JP2009529365A - ステント及びカテーテルへの脂質共役体の使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】特にステント及びカテーテルなどの植込み可能なデバイスにコーティングされ、前記植込み可能なデバイスの特に再狭窄又は炎症などの望ましくない反応を予防又は治療するための化合物を提供する。
【解決手段】本発明に係るデバイスは、その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含んでいる。また、本発明は、対象の血管損傷又は血管閉塞を予防、抑制又は治療する方法であって、その表面の少なくとも一部に、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むコーティングを有するデバイスを、前記血管に適用するステップを含む方法を提供する。
【選択図】図1A
【解決手段】本発明に係るデバイスは、その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含んでいる。また、本発明は、対象の血管損傷又は血管閉塞を予防、抑制又は治療する方法であって、その表面の少なくとも一部に、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むコーティングを有するデバイスを、前記血管に適用するステップを含む方法を提供する。
【選択図】図1A
Description
本発明は、特にステント及びカテーテルなどの植込み可能なデバイスにコーティングされ、前記植込み可能なデバイスの特に再狭窄又は炎症などの望ましくない反応を予防又は治療するための化合物を提供する。
脂質共役体は、酵素ホスホリパーゼA2(PLA2,EC3.1.1.4)を阻害すると考えられている。ホスホリパーゼA2は、リン脂質のsn−2位の分解を触媒し、脂肪酸及びリゾホスホリピドを産出する。この酵素の活性は、様々な細胞機能、特に、エイコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエン)、血小板活性因子及びリゾホスホリピドなどの脂質メディエータの産出と相関性がある。脂質共役体は、有害な作用因子及び病原性プロセスに対しての、細胞及び生物体のより幅広い保護を提供することができる。
診断及び/又は治療を目的として実施され得る、動脈若しくは静脈カテーテル法又は観血的手術などの侵襲性医療措置は、血管傷害及び再灌流傷害に起因する組織虚血を伴うことが多い。
これらの病変の形成は、血液の凝固性要素、血液細胞、血管内腔壁の構造要素及び細胞を含む様々な要因に伴って生じる。例えば、バルーン血管形成手術の成功後に出現する動脈再狭窄は、バルーン血管形成手術によって刺激された領域における平滑筋細胞の成長(増殖)による動脈の内径の狭小化に起因することが多い。この新たな狭窄病変は、白血球を含む他の種類の細胞が、遊走及び局所増殖の過程を経て病変部位に蓄積することによっても生じ得る。この2つの事象(細胞の遊走及び増殖)は、初めの組織損傷部位でのマクロファージの初期蓄積によって恐らくは放出された多種多様なサイトカインの協調的な相互作用に、ほぼ間違いなく起因する。このように、白血球は、遊走、局所増殖、内皮障壁通過、コレステロールに富むリポタンパク質の蓄積、泡沫細胞への転換、及びサイトカインの分泌の各過程を経て、狭窄病変の形成に寄与する。このような細胞増殖及び血管内腔の狭小化は、冠状動脈又は脳循環に制限又は限定されるものではない。例えば、末梢血管系において、手術後に再狭窄が生じる場合もある。
ステント、カテーテル及びカニューレなどの医療機器の植込みは、血液、酸素及び栄養分の通過を可能にすべく血管の閉塞を解消する方法として、現在の医療では一般的になっている。例えば、ステントは、身体の中空構造内に挿入されて前記中空構造の開いた状態を維持する伸縮性のワイヤーメッシュ又は中空の穴あきチューブであり、血管又は管路の直径減少を克服することを主目的としている。ステントは、冠状動脈、末梢動脈、末梢静脈、胆管、食道、気管支、大気管支、尿管及び尿道の封鎖又は閉塞を解消又は最小化するのによく使用される。
配置前のステントは、径が小さくなるように折り畳まれている。現在のステントは、自己拡張型、又は膨脹式バルーンを用いて拡張させるタイプである。拡張させた後は、ステントは、自身の半径方向への伸長によって血管又は管路の壁に固定される。これらのデバイスは、最も一般的には、蛍光透視下又は内視鏡検査下で挿入される。
冠状及び末梢血管における閉塞性アテローム硬化性病変を治療するために冠状及び末梢血管形成手術が日常的に行われる。冠状及び末梢血管のバルーン拡張後、患者の30〜40%が再狭窄を経験する。
カテーテルは、心血管、胃腸、眼、泌尿器及び泌尿生殖器の各処置に関連する様々な医療用途で使用されている。カテーテルはまた、貯留液体の排出及び液体の投与のために使用される。ステントは、適切な流れを維持するために、妨害物の向こう側に位置する器官への流れと前記器官からの流れの圧力差を減少させるために使用される。ステントは、血管、胆管、呼吸器、泌尿器及び泌尿生殖器の各処置で使用される。
封鎖又は閉塞を改善するための機械的手段を利用する処置に伴う最も多い問題としては、静脈炎、血管外遊走、アレルギー型反応、閉塞性肉芽組織、ステントの端部での狭窄、ステントの移動又は破損、及び感染があり、今日まで多くの場合、成功実現に大きな支障をもたらしている。
ある実施形態では、本発明は、その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むことを特徴とするデバイスを提供する。
ある実施形態では、前記コーティングは、次の化学式(A)で表される化合物を含む。
ただし、
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、グリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L,Z、Y、及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、グリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L,Z、Y、及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明は、対象の血管損傷又は血管閉塞を予防、抑制又は治療する方法であって、その表面の少なくとも一部に、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むコーティングを有するデバイスを、前記血管に適用するステップを含む方法を提供する。
本発明は、一部の実施形態では、コーティングされたデバイス及び前記デバイスの様々な疾患の治療への使用に関し、他の実施形態では、前記デバイスの様々な医学的用途への使用に関する。
ある実施形態では、本発明は、コーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが脂質又はリン脂質部分を含み、前記脂質又はリン脂質部分が、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体、及び/又はそれの薬学的に許容される塩若しくは医薬品に結合されたことを特徴とするデバイスを提供する。ある実施形態では、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体、及び/又はそれの薬学的に許容される塩若しくは医薬品に結合された、前記脂質又はリン脂質部分は、本発明に係る方法及び/又はデバイスで使用する化合物と称される。
化合物
ある実施形態では、本発明に係る方法及び/又はデバイスのいずれかで使用する化合物は、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体に結合された、脂質又はリン脂質部分を含む。ある実施形態では、前記化合物は脂質共役体(lipid conjugate)とも称され、一部の実施形態では、次の一般式で表される。
[ホスファチジルエタノールアミン−Y]n−X
[ホスファチジルセリン−Y]n−X
[ホスファチジルコリン−Y]n−X
[ホスファチジルイノシトール−Y]n−X
[ホスファチジルグリセロール−Y]n−X
[ホスファチジル酸−Y]n−X
[リゾ−リン脂質−Y]n−X
[ジアシル−グリセロール−Y]n−X
[モノアシル−グリセロール−Y]n−X
[スフィンゴミエリン−Y]n−X
[スフィンゴシン−Y]n−X
[セラミド−Y]n−X
[ホスファチジルエタノールアミン−Y]n−X
[ホスファチジルセリン−Y]n−X
[ホスファチジルコリン−Y]n−X
[ホスファチジルイノシトール−Y]n−X
[ホスファチジルグリセロール−Y]n−X
[ホスファチジル酸−Y]n−X
[リゾ−リン脂質−Y]n−X
[ジアシル−グリセロール−Y]n−X
[モノアシル−グリセロール−Y]n−X
[スフィンゴミエリン−Y]n−X
[スフィンゴシン−Y]n−X
[セラミド−Y]n−X
ただし、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、
nは、Xに結合された脂質分子の数であり、1〜1000の数字である。
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、
nは、Xに結合された脂質分子の数であり、1〜1000の数字である。
ある実施形態では、本発明は、従来開示されておらず、薬理学的活性を有することが知られていない、上記の一般式で表される低分子量の脂質共役体を提供する。他の実施形態では、上記の一般式で表される低分子量の脂質共役体におけるXは、モノサッカリド、ジサッカリド、カルボキシル化ジサッカリド、モノカルボキシル酸、ジカルボキシル酸、サルチル酸塩、サルチル酸、アスピリン、ラクトビオン酸、マルトース、アミノ酸、グリシン、酢酸、酪酸、ジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、脂肪酸、ドデカン酸、ジドデカン酸、胆汁酸、コール酸、ヘミコハク酸コレステリル、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、トリサッカリド、ヘパリンのジサッカリド若しくはトリサッカリド単量体単位、ヘパラン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、デキストラン、ヒアルロン酸である。
本発明のある実施形態では、Xは、サルチル酸塩、サルチル酸、アスピリン、単糖、ラクトビオン酸、マルトース、アミノ酸、グリシン、カルボキシル酸、酢酸、酪酸、ジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、脂肪酸、ドデカン酸、ジドデカン酸、胆汁酸、コール酸、ヘミコハク酸コレステリル、ジペプチド、ジサッカリド、トリサッカリド、オリゴサッカリド、オリゴペプチド、ヘパリンのジサッカリド若しくはモノサッカリド単量体単位、ヘパラン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、デキストラン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、ポリゲリン(haemaccel)、アルギン酸塩、ヒドロキシエチルスターチ(ヘタスターチ)、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸化ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸、ケラチン、ケラチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ヒアルロン酸である。
本明細書に示した脂質共役体の構造式に定義されているように、これらの化合物は、1つの生理学的に許容される重合体分子に結合された1〜1000の脂質部分を有し得る。
本発明のある実施形態では、nは、1〜1000の数字である。他の実施形態では、nは、1〜500の数字である。他の実施形態では、nは、1〜100の数字である。他の実施形態では、nは、2〜1000の数字である。他の実施形態では、nは、2〜100の数字である。他の実施形態では、nは、2〜200の数字である。他の実施形態では、nは、3〜300の数字である。他の実施形態では、nは、10〜400の数字である。他の実施形態では、nは、50〜500の数字である。他の実施形態では、nは、100〜300の数字である。他の実施形態では、nは、300〜500の数字である。他の実施形態では、nは、500〜800の数字である。
本発明のある実施形態では、nは、1〜1000の数字である。他の実施形態では、nは、1〜500の数字である。他の実施形態では、nは、1〜100の数字である。他の実施形態では、nは、2〜1000の数字である。他の実施形態では、nは、2〜100の数字である。他の実施形態では、nは、2〜200の数字である。他の実施形態では、nは、3〜300の数字である。他の実施形態では、nは、10〜400の数字である。他の実施形態では、nは、50〜500の数字である。他の実施形態では、nは、100〜300の数字である。他の実施形態では、nは、300〜500の数字である。他の実施形態では、nは、500〜800の数字である。
本発明のある実施形態では、共役担体(conjugated carrier)部分が重合体の場合は、共有結合している脂質部分の比は、重合体の性質及び用いられる反応条件によって左右されるが、重合体の1分子あたりの脂質残基は1〜1000の範囲であり得る。例えば、所望に応じて、重合体の1分子あたりの脂質残基の比が高い又は低い脂質共役体産品を得るために、出発原料の相対量や反応時間の長さが変更され得る。
ある実施形態では、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体と共有結合しているホスファチジルエタノールアミンを含む化合物は、本明細書では、PE−共役体と称される。ある実施形態では、前記ホスファチジルエタノールアミン部分は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、前記ホスファチジルエタノールアミン部分は、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、前記脂質部分として、ホスファチジルエタノールアミンの代わりに、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジル酸、又はホスファチジルグリセロールが用いられる関連誘導体は、後述する前記脂質共役体についての生物学的実験、及び上記の化合物が共有する構造的類似性に基づいて、同等の治療効果を示す。
他の実施形態では、前記脂質又はリン脂質部分は、ホスファチジル酸、アシルグリセロル、モノアシルグリセロール、ジアシグリセロール、トリアシルグリセロール、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、セラミド、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、又はそれらのエーテル若しくはアルキルリン脂質誘導体である。
本発明に関連する他の脂質共役体誘導体としては、グリセロール骨格のC1及びC2位置の脂質部分における少なくとも1つの脂肪酸基が、エステル結合ではなくアミド、エーテル又はアルキル結合によって結合された長鎖アルキル基によって置換された脂質共役体がある。
本発明の実施形態に係る方法では、対象に投与される前記脂質共役体は少なくとも1つ脂質部分から成り、前記脂質部分は、極性頭部基の原子を介して、低分子量又は高分子量の単量体又は重合体部分(本明細書では共役部分(conjugated moiety)と称する)と共有結合している。所望する場合は、前記脂質共役体部分と単量体又は重合体部分との連結に、随意的な架橋部分(bridging moiety)を使用することもできる。前記共役部分としては、低分子量のカルボン酸、ジカルボン酸、脂肪酸、ジカルボキシル脂肪酸、アセチルサルチル酸、コール酸、ヘミコハク酸コレステリル、モノサッカリド、ジサッカリド、アミノ酸、ジペプチド、オリゴペプチド、グリコタンパク質混合物、グリコサミノグリカンのジサッカリド若しくはトリサッカリド単量体単位(ヘパリンの反復単位など)、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン、ケラタン硫酸、高分子量ペプチド若しくはオリゴペプチド、多糖、ポリグリカン、タンパク質、グリコサミノグリカン、又はグリコタンパク質の混合物がある。高分子量のリン脂質共役体の組成物、及びそれに関連する類似体は、米国特許第5,064,817号明細書に開示されている。
ある実施形態では、「部分(moiety)」という用語は、化学物質を意味する、さもなければ、原子価が共有結合によって満たされている化合物に相当する。
ある実施形態では、本発明に係る方法に使用する脂質共役体を作成するための共役部分として用いることができる重合体の例としては、様々な分子量及び化学型の水分散性又は水溶性の重合体(主に天然及び合成重合体)などの、生理学的に許容される重合体がある。前記重合体としては、例えば、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、ケラチン、ケラチン硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、デキストラン、血漿増量剤(例えば、ポリゲリン(Behring製の「ヘマセル(Haemaccel)」。尿素架橋によって架橋結合された分解ゼラチンポリペプチド)、ヒドロキシエチルスターチ(Htastarch、HES)及びエキストラン)、食物及び薬剤の添加物、水溶性セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ポリアミノ酸、炭水化物重合体、(例えば、ポリエチレン)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、酸化ポリエチレン(例えば、ポリエチレングリコール、ポリカルボキシル化されたポリエチレングリコール)、ポリビニルピロリドン、多糖、アルギン酸塩、同化可能なゴム(例えば、キサンタンゴム)、ペプチド、注入可能な血漿タンパク質(例えば、血清アルブミン)、シクロデキストリン、及びそれらの誘導体がある。
ある実施形態では、本発明に係る方法に使用する脂質共役体を作成するための共役部分として用いることができる単量体、二量体、及びオリゴマーの例としては、モノサッカリド、ジサッカリド、トリジサッカリド、オリゴペプチド、カルボン酸、ジカルボン酸、脂肪酸、ジカルボキシル脂肪酸、サリチル酸塩、サリチル酸、アセチルサルチル酸、アスピリン、ラクトビオン酸、マルトース、アミノ酸、グリシン、グルタル酸、コハク酸、ドデカン酸、ジドデカン酸、胆汁酸、コール酸、ヘミコハク酸コレステリル、グリコサミノグリカンのジサッカリド若しくはトリサッカリド単量体単位(ヘパリンの反復単位など)、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、又はデキストランがある。
本発明の一部の実施形態では、脂質共役体の作成のために選択された単量体又は重合体は、それ自体が生物学的特性を有し得る。例えば、ヘパリン及びヒアルロン酸の両方は、既知の生理機能を有する物質である。しかしながら、本発明では、これらの物質を出発原料として作成された脂質共役体は、新規で、リン脂質と共有結合によって連結されていないヘパリン又はヒアルロン酸を投与したときに予測されるものよりも幅広い、一連の薬剤活性を示す。ヒアルロン酸(化合物XXII)、ヘパリン(化合物XXIV)、コンドロイチン硫酸A(化合物XXV)、カルボキシメチルセルロース(化合物XXVI)、ポリゲリン(ヘマセル)(化合物XXVII)、又はヒドロキシエチルスターチ(化合物XXVIII)と結合したホスファチジルエタノールアミン(PE)は、有効性及び薬剤活性の有効範囲に関して、フリー共役体(上記の重合体など)よりもはるかに優れていることが、後述するような及び米国特許出願第10/952,496号明細書(この参照により本発明に組み込まれるものとする)に開示されているような標準的な比較実験によって示されている。実際、後者の物質は、一般的に、本明細書で説明したほとんどの疾患(例えば、病原体感染の治療など)の治療方法において、有用であるとは見なされていない。したがって、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質、又は、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びホスファチジルグリセロール(PG)などの極性頭部基が異なる関連リン脂質の組み合わせは、出発原料のみの場合と比べて、新規な薬理特性を有する化合物を作成することができる。
本明細書に記載されている、生物学的に活性な脂質共役体は、幅広い範囲の分子量を持つことができる。例えば、脂質共役体を血管系内に保持する場合は、分子量は50,000以上(最大、数10万まで)であり、血管外の系を対象にする場合は、分子量は50,000以下である。共役部分の分子量及び化学構造についての唯一の制限は、脂質共役体が所望の生物活性を欠かないこと、又は、脂質共役体が本明細書に記載された薬として役立たないほどに化学的若しくは生理学的に不安定にならないことである。
ある実施形態では、本発明に係る方法及び/又はデバイスで使用する化合物は、下記の化学式(A)で表される。
ただし、
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
ある実施形態では、Lはホスファチジルであり、Zはエタノールアミンであり、LとZとが化学的に結合されてホスファチジルエタノールアミンとなり、Yは存在せず、Xはカルボキシメチルセルロースである。ある実施形態では、前記ホスファチジルエタノールアミン部分は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。ある実施形態では、前記ホスファチジルエタノールアミン部分は、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、Xは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)である。他の実施形態では、Xは、アルギン酸塩である。他の実施形態では、Xは、デキストランである。他の実施形態では、Xは、ポリゲリン(haemaccel)である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(I)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、アミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、アミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。
本発明に係る方法で使用される望ましい化合物は、次に記載の物質の1つを共役部分Xとして有する。酢酸塩、酪酸塩、グルタル酸塩、コハク酸塩、ドデカン酸塩、ジドデカン酸塩、マルトース、ラクトビオン酸、デキストラン、アルギン酸塩、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、アスピリン、コール酸塩、ヘミコハク酸コレステリル、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリゲリン(ヘマセル)、ポリエチレングリコール、及びポリカルボキシル化ポリエチレングリコール。PE−共役体の作成に使用される出発原料の分子量は、1〜2000kDaの範囲である。
ホスファチジルエタノールアミン(PE)部分の例としては、リン脂質のグリセロール骨格に結合した長さが2〜30炭素原子の2つの脂肪酸鎖を有し、前記脂肪酸鎖が飽和及び/又は不飽和炭素原子を含むリン脂質の類似体がある。脂肪酸鎖の代わりに、アルキル鎖が直接的に又はエーテル結合を介してリン脂質のグリセロール骨格と結合したものもPEの類似体として含まれる。ある実施形態では、前記PE部分は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、前記PE部分は、前記PE部分は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。
ホスファチジルエタノール及びその類似体は、天然、合成及び半合成誘導体及びそれらの異性体などの様々なソースから得られる。
PE部分の代わりに用いることが可能なリン脂質としては、N−メチル−PE誘導体及びその類似体(N−メチル−PEのアミノ基を介した共有結合によって連結されている)、N,N−ジメチル−PE誘導体及びその類似体(N,N−ジメチル−PEのアミノ基を介した共有結合で連結されている)、ホスファチジルセリン(PS)及びその類似体(例えば、パルミトイル−ステアロイル−PS、様々なソース由来の天然PS、半合成PS、合成、天然及び人工PS、並びにそれらの異性体など)がある。本発明で共役部分として使用可能な他のリン脂質として、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジル酸及びホスファチジルグリセロール(PG)、並びにそれらの類似体(リン脂質、リゾリン脂質、ホスファチジル酸、スフィンゴミエリン、リゾスフィンゴミエリン、セラミド及びスフィンゴシンなど)がある。
PE−共役体及びPS共役体では、リン脂質は、リン脂質極性頭部基の窒素原子で、直接的に又はスペーサ基を介して、共役単量体又は重合体部分に連結している。PC、PI、及びPG共役体では、リン脂質は、リン脂質極性頭部基の窒素又は1つの酸素原子で、直接的に又はスペーサ基を介して、共役単量体又は重合体部分に連結している。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(II)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、アミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、アミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。
ある実施形態では、前記ホスファチジルセリンは、Yに結合され得る。また、Yが存在しない場合は、前記ホスファチジルセリンは、ホスファチジルセリンのCOO−部分を介してXに結合され得る。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(III)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記ホスファチジル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記ホスファチジル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(IV)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(V)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(VI)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(VII)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
本発明のある実施形態では、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジル酸(PA)(Zが存在しない場合)、及びホスファチジルグリセロール(PG)共役体は、本明細書では、化学式(III)の化合物として定義される。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(VIII)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(IX)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記リン脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(IXa)で表される。
ただし
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(IXb)で表される。
ただし
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(X)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記セラミドホスホリル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記セラミドホスホリル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XI)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記スフィンゴシルはアミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記スフィンゴシルと直接的に結合される。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
Yが存在しない場合、前記スフィンゴシルはアミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記スフィンゴシルと直接的に結合される。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XII)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記セラミド、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記セラミド、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XIII)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記ジグリセリル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記ジグリセリル、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XIV)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記グリセロ脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記グリセロ脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XV)で表される。
ただし、
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記グリセロ脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記グリセロ脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XVI)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XVII)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XVIII)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XIX)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XX)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、本発明で使用する化合物は、次の化学式(XXI)で表される。
ただし、
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
R1は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、水素、又は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Zは、存在しない、又は、コリン、リン酸塩、イノシトール若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、生理学的に許容される単量体、二量体、オリゴマー又は重合体であり、当該Xはグリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
前記脂質、Z、Y及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
一般式(A)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII),(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)の構造で表される化合物のいずれかまたは全てにおいて、ある実施形態では、Xはグリコサミノグリカンである。本発明のある実施形態では、前記グリコサミノグリカンは、とりわけ、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、又はそれらの誘導体であり得る。
他の実施形態では、前記グリコサミノグリカンは、二糖類単位(disaccharide units)の重合体である。他の実施形態では、前記重合体内の前記二糖類単位の数はmである。他の実施形態では、mは、2〜10,000の数である。他の実施形態では、mは、2〜500の数である。他の実施形態では、mは、2〜1000の数である。他の実施形態では、mは、50〜500の数である。他の実施形態では、mは、2〜2000の数である。他の実施形態では、mは、500〜2000の数である。他の実施形態では、mは、1000〜2000の数である。他の実施形態では、mは、2000〜5000の数である。他の実施形態では、mは、3000〜7000の数である。他の実施形態では、mは、5000〜10,000の数である。他の実施形態では、mは、2〜10,000の数である。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの二糖類単位は、脂質又はリン脂質部分に結合され得る。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの各二糖類単位は、ゼロ又は1つの脂質又はリン脂質部分に結合され得る。他の実施形態では、前記脂質又はリン脂質部分は、前記二糖類単位のCOOH基に結合され得る。他の実施形態では、前記脂質又はリン脂質部分と前記二糖類単位との間の結合は、アミド結合である。
他の実施形態では、前記コンドロイチン硫酸は、とりわけ、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はそれらの誘導体であり得る。
本発明のある実施形態では、Yは存在しない。本発明の実施形態によれば、随意的な架橋基(スペーサ)Yを作成するための適切な二価基としては、これらに限定されるものではないが、例えば2以上、望ましくは4〜30の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキレン、−CO−アルキレン−CO、−NH−アルキレン−NH−、−CO−アルキレン−NH−、−NH−アルキレン−NH、CO−アルキレン−NH−、アミノ酸、シクロアルキレンがある。どの場合にも、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、−(−O−CH(CH3)CH2−)x(xは、1以上の整数)の鎖内に、2以上、好ましくは2〜30の炭素原子を含む。
本発明の実施形態によれば、従来のリン脂質構造に加えて、本発明に使用する関連誘導体としては、C1又はC2位置においてエステル結合の代わりにエーテル又はアルキル結合を有するように改変されたリン脂質がある。本発明のある実施形態では、アルキルリン脂質誘導体及びエーテルリン脂質誘導体が、本明細書に例示されている。
本発明ある実施形態では、グリコサミノグリカンの糖環は、原型を保っている(intact)。他の実施形態では、原型を保っているとは、閉じていることを意味する。他の実施形態では、原型を保っているとは、天然のままであることを意味する。他の実施形態では、原型を保っているとは、壊れていないことを意味する。
本発明のある実施形態では、本発明に係る化合物における脂質又はリン脂質の構造は、原型を保っている。他の実施形態では、本発明に係る化合物における脂質又はリン脂質の天然の構造は、維持されている。
ある実施形態では、本発明に使用する化合物は、生分解可能である。
ある実施形態では、本発明に係る化合物は、アスピリンに結合された、ホスファチジルエタノールアミンである。ある実施形態では、本発明に係る化合物は、グルタル酸に結合された、ホスファチジルエタノールアミンである。
一部の実施形態では、本発明に使用する化合物は、下記の表1に記載されている。表1は、表1−1、表1−2、表1−3、表1−4、表1−5、及び表1−6から成る。
他の実施形態では、本発明に使用する化合物は、XXIIf−110、XXIIt−110、XXIII−120、XXIV−130、XXV−75、XXV−100、LI−120、XL80、XXVIII−90、XLV−40/100、XLV−10/60、又はXLV−5/60である。
本発明のある実施形態では、本発明に係る、デバイスをコーティングする化合物は、化合物XXII、化合物XXIII、化合物XXIV、化合物XXV、化合物XXVI、化合物XXVII、化合物XXVIII、化合物XXIX、化合物XXX、又はその薬学的に許容される塩であり、生理学的に許容される担体又は溶媒と併用される。本発明の実施形態では、これらの重合体が共役部分として選択される場合は、前記重合体の分子量は、200〜2,000,000ダルトンであり得る。本発明のある実施形態では、前記重合体の分子量は、200〜1000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、200〜1000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、1000〜5000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、5000〜10,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、10,000〜20,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、10,000〜50,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、20,000〜70,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、50,000〜100,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、100,000〜200,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、200,000〜500,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、200,000〜1,000,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、500,000〜1,000,000ダルトンである。他の実施形態では、前記重合体の分子量は、1,000,000〜2,000,000ダルトンである。後述するように、様々な分子量のものが、所望する生物学的効率を有する。
本発明のある実施形態では、低分子量の脂質共役体が、化学式(I)〜(XXI)の化合物として上記に規定された。ここで、Xは、モノサッカリド、ジサッカリド、カルボキシル化ジサッカリド、モノカルボキシル酸、ジカルボキシル酸、サルチル酸塩、サルチル酸、アスピリン、ラクトビオン酸、マルトース、アミノ酸、グリシン、酢酸、酪酸、ジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、脂肪酸、ドデカン酸、ジドデカン酸、胆汁酸、コール酸、ヘミコハク酸コレステリル、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、トリサッカリド、ヘパリンのジサッカリド若しくはトリサッカリド単量体単位、ヘパラン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマチン、デルマタン硫酸、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ポリゲリン(haemaccel)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、又はヒアルロン酸である。
随意的な架橋基Yを作成するための適切な二価基としては、これらに限定されるものではないが、例えば2以上、望ましくは4〜18の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキレン、−CO−アルキレン−CO、−NH−アルキレン−NH−、−CO−アルキレン−NH−、シクロアルキレンがある。どの場合にも、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、−(−O−CH(CH3)CH2−)x(xは、1以上の整数)の鎖内に、2以上、好ましくは2〜18の炭素原子を含む。
他の実施形態では、従来のリン脂質構造に加えて、本発明に使用する関連誘導体としては、C1又はC2位置においてエステル結合の代わりにエーテル又はアルキル結合を有するように改変されたリン脂質がある。前記誘導体は、上記した化学式(VIII)及び(IX)に例示されている。
本発明のある実施形態では、Xは、脂質に共有結合されている。他の実施形態では、Xは、アミド結合によって脂質に共有結合されている。他の実施形態では、Xは、エステル結合によって脂質に共有結合されている。他の実施形態では、前記脂質は、ホスファチジルエタノールアミンである。
細胞表面GAGは、活性酸素種及びフリーラジカル、エンドトキシン、サイトカイン、侵入促進酵素、細胞外マトリックス及び基底膜の分解を誘発及び/又は促進する薬剤、細胞侵襲性、白血球の血管外遊出及び浸潤、走化性などの様々な損傷薬剤及びプロセスから細胞を保護する上で重要な役割を担う。また、細胞表面GAGは、細菌、ウイルス及び寄生虫による感染から細胞を保護する。細胞表面GAGが剥離すると、細胞は微生物との相互作用にさらされ、その後、微生物が細胞内に侵入する。したがって、細胞表面GAGをエンリッチにすることは、有害なプロセスから細胞を保護するのに役立つ。よって、本発明のある実施形態では、PLA2阻害剤が、GAG又はGAG様分子に結合されている。他の実施形態では、これらの脂質共役体は、様々な有害プロセスからの細胞の幅広い保護を提供し、有害な生化学媒体からの細胞保護を必要とする疾患の改善に効果的である。
他の実施形態では、GAG様分子は、とりわけ、負の荷電を帯びた分子で有り得る。他の実施形態では、GAG様分子は、とりわけ、サリチル酸塩誘導体で有り得る。他の実施形態では、GAG様分子は、とりわけ、ジカルボン酸で有り得る。
他の実施形態では、本発明は、その表面の少なくとも一部が、本明細書中に記載された化合物でコーティングされたデバイスを提供する。本明細書中に記載された化合物を含むコーティングは、前記デバイスの表面の一部になされる。ある実施形態では、そのようなコーティングは、とりわけ、薬学的に許容される担体又は賦形剤、及び、明細書中に記載された化合物を含む組成物を有し得る。
本発明で使用する化合物の調製
高分子量脂質共役体の調製は、米国特許第5,064,817号明細書(この引用により本明細書の一部とする)に記載されている。この合成方法は、当業者には容易かつ明確に理解できるであろうように手順を適切に改変することにより、低分子量脂質共役体、例えば共役部分として単量体及び二量体を含む脂質共役体を調製する際にも、同様に適用可能であると考えられる。低分子量脂質共役体の調製は、当該技術分野で公知の方法又は米国特許出願第10/952,496号明細書(この引用により本明細書の一部とする)に記載の方法を用いて実施し得る。実施例10では、代表的な脂質共役体の調製を説明している。
当業者には周知のように、各化合物の合成の確認には、任意の方法を用いることができる。例えば、ある実施形態では、逆相又は正相での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析及び他の方法を用いることができる。
本明細書に記載されているような化合物は、本発明のデバイスの表面の少なくとも一部分に塗布される。
ある実施形態では、本明細書に記載されているような化合物を本発明のデバイスに塗布することは「デバイスコーティング」と呼ばれる。他の実施形態では、化合物がデバイスの表面のいずれかの領域に存在している場合に、「コーティング」と呼ばれる。ある実施形態では、「コーティング」なる語は、所与の塗布に適するであろう、数秒間ないし数年間の範囲であり得るようなある期間に渡って、化合物がデバイスの表面の少なくとも一部分に結合したままであるような塗布を指す。
コーティング
本発明のある実施形態では、「コーティング」なる語は、デバイスの表面の少なくとも一部分上の塗布された化合物を指す。ある実施形態では、「コーティング」なる語は、本明細書に記載されているように、表面の少なくとも一部分、或いは別の実施形態では表面全体、或いは別の実施形態では表面の2つ以上の部分、或いは別の実施形態では2つ以上の表面、或いは別の実施形態では2つ以上の表面の2つ以上の部分などを有する少なくとも1つの化合物の結合を指す。一部の実施形態では、コーティングは、一時的結合或いは別の実施形態では永久結合を指す。
ある実施形態では、結合は、化学的結合による。ある実施形態では、結合は、物理的エントラップメントによる。別の実施形態では、コーティングは、化学的結合及び物理的エントラップメントの両方の結果である。一部の実施形態では、そのような結合は、当業者であれば分かるように、共有結合によって、又は別の実施形態ではイオン結合によって、又は別の実施形態では疎水性相互作用によって、又は別の実施形態ではファン‐デル‐ワールス力などによって、又は任意の適切な相互作用によってなされ得る。
ある実施形態では、結合は、架橋可能なポリマーによってなされる。ある実施形態では、1若しくは複数の官能基を含むアクリルポリマー又はエポキシポリマーなどのホモポリマーが用いられる。一部の実施形態では、結合は、1若しくは複数の官能基を含むポリウレタン、ポリアミド、又はポリエステルなどのコポリマーを用いて達成される。ある実施形態では、官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミン基又はエポキシ基を含む。
ある実施形態では、緩衝剤は、さらに、共有結合、水素結合又はイオン結合によってポリマーと相互に作用することができ、それによって、さらに、コーティングされたデバイスのpH変化に対する抵抗性を長引かせる。ある実施形態では、緩衝剤は、共有結合、水素結合又はイオン結合によって、デバイスの、官能性を持たせた表面又はイオン化表面に結びつけられることもできる。ある実施形態では、親水性ポリマーは、本発明のデバイスのコーティングに含まれる。
ある実施形態では、結合を促進する作用因子は、多糖である。ある実施形態では、それは、ムコ多糖又はグリコサミノグリカンである。他の実施形態では、ヒアルロン酸、ケラチン硫酸、ヘパラン硫酸又はデルマタン硫酸が作用因子として用いられる。
ある実施形態では、デバイスは、デバイスの少なくとも1つの露出面上にコーティングされる。本発明のある実施形態では、コーティングは、当業者には周知のように、デバイスの特定位置において塗布される。ある実施形態では、デバイス表面積の10〜99%がコーティングされる。別の実施形態では、デバイス面積の20〜50%がコーティングされる。
ある実施形態では、デバイスは、規則正しいパターンでコーティングされる。ある実施形態では、「規則正しいパターン」なる語は、繰り返し配列を指す。ある実施形態では、コーティングは、食い違い配列(staggered conformation)になっている。ある実施形態では、コーティングは、点状のパターンで塗布される。ある実施形態では、点は、互いに対して直角をなして配列され、或いは別の実施形態では平行に配列され得る。別の実施形態では、点は、車輪のスポークのように一点から外側に放射状に伸び得る。ある実施形態では、コーティングは、デバイスの内部に塗布される。ある実施形態では、コーティングは、デバイスの外部に、又は別の実施形態ではその組合せで塗布される。別の実施形態では、コーティングは、例えば本明細書に記載されている任意の考えられるデポジションパターンで塗布される。ある実施形態では、コーティングは、デバイスが植え込まれる被検者の体液又は体の細胞と最大限接触するデバイスの領域に塗布される。ある実施形態では、コーティングの位置及び/又は向きは、当業者には周知のように、所望の放出時間の関数として与えられる。
ある実施形態では、コーティングの塗布は、一部の実施形態ではコーティングが継続的又は周期的に塗布されるが、別の実施形態では、コーティングは動的プロセスである場合もある。例えば、所定の期間に、或いはデバイスの適用の寿命中ずっと、コーティングが塗布され得る。ある実施形態では、コーティングは、デバイスに接続された貯蔵器から塗布される。ある実施形態では、コーティングは、遠隔に貯蔵器からデバイス上へ塗布される。ある実施形態では、コーティングは、遠隔に貯蔵器から制御された方法で塗布される。
例えばある実施形態では、デバイスがカテーテルである場合、カテーテルへ所望の量の化合物を送達するカテーテルに点滴溶液が接続することができる。
ある実施形態では、追加の物質が与えられている。ある実施形態では、これらの物質は、さらにコーティングを支持する。ある実施形態では、本発明の化合物によるデバイスのコーティングは、デバイスのコーティングを促進及び/又は支持する接着性の化合物の使用を採用し得る。ある実施形態では、デバイスのコーティングは、そのようなコーティングを容易にするか又は促進するような他の物質を使用することがあり、当業者であれば分かるように、例えば、賦形剤、崩壊剤、安定剤及びその他の使用などが含まれる。
ある実施形態では、コーティングを容易にするために生体接着剤が与えられる。ある実施形態では、生体接着剤は、ポリアミノ酸、ゼラチン、L−DOPA藻類ゲル又は粘膜ゲルを含む。ある実施形態では、蜜ろう又は植物ワックスを含むろう(ワックス)は、接着層を形成することができる。他の実施形態では、コーティングを助けるためにアクリルポリマー及び樹脂が用いられる。
ある実施形態では、コーティングは、抗炎症性又は抗酸化剤効果を更に示す。抗酸化剤効果は例3で実証されたが、ここでは、脂質共役体の投与は、(遊離基及び過酸化水素の生成に関連する)酸化的ストレスに誘発される組織損傷の予防に対する効果的な治療であることが分かった。ある実施形態では、グルココルチコイドは、抗炎症性化合物として用いられ、本明細書中で用いられるコーティングを更に含む。ある実施形態では、グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメサゾン又はヒドロコルチゾンを含む。ある実施形態では、抗炎症性化合物は、本明細書中で用いられるコーティングを更に含み、アスピリンなどの化合物を含むことがあり、それは本明細書に記載されているような脂質又はリン脂質に共役されることがあり、それゆえ本発明の追加化合物を含む。ある実施形態では、適用され得る他の抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、セレン、カロチン、亜鉛、銅、プロアントシアニジン、N−アセチルシステイン、コエンザイムQ10などを含む。
本明細書に例証されているように、コーティングは、図4、図5及び例5、例6に説明されているようなU937細胞又は平滑筋細胞において抗炎症性効果を示す。一部の実施形態では、本発明のデバイスをコーティングすることは、そのようなデバイスの挿入部位で抗炎症性効果を発揮するが、例を挙げれば、本明細書に記載されているようなコーティングされたカテーテルを用いたカテーテル挿入などであり、そのようなコーティングは、挿入部位において炎症を抑制する。一部の実施形態では、コーティングの効果は抗増殖性のものであるので、例えば、コーティングを塗布した結果、コーティングされていないステントと比べて、コーティングされたステントの挿入がそのような脈管構造の細胞の局在的な増殖の減少をもたらす。一部の実施形態では、そのようなコーティングされたデバイスは、コーティングされたデバイス、例えばコーティングされたステントが内部に入れられる脈管構造が閉鎖する可能性の減少に関連する。
ある実施形態では、コーティングは、本明細書中に用いられるために記載されている化合物などの抗感染効果を有する化合物を更に含み得る。ある実施形態では、コーティングは、他の抗感染薬を更に含み、例えば、アミノグリコシド、セファロスポリン、抗真菌薬、殺真菌剤、クロラムフェニコール、マクロライド、エリスロマイシン、ペニシリン、テトラサイクリン、抗ウイルス薬又は抗マラリア薬などを含む抗生物質が、本明細書に記載されているような化合物に加えて、塗布されることがある。
本発明のある実施形態では、コーティングは、抗凝固効果を有する化合物を更に含むことがある。一部の実施形態では、抗凝固薬は、フィブリン溶解酵素物質又は血小板拮抗薬である。ある実施形態では、抗凝固薬は、本明細書に記載されているように脂質又はリン脂質に共役されているヘパリンであり、本発明で用いられる化合物となり得る。
ある実施形態では、コーティングは、キレート化効果を有する化合物を更に含む。一部の実施形態では、キレート化剤は、DIPA酸、EDTA酸、HEDTA酸又はNTA酸である。
一部の実施形態では、デバイスのコーティングは、そのようなデバイスへの細胞接着を減少させる。例えば、本明細書の例7及び図6で実証されているように、脂質共役体は、U937細胞の平滑筋細胞への接着を減らすので、コーティングされたデバイスは、そのような免疫細胞又は他の局所細胞のデバイスへの接着を減らしたり、或いは、一部の実施形態では、例えばコーティングされたステント植込みの部位での脈管構造への免疫細胞接着など、デバイス植込みの部位から遠位部位への接着を減らしたりすることがある。一部の実施形態では、コーティングされた物質はさらに、植込みの部位で炎症を抑制しかつ/又は一部の実施形態ではそのような部位で細胞増殖を抑制する。一部の実施形態では、コーティングされたデバイスは、炎症の抑制、抗増殖効果の発揮、又は局在的な細胞接着の抑制などの所望の効果を高めるように佐薬として作用する化合物をさらに組み入れるか又は当該化合物と同時投与される。
ある実施形態では、作用因子は、抗増殖効果を発揮し、デバイスに組み入れられるか、或いは別の実施形態では、本発明のコーティングされたデバイスの植込みの前に又は同時に投与される。一部の実施形態では、抗増殖薬はタキサンである。ある実施形態では、タキサンはパクリタキセルである。ある実施形態では、抗増殖薬はドキソルビシンである。他の実施形態では、細胞周期の進行を制御するようなサイクリン依存性キナーゼ/サイクリン・ホロ酵素、成長因子及び転写制御因子に干渉する化合物などの抗増殖薬であって、それはコーティングを含むことができる。
ある実施形態では、抗増殖効果は、例えば、例8及び図7に実証されているように、脈管構造の筋肉細胞又は内皮細胞増殖上で特に発揮される。
ある実施形態では、コーティングは、本発明のコーティングされたデバイスと接触する被検者のいずれの細胞にも毒性効果を発揮しない作用因子を含む。一部の実施形態では、コーティングは、毒性をほとんど又は全く示さないコーティング剤の濃度を利用して達成され、それは例えば例9及び図8に示されているようなものであり、そこでは実に最大40,000nMの濃度が毒性効果をほとんど又は全く実証しなかった。
本発明のある実施形態では、コーティングは、本明細書に記載されているような化合物を含み、ここで、化合物は、マトリックス内に取り込まれ、それがデバイスの表面の少なくとも一部分に塗布される。そのような吸着は、ある実施形態では、一部の実施形態では即時の放出、或いは他の実施形態では長期にわたる放出を促進するために、化合物の放出速度に影響する。別の実施形態では、コーティングは、デバイスの塗布された領域上で表面露出されるように吸着された化合物を含む。
ある実施形態では、コーティングは、ポリマー、バイオポリマー又はシリカゲルに吸着される化合物を含む。ある実施形態では、「バイオポリマー」なる語は、再生可能原料に基づくポリマーを指すが、それは、一部の実施形態では容易に微生物によって無害な物質に分解できる(生分解性である)か、或いは他の実施形態では容易には分解できない、例えばセルロースであるか、或いは生分解性の合成ポリマー、例えばポリ乳酸である。別の実施形態では、ポリマーは非生分解性である。
ある実施形態では、デバイスは、ポリマーで更にコーティングすることができる。ある実施形態では、ポリマーの選択は、化合物の放出の動態に影響する。ある実施形態では、ポリマーの選択は、所望の用途に適するようにデバイスの表面特性に影響を及ぼすことである。ある実施形態では、ポリマーは、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリ(ヒドロキシメチル−p−キシリレン−コ−p−キシリレン)’ポリ乳酸、パリレン、フィブリン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリオキシメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルアミド、ポリビニリデン、ポリエステル、ポリエチルシアノアクリレート又はポリアミンである。
ある実施形態では、デバイスは、金属又は金属合金の層を含み、その層にはコーティングがその後で塗布される。ある実施形態では、金属は、ステンレス鋼、金、銀、クロム又はチタンである。ある実施形態では、金属合金は、銀合金、チタン合金、ステンレス鋼合金又はアルミニウム合金である。ある実施形態では、デバイスは、炭素又はシリカの層を含み、その層にはコーティングが塗布される。ある実施形態では、デバイスは、タングステンの層を含み、その層にはコーティングが塗布される。
ある実施形態では、コーティングは、単層からなる。別の実施形態では、コーティングは、複数の層からなり、本明細書に列挙されている物質のいずれをも含むことがある。ある実施形態では、デバイスをコーティングする層は、サイズ及び/又は内容物が一様である。ある実施形態では、層は、サイズ及び/又は内容物が異なる。
ある実施形態では、デバイスは、当業者に公知の方法によってコーティングされる。ある実施形態では、デバイスは、スプレーコーティングされる。ある実施形態では、デバイスは、パンコーティングされる。ある実施形態では、デバイスは、流動層コーティングされる。ある実施形態では、デバイスは、スピンコーティングされる。ある実施形態では、デバイスは、ロールコーティングされる。
デバイス
ある実施形態では、本発明は、その表面の少なくとも一部が、本明細書中に記載された化合物のいずれかによってコーティングされたデバイスを提供する。
ある実施形態では、本発明は、その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むことを特徴とするデバイスを提供する。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、グリコサミノグリカンである。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)である。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、アルギン酸塩である。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、デキストランである。
他の実施形態では、本発明は、その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、前記コーティングが、ポリゲリン(haemaccel)に結合された脂質又はリン脂質部分を含むことを特徴とするデバイスを提供する。
ある実施形態では、本発明は、前記コーティングが、次の化学式(A)で表される化合物を含むデバイスを提供する。
ただし、
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン、リン酸塩、若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、グリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L,Z、Y、及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
Lは、脂質又はリン脂質であり、
Zは、存在しない、又は、エタノールアミン、セリン、イノシトール、コリン、リン酸塩、若しくはグリセロールであり、
Yは、存在しない、又は、長さが2〜30原子のスペーサ基であり、
Xは、グリコサミノグリカンであり、
nは、1〜1000の数字であり、
L,Z、Y、及びXの間の結合はいずれも、アミド又はエステル結合である。
他の実施形態では、Xは、ポリゲリン(haemaccel)である。他の実施形態では、Xは、カルボキシメチルセルロースである。他の実施形態では、Xは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)である。他の実施形態では、Xは、アルギン酸塩である。他の実施形態では、Xは、デキストランである。
ある実施形態では、前記コーティングされたデバイスは、架橋高分子を含む。ある実施形態では、前記高分子は、架橋化合物を使用して、又は、例えばUV架橋などの他の架橋方法を使用して架橋される。ある実施形態では、前記デバイスは、そのデバイスが適している医療措置で使用される。ある実施形態では、本発明に係るデバイスは、血管封鎖又は閉塞を改善又は治療する。本発明のある実施形態では、前記デバイスは、ステント又はカテーテルである。他の実施形態では、前記デバイスは、インプラントである。ある実施形態では、前記デバイスは、歯科インプラント又は整形外科用インプラントである。ある実施形態では、前記デバイスは、薬物を制御放出するためのインプラントである。ある実施形態では、前記デバイスは、骨固定ピンである。ある実施形態では、前記デバイスは、固定プレート又は固定ボルトである。当業者には理解できるであろうが、本明細書で説明したデバイスはいずれも、特にデバイス又はインプラントはいずれも、用途に関わらず、本発明の実施形態として解釈するべきであることに留意されたい。
ある実施形態では、本発明に係るデバイスは、ステントである。ある実施形態では、前記ステントは、支持を提供するために、ルーメン又はチューブ状構造体内に設置される、細い糸、ロッド又はカテーテルである。他の実施形態では、ステントは、グラフト中に身体の開口部若しくは空洞を維持するのに使用される、又は、グラフトを設置後に固定するのに使用されるデバイスである。他の実施形態では、ステントグラフトは、支持金属骨組、及び、自己拡張型の又はバルーンによって拡張可能なグラフト合成材料から成る腔内デバイスである。一部の実施形態では、ステントグラフトは、チューブ、分岐構造、大動脈片側構造を含む、3つの基本構成からなる。一部の実施形態では、ステントは、ジグザグ形のモジュール構造を含む。
ある実施形態では、前記ステントは、身体の管腔を開いた状態に保つために前記管腔内に挿入される、拡張可能な金網である。ある実施形態では、前記ステントは、身体の管腔を開いた状態に保つために前記管腔内に挿入される、拡張可能な中空チューブである。ある実施形態では、前記ステントは、バルーン拡張と併用される。ある実施形態では、前記ステントは、自己拡張型であり、身体の閉塞した管を拡張し支持することができる。ある実施形態では、前記ステントは、薬剤溶出性ステントである。ある実施形態では、前記ステントは、設置後に最大60日の期間、薬剤の放出を持続する。
ある実施形態では、ステントは、薄肉型ステンレス製金属チューブから作成される。ある実施形態では、ステントは、複雑な模様の壁開口部を含む。ある実施形態では、前記ステントは、高分子材料から作成される。一部の実施形態では、前記高分子は、完全に生体吸収性である。ある実施形態では、前記ステントは、可撓性を向上させるために、金から作成される。他の実施形態では、前記ステントは、プラスチック材料、ポリウレタン又はシリコンから作成される。
ある実施形態では、本発明のデバイスは、カテーテルである。ある実施形態では、本発明に係るカテーテルは、体腔、管又は血管内に挿入される中空の可撓性チューブである。ある実施形態では、前記カテーテルは、中心静脈カテーテルである。ある実施形態では、前記カテーテルは、フォーリーカテーテルである。ある実施形態では、前記フォーリーカテーテルは、バルーンを含む。ある実施形態では、前記バルーンは、本発明に係る化合物及び他の適切な薬剤でコーティングされる。他の実施形態では、前記カテーテルは、スワンガンツカテーテルである。一部の実施形態では、前記カテーテルは、前記カテーテルの特定の使用に役立つ当業者に公知の材料から作成される。
ある実施形態では、前記カテーテルは、医療グレードのシリコンゴムを含む。ある実施形態では、前記カテーテルは、ポリウレタンを含む。ある実施形態では、前記カテーテルは、テフロン(登録商標)を含む。一部の実施形態では、カテーテルは、ナイロン、ダクロン、ラテックスを含む。
ある実施形態では、前記カテーテルは、網状ディスク/縫合フランジ構造を含む。ある実施形態では、前記カテーテルは、かん流孔、ダクロンフェルトカフ、又は滞留ビーズを含む。一部の実施形態では、前記カテーテルは、針を含む。
ある実施形態では、本発明に係るデバイスは、歯科インプラントである。ある実施形態では、前記歯科インプラントは、欠損した歯の代わりとして、歯茎又は顎骨に固定された義歯又はブリッジである。ある実施形態では、前記歯科インプラントは、手術によって顎骨に設置される、金属製の根状のデバイスである。ある実施形態では、前記歯科インプラントは、オッセオインテグレーテッド(osseointegrated)・インプラントである。ある実施形態では、本発明に係るデバイスは、整形外科用のインプラントである。ある実施形態では、前記整形外科用のインプラントは、ステムインプラントである。ある実施形態では、前記ステムインプラントは、股関節代替デバイスである。ある実施形態では、このデバイスは、太腿の近位に形成された空洞内に配置されるように構成された細長い湾曲したステムと、前記ステムの上端に位置し顎部となる丸い頭部とを含む。
ある実施形態では、前記医療デバイスは、ガーゼとスポンジを含む。ある実施形態では、前記デバイスは、ガーゼ・スポンジである。ある実施形態では、前記スポンジは、開腹又はラップスポンジである。ある実施形態では、前記デバイスは、包帯又はスワブ(swab)である。
当業者には理解できるであろうが、前記デバイスのコーティングは、本発明に係る化合物の活性を維持することに留意されたい。
本発明のデバイスの使用方法
ある実施形態では、本発明は、コーティングされたデバイスを提供する。ここで、コーティングは、本明細書に記載の任意の実施形態を含む。ある実施形態では、本発明は、医学用途において、本明細書に記載されているようなコーティングされたデバイスを使用可能にする。
ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、アテローム性動脈硬化に誘発される冠動脈疾患を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、アテローム性動脈硬化に誘発される脳血管疾患を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、アテローム性動脈硬化に誘発される一過性脳虚血発作を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、アテローム性動脈硬化に誘発される末梢動脈疾患を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、アテローム性動脈硬化に誘発される勃起機能障害を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、炎症を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、増殖を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防する。ある実施形態では、デバイス上のコーティングによって、細胞接着を、抑制及び/又は阻害及び/又は予防及び/又は治療する。
ある実施形態では、本発明は、対象の血管傷害又は血管閉塞を予防、抑制又は治療する方法であって、その表面の少なくとも一部に、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むコーティングを有するデバイスを、前記血管に適用するステップを含む方法を提供する。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、カルボキシメチルセルロースである。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、グリコサミノグリカンである。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、ヒドロキシエチルスターチ(HES)である。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、アルギン酸塩である。他の実施形態では、前記ポリピラノースは、デキストランである。
他の実施形態では、前記コーティングは、ポリゲリン(haemaccel)に結合された脂質又はリン脂質部分を含む。
ある実施形態では、本発明のコーティングされたステントは、食道において用いられる。ある実施形態では、本発明のコーティングされたステントは、気管において用いられる。ある実施形態では、本発明のコーティングされたステントは、心血管系、泌尿系、泌尿生殖器系又は胆管系において用いられる。
ある実施形態では、ステントの経皮的デリバリーは、デバイスをカテーテル上へ圧縮するか或いはそれをシース内へ押し込むことによって可能となる。ある実施形態では、ステント植込みは、肺動脈狭窄、縮窄、肺及び全身の静脈閉塞、閉塞の同種移植片及び導管に適用される。
ある実施形態では、血管内ステントは、動脈及び静脈の両方の開通性を維持する。ある実施形態では、ステントは、アテローム性動脈硬化によって狭くなりすぎた動静の開存を維持するために用いられる。ある実施形態では、ステントは、動静脈瘻を作り出すために用いられる。ある実施形態では、本発明のコーティングされたステントは、末梢血管疾患に起因する動脈閉塞の治療に用いられる。アテローム性動脈硬化の病因における顕著な特徴は、酸化低比重リポタンパク質などの血液リポタンパク質の蓄積である。一部の実施形態では、本発明のステントのコーティングは、図2B及び図2Bに示されるようなマクロファージによる酸化LDL取込みの阻害に用いられる。一部の実施形態では、本発明のコーティングされたステントは、腎血管性高血圧の治療、血液透析アクセスの維持、頚動脈疾患又は冠動脈疾患の治療に用いられる。
ある実施形態では、コーティングされたステントは、消化器系において用いられる。ある実施形態では、コーティングされたステントは、腸において用いられる。ある実施形態では、ステントは、一時的人工肛門形成後に腸を再び取り付けるために用いられる。ある実施形態では、ステントは、結腸内の閉塞を解放するために用いられる。
ある実施形態では、コーティングされたステントは、尿管へ入れられ、腎臓がきちんと排泄できるように尿管の開存を維持する。ある実施形態では、尿管のコーティングされたステントは、長期ベース(数ヵ月間ないし数年間)又は短期ベース(数週間ないし数ヵ月間)で尿管閉塞をバイパスするために留置される。ある実施形態では、周りで治癒が起こる場合があるような型を提供するため、或いは尿の流れを漏れの領域から逸らすために、尿路の観血外科手術手順への補助として短期ステント植込み術が用いられることがある。
ある実施形態では、コーティングされたステントは、呼吸器系において用いられる。ある実施形態では、コーティングされた喉頭又は気管のステントが用いられる。ある実施形態では、コーティングされたステントは、内腔虚脱のための第1の治療として、又は喉頭又は気管の再建効果を安定化して虚脱を予防するために用いられる。ある実施形態では、コーティングされたステントは、喉頭及び気管に個々に用いられることができ、或いは、交互に又は同時に用いることができる。
ある実施形態では、胆管の閉塞を克服するために胆管用のコーティングされたステントが用いられる。ある実施形態では、コーティングされたステントは、ボールペンの替芯ほどの厚さで、胆汁が排泄されるように胆管を通る通路をきれいにするために用いられる。ある実施形態では、コーティングされたステントは、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法の一部として胆管内に挿入される。
ある実施形態では、コーティングされたカテーテルは、流体を通過させるか又は通路を拡張させる。ある実施形態では、中心静脈カテーテルは、低い合併症のリスクで濃厚溶液が注入されることを可能にする。別の実施形態では、中心静脈カテーテルは、中心静脈圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧を含む特別な血圧のモニタリングを可能にする。ある実施形態では、中心静脈カテーテルは、心送血量及び血管抵抗の推定に用いることができる。ある実施形態では、カテーテルの近位端は、長期にわたって与えられる注入のためのチャンバに接続され得る。別の実施形態では、静脈カテーテルが短期間又は長期間挿入されることがある。
ある実施形態では、コーティングされたフォーリーカテーテルが、膀胱端部にバルーンを有する。ある実施形態では、フォーリーカテーテルは膀胱内に挿入され、バルーンは、カテーテルが抜けずに膀胱内に留置されるように(空気又は流体で)膨らませられる。ある実施形態では、バルーンはコーティングされるので、薬物がバルーンから1回量で血管壁へ直ちに送達される。
ある実施形態では、コーティングされたスワンガンツカテーテルが、下大静脈又は上大静脈から挿入される。ある実施形態では、スワンガンツカテーテルは、フローダイレクトである。ある実施形態では、スワンガンツカテーテルは、バルーンを利用してそれを心臓に向ける。ある実施形態では、コーティングは、抗増殖効果を有する。例えば、図1は、ウシ大動脈平滑筋細胞上で脂質共役体の抗増殖効果を実証した。ある実施形態では、スワンガンツカテーテルは、一時的に膨脹して動けなくなったバルーンの前で肺楔入圧と呼ばれる圧力を測定するために用いられる。
ある実施形態では、本発明の化合物は、ウシ胎児血清(FBS)が添加されかつ/又はインターロイキン1(IL−1)、ウシ胎児血清(FBS)及び血小板由来成長因子(PDGF)の混合物が添加されている平滑筋細胞(SMC)の抗増殖効果を有する。
一部の実施形態では、脂質共役体の投与は、観血的動脈処置の過程で投与されるとき、予防効果と急性期の治療効果の両方を有する。ある実施形態では、脂質共役体は、以下に例1で例証するように(表2を参照)、バルーン血管形成術中に有用である。
ある実施形態では、コーティングされたインプラント材は、1若しくは複数の歯を、境を接する歯に影響を及ぼすことなく交換するために用いられる。別の実施形態では、コーティングされたインプラント材は、架工義歯を支持し、可撤局部義歯を不要にするために用いられる。ある実施形態では、コーティングされたインプラント材は、義歯のための支持を与え、それをより確実かつ快適にするために用いられる。一部の実施形態では、コーティングされたインプラント材は骨内膜又は骨膜下インプラントである。
ある実施形態では、コーティングされた骨固定ピン、くぎ、ねじ又はプレートが、肢の外で鋼の棒に取り付けられた骨を介してこれらのアセンブリの使用を必要とする外部固定のために用いられる。ある実施形態では、外部固定は、横骨折を安定させるために最初に用いられる。
ある実施形態では、外傷の治療に、ガーゼ、スポンジ、包帯又は綿棒が用いられる。一部の実施形態では、外科手術中にこれらの医療用具が用いられる。ある実施形態では、創傷の治癒の過程中にこれらの用具が用いられる。他の実施形態でこれらの用具を利用するものについては、当業者には公知であろう。
ある実施形態では、本発明のデバイスは、サイトカインの過剰産生の結果生じるか或いはサイトカインの過剰産生によってさらに悪化した病状を治療するために用いられる。一部の実施形態では、デバイスそれ自体の適用は、サイトカインの過剰産生を、そして一部の実施形態では後に起こる組織損傷を、又は別の実施形態ではデバイス上での細胞の異常増殖、又は閉塞又は閉鎖を刺激し、デバイスの効率を悪くするか或いは別の実施形態ではデバイス無効にする。一部の実施形態では、本明細書に記載されているようなデバイスのコーティングは、予防するか或いは緩和する。
例えば一部の実施形態では、腫瘍壊死因子(TNF)αレベルは、デバイスが植え込まれている被検者において高く、ある実施形態では、化合物によるデバイスのコーティングは、本明細書に記載されているように、被検者のTNFのレベルを低下させる。
ある実施形態では、本発明の方法に従って用いるためのデバイスは、酸化損傷可能にする参加を治療するか又は回復させるが、それは、ある実施形態では、本発明のコーティングされたデバイスを利用する医療措置によって引き起こされる場合があるような微生物感染などの微生物感染によって引き起こされるか又は悪化する場合がある。
疾患の様々な動物及び細胞モデルにおける脂質共役体の投与は、顕著かつ予想外の細胞保護的な効果をもたらし、それは、本明細書に例証されているように、本発明のコーティングされたデバイスを利用する医療措置によって引き起こされる場合があるような病原体感染に関連する疾患の治療に役立つ。例えば、本明細書に例証されているような脂質共役体は、敗血症の細胞及び動物モデルにおいて、敗血症のラットの生存を増加させ、TNF−α及びIL−6 mRNA及びタンパク質レベルを低下させ、sPLA2−IIA及びiNOS mRNAを減少させ、ICAM−1タンパク質を減少させ(米国特許出願第10/627,981号、米国特許出願第10/919,523号、及び米国特許出願第10/952,496号、及びこれらに引用されている他の出願(これらはこの引用によって本明細書の一部とする)の明細書に例証されているように)、PLA2酵素活性を用量依存的に阻害した。
ある実施形態では、本発明で用いるための化合物はまた、sPLA2発現を減少させる。実験4.1は、化合物XXIIのPLA2酵素の阻害への絶大なる抗炎症性効果を実証する。他の炎症性メディエータは、例えば、米国特許出願第10/952,496号明細書(この引用によって本明細書の一部とする)に記載されているようなものである。
ある実施形態では、本発明で用いるための化合物はまた、MCP−1発現を減少させる。MCP−1は、慢性関節リウマチ(RA)の人々の関節で発見されており、そこで、マクロファージを補充し、関節の炎症を永続化させる役目を果たし得る。MCP−1は、腎臓の炎症を警告する徴候として狼瘡の人々の尿において高いことが分かっている。
ある実施形態では、本発明で用いるための化合物は、TNF発現も減少させる。TNFは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、全てが急性期反応を刺激するサイトカインのグループのメンバーである。TNFは、アポトーシス細胞死、細胞増殖、分化、炎症、腫瘍形成及びウイルス複製を引き起こす。
ある実施形態では、本発明で用いるための化合物は、細胞接着を減少させる。細胞接着は、炎症の徴候であることがある。本発明で用いるための化合物は、U937−SMC細胞の接着を減少させる。
本発明のデバイスをコーティングする方法
ある実施形態では、pH緩衝剤、ポリマー及び架橋化合物、並びにもしあれば生物活性剤などを溶剤に溶解又は分散することによって、コーティング溶液が先ず調製される。一部の実施形態では、溶剤は、有機溶剤、水性溶剤、又は2若しくはそれ以上の溶剤の混合物であり得る。ある実施形態では、溶液はその後デバイスの表面上へ塗布される。異なる実施形態において、溶液は、浸漬、吹付け又は塗布によって塗布することができる。ある実施形態では、ポリマーの架橋は、溶剤がコーティング中に存在するとき、又は、溶剤がコーティングから除去された後のいずれかで起こる。ある実施形態では、コーティング溶液は、溶剤を用いずに緩衝剤及び架橋化合物をポリマーに溶解することによって調製されることがある。ある実施形態では、溶液が支持部材の表面上へ塗布された後、ポリマーは架橋される。
本実施例で用いられている主な省略形は、下記の通りである。
PE=ホスファチジルエタノールアミン
HA=ヒアルロン酸
Cpd=化合物
化合物XXII=HAに共役したPE
化合物XXIII=HAに共役したジミリストイルホスファチジルエタノールアミン
化合物XXIV=ヘパリンに共役したPE
化合物XXXV=コンドロイチン硫酸(CSA)に共役したPE
化合物XXVI=カルボキシメチルセルロース(CMC)に共役したPE
化合物XXVII=ポリゲリン(ヘマセル)に共役したPE
PE=ホスファチジルエタノールアミン
HA=ヒアルロン酸
Cpd=化合物
化合物XXII=HAに共役したPE
化合物XXIII=HAに共役したジミリストイルホスファチジルエタノールアミン
化合物XXIV=ヘパリンに共役したPE
化合物XXXV=コンドロイチン硫酸(CSA)に共役したPE
化合物XXVI=カルボキシメチルセルロース(CMC)に共役したPE
化合物XXVII=ポリゲリン(ヘマセル)に共役したPE
下記の実施例で使用される化合物は、米国特許出願第10/952,496号明細書の記載されているようにして調製した。
≪実施例1:カテーテル法などの侵襲性外科処置のための予防≫
前記脂質共役体(脂質複合体)は、後述するように、アテローム性動脈硬化症、狭窄及び虚血/再かん流傷害によって生じる再狭窄などの循環器疾患の治療及び予防に効果的である。また、前記脂質共役体は、血管器官の処置を含む侵襲性外科処置(特に、血管内カテーテル挿入)の過程で生じ得る狭窄病変の形成の予防に効果的である。
血管の平滑筋細胞(smooth muscle cell:SMC)の増殖が血管狭窄を引き起こすプロセスであるので、このプロセスに対する前記脂質共役体の効果を評価した。
実験1.1〜1.3は、トロンビンによって刺激されていない又は刺激されたウシ大動脈平滑筋細胞の増殖に対しての、及びヒトの静脈平滑筋細胞の増殖に対しての前記脂質共役体の抗増殖効果を実証する。
実験1.1:刺激していない細胞に関しては、ウシ大動脈平滑筋細胞を、化合物XXII−40又は化合物XXII−80(PEでエンリッチされた)を含む又は含まない10%ウシ胎仔血清含有DMEMに、7×103細胞/ウェルとなるように播種し(24個のウェルに)、72時間培養し、コールターで数をカウントした(図1A)。
実験1.2:刺激された細胞に関しては、ウシ大動脈平滑筋細胞を、トロンビン、ウシ胎仔血清含有DMEM、前記脂質共役体、又はそれらの組み合わせのいずれかと共に6時間前培養した後、上記の条件下で48時間培養した。細胞増殖は、チミジン取り込み量として表される(図1B)。
実験1.3:ヒト伏在静脈由来のSMCを、5%のウシ胎仔血清及び5%のヒト血清を含有するDMEMに、8×104細胞/5mm培養皿となるように播種した。1日後、前記細胞を洗浄し、前記脂質共役体(化合物XXIV)又はそのポリマー担体(ヘパリン、化合物XXIVと同じ濃度で)を含有しない(対照)又は含有する、同一の培養培地で培養した。5日後、前記細胞を採取し(トリプシン処理によって)、数をカウントした(図1C)。各データは、実験を3回繰り返して得られたデータの平均値±標準誤差である。繰り返された実験の結果には再現性があった。p<0.005。
実験1.4:虚血/再かん流傷害:上述したように、虚血及び再かん流によって生じた傷害は、カテーテル法、手術、又は血管閉鎖及び閉塞を伴う他の処置の後に発生する狭窄の主要原因である。前記脂質共役体がこの傷害を改善する能力を実証するために、血管に対しての虚血/再かん流傷害を示す白血球の付着及び血管外遊出の抑制についての、前記脂質共役体の能力を試験した。ローダミンを静脈注射することによって、白血球を標識した。ラットの露出した精巣挙筋を90分間虚血させ(in situ)、その後、再かん流させるために血流を回復させた。血管壁に付着した蛍光標識された白血球(図1D)、及び血管外領域に遊出した白血球(図1D)を録画し、再かん流期間の所定の時点で数をカウントした。虚血発生の40分前及び10分前に、前記脂質共役体(10mg/体重100g)を静脈注射した。図1Dは、前記脂質共役体の投与によって、虚血/再かん流によって発生する白血球付着及び血管外遊出が効果的に抑制されることを示す。各データは、化合物XXIIで処理した5匹のラット及び化合物XXIVで処理した3匹のラットから得られた平均値±標準誤差である。P<0.005。
実験1.5:血管壁の内皮細胞への損傷の他の表示としては、酸素ラジカル、脂質メディエータ又はサイトカイン(虚血/再かん流傷害発生後に生成される)によって活性化された赤血球(red blood cell:RBC)の内皮細胞への付着がある。RBCの付着は、血管閉塞をさらに促進する。前記脂質共役体の内皮細胞に対する保護効果を実証するために、ウシ大動脈内皮細胞を、腫瘍壊死因子(TNF−α)、ホスホリパーゼA2、アラキドン酸(ArAc)、又は過酸化水素に曝し、その後、細胞損傷に関して分析した(損傷していない内皮細胞を指標として、赤血球の付着から判定した)。ウシ大動脈内皮細胞(Bovine aortic endothelial cell:BAEC)を、5μMの化合物XXVI又は20μMの化合物XXIXのいずれかと共に30分間前培養し、その後、洗浄し、各濃度のTNF、ArAc、又はPLA2で18時間刺激した。H2O2による刺激に関しては、前記細胞をH2O2で20分間処理し、その後、洗浄し、対照培養培地で18時間培養した。前記BAECを洗浄し、ヒト赤血球(RBC)と共に30分間洗浄した。前記培養液を洗浄し、前記BAECに付着し続けているRBCの数を顕微鏡でカウントした(図1E)。
実験1.6:ラットにおけるバルーン誘発性狭窄:ラットの頸動脈におけるバルーン誘発性狭窄に対する、脂質共役体の全身投与又は動脈内投与の有効性について試験した(表2)。損傷の1日前及び1〜2時間前のラットを、10mg/100g体重の化合物XXII若しくは化合物XXVI含有PBS、又はPBSのみの腹腔内注射(前記化合物の投与量が)で前処理した。損傷は、標準フォガーティ(Fogarty)カテーテルを使用して発生させた。左総頸動脈及び外頸動脈の末端部を、首で正中切開によって露出させた。外頸動脈を通して導入した2Fのフォガーティバルーンカテーテル(Baxter, Santa Anna, CA)によって、左総頸動脈の内皮を剥離した。若干の抵抗を生成するために、生理食塩水で十分に膨張させたバルーンと共に、カテーテルを3回通した。損傷後、ラットに10mg/100g体重の化合物XXII、化合物XXVI、又は賦形剤を3日間に渡って毎日注射し、その後、1日おきに注射した。損傷後に、合計で8回の脂質共役体注射を行った。
動脈内注射に関しては、損傷後にカテーテルを取り除いた際に、シリンジに連結したポリエチレン(PE−10)チューブを総頸動脈に導入した。結紮糸及び血管クランプをスライドさせることによって、総頸動脈の断片を一時的に単離した。10ナノモルの化合物XXVIを含有する約50μlの溶液を、単離した動脈の断片に注入し、15分間静置した。その後、薬剤溶液を抜き、外頸動脈を連結した。
14日目にラットを屠殺し、それらの動脈を標準的な方法に従って処理した。ラットの半数にブロモデオキシウリジン(bromodeoxyuridine:BrdU)を注射し、それらの動脈をホルマリン及びトライトンで固定し、BrdU染色のために処理した。内膜(N)の中膜(M)に対する面積比を組織学的に測定することによって、内腔狭窄のパーセント(損傷部位での)を求めた(表2)。
表2:脂質共役体による、ラットにおけるバルーン誘発性狭窄の抑制
これらの実験は、例えば、血管の平滑筋細胞の増殖、リポタンパクの取り込み、酸化的ストレス、並びに虚血及び再かん流のモデルにおける白血球活性化の抑制などの複数の機序によって、脂質共役体の投与が循環器疾患の治療に対して効果的であることを実証する。脂質共役体の投与は、侵襲性動脈処置(特に、バルーン血管形成)の過程で投与する場合は、予防及び救急治療の両方の利益になる。
≪実施例2:循環器疾患≫
前記脂質共役体は、虚血性血管損傷、アテローム性動脈硬化、及び再かん流傷害の治療に効果的である。これは、実施例2.1〜2.3で実証される。
アテローム性動脈硬化の発病機序における顕著な特徴としては、血管壁の内側を覆っている細胞への血液リポタンパク質(例えば、酸化した低比重リポタンパク質(oLDL))の蓄積、並びに、血管壁の内側を覆っている及び内部の細胞(例えば、平滑筋細胞)の増殖がある。その結果生じるアテローム性動脈硬化症部位での血管内腔狭窄は、様々な程度の組織虚血を引き起こす。虚血性イベントは自然発生的に又は医療処置によって改善可能であるが、組織損傷のプロセスは、前述の虚血組織が酸化的損傷などの幾つかの機序によって損傷する危険性が依然としてある再かん流傷害の段階まで存続し得る。
実験2.1:LDL−PLA2。内因性LDLホスホリパーゼA2(PLA2)はLDL−リン脂質を加水分解し、走化性を有し、LDLの酸化及び血管壁細胞によるLDLの取り込みを促進するリゾリン脂質を形成する。脂質共役体がLDL関連のPLA2の活性を阻害することを実証するために、各濃度の化合物XXII、化合物XXIV又は化合物XXVIの存在下又は非存在下で、LDL(0.1μM)を37℃で15分間インキュベートした(図2A)。0時間に、分散液にC6−NBD−PC(0.5μM)を添加した。これにより、蛍光強度が瞬時に増大した(脂質コアにNBDが取り込まれたため)。LDLを単独で培養した場合は、蛍光強度は、経時的に減少した。これは、LDLと結合したPLAの加水分解(及び、その後の、得られたNBDカプロン酸のLDL粒子から溶媒への放出)が原因である。LDLを化合物XXII、化合物XXIV又は化合物XXVIの存在下で培養した場合は、この経時的な減少は、完全に又は部分的に抑制された。
実験2.2〜2.3:前記脂質共役体が、培養されたマクロファージによる又は全動物におけるLDLの取り込みを阻害することを実証するために、ヒトLDL(従来の浮遊法によって単離した)にCu2+誘発性酸化を行い、125Iで標識した。融合性J774マクロファージを、100μMの125I−oLDL及び各濃度の脂質共役体と共に、0.5%BSA含有PBS(PH=7.4)で3時間培養した。その後、前記細胞をPBS/BSAで4回洗浄し、0.1NのNaOHで30分間溶解させた。前記細胞溶解物を回収し、放射能カウンターによって125Iの量を求めた(表3)。
表3:化合物XXII及び化合物XXIVによる、マクロファージにおける酸化されたLDLの取り込みの阻害
実験2.3:インビボでのoLDLの取り込み:200gのラットに、125Iで標識された250ナノモルのCu2+誘発性酸化型LDL、及び200ナノモルの化合物XXIIを含有する0.4mlの生理食塩水を静脈注射した。血液サンプルを各時間間隔で採取し、血漿中の125Iの放射能をカウントした(図2B)。初期のクリアランス率は、1分後に採取した血液サンプルにおける125Iの放射能を0時間の血液サンプルにおける125Iの放射能と比較したときの変化量として計算した(図2B)。
これらの実験は、脂質共役体の投与が、アテローム性動脈硬化などの循環器疾患の治療に効果的であることを実証する。前記脂質共役体の循環器疾患の治療に対する効果は、前記脂質共役体が平滑筋細胞の増殖を抑制し、LDLを酸化的損傷から保護することを示す後述する実験7.1〜7.3及び実験9.3によってさらに裏付けられる。
≪実施例3:抗酸化治療≫
過酸化物のフリーラジカルの生体組織への有害作用は、酸化的損傷として知られている。細胞膜がこの損傷プロセスの標的になると、膜に機能障害が生じ膜は不安定になる。血液タンパク質、特に血液脂質タンパク質への酸化的損傷は、血管系の内側を覆っている細胞への前記タンパク質の蓄積をもたらし、その結果、アテローム性動脈硬化が促進される。実際に、細胞の酸化的損傷は、加齢プロセス又は老化の原因となる主要な機序である。
タンパク質又は細胞膜の酸化的損傷に対する脂質共役体の効果を測定するために、(a)グルコース酸化酵素(GO)によって(PLA2などのさらなる膜を不安定にする物質の存在下又は非存在下で)、又は(b)銅などの2価陽イオンに曝すことによって生成された過酸化水素(H2O2)に組織を曝した。
実験3.1〜3.3は、酸化的損傷から細胞の保護についての脂質共役体の能力を実証する。これは、アラキドン酸及び低分子量細胞内物質の両方についての、前記細胞の保持から判断される。
実験3.1:融合性のBGM(ミドリザル腎臓上皮)細胞を、3H−アラキドン酸で標識した。GO(H2O2生成源)及びPLA2(0.5U/ml)で処理する30分前に、前記細胞を化合物XXVIで30分間処理した(図3A)。
実験3.2:BGM細胞を35SO4で一晩標識した。
前記細胞を、PBSと共に、DMEM(10mg/mlのBSAを含有)で4回洗浄した。前記細胞を、その後、GO含有DMEMで90分間培養し、培養培地を回収し、35S放射能をカウントした。化合物XXVIによる処理に関しては、GO導入前に、細胞を3又は10μMの化合物XXVIと共に30分間培養した。データは、実験を5回繰り返して得られた結果の平均値±標準誤差である。*p<0.005、**p<0.001(図3B)。
実験3.3は、血液リポタンパク質の酸化の阻害についての、脂質共役体の能力を実証する。様々な濃度の化合物XXII又はヒアルロン酸の存在下及び非存在下で、低比重リポタンパク質(LDL、0.1μM)及び/又はヒドロペルオキシド(LOOH)を37℃で培養した。0時間のときに、5μMのCuCl2を前記分散液に添加し、酸化産物についてこの混合液を245nmで継続的にモニターした(図3C)。245nm(OD単位)における吸光度が、時間の関数として示されている。
これらの実験は、脂質共役体の投与が、上述したように、リポタンパク質の酸化の阻害、アラキドン酸の放出の阻害、及び赤血球膜などの細胞膜の完全性の保持(GAG分解の阻害)などの複数の機序によって、酸化的ストレス(フリーラジカル及び過酸化水素の生成に関連する)によって引き起こされる組織損傷の予防に効果的であることを実証する。酸化的ストレスによって引き起こされる組織損傷の保護に対して脂質共役体は効果的であるので、脂質共役体は結膜炎の治療に有用となり得る。
≪実施例4:PLA2阻害≫
実験4.1:PLA2酵素は、細胞膜上でリン脂質に結合された脂肪酸の加水分解を触媒する。これらの反応によって放出される主要な代謝産物であるアラキドン酸は、リポキシゲナーゼ及びシクロオキシゲナーゼによって媒介される他の酵素反応の前駆体である。これらの反応は、インビボで炎症に対して計り知れない影響を与えるプロスタグランジン及びロイコトリエンを生成する。したがって、PLA2阻害剤は、反応下流の炎症因子の生成を阻害する能力によって、炎症を抑制することができる。
これらの実験は、インビトロ蛍光分析における、コブラヘビ(Naja Naja Snake)の毒PLA2酵素に対しての、化合物XXII、化合物XXV、化合物XXX、及び化合物LXXXVIIIの阻害効果を測定すべく設計された。PLA2酵素と、PLA2酵素基質である2−(6−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1、3ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサノイル−1−ヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(NHGP)との反応により、蛍光光度計を使用して検出することができる産物が生成される。吸光度の減少は、PLA2酵素の阻害を示す。
<方法>
化合物XXII及び化合物XXVを、D−PBSで溶解及び希釈し、0.625、0.125、0.25、0.5、及び1mg/mlの最終濃度で試験した。化合物XXX及び化合物LXXXVIIIを、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、D−PBSで希釈し、0.01、0.1、及び1mg/mlの最終濃度で試験した。1mMのNHGPを、最終濃度が1μMになるようにD−PBSで希釈した。陽性対照であるメファナム酸(Sigma、M−4267)を、0.1mg/mlの最終濃度で試験した。PLA2酵素は、コブラヘビの毒素(Sigma、P6139)に由来するものであり、5ユニット/mlの最終濃度で試験した。反応は、200μlの溶液で行い、基質を加えることによって開始した。蛍光強度は、反応開始直後に読み取り、その後、1分ごとに30分間、計30回読み取った。蛍光光度計は、次のように設定した。励起450/50、発光530/25、ゲイン:50。
<結果>
陽性対照としての0.1mg/mlのメファナム酸はPLA2酵素を41%阻害するのに対して、化合物XXIIは、0.125、0.25、0.5、及び1mg/mlの濃度で、PLA2酵素をそれぞれ37%、42%、71%、及び98%阻害した。化合物XXVは、用量反応を示さなかったが、0.625、0.125、0.25mg/mlの濃度で、PLA2酵素をそれぞれ20%、30%、26%阻害した。化合物LXXXVIII及び化合物XXXは、超音波処理後でさえDMSOに溶解させるのは困難なので、この分析で測定することはできなかった。
したがって、化合物XXIIは、用量依存的にPLA2酵素を阻害する。これは、化合物XXIIが抗炎症剤として作用する能力を示す。化合物XXIIの抗炎症効果を示す他の実験は、2004年11月17日に出願された米国出願第10/989,607号明細書(この参照により、本明細書に組み込まれるものとする)に記載されている。
脂質共役体が、閉塞性呼吸器疾患、腸疾患、多発性硬化症、皮膚疾患、循環器疾患などの疾患の治療、及び、侵襲性外科的処置による疾患、侵襲的細胞増殖性疾患、肺の損傷、臓器移植拒絶反応などの予防に効果的であることを示す他の例は、米国特許出願第10/627,981号明細書、米国特許出願第10/919,523号明細書、及び米国特許出願第10/952,496号明細書に記載されている(この参照により、本明細書に組み込まれるものとする)。
≪実施例5:平滑筋細胞(SMC)に対する脂質共役体の抗炎症効果≫
<方法>
約20mg/mlの脂質共役体(その合成法は、米国特許出願第10/952,496号明細書(この参照により、本明細書に組み込まれるものとする)に記載されている、及び/又は、以下にさらに説明する)の溶液は、緩衝液中に乾燥材料を混合して、前記溶液を完全にボルテックスし(好ましくは温めながら)、その後、より透明で均質な懸濁液を得るために、槽内でキャップホーン超音波装置(cap-horn sonicator)を使用して超音波処理することによって調製した。或いは、前記懸濁液を、懸濁液を温かいプレート(最大で50℃)上で、均質でほぼ透明な懸濁液が得られるまで攪拌した。希釈した溶液は、殺菌するために、フィルタ処理することができる。
ATCCから購入したヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)を、2mg/mlの脂質共役体(約40μMに相当する)と共に培養した。
<結果>
HCASMCによるMCP−1の生成(炎症の指標となる)に対する、所定の脂質共役体のIC50(50%最大阻害濃度)を分析した。インターロイキン−1(IL−1)及び血小板由来増殖因子(PGDF)の存在下又は非存在下で、細胞を1%ウシ胎仔血清(FBS)含有培地で培養した。この実験は、本発明の代表的な化合物を使用して行った。IC50の結果を表4に示す。また、平滑筋細胞(SMC)に対する脂質共役体の効果を示す代表的なグラフを図4に示す。
≪実施例6:U937細胞に対する脂質共役体の抗炎症効果≫
<方法>
脂質共役体は、実施例5で説明したようにして調製した。ATCCから購入したU937細胞を、2mg/mlの脂質共役体(40μMに相当する)と共に培養した。
<結果>
U937でのTNF生成に対する脂質共役体のIC50値を求め、炎症の度合いを表わすのに使用した。炎症刺激リポ多糖体(LPS)及びホルボール12−ミリスチン酸13−アセテート(PMA)の存在下で、U937細胞を、濃度を段階的に増加させた各脂質共役体と共に培養し、IC50を求めた。この実験は、本発明の代表的な化合物を使用して行った。その結果を表5に示す。また、U937に対する脂質共役体の効果を示す代表的なグラフを図5に示す。
≪実施例7:U937のSMC細胞への付着に対する脂質共役体の阻害効果≫
<方法>
脂質共役体は、実施例5で説明したようにして調製した。
U937及びHCASMC(5F0726)の共培養を用意し、LPS及びPMAの存在下で、前記培養に、濃度を段階的に増加させた各脂質共役体を加えた。平均付着比率を推定した。
<結果>
平均付着比率は、炎症抑制の測定に使用されるリポ多糖体(LPS)及びホルボール12−ミリスチン酸13−アセテート(PMA)の存在下での脂質共役体の濃度に対する関数として評価した。この実験は、本発明の代表的な化合物を使用して行った。その結果を表6に示す。また、U937細胞の平滑筋細胞への付着に対する脂質共役体の阻害効果を示す代表的なグラフを図6に示す。
≪実施例8:平滑筋細胞(SMC)に対する脂質共役体の抗増殖効果≫
<方法>
脂質共役体は、実施例5で説明したようにして調製した。
IL−1及びPDGFの存在下又は非存在下でHCASMC(5F0726)を1%FBSと共に培養し、濃度を段階的に増加させた各脂質共役体の存在下での細胞の増殖を評価した。
<結果>
細胞の蛍光変化を、増殖の減少の度合いとして見なした。結果を表7に示す。また、平滑筋細胞(SMC)の増殖に対する脂質共役体の効果を示す代表的なグラフを図7Aに示し、インターロイキン−1(IL−1)及び血小板由来増殖因子(PGDF)と共に培養した場合のグラフを図7Bに示す。
≪実施例9:脂質共役体の毒性≫
<方法>
脂質共役体は、実施例5で説明したようにして調製した。SMC細胞に対しての脂質共役体の毒性を、顕微鏡によって観察した。
<結果>
ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)に対しての、本発明の代表的な共役体の毒性を評価した。その結果を表8に示す。また、平滑筋細胞に対しての脂質共役体の毒性を示す代表的なグラフを図8に示す。
≪実施例10:代表的な脂質共役体の合成経路の具体例≫
<HY−PE(ヒアルロン酸とホスファチジルアミンとの共役体)の調製>
ヒアルロン酸(HY)を切断し、その15gを9Lの水に溶解させた。150mgのFeSO4−7H2Oを含有する20mLの水及び300mLのH2O2(30%)を前記反応混合液に添加し、前記反応混合液を1.5時間攪拌した。前記混合液を30Kdのフィルトロン(Filtron)でフィルタ処理し、その後、凍結乾燥させた。
HY溶液(50mLの4−モルホリンエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5、0.1M)に、1.2gのHY酸を溶解させた溶液)を、PE溶液(50mLのt−BuOH及び10mLのH2Oに、180mgのPEを溶解させた溶液)と混合させた。N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(120mg)及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(1.2g)を添加した。前記混合液を、超音波槽内で3時間超音波処理し、透析し、凍結乾燥させた。
前記反応器の内容物を、循環水ポンプを使用して、容器内で3.5リットルのプロセス水で希釈した。1.6%(重量)の重炭酸ナトリウムを含有する50リットルのプロセス水(pH=8.0〜8.3)を、6.5リットル/時間で供給した。前記2つのフィルタ処理段階中の圧力は、供給流(feed flow)においては20PSIであり、透過流(permeate flow)においては約7PSIであった。ろ過流(filtrate flow)には、圧力は加えられない。このプロセスを、プロセス水(67リットル、10リットル/時間で供給される)を使用して繰り返した。前記容器内での前記溶液の体積は、全てのフィルタ処理中において、5.0リットルであった。最後のフィルタ処理の終了時に前記供給を停止し、前記容器内での前記溶液の体積を1.2リットルまでに減らして、HyPEの最終濃度を得た。連続的な希釈/フィルタ処理工程の間は、不整合な(及び非効率な)洗浄の原因となる濃度勾配の形成を防止するために、前記容器内の前記混合液をかき混ぜる必要がある。
Lyoguard(登録商標)凍結乾燥トレーを使用して、Sublimation Freeze Drying System Dura-Dry(登録商標)(FTS(登録商標)Systems, Inc)で凍結乾燥を行った。HyPE濃縮物(1.2〜1.5L)を前記トレーに載せて、前記トレー冷却装置で、−15〜−14℃まで冷却した。前記冷却装置の温度は、−43〜−42℃であった。前記トレー内の前記サンプルを凍結させた後、ポンプによって1〜2mbar(絶対圧力)の真空を設定した。前記トレーを前記制御装置で、最初は+25℃まで加熱し、その後、氷昇華の終了時には+35℃まで加熱した。この凍結乾燥工程の継続時間は、約48〜60時間であった。
上記の方法は、全ての本発明の脂質共役体の調製に使用することができる。また、上記の方法は、必要に応じて改変可能であることは、当業者には明らかであろう。
<HY−DMPE(ヒアルロン酸とジミリストイルホスファチジルエタノールアミンとの共役体)の調製>
HY−DMPEは、上記のHY−PEのプロセスで説明したようにして調製した(混合は、徹底的に行った)。超音波処理は、任意である。
<HA−DPPE(ヒアルロン酸とジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミンとの共役体)の調製>
20.0+0.1gのヒアルロン酸(HA)(70〜30kDa)(乾燥重量)を、770±20mLの0.1MのMES緩衝液(5NのNaOHによって、pHが6.4になるように調節した)に、撹拌及び35±5℃で加熱しながら溶解させた(溶液1)。2.00±0.05gのジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を、750±20mLのtert−ブタノール混合液(t−BuOH:93%、水:7%)及び65+2mLの水に、DPPEが完全に溶解するまで撹拌及び50±5℃で加熱しながら溶解させた(溶液2)。溶液2を溶液1に撹拌しつつ加えた。2.00±0.05gのN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を加えて、30±5℃まで冷却させた。20±0.1gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加えた。EDCが溶解したとき(1〜2分)、反応混合液を2リットルのRBフラスコへ移した。前記反応混合液を、超音波槽(TS-540)内で3時間超音波処理した。前記超音波槽内の温度が35℃を越えないように、前記超音波槽を冷却した。この条件下では、前記反応混合液の温度は、35〜39℃に維持される。この超音波処理ステップの完了時には、前記反応混合液を室温で一晩撹拌した。
抽出:前記反応混合液(約1.6L)、850mLのジクロロメタン(DCM)及び850mLのメタノールを分液漏斗に入れた。下側の有機相を混合した後、分離した。480mLのDCM及び240mLのエタノールを水相に加えて、前記抽出工程を2回繰り返した。分離後、前記水相を2リットルのガラス反応器に移し、最高温度68℃まで加熱することによって、残存有機物を蒸留させた。前記反応器中の温度が65〜66℃に達したときに、約200L/分の窒素流を5〜7分間通過させた。その後、前記蒸留物中のDCMを確認するための試験を行った。前記試験によってDCMが存在しないことが判明した場合は、前記反応器を30〜35℃に冷却し、前記反応器の内容物を前記膜フィルタ処理装置の前記容器に移動させる。
<Hem−PE(ポリゲリン(ヘマセル)とホスファチジルエタノールアミンとの共役体)の調製>
Hem−NHの調製:4gのヘキサジアミンを、400mLのH2O(pHが6.0になるようにHClで滴定した)に溶解させた。500mLの3.5%のヘマセル及び2gの1エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加えた。pHを6.0に維持するように、溶液をHClで滴定した。前記反応液を3〜4時間滴定し、そして、前記反応液を一晩静置した。朝になったら、pHを6.0に調節に、0.5gのEDCを加え、その後、反応を約4時間続けた。前記反応混合液を、3Lに希釈し、pHが3.0〜4.0になるように酸性化し、上述したように10Kdのフィルトロン(Filtron)でフィルタ処理した。
Glu−PEへのHem−NHの結合:200mgのグルタリルホスファチジルエタノールアミン(Glu−PE)をクロロホルム/メタノール(1/1)に溶解させた。前記溶液を、800mgのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と共に1.5時間活性化させた。前記溶媒を真空ロータ内で蒸発させ、1mLのジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DiDAB)及び0.5mLのトリエチルアミンを含有する40mLのH2Oに1gのHem−NHを溶解させた溶液を即座に加え、そして、48時間反応させた。
Glu−PEを除去するために、前記反応混合物をジクロロメタン、メタノール、及びエタノールで洗浄した。水相を水に対して透析し、凍結乾燥させた。前記反応混合物を、水とメタノールの混合液(1:1)に溶解させ、その後、イオン交換カラム(Amberlite IR 120)を通過させ、その後、水に対して透析し、凍結乾燥させた。
<ChSA−PE(コンドロイチン硫酸Aとホスファチジルエタノールアミンとの共役体)>
コンドロイチン硫酸A(1200mLの4−モルホリンエタノールスルホン酸(MES)緩衝液(pH:6.5、0.1M)に溶解させた10gのコンドロイチン硫酸)を、PE溶液(120mLのクロロホルム/メタノール(1:1)及び15mLの50%DiDAB含有水/MeOH/EtOH*に、1.5gのPEを溶解させた溶液)と混合させた。前記混合液を完全に撹拌した。1gのHOBtを加え、その後(5〜10分後)、10gのEDCを加えた。前記混合液を48時間撹拌した。その後、Hem−PEの場合に説明したステップを行った。
*50%DiDAB含有水/MeOH/EtOHは、市販されている溶液である(Aldrich、カタログ番号33125−2)
*50%DiDAB含有水/MeOH/EtOHは、市販されている溶液である(Aldrich、カタログ番号33125−2)
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
Claims (76)
- その表面の少なくとも一部にコーティングを有するデバイスであって、
前記コーティングが、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むことを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記リン脂質部分が、ホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項2に記載のデバイスであって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項2に記載のデバイスであって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、グリコサミノグリカンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項5に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項5に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項5に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項8に記載のデバイスであって、
前記コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はその誘導体であることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記デバイスがステントであることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記デバイスがカテーテルであることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースがカルボキシメチルセルロースであることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、アルギン酸塩であることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、ヒドロキシエチルスターチ(HES)であることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、デキストランであることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記Lが、ホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項17に記載のデバイスであって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項17に記載のデバイスであって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項22に記載のデバイスであって、
前記コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はその誘導体であることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記化合物が、下記の化学式(I)で表されることを特徴とするデバイス。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Y、X及びnは、請求項16で定義した通りであり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、Xとアミド結合を介して直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。 - 請求項24に記載のデバイスであって、
前記R1及びR2が、パルミチン酸部分であることを特徴とするデバイス。 - 請求項24に記載のデバイスであって、
前記R1及びR2が、ミリスチン酸部分であることを特徴とするデバイス。 - 請求項24に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項24に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリンであることを特徴とするデバイス。 - 請求項24に記載のデバイスであって、
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸であることを特徴とするデバイス。 - 請求項29に記載のデバイスであって、
前記コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はその誘導体であることを特徴とするデバイス。 - 請求項16に記載のデバイスであって、
前記化合物が、下記の化学式(II)で表されることを特徴とするデバイス。
R1は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
R2は、直鎖、飽和、単不飽和若しくはポリ不飽和の長さが2〜30炭素原子のアルキル鎖であり、
Y、X及びnは、請求項16で定義した通りであり、
Yが存在しない場合、前記ホスファチジルエタノールアミンは、アミド結合を介してXと直接的に結合され、
Yがスペーサである場合、前記スペーサは、アミド又はエステル結合を介してXと直接的に結合され、アミド結合を介して前記ホスファチジルエタノールアミンと直接的に結合される。 - 対象の血管損傷又は血管閉塞を予防、抑制又は治療する方法であって、
その表面の少なくとも一部に、ポリピラノースに結合された脂質又はリン脂質部分を含むコーティングを有するデバイスを、前記血管に適用するステップを含むことを特徴とする方法。 - 請求項51に記載の方法であって、
前記損傷及び閉塞が、医療措置によって発生又は悪化したものであることを特徴とする方法。 - 請求項52に記載の方法であって、
前記医療措置が、カテーテル法、ステント植込み、人工臓器植込み又はそれらの組み合わせであることを特徴とする方法。 - 請求項52に記載の方法であって、
前記損傷又は閉塞が、平滑筋細胞増殖、病原体感染、血栓症、組織虚血、再かん流傷害又はそれらの組み合わせに起因するものであることを特徴とする方法。 - 請求項52に記載の方法であって、
前記損傷又は閉塞が、糖尿病によって悪化したものであることを特徴とする方法。 - 請求項52に記載の方法であって、
前記リン脂質部分が、ホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項56に記載の方法であって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項56に記載の方法であって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項51に記載の方法であって、
前記ポリピラノースが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする方法。 - 請求項51に記載の方法であって、
前記ポリピラノースが、デキストランであることを特徴とする方法。 - 請求項51に記載の方法であって、
前記ポリピラノースが、グリコサミノグリカンであることを特徴とする方法。 - 請求項61に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸であることを特徴とする方法。 - 請求項61に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリンであることを特徴とする方法。 - 請求項61に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸であることを特徴とする方法。 - 請求項64に記載の方法であって、
前記コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はその誘導体であることを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、アルギン酸塩であることを特徴とするデバイス。 - 請求項1に記載のデバイスであって、
前記ポリピラノースが、ヒドロキシエチルスターチ(HES)であることを特徴とするデバイス。 - 請求項68に記載の方法であって、
前記Lが、ホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項69に記載の方法であって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項69に記載の方法であって、
前記ホスファチジルエタノールアミンが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする方法。 - 請求項68に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸であることを特徴とする方法。 - 請求項68に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリンであることを特徴とする方法。 - 請求項68に記載の方法であって、
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸であることを特徴とする方法。 - 請求項74に記載の方法であって、
前記コンドロイチン硫酸が、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、又はその誘導体であることを特徴とする方法。 - 請求項52に記載の方法であって、
前記血管損傷が、狭窄又は再狭窄に起因するものであることを特徴とする方法。
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