたり、文脈上、別様に必要としない限り、単数形は複数系を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、文脈上、別様に必要としない限り、本明細書では単数のみならず複数も意図するものであると理解されるべきである。
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例と関連して述べられる特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は化学基は、不適合でない限り、本明細書で述べられる他の任意の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。
好ましくは、検出されるヒスチジンのメチル誘導体は1−メチルヒスチジン又は3−メチルヒスチジンであるが、より好ましくは、図15に示されるような1−メチルヒスチジンである。
好ましくは、該方法は、試料中の脂質の存在について前記患者から得られる前記試料を分析するステップと、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップとを含み、前記試料中の脂質の濃度低下が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示す。
本明細書での「バイオマーカー」への言及は、生物学的機能と関連する分子又は化学マーカーをいうことを目的とする。本発明のバイオマーカーは、子癇前症に特異的な生物学的プロセスを示し、あるいは測定するのに用いられ得、罹患した患者及びリスクを有し得るがまだ症状を示さない女性の同定、診断及び処置に役立ち得る。
本発明の方法において、ヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇について試料を分析するステップは独立して、又は該患者から得られる同一又は異なる試料での脂質濃度の分析ステップと併せて行われ得ることが理解される。
試験試料が比較され得る一組の対照値として、様々な妊娠期間の正常血圧妊婦の一組の「正常」値が確定されることが企図される。従って、該対照値は子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦から得られ、試験が比較され得る基準として用いられ得る。
好ましくは、患者はヒトであるが、本発明の方法は、他の哺乳動物、例えば、限定されずに、類人猿、ウマ、ウシ、イヌ及びネコ又は子癇前症に罹患し得る他の任意の哺乳類種に対しても用いられ得る。
試料は、全血、血漿、羊水及び血清を含む群から選択されることが好ましいが、他の体液、例えば、尿、滑液及び脳脊髄液も適用され得る。
試料は新鮮であり、又は凍結され、又はその後の試験のために保存され得る。
好ましくは、患者がヒト妊婦である場合、試料は妊娠期間の第12週と終了期との間に採取され、より好ましくは、第20週妊娠期頃に採取される。第20週期は子癇前症が最初に明らかとなり得る時期であり、介入が可能である。しかし、試料は、他のルーチンの母親の血液検査が行われるこの時期前又はこの期日後、例えば、限定されずに、12週目の検査又は16週目の「トリプル検査」期又は30週目の検診時に採取され得ることが理解される。従って、試料はルーチンの検査及びモニタリングが行われる時期と一致するように、都合の良い時期に採取され得る。
本発明の方法が妊娠患者から得られる試料からエクスビボ又はインビトロにて行われ、また、該試料が新鮮であり、あるいは保存され得ることが理解される。
該方法はケトン体の存在について試験試料を分析するステップを更に含むことが好ましい。
検出されるケトン体は、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、アセトアセテート(AA)又はα−ケトグルタレートを含む群から選択されることが好ましい。
本出願人らは、血漿中脂質濃度が子癇前症に罹患している妊婦において低下し、また、一部のケトン体が一部の点において脂質シグナルとオーバーラップし、そのため、脂質及びケトン体の双方が子癇前症において減少する可能性があることを示した。本発明の脂質マーカーは異なる位置でシグナルを生じさせ、ある位置ではケトン体とのオーバーラップはないが、別の位置では同じ脂質に対して減少したケトン体とのオーバーラップが認められる。
好ましくは、本発明の一実施形態では、試料は核磁気共鳴(NMR)分光法によって分析され、より好ましくは、1H−NMR分光法によって分析される。
本発明の方法では、血漿の1H−NMR分析を用いて代謝に対する子癇前症の影響が検査された。このデータに対するケモメトリックスの使用により、複数のバイオマーカーが同定され、最も顕著なことは、対照群と子癇前症群との間における脂質及びケトン体(3−ヒドロキシブチレート及びアセトアセテート)及びヒスチジン濃度の変化であった。試験にわたって変動が最も有意であるスペクトルの各「ビン(bins)」又は領域において、脂質又はケトン体又はヒスチジンに割り当てられた共鳴が位置特定される。
本出願人らは、対応するローディングプロットがこの識別における脂質の重要性を強調することを示した。δ1.19−1.23(ビン(bin)178)、δ2.36−2.40(ビン(bin)153)及びδ4.09−4.17(ビン(bins)115−6)を含む、スペクトルの複数の影響力の大きい領域において3−ヒドロキシブチレートを同定し、後者の領域はラクテート及びプロリンからの共鳴も含有した。2つの群の区分に役割を果たす他の成分は、δ2.22−2.26(ビン(bin)156)のアセトアセテート及びバリンであった。
ローディングプロットは、患者のクラスタリング(clustering)においてヒスチジンが最も重要な成分であるように思われる事実に影響力があるスペクトルの芳香族領域の重要な同じセクションを一貫して示した。最大の固有ベクトルを有する2領域、δ7.742−7.758及び7.042−7.058は共に、ヒスチジンに割り当てられたシグナルに対応する。従って、本発明の一実施形態では、子癇前症はピークのこの特異的パターンによって検出され得る。
本発明のバイオマーカーの分析及び/又は検出は、バイオマーカーのレベルを測定することが可能な、NMR以外の当分野における技法によっても行われ得ることが理解される。例えば、試料中の脂質及びケトン体及びヒスチジンもしくはそのメチル誘導体の濃度は、酵素法、抗体検出又は分離技術によって測定され得、分析技術の選択は本発明の範囲を限定することを意図しない。
本発明の第二の態様に従って、妊娠患者において子癇前症の検出又は子癇前症を発症する高リスクを有する患者の同定における、ヒスチジン又はそのメチル誘導体の使用が提供される。
本発明の第三の態様に従って、妊娠患者における子癇前症の検出又は子癇前症を発症する高リスクを有する患者の同定における、血漿中脂質及びヒスチジン若しくはそのメチル誘導体の使用が提供される。
好ましくは、本発明の第二及び第三の態様は、本発明の第一の態様に関して前述した任意の1つ以上の特徴を含む。
本発明の第四の態様に従って、妊娠患者における子癇前症の処置方法が提供され、該方法は、
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の存在を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記患者から得られる試料中の脂質を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(iii)ステップ(i)及び(ii)から得られる結果を用いて、病状の臨床治療を決定するステップと
を含む。
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の存在を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記患者から得られる試料中の脂質を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(iii)ステップ(i)及び(ii)から得られる結果を用いて、病状の臨床治療を決定するステップと
を含む。
ステップ(i)及び(ii)を実施する順序は逆にされ得ることが理解される。
本発明の第四の態様の方法において、病状の重症度、即ち、対照値と比べて有意に減少した脂質及び/又は対照値と比べて有意に上昇したヒスチジンもしくはメチルヒスチジン濃度に応じ、臨床医は緊急治療を決定し、あるいは治療を先送りし得、その結果は必要な治療の強度を決定するのにも役立ち得る。
好ましくは、本発明の第四の態様は、本発明の第一の態様に関して前述した特徴を含む。
本発明の第五の態様に従って、子癇前症を発症するリスクを有する妊娠患者を同定する方法が提供され、該方法は、第15〜25週妊娠期頃に前記患者から得られる試料を分析するステップを含み、該方法は、
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記試料中の脂質の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示すこと
を含む。
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記試料中の脂質の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、該患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示すこと
を含む。
好ましくは、該方法は、該疾患の進行をモニタリングし、又は病状に対抗するために該患者に施行される介入療法の有効性をモニタリングするため、その後の数週間の妊娠期にわたって分析を繰り返すステップを更に含む。
好ましくは、本発明の第五の態様は、本発明の第一及び第三の態様に関して前述した特徴を含む。
本発明の第六の態様に従って、本発明のバイオマーカーの濃度を求めるために必要な試薬を含む診断キットが提供される。
該キットは、本発明の任意の前述の態様による任意の1つ以上の前述の特徴を含むことが好ましい。
メタボノミクスは、「病理学的刺激又は遺伝子改変に対する生体系の動的マルチパラメトリック代謝反応の定量的測定」と定義づけられ、生体液、細胞及び組織の多成分代謝組成物を研究するため、1H−NMR分光法の適用から生じた。メタボノミクスは生物のあらゆるレベル−細胞小器官、細胞、組織又は生物全体において機能し得る。本発明では、分析を受ける生体液は妊婦の血漿であるが、尿のような他の体液も適切であり得る。
NMRは極少の試料の前処理又は調製という利点を有し、迅速且つ非破壊的であり、また、分析される血液が妊婦から採取される必要があるが、それは入院時にルーチンに行われるという点から非侵襲的でもあるように、メタボノミクス及びPEにおけるバイオマーカーの研究に特に適している。
生体液中に水が高濃度で存在するため、そのNMRピークは巨大であり、他の分子情報を不明瞭にし、NMR検出器においてダイナミックレンジ問題を引き起こすほどである。加えて、血清及び血漿の低分子量要素の共鳴は、アルブミンのような高分子量血漿タンパクの共鳴の広帯域エンベロープによって不明瞭にされるため、分析が非常に困難である。
従って、シーケンスの遅延時に微弱なrf磁界を用いた共鳴の選択照射によって水を抑制するため、NOESY試験の最初の増分のように、NMRパルスシーケンスが用いられる。巨大分子(例えば、血漿タンパク)及び小分子(例えば、代謝産物)のスピン特性に基づくスペクトル編集法が用いられ、Carr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)パルスシーケンスのようなスピンエコーループがこれを達成することができる。巨大分子は長い回転相関時間及び制約された並進運動を有し、従って、小分子より短いT1及びT2緩和時定数並びに小さい並進拡散係数を有し、NMRスペクトルがこれらの特性に基づいて編集されることを可能とする。
代謝産物のオーバーラップするシグナルもスペクトルの複雑性を高め得る。血漿の多成分性状とは、その1H−NMRスペクトルが複雑であるだけでなく、密集領域内のどのピークがPEの見込みのあるバイオマーカーに割り当てられたものであるかを確認することがはるかに困難となるということである。約6ppm〜9.5ppmの化学シフトから、1H−NMRスペクトルの芳香族領域は、更なる高磁場と比べてシグナルがはるかに少ない領域であり、従って、複雑性がはるかに低い領域であり、オーバーラップする共鳴が少なく、見込みのあるバイオマーカーの同定をはるかに容易にする。
全スペクトルの取得後、「計量化学」手法にて多変量統計が試験に適用され得る。計量化学は概してパターン認識(PR)に帰する用語であり、多変量統計手法は化学数値データに適用される。多くの試料が処理されるため、自動データ処理及びPR解析が必要とされ、これは、NMRスペクトルを同等の化学シフト範囲の領域に分割し、次に、それらの範囲(「ビン化(binning)」)内にて信号積分を行うことによって達成される。主成分分析(PCA)を用いることにより、強度変化が最も大きいスペクトルの領域が同定され得、対照試料と子癇前症患者との判別を可能とするとともに、この変化を生じさせる、見込みのあるバイオマーカーを同定する。妊婦群間での識別を向上させるため、主成分を回転させて最大分離及び潜在的バイオマーカーのより容易な同定を果たすことにより、部分最小二乗判別分析(PLS−DA)を行うこともできる。
材料及び方法
患者の選択
本試験のために選択された妊婦は全員が妊産婦クリニックに通院し、対照被験者として用いられた患者は同様の妊娠期間の正常血圧妊婦であり、一方、子癇前症に罹患していると分類された女性は米国産科婦人科学会(American College of Obstetrics and Gynecologists)(ACOG)の基準、即ち、以前には正常血圧であった女性における、6時間間隔での2回以上の第20週妊娠期後の140/90mmHg超の血圧上昇とタンパク尿との組合せに従って診断された。タンパク尿は尿路感染の不在下、2つ以上の中間尿試料においてタンパクディップスティックで1+超又はタンパク0.3g超の24時間の尿排泄と定義づけられた。160/110mmHg超の血圧が認められた場合、重症子癇前症と診断された。女性は第一子を妊娠している女性と、既に一人以上の子どもを出産している女性との2期に選別された。
患者の選択
本試験のために選択された妊婦は全員が妊産婦クリニックに通院し、対照被験者として用いられた患者は同様の妊娠期間の正常血圧妊婦であり、一方、子癇前症に罹患していると分類された女性は米国産科婦人科学会(American College of Obstetrics and Gynecologists)(ACOG)の基準、即ち、以前には正常血圧であった女性における、6時間間隔での2回以上の第20週妊娠期後の140/90mmHg超の血圧上昇とタンパク尿との組合せに従って診断された。タンパク尿は尿路感染の不在下、2つ以上の中間尿試料においてタンパクディップスティックで1+超又はタンパク0.3g超の24時間の尿排泄と定義づけられた。160/110mmHg超の血圧が認められた場合、重症子癇前症と診断された。女性は第一子を妊娠している女性と、既に一人以上の子どもを出産している女性との2期に選別された。
試料の調製
ヘパリン化(リチウム塩)抗凝固チューブ内に静脈血を採取し、その後、900gで10分間遠心分離した。試料から血漿を取り除き、必要とするまで−80℃で保存した。手の温もりはそのままの状態にして血漿を室温で解凍し、その後、900gで1分間遠心分離した。重水(D2O)(Fluorchem、英国)中、3−(トリメチルシリル)−2,2,3,3−d4プロピオン酸(TSP)(Sigma−Aldrich社、英国)の0.17%(w/v)ナトリウム塩溶液を調製した。その350μlをエッペンドルフチューブ内の300μlの血漿に加えた。その混合物を3回反転させ、その後、650μlをすべて5mmNMRチューブ(528PP−WILMAD、Sigma−Aldrich社、英国)に移した。
ヘパリン化(リチウム塩)抗凝固チューブ内に静脈血を採取し、その後、900gで10分間遠心分離した。試料から血漿を取り除き、必要とするまで−80℃で保存した。手の温もりはそのままの状態にして血漿を室温で解凍し、その後、900gで1分間遠心分離した。重水(D2O)(Fluorchem、英国)中、3−(トリメチルシリル)−2,2,3,3−d4プロピオン酸(TSP)(Sigma−Aldrich社、英国)の0.17%(w/v)ナトリウム塩溶液を調製した。その350μlをエッペンドルフチューブ内の300μlの血漿に加えた。その混合物を3回反転させ、その後、650μlをすべて5mmNMRチューブ(528PP−WILMAD、Sigma−Aldrich社、英国)に移した。
NMR分光法
Varian社製Unity Inova 500スペクトロメーターにおいて、499.97MHzにて21℃で1H−NMRスペクトルを測定した。短いT2値を有する巨大分子及び他の物質からのシグナルを抑制するため、Carr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)スピンエコーパルスシーケンス[RD−90°−(τ−180°−τ)n−acq]を用いた。関連遅延(Relation delay)(RD)は10.5秒の緩和遅延を表し、この間、水の共鳴が選択的に照射される。すべての試料に対して450ミリ秒のスピン・スピン緩和遅延2nτを用いた。スピンエコー試験に加え、水のピークを抑制するため、NOESYパルスシーケンス[RD−90°−t1−90°−tm−90°−acq]の最初の増分を用い、水の周波数の照射を再生遅延(recycle delay)RD(9.93秒)及び混合時間tm(150ミリ秒)の間とした。t1を4μ秒に設定した。スピンエコー試験及びNOESY試験の最初の増分では、各スペクトルに対して512の過渡信号を32,768データポイントに回収し、8389.3Hzのスペクトル幅となった。
Varian社製Unity Inova 500スペクトロメーターにおいて、499.97MHzにて21℃で1H−NMRスペクトルを測定した。短いT2値を有する巨大分子及び他の物質からのシグナルを抑制するため、Carr−Purcell−Meiboom−Gill(CPMG)スピンエコーパルスシーケンス[RD−90°−(τ−180°−τ)n−acq]を用いた。関連遅延(Relation delay)(RD)は10.5秒の緩和遅延を表し、この間、水の共鳴が選択的に照射される。すべての試料に対して450ミリ秒のスピン・スピン緩和遅延2nτを用いた。スピンエコー試験に加え、水のピークを抑制するため、NOESYパルスシーケンス[RD−90°−t1−90°−tm−90°−acq]の最初の増分を用い、水の周波数の照射を再生遅延(recycle delay)RD(9.93秒)及び混合時間tm(150ミリ秒)の間とした。t1を4μ秒に設定した。スピンエコー試験及びNOESY試験の最初の増分では、各スペクトルに対して512の過渡信号を32,768データポイントに回収し、8389.3Hzのスペクトル幅となった。
データ解析、計量化学及び統計的有意性
65,536ポイントに対するゼロフィリング前に各自由誘導減衰(FIDs)に0.5Hzの指数関数的線幅拡大を適用し、次に、フーリエ変換を行った。その結果生じたスペクトルを整相し、VnmrJ 1.1D(米国カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)、Varian Inc.)を用いてベースラインを補正した。δ−0.5−9.5の範囲にわたって各々が0.045ppmの幅を有する224セグメントにスペクトルを「ビン化(binned)」し、水抑制の種々の効率の影響を除去するため、δ4.48−5.97の範囲をゼロに設定した。スペクトルをTSPに対して正規化し、次に、スペクトル積分の単位総計(unit total sum)への正規化により第二の解析を行った。
65,536ポイントに対するゼロフィリング前に各自由誘導減衰(FIDs)に0.5Hzの指数関数的線幅拡大を適用し、次に、フーリエ変換を行った。その結果生じたスペクトルを整相し、VnmrJ 1.1D(米国カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)、Varian Inc.)を用いてベースラインを補正した。δ−0.5−9.5の範囲にわたって各々が0.045ppmの幅を有する224セグメントにスペクトルを「ビン化(binned)」し、水抑制の種々の効率の影響を除去するため、δ4.48−5.97の範囲をゼロに設定した。スペクトルをTSPに対して正規化し、次に、スペクトル積分の単位総計(unit total sum)への正規化により第二の解析を行った。
SIMCA−P+ 11(スウェーデン・ウーメオ(Umea)、Umetrics社)を用いて、平均中心の(mean−centred)Paretoスケールのデータに対して主成分分析(PCA)及び部分最小二乗判別分析(PLS−DA)を行った。データの可視化はPCスコア(t)プロットの形態にて可能であり、該スコアプロット上の各ポイントが本試験における試料であり、アウトライアー及びクラスタ化を示す。ローディングプロット(p)は各NMRスペクトルの「ビン(bin)」を示し、試料の位置に関与するスペクトル領域を明らかにすることにより、これらの入力変数のスコア(t)に対する影響、従って、対応するスコアプロットにおけるクラスタ化の可能性を際立たせる。
血漿中グルコース濃度がデータのクラスタ化に関与しないことを検証しようとして、この手順を更に繰り返し、δ3.20−3.94の更なる範囲をゼロに設定した。
正規性検定を行った後、SPSS 13.0ソフトウェア(米国イリノイ州シカゴ、SPSS Inc.)にてt検定又はマン・ホイットニー検定を用いてPE群と対照群との間でスペクトルの優勢領域(dominant regions)からの絶対積分の平均値の比較を行った。R2.4.1ソフトウェア(オーストリア・ウィーン、R Foundation for Statistical Computing)における誤検出率(false discovery rate)を用いて、多重比較のためにP値を調整し、0.05未満のp値を有意であるとみなした。
図1を参照すると、(A)PEに罹患している女性及び(B)正常妊娠を享受している女性の血漿の1H−NMRスペクトルの拡大が示される(省略形:3−HB、3−ヒドロキシブチレート;ala、アラニン;arg、アルギニン;gln、グルタミン;ile、イソロイシン;leu、ロイシン;lys、リシン;met、メチオニン;thr、トレオニン;TMAO、トリメチル−アミン N−オキシド;tyr、チロシン;val、バリン)。子癇前症女性の血漿の1H−NMRスペクトルは、表面上、対照妊婦と同様であるように思われたが(図1)、PCA分析により2つの群に明確に区分され、その区分はPC1及び2にまたがる(図2)。図2はNMRメタボノミクスデータのPCA分析からのスコアプロット及びローディングp[1]ラインプロットを示す。図2Aはデータのスコア(PC1対PC2)プロットを示し、白色三角形はPEに罹患している女性を表し、黒色三角形は正常に妊娠している女性を表し、PC1及び2はデータ分散の92%を占める。図2Bは図2Aのスコアに対応するローディングプロットを示し、女性の2つの群間の識別に関与するスペクトルの最も有意な領域及びグルコースの共鳴に割り当てられた領域(囲まれた部分)を示す。図2Cはグルコースに割り当てられた領域δ3.20−3.94の積分がゼロに設定された後のデータのスコア(PC1対PC2)プロットを示す。PC1及び2はデータ分散の94%を占める。図2Dは図2Cのスコアに対応するローディングプロットを示す。三角形は第一子を妊娠していた女性を表し、逆三角形は一人以上の子どもを既に出産していた妊婦を表す。予期したように、PEに罹患している女性由来の試料は相当クラスタ化しているが、対照試料では、はるかに大きい群内ばらつきが認められる。
女性の2つの群間のこの分離はPLS−DAを用いて確認された。図3は同一NMRメタボノミクスデータのPLS−DA分析からのスコアプロット及びローディングp[1]ラインプロットを示し、PCA分析にて見出された結果を裏付ける。図3Aはこの場合もデータのスコア(PC1対PC2)プロットを示し、白色三角形はPEに罹患している女性を表し、黒色三角形は正常に妊娠している女性を表す。PC1及び2はデータ分散の84%を占める。図3Bは図3Aのスコアに対応するローディングプロットを示し、女性の2つの群間の識別に関与するスペクトルの最も有意な領域及びグルコースの共鳴に割り当てられた領域(囲まれた部分)を示す。図3Cはグルコースに割り当てられた領域δ3.20−3.94の積分がゼロに設定された後のデータのスコア(PC1対PC2)プロットを示す。PC1及び2はデータ分散の88%を占め、図3Dは図3Cのスコアに対応するローディングプロットを示す。
データには一部の対照アウトライアーが存在し、患者の病歴を確認したところ、PCスコア上に明確に併存する試料2135及び2140は、非常に高い体格指数(BMI)を有する女性に由来するものである。他の対照アウトライアーである試料2153及び2020は共に、サイロキシン薬剤を処方されていた女性に由来するものである。一対照試料は分析における全ポイントから明確に区別される。この患者は、「妊娠中のビタミン(Vitamins in Pregnancy)」試験に参加していた。図4は図2Aからのスコアプロットを示し、モデルにおいてアウトライアーである対照女性及びこの例外的な挙動の明らかな理由を示す。
PCA及びPLS−DA分析のローディングp[1]ラインプロットに示される固有ベクトルを検討すると、どのスペクトル領域がクラスの分離に最も寄与するのかが判明した。図2及び3において認められるように、一部の著明な領域はグルコースに起因し得る。後に絶食していることが見出された女性もいれば、絶食していない女性もいたため、血漿中グルコース濃度は制御不能なパラメータである。PCA分析においてグルコースに割り当てられた領域の除去は、該「ビン(bins)」内の積分をゼロに設定し、統計解析を再度行って群の分離が依然として生じるかを検証することによって達成された。図2及び3は、子癇前症女性のより緊密なクラスタ化及び同一のアウトライアーの存在を伴った、グルコース「除去」後の同一の群の分離を明示し、グルコース濃度が妊娠の健康の指標ではないことを裏付ける。p[1]及びローディングプロットにおける最も有意な固有ベクトルは、この介入前後で依然として疑いなく同一である。
当初、初めて妊娠している女性のみを含めた。後に、2回目、3回目以上の回数の妊婦を加えた。識別は同じであったが、これらの2つの亜群のクラスタ化の「緊密性」は異なった。図5は、(A)PCA分析及び(B)PLS−DAにおけるローディングp[1]ラインプロットの拡大を示し、妊婦の2つの群の間の差異に関与するスペクトルの領域を際立たせ、両分析ともスペクトルの同一の有意な領域を示す。
図6は、NMRスペクトルの最も有意な領域又は「ビン(bins)」に対してPE女性群(白色三角形で示される)及び対照女性群(黒色三角形で示される)について得られる積分値のプロットを示し、これらは脂質に割り当てられているため、子癇前症女性のより低い積分値はPEにおける脂質過酸化の提唱を実証している。本結果は、PEに罹患している女性と正常妊婦の血漿中脂質濃度の差が2つの群の間の差異の主要原因であることを示している。図6に示される、各試料について得られる積分値のプロットは、脂質の共鳴が認められるスペクトルの全領域でPE試料の数値範囲(従って、濃度範囲)が対照試料について得られる範囲より低いことを示す。
分離に最も寄与しているスペクトル領域は、化学シフト範囲δ1.29−1.42(ビン(bins)174−6)にあることが見出された。これは、主にVLDL脂質であるが異なるタイプの脂質、ラクテート、フコース及びトレオニンからのシグナルが生じる領域である。PE群の積分値は対照群の積分値より有意に低いことが見出された(p=0.046)。二番目に影響力のある領域δ0.87−0.96(ビン(bins)184−5)も脂質(VLDLを含む)、コレステロール並びにイソロイシン及びロイシンに関与し、この場合もPE試料の積分値は対照群の積分値よりはるかに低かったが、統計的に有意ではなかった(p=0.075)。領域δ2.22−2.26(ビン(bin)156)は脂質の重要性のもう1つの有意なレポーターである(p=0.018)。
共にδ2.04−2.08(ビン(bin)160)の領域に共鳴を有する糖タンパク質及びプロリンは重要な成分であることが判明した。δ1.19−1.23(ビン(bin)178)、δ2.36−2.40(ビン(bin)153)及びδ4.09−4.17(ビン(bins)115−6)を含む、スペクトルの複数の影響力のある領域において3−ヒドロキシブチレートが同定され、後者の領域はラクテート及びプロリンからの共鳴も含有した。2つの群の区分に役割を果たす他の成分は、δ2.22−2.26間(ビン(bin)156)のアセトアセテート及びバリンであった。固有ベクトルのp[1]プロットに示された一部の優勢領域(dominant regions)は、種々のアミノ酸、例えば、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニン(δ3.94−3.99、ビン(bin)119)、メチオニン(δ2.13−2.17、ビン(bin)158)、グルタミン(δ2.08−2.13、ビン(bin)159)、リシン(δ1.47−1.51及びδ1.89−1.93、それぞれ、ビン(bins)172,163)及びアルギニン(δ1.89−1.93、ビン(bin)163)並びに他の成分、例えば、グルタメート(δ2.13−2.17及びδ2.36−2.40、それぞれ、ビン(bins)158,153)、α−ケトグルタレート(δ2.45−2.49、ビン(bin)151)及びアセテート(δ1.89−1.93、ビン(bin)163)に割り当てられたスペクトルの領域に対応した。
スペクトルの積分をスペクトル積分の単位総計(unit total sum)へ正規化した場合の第二の分析において、PCAでは初めて妊娠した女性と2回目(以上)の妊婦とを識別することができた。図7は、積分をスペクトル積分の単位総計(unit total sum)へ正規化した場合のNMRメタボノミクスデータのPCA及びPLS−DA分析からのスコアプロットとローディング散布プロットとを示す。図7AはデータのPCAスコア(PC1対PC2)プロットを示し、白色三角形はPEに罹患している女性を表し、黒色三角形は正常に妊娠している女性を表す。三角形は1回目の妊婦を表し、一方、逆三角形は以前に妊娠したことがある女性を表す。PC1及び2はデータ分散の82%を占める。図7Bは図7Aのスコアに対応するローディング散布プロットを示し、1回目の妊婦と2回目以上の妊婦との識別に関与するスペクトルの最も有意な領域を示す。図7Cは同一データのPLS−DAスコア(PC1対PC2)プロットを示し、黒色四角形は1回目の妊婦を表し、白色円形は以前に妊娠したことがある女性を表す。PC1及び2はデータ分散の80%を占める。図7Dは図7Cのスコアに対応するローディング散布プロットを示す。
PCA及びPLS−DA(図7)は共にこれらの女性の2つの亜群間の優れた分離を生じさせることができ、健康状態にかかわらず、ほぼすべての子癇前症女性及び対照女性がスコアプロット上に正確に分類され、第一子を妊娠している女性一名(PEに罹患)のみが1回目の妊娠ではない女性群の近傍に位置していた。
この場合も、対応するローディングプロットはこの差異における脂質の重要性を際立たせる。分離に最も寄与しているスペクトル領域は、化学シフト範囲δ0.87−0.91(ビン(bin)185:脂質及びコレステロール)、δ1.29−1.33(ビン(bin)176:VLDL脂質、イソロイシン、他の脂質及びフコース)及び最も重要なδ1.33−1.37(ビン(bin)175:脂質、トレオニン及びラクテート)にあることが見出された。これらの3領域はすべて、初めて妊娠した女性の血漿中に初めての妊娠ではない女性より有意に低い強度、従って、脂質濃度を示した(それぞれ、p=0.004、p<0.001、p<0.001)。
TSPの共鳴に対して正規化を行った第一の分析では、データポイントの分類は女性が出産した子どもの数に依存しないように思われたが、一人以上の子どもを出産し、PEに罹患している妊婦は、特に、統計解析からのグルコースの除去後、初めて妊娠した子癇前症女性より緊密に群を形成しているように思われた。しかし、スペクトル積分の単位総計(unit total sum)への正規化は、1回のみ妊娠した女性と2回以上妊娠した女性との識別を可能とした。この場合も、脂質濃度が2つの群の間の判別因子であった。しかし、0ppmでの基準化合物TSPの濃度も変化しているように思われるため(図7)、第一子を妊娠している女性における血漿タンパクの濃度が初めての妊娠ではない女性の血漿タンパクの濃度より高いという可能性もある。TSPはアルブミンに結合するため、このことは、初めて妊娠した女性のスペクトルにおいて認められるこの共鳴に対する強度の明らかな低下の説明となり得る(p<0.001)。妊娠回数が本研究の目的ではなかったため、TSPの共鳴に対する積分の最初の正規化は、PEの病因研究において成分濃度の適正な評価を確実にするため、本結果を分析する最適な方法であることが判明した。
要約すると、妊婦由来の血漿試料の代謝プロファイルの1H−NMR分析は、健常参加者と子癇前症罹患者との判別を可能とした。判別における主要成分の検討により、子癇前症が存在する場合、そのすべてが酸化の増大を示す様々な分子を同定した。多くの分子は関連する代謝事象から生じ、その詳細な分析により、この疾患の原因及び病因の更なる理解がもたらされ得る。
更なる試験では、子癇前症女性の血漿及び対照群の血漿の1H−NMRスペクトルの芳香族領域は、外見上酷似しているように思われた(図8)。図8Aは妊婦の血漿の1 CPMGスピンエコースペクトル(左側)及びNOESYパルスシーケンススペクトル(右側)の最初の増分を示す。該スピンエコースペクトルからの芳香族領域は、PEに罹患している女性(図8B左側)と正常血圧妊婦(図8C左側)とで酷似しているように思われる。しかし、芳香族領域の1D NOESYスペクトルは、子癇前症女性(図8B右側)と対照妊婦(図8C右側)との一部の相違を示すが、これらは主に巨大分子の共鳴の広帯域エンベロープにあるものであって代謝産物シグナルではない。
しかし、δ6−9.5領域にまたがる0.045ppmのビン(bin)幅による最初の分析を用いて、計量化学により、PEに罹患している女性群と健常妊娠を享受している女性群とを良好に判別した(図9)。図9A及びC並びに図9B及びDは、幅0.045ppmの「ビン(bins)」を用いた場合のスピンエコー試験(図9A及びB)及びNOESYパルスシーケンス(図9C及びD)の最初の増分からの生データのPCA及びPLS−DAスコアプロットを示す。白色三角形は子癇前症患者を表し、一方、黒色三角形は正常血圧の対照妊婦を表す。逆三角形は既に少なくとも第一子を出産している女性を表し、他はすべて初めて妊娠している女性を表す。この差異はスピンエコー試験よりNOESY試験の最初の増分の分析においてより明瞭に認められる。該群は1D NOESYからのPCA(及びPLS−DA)スコアプロットにおいて明瞭に分離されるが、この分類はスピンエコーデータのPLS−DAにおいてのみ認められ、PCAスコアプロットでは認められない。
1D NOESYの場合、芳香族領域の最も重要な部分はPCA及びPLS−DA分析において同一であり、図10のローディングラインプロットに認められる。図10C及びE並びに図10A、B及びDは、幅0.045ppmの「ビン(bins)」を用いた場合のスピンエコー試験(図10A及びB)及びNOESYパルスシーケンス(図10C、D及びE)の最初の増分からの生データのPCA及びPLS−DAローディングプロットを示す。上述のプロット(図10A及びCの拡大が、それぞれ図10B及びEに示される)上に示されるスペクトルの影響力のある領域は、図9に示されるスコアプロット上の女性の2つの群の間の差異及び分類を生じさせる領域である。これらの固有ベクトルのプロットにより、図9に示されるスコアプロットに示される分類に最も寄与する領域が明らかとなった。最も重要と思われるスペクトル領域はδ7.05−7.10であり、成分ヒスチジンに対応した。この領域及び成分は、両方の積分生データを用い、0ppmでの基準化合物TSPからのシグナルへデータを正規化すると、最も顕著なものとして明らかとなった。ヒスチジン濃度は子癇前症女性の血漿と対照女性の血漿とにおいて有意に異なることが見出された(生データでp=0.030、正規化データで0.007)。同様に、ローディングプロットに示される第二の影響力のある領域はδ7.76−7.81であり、この場合もヒスチジンからのシグナルに対応したが、積分値は、この場合、有意ではなかった(正規化データでp=0.056、生データで0.202)。最後に、第三の領域δ7.00−7.05もローディングプロットにおいて顕著であり、これもまたヒスチジンに対応し(しかし、1−メチルヒスチジン及び3−メチルヒスチジンからのシグナルも含有した)、この場合も、データを正規化すると、PE罹患者において有意に異なることが見出された(p=0.018、生データでは0.196)。該群間における濃度の差異を有する他の重要な成分は、様々なPE患者において有意に異なることが見出されたチロシン(δ6.83−6.88、正規化データではp=0.021、生データでは0.194)、並びに前述した3−メチルヒスチジン(δ7.00−7.05及び7.58−7.63)、ヒスチジン(δ7.00−7.05)、ヒスチジン及びメチルヒスチジン誘導体(δ7.00−7.05及び7.58−7.63)及びフェニルアラニン(δ7.36−7.45)であったが、これらの3成分の濃度差は有意であることが見出されなかった(それぞれ、生データではp=0.477、0.196、0.952、正規化データではp=0.126、0.018(ヒスチジンで)、0.088)。
スピンエコー試験はPLS−DAスコアプロット上に患者の分類を示すが、NOESYパルスシーケンスの最初の増分ほど良好ではないように思われた。PLS−DAモデルのp[2]ローディングプロットから、NOESY分析の場合と同じ重要な成分がスコアプロット上にポイントのクラスタ化を生じさせていることが見出された。このときの最も重要な領域はδ7.72−7.77であり、この範囲内の成分は、この場合もヒスチジン(7.73ppm)及び1−メチルヒスチジン(7.77ppm)であった。NOESY分析の場合のように、δ7.02−7.07領域における1−メチルヒスチジン(7.05ppm)も該群間の差異に関与していた。領域δ6.87−6.93(6.87ppm)及びδ7.16−7.21(7.17ppm)におけるチロシン並びに領域δ7.30−7.35(7.33ppm)及びδ7.38−7.44(7.38ppm、7.43ppm)におけるフェニルアラニンも、影響力があるものとしてローディングプロット上に示された。スピンエコーによって全く同一の成分が抽出されたが、生データではPE患者の血漿と対照患者の血漿におけるこれらの化合物の濃度に有意差は見出されなかった。しかし、データを正規化すると、これらの化合物はすべて、女性の2つの群の間の濃度において有意に異なることが見出された(p=0.019(his及び1−メチルヒスチジン)、0.021(his)、0.028及び0.040(tyr)、0.019及び0.015(phe))。
分析の第二段階では、スペクトルの芳香族領域を分析するため、はるかに狭い0.016ppm幅の「ビン(bins)」を用いた。本研究のこのパートでは、2つの試験の奏功については逆が真となるように思われ、女性の2つの群を最も効率的に判別したのはスピンエコーパルスシーケンスであった(図11)。図11A及びB並びに図11C及びDは、幅0.016ppmの「ビン(bins)」を用いた場合のスピンエコー試験(図11A及びC)及びNOESYパルスシーケンス(図11B及びD)の最初の増分からの生データのPCA及びPLS−DAスコアプロットを示す。白色三角形は子癇前症患者を表し、一方、黒色三角形は正常血圧の対照妊婦を表す。逆三角形は既に少なくとも第一子を出産している女性を表し、他はすべて初めて妊娠している女性を表す。スピンエコーデータのPCA及びPLS−DAでは、女性らは2つの群に正確に分類された。図12A及びC並びに図12及B及びDは、幅0.016ppmの「ビン(bins)」を用いた場合のスピンエコー試験(図12A及びB)及びNOESYパルスシーケンス(図12C及びD)の最初の増分からの生データのPCA及びPLS−DAローディングプロットを示す。上述のプロット(図12B及びCの拡大が、それぞれ右上、右下に示される)上に示されるスペクトルの影響力のある領域は、図11に示されるスコアプロット上の女性の2つの群の間の差異及び分類を生じさせる領域である。
いずれのモデルからのローディングプロット(図12)も、スコアプロット上の患者のクラスタ化に影響を与えるスペクトルの芳香族領域の同一の重要なセクションを示し、この場合もヒスチジンが最も重要な成分であるように思われた。固有ベクトルの最大の大きさを有する2つの領域δ7.742−7.758及び7.042−7.058は共に、ヒスチジンに割り当てられたシグナルに対応する。この分析では、正常妊娠を享受している女性よりPEに罹患している女性において、1−メチルヒスチジンの濃度が有意に高いことが見出された(p=0.019及び0.026)。ビン化(binning)を芳香族領域に対してのみ行ったため、TSP基準ピークへの正規化を行うことができず、そのため生データのみを用いた。この場合もδ6.882−6.918領域におけるチロシンが、女性の2つの群の間において有意に異なる濃度を有することが見出された(p=0.044)。PE患者の血漿中に対照群の血漿より高い濃度が見出され、δ7.182−7.208におけるチロシンのもう1つの影響力のあるシグナルについて同じ結果が生じたが、これは有意であることが見出されなかった。スコアプロット上の患者のクラスタ化を制御している芳香族領域の一部にフェニルアラニン(δ7.322−7.348及びδ7.412−7.438)も見出されたが、この成分の濃度は2つの群の間において有意に異なることはなかった。
PCA及びPLS−DAでは共に、NOESYパルスシーケンスの最初の増分についてもPE群と対照群とを良好に判別した(図11)。この場合も、いずれのモデルのローディングプロット(図12)もスピンエコー試験及び分析における場合と同じ芳香族領域の2つの優勢部分、δ7.742−7.758及び7.042−7.058を示し、共にヒスチジンに対応した。しかし、これらのピークはどちらも女性の2つの群の間において領域、従って、成分濃度の有意差を示さなかった(p=0.207及び0.119)。
スピンエコー及びNOESYパルスシーケンスの最初の増分のすべてのスコアプロットにおいて(生データ及び正規化データを用いて)、また、共に「ビン(bin)」幅を用いて、常に1つのアウトライアーが認められ、このポイントは正常血圧女性と同群にされている子癇前症女性に関連する(図9及び11)。この患者の病歴を調査したところ、アヘン剤使用者であることが分かった。
より広いビン(bin)幅の0.045ppmを用いた場合、正規化された全データのスコアプロットも追加のアウトライアーを示した。より狭い0.016ppmの「ビン(bin)」分析では、基準TSPピークへの正規化を用いなかったが、後に8.45ppmでのホルメートの共鳴を用いてこの処理を試みた。ホルメートの共鳴への正規化も追加のアウトライアーをスコアプロット上に認めさせた(図14)。図14は、幅0.045ppm(図A及びC)、次に、0.016ppm(図B及びD)の「ビン(bins)」を用いた場合の、スピンエコー試験(図14A及びB)及びNOESYパルスシーケンス(図14C及びD)の最初の増分からの正規化データのスコアプロットを示し、該女性群間における差異の減少及びアウトライアー数の増加を示す。
女性が過去に出産した子どもの数は結果に影響を与えるようには思われなかった。第一子を妊娠している女性又は過去に出産している女性の群内クラスタ化は生じなかった。
しかし、0.016ppmのビン(bin)幅を用いた第二の分析からのデータを、スペクトル積分の単位総計(unit total sum)に対して正規化した場合、これは当てはまらなかった。基準化合物TSPへの正規化が可能でなく、ホルメートへの正規化が特に良好であると思われなかったため、これを行った。スピンエコーデータでは、PEを有する女性と対照妊婦とを判別することができたが、初めて妊娠した女性と初めての妊娠ではない女性とを識別することもできた(図13)。図13Aは、幅0.016ppmの「ビン(bins)」を用い、スペクトル積分の単位総計(unit total sum)に対してデータを正規化した場合の、スピンエコー試験からのデータのPLS−DAスコアプロット及び対応するローディングプロット(図13B)を示す。スペクトルの影響力のある領域及びこれらが生じる方向が該ローディングプロット(ppm)に示され、PEに罹患している女性、正常妊娠を享受している女性、初めて妊娠している女性及び2回目以上の妊娠となる女性間における差異を生じさせている。NOESYパルスシーケンスの最初の増分のデータの分析において生じたモデルでも、子癇前症女性と対照女性とを適宜に分類することができたが、各人が経験した妊娠の回数に基づいて女性を分類することはできなかった。
スピンエコー(図13)及び1D NOESYデータについて対応するローディングプロットは、この場合も、ヒスチジン又はそのメチル誘導体がPEを有する女性と正常血圧女性との分離に関与することを示しているが、妊娠回数に基づく女性の分類において最も影響力のある成分はアミノ酸であるフェニルアラニンであり、その濃度は初めて妊娠した女性において過去に一人以上の子どもを出産している女性より有意に低いように思われた(pheに割り当てられたスペクトルの4領域では、p=0.005、0.004、0.017及び0.003)。
下記表1は、対照女性群及びPE女性群の総計22試料中21試料について、スピンエコーデータの6.89及び7.19ppmにおけるチロシンシグナル並びに7.05及び7.75ppmにおけるヒスチジンの芳香族領域におけるピークの積分から得られた最大値及び最低値を示す。患者一名を解析から除外した(患者数1405、誤って対照妊娠患者に分類された、子癇前症に罹患しているアヘン剤使用者一名)。
下記表2は、対照女性群及びPE女性群の22試料中21試料について、スピンエコーデータの6.89及び7.19ppmにおけるチロシンシグナル並びに7.05及び7.75ppmにおけるヒスチジンの絶対積分中央値(median absolute integral)の対照からPEへの実際の増加パーセントを示す。
下記表3は、対照女性群及びPE女性群の22試料中21試料について、スピンエコーデータの6.89及び7.19ppmにおけるチロシンシグナル並びに7.05及び7.75ppmにおけるヒスチジンの絶対積分平均値の対照からPEへの実際の増加パーセントを示す。
本結果は、平均値及び中央値での増加パーセントがチロシンシグナルについては可変であるが(中央値=55〜66%、平均値=38〜81%)、ヒスチジンピークについてはかなり一定していることを示す(中央値=83〜93%、平均値=67〜69%)。
ビン(bin)が狭くなるほど、スピンエコー試験がより好適となることは明らかである。より狭い0.016ppmの「ビン(bin)」幅とスピンエコー試験の併用が、子癇前症の芳香族バイオマーカーを調べるのに最も効率的且つ確実な方法であるように思われる。NOESYパルスシーケンスの最初の増分の分析結果はスピンエコーの分析結果を支持するものであるが、成分濃度の有意差のエビデンスを示さない。あるいは、「従来の」ビン(bin)幅0.045ppmを用いて、1D NOESY試験はスピンエコー試験を上回り、女性の2つの群の間の優れた識別がなされるのみならず、生データ及び正規化データにおいてPE及び対照患者由来の血漿の成分濃度に有意差も認められ、これはスピンエコーの正規化データのみに示される特性である。
同様に、同一の芳香族バイオマーカー、即ち、1−メチルヒスチジンが試験全体にわたって明らかにすべての分析の中心となったため、「ビン(bin)」幅及び試験は当初考えられていたほど重要ではないと述べられ得る。この明確なバイオマーカーが該群間における差異に最も関与していることは確実であるが、他の芳香族成分、例えば、フェニルアラニン、ヒスチジン又はそのメチル誘導体、そして特にチロシンも研究全体にわたってPE患者と正常血圧女性との判別において常に影響力があることが見出されている。しかし、これらの濃度が2つの群の間において異なる方法を分析すると、特定の試験及び的確な「ビン(bin)」幅が不可欠となる。スピンエコー及び0.016ppmの「ビン(bin)」幅を用いる方法では、1−メチルヒスチジンの濃度がPEに罹患している女性の血漿において対照群の血漿より有意に高いという結果が生じる。0.045ppmのビン(bin)幅を1D NOESYスペクトルに適用する方法では、1−メチルヒスチジンの濃度がやはりPE患者の血漿と対照女性の血漿とで有意に異なるという結果が生じる。
本発明において、1H−NMRメタボノミクスを用いて、芳香族領域が単独で妊婦において子癇前症の発症を予測する有益な診断ツールとなる可能性を明らかに有するということを見出した。
Claims (29)
- 妊娠患者において子癇前症を診断し、又は妊娠患者において子癇前症を発症する可能性を予測する方法であって、前記患者から得られる試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の存在について前記試料を分析するステップと、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップとを含み、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示す方法。
- 前記メチル誘導体が、1−メチルヒスチジン又は3−メチルヒスチジンである請求項1に記載の方法。
- 前記試料中の脂質の存在について前記患者から得られる試料を分析するステップと、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップとを更に含み、前記試料中の脂質の濃度低下が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示す請求項1又は2に記載の方法。
- 前記ヒスチジン若しくはそのメチル誘導体及び脂質の濃度の評価が、同一患者から得られる同一又は異なる試料に対して独立して、又は同時に行われ得る請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記患者が、ヒトである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記試料が、全血、血漿、羊水、血清、尿、滑液及び脳脊髄液を含む群から選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記試料が、血漿である請求項6に記載の方法。
- 前記試料が、新鮮であり、又は凍結されている請求項6又は7に記載の方法。
- 前記試料が、第12週から出産までの期間に得られる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 前記試料が、在胎20週頃に採取される請求項9に記載の方法。
- ケトン体の存在について前記試料を分析するステップを更に含み、同様の妊娠期間の妊婦から得られる値と比較したケトン体の濃度低下が子癇前症の更なる指標である請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- 前記ケトン体が、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、アセトアセテート(AA)又はα−ケトグルタレートを含む群から選択される請求項11に記載の方法。
- 前記ケトン体が、3HBである請求項12に記載の方法。
- 前記試料が、核磁気共鳴(1H−NMR)分光法によって分析される請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
- 前記ヒスチジンを検出する場合、子癇前症のリスクを有する患者のパターンが、δ7.742−7.758及び7.042−7.058において最大の固有ベクトルを有する2つの領域を示す請求項14に記載の方法。
- 前記検出方法が、酵素法、抗体検出又は分離技術を含む群から選択される請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
- 妊娠患者における子癇前症の検出又は子癇前症を発症する高リスクを有する妊娠患者の同定におけるヒスチジンの使用。
- 妊娠患者における子癇前症の検出又は子癇前症を発症する高リスクを有する妊娠患者の同定における、血漿中脂質及びヒスチジン若しくはそのメチル誘導体の使用。
- 請求項2〜16に記載の特徴のうち任意の1つ以上の特徴を更に含む請求項17又は18に記載の使用。
- 妊娠患者における子癇前症の処置方法であって、
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の存在を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記患者から得られる試料中の脂質を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(iii)前記ステップ(i)及び/又は(ii)から得られる結果を用いて病状の臨床治療を決定するステップと
を含む方法。 - 前記ステップ(ii)が、前記ステップ(i)に先立って行われる請求項20に記載の方法。
- 前記病状の重症度に応じて臨床医が緊急治療又は治療の先送りを決定することができ、又は治療の強度を決定することができる請求項20又は21に記載の方法。
- 請求項2〜16に記載の特徴のうち任意の1つ以上の特徴を更に含む請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 在胎15〜25週頃に患者から得られる試料を分析するステップを含む、子癇前症を発症するリスクを有する妊娠患者を同定する方法であって、
(i)前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中のヒスチジン又はそのメチル誘導体の濃度上昇が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示し、
(ii)前記試料中の脂質の濃度を検出し、その濃度を、同様の妊娠期間にあって子癇前症に罹患していないことが既知である妊婦について得られる値の濃度と比較するステップと、該ステップは、前記試料中の脂質の濃度低下が、前記患者が子癇前症に罹患し、又は子癇前症を発症する可能性があることを示すこと
を含む方法。 - 前記ステップ(ii)が、前記ステップ(i)に先立って行われる請求項24に記載の方法。
- 子癇前症の進行をモニタリングし、又は前記病状に対抗するために前記患者に施行される介入療法の有効性をモニタリングするため、その後の数週間の妊娠期にわたって前記分析を繰り返すステップを更に含む請求項24又は25に記載の方法。
- 請求項2〜16に記載の特徴のうち任意の1つ以上の特徴を更に含む請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
- 血漿中脂質及びヒスチジン若しくはそのメチル誘導体の濃度を求めるために必要な試薬を含む診断キット。
- 請求項2〜16に記載の特徴のうち任意の1つ以上の特徴を更に含む請求項28に記載のキット。
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