本主題は、空間、時間および周波数領域内のさまざまな情報を統合する、発作の電流源解析のための方法とシステムを含む。ある実施例は、広い周波数で時間発展する(time-evolving)発作律動の原因である複数の電流源の位置を突きとめるための、時空間複数電流源位置推定タスク(spatio-temporal multiple source localization task)の実行を含む。複数の電流源の時間的動態は、電流源間の予測される因果的相互作用のトポグラフィを特定するために、多変量自動回帰(MVAR)モデリングを用いて特徴付けされうる。電流源解析と因果的相互作用は、画像内に図形的に現され、表示されうる。
実施例 1は、脳からのデータを受け取るように構成されたインターフェース、その脳のためのモデルを蓄積するメモリ、およびインターフェースとメモリに接続するプロセッサからなるシステムを含む。データとモデルを用いて逆問題(inverse problem)を解くためのアルゴリズムを実行するための指令は、そこに蓄積される。その解は、複数の電流源に対する一時的な分布の予測を含み、その解に基づいて複数の電流源の結合性に相当するパラメータを発生させる。
実施例2は、インターフェースが複数の表面センサに接続することを任意に含む、実施例1のシステムを含む。
実施例3は、実施例1と実施例2のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含み、プロセッサが部分空間電流源位置推定(subspace source localization)アルゴリズムを実行するように構成されることを任意に含む。
実施例4は、実施例1から実施例3のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含み、コンピュータは、指向伝達関数(directed transfer function;DTF)アルゴリズムを実行するように任意に構成される。
実施例5は、実施例1から実施例4のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含み、コンピュータは、特定の周波数で脳の複数の領域の結合性を分析するように任意に構成される。
実施例6は、実施例1から実施例5のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含み、コンピュータは、構造化された方程式法を実行するように任意に構成される。
実施例7は、実施例1から実施例6のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含み、コンピュータは、第一の電流源を識別するように任意に構成される。
実施例8は、脳からの一連の測定値を受け取ること、脳のためのモデルを受け取ること、一連の測定値とモデルを用いて逆問題を解くこと、を含むコンピュータ実行方法を含み、その解は、複数の電流源に対する一時的な分布の予測を含み、少なくとも二つの電流源に関する結合性をあらわすパラメータを発生させる。
実施例9は、一連の測定値を受け取ることは、脳電図(electroencephalograph)データと脳磁図(magnetoencephalograph)データのうち少なくとも一つを受け取ることを含むことを任意に含む、実施例8のシステムを含む。
実施例10は、モデルを受け取ることは、双極子分布と多極子分布のうちの少なくとも一つを受け取ることを含むことを任意に含む、実施例8と実施例9のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例11は、逆問題を解くことは、部分空間電流源位置推定アルゴリズムを実行することを含むことを任意に含む、実施例8から実施例10のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例12は、結合性を分析することは、指向伝達関数(DTF)を実行することを含むことを任意に含む、実施例8から実施例11のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例13は、結合性を分析することは、特定の周波数で脳の複数の領域を分析することを含むことを任意に含む、実施例8から実施例12のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例14は、結合性を分析することは、構造化された方程式法を実行することを含むことを任意に含む、実施例8から実施例13のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例15は、パラメータを発生させることは、第一の電流源を識別することを含むことを任意に含む、実施例8から実施例14のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例16は、一連のセンサから脳の活動に相当する電気信号を受け取るように構成されるインターフェースと、電気信号に基づく活動パターンを導き出すためのアルゴリズムを実行するように構成されるコンピュータと、コンピュータに接続され、活動パターンを蓄
積するように構成されるメモリ、を含むシステムを含む。
実施例17は、任意で、インターフェースが表面センサからの信号を受け取るように構成される、実施例16のシステムを含む。
実施例18は、任意で、インターフェースが頭蓋内センサからの信号を受け取るように構成される、実施例16と実施例17のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例19は、任意で、コンピュータが逆問題を解くためのアルゴリズムを実行するように構成される、実施例16から実施例18のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例20は、一連のセンサから脳の活動に相当する電気信号を受け取ること、電気信号に基づく活動パターンを導き出すためのアルゴリズムを実行すること、コンピュータのメモリ内に活動パターンに対応するデータを蓄積すること、を含むコンピュータ実行システムを含む。
実施例21は、電気信号を受け取ることは、表面センサから信号を受け取ることを任意に含む、実施例20のシステムを含む。
実施例22は、電気信号を受け取ることは、頭蓋内センサから信号を受け取ることを任意に含む、実施例20と実施例21のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例23は、アルゴリズムを実行することは、逆問題を解くことを任意に含む、実施例20から実施例22のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例24は、脳内に生じる信号に相当する、脳の周囲に配置される外部センサから得られる情報を受け取ること、脳が占める三次元空間内での電流源の位置を識別すること、メモリ内に電流源の位置を蓄積すること、を含むコンピュータ実行方法を含む。
実施例25は、任意で、電流源の位置を識別することは、第一の電流源を識別することを含む、実施例24のシステムを含む。
実施例26は、任意で、電流源の位置を識別することは、第二の電流源を識別することを含む、実施例24と実施例25のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例27は、任意で、識別することは閾値と比較することを含む、実施例24から実施例26のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例28は、任意で、三次元空間内で複数の電流源の位置を特定することをさらに含む、実施例24から実施例27のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例29は、任意で、複数の電流源の位置から選択された二つの電流源の位置間の伝播方向を特定することをさらに含む、実施例24から実施例28のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例30は、任意で、情報を受け取ることは、磁界センサと電界センサのうち少なくとも一つに相当する情報を受け取ることを含む、実施例24から実施例29のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例31は、脳からの電気生理学的データを受け取ること、複数の電流源を推定するためにデータを用いてコンピュータ上で時空間電流源位置推定アルゴリズムを実行すること、多変量自動回帰プロセスを用いて電流源の挙動(behavior)をモデリングすること、周波数とモデリングされた挙動に基づく電流源間の因果的相互作用を予測すること、予測された因果的相互作用に相当する結果を蓄積し、結果はコンピュータにアクセス可能なメモリ内に蓄積されること、を含むコンピュータ実行方法を含む。
実施例32は、時空間電流源推定アルゴリズムを実行することは、任意で、三次元電流源スキャンプロシージャ(three-dimensional source scanning procedure)を行うことを含む、実施例31のシステムを含む。
実施例33は、時空間電流源推定アルゴリズムを実行することは、任意で、特異値分解(singular value decomposition;SVD)を行うことを含む、実施例31と実施例32のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例34は、時空間電流源推定アルゴリズムを実行することは、任意で、部分空間電流源位置推定アルゴリズムの実行を含む、実施例31から実施例33のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例35は、因果的相互作用を予測することは、任意で、複数の因果的パターンの予測を含む、実施例31から実施例34のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例36は、因果的相互作用を予測することは、第一の電流源と第二の電流源のうち少なくとも一つを特定することを含む、実施例31から実施例35のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例37は、因果的相互作用を予測することは、任意で、指向伝達関数(DTF)プロシージャを実行することを含む、実施例31から実施例36のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例38は、因果的相互作用を予測することは、任意で、サロゲートデータセットを作り出すことを含む、実施例31から実施例37のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例39は、因果的相互作用を予測することは、任意で、てんかん領域を特定することを含む、実施例31から実施例38のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例40は、因果的相互作用を予測することは、任意で、逆問題を解くことを含む、実施例31から実施例39のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例41は、電気生理学データを受け取ることは、任意で、頭蓋内データ、脳電図(EEG)データ、および脳磁図(MEG)データのうち少なくとも一つを受け取ることを含む、実施例31から実施例40のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステムを含む。
実施例42は、時空間電流源位置推定アルゴリズムを実行することは、任意で、双極子電流源モデル、多極子電流源モデル、および分散電流源モデルのうち少なくとも一つを用いることを含む、実施例31から実施例41のうちの一つ、または任意の組み合わせのシステム
を含む。
この概要は、本特許出願の主題の全体像を提供することを意図する。本発明の排他的または網羅的な説明を提供することを意図するものではない。詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれる。
〔序文〕以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する、付随する図面の参照を含む。図面は実例として、本発明が実行されうる具体的な実施形態を示す。これらの実施形態はまた、本明細書中で「実施例 」と呼ばれる。実施形態が結合されてもよく、他の実施形態が利用されてもよく、または、構造的、論理的、および電気的変更が、本発明の範囲から離れることなくなされてもよい。それゆえ、以下の詳細な説明は限定する意味には取られず、本発明の範囲は付随する請求項およびそれらの均等物によって画定される。
この文献では、特許文献では一般的であるように、「a」または「an」という語は、一つもしくは一つより大きいことを含み、「少なくとも一つ」、または「一つ以上」という他の例または用法から独立して使用される。この文献では、「or」という語は、他に指定されない限り、非排他的なこと、すなわち、「AまたはB(A or B)」は「BではなくA」、「AではなくB」、および「AとB」、を含むことを言及するために使用される。さらに、本文献で言及される全ての出版物、特許、および特許文献は、参照により個々に組み込まれるかのように、本文献にその全体が参照により組み込まれる。本文献と、そのように参照により組み込まれるそれらの文献間に矛盾する用法がある場合には、組み込まれた参照における用法は、本文献の用法に対して補足としてみなされるべきである。すなわち、両立しない矛盾については、この文献での用法に従う。
<パートA>
〔緒言〕発作の電流源解析方法の一つの実施例は、3つの構成要素を含む。第一に、三次元電流源スキャンプロシージャは、時間発展する発作律動にその開始点において関与する、複数の電流源を推定するための、時空間部分空間電流源位置推定法によって行われる。次に、電流源の動的挙動は、多変量自動回帰プロセス(MVAR)によってモデリングされる。最後に、周波数の関数としての電流源間の因果的相互作用パターンは、電流源の時間的動態のMVARモデリングから予測される。この分析の結果は、例えば電流源の位置、電流源の時間的動態、および因果関係パターンを含みうる。因果的相互作用パターンは、電流源間の動的関係を示唆し、これは、発作の伝播により発生する第二の電流源から、発作開始の原因である第一の電流源を識別することができる。本主題はてんかん患者に適用できる。
〔背景〕てんかん治療センターを含む医療施設は、MEGに基づく技術のみならず、さまざまな非侵襲性の連続EEGと患者のビデオ監視を使用している。
てんかん専門家は、複数のチャネルからの連続する複数時系列EEGトレースに埋没されうる、疑わしい発作を、形態学、振幅、周波数情報を用いて、手動で選別して除去する。ひいては発作の位置推定は、最も顕著な活動を示すチャネルに関連するとされる。発作における律動的放電 (discharge)のスペクトル分析は、特定の周波数成分での発作の空間パターンの明示的な形成を導き、ならびに、定量的評価を可能にする。
時間領域と周波数領域両方におけるこれらの分析技術は、非侵襲性の発作の側性化(lateralization)と位置推定を助ける。しかしながら、一連の障壁(頭皮、頭蓋骨、および硬膜)の容積導体効果(volume conductor effect)によって引き起こされる、スミアリング(smearing)を伴って、電極と皮質の間の比較的大きな距離は、手動の方法では電流
源の位置に関する情報を正確に特徴付けすることができないことを意味する。
発作の位置推定は、EEGとMEG双方を用いる電流源位置推定と画像化技術によって進歩してきている。EEGとMEGの双方は、場の測定領域(field measurement domain)の代わりに電流源の空間領域における発作の機構を特徴付けするために使用されうる。そのような技術は、容積導体効果を統御し、いわゆる逆問題を解くことによって、発作の背後にある内部の電流源を明らかにすることができる。
そのような方法では、発作律動の電流源は時空間双極子としてモデリングされる。このように、発作発生源は、時間的な漸進変化を伴う数個の離れた双極子によって特徴付けされる。他の方法は、「FFT 双極子近似」を提供するために、周波数分析と双極子電流源位置推定を組み合わせている。
複数の、より分散した発作電流源をモデリングするために、分散電流源モデルが双極子電流源モデルよりも使用されている。電流源の数と電流源の範囲の両方が増加すると、離れた双極子電流源のモデリング精度が低下するからである。しかしながら、分散電流源モデルを用いる電流源の画像化は、発作などの時間的に発展する活動を統御することにおいて十分でない単一スナップショットデータで通常おこなわれる。発作律動からの任意の単一スナップショットで電流源の画像化を行うことは、簡単でもなく、適切でもない。
他の方法は、時間領域での活動を一連の「機能的な微視的状態(functional microstates)」に分割する、発作律動の時間的区分を含んでいる。ここで、各微視的状態はその時間帯で安定である。この電流源位置推定は、したがって、微視的状態の平均ポテンシャルマップを用いて達成されうる。他の方法は「FFT 双極子近似」法を双極子電流源モデルから分散電流源モデルへ拡張している。ここで、LORETAとして知られる電流源の画像化技術は、周波数成分における発作分析に適用される。
これらの方法は、発作電流源を特徴付けできる、空間領域、時間領域、および周波数領域からの情報を統合する。これらのアプローチに隠れた考え方は、2 ステッププロシージャを含む。すなわち、(i) EEGもしくはMEG時系列のマルチチャネル時間周波数パラメータ化、(ii) パラメータ化されたEEGもしくはMEG構成要素における電流源位置推定または画像化、である。第一のステップは、頭皮での記録からの情報を、時間領域または特定の周波数帯域(ビン)内のある空間パターンにしぼる。それらの背後にある仮説は、パラメータ化は目的でない信号のみを捨てるものと仮定する。
しかしながら、これは常に真ではない。パラメータ化された構成要素はしばしば有効な信号を失うので、目的の信号を適当な操作や正当化なしに線引きするのも難しい。発作電流源位置推定について言えば、一つの難点は、発作活動を開始する電流源(第一の電流源)を、病理学的な活動の伝播により発生する電流源(第二の電流源)から区別することである。
発作活動の伝播は時間的に非常に早くなりえ、同じ周波数帯となりうる。さらに、空間的な伝播の領域は、病理学的構造の反対側の皮質領域など、第一の焦点から離れてしまう可能性がある。発作電流源解析の他の複雑化の要因は、発作開始時点を特定することである。しかしながら、経験のあるてんかん専門家による発作開始点の特定は、病理学的伝播からの影響を線引きするためには、正確さが足りないかもしれない。これはしばしば、発作開始活動を複雑化し、ならびに、不正確な位置推定、または不正確な発作の側性化さえも導く。
〔電流源解析と因果性〕本主題は、(i) 時空間電流源位置推定または画像化、後に続く
(ii) 複数電流源からの時系列の時間周波数パラメータ化、を含む発作電流源解析方法を含む。この分析方法は時間領域での信号の圧縮を避け、信号を特定の周波数帯域にしぼることを避ける。この電流源位置推定または画像化は、双極子電流源モデルまたは分散電流源モデルのいずれかと共に使用されうる。
一実施例では、部分空間電流源位置推定法は、複数の電流源の位置推定ができる双極子電流源モデルに基づく。これらの電流源の動態は再現されうるし、スペクトル領域でのこれらの電流源間の因果的相互作用パターンは、指向伝達関数(DTF)法によって予測されうる。そのような因果的相互作用パターンは、時間および周波数領域両方において発作電流源の構造をパラメータ表示でき、空間領域において第二の電流源から第一の電流源を識別する。
EEG または MEG 信号に利用されるようなDTF 因果性予測法は、グレンジャー(Granger、 1969) 理論に基づく。グレンジャーの因果性が、一つの時間における二つの信号間の指向性因果的相互作用(directional causal interaction) を特定するために利用されうる一方で、DTF法は不定数の信号に関する指向性因果的相互作用を特定するために使用されうる。DTF法は、マルチチャネル EEG または MEG 信号の多変量自動回帰(MVAR)モデリングにより、因果的相互作用を予測する。
DTF 法は、頭蓋内記録を用いて発作活動の開始と伝播を特定するために利用されうる。頭蓋内記録は電流源に近い領域点で ECoG を測定することができるが、EEG および MEG の頭皮記録は比較的遠い領域で測定される。それゆえ、EEG および MEG の頭皮記録における近隣チャネル間の因果的相互作用は容積導体効果により複雑化されうる。
しかしながら、 ECoG は侵襲性であり、皮質で広い適用範囲を得ることが難しいために、電極は、例えばてんかん領域を含みうる目的の範囲全体に、実際には配置されえない。
逆問題を解くことによって特定される電流源空間での因果的相互作用予測は、侵襲性の測定を避けることができ、皮質のより広い部分に関する情報を提供できる。
本主題は、空間、時間、および周波数領域での発作構造を特徴付けするための統合技術を含む。本主題は、第二の電流源から第一の電流源を識別することが可能である。
方法は、部分空間電流源位置推定法および、スペクトルを根拠とした指向伝達関数(DTF)を利用する因果的相互作用予測法の組み合わせに基づく。発作分析方法の第一ステップとして行われる部分空間電流源位置推定プロシージャは、特異値分解(SVD)を用いて測定された時空間信号を分析し、スキャンプロシージャによって複数の双極子電流源の位置を推定することができる。部分空間電流源位置推定方法の実施例は、 MUSIC および FINE を含み、いずれも電流源空間での発作の内的発生源の位置を推定するために使用されうる。
MVAR モデリングは、これらの識別された電流源の時系列をモデリングするために使用されうる。DTF は、 MVAR モデリングに基づく FINE から得られた、複数の電流源間のスペクトル領域での因果的相互作用を特徴付けするために使用されうる。DTF のアウトプットからの複数電流源間の因果的相互作用は、第一の電流源を識別するために使用されうる。第一の電流源は発作開始の要因となる電流源であり、指向性因果的相互作用の局所解剖学的な(topographical)結びつきの開始点である。
電流源解析は、臨床的に記録された発作律動を用いて行われうる。
〔方法 時空間電流源位置推定:FINE〕一実施例では、部分空間電流源位置推定で使用される電流源モデルは、等価電流双極子であり、理想化された点電流源を表す。マクスウェル方程式(Maxwell’s equations)の線形性により、任意の電流源の構成に対する順モデルは、これらの点電流源に対する順モデルの線形の重ね合わせとして書き込まれうる。時間軸に沿った一連の測定は、さらに次の行列形式で書くことができる。
ここで、Φは複数の EEG 電極における時空間測定値であり、Sは電流源の時間的挙動の行列(temporal behavior matrix)である。Αはリードフィールド行列 であり、Rは、複数の任意の電流源構成に対する、位置ベクトル
の組である。各頭部モデルに対する電極の位置、幾何学的形態、および導電特性は、方程式での表示(denotation)を簡単にするために一定であると仮定される。
部分空間電流源位置推定の概念は、特定の双極子に相当する、双極子トポグラフィ(topography)、すなわち、
と、予測された信号部分空間またはノイズのみの部分空間との間の部分空間相関(SC)を計算することに基づく。データ行列に SVD を利用することによって、すなわち、Φ = UΛV
T であるが、測定空間は信号部分空間 U
S とノイズのみの部分空間 U
n に分割されうる。p 次元信号部分空間はU からの列を含み、その相当する特異値 l … p はノイズ値の上にある。ノイズのみの部分空間は、 N-p の次元で残りの列を含み、ここで N は電極数である。典型的な部分空間電流源位置推定のための SC 距離関数(メトリック:metric)は、このように、ノイズのみの部分空間に対して規定されうる。
が十分ゼロに近いものとして、規定されうる。FINE(First Principal Vectors)法では、各スキャン点で、(スキャン点を囲む)領域 Θ が発見されうるし、ノイズのみの部分空間でのベクトルの小さな組(FINE でベクトルの組 F
Θと表示される)は、ノイズのみの部分空間と、主角の概念に基づく、特異領域 Θで張られたアレイ多様体(array manifold)間の積集合として、識別されうる。FINE の SC 距離関数は、このように、
として表されうる。U
n 全体にF
Θ を用いることは、コンピュータシミュレーション研究において、低い信号‐ノイズ比(SNR)、高い電流源相関、および、わずかな電流源間距離の条件下では有利である。本主題に従う時空間電流源位置推定は、例えばMUSIC または
FINE を用いて行われうる。電流源波形再現、MVAR モデリング、および DTF 因果性予測の質は、部分空間電流源位置推定の正確さに基づく。FINE 部分空間電流源位置推定法は、ある条件のもとでは MUSIC よりも正確でありえ、したがって、起こりうるエラーの伝播や蓄積を軽減しうる。
電流源は、 FINE のスキャン距離関数が十分ゼロに近いものとして発見されうる。各電流源の方向(orientation)は、電流源位置でのスキャン距離関数を最少化する、
値により規定される。これは、 Eq. A-3 を、一般化固有分解問題に変換することによって得られる。
Eq. A-3 からの複数の予測された双極子電流源の、既知の複数位置Rと、対応する方向
を用いて、リードフィールド行列 Αが、これらの双極子に対して構成されうる。電流源波形は、S = Α
+Φにより計算することができ、ここで、Α
+ = (Α
TΑ)
-1Α
T である。
〔方法 多変量自動回帰モデリング(MVAR)〕
を FINE のアウトプットからの電流源波形の組とする。ここで t は時間指標をあらわし、k は予測された電流源の数をあらわす。以下の MVAR プロセスが、データセット S の適切な描写であると仮定すると、
ここで、 S(t) は時間のデータベクトル、Λ(i) はモデル係数の行列、Ε(t) は多変量ゼロ平均(zero-mean)無相関ホワイトノイズのベクトル、p はモデル次数である。 MVAR モデルの最適次数 p は、一般的に次数選択基準を最適化するものとして選ばれる。一実施例では、Schwarz's Bayesian Criterion (Schwarz、1978)が使用される。モデル係数
Λ(i) は、高次元データセットに対するステップワイズ最小二乗法アルゴリズムにより計算される。
〔方法 指向伝達関数(DTF)〕MVAR モデルのモデル次数と係数が適切に予測された後、 Eq.A-4 は周波数領域
であり、Λ(0)= - I である。 Eq.A-5 は以下のように書き換えられる。
ここで、 Η(f) はこの系の行列伝達関数であり、f は周波数、 Δt はサンプリング間隔である。DTF 関数 γ
2 ij(f) は、スペクトル領域の伝達行列の要素により規定され、電流源 j から電流源 i への指向因果性を記述する。
DTF 値は、[0, 1]の区間内にあり、規格化条件
があてはめられる。DTF 因果性は周波数の関数であり、それに対する統計学的有意性検定が、主要な発作律動を包含する選択された周波数帯全体に亘って行われる。
〔方法 因果性の統計学的評価:サロゲートテスト(surrogate test)〕 DTF 関数は、DTF関数が導き出される時系列データに対して高い非線形関係を持つ。一実施例では、サロゲートデータを用いる非母数 (ノンパラメトリック;nonparametric)の統計学的検定法が使用される。一実施例では、電流源データセットからの時系列データは、サロゲートデータセットをつくるために、無作為かつ独立に組み替えられる。一実施例では、時系列のフーリエ変換(FT)が計算され、フーリエ係数の位相が無作為かつ独立に組み替えられる間、フーリエ係数の大きさは一定に維持される。逆 FT は、サロゲートデータセットをつくり出すため、時間領域に復帰する。
MVAR モデルがつくり出されて、このサロゲートデータに適合されることができ、 DTF 因果性がこのモデルから予測されうる。組み替えプロシージャは、最初の時系列としてサロゲートデータのスペクトル構造を保存する一方で、データ内の時間的 構造を破壊する。組み換えを、例えば500回繰り返した後、DTF 因果性の経験分布が、因果性のない帰無仮説が真であるという条件の下でつくられうる。この分布を用いて、本主題は、実際の電流源時系列から評価された DTF 因果性の統計学的有意性の評価を可能にする。
〔実施例 患者およびデータ取得〕一実施例では、医学的に難治性の部分てんかんである5人の患者群が、本主題の実施例を用いて手術に対して評価される。この方法は、修正された10/20 系において、31個の電極を用いて各患者のEEG データを記録することを含む。EEG データは、最も発作のある(3から29 Hz)の EEG 周波数を包含する、1.0から35 Hzの帯域フィルタを用いて、200 Hzのサンプリング率で、CZ参照モンタージュを用いて継続して収集される。頭部での3つの基準点の位置(鼻根点および左右耳介前点)と同様に、電極の位置は、手持ち式の磁気デジタル化器を用いてデジタル化されうる。
一実施例では、潜在的なてんかんの構造的異常性を明らかにするために、患者は標準化された発作プロトコルの核磁気共鳴画像法(MRI)にかけられる。 MRI は、220 mm の視野を持ち SPGR シークエンス(TR = 24 ms、TE = 5.4 ms)を実行する、1.5 テスラシステムを用いることにより取得されうる。120冠状断面(120-coronal-slice)プロトコルは、0.9375 × 0.9375 × 1.6 mmのボクセル寸法を示す。訓練された EEG 技術者は、患者の習慣的な発作の間に99T cm - ECD の発作時注射 (ictal injection)を行うことができる。この注射は発作開始後すぐに行われる。発作間欠期の注射(interictal injection)は、患者に少なくとも24時間の間に発作がない場合に行われる。単一光子放射断層撮影(single photon emission computerized tomography:SPECT)画像は、同位体注入後2から3時間の間に、Helix systems gamma cameraを用いることにより取得されうる。発作間欠期および発作時の画像は、脳表面マッチングアルゴリズムを用いて差し引かれ、2つの標準偏差を越える領域は患者のMRIに記録されうる。
〔方法 発作電流源解析〕頭皮 EEG とビデオ監視は、目視検査によって発作律動の発生を検査することができ、発作開始の時点は経験のあるてんかん専門家により特定されうる。一実施例では、23の発作(患者当たり2から8)が識別され、それらのうち3つが、発作開始期間の間のアーティファクトが多すぎた為、発作電流源解析から除かれた。この群からの20の発作の分析(患者当たり2から7)を表A-1にまとめた。
表A-1は、目に見える MRI 病変(または、患者#5 については病理部位)と、予測された第一の電流源とを比較した、5人の患者の発作電流源識別結果の概要を含む。++:電流源が MRI 可視病変内、または MRI 可視病変の端にある。+:電流源が MRI 可視病変付近(<1.5 cm)にある。−:電流源が病変から離れている。×:除かれた試験。20の発作の第一の電流源は、病変内または端のいずれか、もしくは病変のごく近くに現れた。病変の完全に外側にある、第一の電流源を有する発作は一つもなかった。
図A-1(上)は、患者 1 の10 秒間の31チャネル頭皮波形の実施例を示す。発作律動の時間的な漸進変化は、complex Morlet ウェーブレット法により信号を巻き込み、図A-1(下)に示すような各周波数帯での信号の時間変化エネルギーを提供する、時間周波数表示(TFR)を用いて検査されうる。チャネル上の垂直な黒い線は、てんかん専門家により特定された、この患者の発作開始時間点を示す。発作発生の発達プロセスは、発作開始後に観察されうる。一実施例では、発作電流源をモデリングするための MVAR については、選択された発作開始区分は準定常(quasi-stationary)である。図A-1に描かれたチャネル波形と TFR は、その後の発作電流源解析のための適切な発作開始期間を区分分けするために使用された。例えば、図A-1では、どの最初の3秒間も、明白な突発的変化を示さないので、適当に、準定常データを提供する。一般的に、より長いデータは、より正確な部分空間電流源位置推定と動的因果性予測を提供する。図A-3Aの全3秒間のデータは発作電流源解析に使用される。
空気と頭皮の間、頭皮と頭蓋骨の間、および頭蓋骨と脳との間の境界を含む、3つの導電性境界を含む、層状の写実的形状の不均質頭部モデルが使用されうる。頭皮と頭蓋骨の区分は、ソフトウェアを用いて各患者のMRI 画像上で行われうる。患者特異的な頭部モデルは、区分結果に基づいてその後構成される。記録電極のコレジストレーション(coregistration)は、 MRI 上の3つの基準点の位置(鼻根点および左右耳介前点)を、これらの点のデジタル化された座標にマッチングすることより達成されうる。頭皮と脳組織の導電性は0.33 / Ω.m であり、脳と頭蓋骨間の導電性比は1 : 1/20 である。
〔信号部分空間の図示〕図A-2は、信号部分区間に属する、最初の4大特異値(アップダウンシーケンス)の頭皮電位パターンと共に、患者 1 の発作データのSVDから得た特異値(図A-3A)についての曲線を示す。Eq.A-2 と Eq.A-3 では、例示の目的でノイズのみの部分空間が使用されるが、補足的な信号部分空間が使用されうる。図は、この発作データからの信号部分空間が右側頭葉と前頭葉での活動を含むことを示し、これは図A-3に示される発作電流源解析の結果と一致する。特異値についての曲線は信号部分空間の次数( p
値)を決定するために使用されうる。この場合の p 値は4が選択されているが、しかしながら、例えば 5 または 6 などのより保守的な選択を含む、電流源推定結果を有意に変えるものではない、他の値もまた熟慮される。
図A-3Aは、部分空間電流源位置推定分析のために、図A-1からの3秒間の31チャネル頭皮波形を示す。図A-3Bは、灰色のMRIスライスで表示された発作活動(図A-1、患者 #1 )の
FINE による 3D スキャン結果の実施例を示す。疑似カラーは部分空間相関(SC)の逆数を示す。赤は低SC、青は高SCである。疑似カラーの範囲は考えられる解空間の範囲を示す。3D スキャンでの3つの識別された電流源は、それぞれ赤、青、および緑の点で印が付けられる。図A-3Cは、図A-3Bで識別された電流源の、位置( MRI 画像の疑似カラー)、波形(10A、10B、10Cで表示される緑の曲線)、および因果性パターン(大きな矢印)を示す。
〔発作電流源の分布と動態〕FINE 法は、三次元(3D)脳容積での考えられる解空間をスキャンするために使用されうる。図A-3Bは、患者#1 の発作活動(図A-3A)の 3D スキャンの実施例を示す。灰色のMRI スライスで表示される疑似カラーは、解空間内の各スキャン点での FINE ベクトルに対する部分空間相関の逆数を示す。赤色は低部分空間相関を示し、一方青色は高部分空間相関を示す。一実施例では、5%の値が FINE に対する部分空間相関の閾値として使用される。これはこの閾値の下のどんな値も、考えられる電流源とみなされることを意味する。原理として離散双極子電流源モデルを用いる実施例では、スキャンした点での電流源に対する他の基準というのは、その点の部分空間相関が、部分空間相関の 3D 断層撮影での極小値にあることである。3D 断層撮影での電流源の点は調査、分析され、3つの電流源はこの具体的な実施例(図A-3B)で識別され、赤、青、緑の点で印が付けられる。
図A-3Cは、構造 MRI と共にこれら3つの電流源の位置を示す。5人の患者からの20の分析された発作において、一つ、もしくは複数の電流源が FINE により識別され、それらの電流源は、MRI 病変の近く、もしくは離れた領域内に存在する。患者#2から#5については、それぞれ、図A-5Aから図A-5Dに実施例が示される。複数電流源(図A-3Cおよび図A-5)を持つ事例が因果的相互作用予測にかけられた。時間領域での再現された電流源波形が、図A-3Cと図A-6に緑の曲線(10A、10B、10Cで表示される)で示される。MVAR モデルは、これらの再現された電流源波形をモデリングするために使用することができ、全20の発作活動のモデル次数(order)は5から22の範囲である。これは、正確なMVAR モデリングを達成するために、各波形(およそ600)の時間点と比較して十分に小さい。電流源波形の振幅は、発作活動の要因となる焦点脳領域に亘って積分された電流源の強さを示す。本主題の一実施例は、理想的な離散点双極子電流源をモデルとして用いる。
〔発作電流源の因果的相互作用パターン〕図A-4Bは、図A-3に示される患者#1の3つの電流源のDTF 因果性の値を示す。図は周波数の関数としてのDTF 因果性の統計学的有意性のプロットを示す。図A-4Bの各小枠内の細い曲線は、周波数に対する、軸に沿った変化する指向 DTF 因果性を描く。上2つのヒストグラムは、赤で点を打った電流源から他の二つの電流源への相互関係パターンを示す。中2つのヒストグラムは青で点を打った電流源に関し、下2つのヒストグラムは緑で点を打った電流源に関する。上述のサロゲートデータストラテジーは、これらの因果性の値の統計学的有意性を考察するために使用される。図A-4Aは、周波数の関数としてのサロゲート DTF 関数値の経験分布の実施例である(分布のテールでは有益な内容が少ないので、プロットは全 DTF 関数値区間 [0,1] を包含していないことに留意されたい)。赤の曲線はp = 0.05の有意水準を示す。すなわち、 DTF 分布が5000反復で再現されたので、達成可能な最も高い有意性を 1/5000(つまりp = 0.0002) に設定している。患者#1 については、有意差のある(P<0.05)双方向性の情報が、赤で点を打った電流源と青で点を打った電流源の間に流れることに留意されたい。この実施例では、一方向性の情報のみが、赤で点を打った電流源と、青で点を打った電流源両方から、緑で点を打った電流源へ流れる。
この指向性情報の流れは因果的相互作用トポグラフィを形成し、トポグラフィ内の各連関は、図A-3Cの患者#1 に示されるように、位置および波形などの他の電流源情報と共に、大きな矢印で示される。二つの尾部を持つ矢印は双方向性の情報の流れを意味し、一方で片尾部の矢印は一方向性の情報の流れを示す。トポグラフィの開始点は、得られた因果的相互作用パターン内での第一の電流源としてみなされ、トポグラフィ内の他の節点(node)は、第二の電流源とみなされる。この実施例では、赤と青で点を打たれた電流源が第
一の電流源であり、緑で点を打った電流源は第二の電流源である。電流源因果的相互作用トポグラフィは、図A-5にも他の患者について示されている。これらの実施例では、患者#2は、右前頭葉に一方向性の情報の流れを有する二つの電流源を持つ。患者#3は、右前頭葉に、病巣内の第一の電流源(左上)から、ともに病巣付近にある第二の電流源(左下)および第三の電流源(右)への、双方向性の因果的相互作用を有する3つの電流源を持つ。患者#4は3つの電流源(2つは右内側側頭葉にあり、1つは左前頭葉にある)を持ち、双方向性の因果的相互作用が同じ葉内の2つの電流源間で予測された。一方向性の因果的相互作用は、内側側頭葉での1つの電流源(上右)から左前頭葉での電流源にむかって、認められた。患者#5は、左内側側頭葉に一方向性の因果的相互作用を有する2つの電流源を持つ。
〔発作電流源解析、MRI、およびSPECT 間の比較〕発作電流源位置推定と因果的相互作用予測の後で、図A-3Cと図A-5から識別された第一の電流源は、図A-6に5人の患者全員について MRI 画像と共に示される。図A-6では、画像の第一の行は、最初の4人の患者では、はっきりした病変を伴う MRI スライス(赤い円で印がつけられる)、および、患者#5では病理部位と考えられる内側側頭葉と海馬を示すために、冠状MRI スライスを示す。二つ以上の第一の電流源が得られる場合は、第二と第三の行は、5人の患者全てからの発作活動の第一の電流源の位置を示す。第一の発作電流源と MRI 病変間の一致は、最初の4人の患者で示される。最後の患者については、予測された第一の電流源の位置は術前評価と一致する。さらに、この患者について行われた SPECT スキャンは、左内側側頭葉のてんかんも示す。可視病変(患者#5では病理部位)に関する全20発作から識別された第一の電流源の位置を、表A-1にまとめる。これは、以下3つのカテゴリーに分類される:可視病変内または可視病変の端にある電流源(++)、可視病変付近にある電流源(+)、および病変からはなれている電流源のみ(−)。全発作からの第一の電流源は、病変内または端、もしくは病変の非常に近くのいずれかに現れる。
図A-7は、患者#1と#2についての、発作電流源解析とSPECT 画像化とのてんかん電流源位置推定の比較を示す。SPECT画像化の間の同位体注入は発作開始からおよそ30秒後に行われたため、注入時間付近の発作データが、比較のための発作電流源位置推定分析を行うために選択された。患者#1では、両脳半球内の相互的な(bilateral)電流源が SPECT スキャンによって識別される。2つの発作電流源は2つの SPECT 画像電流源に近い。MRI 病変から離れているこの患者の左半球内の電流源は、発作開始電流源分析(図A-3)に存在せず、このことは、注入の遅れのための発作活動の伝播により、それが発生したことを示唆する。患者#2についても同様に、 SPECT 画像内の多くの活動が発作電流源位置推定分析で識別されうる。第一の電流源のいくつか、例えば右前頭葉内の電流源は、発作開始電流源分析で発見され、残り、例えば左右側頭葉内の電流源は、伝播によって発生したと考えられる。
〔発作電流源解析〕EEG 、MEG 電流源位置推定と画像化技術は、センサ空間から電流源空間への発作の理解を深める。しかしながら、てんかん患者の発作電流源分析のために、発作活動を開始する第一の電流源と、伝播による第二の電流源の識別をさらに必要とする。伝統的な方法は、発作開始と伝播とを EEG トレースの診査によって判断し、その後、それらの要因である潜在する発生源を発見するために電流源解析を行う。発作開始と伝播を解きほぐすことは、時間領域もしくは周波数領域いずれかでの前処理を含む。しかしながら、発作開始における電流源と発作電波後の電流源は、それらが頭皮 EEG 測定に現れる時には既に絡み合っている可能性があり、それらの周波数成分は通常同様の周波数帯を占めている。
電流源位置推定と画像化技術により識別された電流源は、発作開始と伝播の両方に関与する全ての電流源を含むべきである。指向性因果的相互作用トポグラフィ(図A-3Cおよび
図A-5)の開始点でのこれらの電流源は、第一の電流源と考えられる。
本主題は、発作構造の理解を可能にするために、電流源位置推定とスペクトル因果的相互作用予測とを結合させる。
〔電流源モデリングと部分空間電流源位置推定〕等価電流双極子モデルが、焦点部分てんかんなどにおける焦点電流源(focal sources)をモデリングするために使用されうる。双極子電流源モデルは、全活動領域の代わりに、重心の電流源位置推定を提供することのみに限定される。
分散電流源モデルに基づく、他の電流源位置推定と画像化技術もまた使用されうる。電流源空間上で機能する情報の流れの予測法(例えば、自発 EEG よりもむしろ誘発電位から予測される皮質電流密度)は、分散電流源モデルと共に使用されうる。さらに、部分空間電流源スキャンで得られた断層撮影は、本主題に従う閾値設定法を用いて電流源範囲を分析するために使用されうる。等価電流双極子電流源モデルは動的波形を予測し、そして因果的相互作用予測を可能にするために使用されうる。本主題の一実施例に従って、範囲(extent)のある電流源の波形は、目的範囲(ROI)の波形を平均することによって説明されうる。部分空間電流源位置推定は、その後の電流源解析用の単一マップを得るために、データの前処理とモデリングをすることなく、時空間測定値を効率的に処理することができる。他の電流源位置推定と画像化方法は、皮質結合性分析で使用されるものを含んで使用されてもよい。
〔MVAR モデリング〕MVAR モデリングは、定常確率過程に対する、スペクトルパワー(spectrum power)、コヒーレンス(干渉性:coherence)、および因果性を含む、スペクトルに基づく分析を可能にする。これは、複数の時系列系を一連の係数行列(Eq.A-4)にパラメータ化し、これらのパラメータは、複数の時系列とそれらのスペクトル特性の動態を特徴付けるために使用されうる。時間的動態は、複数の時系列のモデル正確性を向上させるために、定常に保たれる。一実施例では、発作開始データ区分は、準定常を維持するために頭皮EEG 波形での急速な活動パターンの変化を避けるように選択される。これは、EcoG データを伴って使用されてもよい。本主題は、MVARによるモデリングがEEG 記録の不意な活動の変化を避けることを可能にする。本主題の実施例は、電流源の系をモデリングするため、または、異なる記録部位でのフィールド 測定値の群により形成される系をモデリングするために、自動回帰プロセスを使用する。
〔統計学的評価〕本主題の一実施例は、EEG 、およびMEG マッピング法の有効性確認を含む、発作電流源分析の各ステップで得られた結果の統計学的有意性を評価するために、さまざまな統計学的検定を使用する。部分空間相関の二乗は「R二乗」統計量として機能し、これは、測定データ内で識別された双極子電流源によって作られたトポグラフィの分散を示す。部分空間相関の閾値、0.05 は信号部分空間からの保守的選択であり、これは、双極子電流源により作られたトポグラフィでのおよそ90% の分散を説明する。DTF 因果性の統計学的有意性はサロゲートデータストラテジーを用いて検定されうる。グレンジャーの因果性と DTF の因果性との間の等価性は、DTF 関数からの因果性の値そのものが統計学的平均値を含むことを示す。
〔てんかん患者の評価における異なる画像診断法〕いろいろな非侵襲性のてんかん患者評価法が、てんかん領域の位置に関する臨床仮説を発展させるために使用されうる。実施例として、MRI、SPECT、PET、ビデオ頭皮EEG、および発作症候学を含む。臨床的なてんかん評価におけるさまざまな画像診断法は、競合する療法(modality)というよりも、相補的なものとして見られうる。
本発明の実施例における5人のてんかん患者の、発作電流源解析、MRI、および SPECT からの結果を表A-2にまとめる。
本主題は、発作電流源解析とてんかん領域の位置推定を可能にする。発作電流源解析は、明確な構造的異常が存在しない場合に有効である。本主題により提供される時間分解は、第二の電流源から第一の電流源を識別することが可能である。本主題の発作電流源解析は、発作間欠期分析のために使用されうる。
〔追加実施例〕図A-8は本主題の一実施例に従うシステム100のブロック図を例示する。図中では、入力インターフェース130は、脳からのセンサデータを受信するように構成される。システム100では、センサアレイ120は患者の外部に取り付けられるように構成された複数のセンサを含む。他の構成では、センサアレイ120は頭蓋内センサアレイを含む。ネットワーク110はまた、入力インターフェース130に結合しており、本主題に遠隔でアクセスできる。この構成では、遠隔位置からのデータは、患者に結合したセンサから得られるか、もしくは蓄積データから得られ、本主題により処理され、分析されうる。
入力インターフェース130はコンピュータ140に結合される。コンピュータ140はプロセッサを含み、本文献のいずれかの場所で説明されるような一つ以上のアルゴリズムを実行するように構成される。さまざまな実施例では、コンピュータ140により実行されるアルゴリズムは、結合性、活動、伝播、電流源位置推定、またはここに説明される他のアルゴリズムを分析するように構成される。他の実施例は、FINE またはMUSIC アルゴリズム、もしくは DTF の実行、もしくは MVAR 分析を実行することを含む。コンピュータ140は制御装置150に結合される。制御装置150は、コンピュータ140により実行される機能を技師が管理できるように、技師用操作卓、キーボード、タッチスクリーン、マウス、または他の制御器を含みうる。コンピュータ140はメモリ160に結合される。メモリ160は、取り外し可能、もしくは取り外し可能でないメモリを含みうる。実施例として、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、または他のそのような装置を含む。コンピュータ140はまた、出力インターフェース170に結合される。出力インターフェース170は、コンピュータ140を、ディスプレイ180または他の出力装置190などの、使用者がアクセス可能な変換器に結合するための装置を含むことができる。出力装置190の実施例は、オーディオスピーカー、ネットワーク接続、タッチスクリーンディスプレイ、記憶装置、およびロボットシステム(介入装置を操作するように構成される)を含みうる。
一実施例では、このシステムは、図A-8に例示されるようなこれらの構成要素の一部を含む。例えば、あるシステムは、入力インターフェース130と出力インターフェース170に結合されたコンピュータ140を含む。
図A-9は、一実施例にしたがった方法200の流れ図を例示する。方法200は、210で測定されたデータを受け取ることを含む。測定されたデータはセンサまたはセンサアレイとの直接電気接続により受信されうるか、または、ネットワークとの接続(有線または無線)により受信される。他の実施例は、取り外し可能な記憶装置を用いるデータ受信、または、手動で入力されたデータによるデータ受信を含む。方法は、220でモデルを受け取ることを含む。モデルは、双極子モデル、多極子モデル、または本明細書に説明された他のモデルを含みうる。モデルはパラメータを含むことができる。一実施例では、モデルは脳に対応する。方法は、230で結果を特定することを含む。このことは、電流源位置推定、因果性パターン、活動マップ、逆問題の解、または他の結果を特定することを含む。さまざまなアルゴリズムと方法がこの文献で説明され、それらのいずれの組み合わせも、この図の230で実行されうる。一実施例では、230の方法はプロセッサまたはコンピュータにより実
行される。240で結果が提供される。これは、データの蓄積、または画像の呈示、またはヒトが知覚できる方法での結果の視覚的表示を含む。例えば、結果はプリンタまたはディスプレイ上に表示されうる。
本主題は、例えば FINE を用いて複数電流源位置推定の結合性を分析する。結合性の評価は、第一の電流源と第二の電流源を特定することを必要とする。電流源間の結合性または伝播の方向は、一方向性または双方向性でありうる。
本主題の実施例は、二つの部分からなると考えられうる。第一の部分は結合性の組み合わせに関連する。例えば、閾値は結合性を特定するために比較基準を提供する。本主題は三次元容積モデルの分析を可能にし、例えば、てんかんの診断を容易にするための臨床的設定において実行可能である。
第二の部分は、複数の電流源がある期間にわたってどのように伝わるかを決定するための、活動マッピングを含む。これは、一定時間に基づく観察(epoch-based view)にわたる脳の直接判断(direct reading)を必要とする。具体的には、脳内の信号伝播は、心臓での伝播よりも実質的に速い。この部分に従う分析は、ピーク振幅値、または神経活動マッピングを提供するための他の基準(metric)を評価することを含む。ポワソンの方程式と、マクスウェルの方程式は、いくらかの程度までであり、脳の測定データを十分には説明し得ない。これは、脳内の神経活動の伝播が、瞬間的でないことを示す。本主題は、脳内で見られるような、非常に短い時間で発生する伝播を識別するように構成される。
本主題は、侵襲性もしくは非侵襲性データ収集を用いて実行されうる。一実施例は、大脳皮質から直接電気活動を記録するために電極が脳の皮質灰白質に直接置かれる、皮質脳波(electrocorticography:ECoG)を含む。測定された結果は、その後、逆問題(頭皮で測定された電位に関与する内部電流源を発見すること)を解くために分析される。
以下に結合性分析の一方法を説明する。
1. 臓器の電気的活動に相当する、一連の電気的、もしくは磁気的測定値を受け取る。臓器は、そこで信号が伝播する、心臓、脳、胃、筋肉、脊髄、または他の臓器を含む。
2 分析のための電流源モデルにアクセスする。電流源モデルは、双極子モデル、多極子分布、分散電流源モデル、または電流密度モデルを含みうる。他のモデルも企図される。
3. 電流源の時間的動態分布を予測するために、逆問題を解くためのアルゴリズムを実行する。解は測定値と電流源モデルの組に基づく。
4. 結合性を分析するためのアルゴリズムを実行する。結合性分析は、DTF を実行すること、または、電流源空間領域内で結合性パターンを特定するための他の方法を含む。結合性分析は臓器内での活動または伝播を説明する。
5. 電流源のペアに関する結合性を説明するパラメータを特定する。第一の電流源と第二の電流源を識別するために、電流源の他のペアについての計算を繰り返す。例えば、てんかんでは、パラメータは脳内の結合性パターンに相当する。
結合性の分析は、どのように複数の電流源が互いに相関するかを識別することができる。例えば、2つの電流源は、高いまたは低い相関の発生率(incidence)を持つ。さまざまな実施例では、結合性は、master - slave、slave - master、またはpeer - to - peer に類似する関係として説明されうる。
伝播または活動は、一領域から他への一方向のみの運動を説明する。運動は、(いくつかの方向に対する)時間遅延に関連することもしないこともありうる。遅延が無ければ、伝播は結合性として考察されうる。
以下の2つの実施例を含むさまざまな方法が、結合パターンを特定するために使用されうる。
第一の実施例では、結合パターンは脳の特定モデルを仮定することなく分析される。ある実施例は DTF を含み、ここで計算は、特定の周波数成分での複数の脳領域を考慮する。
第二の実施例では、結合パターンは、パラメータセットを特定するために、構造方程式モデル法を用いて分析されうる。構造方程式モデルでは、観察された変数は、直接測定できないが測定された変数から推測される、少数の潜在的構造を表すことが理解される。
閾値は、フェーズがかなりの回数シフトされる、パワースペクトルを含む統計学的特性を用いて得られる。一実施例では、多変量分析と呼ばれるプロセスにおいて、各特定の周波数に対し、フェーズはおよそ5000回シフトされる。一実施例では、フェーズをシフトするのではなく、他のパラメータをシフトすること、または時間領域での分析を行うことによって、分析が実行される。
本主題は、臨床的環境に組み込むことができ、診断、治療、およびさまざまな疾患もしくは病気の監視(例えばてんかん、パーキンソン病、または他の神経疾患を含む)に利用されうる。例えば、特定の治療法が、本明細書に説明した分析結果に基づいて選択されてもよく、その方法は、脳の特定の領域に作用することに注目されうるので、選択される。
<パートB:発作間欠期 ECoG スパイクから得られたてんかん様活動の皮質活動マッピング>本主題の実施例は、皮質電位分布から神経活動シーケンスを得るための、皮質活動マッピング(CAM)法を含む。
一つの実施例は、皮質活動マップを発見するために、発作間欠期 ECoG 記録を分類することを含む。これは次に、発作時の ECoG 記録から識別された発作開始領域と比較される。局所的な活動時間と皮質電位の間のさまざまな関係が仮定される。一実施例では、関係は発作開始領域を予測する能力(capability)にアクセスすることにより特定されうる。運動双極子電流源モデルを用いるコンピュータシミュレーションは、伝播された皮質活動の画像化方法を検定するために行われうる。一実施例では、方法は、8人の小児てんかん患者からなる群に適用される。
臨床的データ分析とコンピュータシミュレーションの両者において、最大振幅は局所的な皮質活動時間を特定する基準として機能する。そのように、本方法は、 ECoG で記録された発作間欠期スパイク(IIS)の CAM 分析により、8人中7人の患者で発作開始領域を予測することに成功したことを説明している。複数の発作焦点を有する患者については、各焦点は、異なる空間的パターンの IIS を分析することにより明らかにされうる。
リードチャネルと他のチャネルにおける、スパイクのピークと発作間欠期事象の時間差は、局所的皮質活動時間として規定されうる。この時間潜時(time latency)に基づく皮質活動マッピング法は、発作開始領域を予測するため、および、てんかん患者に対する術前評価を容易にするために使用されうる。
〔緒言〕発作間欠期スパイク(IIS)は、てんかん様活動の位置を推定するために使用されうる。スパイクの最大振幅を現す領域はてんかん原生領域内にあり、従って、患者を発作から解放するために、できればそのような領域は切除されるべきである。しかしながら、IISは、判然としない神経経路により、その最初の位置から伝播されうる。それゆえ、スパイクピークでの電位振幅分布は、分布が発作間欠期放電の時間発展と共に変化しない
場合を除き、スパイク電流源の特徴を最もよく表すと、結論付けられうる。
第一のスパイクと伝播されたスパイクの間の識別を考慮する。IIS の急速な伝播は放電の間に起こりうる。どこで IIS が始まるか、どのようにそれが伝播するかを識別することは、その発生源を正確に位置推定するために役立ちうる。てんかん様活動を開始する脳領域の識別は、切除する領域を減らすために使用されうるかもしれない。
てんかん様活動の開始と伝播を評価するために、実験が計画されうる。深部および表面電極の両方が発作間欠期放電を記録するために使用されうる。ここで、潜時と空間分布に関係する結果は、新皮質と原皮質の比較的大きな領域が、皮質に沿う速い連合線維または伝播を通じて、同時にまたは連続して発作間欠期活動中に活性化されうることを示唆する。自発性てんかん様活動は、ラットから採取された新皮質スライス上のさまざまな皮質層内で始まりうる。活性化は小さな領域から始まり、開始位置から隣接する皮質領域に円滑に広がりうる。これは開始位置が皮質層のうちの一つに非常に制限されることを示唆している。ヒトの発作間欠期スパイクの薄層分析は、最初の脱分極が起こる皮質層は、IIS が局所的に発生するか、または、離れた位置から伝播されるかどうかによって異なりうることを示しうる。IISの開始と伝播は術前評価を補助するのに役立ちうる。
本主題は、発作間欠期スパイク中に記録された、硬膜下 ECoG からの神経伝播を画像化するための、活動マッピング法を含む。性能は、ECoG 発作記録から識別された患者の発作開始領域を含む結果と、外科的結果を比較することにより評価されうる。子供は通常、硬膜下記録表面に近い新皮質表面のてんかん焦点を持つので、小児患者にとって硬膜下 ECoG 記録は適切でありうる。したがって、海馬または扁桃などの深部構造に位置するこれらの焦点よりも、ずれが少ししか発生しない。
〔材料と方法の実施例〕医学的に難治性の部分発作のある、8人の小児患者(女児3人、男児5人、6から16歳、表B-1)について考慮した。術前 MRI/CT スキャン、発作間欠期および発作時の長期間ビデオ/EEG 監視が行われた。この実施例の患者の中では、術後診断は、患者らのうち7人が2つのてんかん焦点を持ち、1人が単一のてんかん焦点を持つこと、ならびに、全ての患者が、いくつの脳領域が発作発生に関連しているかに関わらず、側頭外の発作焦点(前頭、頭頂、後頭を含む)を持つこと、を示した。
患者#1 は、海馬傍回を含む右前側頭葉切除と、右頭頂回切除を受けた。発作頻度は、手術後、1週間当たり10発作から1週間当たり2.75発作に減少した。患者#2は、左前頭葉切除と左頭頂回切除を受け、2年間発作がなかった。患者#3は、左前頭回切除と左頭頂回切除を受け、手術後、85% 発作が減少した。患者#4は左前頭回切除と、左側頭離断(disconnection)、海馬切除を受けた。この患者は手術後2年間発作がなかった。患者#5は最初に、右前頭葉の部分切除(subtotal)、右頭頂回切除を受け、発作が90% 減少した。次の手術では、患者は右機能的大脳半球切除を受け、6ヶ月発作がなかった。患者#6は、左前頭回切除と左後頭回切除を受け、発作は1ヶ月当たり30回から1週間当たり2回に減少した。患者#7は左部分後頭葉切除を受け、発作は1日当たり複数発作から1週間当たり5発作に減少した。患者#8は左後頭葉切除を受け、1年間発作がなかった。
各患者について、発作間欠期スパイクの発生に対し長期間 ECoG 記録が診査された。400 Hz ECoG サンプリング率で曖昧性無しに潜時の差が特定されうるように、発作間欠期ECoG スパイクに、種々の記録位置で10 ms 以上の時間遅延が見られた患者のみを考慮した。
〔データ取得〕てんかん患者の術前モニタリング中に、術前診断評価の一部として、硬膜下表面上に8から10 mm の電極間距離で直接置かれた、複数の方形電極グリッド(8×8、8×6、8×4など)とストライプ電極(8×1、6×1、4×1)を用いてECoG が記録された。ECoG 記録は、対側乳様突起(contralateral mastoid)に参照され、400 Hz でサンプリングされ、1 Hz から100 Hz の帯域フィルタにかけた。各患者について、複数の発作間欠期スパイクが視覚的に認識された。Global Field Power(GFP)のピークに中心が置かれた200 ms の時間窓が、更なる分析のためのスパイク期間(spike epoch)を選択するために使用された。50 ms より大きな潜時の差が観察される場合、大きな潜時の差が、独立した非同期性発作間欠期焦点からの記録を表さない、という可能性を排除するために、繰り返し記録される多チャネルパターンのみが分析された。
〔皮質活動マッピング〕異なる ECoG 記録位置間の潜時の差は、神経伝播によって引き起こされる。すなわち、容積伝導のせいではない。各瞬間での皮質表面にわたる電流密度またはポテンシャルフィールド分布を表す、皮質電流密度の画像化や皮質電位の画像化とは異なり、皮質活動マッピング(CAM)は、時空間皮質電位分布から、皮質表面にわたる神経活動伝播順序を特定しうる。皮質活動とは、皮質表面にわたって観察されるような、伝播による神経活動を言う。皮質の電気的刺激や薬学的刺激を言うものではない。局所的な神経活動時間と皮質表面電位に関係があると仮定する。硬膜下で記録された発作間欠期スパイクを分析することにより、発作開始と伝播に関する結合性の程度に置き換えて、関係が見出されうる。
活動時間は、局所組織が活性化 された瞬間時として規定される。皮質神経活動の指標として、ピーク振幅、ピーク一次導関数、ピーク二次導関数、およびピークラプラシアンを含む4つの基準が考えられうる。言い換えると、皮質活動時間は、(1)ECoG の振幅、(2)ECoG の一次時間導関数、(3)ECoG の二次時間導関数、および(4)ECoG の表面ラプラシアンの絶対値が最大に達する瞬間時から特定される。これら4つの関係について、8人の小児てんかん患者の硬膜下で記録された発作間欠期スパイクを分析することにより、てんかん様活動の開始と伝播を予測することで、各々が試験される。最短の潜時を示す皮質位置は開始領域をあらわし、遅れて活動を示す皮質位置はてんかん様活動の伝播経路上にあると仮定する。
全ての ECoG チャネルは、そのピーク活動にしたがって、活性化チャネルまたは非活性化チャネルに分類される。チャネルはその最大振幅がバックグラウンド活動の150% を超える場合に、活性化される。活性化チャネルについて、発作間欠期スパイクの伝播中における皮質神経活動順序の予測として局所活動時間を特定するために、4つの前述の基準が使用される。
予測された皮質活動順序は、発作硬膜下記録と比較される。硬膜下発作時 ECoG 記録は、開始領域と、隣合う皮質領域に活動が広がる経路を特定するために、視覚的に診査される。伝播パターンの最も矛盾のない予測を導く関係は最適関係とみなされ、てんかん様活動の開始と伝播を示すことができることを示唆する。
〔コンピュータシミュレーション〕臨床データの分析に加えて、皮質活動順序を予測することにおける異なる基準の能力を説明するために、コンピュータシミュレーションが行われうる。ヒトの発作間欠期スパイク発生の生理学的機構は複雑である可能性がある。単一運動双極子が、発作間欠期てんかん様放電の発生源をモデリングするために使用されうる。IIS を発生させるために簡易化した電流源モデルを仮定すると、一定の強さの単一運動双極子は脳内の線に沿って移動する。双極子発生皮質電位分布を分析的に計算するために、3同心球頭部モデルが容積導体モデルとして使用され、そこから、4つの与えられた関係を用いて局所活動時間が予測される。電流源活動に基づく CAM 分析を評価するために
、予測された活動順序が運動双極子のトレースと比較されうる。異なる電流源構成が、さまざまな双極子の離心率と方向で、コンピュータシミュレーション内で試験される。シミュレーションのある群では、双極子は、一定のスピードで皮質電極グリッドの対角線に沿って移動すると仮定される。参照局所活動時間は、双極子が特定された皮質位置に最も近づいた時に特定されうる。これらの皮質位置での局所活動時間は、4つの異なる基準を用いて計算されうる。相関係数は参照活動時間と計算された活動時間の間で計算されうる。電位分布と局所皮質活動時間の間の最適関係を表すために、最も矛盾のない結果をもたらす関係が考慮されうる。
〔結果〕外科的切除の後に、発作がないか、実質的な発作減少のあった、難治性発作を持つ8人の小児患者の発作間欠期スパイクの間に、 ECoG 記録を分析するためにCAM 分析が行われた。各患者について、さまざまな記録位置でのピーク発生間に、少なくとも10
ms の潜時の差(400 Hz のサンプリング率で、4時点)を持つ発作間欠期 ECoG スパイクのみが分析された。
〔患者の皮質活動マッピング〕4つの基準を用いて、8人全ての患者のCAM 分析が行われた。2人の患者(患者 #3、#5)の典型的な結果が、図B-1と図B-2に示される。全患者(患者#6を除く)から得られた結果にしたがって、ピーク振幅基準は、最も矛盾のない発作開始領域(IOZ)の予測を返す。ピーク振幅基準ほど正確でないが、ピーク一次導関数基準も、IOZ の周囲の開始領域を示した。多くの患者では、ピーク二次導関数とピークラプラシアン基準は、 IOZ の信頼できる予測を提供しなかった。
図B-1は、患者#5の皮質活動マッピング(CAM)分析を例示する。図B-1Aでは、6×8の硬膜下電極により記録された、発作間欠期スパイク中のECoG 波形が示される。図B-1Bでは、異なるチャネルからの ECoG 記録のピーク振幅発生時間により皮質活動時間(CAT)が特定される。図B-1Cでは、 CAT はピーク一次導関数基準により得られる。図B-1Dでは、 CAT はピーク二次導関数基準により得られる。図B-1Eでは、 CAT はピークラプラシアン基準により得られる。図B-1Fは、ECoG 記録チャネルと発作開始領域(IOZ)を例示する。黒い円は硬膜下電極を示し、ピンクの円は発作が始まった皮質領域を表す。
図B-1Aは、患者#5のECoG記録した発作間欠期スパイクの実施例を示す。時間潜時は異なるチャネルでのスパイクピーク発生から観察されうる。臨床的診断により、この患者が右前頭発作焦点を持つことを発見した。図B-1Bから図B-1Eは、それぞれ、基準(1)から(4)により特定された活動時間マッピングである。図B-1Bと図B-1Cから、さまざまなチャネル中の約50 ms の時間潜時が注目された。これは、電極板の左下角から開始し、反対の角に伝播した発作間欠期活動を示唆する。比較すると、図B-1Dと図B-1Eからは、発作間欠期事象がどこで始まったか不明確である。図B-1Fは硬膜下電極の配置を示し、ピンクで印が付けられたこれらの電極は、同じ患者での発作時 ECoG 記録を考察することにより識別された発作開始点である。
患者#3の CAM 分析結果が図B-2に表示される。この患者は、図B-2Fに示されるように、左頭頂発作焦点を持ち、発作は、16、24および32の番号の付いたピンクのチャネルから始まることが識別された。図B-2Bから図B-2Eと図B-2Fを比較することにより、基準(1)により特定された活動マッピングが、発作時 ECoG 記録から識別された IOZ に対して最も矛盾がない。図B-2Dと図B-2Eは、乱れた活動パターンを示し、発作間欠期活動の開始は、これらのパターンからは容易に認識されない。
患者#6では、CAM 分析により明らかとなった発作間欠期スパイクを開始する皮質領域は、発作時 ECoG 記録から特定されたような IOZ に隣接する領域に位置推定された。図B-3Aは、患者#6の典型的な発作間欠期 ECoG 波形を示す。時間遅延は、波形から、異なる記
録チャネル中で観察されうる。図B-3Bは、CAM 分析によるこの発作間欠期スパイクの結果を表示する。IISの明らかとなった開始皮質領域は、IOZ と重ならず、これは、図B-3Cに示される頭蓋内電極グリッドの拡大された表示上にピンクの電極により表されるが、IOZ から約2 cm の距離の領域内にある。この患者に関する他のIISのCAM 分析は、図B-3Bの結果と同様の結果を示す。この実施例の8人の患者のうち1人は、CAM 分析は IOZ を予測しないという結果となった。
図B-3は、CAM 分析が、発作時 ECoG 記録から特定された IOZ に一致しない実施例を示す。図B-3Aは、患者#6の発作間欠期 ECoG 記録の波形を示す。図B-3Bは、CAM 分析から得られた CAT マップを示す。図B-3Cは、発作時 ECoG 記録から特定された患者#6に関する IOZ の例示を含む。黒い円(印の付いたものの一部)は硬膜下電極であり、ピンクの円(印の付いたもの全て)は発作時 ECoG 記録から特定された IOZ を表す。
本実施例では、7人の患者(#1、2、3、4、5、6、7)が、同じ葉または異なる葉のいずれにも位置する、2つのてんかん焦点を持っていた。患者らの発作間欠期スパイクの診査は、同じ患者の IIS 中に存在する異なる時空間パターンを示した。それらの時空間パターンに従う IIS のクラスタリング(clustering)は、各種 IIS のCAM 分析前に役立つであろう。
患者#7は、図B-4Eに示されるように、左頭頂葉に2つの発作焦点を持っていた。焦点#1は焦点#2より、前上方にあった。発作間欠期 ECoG スパイクの2つの異なるパターンが、この患者で認識されている。パターン#1は、図B-4Aに示されるように、より前上方の頭頂の活動を含んでいた。図B-4Bの この種類のIIS のCAM 分析からの結果は、発作発生源#1の位置を明らかにした。図B-4Cは、パターン#2の典型的な波形を示し、これは、より後下方の頭頂の活動を含む。パターン#2のIISのCAM 分析は、図B-4Dに示される発作焦点#2の位置を示した。これらの結果は、異なるパターンの IIS は、複数の発作焦点を持つ患者(本実施例では、患者8人のうち6人)の空間分布にしたがって分類することができ、その後、個々のてんかん領域を別々に位置推定するために独立して分析することができることを示唆する。
図B-4は、複数のてんかん焦点を持つ患者の CAM 分析の例示を含む。図B-4Aは、患者#7のパターン1の IIS の波形の例示を含む。図B-4Bは、図B-4Aに示される IIS の CAS 分析を例示する。図B-4Cはパターン2の IIS の波形を例示する。図B-4Dは、図B-4Cに示される
IIS の CAM 分析を例示する。図B-4Eは、2つのてんかん領域が青の円で示されていることを例示する。焦点#1は、チャネル3、4、11、12、および13を含み、焦点#2は、チャネル33と34を含む。
〔コンピュータシミュレーションによる皮質活動マッピング〕図B-5および図B-6は、この文献で説明したプロトコルを用いるコンピュータシミュレーションから得られた CAM 分析の結果を示す。異なる離心率(0.60 から0.85)で半径方向か接線方向のいずれかに指向した単一運動双極子は、皮質活動シーケンスが、基準(1)から(4)を用いて予測される皮質電位分布を生成するために、使用されうる。離心率0.80の結果のみが図B-5および図B-6に含まれるが、同様の結果が他の離心率のシミュレーションから得られうる。表B-2は、皮質活動マッピングと双極子運動パターン間の相関係数(CC)を提供することにより、コンピュータシミュレーションから得られた結果をまとめる。最大振幅基準は電流源運動の矛盾のない予測を与える。図B-5Aは容積導体、皮質電極の位置、および運動双極子のトレースを示す。半径方向の双極子は、グリッド電極の下で、左下角から上右角に移動すると仮定されうる。図B-5Bは、運動双極子により生成する、シミュレーションされた皮質電位分布を示す。図B-5Cから図B-5Fは、4つの異なる基準を用いた8×8のグリッドパッド上の活動マッピングの結果である。4つの基準はそれぞれ:最大振幅(C1)、最大一次導関数(C2)、最大二次導関数(C3)、および最大表面ラプラシアン(C4)である。
図B-5は、単一の運動する半径方向の双極子を用いた、 CAM 分析のコンピュータシミュレーションを示す。図B-5Aは、三球頭部容積導体の最外表面を表す球を示す。黒い点は皮質電極を示し、ピンクの線は左下角から右上角(端点は開始位置と終了位置に印が付けられる)へ運動する双極子のトレースを表す。トレースの離心率は0.80である。図B-5Bは、単一の運動する半径方向の双極子により発生する皮質電位波形を示す。図B-5Cから図B-5Eを通じて、異なる基準:最大振幅(C1)、最大一次導関数(C2)、最大二次導関数(C3)、および最大表面ラプラシアン(C4)をそれぞれ用いる電位分布からの皮質活動マッピングを示す。
双極子が一定の速度で角から角へ移動していたことを考えると、C1は最も妥当な活動シーケンスの予測を生成したが、一方でC2、C3、C4はそれよりも精度の低い、スメア(smeared)な結果を生じた。図B-6Aは、図B-5Aに示されたものと同じ経路に沿って動く接線方向の双極子により生成する皮質電位波形を示す。図B-6Bから図B-6Eは、それぞれC1、C2、C3、およびC4を用いる活動マップを表示する。開始位置はこれらの結果において類似しているが、図B-6Bでは、図B-6Cから図B-6Eに示される他の結果よりも高い空間分解能(spatial-resolution)が得られうる。C1は、他の基準よりも最も矛盾のない双極子電流源活動の予測を与えることに留意されたい。
図B-6は、離心率0.80の、左下角から右上角へ運動する単一の接線方向の双極子を用いる CAM 分析のコンピュータシミュレーションを示す。図B-6Aから図B-6Eは、図B-5Aから図B-5Eの条件と同様の条件に一致する。
〔論考〕本主題は、特に、多チャネル頭蓋内ECoG 記録からのてんかん様発作間欠期放電間の皮質神経活動シーケンスの定量的な画像化を含む。本主題は、てんかん様活動の開始と伝播を特定するために使用されうる。8人の小児患者における、 CAM 分析から得られた結果と ECoG 記録された発作活動を比較することによって、多くの場合において CAM 分析が IOZ を首尾よく予測できることが明らかとなった。本主題は、難治性てんかん患者の術前評価および手術計画の援助に利用されうる。
異なる記録位置での発作性発作間欠期放電の潜時の差は、通常50 ms 未満であり、それゆえ、ECoG 記録の視覚的診査によって認識するのは容易ではない。本主題は、ECoG 記録のスパイクピーク中の潜時に基づいて皮質活動シーケンスを定量的に特定しうる。スパイクの初期の変化が起きる皮質領域は、てんかん領域内のてんかん様活動のペースメーカーを示し、これらの領域は切除術のために選択されうる。これは、ピーク振幅が、ECoG 記録から皮質神経活動シーケンスを予測するための、優れた基準であることを明らかにした。
発作間欠期スパイクと、てんかんペースメーカーとしての IOZ 間の強い相関が注目される。側頭葉てんかん患者での発作間欠期事象について、結果は、頭皮 ECoG 上の厳密な単焦点のてんかん様パターンが、首尾よい術後結果(77%の患者が発作が無い)だけでなく、IOZを高度に予測する(特異度100%)ことを示す。第一の検出可能なピークは、てんかん発生源と非常に局所的な(topographic)相関を持つ。発作間欠期事象は発作発生源を高度に予測し、てんかん領域の位置推定を容易にしうる。
ここに説明される本実施例の8人の小児てんかん患者は、明らかな時間潜時(4時間点または10ミリ秒)が、それらの発作間欠期 ECoG 記録でのさまざまなチャネル間で発見され
たので、発作間欠期放電の間の有意な伝播を示唆するとして、選択された。この伝播は、より大きな患者集団で起きることがあり、あるサンプリング率(本実施例では400 Hz )未満では検出されないことがある。てんかん様活動の伝播は、特に新皮質てんかんでは、速く且つ広範でありうる。この場合、神経集団の連続する活動は、同時発生と誤解されうる。EEG 記録での時間分解能の増加は、皮質活動マッピングを容易にしうる。
異なる記録位置での、スパイク波形における不規則な電位空間分布と有意差は、遠くに位置する電流源からの容積導体電界の受動的広がりによっては、説明されえない。代わりに、観察が、発作間欠期放電間の神経系路に沿った速く且つ広範な伝播を示唆する。異なる位置で記録されたスパイクが、下にある神経集団の同時活動を示すと仮定すると、スパイクのピークは電位記録の空間分布に関わらず、神経活動の開始を反映すると解釈されうる。時間潜時を空間マップに符号化することにより、CAM 分析は神経活動シーケンスのトポグラフィを発生させることができ、てんかん様活動の第一と第二の電流源を示すことができる。
ヒト IIS の発生メカニズムは、容易に説明され得ない。ヒト IIS は、動物のてんかんモデルにおける発作性脱分極シフト(PDS)、および、巨大興奮性後シナプス膜電位(EPSP)に相同であると考える人もいる。一方、異なる神経生理的同期メカニズムが存在しうる。発作間欠期放電および発作時放電両方の発生メカニズムが不確実であることにより、IIS と発作間の生理的関係はよくわかっていない。IIS の発生がてんかん領域を反映しているか、および、どのように反映するのかについては疑問が残る。
患者#6についての観察は、IIS および発作の始点の相違、もしくは、ヒト脳内でのIISの軸方向の伝播により説明されうる。
本方法は、CAM 分析を行うための2次元皮質電位分布を使用する。これは、表在性の新皮質てんかん焦点を持つ小児患者にとって効果的であるが、IIS が深層皮質構造から生ずる場合、不確実なIIS 開始予測を引き起こしうる。ヒトIIS は、上顆粒層および下顆粒層(supra- and infra-granular laminae)両方で横方向に広がる、発作伝播の主経路上の領域における強力な脱分極と共に皮質層IVから始まりうる。この縦方向の伝播のため、硬膜下電極により検出された最初の活動は、実際には、開始位置から離れて伝播されている神経活動を示しうる。この誤表示は、2次元電位分布を使用する場合、発生を防止することが難しく、深さ電位(depth potential)記録または予測を使用する3次元マッピングにより補正されうる。
異なる基準の性能は、電位分布(表B-2)から皮質活動時間を予測するために単純化されたモデルを用いて行われる、コンピュータシミュレーションを用いることによって、活動シーケンスの画像化において評価されうる。結果は、表B-2と共に図B-5と図B-6に示され、最大振幅基準が電流源活動パターンの最も矛盾のない予測を与えることを示す。これは、臨床データ分析から得られた結果とも矛盾しない。単一運動双極子は、発作間欠期てんかん様活動の発生を単純化して実現したものであることに留意されたい。この開始位置は、IISの開始を示唆し、有利な外科的結果を生むためにできれば切除されるべきである。異なる基準による性能を十分に評価するために、生理学的および病理学的に、より現実的な電流源モデルを用いるシミュレーションが行われうる。
実行された切除の定量的容量は、術後 MRI の不足のため、データからは不明確であることに留意されたい。そのような術後 MRI は、発作間欠期てんかん様活動の発端を CAM 分析からの発見に相関させる定量的手段を提供しうる。そのような定量的分析はてんかん領域を正確に位置推定しうる。
何人かの患者では、 IOZ はグリッドの端に位置推定されたことが明らかである(図B-1、図B-2、および図B-4)。この場合、記録されたてんかん様活動が離れた位置から生じ、グリッド電極の下の皮質に伝播する可能性は除外されうる。臨床的には、これは、仮定された焦点を有意に越す活動を示す、同時に起こる頭皮 EEG 記録に対する ECoG 活動の有効性を確認することにより達成されうる。
本主題は、神経集団の活動シーケンスのトポグラフィを生成する CAM 分析の能力を説明する。CAM 分析から得られた IIS の開始と伝播のパターンは、小児てんかん患者での発作開始領域を予測するのに有効である。本主題は、てんかん領域を特定するために使用されうる。
さらに、CAM 分析は、非侵襲性頭皮 EEG から逆に予測された皮質電位にまで、拡張されうる。これは、以下のプロシージャで行われうる:1) 逆問題を解くことによる頭皮EEG
から得られた皮質電位(もしくは電流密度分布)の時間変化を予測する;2) 活動時間を特定するために、上述のCAMプロシージャを、予測された皮質電位または電流密度に利用する;3) 結果を表示する。
<パートC:複雑な神経活動の画像化>
脳電図または脳磁図(EEG/MEG)は、機能しているヒトの脳での挙動に関連する、一過性の神経活動およびそのタイミングを評価するために使用されうる。EEG/MEG の下にある神経基質の直接的な位置推定は、神経活動を双極子としてモデリングすることにより達成されうる。双極子モデルを用いる神経源の位置推定は、異なる範囲を持つ皮質電流源の識別における非常に単純なモデルとその不十分さのために、比較的単純な位置推定タスクで有効である。
本主題は、EEG/MEG から直接得られる異なる皮質範囲の複数電流源を用いる、複雑な神経活動の画像化を含む。本主題は、双極子モデルのための付加的なパラメータを含み、入り組んだ皮質表面に制限された、広範な電流源のために使用されうる。複数の皮質電流源の位置推定は、ここに開示された電流源モデルを用いる時空間部分空間電流源位置推定法の使用により達成されうる。性能は、双極子モデルと比較してシミュレーションされたデータで評価されうる。皮質領域で複数の神経源を予測することは、視覚性タスク、運動性タスク、および認識性タスクなどの、より複雑なネットワークと同様、単純な初期のセンサ要素から皮質の電気的活動を説明するために使用されうる。
神経活動の非侵襲性位置推定の関係においては、検出可能な血行動態の変化に基づく機能 MRI(fMRI)が、ミリメーター単位の空間分解能を持つ、脳内での広範な活動のマッピングに使用されうる。しかしながら、fMRI は、緩慢な血行動態反応(秒単位)により、神経集団の一過性の形成を観察するための時間分解能が不足している。一方で、EEG および MEG は、ミリ秒単位の時間分解能で神経の電気的変化を直接検出し、挙動に関連する脳事象のタイミングについての情報を提供する。 EEG/MEG を用いる神経活動の直接位置推定と画像化は、このように魅力あるものとなる。そのようなタスクは、測定の侵入が制限されるため、神経活動のモデリングを必要とし、神経源モデルにおいて規定されるパラメータの値を予測する演算方法の性能は、位置推定タスクの複雑さに本質的に依存している。
EEG/MEG 測定は、少数の焦点電流源により生成すると予測され、それらの各々は位置とモーメントに関するパラメータを持つ双極子としてモデリングされうる。このモデルは、体性感覚皮質および聴覚皮質で発生する神経活動を評価するために利用されており、同様のモデルも、小児てんかん患者群において、外科的治療の診断と評価を補助するのに臨床的に有用であると説明されている。しかしながら、部分てんかんの初期センサ反応または
焦点に関連する神経基質は、通常、複雑さが低く、1つまたは2つの双極子により正確にモデリングされうる。このことは、上記の応用例の成功を保証する。複雑な神経活動の位置推定において双極子モデルが直面する難点は、演算方法にのみに由来するものではなく、電流源モデルにも由来する。数学的には演算方法は、問題の複雑さが、電流源モデル(すなわち双極子の数)の複雑さと共に指数関数的に増加するので、複数電流源の包括的な最適モデルパラメータを発見するのが困難である。生理学的には、EEG/MEG は、灰白質の皮質シートに垂直な、皮質錐体神経での同期した細胞内電流を主に検出する。そのような電流の範囲は、少なくとも40 mm2 と予測されており、もしくは、EEG/MEG センサでもっと大きな値が観察される可能性がある。双極子モデルはこの範囲情報を規定するためのパラメータが不足している。さらに、高度に入り組んだ皮質構造により、実際の皮質神経源により生成された観察可能な EEG/MEG フィールドは、範囲のない双極子により生成されたフィールドから著しくバイアスがかけられる。これは、異なる範囲を持つ複数電流源の位置推定タスクにおいては無視できない。
双極子によって表される各小要素を持つ電流密度電流源モデルは、仮定された電流源空間上での拡張された電流源を再現するために開発されている。双極子モデルと比較して、電流密度電流源モデルは極めて大きなパラメータ空間を持ち、得られる数学問題は線形であるが、極めて非定数(undetermined)である。再現された電流密度は、通常、過度に平滑化され(oversmoothed )、複数の皮質溝と皮質回にわたって広がる。
本主題は、多極子モデルを導く双極子用のパラメータ(すなわち位置とモーメント)に加えて、一連の高次数のモーメントパラメータを持つ、無視できない空間的拡張を説明することにより、双極子を拡張する電流源モデルを含む。モデルパラメータの数は増加しているが、多極子モデルは、電流密度電流源モデルと比較してまだ単純なままである。本主題は、異なる皮質範囲を有する複数電流源の複雑な神経活動を画像化するために、双極子に代えて多極子を用いる時空間部分空間電流源位置推定法を含む。一実施例では、モデルは EEG データに利用されるが、しかしながら、MEG にも使用されうる。
〔結果〕拡張された皮質神経源を表示することにおける多極子モデルの有効性は、双極子モデルと比較される。演算方法は、多極子モデルと双極子モデルの両方を用いて、異なる範囲を有する複数電流源の位置推定において検定されうる。
〔シミュレーションされたデータ〕皮質神経源は、実際の皮質表面でシミュレーションされ、患者のMRIデータ(図C-1)から得られた灰白質と白質の間の境界面を区切る。表面は高密度のメッシュで三角形に分けられ、双極子で表すのに十分小さな(約2.55 mm2)一つのメッシュをなす。皮質神経源は、小さな三角形のメッシュ(seed triangle mesh)から再構成され、その範囲は近傍三角形を反復して加えることにより増加された。各三角形の双極子モーメントは、皮質表面に垂直で、脳電図測定に基づいて25から250 pAm/mm2の範囲内であり、100 pAm/mm2と仮定される双極子モーメント密度とその面積の積として計算された。皮質電流源は、無作為に1000回発生させられた。EEG フィールドの主要パターン(全分散の99%)は、シミュレーションされた電流源の拡張内の各三角メッシュにおいて、双極子の連接ゲイン行列(concatenated gain matrices)に特異値分解(SVD)を行うことにより、異なる範囲(8 段階、図C-2A)のこれらの皮質電流源によって発生させられた。
図C-1Aは、皮質表面に垂直な電流を持つ、要素双極子(elemental dipole)と共に、拡大された皮質電流源のモデルを示し、および、皮質電流源により発生された電極でのポテンシャルフィールドの、点 l での、拡大図を示す。図C-1Bは、関連するヒト頭部の導体と記録電極の配置と共に、MRI から抽出された患者の皮質上の皮質電流源を示す。
図C-2Bの上パネルは、近傍の数により指し示され、サンプルの総数(すなわち1000)について平均される、異なる範囲のシミュレーションされた電流源についての独立した主要パターンの数を示す。一般的に、電流源範囲が増加する時、より独立したパターンが主要パターンとして必要とされる。変量は、同じ近傍を持つ電流源について観察もされうる。これは、異なる皮質位置での電流源から得られた、異なるモーメント分布の複雑さにより引き起こされる。各皮質電流源のSVD により識別された主要パターンは、その後、小さな三角形の位置における双極子および多極子モデルそれぞれから得られた、双極子および多極子フィールドに対する部分空間相関(SC)計算にかけられる。1000サンプルの平均 SC 値が図C-2Bの下の2つのパネルに示される。多極子モデルは、皮質電流源から得られた最大9つの主要パターンを説明できる9つの独立パターンを持ち、一方で双極子モデルは3つの独立パターンのみを持つ。SC 値は、最大規模に到達する前のいくつかの場合、ある閾値(例えば0.99)の下に落ちることがあり、これらの場合のいくつかの主要パターンは、うまく説明されないことがあることを示唆する。定量的測定、すなわち、モデルがあらわしうる皮質電流源の範囲の上限 は、電流源の全主要パターンの SC 値が0.99より高い状況下では、シミュレーションされた各電流源について計算されうる。多極子(下位四分位、中央値、上位四分位)の範囲の上限は、約4、6、および7.5 cm2であり、双極子については、約0.02、0.3、および2 cm2 (図C-2C)である。多極子は、拡張された皮質電流源により発生された EEG フィールドを表しうる。この測定での大きな変動は、位置依存(図Cから2D)を明らかにする。範囲の上限が大きい皮質電流源は主として平滑表面上に位置し、の範囲の上限が小さい皮質電流源は曲がった構造上にあらわれる。
図C-2は、反復して近傍を加えたことにより、異なる範囲を持つ皮質電流源を示す図C-2Aを有するシミュレーションを示す。図C-2B(上パネル)は、皮質電流源により発生する99%変量を説明するために必要とされる、主要パターンの数を示す。水平軸は、相当する変量の降順で i 番目のパターン( i = 1、2、…、7)を指し示し、垂直軸は、合計1000のシミュレーションされた皮質電流源における分数を示す。ここで、i 番目のパターンは主要パターンである。図C-2B(中パネル)は、皮質電流源の主要パターンと、小さな三角形での多極子により発生した主要パターンとの間の SC を示す;図C-2B(下パネル)は、皮質電流源の主要パターンと、小さな三角形での双極子により発生した主要パターンとの間の SC を示す。図C-2Cは、多極子および双極子から得られた皮質電流源の範囲の上限を示す。図C-2Dは、範囲の上限の位置依存性を以下のとおり示す;金色:小さな範囲の上限(下位四分位);紫:大きな範囲の上限(上位四分位)。図C-2Eは、異なる範囲を持つ視覚野周辺の3つのシミュレーションされた皮質電流源を示す。図C-2F(上パネル)は、三つのシミュレーションされた電流源の多極子(各ペアの左のバー)と双極子(各ペアの右のバー)の検出比を示す。図C-2F(中パネル)は、検出された電流源の平均位置推定エラーを示す。図C-2F(下パネル)は、検出された電流源の平均 SC 値を示す。
複数の皮質電流源を持つ複雑な神経活動を調査するために、視覚野内(図C-2E)で、上記の発生メカニズムと共に、3つの時間的に独立した電流源がシミュレーションされる。一次視覚野よりも、関連する視覚野内で、比較的大きな受容野をシミュレーションするために、第一の電流源の範囲は、他の2つの約 1/3 であった(3つの電流源について、54、149、および154の三角形)。シミュレーションされた EEG データは、休息状態の患者から記録された実際のノイズにより汚染され、8 dB の信号対ノイズ比に較正された。図C-2Fは、多極子を用いる部分空間電流源位置推定法は、複数の拡張された皮質電流源を正確に位置推定しうることを示す。3つの皮質電流源の検出率は30反復で100パーセントであり、その平均位置推定エラーは、3つの電流源についてそれぞれ、4.6、1.4、3.4 mm である。それらのおよそ0の、ノイズのみの部分空間に対する SC 値(<0.05)は、信頼できる電流源識別を示した。双極子を用いる手法は2つの電流源を検出できるが、それらのうち1つの平均位置推定エラーは、低信頼度/(SC>0.8)で、50 mm よりも大きい。焦点電流源が首尾よく検出される場合、包含されない電流源は、広範囲に含まれる。
本主題は、複数の皮質電流源を持つ複雑な神経活動を位置推定することにおいて、 EEG
の電流源モデルを含む。皮質電流源は、2つの理由から無視できない範囲を持つ。第一の理由は、神経活動を検出できる EEG の最小範囲の控えめな予測は、約0.4 cm2 であることであり、神経密度および皮質の厚さの名目上の計算により示唆される。本主題のシミュレーションされた皮質電流源を用いて、双極子モデルは、3つの電流源により発生した、中央値範囲(median extent)が約0.3 cm2であるポテンシャルフィールドを十分に説明しうる。これは、無作為に選択された位置における少なくとも半分のシミュレーションされた電流源の十分なモデルではないことを意味する。多極子モデルは、中央値範囲が約 6 cm2 のほとんどの皮質電流源を表すことができる。多極子モデルは、モデルパラメータの値を制御することにより、本実施例におけるシミュレーションが示すように(図C-2B)、焦点電流源を表すことができる。第二の理由は、小さな範囲内でさえ急速に変化する皮質電流源モーメントをつくる、複雑化した皮質構造による。範囲の上限は、このように、異なる皮質位置での、ある変量を提示する。一般的に、大きな曲率を持つ皮質領域(例えば、脳回の端および脳溝の底)で、範囲の上限は平滑表面の皮質領域(脳溝のバンク 上の壁(walls on sulcus banks))より比較的小さい。
拡張された皮質電流源により発生したポテンシャルフィールドの十分な説明は、演算方法により生じる不明確かつ誤った結果を導きうるようなモデリングエラーが含まれないことを意味する。双極子が少数である場合にそのようなモデリングエラーが無視できるとしても、複数電流源を持つ複雑な神経活動においては、重要な問題でありうる。というのも、電流源間の拡張差異、および、結果として起こるEEG センサの異なる感度は、演算方法の実行にかなりの影響を及ぼすからである。部分空間電流源推定法では、不正確な電流源モデリングは電流源検出感度を低下させ、真の電流源をノイズまたは他の影響に隠してしまう。いくつかの真の電流源の一次結合が、他の位置での一つの電流源と同様のアウトプットを発生することを意味する、アレイ不明確現象により生じる感度シフトに連結して、部分空間電流源位置推定法は、真の電流源を誤って検出し、誤った電流源を誤って拾う可能性がある。双極子モデルを用いると、2つのシミュレーションされた電流源は包含されず、誤った電流源が矛盾なく検出される(図C-2F)。
本電流源推定モデルは、スカラーポテンシャルフィールドの多極子拡張に基づく。高次数モーメント(すなわち四極子)を考察することにより、皮質電流源により発生したポテンシャルフィールドを説明できる。スカラー電位と磁気ベクトルポテンシャルの多極子拡張により取り組まれた電流源モデリングは、測定された電場および磁場、および、ヒト頭部用の球状容積導体モデルを用いる単純な生体磁気電流源位置推定(単一電流源など)、を理解することに焦点を置く、心磁図(MCG)とMEGに使用されうる。本主題は、複雑な神経活動内において、より実際的なヒト頭部モデルを用いて複数電流源を推定することができる。境界要素モデルは、ヒト頭部および主要な導電性障壁(すなわち頭蓋骨)の実際的な形状を説明するために使用される。シミュレーションは、空間的に拡張した電流源を位置推定することにおける容積導体モデルからの影響は、低導電性の頭蓋骨により影響の少ないMEG データに対してさえ重大であることを示す。
本主題は、単純タスク(1または2電流源)から複雑タスク(本実施例では7電流源であるが、より大きな数も企図される)まで、電磁記録を用いて電流源位置推定ができる電流源モデルを含み、視覚的なシミュレーションから得られた実際のデータに使用されうる。本主題は、伝統的な双極子モデル、および電流密度電流源モデルとは異なる。本主題は、双極子モデルの場合、ある次数にパラメータ空間を維持し、同時に、電流密度電流源モデルの場合、拡張された皮質電流源を表す。本主題は、モデリングの不正確性を避けることによって、ヒトの皮質内の複数電流源の位置推定における、関連する演算方法をより正確にし、より一般的には、生理学的または病理学的条件でのタスク実行または停止の間に、
分布した皮質活動の時空間的画像化を可能にする。
〔方法 モデリング〕任意の範囲を持つ皮質電流源により生じた外部 EEG フィールド(図C-1)は、無限テイラー級数展開の式で表わされうる。複雑な導電特性が存在する EEG フィールド(すなわちヒトの頭部)を考慮する前に、導電性σの無限均質媒体で始める。
は、任意展開点 l 付近の位置 r で測定された、EEG フィールドであり、J (r’) は、展開点 l の周囲の位置 r’ での電流密度分布である。電流源が電極への距離に比べて非常に小さい領域内に集中している場合には、ゼロ次項である、双極子
により、電流源を近似する。入り組み、拡張した皮質電流源(図C-1)は、上述の仮定の妨害(violation)とみなされる。双極子に加えて、Eq. C-1での一次項である、四極子
からの寄与を考慮することにより、電流多極子を持つそのような電流源を、モデリングする。
ヒトの頭部の存在における EEG フィールドは、境界要素法(BEM)によって無限均質媒体におけるEEG フィールドに接続されうる。
ここで、I は対角行列であり、B はヒト頭部の幾何学的構造(geometry)と導電特性の関数であり、3つの区分、すなわち頭皮、頭蓋骨、脳の区分的に均質な導体(piecewise homogenous conductor)により表される。中でも頭蓋骨は、頭皮と脳の導電性の20分の1の導電性しか持たない。ここでのE
∞ は、無限均質媒体において、双極子ではなく多極子により生じた EEG フィールドである。
〔演算方法〕MUSIC アルゴリズムなどの部分空間電流源位置推定法は、可能性のある電流源空間全体をスキャンし、2つの部分空間の SC を計算する。1つの部分空間は、各スキ
ャン点で双極子または多極子のいずれかにより結ばれ(span)、Eq. C-2 によって、各 EEG センサで計算され、ゲイン行列Aをなすために総計(stack)される。ならびに、他の部分空間は、EEG 相関行列、RE = ARSAT+ RN (ここで、RSおよび RN は、それぞれ、電流源信号およびノイズ相関行列である)、から予測された、いわゆるノイズのみの部分空間である。信号部分空間、VS = [v1, v2, …, vp ] は、REの固有分解から得られるこれらの p 固有ベクトルにより結ばれ、それらの対応する固有値はRN でのノイズ値より高い。残りの固有ベクトルは、ノイズのみの部分空間、Vn = I - Vs を結ぶ。SC { A(r) , En
} がスキャン点でゼロに近づく場合、この点は電流源と考えられる。複数電流源は複数の極値において得られうる。本研究で使用される距離関数(メトリック;SCl (r) )は、MUSIC アルゴリズムでの伝統的な SC から変形される。
Eq. C-3 において、SC
l (r) の分子は伝統的な MUSIC 推定量(estimator)であり、分母は正規化項であり、ならびにこの公式は、SC 計算のための標準 L2 ノルムではなく、 L1
ノルムを使用することにより得られる。この実行は、一次元レーダーセンサアレイ問題においては、電流源の空間的分解能という点でよりよく説明されており、ここでは3次元 EEG センサアレイと共に使用される。距離関数 SC
l (r) は、双極子が3つの独立したモーメントを持ち、四極子が6つの独立した高次数モーメントを持つので、9つの独立したモーメントである多極子をつくるベクトルである。モーメントは、SVD 分析によるおよそゼロの SC 値に関連する特異ベクトルとして予測されうる。
上記の説明は、例示を意図するものであり、制限を意図するものではない。例えば、上述の実施形態(もしくは、それらの一つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用されうる。上記の説明を再検討する場合、他の実施形態が当業者にとって明らかである。それゆえ、本発明の範囲は、付随する請求項に関連し、そのような請求項が権利を得られる均等物の全範囲に沿って画定される。付随する請求項では、「含む(including)」、および「ここで(in which)」という語は、それぞれ、「含む(comprising)」、および「ここで(wherein)」という語の、明瞭な英語の均等物として使用される。また請求項では、「含む(including)」および、「含む(comprising)」は、自由選択形式(open-ended)である。すなわち、システム、装置、物品、またはプロセスは、請求項内でそのような語の後に列挙されているものに加えて構成要素を含んでもなお、請求項の範囲内に入ると考えられる。さらに、請求項では、「第一(first)」、「第二(second)」、および「第三(third)」などの語は、ラベルとして使用されるに過ぎず、それらの対象に数に関する要件を課すことを意図しない。
要約は、読者に技術的な開示の本質を素早く確認させることを要求する、37 C.F.R. §1.72 (b) に従うために提供される。これは、請求項の範囲もしくは意味を説明したり、限定したりするために使用されないという理解をもって、提出される。なお上記の詳細な説明においては、さまざまな特徴が、開示を合理化するために共に分類されている。請求されていない開示された特徴が、全ての請求項にとって必須であることを意図するとして解釈されるべきでない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態の全ての特徴に存在する。したがって、請求項は、各請求項が別々の実施形態として独自でありながら、これによって詳細な説明に組み込まれる。