JP2009528346A - Rps27lタンパク質をコードする核酸の活性を調節することによる癌治療に対する細胞の感作 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はまた、本発明の方法に用いられる少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
(図面の簡単な説明)
図1は、p53の直接的な転写標的であるRPS27Lを示す(より詳しくは、実施例1も参照)。図1Aは、RPS27Lの発現がDNA損傷剤アドリアマイシン(ADR)および5−フルオロウラシル(5−FU)によってRPS27Lの発現がP53遺伝子野生型HCT116細胞において誘発されたこと実証するマイクロアレイ分析を示す。一般に、図1Aは、p53に依存敵に遺伝毒性物質5−フルオロウラシル(5−FU)およびアドリアマイシン(ADR)により未制御となった遺伝子を示すマイクロアレイ・データのクラスター図である。図1Bは示した時間にわたるp53+/+およびp53−/−HCT116細胞のADR(1μM)または5−FU(375μM)処理を示す。RPS27LレベルをRT−PCRによって測定した。GAPDHを添加対照として用いた。図1Bは、p53ネガティブである細胞ではなくp53野生型HCT116細胞のみで、RPS27LmRNAがADRまたは5−FU処置後に誘導されたことを示す。これらの結果は、RPS27Lの発現とp53の活性化および発現との間につながりがあることを示す。図1Cは、p53がRPS27L遺伝子の第1のイントロンと結合することを示す。HCT116細胞での全ゲノムp53結合標的は、ChIP−PET技術を用いて既に実施されている(Wei, C.L., Wu, Q., et al., (2006) "A global map of p53 transcription-factor binding sites in the human genome" Cell, vol. 124, p.207-219)。例示したものは、5−FUで処置したHCT116細胞でのRPS27L遺伝子の第1イントロンに対して結合した9つのPETである。重複領域は、コンセンサスP53遺伝子結合モチーフを含む。これらの結果は、RPS27LがDNA直接結合を介してp53により上方制御されることを示している。図1Dは、p53結合部位を含むRPS27L遺伝子プロモータをp53が活性化させることを示す。上側の図は、RPS27L遺伝子プロモータの概略図である。1.1kbRPS27Lプロモータ領域(フラグメントA)内に仮想のp53結合部位とChIP検証p53結合部位(フラグメントB)を含む領域とを含む2つのルシフェラーゼ・レポータ構築物を構築した。p53REとはp53応答要素である。下側の図は、上記構築物に対して野生型p53およびDNA結合突然変異体p53(175H)を同時遺伝子導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した。p21プロモータを含むレ
ポーター構築物を陽性対照として用いた。これらの結果は、ChIP分析によって測定されたように、第1のイントロン内に位置したp53結合が機能的であり、p53応答性を与える。
トコンドリア機能不全を伴うアポトーシス細胞死を示していることを、説明するものである。
と、ウエスタンブロット用に調製したp53、p21、およびPumaの細胞溶解物とについてのウエスタンブロット分析を示す。図7Bは、ADRを24時間処理し、DNA合成およびDNA含有量についてBrdUおよび7−AA−Dによる染色を夫々施したHCT116対照およびp21欠乏細胞を示す。染色した細胞をFACSで分析した。ヒストグラムは、S期にある細胞の割合とDNA含有量が>4Nである細胞集団とを示す。棒グラフは、個々におこなわれた3回の実験の結果を示す。図7Cは、図7Aに示す細胞と同様に処置された細胞を示し、細胞死はサブG1含有量を有する細胞と同様に評価した。図7Dは、DNA損傷応答におけるRPS27L機能のモデルを示す。p53によるRPS27Lの誘導は、p21依存および非依存機能を介したDNA損傷を防ぐ。
本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用する特定の用語を以下により詳しく説明する。別段の定めがない限り、本明細書中に使用される技術用語および科学用語の全ては、本明細書が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同義である。同様に、本明細書中で使用される術語は、特定の実施形態のみを説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本出願で引用される全ての文献を本明細書中に参照により組み込む。
用語「ベクター」とは、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子のことをいう。ベクターの一種類は、ゲノム組込み型ベクター、すなわち「組込み型ベクター」であり、これは宿主細胞の染色体DNAに組み込まれることができる。ベクターの別の種類は、エピソーム型ベクター、すなわち適当な宿主(例えば、真核または原核宿主細胞)内での染色体外複製をおこなうことができる核酸である。作用可能に連結した遺伝子の発現を指示することができるベクターのことを、本明細書中で「発現ベクター」という。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、文脈から明らかである場合を除いて、同義的に用いられる。
ユニットの糖基は、修飾誘導体(例えば2’−O−メチル・リボース)であってもよい。オリゴヌクレオチドのヌクレオチド・サブユニットは、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、エチルホスホネート結合、またはオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを阻害しない他の稀なもしくは非天然の結合によって、連結可能である。さらに、オリゴヌクレオチドは、異常なヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分を有する場合がある。
and Elledge, SlJ. (2000) "The DNA damage response: putting checkpoints in perspective" Nature, vol. 408, p.433-439)。腫瘍抑制因子p53は、DNA損傷応答にお
いて重要な役割を果たすと考えられている。DNA結合活性を有する転写因子として、p53はヒト・ゲノム内の300個ほどの標的遺伝子に結合し(Wei, C.L., Wu, Q. et al.
(2006) "A global map of p53 transcription-factor binding sites in the human genome" Cell, vol. 124, p.207-219) and actively regulates the expression of its downstream target genes (Kho, P. S., Wang, Z. et al. (2004) "p53-regulated transcriptional program associated with genotoxic stress-induced apoptosis" J Biol Chem,
vol. 279, p.21183- 21192)の発現を調節する。DNA損傷後のP53遺伝子活性化の
主な結果は、細胞周期停止、老化、またはアポトーシスの誘導である(Lane, D.P. and Lain, S. (2002) "Therapeutic exploitation of the p53 pathway" Trends MoI Med, vol. 8, p.38-42; Vogelstein, B., Lane, D. and Levine, AJ. (2000) "Surfing the p53 network" Nature, vol. 408, p.307-310)。
標的遺伝子、例えばPUMA、BAX、NOXA、BID、PIG3、CD95、DR5、またはp53A1P1の転写活性化を介してアポトーシスを誘導すると考えられている(Vogelstein, B., Lane, D. and LeVine, AJ. (2000), 前掲; Vousden, K.H. and Lu, X. (2002) "Live or let die: the cell's response to p53" Nat Rev Cancer, vol. 2, p.594-604)。
ルの操作は、化学療法的応答を調節するための可能性のあるアプローチであると思われる(Weiss, R.H. (2003) "p21Wafl/Cipl as a therapeutic target in breast and other cancers" Cancer Cell, vol. 4, p.425-429)。
減少が強いアポトーシス応答に相関する(さらに詳しくは実施例2を参照)。このことは、例えば、RPS27Lがない状態で、化学療法剤等によって生じたDNA損傷が細胞周期停止の代わりにアポトーシスを誘導することを意味する。したがって、RPS27Lは、p53活性化に続く細胞のアウトプットを決定する制御スイッチとして機能すると思われる。
ク質のレベルが減少してADRによる処理を繰り返した場合、細胞周期停止に切り替わる代わりに、細胞は著しい細胞死を経験する(詳しくは図3Aおよび実施例3を参照)。同様の効果を、リン酸エトポシド(VP16(登録商標)、別のトポイソメラーゼ阻害剤)または他の細胞系統、例えばU2OS、Saos−2、およびSH−SY5Yを用いた同じ実験を実施した場合に観察することができる。癌の処置におけるこのアプローチの後で、細胞を感作することができる。すなわち、RPS27Lタンパク質のレベルおよびRPS27Lタンパク質をコードするRPS27LmRNAが減少する場合に、例えば一種類以上の化学療法用抗癌剤での処理に対して、細胞をより感受性のあるものにする。したがって、DNA損傷を有する細胞毒性の薬剤(例えば、抗癌化学療法において)の使用に直面して、悪性腫瘍細胞は、RPS27Lタンパク質レベルが欠乏した場合に、DNA修復よりもアポトーシスを経験する。本発明の方法の使用によって悪性細胞を感作することで、悪性細胞におけるRPS27タンパク質レベルの減少によって細胞修復のための経路が妨げられることから、高投与量の化学療法用抗癌剤の使用が避けられる。したがって、既に低い量の抗癌剤は、腫瘍の効果的処置を提供する。低量の抗癌剤を使用することは、明らかに、比較的深刻さが少なく、抗癌化学療法で一般に使用される薬物で通常観察され得る副作用さえもない。
乳類細胞に投与されると、ヒトの悪性細胞のように、RPS27Lタンパク質をコードする核酸の活性の調節を引き起こす。一態様では、RPS27Lタンパク質をコードする核酸の活性の調節は、この核酸の減少または増加を意味する。
and Antisense RNA : Novel Pharmacological and Therapeutic Agents, CRC Press, Boca Raton, FL, 1997またはCrooke, S.T. Progress in Antisense Technology, Annual Review of Medicine, February 2004, Vol. 55: Page 61 - 95を参照)、またそれぞれのアンチセンス・ヌクレオチド分子の設計は、当該技術分野の当業者の技術範囲である。
あり、概して約75nt長未満であると思われる。干渉リボ核酸が、互いにハイブリダイズした2つの異なるリボ核酸の二本鎖構造(例えば、siRNA)である場合には、該二本鎖構造の長さが概して約15〜30bp、通常は約15〜29bpの範囲である。RNAi剤が、ヘアピン形成に存在する単一のリボ核酸の二本鎖構造(すなわちshRNA)である場合、該ヘアピンのハイブリッド部分の長さは概して、上記したsiRNA型の薬剤のものと同じか、それよりも4〜8ヌクレオチド長い。
、ジェット式注射を筋肉内投与に使用することも可能である。文献(Tang, D. C, De Vit, M., et al., (1992) "Genetic immunization is a simple method for eliciting an immune response" Nature, vol. 356, p.152- 154)に記載されているように、核酸を金の微粒子上に被覆し、微粒子銃装置または「遺伝子銃」によって皮内送達することも可能である。siRNAを送達するためにナノ粒子を用いることは、細胞特異的ターゲッティングにとってもう一つの好適なアプローチである。この方法は、例えば、Weissleder, R., Kelly, K., et al. (2005) "Cell-specific targeting of nanoparticles by multivalent attachment of small molecules" Nature Biotech, vol. 23, p. 1418-1423に記載されている。
siRNAs" Nature Biotech (2005), vol. 23, p. 1002-1007は、例えば、静脈内投与のた
めのリポソームを形成するためにポリエチレングリコール・脂質複合体により被覆された安定した核酸・脂質粒子を用いた。本発明では、リポフェクタミン2000システム(インヴィトロゲン社(Invitrogen))を、siRNAおよびshRNAをコードする核酸配列を細胞に形質移入するための具体的な例として用いた(より詳しくは実施例3を参照)。
プラスミド(とりわけshRNAおよび湿潤により、哺乳類細胞への侵入とそれに続く遺伝子抑制を可能にする)から転写された大腸菌(E.coli)を投与することでこのアプローチを用いている。
ルモン、シグナル伝達阻害剤、モノクローナル抗体、生体応答調節剤、または分化誘導剤が挙げられる。
もに、あるいは難溶性誘導体として(例えば、難溶性の塩として)、処方することも可能である。
(実施例1)
ゲノム分析はp53の直接的な転写標的としてRPS27Lを同定する
p53は、主に下流の標的の転写制御を介して、腫瘍抑制因子機能を発揮する(Vogelstein, B., Lane, D. and Levine, AJ. (2000)前掲、Vousden, K.H. and Lu, X. (2002)前掲)。p53結合遺伝子座をゲノム規模でマッピングすることを通して、さらなるp53下流標的を同定する以前の研究(Wei, C.L., Wu, Q., et al., (2006)前掲)では、既に
知られている機能を有するS27様リボソームタンパク質(RPS27L)をコードするRPS27Lが潜在的にp53によって調節されることが、観察された。RPS27Lは、ヒト第15染色体上の位置61235856〜61237660に局在している。
前掲)を用いてヒト・ゲノムで本発明者らが既に同定した>500であるp53結合標的のうち、RPS27Lが、第1のイントロンに位置したp53結合モチーフを介してp53によって強く結合するという知見が得られた(図1C)。したがって、RPS27L発現は、直接的なDNA結合を介してp53により上方制御されるように思われる。
(実施例2)
p53依存性RPS27Lタンパク質誘導は刺激依存性である
p53によって誘導されたRPS27LmRNAの増加が、タンパク質レベルの増加ももたらすかどうかを検討するために、ADR、5−FU、またはニュートリン3(p53を直接活性化する小分子MDM2アンタゴニスト)(Vassilev, L.T., Vu, B.T., et al.
(2004) "In vivo activation of the p53 pathway by small-molecule antagonists of MDM2" Science, vol. 303, p.844-848)により処理したp53野生型およびp53ヌルHCT116細胞の免疫ブロット分析を実施した。ADRまたはニュートリン3処理は、p53およびp21の蓄積をもたらす。ADRまたはニュートリン3処理後に、時間とともにRPS27Lタンパク質レベルが増加したことを、RPS27Lに対して生じた抗体によって検出した(図2A)。しかし、RPS27LmRNAの5−FU誘導上方制御は、タンパク質レベルの増加をもたらさなかった。その代わりに、p53活性化とともに、RPS27タンパク質レベルが下方制御され、このことはp21タンパク質の発現が増加したことと正反対のものであった。この観察を他の細胞系統および他のp53刺激に対して広げるために、U2OS(ヒト骨肉腫細胞系統)およびSH−SY5Y(ヒト神経芽腫細胞系統)細胞(p53野生型)、同様にSaos−2細胞(ヒト骨肉腫細胞系統、p53欠損)を、ADR、リン酸エトポシド(VP16(登録商標))、および5−FUにより、処理した(図2B)。また、ADRおよびリン酸エトポシド(VP16(登録商標))は、RPS27Lタンパク質のp53依存性上方制御を誘導したが、5−FUはその下方制御を誘導した。集合的に、これらの結果は、p53誘導RPS27Lタンパク質発現が、p53活性化をもたらすストレスの種類に依存することを示している。明らかに、5−FUは、mRNA発現の増加にかかわらず、RPS27Lタンパク質下方制御を生ずる翻訳後機構を作動させる。
(実施例3)
RPS27L欠乏はp53依存性DNA損傷応答を増殖停止から細胞死に変える
HCT116細胞では、DNA損傷剤ADRがp53依存性細胞周期停止(高倍数体細胞(4N)数の増加)を誘導する一方で、5−FU処理はp53依存性アポトーシスを引き起こす(Bunz, F., Hwang, P.M., et al. (1999),前掲、 Tan, J., Zhuang, L., et al. (2005), 前掲)(図3A)。RPS27Lタンパク質発現の増加は細胞周期停止表現型に相関していることから、本発明者らは次に、HCT116細胞でのRPS27LノックダウンがADR処理に対して細胞周期停止よりもアポトーシスを与えるかどうかを決定することにした。この目的を達成するために、本発明者らは、配列番号1の低分子干渉RNA(siRNA)を用いてRPS27L発現を停止させた。siRNAの標的配列は、DNA損傷後、ほぼ完全にRPS27L発現を抑えるとともに、その誘導を抑えたので、効率的かつ特異的であり、一方で密接に関連したRPS27に対して何ら影響を及ぼさなかった(図3B)。本研究を容易にするために、本発明者らは、p53野生型およびヌル・バックグラウンドの両方でRPS27Lを欠乏した配列番号1の短ヘアピン(RPS27LshRNA)または非特異的対照shRNA(対照shRNA)を安定して発現するHCT116細胞系統を創出し、ADRに対するそれらの細胞性応答を調べた。対照shRNAは、ダールマコン社(Dharmacon Inc.[米国コロラド州ラフィーエット(Lafayette)所在]から得た。
(実施例4)
RPS27Lは、DNA損傷に対して核焦点を形成する核タンパク質である
DNA損傷応答におけるPRS27Lの機能をさらに特徴付けるために、PRS27Lの細胞局在を評価した。c−Mycタグ化RPS27LをHCT116細胞内で過剰発現させ、抗Myc抗体による免疫蛍光染色によって発現の検出をおこなった。異所的に発現したRPS27Lは、核に局在する(図4A)。内因性RPS27Lの細胞部位を決定するために、またDNA損傷に対するその応答を評価するために、本発明者らは次に、抗RPS27L抗体を用いて免疫蛍光研究を実施した。野生型およびRPS27L欠乏HCT116細胞を固定前にリン酸エトポシド(VP16(登録商標))で16時間処理した。未処置の細胞におけるRPS27Lのレベルが低いことから、本発明者らはこれらの細胞で弱い核染色が得られた(データ不図示)。リン酸エトポシド(VP16(登録商標))処理に応じて、本発明者らは、抗RPS27Lを有するHCT116細胞で核焦点様染色パターンを検出した(図4B)。また、RPS27Lは、リン酸化ヒストンH2AX(γ−HA2X)によって部分的に共局在化した。γ−H2AXは、DNA二本鎖切断(DSB)の部位でリン酸化したヒストンであり、DSBのホールマークである(Rogakou, E.P., Pilch, D.R., et al., (1998) "DNA double-stranded breaks induce histone H2AX phosphorylation on serine 139" J Biol Chem, vol. 273, p. 5858-5868)。RPS27
L発現の欠乏は、この共局在性を無効にしたが、γ−HA2X焦点形成になんら効果を示さなかった。これらのデータは、RPS27LがDNA損傷応答に関わる核タンパク質であり、DNA二本鎖切断の一部に採用されることを示唆している。
(実施例5)
RPS27L欠乏はDNA損傷チェックポイントおよびDNA修復における機能的欠失をもたらす
RPS27L欠乏によりDNA損傷に対する反応性が増加したと考え、本発明者らは次に、RPS27Lの欠損がDNA損傷チェックポイントを損い得るかどうかを調べた。7アミノ・アクチノマイシンD染色によるFACS分析(全DNA含有量に関して)およびブロモデオキシウリジン(BrdU)標識化(DNA合成に関して)は、DNA損傷前に対照対RPS27L欠乏HCT116細胞におけるDNA合成の違いを検出することができなかった。しかし、親細胞は、ADR処理後24時間でDNA合成が著しく減少(85%から11%)し、一方でRPS27Lを欠損したHCT116細胞では、このDNA合成の減少は部分的に救われた(86%から27%)(図5A)。加えて、RPS27L欠乏HCT116細胞は、対照細胞と比較して(30%対10.5%)、高倍数体DNA合成用含有量(>4N)を有する細胞の実質的な蓄積を生じた。これらの知見は、RPS27Lの欠損が、染色体不安定性を導くDNA損傷細胞周期チェックポイント欠損を生じる
場合があることを示唆している。
principles, applications, and limitations" MoI Biotechnol, vol. 26, p. 249-261
)。細胞をADRで24時間インキュベートし、回収し、さらにコメット・アッセイの処理をおこなった。図5Cに示すように、ADR誘導DNA損傷は、RPS27L欠乏細胞で著しく増強し、このことはDNA修復でRPS27Lが果たす役割と一致する。次に、我々はDNA損傷が増加することで染色体不安定性が生ずるかどうかを調べた。この可能性を試験するために、微小核(MN)分析を用いた。なぜなら、それは、染色体損傷およびゲノム不安定性についての信頼性の高い指標となることが判明しているからである(Fenech, M. (2005) "hi vitro micronucleus technique to predict chemosensitivity" Methods MoI Med, vol. I ll, p. 3-32; Poonepalli, A., Balakrishnan, L., et al. (2005) "Lack of poly(ADP-ribose) polymerase- 1 gene product enhances cellular sensitivity to arsenite" Cancer Res, vol. 65, p. 10977-10983)。ADR処理に応じてRPS27L欠乏細胞における微小核頻度の増加が見られ、染色体安定に対するRPS27L欠損の効果がさらに支持された(図5D)。全体的に、これらの実験は、ADRによる細胞の処理後に、PRS27Lの損失は、DNA損傷の増加および染色体切断をもたらすことを明らかにしている。
(実施例6)
RPS27L欠乏によってDNA損傷に応じたp21の蓄積が損なわれ、DNA損傷に対する過敏性をもたらす
PRS27L欠乏によってp53野生型細胞のみがDNA損傷に対して感作することから、次に本発明はp53シグナル伝達経路に対するRPS27L欠乏の効果を評価した。p53およびその下流標的p21、puma、およびMDM2に対するRPS27L欠乏の効果を免疫ブロット分析によって調べた。RPS27Lの欠乏がADR誘導p53活性化に対して顕著な効果を示さないことを見いだした(図6A)。しかし、ADRに応じたp21の蓄積は、対照細胞と比較して、RPS27L欠乏細胞では著しく減少した。対照的に、PumaおよびMDM2のp53依存性活性化がRPS27損失に応じた減少が生じなかった。この結果は、RPS27Lの損失に応じたp53によるp21誘導の選択的欠陥を示唆している。RPS27Lが安定的に欠乏したHCT116細胞の状況と同様に、本発明者らは、RPS27Lが一過性形質移入によってノックダウンされたU2OS細胞で、p21タンパク質レベルが実質的に減少するという知見を得た(図6B)。これらの結果は、RPS27Lの損失に応じてp21タンパク質蓄積が損なわれることが細胞の種類に特異的ではなかったことを示している。
しい変化が生じなかったことから、p21タンパク質レベルの減少がp21転写阻害によるものではないという知見が得られた(図6C)。RPS27Lがp21タンパク質発現を制御することの直接的な証拠を得るために、本発明者らは、p21発現ベクター(pcDNA2)を増加量のRPS27発現ベクターとともに、HCT116細胞に同時形質移入したところ、RPS27L過剰発現が用量依存的にp21タンパク質発現を著しく増加させるという結果が得られた(図6D)。まとめると、これらの知見は、RPS27Lがp21タンパク質を正に制御することを示唆している。RPS27Lの損失は、DNA損傷の後にp21タンパク質誘導を弱める結果を生じさせる。
化にp21減少が果たす機能的役割を明らかにするために、本発明者らは、p21shRNAを安定的に発現するHCT116細胞系統を作り出した(p21shRNAとして、ダールマコン社(Dharmacon Inc. [米国コロラド州ラフィーエット(Lafayette)所在]から得た市販品を用いた)。これらの細胞では、ADR処理後のp21発現およびその誘導は、ほぼ完全に無効になった(図7A)。ADR処理に応答して、p21shRNA細胞が大量に細胞死となり、その一方で対照細胞は増殖が停止したままであった(図7B)。さらに、BrdU染色によって、ADR処理後のBrdU取り込みの抑制がp21欠乏細胞で減少することが示された(図7C)。したがって、p21欠乏細胞は、RPS27L欠乏細胞のアポトーシスおよび細胞周期の表現型に類似していた。p21欠乏細胞でのRPS27Lのさらなるノックダウンは、ADRに応じて、細胞死またはBrdu染色のレベルにさらなる効果を奏した(データ不図示)。これらの結果は、RPS27L欠損細胞でのDNA損傷に応じた不十分なp21タンパク質蓄積が、細胞周期停止およびDNA損傷に対する過敏性を損なうのに十分であることを示唆している。
上述した実施例で使用された実験手順についての詳細
細胞培養および薬物
ヒト結腸癌細胞系統HCT116およびそのP53遺伝子ノックアウト由来細胞は、バート、ボーゲルスタイン(Bert Vogelstein)博士がご厚意により提供してくださったものである。HCT116細胞をATCC番号CCL247に基づいて購入することもできる。ヒト骨肉腫細胞系統U2OSおよびSaos−2は、以下のATCC番号にもとづいて購入することができる。すなわち、U2OSはATCC HTB−96、Saos−2はATCC HTB−85およびSH−SY5Y、ATCC CRL−2266である。細胞の増殖を、10%ウシ胎児血清およびペニシリン・ストレプトマイシン(インヴィトロゲン社(Invitrogen))を添加したDMEMでおこなった。アドリアマイシン、エトポシド・リン酸塩(VP16(登録商標))、および5−フルオロウラシルを、シグマ・アルトリッチ社(Sigma−Aldrich)から購入した。
フローサイトメトリー
DNA含有量を数量化することで、細胞周期分析をおこなった。細胞を70%エタノールで固定し、ヨウ化プロピジウム(50μg/ml)で染色した。染色された細胞をFACScalibur(ビー・ディー バイオサイエンス(BD Bioscience))によって分析した。BrdUの取り込み分析およびミトコンドリア膜電位検出に関しては、手引き書に従ってBrdU Flow Kit およびJC−1染色キット(両方とも(ビー・ディー バイオサイエンス(BD Bioscience))を用いた。染色された細胞をFACScalibur(ビー・ディー バイオサイエンス(BD Bioscience))を用いて分析し、CellQuestソフトウェア(ビー・ディー バイオサイエンス(BD Bioscience))を用いて定量した。
siRNAオリゴ標的化RPS27L(配列番号1:ggttgctacaagattacta)は、プロリゴ社(Proligo)から購入し、形質移入をLipofectamine 2000(インヴィトロゲン社(Invitrogen))を用いて製造元の情報に従って実施した。安定したノックダウン細胞系統を生成するために、製造元の指示に従い、siRNAをpSIREN−RetroQレトロウィルス発現ベクター(ビー・ディー バイオサイエンス(BD Bioscience)内にクローン化した。2μg/mlピューロマイシンを含有する培地中でウイルス感染細胞を選択し、個々の薬剤耐性クローンの回収、プール、および拡大した。
タンパク質分析および抗RPS27L抗体の産生
細胞を集め、RIPA緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、1mM EDTA、150mM NaCl、1%Nonidet P−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム塩、およびプロテイナーゼ阻害剤)で溶解した。溶解産物を16,000xg、40℃で15分間遠心することによって分画した。タンパク質濃度の測定は、Bradford Protein Assay Kit(バイオ・ラッド社(Bio− Rad)を用いておこなった。20〜50μgタンパク質試料をSDS−PAGEによって分離し、Immobilonメンブラン(ミリポア社(Millipore))に転写し、抗体でブロットした。抗p53および抗p21抗体をサンタ・クルーズ社(Santa
Cruz)から入手し、抗MDM2および抗体Puma抗体はメルク社(Merck)から入手した。RPS27Lに対するウサギ多価抗体は、ヒトRPS27L(配列番号2:LHPSLEEEKKKHKK)由来の14個のアミノ酸からなるペプチドに対して産生させたものである。
ルシフェラーゼ・レポート・アッセイ
RPS27Lのプロモータ要素をpGL3ルシフェラーゼ・ベクター(プロメガ社(Promega))にクローン化した。HCT116p53+/−細胞を24穴細胞培養プレートに蒔いて、p53発現ベクターおよびRPS27Lプロモータ・プラスミドを同時形質移入した。形質移入の24時間後、記述通りに、Dual Luciferaseシステム(プロメガ社(Promega))を用いてルシフェラーゼ活性の測定をおこなった(Kho, P.S., Wang, Z., et al. (2004) "ρ53 -regulated transcriptional program associated with genotoxic stress-induced apoptosis" J Biol Chem, vol. 279, p. 21183-21192))。
蛍光抗体法と共焦点顕微鏡
細胞を4穴または8穴培養スライドに播種した。処理後、細胞を3.7%パラホルムアルデヒド含有PBSで固定し、0.2%Triton−X100で透過性にした。細胞を一次抗体(上記「タンパク質分析および抗PRPS27L抗体の産生」の項目を参照)およびAlexa Fluor 488またはAlexa Fluor 546結合二次抗体(インヴィトロゲン社(Invitrogen))を用い、各々1時間にわたって連続的にインキュベートし、Fluorsave(メルク社(Merck))封入剤でマウントした。核染色用にDRAQ5(バイオスタッツ社(Biostats)[英国所在])
を封入剤で希釈した。染色された細胞をZeiss LSM510共焦点顕微鏡で調べた。
プラスミド
pcDNA4/RPS27L−Mycの生成を、正常結腸組織全RNA(アンビオン社(Ambion))、PowerScript Reverse Transcriptase(クロンテック社(Clontech))、およびPlatium PCR SuperMix High Fidelity(インヴィトロゲン社(Invitrogen))を用いたRT−PCRによっておこない、この際、用いたプライマーは、GGTACCATGCCTTTGGCTAGAGATTT (順方向、配列番号3)およびGAATTCTTAGTGTTGCTTTCTTCTAAATGA(逆方向、配列番号4)であった。PCR産物および空のベクターをKpnIおよびEcoRI(ニュー・イングランド・バイオラボ社(NEB))により消化し、T4リガーゼ(NEB)により連結し、その後、形質移入および選択をおこなった。
細胞質分裂は微小核(CBMN)アッセイを妨害した
ADRによる処理の後、細胞をサイトカラシンB(Sigma、5μg/ml)とともに、さらに22時間インキュベートした。次に細胞をトリプシン処理し、続いてカルノワ固定液(酢酸:メタノール、1:3)と3〜4滴のホルムアルデヒド(細胞質固定のため)との組み合わせを用いて固定した。固定された細胞をきれいなスライド上に滴下し、3μg/mlのAcridine Orange(細胞質および核を区別して染色)で染色した(Hande, M.P., et al. (1996) "Induction and persistence of cytogenetic damage in mouse splenocytes following whole-body X-irradiation analysed by fluorescence in situ hybridization. II. Micronuclei." Int J Radiat Biol; vol. 70(4), p.375-83; Hande, M.P., et al. (1997))。
1000個の二核細胞が各試料で記録された。
アルカリ単細胞ゲル電気泳動(コメット)アッセイ
上記した用量のADRで細胞を処理した。既に記述されたように(Poonepalli, A., Balakrishnan, L., et al. (2005)前掲)、処理された細胞を単細胞ゲル電気泳動(コメッ
ト)アッセイにかけ、SYBR緑色染料で染色した。メタシステム社(Metasystems)[ドイツ所在]の分析用ソフトウェア「Comet imager version 1.2」を用いて、コメットの尾部モーメント(tail moment)を生成した。試料毎に無作為に選択した50個のコメットを分析した。観察されたDNA損傷の程度を、コメットの尾部にあるDNAの分画に対応する尾部モーメントとして表した。
RT−PCR分析
RT−PCRのすべてをTitanium One Step RT−PCR Kit(ビー・ディークロンテック(BD Clontech)を用いて実施した。プライマー配列は以下の通り:
p21、順方向、配列番号5: 5’−ATGTCAGAACCGGCTGGGGA−3’;
p21、逆方向、配列番号6: 5’−ATCACAGTCGCGGCTCAGCT−3’;
Puma、順方向、配列番号7:5’−CGGACGACCTCAACGCACAGTA−3’;
Puma、逆方向、配列番号8:5’−AATTGGGCTCCATCTCGGGG−3’;
RPS27L,順方向、配列番号9:5’−GTGACGACCTACGCACACGA−3’;
RPS27L,逆方向、配列番号10:5’−GTGCTGCTTCCTCCTGAAGG−3’;
GAPDH、順方向、配列番号11:5’−CAAAGTTGTCATGGATGACC−3’;
GAPDH、逆方向、配列番号12:5’−CCATGGAGAAGGCTGGGG−3’。
本明細書中に例証的に説明された本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない1または複数の任意の要素や1または複数の限定がなくても、好適に実施することが可能である。したがって、例えば、用語「含む」は、拡張的に読むべきであり、限定的に読むべきものではない。さらに、本明細書中に使用される用語および表現は、説明のための用語として用いられたものであり、限定のためのものではない。また、該用語および表現を、図示および説明した特徴またはその一部のいかなる等価物を除外するために使用することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記した本発明の範囲内において種々の修飾が可能であると理解される。したがって、本発明が好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されてはいるが、開示された本明細書中に具体化された本発明の修飾および変更が当業者によってなされることも可能であり、そのような修飾および変更は本発明の範囲内であると考えられる。
Claims (27)
- 癌治療に対して細胞を感作する方法であって、RPS27Lタンパク質をコードする核酸の活性を調節することが可能な化合物を前記細胞に投与することを含む方法。
- 前記細胞が真核細胞である請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が哺乳類細胞である請求項2に記載の方法。
- 前記哺乳類細胞がヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、またはウシに由来する請求項3に記載の方法。
- 前記RPS27Lタンパク質をコードする前記核酸の活性を調節することが、少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドを投与することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記オリゴヌクレオチドがRNA干渉剤またはアンチセンス・ヌクレオチド分子である請求項5に記載の方法。
- 前記RNA干渉剤が干渉リボ核酸である請求項6に記載の方法。
- 前記干渉リボ核酸がsiRNAまたはshRNAである請求項7に記載の方法。
- 前記shRNAが配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の方法。
- 少なくとも一種類の化学療法剤が前記癌治療に用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 前記癌治療が化学療法である請求項10に記載の方法。
- 前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ抑制剤、白金誘導体、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤、モノクローナル抗体、生物応答調節剤、及び分化誘導剤からなる群から選択される請求項10または11に記載の方法。
- 前記化学療法剤が、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ニュートリン3、リン酸エトポシド、および5−フルオロウラシルからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
- 癌治療に対して細胞を感作する方法であって、
RPS27Lタンパク質の活性を阻害することが可能な化合物を前記細胞に投与する方法。 - 前記細胞が真核細胞である請求項15に記載の方法。
- 前記細胞が哺乳類細胞である請求項14または15に記載の方法。
- 少なくとも一種類の化学療法剤が前記癌治療に用いられる請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
- 前記癌治療が化学療法である請求項17に記載の方法。
- 前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ抑制剤、白金誘導体、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤、モノクローナル抗体、生物応答調節剤、及び分化誘導剤からなる群から選択される請求項17または18に記載の方法。
- 前記化学療法剤が、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ニュートリン3、リン酸エトポシド、および5−フルオロウラシルからなる群から選択される請求項19に記載の方法。
- 請求項5〜9のいずれかで定義された少なくとも一種類のオリゴヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項6〜9のいずれかで定義された少なくとも一種類のRNA干渉剤あるいは請求項6に記載の少なくとも一種類のアンチセンス・ヌクレオチド分子を含む医薬組成物。
- 少なくとも一種類のRNA干渉剤と少なくとも一種類のアンチセンス・ヌクレオチド分子とを含む請求項22に記載の医薬組成物。
- 請求項10〜13または17〜20のいずれかに示す少なくとも一種類の化学療法剤をさらに含む請求項22または23に記載の医薬組成物。
- 医薬として許容し得る送達担体をさらに含む請求項22〜24のいずれかに記載の医薬組成物。
- 癌治療に対して細胞を感作する薬物を調製するためのRPS27Lタンパク質をコードする核酸の活性を調節することが可能な化合物の使用。
- 癌治療に対して細胞を感作する薬物を調製するためのRPS27Lタンパク質をコードする核酸の活性を調節する化合物の使用。
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