JP2009530912A - ベースバンドパイロット注入キャリア(bpic)変復調とフレーム回復とを備えた通信システムおよび関連する方法 - Google Patents
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Abstract
通信システム(30’)は、入力データに基づいて変調信号を送信する送信装置(31’)と、送信装置から変調信号を受信する受信装置(32’)とを含んでよい。送信装置(31’)は、変調器(35’)と、ベースバンド注入パイロットキャリア(BPIC)データを生成するBPIC生成器(33’)と、BPICデータを入力データにインターリーブして、変調器に入力されるデータフレームを定義するフレーマ(48’)とを含んでよい。受信装置(32’)は、復調器(41’)と、フレーム回復器(49’)と、復調器と協働して送信装置(31’)からの変調信号をBPICデータに基づいて復調し、フレーム回復器と協働してデータフレームもBPICデータに基づいて回復するBPIC検出器(40’)とを含んでよい。
【選択図】 図1
【選択図】 図1
Description
本発明は、通信システム分野に関し、より詳しくは、信号の変復調技術および関連する方法に関する。
衛星通信システムのプロバイダとユーザの双方にとって重大な関心事は、システム資源をいかに最大限に利用するかである。特に、トランスポンダ帯域幅と実効等方放射電力(EIRP)は共に重要であるが、これは、トランスポンダを経由して送られるあらゆる信号がトランスポンダ帯域幅および実効等方放射電力の一部を使用するからである。衛星資源は高価なので、衛星の電力が乏しい資源である場合は、各信号に要求される電力量を最小化することによって、より多くの信号をトランスポンダ経由で送ることができ、その結果リース料金が下がる。別の応用例では、同じトランスポンダ電力で、受信機アンテナの開口サイズを小さくしている。小さな開口アンテナを採用した比較的廉価ないくつかの先行技術システムは、より低いG/T値を有するために電力が限られがちであり、従って衛星からより多くの電力を必要とする。
このような通信システムにおいて電力と帯域幅利用を改善するために特に有利な手法の1つが、コッブ(Cobb)らに対する米国特許第6,606,357号に開示されている。同特許は、本発明の譲受人に譲渡されており、引用することにより全体としてここに組み込まれているものとする。この特許は、QAMまたはM相位相偏移変調(MPSK)波形(例えば、BPSK、QPSK、8PSKなど)のような波形に所定量のキャリアエネルギーを注入する技術を開示している。このベースバンドパイロット注入キャリア(BPIC)成分により、受信機において、キャリアの非線形再生ではなく、キャリアの検出および回復が可能になる。
また、BPIC変調手法は、例えばターボ符号といった新しい前方誤り訂正(FEC)符号化方式の高い性能を利用するのにもよく適しており、それにより、比較的低いビット誤り率を達成するために必要な信号電力を著しく低減する。すなわち、所定のBPIC波形を高度な符号化技術と組み合わせて用いることにより、衛星トランスポンダの小型端末のユーザ数を場合によっては2倍にすることができ、従ってユーザの賃借費用を事実上半減することになる。逆に、BPIC波形によって、より小さなアンテナを用いて配置の融通性および/または機動性を高めてもよい。
BPIC変調手法により著しい効果が得られるが、いくつかの用途においては、著しい省電力を引き続き享受しつつ依然として付随するオーバーヘッドをさらに減らすために、さらなる技術が望まれる場合がある。
本発明の目的は、上記背景に鑑みて、ベースバンドパイロット注入キャリア(BPIC)変復調機能を強化した通信システムおよび関連する方法を提供することである。
本発明にかかる上記目的、他の目的、特徴、および効果は、入力データに基づいて変調信号を送信する送信装置と、送信装置から変調信号を受信する受信装置とを含み得る通信システムによって提供される。さらに詳しくは、送信装置は、変調器と、BPICデータを生成するBPIC生成器と、BPICデータを入力データにインターリーブ(差し込みinterleave)して、変調器に入力されるデータフレームを定義するフレーマ(フレーム化器、framer)とを含んでよい。さらに、受信装置は、復調器と、フレーム回復器(frame recoverer)と、復調器と協働して送信装置からの変調信号をBPICデータに基づいて復調し、フレーム回復器と協働してデータフレームもBPICデータに基づいて回復するBPIC検出器とを含んでよい。
例として、フレーマは、フレーム期間の整数倍の期間にてBPICデータの繰り返しパターンを入力データにインターリーブしてよい。さらに、復調器は、位相ロックループ(PLL)を含んでよい。また、フレーマは、入力データを符号化する前方誤り訂正(FEC)符号生成器を含んでよい。例えば、FEC符号生成器は、ターボ符号生成器であってよい。
変調器は、例えばBPSK、QPSK、8PSKなどの変調器といったM相位相偏移変調(MPSK)変調器や、直交振幅変調(QAM)変調器などであってよい。さらに、フレーマは、BPICデータの間に単一形式のデータ部分をインターリーブしてよい。
本発明の通信方法の態様は、ベースバンド注入パイロットキャリア(BPIC)データを生成し、BPICデータを入力データにインターリーブしてデータフレームを定義し、データフレームを変調して変調信号を生成して、変調信号を送信してよい。本方法は、BPICデータに基づいて変調信号を受信して復調し、データフレームもBPICデータに基づいて回復してよい。
以下、本発明の好ましい実施の形態が示される添付の図面を参照して、本発明についてさらに十分に説明する。ただし、本発明は、さまざまな形態で実施されてよく、ここで述べる実施の形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろそれらの実施の形態は、本開示が網羅的で完全なものとなるように、そして本開示によって本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために、提供するものである。同じ数字は、全体を通じて同じ要素を表し、またプライム記号の表記を用いて、代替となる実施の形態における類似要素を示す。
まず図1から図3を参照すると、通信システム30は、変調信号を第1および第2の入力データに基づいて送信する送信装置31と、送信装置から変調信号を受信する受信装置32とを図示のように含んでいる。第2の入力データストリームは、受信機へ送信される情報内容を含み、例えば音声、映像、および/または他の種類のデータを含んでよい。
送信装置は、第1の入力データに応じてベースバンド注入パイロットキャリア(BPIC)データを選択的に生成するBPIC生成器33と、BPICデータを第2の入力データにインターリーブするインターリーバ(interleaver)34と、変調器35と、変調器35に接続されたアンテナ46とを図示のように含む。具体的には、BPIC生成器33は、有利には、例えば2値の0または1というように複数の異なるデータ値のうちの1つをとり得るBPICデータを生成する。このように、データストリームの所与の位置に挿入されたBPICデータは、第1の入力データに対応し得る。
参考として、先述した米国特許第6,606,357号で示されたBPIC手法では、あらかじめ定められた位置に挿入される一定のオフセットレベルを利用して復調のための基準を有利に与えている。BPIC生成器33は、有利な点として、転送すべき次の第1の入力データ部分に対応するBPICデータを生成し、これにより一定のオフセット基準レベルを用いずに実データを送ることができるので、帯域幅が拡大する。
例として、第1の入力データは、単に第2の入力データであってよく、このデータはさもなければ上記のBPIC手法ではBPICオフセット基準と置き換えられてしまう(または廃棄される)ものである。すなわち、第1の入力データストリームは、単に、BPICデータが挿入されるBPIC期間またはBPICインターバルにおける第2の入力データのビットまたはシンボルであってよい。もちろん、第1の入力データは、必ずしも第2の入力データの部分集合である必要はない。例えば、当業者に理解されるように、第1の入力データはオーダーワイヤデータであってよい。さらに、いくつかの実施の形態においては、第1の入力データは、必要に応じて第2の入力データから完全に独立していてもよい。第1および第2の入力データの他のさまざまな組み合わせが可能であり、これもまたまた当業者に理解されるであろう。
もちろん、BPICデータのレベルまたは値を変更することにより、上記のBPIC手法では受信機すなわち復調側にて課題が生じる。これは、オフセット基準がもはや一定ではなくなるからである。しかしながら、復調のために識別可能なBPIC基準を引き続き提供するために、変調器35が、有利な変調として、インターリーブされたBPICデータを第1の変調形式に基づいて変調し、第2の入力データを第1の変調形式とは異なる第2の変調形式に基づいて変調して、変調信号を提供する。
図2に示す例をさらに詳しく参照すると、変調器35は、BPICデータを変調するために第1の変調形式としてBPSKを用い、また第2の入力データを変調するために用いられる第2の変調形式はQPSKである。従って、本例において、各BPICシンボルが2つのデータ値、すなわち0または1のうちの1つに対応してよく、その一方で第2の入力データシンボルが4つの異なる値(すなわち00、01、10、11)のうちの1つに対応してよいことは、当業者に理解されるであろう。それでもなお、BPICデータのBPSK変調によって生成されるシンボルは、QPSK変調を用いて生成される第2の入力データのシンボルと区別可能なので、復調時に容易に特定され得るものであり、これは当業者に理解されるであろう。
なお、上記の変調形式の他に、他の変調形式が用いられてよいことは留意されるであろう。概して言えば、使用する変調形式を選択するための一手法は、第2の入力データよりも低い位相数の変調形式を用いてBPICデータを変調することである。上記の例では、QPSKはBPSKよりも高い位相数(すなわち4位相(quadrupling)対2位相(squaring))であるが、いくつかの実施の形態においては、例えば、QPSKを第1の変調形式とし、8PSKを第2の変調形式として用いることも可能である。もちろん、QAMのような他の形式の変調も同様に用いられてよい。目的は、第2の変調形式を用いて変調された第2の入力データに対して復調時に識別可能なシンボル(または複数のシンボル)を第1の変調形式が生成する、ということである。
インターリーバ34は、第2の入力データストリームを受け取る前方誤り訂正(FEC)符号化器36を図示のように含む。第2の入力データストリームは、図示の例においては、シリアルデータストリームである。以下にさらに詳しく論じるように、本BPIC変調技術では、有利にはターボ符号で達成可能な比較的高い符号化利得を復調器が利用できるが、さまざまなFEC形式が用いられてよい。シリアル−パラレル(S/P)変換器37は、符号化された第2の入力データストリームを複数のパラレル出力(0)〜(m)へと変換する。もちろん、いくつかの実施の形態においては、入力がパラレルでよく、またS/P変換器37が含まれなくてよいことは留意されるであろう。
BPIC生成器33は、スイッチ38で示すように、インターリーバ34に、BPICデータを符号化された第2の入力データストリームにあらかじめ定められたBPICインターバルでインターリーブさせる。さらに詳しくは、BPICインターバル時に(例えばn番目のシンボルごとに)、変調器35の入力がBPIC生成器の出力(または複数の出力)へ切り替えられ、さもなければ存在していたであろう第2の入力データの代わりに、所与のBPICデータが変調される。例として、BPSK変調の場合は、所望のデータ値(0または1)が変調器35の第1の入力へ与えられてよく、その一方で変調器の残りの入力には0値または既知のパターンが与えられる。さらに、BPICインターバル時に変調器35を第1の変調形式に切り替え、その後第2の入力データを変調するために第2の変調形式へ戻すようにするBPIC生成器からの制御信号が、変調器35へ与えられてもよい。
説明を明確にするために図2では変調器35を単一部品として示したが、変調動作が別々の変調器によって行われてもよいことは留意されるであろう。もちろん、送信装置31および受信装置32の構成要素のさまざまな機能が多数の方法で実装されてよいことは、当業者に理解されるであろう。方法としては、別々の回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)による方法、および/または、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等といった1つ以上の処理装置および適切なソフトウエアモジュール等を用いる方法などがある。
受信装置32は、BPIC検出器40と、BPIC検出器と協働して送信装置31からの変調信号をBPICデータ(BPICデータは、変調時にはBPICシンボルを提供する)に基づいて復調して第1および第2の入力データを生成する復調器41とを図示のように含む。アンテナ47が、復調器41へ図示のように接続されている。図3をさらに詳しく参照すると、BPIC検出器40は、変調信号内でBPICシンボルの位置を検出し、それにより変調信号を、BPICインターバル時は第1の(例えばBPSK)復調段44へ、そうでない時は第2の(例えばQPSK)復調段45へと、(図ではスイッチ43で表されているように)選択的に切り替える。BPIC変復調技術についてのさらなる詳細は、前述の米国特許第6,606,357号に見いだせるであろう。
ここでさらに図4を参照すると、本発明の通信方法の態様は、ブロック50で図示のように開始し、ブロック52で第1の入力データに応じてBPICデータを選択的に生成し、ブロック54でBPICデータを第2の入力データにインターリーブする。本方法は、先に論じたように、ブロック56で、インターリーブされたBPICデータを第1の変調形式に基づいて変調し、第2の入力データを第2の変調形式に基づいて変調して変調信号を提供し、変調信号を送信することをさらに含んでよい。さらにまた、本方法は、ブロック58でBPICデータに基づいて変調信号を受信して復調して、第1および第2の入力データを生成することも含んでよく、そしてこの例示された方法は終了する(ブロック60)。
BPICデータにBPSK変調を用いることは、いくつかの実施の形態において特に効果的な場合がある。何故なら、BPIC検出器40において、BPIC追跡は、例えばQPSKに関連する4倍損失(quadrupling loss)の代わりに2乗損失(squaring loss)を被るだけであり、依然として所望の信号属性を維持するからである。さらに、符号化された実際のユーザデータや、オーダーワイヤデータなどをBPICシンボルとして送ることができるが、その理由は、これらのシンボルがBPIC検出のために受信装置32において既知または一定のシンボルパターンである必要がないためである。これにより、有利な点として、オーバーヘッドが減って通信リンクのスループットが向上する。
さらに、これにより、回復されたBPICシンボル(または複数のBPICシンボル)のスペクトル線が減少する場合もある。これは、当業者に理解されるように、スペクトルマスクが厳しく規定されている衛星通信用途にとって特に重要となる場合がある。さらに、上記の手法では、第2の入力データおよびBPICデータの両方に対し、より高い位相数の変調を用いるのと比べて、比較的低いEs/Noで復調器41が追跡して所望の性能を発揮できる場合もある。
上記のように、本手法によって、ターボ符号をよりよく活用することもできるし、またドップラー追跡が著しく向上する場合もある。さらに詳しくは、ハードウエア(HW)およびソフトウエア(SW)の両方で利用できる繰り返しターボ符号化・復号方式が数種類ある。一般に、ターボ符号によって、従来の連接畳み込み/リード・ソロモン復号方式と比べて2dBから3dB良好な符号化利得を得ることが可能になる。この付加的な利得を利用するための方法は多数あるが、この改良は、概して3つのカテゴリー、すなわち帯域幅とスループットと電力とのうちの1つに優位性を与える。ターボ符号を実装しているモデム製造業者の多くは最初の2つだけに取り組んでいるが、これは、通常、3番目(電力)は非常に低いEs/Noで動作できる受信機を必要とするからである。
帯域幅に関しては、ターボ符号は概してより高いビット当たり符号化利得を有するので、オーバーヘッドがより少ない符号で同等の性能を生むことができる。一定のスループットおよび電力を維持しつつ帯域幅を減らすために、より高い符号化利得を利用することができる。より低いオーバーヘッドと合わせて一定のキャリア対雑音比(C/N)を維持することによって、より少ない帯域幅を用いてリンクを確立することができる。復調器の追跡性能はC/Nに基づいているので、帯域幅を節約することが目的であれば、連接符号で動作した復調器が、ターボ符号でも動作することになる。弊害は、アンテナの大きさやドップラー追跡または捕捉における向上が実現しないということであり、要するに、結果としては既に得ることができているのと同じ捕捉および追跡の性能ということになる。
スループットについても同様に、一定の帯域幅および電力を維持しつつスループットを増やすために、より高い符号化利得を利用することができる。ターボ符号では、同じ符号化利得のために必要なオーバーヘッドが少なくて済むので、より低いオーバーヘッドを適用して同じ帯域幅を提供しながらも、増加したユーザデータレートで、ユーザの情報レートを増加させることができる。ここでもまた、一定のC/Nを維持することによって、連接符号化方式を用いてキャリアを追跡した復調器が用いられ得る。
電力に関しては、いくつかの用途では、十分な帯域幅があり、中ぐらいから高いデータレートを要求されるが、システムが小開口に限られるという場合があり、これは、例えば船上や携帯端末などに見られる。帯域幅を犠牲にしてより低いC/Noを用いることによって、ターボ符号の付加的な符号化性能を利用することができる。このようにして、システムは、より小さな開口の恩恵にあずかることができ、衛星トランスポンダ電力を1リンク当たり2dBから3dB下げることができる。BPIC手法により、端末はこの電力の低減を利用することができる。さらに、BPIC手法は、従来の再生型復調器と比べて捕捉および追跡の性能を著しく改善する。
従来の復調器は、再生ループを用いてキャリアを回復し、この複製されたキャリアを用いて、PSKのほぼ理論的な性能を達成する。この種の受信機が抱える問題の一つは、S/Nが低下するにつれて再生処理が雑音を指数関数的に増やしてしまう、ということである。前述のように、BPSKには2乗損失があり、QPSKには4倍損失があるが、これは図5に見られる通りである。
従って、この信号対雑音の損失を補償するために、追跡ループのループ帯域幅を大幅に減らさなければならない。3dBまたは4dBほどのEs/Noにおいてはこの損失はそれほど厳しいものではなく、従来の受信機はそこそこの性能で追跡を行うことができる。しかし、不利な条件の端末にとってターボ符号化が大いに役立ち得る0dBのEs/Noにおいては、4倍損失が非常に大きくなる。
この点をさらに説明する前に、いくつか定義を与えることが有用である。Eb/Noは、情報ビット当たりエネルギーと定義される。Ec/Noは、符号化および他のオーバーヘッド後のチャネルビット当たりエネルギーである。Es/Noは、すべての符号化および他のオーバーヘッド後の送信シンボル当たりエネルギーである。ここで、
Ec/No=(Eb/No)*(符号レート)
Es/No=(Ec/No)/log2(M)
である。従って、情報レートがレート1/2で符号化された場合、チャネルレートは情報ビットレートの2倍になる。同様に、シンボルレートはチャネルレートをlog2(M)で割ったものである。ただし、Mは変調の位相数である(QPSKではM=4)。上記の定義に基づくと、情報ビットレートが1bpsの、レート1/3で符号化されたQPSKキャリアでは、チャネルレートが3bps、シンボルレートが1.5bpsとなる(10log10[1.5]=1.8dB)。このような場合には、Es/No=(Eb/No−1.8dB)となる。
Ec/No=(Eb/No)*(符号レート)
Es/No=(Ec/No)/log2(M)
である。従って、情報レートがレート1/2で符号化された場合、チャネルレートは情報ビットレートの2倍になる。同様に、シンボルレートはチャネルレートをlog2(M)で割ったものである。ただし、Mは変調の位相数である(QPSKではM=4)。上記の定義に基づくと、情報ビットレートが1bpsの、レート1/3で符号化されたQPSKキャリアでは、チャネルレートが3bps、シンボルレートが1.5bpsとなる(10log10[1.5]=1.8dB)。このような場合には、Es/No=(Eb/No−1.8dB)となる。
ここで図6を参照して、追跡ループの一般的な例を次に説明する。この例では、理論上1dB以内の性能を発揮する小開口端末に対してレート1/3のターボ符号を用いた512KBPSの情報ビットレートをもつQPSK信号を想定している。入力信号C/Nが、シンボルレート整合フィルタ70でフィルタ処理されて、実装損失(1dB未満と想定される)を差し引いたEs/Noが得られる。QPSK復調器71の4倍損失により、S/N比がさらに劣化する。従って、規定性能に対して妥当な余裕以内にキャリアロックを維持するため、キャリア追跡ループフィルタ72で、S/Nを改善して、追跡ループにおいて良好なS/N比を与えなければならない。ループは、6dBより下ではロックを維持しないであろう。10dBより上の他の値であれば、所与の実装において、所与のジッタおよび位相雑音の性能要件等に基づいて用いることができる。ループにおいてS/Nを高めようとすると、必然的にループ帯域幅がさらに狭くなってしまう。
以上から、
Es/No−IL−Quad Loss−Margin+10log(SR/2BL) > 10dB
ということになる。ただし、Es/Noは、すべての符号化および他のオーバーヘッド後の送信シンボル当たりエネルギーであり、IL=実装損失(1dBと想定される)、Margin=基準に対して1dB、Quad Loss=再生型受信機による4倍損失、SR=受信符号化シンボルレート(Es/Noの根拠)、BL=Hzで表した片側追跡ループ帯域幅である。従来の市販の復調器は、典型的にはおよそ3dBまたは4dBより下のEb/Noではロックを維持できない。これは概して、捕捉と、追跡と、動的性能との間のトレードオフである。上記の式を用いると、レート1/3の符号化で4dBのEb/Noを想定した512KBPSのリンクでは、片側ループ帯域幅(BL)が約197Hzという結果になる。ところが、レート1/3の符号化で0dBのEb/Noを想定した512KBPSのリンクでは、片側ループ帯域幅(BL)が約16Hzという結果になる。これにより、ループ帯域幅の縮小が10倍を超えてしまう。キャリアが4位相化されているため、この追跡ループは課されたドップラーの4倍を追跡しなければならず、またドップラーを追跡する能力は、ループ帯域幅の縮小の2乗に比例して低下する、ということが留意されるであろう。
Es/No−IL−Quad Loss−Margin+10log(SR/2BL) > 10dB
ということになる。ただし、Es/Noは、すべての符号化および他のオーバーヘッド後の送信シンボル当たりエネルギーであり、IL=実装損失(1dBと想定される)、Margin=基準に対して1dB、Quad Loss=再生型受信機による4倍損失、SR=受信符号化シンボルレート(Es/Noの根拠)、BL=Hzで表した片側追跡ループ帯域幅である。従来の市販の復調器は、典型的にはおよそ3dBまたは4dBより下のEb/Noではロックを維持できない。これは概して、捕捉と、追跡と、動的性能との間のトレードオフである。上記の式を用いると、レート1/3の符号化で4dBのEb/Noを想定した512KBPSのリンクでは、片側ループ帯域幅(BL)が約197Hzという結果になる。ところが、レート1/3の符号化で0dBのEb/Noを想定した512KBPSのリンクでは、片側ループ帯域幅(BL)が約16Hzという結果になる。これにより、ループ帯域幅の縮小が10倍を超えてしまう。キャリアが4位相化されているため、この追跡ループは課されたドップラーの4倍を追跡しなければならず、またドップラーを追跡する能力は、ループ帯域幅の縮小の2乗に比例して低下する、ということが留意されるであろう。
さらに図7および図8を参照すると、20:1のBPIC波形(すなわち、BPICインターバルが20シンボルごと)では、Quad Lossは、ほぼ一定の13dBの損失(10log[20/1])に、付加的なオーバーヘッドによる約0.3dBの実装損失をさらに加えたものと置き換えられる。従って、レート1/3で符号化されたBPIC型QPSKの0dBのEb/Noでのループ帯域幅は約500Hzとなり、また、ループはドップラーの1倍を追跡するだけでよく、従来のループのように4倍を追跡する必要はない。これらの帯域幅は、データレートと共に増減する。Eb/Noが増加するにつれて改善の度合いは幾分減少するものの、たいていの場合は再生ループより悪化せず、低いEb/Noにおいては、けた違いの改善を示す場合がある。一例として、−6dBのEs/Noまで下がる追跡を、3:1から63:1までのBPICレートについて施してもよい。これにより、有利には、非常に低いEb/Noにおいて、フェーディング時にロックを失わずに追跡できるようになる。
BPIC手法が著しい効果を有する特定用途の1つは、ドップラー追跡または船体運動追跡である。4位相化ループが、実際にキャリアの第4高調波を追跡しているためドップラーの4倍を追跡しなければならないのに対して、BPICは、従来の位相ロックループ(PLL)を用いて実装された場合、ドップラーの1倍を追跡するだけでよい。ドップラー追跡または船体運動追跡は、ループ帯域幅の2乗に比例して改善する。図7および図8から分かるように、図示された例のBPICループでは、低い信号対雑音比で追跡した場合、再生型受信機に対してドップラー追跡で40:1を超える改善を得ることができる。
次に、以下の表1に示したドップラー変化率を用いて、従来の再生型キャリア追跡方式およびBPIC型キャリア追跡方式の両方について、同等の符号化および変調を想定してドップラー追跡の結果を評価する。
図7および図8に見られるように、レート1/3のターボ符号で0dBのEb/Noを与えるC/Noにおいて、閾値で追跡しつつなおKaバンドドップラーを満足する最低データレートが約4700KBPSである一方、BPICでは、同等の追跡性能を約90KBPSで発揮することが可能である。
従って、BPIC波形では、低い信号対雑音比においては特に、従来の復調器に対して大幅な、定量化できる性能優位性が得られる、ということが認められるであろう。BPIC波形によって、比較的微小な付加的実装損失(すなわち約0.3dB未満)でけた違いの追跡性能改善を示すことができ、従って、いくつかの実装では低いS/N比かつ中ぐらいのデータレートにおいて、外部補償無しに船体運動ドップラーを処理できる場合がある。ところが、船体ドップラーを追跡するのに十分なほどループが最終的に広くなるように従来のモデムを用いてデータレートが上げられた場合は、従来のモデムはその実装のためにまだ4倍の追跡を行わなければならず、厳しいフェーディングにおいてはロックを維持しないであろう。従来の受信機は、同等のビット誤り率(BER)でリンクを閉じるためには2dBから3dB高いC/Nを必要とし、仮にロックを維持したとしても、BPICと比べてけた違いに悪い追跡性能を有するかもしれない。
次に、BPIC追跡のもう1つの潜在的効果は、データフレーム回復に利用できるということである。さらに詳しくは、当業者に理解されるように、多くの通信システムは、フレーム化されたデータパターンを用いてタイミングまたは経路制御情報を提供する。そのようなシステムは、ルータと、多重化装置と、FEC符号化器とを含んでよい。しかしながら、データフレームが用いられた場合、フレーム間、フレームグループ(すなわちスーパーフレーム)間、またはコードブロック間のプリアンブルまたはユニークワードという形で何らかの付加的なフレーム化オーバーヘッドが個々を区別するために必要となり、このためスループットが低下する。
図9から図12を見ると、通信システム30’は、入力データに基づいて変調信号を送信する送信装置31’と、送信装置から変調信号を受信する受信装置32’とを図示のように含んでいる。さらに詳しくは、送信装置31’は、図示のように変調器35’と、BPICデータを生成するBPIC生成器33’と、BPICデータを入力データにインターリーブして、変調器に入力されるデータフレームを定義するフレーマ(フレーム化器、framer)48’とを含む。第1および第2の変調形式を用いる上述の技術は、ここで例示された実施の形態において用いられてよいが、すべての実施の形態において用いられる必要はない、ということが留意されるであろう。
受信装置32’は、図示のように復調器41’と、フレーム回復器(frame recoverer)49’と、復調器と協働して送信装置31’からの変調信号をBPICデータに基づいて復調し、フレーム回復器と協働してデータフレームもBPICデータに基づいて回復するBPIC検出器40’とを含む。特に、フレーム期間と一致(調和、consistent)する周期的な形でBPICシンボルパターンが生じるようにBPICデータが入力データとインターリーブされるので、プリアンブルまたはユニークワードの代わりにBPICデータがフレームを区別するために用いられ得る。
例として、フレーマ48’は、フレーム期間の整数倍の期間にてBPICデータの繰り返しパターンを入力データにインターリーブしてよい。図11に示す例では、各フレームはa個のデータ部分(ここでは8個)を含む。データ部分は空のブロックで表されている。典型的には隣接するデータフレームの開始データ部分と終了データ部分との間には間隔または遅延がないが、説明を分かりやすくするためにフレームどうしは間隔を開けて分離してある。さらに、n番目のデータ部分(ここではn=10)ごとの位置で入力データストリームにBPICデータ(BPICデータは1個以上のシンボルに対応してよい)が注入される。BPICデータは中実ブロックで表されている。すなわち、各BPICデータの位置の間には一定数b個の入力データ部分(ここでは9個)が存在する。
結果として、BPICデータシンボルのパターンが整数c個のフレーム(ここでは5個)で繰り返して、スーパーフレームを定義する。従って、注入BPICデータの繰り返しパターンがフレーム期間の整数倍の期間で繰り返され、フレーム同期と位相のあいまいさの解決とのためにBPICシンボル追跡が有利に用いられてよく、これは当業者に理解されるであろう。もちろん、BPICパターンは、フレームの境界、スーパーフレームの境界、あるいは符号ブロックの境界において繰り返されてよい。
フレーマ48’は、FEC生成器(例えばターボ符号化器)73’と、スイッチ74’で例示されるようにフレーマに入力データストリームへBPICデータをインターリーブさせるBPIC生成器とを図示のように含む。変調器35’は、例えばBPSK、QPSK、8PSKなどの変調器といったMPSK変調器や、QAM変調器などであってよい。
復調器41’は、図12に示す例においてはQPSK復調器であるが、2乗段(squaring stage)76’を含む。2乗段76’は、BPIC検出器40’と同様に変調信号を受け取る。復調器41’は、BPIC検出器40’の下流に位相追跡器77’をさらに含み、位相追跡器の出力も2乗段76’に接続される。2乗段76’の出力は、入力データの元のフレームを回復するためにフレーム回復器49’へ入力され、フレーム回復器は、図示のようにBPIC検出器40’から制御入力を受け取る。当業者に理解されるように、いくつかの実施の形態では帯域通過フィルタがPLLの代わりに用いられてよいことが留意されるであろう。
関連する通信方法の態様について、図13を参照して次に説明する。先に論じたように、ブロック80で開始する本方法は、BPICデータを生成し(ブロック81)、BPICデータに入力データをインターリーブしてデータフレームを定義し(ブロック82)、データフレームを変調して変調信号を生成して、変調信号を送信する(ブロック83)ことを図示のように含む。本方法は、ブロック84でBPICデータに基づいて変調信号を受信して復調し、ブロック85でデータフレームもBPICデータに基づいて回復することをさらに含んでよく、そしてこの例示された方法は終了する。
Claims (10)
- 入力データに基づいて変調信号を送信する送信装置と、前記送信装置から前記変調信号を受信する受信装置とを備える通信システムであって、
前記送信装置は、
変調器と、
ベースバンド注入パイロットキャリア(BPIC)データを生成するBPIC生成器と、
前記BPICデータを前記入力データにインターリーブして、前記変調器に入力されるデータフレームを定義するフレーマと、
を備え、
前記受信装置は、
復調器と、
フレーム回復器と、
前記復調器と協働して前記送信装置からの前記変調信号を前記BPICデータに基づいて復調し、前記フレーム回復器と協働して前記データフレームも前記BPICデータに基づいて回復するBPIC検出器と、
を備えることを特徴とする通信システム。 - 前記フレーマは、フレーム期間の整数倍の期間にて前記BPICデータの繰り返しパターンを前記入力データにインターリーブすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
- 前記復調器は、位相ロックループ(PLL)を含むことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
- 前記入力データを符号化する前方誤り訂正(FEC)符号生成器を前記変調器の上流にさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
- 前記変調器は、M相位相偏移変調(MPSK)変調器を含むことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
- ベースバンド注入パイロットキャリア(BPIC)データを生成し、
前記BPICデータを入力データにインターリーブしてデータフレームを定義し、
前記データフレームを変調して変調信号を生成して、前記変調信号を送信し、
前記変調信号を受信して、前記BPICデータに基づいて前記変調信号を復調し、
前記データフレームも前記BPICデータに基づいて回復すること、
を特徴とする通信方法。 - 前記インターリーブは、フレーム期間の整数倍の期間にて前記BPICデータの繰り返しパターンを前記入力データにインターリーブすることを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記変調の前に、前方誤り訂正(FEC)符号を用いて前記入力データを符号化することを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記変調は、前記データフレームをM相位相偏移変調(MPSK)変調形式で変調することを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記インターリーブは、前記BPICデータの間に単一形式のデータ部分をインターリーブすることを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
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