JP2009523436A - アスベスト被曝に関連した肺癌を同定する方法 - Google Patents

アスベスト被曝に関連した肺癌を同定する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、対象におけるアスベスト関連疾患の存在、またはアスベスト関連疾患の素因を評価するための方法に関する。特に本発明は、アスベスト被曝に関連した肺癌を同定するための方法を提供する。この関連性は、肺癌細胞の以下の染色体領域: 19p13.3-p13.1、9q32-34.3、2p21-p16.3、16p13.3、22q12.3-q13.1 および 5q35.3の少なくとも1種からアレル不均衡(AI)を検出することで確認する。

Description

本発明は、肺癌細胞におけるゲノム変化の分子レベルの記述に基づくものである。本発明は、肺癌細胞由来のDNAからアレル不均衡(AI)を検出することによって、アスベスト被曝に関連した肺癌を同定する方法を提供する。更に本発明は、アスベスト被曝肺癌患者の肺腫瘍は、独特な遺伝子発現プロファイルを示すことを明らかにした。本発明はまた、アスベスト被曝個体の体液から、アスベスト関連ゲノム変化によって生じるAIまたはRNAやタンパク質の変化を検出することによって、アスベスト関連肺癌の早期発見、予測および予防に有用な方法を提供する。
肺癌は最も主要な癌であり、年間100万人超が肺癌で死亡している。肺癌の単独で最も重要な発症原因が喫煙であることに疑いの余地はない。肺癌は、タバコの他にも、職業上または環境における他の発癌性因子(例えば、アスベスト)による被曝にも関連している。喫煙とアスベスト被曝は相乗的に作用し、肺癌の危険度に対して付加的以上の効果をもたらす(Selikoff, 1968、Vainio, 1994)。男性の肺癌においてアスベスト被曝が病因となる割合は、種々の集団において6%〜23%の間であると推定されている(Karjalainen, 1997、Nelson, 2002)。
アスベストとは、繊維状の珪酸塩鉱物の一群であり、その化学的および物理的特徴の違いによって6種に分類されている。その絶縁性、耐火性および補強特性によって、広く産業に使用されていた。最初のアスベスト被曝から発症までの期間は20年を超えると推定されており、このような長い潜伏期間ゆえに、アスベストは、その使用が禁止された国においても、発症原因となり続ける(報告については、Scandinavian Journal of Work, Environment, and Health, 1997, 23:311-316のコンセンサスレポートを参照)。
アスベストは、DNAと染色体の両方に傷害を与えることのできる、遺伝毒性および細胞毒性物質であることが知られている。このような作用に秘められたメカニズムは複数であろうと考えられる。主なメカニズムは、活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)の発生、細胞周期の進行の物理的な妨害、およびいくつかのシグナル伝達経路の活性化と考えられている(Upadhyay, 2003、Jaurand, 1997)。
アスベスト被曝労働者について、白血球の姉妹染色分体交換とDNA2本鎖の破壊の増加が報告されている(Fatma, 1991、Marczynski, 1994)。ROS被曝のマーカーである8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)DNA付加体の濃度上昇が、アスベスト被曝労働者の血液と肺組織の両方で検出されている(Marczynski, 2000)。更に Marsit et al. (2004) は、肺癌細胞における染色体3p21のヘテロ接合性の喪失が、職務上のアスベスト被曝と関連すると開示している。
今日では、アスベスト関連肺癌などのアスベスト関連疾患の臨床診断は、患者との詳細な面談とアスベスト被曝に関する職務データ、適切な潜伏期間と症候、並びに放射線学的および肺生理学的所見に基づいて行われる(コンセンサスレポート,1997を参照)。しかし、アスベスト関連肺癌の臨床的兆候と症状は他の原因による肺癌と変わらない。従って、当業界における問題は、一般人口における肺癌の発症率が高いため、たとえアスベストが存在していても、個別の患者の肺癌の原因がアスベストであると厳密に立証することはできない点にある。本発明の提供する解決手段は、アスベスト関連肺癌において、アレル不均衡を示す傾向のある5つの別個の染色体領域の発見である。従って、本発明は、肺癌細胞の染色体の特定の部分におけるアレル不均衡の有無を検出することによって、アスベスト関連肺癌を他の肺癌から同定するための方法を提供することができる。
発明の概要
本発明はアスベスト被曝に関連した肺癌を同定するための方法およびキットを提供し、この方法は、肺癌を患う個体またはアスベスト被曝による肺癌を発症する危険性のある個体から採取した肺癌細胞サンプルを提供し、そして肺癌細胞の以下の染色体領域:
a) 19p13.3-p13.1、b) 9q32-34.3、c) 2p21-p16.3、d) 16p13.3、
e) 22q12.3-q13.1 およびf) 5q35.3
の少なくとも1種に存在する、アスベスト関連肺癌に特徴的なアレル不均衡(AI)の種類を検出することを包含する。染色体領域に存在するアスベスト関連AIは、上記領域を越えてもかまわない。
発明の詳細な説明

I.定義
「アスベスト症」は、アスベスト粉塵に曝露した結果として生じる、肺のびまん性間質性繊維症と定義する。
「アレル不均衡」(AI)は、遺伝子対の一方のメンバー(即ち、アレル)が消失した(即ち、ヘテロ接合性の消失、LOH)または増幅した状態と定義する。従って、アレル不均衡は、染色体において一方のアレルのコピー数が変化した状態を示す。
「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、入れ替えて使用することが可能であり、いずれも1本鎖または2本鎖のデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを示す。特に断りがない限り、天然ヌクレオチドの公知の類似体であって、天然ヌクレオチドと同様に核酸にハイブリダイズするものも本発明の範囲に含まれる。特に記載がない限り、特定の核酸配列にはその相補鎖も含まれる。
「標的核酸」とは、ポリヌクレオチドプローブが特異的にハイブリダイズするように設計された、(屡々、生物学的サンプルから誘導した)核酸を意味する。標的核酸の存在または不存在が検出すべき対象であり、標的核酸の量が定量すべき対象である。標的核酸は、標的に対するプローブの核酸配列に相補的な配列を有する。標的核酸という用語は、プローブが結合すべき大きな核酸の特定のサブ配列、または発現レベルの検出が望まれる配列の全体(例えば、遺伝子またはmRNA)の両方を意味する。
「プローブ」または「ポリヌクレオチドプローブ」は、その相補配列を有する標的核酸に結合可能な核酸であって、1種または数種の化学結合、通常は相補的塩基対の形成(通常は水素結合の形成を介するもの)によって結合し、2本鎖構造を形成するものである。プローブは、「プローブ結合部位」に結合またはハイブリダイズする。プローブは、天然の塩基(即ち、A、G、CまたはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシンなど)を含むことができる。プローブは、1本鎖DNAであるオリゴヌクレオチドでもよい。ポリヌクレオチドプローブは合成するか、または天然のポリヌクレオチドから製造することができる。更に、プローブ内の塩基は、ハイブリダイゼーション反応に干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合で連結されていてもよい。従ってプローブには、例えば、構成塩基がホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合で連結したペプチド核酸(例えば、Nielsen et al., Science 254, 1497-1500 (1991)を参照)も含まれる。プローブのいくつかは、相補的な領域に隣接する非相補的なリーディング配列および/またはトレーリング配列を有していてもよい。「完全にマッチしたプローブ」は、特定の標的配列と完全に相補的な配列を有する。典型的なプローブは、標的配列の一部(サブ配列)と完全に相補的である。「ミスマッチしたプローブ」とは、特定の標的配列と完全に相補的ではないように意図的に配列を選択したプローブである。
「プライマー」とは、適切な条件下(即ち、4種の異なるヌクレオシド三リン酸と、DNAポリメラーゼ、RNA ポリメラーゼまたは逆転写酵素などのポリメライゼーション試薬の存在下)、適切な温度および適切なバッファー中で、テンプレート特異的DNA合成の複製開始点として働きうる1本鎖オリゴヌクレオチドである。プライマーの適切な長さはプライマーの用途によって異なるが、典型的には、15〜30ヌクレオチドの範囲内である。しかし、より短いプライマーや長いプライマーも使用することができる。テンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには、短いプライマー分子は一般的により低い温度を必要とする。プライマーはテンプレートの配列を完全に反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするのに十分な相補性がなければならない。「プライマー部位」とは、プライマーが標的DNAにハイブリダイズする場所である。「プライマーペア」とは、増幅するDNA配列の5’末端にハイブリダイズする5’の「上流プライマー」と、増幅するDNA配列の3’末端に相補的な配列にハイブリダイズする3’の「下流プライマー」とのセットである。
「相補的」とは、1つの核酸が他の核酸分子と同一であるか、または他の核酸分子と選択的にハイブリダイズすることを意味する。特異性が完全に欠如した状況よりも選択的なハイブリダイゼーションが生じる場合に、ハイブリダイゼーションの選択率が存在する。典型的には、少なくとも14〜25ヌクレオチドの連鎖に対して少なくとも約55%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、そして最も好ましくは少なくとも90%の同一性がある場合に、選択的なハイブリダイゼーションが生じる。1つの核酸が他の核酸に特異的にハイブリダイズすることが好ましい。M. Kanehisa, Nucleic Acids Res. 12:203 (1984)を参照。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は入れ替えて使用することが可能であり、いずれもアミノ酸残基のポリマーを意味する。これらの用語は、含まれるアミノ酸の1つまたはいくつかが天然に見られるアミノ酸に対応する化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにもおよぶ。
2種または数種の核酸またはポリペプチドに対して用いる「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、後述するような配列比較用アルゴリズムまたは目視検査によって最大の対応が得られるように比較とアラインメントを実施した時に、2種または数種の配列またはサブ配列が同じであるか、あるいは同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の量が特定のパーセントであることを意味する。
2種の核酸またはポリペプチドに対して用いる「実質的に同一」という表現は、後述するような配列比較用アルゴリズムまたは目視検査によって最大の対応が得られるように比較とアラインメントを実施した時に、2種または数種の配列またはサブ配列の間で同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基が少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%またはそれ以上であることを意味する。少なくとも約30残基、好ましくは50残基を越える長さ、より好ましくは少なくとも約70残基からなる領域であり、比較する配列の全長(例えばヌクレオチドコード領域)に渡って実質的な同一性が存在することが最も好ましい。配列の比較の際には、典型的には、1つの配列が試験配列と比較するための参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する際には、試験配列と参照配列をコンピューターに入力し、サブ配列の座標を選定し、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターも選定する。そうすると配列比較アルゴリズムは、選定したプログラムのパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント同一性を計算する。
比較を目的とした配列の至適アライメントの作製は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)のホモロジーアライメント用アルゴリズム、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性サーチのための方法、これらアルゴリズムのコンピューター実行手段(ウイスコンシン州、マディソン、575 サイエンスドライブ、Genetics Computer Group、ウイスコンシン遺伝学ソフトウエアパッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)に含まれるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学の最近のプロトコール)(Ausubel et al., 1995補遺)を参照)によって行うことができる。
配列比較のための有用なアルゴリズムの1つがPILEUPである。PILEUPは、Feng and Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351-360 (1987)の革新的なアライメント法の簡易版を使用する。使用する方法は、Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153 (1989)に記載の方法に類似している。PILEUPを使用すると、参照配列を他の試験配列と比較し、以下のパラメーターを用いてパーセント配列同一性の関係性を決定する: デフォルトギャップ重み(3.00)、デフォルトギャップ長さ重み(0.10)、および重み付けエンドギャップ。PILEUPはGCG配列解析ソフトウエアパッケージ(sequence analysis software package)、例えば、バージョン7.0(Devereaux et al., Nuc. Acids Res. 12:387-395 (1984))から入手可能である。
パーセント配列同一性と配列類似性の決定に適したアルゴリズムの他の例としては、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載のBLASTアルゴリズムとBLAST 2.0アルゴリズムが挙げられる。BLAST解析を行うためのソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から一般に入手可能である。このアルゴリズムにおいては、初めに、クエリ配列中の長さWの短いワードを同定することで高スコア配列ペア(HSP)を同定する。HSPは、データベース中の同じ長さのワードとアライメントを行った際に、正の値である閾値スコアTと一致するかまたは満足するものである。Tは、近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)である(前記のAltschul et al)。これらのヒットした初期近隣ワードが、それを含む長いHSPを見つけるためのサーチを開始するための足がかりとなる。次に、ヒットしたワードの配列に沿ってその両側を伸長するが、この伸長を積算アライメントスコアが上昇する限り継続する。積算スコアの計算は、例えば、ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(マッチした残基ペアに対する報償スコアであり、常に0を超える)とN(ミスマッチした残基に対するペナルティスコアであり、常に0未満である)を使用して計算する。アミノ酸配列については、積算スコアの計算にスコア決定用マトリクスを使用する。各方向へのヒットしたワードの伸長は、以下のいずれかの条件を達成した場合に停止した: 積算アライメントスコアがその最大達成値よりもX量低下した時、1個または数個の負のスコア残基アライメントの積算によって、積算スコアがゼロまたはゼロ未満になった時、あるいは配列のいずれかの末端に到達した時。
核酸またはポリペプチドが本発明の範囲内にあるかどうかを決定するためには、BLASTプログラムのデフォルトパラメーターが適している。(ヌクレオチド配列用の)BLASTNプログラムは、デフォルト値として、ワード長さ(W)が11、期待値(E)が10、M=5、N=−4を使用し、両方の鎖を比較する。アミノ酸配列のためのBLASTPプログラムは、デフォルト値としてワード長さ(W)が3、期待値(E)が10、およびBLOSUM 62のスコアマトリクスを使用する。(ヌクレオチド配列に対してタンパク質配列を使用する)TBLATNプログラムは、デフォルト値として、ワード長さ(W)が3、期待値(E)が10、およびBLOSUM 62のスコアマトリクスを使用する(例えば、Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)。
2つの核酸配列が実質的に同一であることを示す他の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることである。「実質的に結合する」とは、プローブ核酸と標的核酸との間の少量のミスマッチを含む相補的ハイブリダイゼーションを意味し、ミスマッチは、ハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを低下させることで標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出に適応可能なものである。「特異的にハイブリダイズする」という表現は、ストリンジェントな条件下である分子が、複雑な混合物である(例えば、全細胞)DNAまたはRNAに含まれる特定のヌクレオチド配列とのみ結合する、二重化するまたはハイブリダイズすることを意味する。
「ストリンジェントな条件」とは、プローブがその標的サブ配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、状況に応じて変化する。長い配列は高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件として、特定のイオン強度とpHにおける特定配列の融点(Tm)から約5℃低下した温度を選択する。Tmは、(特定のイオン強度、pHおよび核酸濃度において)標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。(通常、標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている。)典型的なストリンジェントな条件における塩濃度は約1.0M Naイオン未満であり、更に典型的には、pH7.0〜8.3においてNaイオン(または他の塩)の濃度が約0.01〜1.0Mであり、温度は、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)で少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化試薬の添加によっても達成することができる。
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの他の指標は、第一の核酸のコードするポリペプチドが第二の核酸のコードするポリペプチドに対して、後述する免疫学的な交差反応性を示すことである。「タンパク質に特異的に結合する」や「特異的な免疫反応を示す」という表現を抗体に対して使用した場合には、タンパク質と他の生体分子を含む異種集団において、特定のタンパク質の存在を決定付ける結合反応を意味する。従って、指定したイムノアッセイ条件下において、特異的な抗体は特定のタンパク質に優先的に結合し、サンプル中の他のタンパク質と顕著な量の結合を示すことはない。このような条件下におけるタンパク質との特異的な結合には、特定のタンパク質に対する特異性に基づいて選択した抗体が必要である。特定のタンパク質と特異的な免疫反応性を示す抗体を選択するために、種々の形式のイムノアッセイを使用することができる。例えば、タンパク質と特異的な免疫反応を示すモノクローナル抗体の選択には、固相ELISAイムノアッセイが慣例的に使用されている。特異的な免疫反応性を決定するためのイムノアッセイの形式と条件に関する記載については、例えば、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual(抗体、実験マニュアル)、ニューヨーク州、Cold Spring Harbor Publicationsを参照することができる。
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的に修飾された変異」とは、同一または実質的に同一なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、あるいは、ポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、実質的に同一な配列を意味する。遺伝コードの縮重故に、複数の機能的に同一な核酸が特定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGAとAGGはいずれもアミノ酸アルギニンをコードする。従って、あるコドンによってアルギニンが特定されている全ての部位において、コードしているポリペプチドを変化させることなく、該コドンを上述した対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸変異は、「保存的に修飾された変異」の1種である、「サイレント変異」である。本願に記載した、ポリペプチドをコードする全てのポリヌクレオチド配列には、特に記載がない限り、可能な全てのサイレンス変異も含まれるものとする。当業者は、機能的に同一な分子を得るために、核酸中の全てのコドン(但し、通常はメチオニンをコードする唯一のコドンであるAUGを除く)が標準的な技術によって修飾可能であることを理解している。従って、ポリペプチドをコードする核酸の「サイレント変異」が、本願に記載した各配列に含意されている。
あるポリペプチドが第二のポリペプチドと実質的に同一である典型例として、例えば、2つのペプチドの違いが保存的な置換のみの場合が挙げられる。「保存的な置換」という表現をタンパク質に対して用いた場合には、タンパク質の活性を実質的に変化させることのない、タンパク質のアミノ酸組成の変化を意味する。特定のアミノ酸配列の「保存的に修飾された変異」とは、タンパク質活性に重要ではないアミノ酸のアミノ酸置換、あるいは、同様の特性(例えば、酸性、塩基性、陽性または陰性の電荷、極性または非極性など)を有するアミノ酸による置換であり、例え重要なアミノ酸の置換であっても、活性に実質的な変化が生じないものを意味する。機能的に類似したアミノ酸を列挙した保存的な置換の表は、当業界でよく知られている。例えば、Creighton (1984)の Proteins(タンパク質), W.H. Freeman and Companyを参照。更に、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはアミノ酸の数パーセントに対して変化、挿入または欠失をもたらす個々の置換、欠失または挿入も、「保存的に修飾された変異」である。
「天然に存在する」という用語をある物体に対して使用した場合には、その物体が自然界から見出されうるものであることを意味する。例えば、天然原料から単離することが可能な生物に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列であり、且つ実験室で人によって人為的な修飾が加えられていないものが、天然に存在するものである。
「抗体」とは、イムノグロブリン遺伝子またはイムノグロブリン遺伝子断片によって実質的にコードされている1種または数種のポリペプチドからなるタンパク質である。認識されるイムノグロブリン遺伝子にはκ、λ、α、γ、δ、εおよびμの定常領域遺伝子と共に、無数のイムノグロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεに分類され、それぞれの重鎖がイムノグロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。
II. 概要
多くの生物学的機能が、転写制御(例えば、転写開始の制御やRNAプロセッシングなど)および/または翻訳制御による、種々の遺伝子の発現の変化を通じて制御されている。例えば、細胞周期、細胞分化や細胞死などの基本的な生物学的機構は、多くの場合、一群の遺伝子の異なる発現レベルによって特徴付けられている(例えば、WO02059271を参照)。遺伝子発現の変化は、発病とも関連する。従って、特定遺伝子の発現レベルの変化は、種々の疾患の存在および進行の指標となりうる。
本発明によって、アスベスト関連肺癌において発現レベルの変動している遺伝子が見出された。これら標的遺伝子の1種または数種を、肺癌の特定の状態を表す「発現プロファイル」の一部として使用することができる。これら新規な標的遺伝子の同定によって、より信頼性の高い肺癌の解析が可能となる。更にこれらの結果は、アスベスト被曝に関連した発癌メカニズムへの新たな洞察を提供し、肺癌などのアスベスト関連疾患の治療のための新たな潜在的な標的遺伝子を明らかにする。これらの発現レベルの変動する遺伝子およびそれに対応するタンパク質は、肺癌細胞の特定の細胞状態を特徴付けるための「マーカー」としても使用することもできる。
同定した発現レベルの変動する遺伝子は、肺癌の分類のための様々な方法のみならず、他のアスベスト仲介疾患(例えば、アスベスト症、胸膜異常と中皮腫)の診断と処置にも有用である。本発明は、発現レベルの変動する遺伝子、これら遺伝子のコードするタンパク質および/または上記タンパク質や遺伝子に結合する抗体、プライマーとプローブの1種または数種を含有するキットや手段も提供する。
例えば、発現レベルの変動する遺伝子は、発現レベルの変動する遺伝子の発現または活性を調節する化合物を同定するためのスクリーニング方法に使用することができる。このような方法は、例えば、発現レベルの変動する遺伝子のコードするタンパク質の発現に関連した障害に伴う症状を処置することのできる化合物の同定に使用することができる。更に、本発明には、1種または数種の標的遺伝子または標的遺伝子産物の活性を調節する化合物および/または他の物質を投与する肺癌の処置方法も含まれる。このような化合物および他の物質は、標的遺伝子の発現または標的タンパク質の活性のいずれかのレベルでの調節を実行することができる。ここで提供するある種の分類方法は、肺癌がアスベスト被曝によるものか否かを決定するために、1種または数種の発現レベルの変動する遺伝子の量を測定する工程を含んでいる。発現レベルの変動する遺伝子は、アスベスト被曝による肺癌の危険性のある個体について、肺癌の早期診断、予測および予防を行うための方法を開発するためにも使用することができる。
III. 発現レベルの変動する遺伝子
後述する実施例でより詳細に説明するが、初期の一群の実験は、肺癌細胞の遺伝子発現プロファイルを同定するために行った。これによって、アスベスト被曝に関与する遺伝子の同定が可能となった。発現レベルの変動する遺伝子には、例えば、表5に列挙した遺伝子が含まれる。
後により詳細に考察するが、種々の肺癌において上方制御または下方制御されている核酸に関する知見は、数々の異なるスクリーニング方法、処置方法および診断方法の基礎みならず、これらの方法を実施するための手段の基礎を提供する。本願で使用するように、発現プロファイルは、発現レベルの変動する少なくとも1種の遺伝子、典型的には複数の遺伝子、に対応する遺伝子発現パターンを意味する。一例においては、発現プロファイルは少なくとも1種、2種、3種、4種または5種の発現レベルの変動する遺伝子を含んでいるが、他の例においては、少なくとも6種、7種、8種、9種、10種、12種、14種、16種、18種、20種、25種、30種、35種、40種、45種または50種以上の発現レベルの変動する遺伝子を含んでいる。ある場合には、発現プロファイルは、特定の種類の肺癌細胞について知られている発現レベルの変動する遺伝子の全てを含んでいる。従って、例えば、ある発現プロファイルは、表5に示した発現レベルの変動する遺伝子のそれぞれの発現レベルの(定量的または定性的な)測定値を含んでいる。
遺伝子発現プロファイルに関連した発現パターンは、いくつかの方法で定義することができる。例えば、遺伝子発現プロファイルは、いくつかの特定の発現レベルの変動する遺伝子の絶対的な転写レベル(例えば、測定値)、または相対的な転写レベルである。別の場合には、遺伝子発現プロファイルは、種々の遺伝子発現レベルを、ある状態と別の状態(例えば、活性型と非活性型)の間で比較するか、ある細胞種と別の細胞種との間で比較することによって定義することができる。
本願で使用するように、「発現レベルの変動する遺伝子」または「発現レベルの変動する核酸」とは、本願で提供する、特定のGenBankエントリーに開示された特定の配列を意味する(例えば、表を参照)。しかし、この用語は、より広範囲におよび、天然に存在する配列(GenBankのエントリーとして列挙された配列のアレル変異も含む)のみならず、合成および意図的に操作した配列(例えば、部位特異的突然変異に付した核酸)も含むことを意図している。表に列挙した標的遺伝子の配列は公知のデータベースから入手可能である点に留意されたい。表は、各配列のアクセッション番号と名称を提供する。GenBankエントリー中の遺伝子の配列は、この記載をもって、本願の出願日におけるその情報の全てが本願に明示的に組み込まれたものとする(www.ncbi.nim.nih.govを参照)。
発現レベルの変動する核酸には、列挙した配列の相補鎖のみならず、遺伝コードの縮重の結果である縮重配列も含まれる。従って、発現レベルの変動する核酸には、次の核酸が含まれる:(a)列挙したGenBankのアクセッション番号によって提供される配列に対応する配列を有する核酸、(b)(a)の核酸がコードするアミノ酸配列をコードする核酸、(c)(a)の核酸の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、および(d)(a)〜(c)に記載した核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、よってそれらの相補的配列である核酸。本発明の発現レベルの変動する核酸には、更に次の核酸も含まれる:(a)列挙したGenBankのアクセッション番号に対応する全長ヌクレオチド配列に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列、(b)列挙したGenBankのアクセッション番号に対応する全長ヌクレオチド配列に相補的なリボヌクレオチド配列、および(c)(a)のデオキシリボヌクレオチド配列および(b)のリボヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。発現レベルの変動する核酸には、更に上述した配列の断片も含まれる。例えば、発現レベルの変動する核酸の中の連続した10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275または300ヌクレオチド(またはこの範囲内の全ての数のヌクレオチド)を含む核酸が挙げられる。このような断片は、例えば、発現レベルの変動する核酸の全長とハイブリダイズする(例えば、このような配列を検出および増幅するための)プライマーとプローブとして有用である。
場合によっては、発現レベルの変動する核酸に保存的に修飾された変異が含まれる。例えば、発現レベルの変動する核酸が修飾されている場合もある。当業者は、与えられた核酸構築物を変化させる種々の方法を認識する。このような方法には、部位特異的突然変異、縮重ポリヌクレオチドを用いたPCR増幅、核酸を含む細胞の変異誘発剤または放射線への暴露、および所望のポリヌクレオチドの化学合成(例えば、より大きな核酸を作製するための連結および/またはクローニングとの組み合わせ)が含まれる。(例えば、Giliman and Smith (1979) Gene 8:81-97、Roberts et al. (1987) Nature 328: 731-734を参照。)発現レベルの変動する核酸がベクターに組み込まれた場合には、核酸は他の配列(プロモーター、ポリアデニル化シグナル、制限酵素部位および複数のクローニング部位が挙げられるが、これらに限定されるものではない)と組み合わせることができる。従って、核酸の全体の長さは相当に異なりうるものである。
上述したように、配列同一性比較は、例えば、当業者に公知のヌクレオチド配列比較用アルゴリズムを用いて行うことができる。例えば、BLASTNアルゴリズムを使用することができる。BLASTNの使用に適切なパラメーターは、ワード長さ(W)が11、M=5およびN=−4であり、同一性の値と領域の大きさは前記したものである。
IV. 発現レベルの変動する遺伝子の調製
発現レベルの変動する核酸は、当業界で知られる適切な方法によって得ることができる。例えば、次の方法が挙げられる:(1)相同ヌクレオチド配列を検出するための、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダイゼーション、(2)クローニングした、構造的特徴を共有するDNA断片を検出するための、発現ライブラリーの抗体スクリーニング、(3)目的核酸にアニーリングすることが可能なプライマーを用いた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの種々の増幅手法、および(4)直接化学合成。
所望の核酸は、よく知られた増幅技術によってクローニングすることもできる。当業者がin vitro増幅方法を実施するのに十分なプロトコルの例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβレプリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼ仲介技術が挙げられ、これらは前述のBerger、SambrookやAusubelのみならず、Mullis et al. (1987)の米国特許第4,683,202号、PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(PCRプロトコル、方法と応用への手引き)(Innis et al.編) カリフォルニア州、サンディエゴ、Academic Press Inc. (1990) (Innis)、Arnheim and Levinson (1990年10月1日) C&EN 36-47、The Journal Of NIH Research (1991) 3: 81-94、Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173、Guatelli et al. (1990) PRoc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874、Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem. 35: 1826、Landegren et al. (1988) Science 241: 1077-1080、Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294、Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560およびBarringer et al. (1990) Gene 89: 117に記載がある。In vitro増幅核酸のクローニングの改良方法がWallace et al.の米国特許第5,426,039号に記載されている。
核酸をクローニングする代わりに、適切な核酸を化学合成することもできる。直接化学合成方法としては、例えば、Narang et al. (1979) Meth. Enzymol. 68: 90-99のホスホトリエステル法、Brown et al. (1979) Meth. Enzymol. 68: 109-151のホスホジエステル法、Beaucage et al. (1981) Tetra. Lett., 22: 1859-1862のジエチルホスホラミダイト法、および米国特許第4,458,066の固体支持体法(solid support method)が挙げられる。化学合成は一本鎖ポリヌクレオチドを製造する。これは、相補鎖とのハイブリダイゼーション、または一本鎖をテンプレートとして用いたDNAポリメラーゼによるポリメライゼーションによって、二本鎖DNAに変換することができる。DNAの化学合成は多くの場合、約100塩基までの配列に限られるが、短い配列を連結することによってより長い配列を得ることができる。代わりに、サブ配列をクローニングし、適当な制限酵素を用いて適当なサブ配列を開裂し、続いて断片を連結して所望のDNA配列を得ることもできる。
V. 発現レベルの変動する核酸と発現プロファイルの用途
上記で言及しており、更に詳細に後述するように、本願で提供する発現レベルの変動する核酸は、種々のスクリーニング方法および診断方法において、マーカーとして使用することができる。例えば、発現レベルの変動する核酸には、ハイブリダイゼーション用のプローブまたは増幅用プライマーとしての用途がある。場合によっては、このようなプローブとプライマーは、発現レベルの変動する核酸の上述した長さの断片である。このような断片は、通常、対象から得たサンプル中のRNAまたはDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分な長さである。核酸の典型的な長さは10〜30ヌクレオチドであるが、上述したようにより長いものでもかまわない。プローブは多岐に渡る異なる種類のハイブリダイゼーション実験に使用することでき、例としては、ノーザンブロットやサザンブロット、およびカスタムアレイの作製(後記参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。発現レベルの変動する核酸は、発現レベルの変動する核酸の増幅のためのプライマーの設計および定量的RT−PCRのためのプライマーとプローブの設計にも使用することができる。プライマーは、所望の程度の安定性を示し、よって増幅において選択性を示すために、最も多くの場合、発現レベルの変動する核酸の約20〜30の連続したヌクレオチドからなる。しかし、上述したようなより長い配列も使用することができる。
ハイブリダイゼーション条件はその特定の用途に応じて変化させる。高い選択性が要求される用途(例えば、特定の配列の増幅)においては、比較的ストリンジェントな条件、例えば、NaCl濃度が0.02M〜約0.10M、温度が約50℃〜約70℃の条件、を使用する。このような高ストリンジェンシーの条件は、プローブとテンプレートまたは発現レベルの変動する核酸の標的鎖との間に仮にミスマッチが存在しても、これをわずかしか許容しない。このような条件は、例えば、特定の遺伝子の単離または特定のmRNA転写産物の検出に有用である。
他の用途、例えば、部位特異的突然変異によるアミノ酸置換には低いストリンジェンシーが必要である。このような条件下では、プローブと標的核酸の配列が完全に相補的ではなく、代わりに1種または数種のミスマッチを含んでいてもハイブリダイゼーションは生じる。ハイブリダイゼーション条件は、塩濃度の上昇と温度の低下によってストリンジェンシーを下げることができる。例えば、中度のストリンジェンシーの条件においては、NaCl濃度は約0.1〜0.25M、温度は約37℃〜約55℃である。低度のストリンジェンシーの条件においては、塩濃度が約0.15M〜約0.9M、温度は約20℃〜約55℃の範囲内である。
VI. 代表的なスクリーニング方法、診断方法と分類方法

A. 一般的な注意
本願で提供する方法のいくつかは、試験細胞集団について測定した1種または数種の発現レベルの変動する遺伝子の発現レベルと、対照細胞集団における同じ遺伝子の発現レベルとの比較、あるいはあるサンプルの発現プロファイルと別のサンプルについて求めた発現プロファイルとの比較を包含する。発現レベルの変動する核酸の発現レベルは、核酸レベルまたはタンパク質レベルで測定することができる。「発現レベルの測定」、「遺伝子発現プロファイルの作製」や他の類似した表現は、発現レベルの変動する核酸について用いた場合、転写産物量および/または発現レベルの変動する核酸のコードするタンパク質の量を検出することを意味する。発現レベルを測定する場合には、定性的に測定することもできるが、通常は定量的に測定する。
本願で開示する配列情報を、本願に記載し、当業界で知られる核酸とタンパク質の測定方法と組み合わせることによって、遺伝子の発現レベルを容易に測定することができる。転写産物量を測定する場合には、慣例的な方法で測定することができる。例えば、本願で提供する配列情報(例えば、GenBank登録配列)は、種々のハイブリダイゼーション検出方法(例えば、ノーザンブロット)を用いた核酸プローブの構築に使用することができる。代わりに、提供した配列情報をプライマーの作製に使用し、プライマーをサンプル中に存在する発現レベルの変動する核酸の増幅と検出(例えば、定量的RT−PCR法)に使用することができる。代わりに発現をタンパク質レベルで検出する場合には、既に確立された種々の方法のいずれかを用いて、コードされているタンパク質を検出し、所望により定量する。一般的な手法の1つは、イムノアッセイ法においてタンパク質産物と特異的に結合する抗体を使用することである。変動する遺伝子発現の測定方法に関する更なる詳細については後述する。
1種または数種の表に列挙した発現レベルの変動する核酸の1つ、一部または全部の発現レベルを検出することができる。いくつかの方法においては、1種、2種、3種、4種または5種の発現レベルの変動する核酸の発現レベルだけを測定する。他の方法では、少なくとも6種、7種、8種、9種または10種の発現レベルの変動する核酸の発現レベルを測定する。別の方法では、少なくとも15種、20種、25種、30種、35種、40種、45種、50種、55種または60種の発現レベルの変動する核酸の発現レベルを測定する。更に別の方法では、1種または数種の表に列挙した発現レベルの変動する核酸の全てについて、その発現レベルを測定する。
発現レベルの測定は、典型的には試験細胞集団から得た試験サンプルを用いて行う。本願で使用するように、細胞に対して使用する「集団」という用語は、単一細胞の集団を意味することもあるが、典型的な場合には複数種の細胞からなる集団(例えば、組織サンプル)を意味する。あるスクリーニング方法を、1種または数種の発現レベルの変動する核酸を「発現可能な」試験細胞を用いて実施する。このような文脈で使用するように、「発現可能な」という表現は、目的の遺伝子が本来の形で存在し、細胞内で発現されうることを意味する。
本願で提供する多数の方法には、「試験細胞」内の発現レベルの変動する核酸の発現レベルを、「対照細胞」(時には「対照サンプル」、「参照細胞」、「参照値」や単に「対照」とも称する)の同じ核酸の発現レベルと比較することが含まれる。他の方法は、1種の発現プロファイルとベースライン発現プロファイルとの比較を包含する。いずれの場合も、対照細胞の発現レベルまたはベースライン発現プロファイルが、実験値を比較するベースラインを実質的に確立する。発現レベルの比較においては、以下の項目を広義に解釈するものとする: 1)「細胞」という用語、2)試験細胞と対照細胞の発現レベルを測定した時期、および3)発現レベルの測定値。
従って、例えば、「試験細胞」と「対照細胞」という用語を便宜上使用するが、「細胞」という用語の意味は広範におよぶものと解釈する。例えば、細胞は、複数種の細胞からなる集団(例えば、組織サンプル)でもよいが、単一メンバーからなる細胞の集団でもよい。ある場合には細胞は、細胞から誘導したサンプル(例えば、細胞融解物、ホモジェネートまたは細胞画分)である。一般的にサンプルは、種々の原料、特に肺癌あるいは肺癌を患う個体または肺癌の危険性のある個体の体液から得ることができる。
時期については、発現レベルの比較は同時に行う(例えば、試験細胞と対照細胞のそれぞれを平行反応系において試験試薬と接触させる)ことができる。代わりに、時間的に別個の時期に測定した発現レベルを用いて比較することもできる。一例としては、試験細胞の発現レベルを集める前に対照細胞の発現レベルを集め、将来使用するために保存しておく(例えば、発現レベルをコンピューター互換性の保存媒体に保存する)。
対照細胞の発現レベルまたはベースライン発現プロファイル(例えば、ベースライン値)は、1つの細胞に関する値でも、複数の細胞について求めた相加平均(average)、平均値(mean)や他の統計値でもよい。一例として、対照細胞の発現レベルは、対象者の集団における発現レベルの相加平均である。別の場合には、各対照細胞の発現レベルは、特定の集団について観察される範囲を代表する値の範囲である。発現レベルの値は定性的または定量的でもよい。発現レベルの値は、所望により、解析に用いるマーカーの1つではない核酸の発現レベルに対して正規化してもよい。
いくつかの方法に必要な比較解析には、発現レベルの値が「同等」(または「類似」)であるか否か、あるいは互いに「異なる」か否かの決定が含まれる。一例においては、試験細胞と対照細胞における特定のマーカーの発現レベルの差が、実験誤差レベル以下の場合に類似しているとみなす。しかし、多くの場合、対照細胞に対する試験細胞の発現レベルの差が5%、10%、20%、50%、100%、150%または200%未満の時には、発現レベルは類似するとみなす。従って、一例においては、試験細胞内の特定のマーカーの発現レベルが、対照細胞内の同じマーカーの発現レベルと異なるとみなすのは、この差が実験誤差レベルを超える時、あるいは5%、10%、20%、50%、100%、150%または200%を超えた時である。いくつかの方法における比較には、試験細胞と対照細胞の間のマーカー発現レベルにおける「統計的有意差」の有無の決定が含まれる。一般的に差が「統計的に有意」であるとみなされるのは、観察された差が偶然生じる確立(p値)が予め決めておいた値よりも少ない場合である。本願で使用するように、「統計的有意差」とは、p値が0.05未満、好ましくは0.01未満、更に好ましくは0.001未満の時である。遺伝子発現が十分に増加し、対照細胞またはベースラインと比べて(上で定義したように)異なる場合、この遺伝子の発現は「上方制御された」または「増加した」とみなす。また、遺伝子発現が十分に減少し、対照細胞またはベースラインと比べて異なる場合、この遺伝子の発現は「下方制御された」または「減少した」とみなす。
試験細胞と対照細胞の間の発現レベルの比較には、単一マーカーの発現レベルの比較または複数マーカーの発現レベルの比較(例えば、発現プロファイルを比較する場合)のいずれかが含まれる。単一マーカーの発現レベルを測定する場合、試験細胞と対照細胞の発現レベルが類似しているか異なるかの決定には、単一マーカーの発現レベルの比較が含まれる。しかし、複数マーカーの発現レベルを比較する場合、比較解析には次の2種の解析が含まれる: 1)試験する各マーカーについて、試験細胞と対照細胞の発現レベルが類似しているかどうかを測定し、そして 2)試験した一群のマーカーの内、発現レベルが類似するか異なるものの数を測定する。第一の測定は、上述したように行う。第二の測定は、典型的には、試験したマーカーの少なくとも50%が発現レベルの類似性を示すかどうかを決定する。しかし、よりストリンジェントな相関関係が求められる場合には、試験した一群のマーカーの内の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または100%が類似した発現レベルを示す場合にだけ、試験細胞と対照細胞の発現レベルが類似しているとはみなす。
B. スクリーニング方法
1. 模範的なアプローチ
遺伝子発現の変化をモニタリングすることは、薬物のスクリーニングおよび開発の際に有益である。多く場合、薬物が主要な標的と相互作用する能力についてプレスクリーニングを行うが、この時、薬物が細胞に与える他の作用については考慮しない。屡々、このような他の作用が動物全体にとって毒性となり、薬物候補の開発と使用の妨げとなることがある。遺伝子発現の包括的な変化は、診断、予測および予防において有用なマーカーのみならず、疾病状態、疾病進行および薬物代謝のモニタリングに使用可能なマーカーとしても有用である。従って、これら遺伝子の発現プロファイルは、薬物の毒性、薬物の効果および疾病のモニタリングのための分子ツールを提供する。
ベースラインプロファイル(例えば、表5のデータ)からの発現プロファイルの変化は、このような効果の指標として使用することができる。当業者は、目的の細胞またはサンプルの発現プロファイルにおける変化を観測するために、種々の公知技術を用いて、本願で同定した1種または数種の遺伝子および/または遺伝子断片の発現を評価することができる。発現データのみならず、入手可能な配列や他の情報の比較は、研究者または診断者によって、またはコンピューターとデータベースの補助によって行うことができる。
いくつかのスクリーニング方法においては、標的遺伝子または標的遺伝子の発現の制御に関与する他の遺伝子(例えば、標的遺伝子の制御領域または転写因子と相互作用する)の発現に影響を与える化合物と分子のスクリーニングを行う。本発明のタンパク質の活性に(例えば、標的遺伝子活性の阻害によって)影響を与える化合物や、標的遺伝子の制御に関与する分子の活性に影響を与える化合物を同定するためにも、化合物のスクリーニングを行う。
よって、例えば、いくつかの方法においては、薬物候補化合物のスクリーニングを行うことによって、この化合物の使用が本願で同定した1種または数種の標的遺伝子の発現を変化させるかどうかを判定する。この方法は、例えば、ある化合物が、アスベスト関連肺癌または他のアスベスト仲介疾患の処置に有効であるかどうかを判定するために有用である。アスベスト被曝を受けた細胞の遺伝子発現が薬物候補化合物の影響を受ける場合には、この化合物はアスベスト関連肺癌または他のアスベスト仲介疾患の処置の1つとなりうる。同様に、アスベスト被曝を受けた細胞において通常は下方制御されている遺伝子の発現を促す薬物候補化合物は、上述した疾患の処置の1つとなりうる。
本発明によると、表5に列挙した標的遺伝子も、候補薬物または試薬がアスベスト被曝を受けた細胞に与える影響を評価するためのマーカーとして使用することができる。候補薬物または試薬は、与えられた1種または数種のマーカー(薬物標的)の転写または発現を促進する能力、あるいは1種または数種のマーカーの転写または発現を下方制御または阻害する能力についてスクリーニングする。本発明によると、薬物の影響を受けるマーカーの数を確認し、他の薬物の影響を受けるマーカーの数と比較することで、薬物効果の特異性を比較することができる。より特異的な薬物は、より少ない転写標的に影響を与える。2種の薬物について同定されたマーカーのセットが類似しているということは、それらの効果が類似していることを示している。
表5の1種または数種の遺伝子のコードするタンパク質の発現レベル、濃度または少なくとも1種の活性を制御する試薬を同定するために、いくつかの方法が設計されている。このような方法またはアッセイは、所望の活性のモニタリングまたは検出のためのいかなる手段を使用してもかまわない。
アッセイとスクリーニングは、標的遺伝子の発現または活性に対して効果的な活性化剤または阻害剤となる化合物の同定に使用することができる。このようなアッセイとスクリーニングは、ライブラリーからの分子の物理的な選択、および分子ライブラリー中の化合物のデジタルモデルと標的遺伝子産物(即ち、タンパク質)の活性部位のデジタルモデルとのコンピューターによる比較によって行うことができる。
アッセイとスクリーニングで同定した活性化剤または阻害剤は、標的遺伝子産物との結合や、標的遺伝子産物、標的遺伝子産物とその基質との相互作用に干渉する化合物、標的遺伝子の活性を調節する化合物、または標的遺伝子または標的遺伝子産物の発現を調節する化合物に結合する細胞内タンパク質との結合によって作用するが、これらに限定されるものではない。
アッセイは、標的遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)に結合し、遺伝子発現を調節する分子の同定にも使用することができる。例えば、Platt (1994), J. Biol. Chem., 269:28558-28562を参照。
2. 変動する遺伝子発現を検出するための方法
表5で定義したマーカーの発現をモニターするためのアッセイには、標的遺伝子の発現レベルの変化をモニターするための入手可能ないかなる手段も使用することができる。本願で使用するように、アスベスト被曝を受けた細胞における標的遺伝子の発現を上方または下方に制御することが可能な試薬が、標的遺伝子の発現を調節するものである。本願で同定した遺伝子のコードするタンパク質産物をアッセイすることによって、発現量を測定することもできる。特定のタンパク質産物、mRNA産物またはDNA産物を特異的且つ定量的に計測するいかなる方法も使用することができる。しかし、本発明における典型的な方法とアッセイは、多数の遺伝子の発現を検出することを目的とした場合、PCR、アレイまたはチップハイブリダイゼーションに基づく方法を使用する。
アスベスト被曝を受けた細胞において発現レベルが異なると同定された遺伝子は、与えられたサンプル中の1種または複数の遺伝子の発現レベルを検出または定量するための種々の核酸検出アッセイに使用することができる。例えば、古典的なノーザンブロッティング、ドットブロット法、ヌクレアーゼ保護法、RT−PCR、ディファレンシャルディスプレイ法、サブトラクティブハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションを、遺伝子発現レベルの検出に使用することができる。mRNA発現のレベルは、本発明の核酸とプローブのハイブリダイゼーションによって直接モニターすることができる。遺伝子の上方制御または下方制御がタンパク質レベルに影響を及ぼす場合には、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA法、および免疫組織化学といった使用可能ないずれかの方法で、タンパク質を計測することもできる。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning - A Laboratory Manual(分子クローニング−実験マニュアル)、ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照。
当業者は、本発明の実施に適したアレイデザインが無数に存在することを認識するであろう。典型的な高密度アレイには、目的配列に特異的にハイブリダイズする複数のプローブが含まれる。与えられた遺伝子に対するプローブを作製するための方法については、WO 99/32660を参照。更に、好ましい態様においては、アレイには1種または数種の対照プローブが含まれる。
C. 診断方法
肺癌を患う対象がアスベスト関連肺癌であるか否かを調べるための方法も提供する。このような方法には、通常、肺癌を有するか、その疑いのある対象および/またはアスベスト被曝を受けたか、その疑いのある対象からサンプルを得る工程が含まれる。
本発明の診断方法は、アスベスト被曝に関連した肺癌を効果的に同定する。好ましい方法は、肺癌を患う個体から採取した肺癌細胞サンプルを提供し、そして肺癌細胞の以下の染色体領域(表3と表6を参照):
a) 19p13.3-p12、
b) 9q32-34.3、
c) 2p21-p16.3、
d) 16p13.3、
e) 22q12.3-q13.1 および
f) 5q35.3
の少なくとも1種に存在する、アスベスト関連癌に特徴的なアレル不均衡(AI)を検出することを包含する。
アスベスト関連AIは上記領域を超えてもよい。実施例で示すように、上記領域の少なくとも1種に見られる特徴的なアレル不均衡(AI)は、肺癌細胞の悪性度がアスベスト被曝に関連することの指標となる。上記領域の2つ、3つ、4つまたは全てにAIが存在することは、癌の発生におけるアスベスト仲介因子の重要性を確証する。
アレル不均衡を染色体領域19p13.3-p12で測定し、続いて染色体領域9q32-34.2と2p21-p16.3で測定することが好ましい。
肺癌症例において、上記3つの領域の全てにAIが発生していた場合、この症例がアスベスト関連癌である尤度は90%である。AIが上記領域のいずれにも発生していない場合は、肺癌症例がアスベストによるものではない尤度は98%である。
表7に示したように、染色体領域19p13.3-p12内のAIの存在は、以下のマイクロサテライトマーカー:19S814、19S883、19S878、19S424、19S894、19S216、19S177、19S1034、19S873、19S884、19S916、19S583、19S535、19S906、19S221、19S840、19S917、19S895および19S568を使用して評価することができる。また、この領域の他の多型マーカーも使用することができる。19p13.3-p12内のAIは、単独で肺癌がアスベスト関連である尤度が65%であることを示すマーカーとして使用することができる(表7)。
アレル不均衡(AI)は、不均衡の性質、即ち、アスベスト関連肺癌または非アスベスト関連肺癌における消失と増加、に応じて、複数の手法で測定することができる。測定の好ましい方法としては、例えば、アレイ技術、ヘテロ接合性の消失(LOH)の解析、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)技術、および定量的PCRなどが挙げられる。AIは、例えば、腫瘍と正常細胞の間に見られるある染色体領域のわずか1コピーの差に過ぎないこともあるので、癌細胞のAIを検出する際には、サンプルへの正常細胞の混入を防止するために、癌細胞のレーザー顕微解剖が必要な場合もある。染色体材料のAI、欠失または増幅を癌細胞含有組織切片からFISH技術を用いて測定する場合には、レーザー顕微解剖は必要ない。特異的なアレイ、例えば、アスベスト関連肺癌とアスベストを原因因子としない肺癌を区別する染色体領域に対して、オリゴアレイまたはSNPアレイを設計することもできる。
更に、AIのみならず、個別の遺伝子または複数の遺伝子の発現レベルを、肺癌症例の原因因子としてアスベストを検出するために使用することができる。試験細胞の集団は、対象の肺癌細胞が含まれるように選択する。次に、遺伝子の発現レベルを、好ましくは対照サンプルの同じ遺伝子の発現レベルと比較する。肺癌の存在または不存在に係る対照サンプルの状態はわかっていることが好ましい(例えば、対照サンプルは、肺癌を患っていないが、アスベストに被曝した個体や、好ましくは、肺癌を患っているが、アスベストに被曝していない個体から得たものである)。例えば、対照細胞が肺癌を患っているがアスベストに被曝していない個体から得たものである場合、試験サンプルと対照サンプルの間に見られる発現レベルまたは発現プロファイルの類似性は、対象はアスベスト関連疾患を有さないことの指標となる。一方、発現レベルまたはプロファイルの差は、試験サンプルを誘導した対象がアスベスト関連疾患を有することの指標となる。
アスベスト関連肺癌に特徴的なAIまたは遺伝子発現の検出は、肺癌の臨床病態を示さないが、肺癌に罹患する危険性のあるアスベスト被曝個体における、肺癌の早期診断、予測または予防に使用することができる。特徴的なAIまたは遺伝子発現のRNAレベルまたはタンパク質レベルの試験は、上記の対象から得た体液(例えば、喀痰サンプル、気管支洗浄液サンプル、気管支肺胞洗浄サンプル、全血サンプル、血漿サンプルまたは血清サンプル)中の異常細胞から誘導した遊離核酸またはタンパク質に適応することもできる。
VII. 発現レベルの変動する核酸を検出するための手段
A. カスタム化プローブアレイ
1. 発現レベルの変動する遺伝子用のプローブ
本願の提供する発現レベルの変動する遺伝子は、スクリーニングおよび診断用途に使用するためのカスタムプローブアレイの作製に用いることができる。一般的にこのようなアレイには、発現レベルの変動する核酸に関する前項に記載したプローブが含まれ、よって発現レベルの変動する核酸の全長に相補的なプローブ(例えば、cDNAアレイ)や、典型的には長さが10〜30ヌクレオチドのより短いプローブ(例えば、合成アレイ)が含まれる。典型的なアレイとしては、本発明の複数の発現レベルの変動する遺伝子を検出可能なプローブが挙げられる。例えば、このようなアレイには、一般的に、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種の発現レベルの変動する核酸を検出するためのプローブが含まれる。より完全な分析のためには、アレイには、少なくとも12種、14種、16種、18種または20種の発現レベルの変動する核酸を検出するためのプローブが含まれる。更に別の場合には、アレイには、少なくとも25種、30種、35種、40種、45種または本願で同定した全ての発現レベルの変動する核酸を検出するためのプローブが含まれる。
2. 対照プローブ
(a) 正規化用の対照
典型的な正規化用の対照プローブは、核酸サンプルに添加した1種または数種の標識した参照ポリヌクレオチドに完全に相補的である。ハイブリダイゼーション後に正規化用の対照から得られるシグナルは、完全なハイブリダイゼーション後のシグナルをアレイ間で変動させうる因子となる、ハイブリダイゼーション条件、標識強度、読み取りおよび解析効率、およびその他の因子の変動に対して、対照を提供する。アレイ中の他の全てのプローブから読み取ったシグナル(例えば、蛍光強度)を、対照プローブのシグナル(例えば、蛍光強度)で除することによって、測定値を正規化する。
ほとんど全てのプローブを正規化用の対照として使用することができる。しかし、ハイブリダイゼーション効率は塩基組成とプローブの長さによって変化する。正規化プローブは、アレイ内に存在する他のプローブの平均長さを反映するように選択することができるが、ある範囲の長さをカバーするように選択することもできる。正規化用の対照は、アレイ内の他のプローブの(平均)塩基組成を反映するように選択することもできる。正規化プローブはアレイ内の一部分に局在化してもかまわないし、ハイブリダイゼーション効率の空間変動を制御するために、アレイ内の複数の場所に点在してもかまわない。
(b) ミスマッチを有する対照
ミスマッチを有する対照プローブ(ミスマッチ対照プローブ)も提供する。このようなプローブは、発現レベルの対照又は正規化用の対照として機能する。ミスマッチ対照プローブは、典型的には、公知のmRNA種にマッチするプローブを含むカスタム化アレイで使用する。例えば、あるアレイは、マッチプローブのそれぞれに対応するミスマッチプローブを含有する。ミスマッチプローブは、少なくとも1箇所のミスマッチ以外は、対応するマッチプローブと同じである。ミスマッチした塩基とは、標的配列の対応する塩基と相補的ではなくなるように選択した塩基であって、それが存在しなければプローブが特異的にハイブリダイズすることのできるものである。適切なハイブリダイゼーション条件(例えば、ストリンジェントな条件)では、試験プローブまたは対照プローブはその標的配列とハイブリダイズすることが期待されるが、ミスマッチしたプローブはハイブリダイズすることができなくなる(または顕著に低下した程度でハイブリダイズする)ように、1種または数種のミスマッチを選択する。ミスマッチプローブは中央部分にミスマッチを含有してもよい。よって、例えば、プローブが20量体である場合、それに対応するミスマッチプローブは、6位〜14位のどこかに一塩基のミスマッチを有する(例えば、AをG、CまたはTで置換する)が、それ以外の部分は同じ配列を有してもよい(中央ミスマッチ)。
(c) サンプル調製用、増幅用および定量用の対照
アレイには、サンプル調製用/増幅用の対照プローブが含まれていてもよい。このようなプローブは、選択した対照遺伝子のサブ配列に相補的であってもよく、その理由は、アッセイに付す特定の生物学的サンプル中の核酸には通常は存在しないためである。例えば、問題となるサンプルが原核生物由来の生物学的サンプルである場合、適切なサンプル調製用/増幅用対照プローブとして細菌の遺伝子(例えば、Bio B)に対するプローブが挙げられる。
RNAサンプルには、そのプロセッシングの前に、サンプル調製用/増幅用対照プローブに相補的な核酸を公知の量で使用しスパイクを付すことができる。サンプル調製用/増幅用対照プローブのハイブリダイゼーションの定量化は、プロセッシング工程によって生じる核酸量の変化を計測するための指標を提供する。定量用の対照も同様である。典型的には、このような対照には、ハイブリダイゼーション前に公知の量のサンプル核酸と対照核酸を混合したものが含まれる。これらは定量用の参照を提供し、ハイブリダイゼーション量(濃度)の定量化のための標準曲線を決定する際に有用である。
3. アレイの合成
本発明で使用する核酸アレイは、2つの一般的な方法で調製することができる。1つの手法は、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから得たDNAをある種の固体支持体、例えばガラス、に結合することを含む。(例えば、Meier-Ewart, et al., Nature 361:375-376 (1993)、Nguyen, C. et al., Genomics 29:207-216 (1995)、Zhao, N. et al., Gene, 158:207-213 (1995)、Takahashi, N., et al., Gene 164:219-227 (1995)、Schena, et al., Science 270:467-470 (1995)、Southern et al., Nature Genetics Supplement 21:5-9 (1999)およびCheung, et al., Nature Genetics Supplement 21:15-19 (1999)を参照。各文献の全文が、全ての目的のために本願に組み込まれたものとする。)
第2の一般的な手法には、核酸プローブの合成が含まれる。1つの方法は、標準的な自動化技術に従ったプローブの合成と、合成後のプローブの支持体への結合が含まれる。例えば、Beaucage, Tetrahedron Lett., 22:1859-1862 (1981)およびNeedham-VanDevanter, et al., Nucleic Acids Res., 12:6159-6168 (1984)を参照。各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。2つ目の広い分類は、一般的に「空間誘導型(spatially directed)」ポリヌクレオチド合成手法と呼ばれる方法である。この分類の例示となる方法としては、光誘導性ポリヌクレオチド合成、マイクロリソグラフィー、インクジェットの応用、特定の位置へのマイクロチャネル融着および物理的バリアによる隔離(sequestration)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
核酸プローブを調製するための光誘導性コンビナトリアル手法が、米国特許第5,143,854号、5,424,186号および 5,744,305号、国際特許公開公報WO 90/15070と92/10092、EP 476,014、Fodor et al., Science 251:767-777 (1991)、Fodor, et al., Nature 364:555-556 (1993)およびLipshutz, et al., Nature Genetics Supplement 21:20-24 (1999)に開示されており、各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。いずれの方法も、高密度の小型アレイとしてポリヌクレオチドプローブの合成を誘導するために光を使用する。合成サイクル数を低減するためのマスクの設計のためのアルゴリズムがHubbel et al.のU.S. 5,571,639とU.S. 5,593,839およびFodor et al., Science 251:767-777 (1991)に記載されており、各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。
本発明で使用するためのアレイの調製に用いることができる他のコンビナトリアルな方法としては、インクジェットプリンターを用いて試薬を支持体にスポットする方法が挙げられる。Pease et al., EP 728, 520およびBlanchard, et al. Biosensors and Bioelectronics II: 687-690 (1996)を参照。各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。アレイは、支持体のセルにモノマーを送達するために、機械的に制限されたフローパスまたはマイクロチャネルを使用するコンビナトリアルケミストリーを使って合成することも可能である。Winkler et al., EP 624,059、WO 93/09668、および米国特許第5,885,837号を参照。各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。
4. アレイの支持体
支持体は、複数のプローブを結合することが可能であり、ストリンジェントな洗浄溶液を許容する種々の材料で作製することができる。適切な材料の一例としては、例えば、ガラス、シリカ、プラスチック、ナイロンやニトロセルロースが挙げられる。支持体は通常は、平坦な表面を有する剛体である。典型的な支持体は、1〜10,000,000個の個別の空間定義可能な領域、またはセルを有する。10〜1,000,000個、100〜100,000個または1000〜100,000個の領域を有する支持体が一般的である。典型的なセル密度は、1センチ四方に存在する領域数が少なくとも1000、10,000、100,000または1,000,000である。各セルに少なくとも1種のプローブが含まれる。より頻繁に見られるものにおいては、種々のセルに複数のプローブが含まれる。一般的に各セルは、少なくとも合成法で得られる純度を達成した1種類のプローブを含有するが、別の場合には、一部または全てのセルが異なる種類のプローブを含有する。アレイデザインの詳細についてはWO 95/11995、EP 717,113およびWO 97/29212に説明があり、各文献の全文がこの記載をもって本願に組み込まれたものとする。
VIII. キット
本発明のスクリーニング方法や診断方法を実施するために必要な成分を含んだキットも提供する。典型的なキットには、本願で提供する種々の発現レベルの変動する核酸に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする複数のプローブが含まれる。他のキットには、複数の異なるプライマーペアが含まれ、各ペアは、発現レベルの変動する異なる核酸の増幅を効果的に開始するように選択したものである。キットに定量的RT−PCRに用いるプローブが含まれる場合には、プローブは必要な供与型および受容型の染料で標識されているか、あるいはこのような染料は、標識プローブ調製用の別個の成分としてキットに含まれていてもよい。
キットは更に種々のポリメラーゼ(例えば、RTやTaq)などの増幅反応を実施するための酵素のみならず、デオキシヌクレオチドとバッファーを含んでいてもよい。本発明の1種または数種の発現レベルの変動する核酸を発現可能な細胞も特定のキットに収めることができる。典型的には、キットの個別の成分は、別々の容器に保存されている。分析を行うために成分を使用する方法を記載した説明書も通常は含まれる。
以下の実施例は、本願の提供する方法や手段の特定の態様を説明するためのものであるが、これら実施例は、請求した発明を限定するものではないことを理解されたい。
実施例
材料と方法
患者: 我々は、高度アスベスト被曝個体から得た14例の悪性肺腫瘍と、被曝個体と年齢、性別、国籍および喫煙歴の一致する非被曝個体から得た14例の腫瘍について、コピー数のプロファイルを解析した(表1)。アスベスト被曝量は、個人面談で得た職歴から推定した。更にアスベスト繊維数は、肺組織の電子顕微鏡解析で計測した(Karjalainen 1993)。被曝群は、職歴によって被曝が確定または予想され、肺のアスベスト繊維数が500万線維/乾燥重量(g)を超える個人からなる集団であった。アスベスト繊維濃度が200万〜500万であると、アスベスト被曝による肺癌の危険度がざっと2倍になると考えられる(Karjalainen 1994, コンセンサスレポート)。
我々は、11例(被曝5例/非被曝6例)の腺癌(AC)、8例(被曝4例/非被曝4例)の扁平上皮癌(SCC)、5例(被曝3例/非被曝2例)の肺大細胞癌(LCLC)、およびそれぞれ2例(被曝1例/非被曝1例)の腺扁平上皮癌(AC/SCC)と肺小細胞癌(SCLC)について解析した。
組織サンプル: 組織サンプルは、腫瘍性肺障害の外科的手術の際に入手した。DNA単離のためと、腫瘍細胞含量(50%超であることが要件)の確認に使用する標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色のために、凍結腫瘍サンプルから4μmの切片を切り出した。腫瘍サンプルおよび参照用サンプル(二人の男性ドナーの抹消血)からQIAamp DNA Miniキット(カリフォルニア州、バレンシア、QIAGENR)を用いてDNAを単離した。
古典的CGH: 古典的CGHを、Bjorkqvist et al. (1998)に従って、全28個の腫瘍サンプルについて行った。簡単に説明すると、消化して標識した参照DNA(TexasRed-5-dUTPと-dCTP)および消化して標識した腫瘍DNA(FITC-5-dUTPと-dCTP)の1μgを、ハイブリダイゼーション(マサチューセッツ州、ボストン、NENTM Life Science Products Inc.)に使用した。スライドを37℃で一晩ハイブリダイズし、標準的なプロトコルに従って洗浄した。MetaSystems(ドイツ国、アルトルスハイム、MetaSystems GmbH)CGHプログラム、Isis(バージョン3)を解析に使用した。Bjorkqvist et al (1998)に記載されているように、標準カットオフ閾値は、欠失が0.85未満、増幅が1.17超、高度の増幅が1.5超とした。
アレイCGH: アレイCGH解析は、20例の個体サンプル(被曝11例と非被曝9例、表1)について行った。市販のcDNAマイクロアレイ(ヒト1.0、カリフォルニア州、パロアルト、Agilent Technologies)を12,814個の個別のクローン(その内の97%は命名済みのヒト遺伝子上に位置する)と共に、Wikman et al. (2005)の記載に従って使用した。簡単に説明すると、参照DNAと腫瘍DNAを消化し(25UのAlu1/25UのRsa1)、ランダムプライミング法(RadPrime DNA Labelling System;メリーランド州、ゲイタースバーグ、Gibco BRL)で標識し(Cy3 dUTP-腫瘍DNA、Cy5 dUTP-参照DNA、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ、Amersham Pharmacia Biotec)、得られたもの5μgを用いてハイブリダイゼーションを行った。65℃で一晩のハイブリダイゼーションの後、スライドを洗浄し、遠心器で乾燥し、Agilent社製のDNAマイクロアレイスキャナー(G2565AA)でスキャンした。
データ処理: 特徴抽出ソフトウエア(Feature Extraction Software)(Agilent Technologies)を使用し、アレイから生のシグナル強度を得た。特徴抽出ソフトウエアが信頼性なしと判断した測定値はその後の解析から除いた。更に、我々独自の画像解析法で欠陥ありと認定した測定値も除いた。欠陥測定スポットの検出に用いた我々の画像解析は、報告済みの方法(Ruosaari and Hollmen 2002)に従って実施したが、但し、スポットの前面および背面の面積は、期待値最大化(EM)アルゴリズムを使用し、2つのガウス分布を各スポット近隣ピクセルに当てはめることで求めた。本研究においては、後の解析に含めるスポットの品質評価基準は以下の通りである:1)スポットの大きさが15ピクセルを超える、2)前面ピクセルの中央値と背面ピクセルの中央値の強度差が少なくとも50である、そして3)局所背面の中央値が170未満である。専門家が判定した訓練用の正しいスポットと欠陥スポットについて、初めにそれぞれの分布を求めることでこれらの品質評価閾値を得た。パラメーターは、訓練用スポットの分類における誤り(欠陥スポットが欠陥として分類され、欠陥スポットが正しいと分類されること)の確率が最小になるように選択した。篩い分けの後には、アレイ内の7730〜9071種の遺伝子について、遺伝子座に関する情報を提供する正しいシグナルが得られた。等分散と平均Log2シグナル比を有するように、全てのアレイを正規化した。
バイオインフォマティックス解析: 被曝に関連する異常を同定するために、被曝患者と非被曝患者の腫瘍の遺伝子コピー数を比較することで、個別の患者のアレイCGHデータを群レベルで解析した。被曝に関連する面積の同定は、0.5〜1Mbpの部分的に重なる染色体節を用いて行った。初めに、遺伝子の染色体位置に応じてデータを並べ替えた。次に、各染色体節内の遺伝子を検出し、正しく分類されたアスベスト被曝患者と非被曝患者の数を計算した。
被曝関連異常領域は、仮説検定によって同定した。両側検定においては、帰無仮説を「染色体節を分類する能力に偏差はない」とし、対立仮説を「染色体節を分類する能力に偏差はある」とした。各染色体節内の遺伝子によって正しく分類された患者の数を検定統計量とした。被曝と関連する思われる領域は、並べ替え分布の2.5と97.5を経験的パーセント値として使用した、10,000の組み合わせを用いた並べ替え検定で見出した。含有する遺伝子の数が5以下の領域はふるい落とした。
結果と考察
古典的CGH: 異常の典型的パターンを、組織型の異なる肺癌に対する古典的CGHで見出したところ、SCLCが被曝と関係なく最も多くの異常を有していた(表2)(オンラインCGHデータベースは、http://www.helsinki.fi/cmg/cgh_data.htmlより入手可能)。古典的CGHでは、我々は全般的に消失よりも多くの増加を検出したが、これは顕微解剖した材料を使用しなかったためと考えられる。全ての患者において最も高頻度に見られる変化は、次の領域内の増加: 1q23-q24(46%)、1q41(64%)、2p23(39%)、3q22-q23(39%)、5p14-p15.1(39%)、7p14(25%)、8q24.1(53%)および20q13.1-q13.2(68%)と、次の領域内の消失: 9p23-p24(14%)および5q(7%)である。
種々の組織型を比較すると、SCC以外の全ての型が被曝群において若干多くの異常を有していた(SCC以外の全ての組織型における異常の平均値は、被曝群で6.7、非被曝群で3.2であった)。SCC腫瘍においては、被曝患者サンプルよりも非被曝患者サンプルにより多くの異常が存在したが、これはサンプル数が2であり、被曝患者サンプルの異常が13、非被曝患者サンプルの異常が23であったためである。古典的CGHにおいて、アスベスト被曝群と非被曝群との間で有意差が見られる単一の増幅は、2p23上の最小共通増幅単位である。この増幅は、被曝患者サンプルの57%(8/14例)と非被曝患者サンプルの14%(2/14例)に見られた(p=0.025)。被曝群8例の内7例においては、2p22上にも増幅があり、4例では2p21上にも増幅があった。
アレイCGH: 古典的CGHでは、2p内の増幅以外には2群の間に明確な変化を見つけることができなかったので、染色体節のシグナルlog比を比較することで、我々のアレイCGH結果を群レベルで解析した。この種の解析には、各患者の異常の種類に関する予備知識は必要ない。特に特定因子に関連した変化の検出を目的としたこの種の比較研究においては、我々の選択した統計的手法は相乗的な理由から有益である。単一アレイデータから個別に異常を同定することも可能であるが、アレイのバックグラウンドノイズゆえに小さな変化は検出されないこともある。更に、複数のコピー数データを同時に比較すると、一群の患者に共通する小さな変化と有意に低いコピー数の変化が検出されることがある。
このようなアレイCGHの複合統計解析を使用することで、2群間でコピー数が有意に異なる18個の領域(1p36.12-p36.11、1q21.2、2p21-p16.3、3p21.31、4q31.21、5q35.2-q35.3、9q32、9q33.3-34.11、9q34.13-q34.3、11p15.5、11q12.3-q13.1、11q13.2、14q11.2、16p13.3、17p13.3-p13.1、19p13.3-p13.11、22q12.3-q13.1およびXq28)を見出した(表3)。古典的CGHデータから期待されたように、いずれの領域にも高コピー数の変化は存在しておらず、低レベルの増加または欠失であった。複合解析を用いるという選択は、正常細胞の混入によって生じるアレイ上のノイズを完全に相殺するものではない。従って、例えば、一群の患者に見られる増加が、他の群では誤って消失と解釈される可能性がある。更に、上記遺伝子座のいくつかは一群では増幅されており、他の群では欠失している可能性がある。
遺伝子座の大部分は非常に小さく(サイズの中央値は1.76Mbp)、最も大きなものが19p13.3-p13.1(18.53Mbp)内に存在した。17pと19pの2つの領域は、古典的CGHで検出するのに十分な大きさ(6.96Mbpと18.53Mbp)であるが、残りの領域は0.9〜3.75Mbpであり、古典的CGHで検出するには小さすぎた(Forzan et al., 1997)。しかし、古典的CGHでは、上記の2つのより大きな領域は見出されなかった。我々の古典的CGHの結果は感度が高いようなので、正常細胞の混入が原因で、消失した領域を検出できなかったのかもしれない。更にこれらの領域の他に領域16p(3.14Mbp)も古典的CGHでは不確かな領域と呼ばれるものであり、ハイブリダイゼーションの人為結果による擬似陽性または擬似陰性の結果をもたらすことの多い領域である(el-Rifai et al, 1997)。実際、これら2つの領域のLOH解析は、肺腫瘍においては、アレル不均衡がこれら遺伝子座に存在することを示している(Girard et al, 2000)。領域9q34(3.75Mbp)も肺癌においてLOHの影響を受けるとの報告があり(Suzuki et al., 1998)、CGHにおいては不確かな領域である(Larramendy et al., 1998)。
興味深いことに、2p内の増加は、アレイCGHの結果と古典的CGHの結果の両方から被曝群に特異的であることが示された。少し驚くべきことに、古典的CGHで得た最小共通増幅単位は2p23であったが、アレイCGHでは、2p21が変化していると検出された。しかし、大部分の事例において古典的CGHは、2p23上の増加はより大きなものであり、50%の例において、2p21も含むことを示した。この比較的大きな領域は更なる研究の標的となりうるものであり、それは、ヒト2p21-25に相同なラットの領域は、ラドン誘導性ラット肺腫瘍において増幅されると既に報告されている(Dano et al., 2000)ためである。これ以外には、2pの増幅がNSCLCに見られるという報告は稀である。同様に領域14q11.2は、我々の知る限り、肺癌で変化しているという報告はないが、しかし、長期の低容量60Coガンマ線照射被曝集団の血液サンプルに見られる染色体異常(逆位と転座)に関与すると考えられる(Hsieh et al., 2002)。放射線がROSの発生によってアスベスト同様の異常をもたらす可能性(Leach et al., 2001)を考慮すると、これは興味深い知見である。
2つの群を分ける有意な領域の多くは、肺の発癌全般との関連が既に報告されている領域であり、これら領域には1p36.1、1q21.2、3p21.31、4q31.21、5q35.2-q35.3、9q34、11p15.5、17p13.3、19p13および22q13が含まれる(http://www.helsinki.fi/cmg/cgh_data.html)。過去には、アスベスト被曝が3p21上のLOHと有意な関連性を示すという報告が1件ある(Marsit, 2004)。更にin vitroでは、アスベスト繊維は主として染色体1番と9番の断裂に関与している(Dopp and Schiffmann, 1998、Lohani et al., 2002)。
染色体腕4qと22q上の領域が、中皮腫にも共通して消失していると報告されているが、中皮腫はアスベスト被曝と密接に関連した癌型である(Bjorkqvist et al., 1998、De Rienzo, 2000)。同様に、11q13.1はFOSL1Fra-1)遺伝子を有するが、この遺伝子は、アスベスト被曝後の癌化中皮細胞において上方制御されるという報告がある(Shukla et al., 2004)。
ヒトゲノムには125個の登録された脆弱部位が存在するが、そのうちの11個は、我々の結果(表3)の18個のアスベスト関連領域候補と一致していた(p=0.08)。脆弱部位は、予め決められた染色体断裂領域であり、複製ストレス条件下の中期染色体における部位特異的なギャップまたは断裂であることが実験的に証明されている。これらは、染色体による遺伝的不安定性の発現として知られており、よって癌において役割を担うことが示唆されている。一例は、腫瘍において屡々損傷しており、腫瘍サプレッサーとして機能すると考えられるFRA3B(3p14.2)のFHIT遺伝子(Glover, 1998)や、FRA16D(Finnis et al., 2005)である。更に11q13.2上には、最近になって脆弱部位FRA11Aを含む700kbの欠失が子宮頸癌について同定された。この700kbの領域は、ほぼ完全に我々の発見した領域に含まれている(染色体11:65,886,588〜67,191,050bp)(Zainabadi et al., 2005)。しかし、脆弱部位の大部分がGバンド法によって位置が特定されたものであり、我々はより高い解像度において、我々の領域が、11q13.2以外の脆弱部位領域と完全に一致するかどうか結論付けることはできなかった。
結論として、アレイデータにおいてアスベスト被曝と関連する可能性のある異常を明らかにするために、我々は複合アレイデータセットを用いたデータ解析を実施することにした。この方法を用いることで、2つの患者群の肺腫瘍の間でDNAコピー数が異なる複数の、大部分は小さな染色体領域を我々は初めて検出した。これらの異常は、低コピー数の増加または消失であり、高コピー数の増幅を伴わない。過去の研究は、喫煙によって細胞の遺伝系がアスベストの有害な効果を受けやすくなることを示している(26,27)。この証拠は、同様の複雑なパターンが2つの群に概ね見られ、被曝群においてわずかながら多くの異常が検出された我々の古典的CGHの結果と一致する。更に我々のアレイCGH結果は、上述した部位の多くが脆弱部位と一致し、喫煙とアスベスト繊維はいずれも脆弱部位に異常を発生させる傾向にあることを示している。まとめると、我々はアスベスト被曝に関連した遺伝子コピー数の異常について始めて報告した。更に、これらの領域が特異的であり、推定標的遺伝子がそこに座乗しているか否かを実証するための解析(例えば、発現データを用いた解析)が必要である。
材料と方法
患者由来材料
全ての患者が、フィンランド白色人種を先祖とする男性であり、組織学的に確認した原発性肺癌を発症しているが、過去に悪性腫瘍を発症したことのない患者である。遺伝子発現解析のためのサンプルは、14人の高度アスベスト被曝患者と14人の非被曝患者から得た、肺腫瘍とそれに対応する正常肺サンプルからなる(表4)。続くアレル不均衡の断片解析においては、非被曝患者から得た15個の腫瘍と、職務中にアスベストに被曝した患者(中度被曝群)から得た8個の腫瘍も解析した(表4)。全ての腫瘍を最新のWHO分類に従って分類した。
患者の職歴と喫煙習慣並びに生存データに関する詳細な情報を記録した。アスベスト被曝の状態は、職歴と、エネルギー分散型分光を用いた走査型電子顕微鏡による肺のアスベスト繊維濃度の測定(Karjalainen et al., 1993)の両方から推定した。職務上のアスベスト被曝が確定または予想される患者であり(Karjalainen et al., 1993)、肺のアスベスト繊維数が500万線維/乾燥肺組織(g)を超える患者のみを高度被曝群に加えた。繊維濃度が100万〜500万線維/乾燥肺組織(g)の患者を中度被曝群として分類した。通常は乾燥肺組織(g)当たりの線維数が最低100万であることが、職務上のアスベスト被曝の指標となる(Karjalainen et al., 1993)。乾燥肺組織(g)当たりの線維レベルが200万〜500万の時に、肺癌の危険度が2倍になる(Karjalainen et al., 1994、コンセンサスレポート, 1997)という関係付けがなされている。
全ての患者に個人面談を実施し、研究に参加すること、そして得られた組織を使用することの同意を得た。ヘルシンキ/ウーシマー県 健康管理地区の、職務上の健康と安全に関する研究に対する倫理審査委員会(The Ethical Review Board for Research in occupational Health and Safety)はこの研究のプロトコル(75/E2/2001)を承認した。
cDNAマイクロアレイ
各患者について、(Wikman, 2002)の記載に従い、UltraspecTM RNA単離システムを用いて腫瘍とその近傍の正常周辺肺組織からRNAを単離した。各腫瘍サンプルを凍結切片化し、各サンプルの腫瘍含量をHE染色で確認した。腫瘍細胞が50%を超えるサンプルのみを解析のために選択した。初期単離の後に、Qiagen RNase Minikitカラム精製によってRNAを更に精製した。RNAの品質を2100 バイオアナライザー(RNAナノラボチップ;カリフォルニア州、パロアルト、Agilent Technologies)で確認し、分光光度計で定量した。
遺伝子発現のプロファイリングを6μgの全RNAと共にAffymetrix HU133A GeneChips(カリフォルニア州、サンタクララ、Affymetrix)を用いて行った。ワンサイクルcDNA合成キット(カリフォルニア州、カールスバッド、Invitrogene)を用いてRNAをcDNAに変換し、精製し、Affymetrixの推奨する方法に従って標識cRNA(ニューヨーク州、ファーミングデール、Enzo)に変換した。断片化cRNAを16時間ハイブリダイズした。スライドの洗浄、染色とスキャンは標準的なAffymetrixのプロトコルに従って行った。Affymetrixチップとのハイブリダイゼーションは、28人の患者それぞれから得た腫瘍肺RNAサンプルと正常肺RNAサンプルについて行った。
遺伝子発現データのデータ解析
全てのスライドを100値に合わせてスケーリングした。腫瘍チップは対応する正常肺チップに合わせてスケーリングした。正常肺結果の存在しない3例については、同じ被曝群サンプルのシグナル平均値を参照値の代わりに使用した。被曝サンプル群または非被曝サンプル群の少なくとも3分の1に存在した遺伝子(Affymetrixのp値<0.04)を解析に含めた。次にデータをlog2変換し、Lowess法で正規化した。
発現レベルの変動する遺伝子を検出し、被曝群を非被曝群から区別することのできる最小遺伝子セットを同定するために、2段階解析モデルを使用した。我々は、van't Veer et al.(van't Veer, 2002)に記載の方法に類似した教師付き分類法を使用した。2つの被曝群の大きさが類似していたため、第一段階として、AUROC(ROC)解析モデル(Kettunen, 2004)を選択した。ROC値が0.4超または0.6未満であり、p値が0.4未満の遺伝子をその後の解析に含めた。
第二段階では、各遺伝子について、遺伝子発現と被曝状態(アスベスト被曝対非被曝)の間の相関係数を計算した。我々は主としてアスベスト被曝患者の腫瘍と非被曝患者の腫瘍の間の差異に興味があったため、個別の正常肺組織サンプルにおいて遺伝子発現の変動が与える影響を最小にするために、相関解析を実施する前にデータを再スケーリングした。アスベスト関連腫瘍と非関連腫瘍との間の差異を強調するために、アスベスト関連腫瘍シグナルを非関連腫瘍シグナルの中央値でスケーリングし、非関連腫瘍シグナルをアスベスト関連腫瘍シグナルの中央値でスケーリングした。
相関係数の絶対値に基づいて遺伝子の順位付けを行った。腫瘍の正しい分類に必要な遺伝子の数を最適化するために、その順位に基づいて遺伝子を連続的に加えながら、正しく分類された患者の数を決定した。交差検証法には、“leave-one-out”法を使用した。
遺伝子発現とDNAコピー数の複合データの解析
我々は、アレイCGH解析により、アスベスト被曝患者対非被曝患者の肺腫瘍における異常(増幅と欠失)プロファイルについても記載した(実施例1を参照)。被曝関連面積を更に特定するために、本研究においては、同じ患者の腫瘍から得た遺伝子発現プロファイルとコピー数プロファイルを組み合わせた。
部分的に重なる0.5〜1Mbpの染色体節について、被曝群の遺伝子発現比を非被曝群に対して比較することで、被曝関連変化を有する染色体面積を同定した。差異を示す領域を仮説検定で同定した。各遺伝子の遺伝子発現比によって正しく分類された患者の数を計算し、染色体節の平均分類能力を検定統計量とした。この解析で見出した領域を、被曝関連コピー数変化を有することが判明した領域と比較した。発現データセットとコピー数データセットの両方で検出された領域が特に興味深い領域である。
アレル不均衡の検出のための断片解析
断片解析に使用したサンプルには、顕微解剖したDNA標本と顕微解剖していないDNA標本が含まれていた。高度アスベスト被曝患者と非被曝患者から得た最初の28例の腫瘍サンプルは、顕微鏡を使用せずに解剖したものであるが、一方、追加した23例の患者サンプルについては、DNAを得るために顕微解剖を行った。しかし、顕微解剖を行わなかった28例の患者サンプルの結果が不明瞭であった(いくつかのマーカーにおいて、腫瘍アレルと正常アレルのピーク高さ比が1.5近傍であった)ため、対応する顕微解剖材料を用いて実験を繰り返した。
顕微解剖は、1%トルイジンブルー−0.2%メチレンブルー溶液で染色した9μmの組織切片に対してArcturus Veritas装置を用いて行った。不均一な腫瘍組織から癌細胞を収穫するために、レーザー捕獲顕微解剖(LCM)技術を用いた。DNAの単離は、PicoPureTM DNA抽出キット(Arcturus)を用い、製造者のマニュアルに従って実施した。
染色体領域19p13.3-p12(19番染色体: 550,811〜22,287,245bp、22.29Mbp)内のアレルの平衡度は、22Mbpを概ねカバーする19個のマイクロサテライトマーカーを用いて求めた。長さが80〜300bpのジヌクレオチド繰り返し断片またはトリヌクレオチド繰り返し断片を増幅するために、FAMまたはHEXで末端標識したプライマーペアを用いた。マーカーのプライマー配列は、国立バイオテクノロジー情報センターのデータベースから入手し、TIB MOLBIOL Syntheselabor GmbHで合成した。標的配列のPCRによる増幅は、200μMのdNTP、700nMの各プライマー、1×PCRバッファー(15mMのMgCl2、0.13または0.25単位のHotStarTaqDNAポリメラーゼ(Qiagen)を含有)と2.5〜25ngのゲノムDNAを含む、5μlまたは10μl容の反応系で行った。最初の10分間の95℃変性工程に続いて、95℃で40秒、至適アニーリング温度で40秒、そして72℃で1分の反応を35サイクル実施した。次にPCR産物を、3100-Avant遺伝子解析装置(Applied Biosystems)で解析した。
ヘテロ接合性マーカーのアレル不均衡(AI)は、腫瘍アレルと正常アレルのピーク高さの比を計算することで評価した。アレルは、予測サイズ範囲内の2つの最も高いピークと定義した。1.5以上の比をAIとしてスコアした。マイクロサテライトの不安定性(MSI)は、正常DNAとは異なるサイズの新規ピークが腫瘍DNA内に存在する時の、繰り返し単位の整数と定義した。更に、モノヌクレオチド繰り返し単位BAT−26を、BAT−26と肺癌のMSI表現型との相関性を試験するために用いた。このマーカーは、散発性直腸癌と胃癌の高頻度MSI表現型を99.4〜100%の精度で明らかにするために使用されている(Hoang, 1997)。
結果
遺伝子発現プロファイル
14例の高度アスベスト被曝患者を非被曝患者から最も効率よく分離する遺伝子を検出するために、遺伝子発現データを用いてROC解析を行った。12,865個の遺伝子が1回目のROC解析に含まれていた(含めるための基準は、いずれかの被曝群の患者の少なくとも1/3にシグナルが存在することである)。遺伝子は、そのROC値とp値に基づいて順位付けをした。
最も高いROC値(0.4未満または0.6超であり、p値は0.4未満)を有する遺伝子に基づく、未完成の、教師なし階層的クラスタリングアルゴリズムによって、28例の腫瘍を、その被曝量に基づいて2群に分けることに成功した(データは示さない)。被曝腫瘍と非被曝腫瘍の明確な分離は、約6,000個の遺伝子転写産物に基づいて、腫瘍を上記2種に分類可能であることを示唆している。
次に、各遺伝子について、遺伝子発現と被曝状態(アスベスト被曝対非被曝)の相関係数を計算した。2つの腫瘍群を区別することのできる最も小さな遺伝子セットを同定するために、相関係数の絶対値に基づいて遺伝子の順位付けを行った。被曝関連遺伝子の同定によって、ピアソンの相関係数が0.79超または−0.79未満である47個の遺伝子が明らかとなった。我々が選択した参照値(アスベスト関連腫瘍シグナルの中央値を非関連腫瘍シグナルの中央値でスケーリングし、逆も同様)は比較的高い相関係数をもたらすが、各群の正常組織から得られるシグナルの中央値を使用しても同様の結果が得られることに気が付いた。47個の上位遺伝子の内の38個については、どちらの参照値を使用しても同じ結果が得られた。このような大きさの相関係数を有する単一遺伝子のみが、データのランダム順列化の後でも検出可能であった。この上位遺伝子(47個)からなる小さなセットの機能的解釈は、特定機能または染色体位置を明らかに過剰に表現するものではない。47個の遺伝子について得た階層的クラスタリングの結果を表5に示した。
遺伝子発現プロファイルとDNA異常プロファイルの組み合わせ
発現量の変化している被曝関連面積の同定によって、アスベスト被曝患者が非被曝患者とは異なる34個の面積(5Mbp以下の面積は結合した)が明らかとなった(データは示さない)。面積の検出は、CGHアレイ(実施例1参照)と同様に、0.5〜1Mbpの染色体節内で、2つの患者群の遺伝子発現データを互いに比較することで行った。被曝関連変化を有する面積の同定は、信頼区間が5%の並べ替え検定によって行った。被曝に関連したmRNAレベル(Affymetrix)の変化とDNAレベル(CGHアレイ)の変化の両方を有する遺伝子座を同定するために、これら2つのデータ解析結果を組み合わせた。6個の面積、即ち、2p21-p16.3、3p21.31、5q35.2-q35.3、16p13.3、19p13.3.-13.11と22q12.3-q13.1(表6)が2つの解析に共通していた。データは、2p21は被曝患者サンプルでは増幅され、同時に非被曝患者サンプルでは欠失しており、3p21.3-p21.1、5q35.3と22q13.1は被曝群の患者では欠失していることを示唆している。最も大きな有意領域が染色体19p13.3-19p13.1内に検出された。大部分の被曝患者がこの領域内の遺伝子の欠失と下方制御を示し、一方、非被曝患者では、増加の可能性も認められた。
19p13.3-12の断片解析
19番染色体のp腕に存在する被曝関連変化を実証し、異常の程度を明らかにするために、断片(LOH)解析を実施した。19p13.3-p12内の22.3Mbp領域にかかる19個のマイクロサテライトマーカー(表7)を使用した。被曝患者の79%(11/14)と非被曝患者の45%(13/29)(p=0.02)は19p領域にアレル不均衡(AI)を有することが判明した。更に、中度被曝患者の75%(6/8)にもAIが検出された(表7)。AIが検出された患者は、CGHアレイが示した結果と一致していた。個別のマーカーのAIの程度は、被曝患者で50〜90%、中度被曝患者で40〜100%、そして非被曝患者で20〜50%の範囲内であった(有益なマーカーのみを考慮した)。個別のマーカーにおけるAI頻度の差に焦点を合わせると、検討した19個のマーカーの間で差異による分離が見られた。非被曝患者と比べて、アスベスト被曝患者由来腫瘍サンプルにおいて、マーカーの10/19において染色体変化の頻度は有意に高かった。
更に、非被曝患者の10%(3/29)が、検討した領域の全長に渡ってマイクロサテライト不安定性(MSI)を有することが判明した。直腸MSIマーカーであるBAT−26を用いて更にMSIについて評価すると、個別のマーカーの高い不安定性を示した3例の内の2例(149番と62番)は、このマーカーについても不安定性を示した。更に、共に19p領域にMSIを示す単一マーカーを有する患者11番と143番は、マーカーBAT−26にも不安定性を有していた。
考察
アスベスト関連肺癌と関連する、規制の失われた遺伝子について洞察を深めるために、28例の原発性肺腫瘍に対して、複合cDNAおよびCGHマイクロアレイ スクリーニング解析を行った。高度アスベスト被曝患者を非被曝肺腫瘍と比較し、2つの群の間の遺伝子発現レベルとコピー数の変化の両方について記載した。最も興味深い領域の1つである19pは、より多くの患者を用いて更に検証した。
我々は、遺伝子発現結果のために2段階のデータ解析手法を用い、患者をアスベスト被曝群と非被曝群に正しく分類する、47個の遺伝子のセットを見出した。これら47個の遺伝子の階層的クラスタリング解析は、2つの被曝群の間に明確な境界線を引いた。この分離は、肺癌の組織型から独立していた。これら47個のマーカー遺伝子セットには、多岐に渡る機能を有し、単一の経路によって過剰発現されることのない遺伝子が含まれていた。これら遺伝子のいくつは未だよく知られていないものであるが、かなりの遺伝子は、種々の腫瘍型において変化することが知られるものである。このような遺伝子には、被曝患者において上方制御されることが検出されているWFDC2TDE1SLC6A15、および下方制御されることが検出されているRUNX1ATMUVRAGが含まれる。WFD2HE4)は、卵巣癌のバイオマーカーとなることが知られており(Hellstrom, 2003)、SLC6A15は結腸直腸癌で上方制御されることが知られている(Gupta, 2005)。TDE1遺伝子は、肺癌細胞系で上方制御されることが知られている(Bossolasco, 1999)。被曝群で下方制御されているUVRAG遺伝子は、最近になって直腸癌で変異していることが判明し(Ionov, 2004)、一方、ATMは、プロモーターの過剰メチル化によって肺癌ではサイレンシングされていることが知られている(Safar, 2005)。更に相同RUNX3遺伝子は、肺腫瘍においてメチル化による下方制御を受けており(Li, 2004)、RUNX1の転座、変異とメチル化についても、主として種々の白血病、更には近年になって胃癌について報告されている(Sakakura, 2005、Blyth, 2005)。
タンパク質キナーゼC(PKC)の基質であるアデュシンは、アスベスト被曝と関連付けられている。PKCのシグナル伝達経路は、アスベスト被曝後に活性化される主要なシグナル伝達経路の1つとして示唆されている(Shukla, 2003)。実際に、アスベストを吸引したマウスは、II型肺胞上皮でアデュシン発現の増加を示す(Lounsbury, 2002)。これら知見と同様に、アデュシンは、本研究の被曝患者においても上方制御されていた。
最近の研究によって、例えデータセットが大きくても、マイクロアレイデータから安定且つ信頼性の高い分子記号を得ることは非常に難しいことが判明した(Michiels, 2005)。従って我々は、数千の遺伝子を用いるが、わずかな患者しか使用しないこの解析では、偽陽性結果が得られる可能性が高いことを認識している。結果として、古典的なCGHとCGHアレイのデータを用いた以前の研究によって、肺癌はそのDNAコピー数プロファイルに基づいて分離可能である(実施例1を参照)ことが判明していたので、我々はこれら特定染色体領域が遺伝子発現変化と相関するか否かについて検討することにした。生物学的に適切な、潜在的な優れたマーカーとは、遺伝子発現に影響を与える異常である。実際、この方法で我々は、DNAレベルとRNAレベルの両方において同時に変化しており、1群の腫瘍に特異的であると考えられる6つの染色体領域を見出すことができた。興味深いことに、4つの領域は被曝群における欠失であると考えられる。
アスベスト被曝と有意に関連することが判明した染色体3p、5q、19pと22q内の異常の全てが、一般的な肺癌の発生について既に検出されていたものである。しかし、3pの消失とアスベスト被曝との関連について最近になって報告があり、この報告によると、2つの群が共に異常を示すものの、3p内の異常頻度は被曝群において有意に高い(Marsit, 2004)。更に、22q内の領域について、アスベスト被曝と非常に密接な関連のある中皮腫に共通して消失しているという報告がある(De Rienzo, 2000)。一方、肺腫瘍における2p内の増幅に関する報告は稀であるものの、ラドン誘導性ラット肺腫瘍においてヒト2p21-25に相同な領域が増幅されているという報告がある(Dano, 2000)。16p13.3には、肺腺癌の29%でLOHの影響を受けるという報告のある遺伝子TSC2(Takamochi, 2004)と、正常肺組織と比べて肺癌で発現の低下している、8oxoG修復に関与する遺伝子NTHL1(Radak, 2005)が座乗している。
本研究では、アスベスト関連染色体領域の候補の1つである19p13の関連性について更に検証した。19pのLOHは肺癌に共通しているが(Sanchez-Cespedes, 2001)、そのアスベスト被曝との関連性については過去に研究されていない。ここでは、AIを見出すために断片解析を行った。期待されたように、染色体変化は被曝患者に限定されるわけではないが、非被曝群よりも被曝群患者に共通して存在する方がより有意であった(p=0.02)。19p13領域のAIは、被曝患者の79%、中度被曝患者の75%、そして非被曝患者の45%で検出され、被曝がこの部分における異常の発生を促すように働くことを示している。最も優れた分離能を有するマーカーは19p領域全体に広がっており、この部分には特定のアスベスト被曝関連ホットスポットは存在しないが、アスベストはこの染色体腕全体の不均衡と関連することを示している。
注目すべきことは、肺癌で不活化されると既に報告のある2つの遺伝子が、最も有意に識別するマーカーの近傍に存在することである。マーカーD19S883の隣に位置する腫瘍サプレッサー遺伝子STK11/LKB1の変異とLOHによる不活化は、散発性肺腺癌の30%で生じる(Sanchez-Cespedes, 2002)。更に、マーカーD19S906の近傍に位置するBRG1/SMARCA4遺伝子は、肺腫瘍原性の役割を担うという報告がある(Medina, 2005)。SMARCA4タンパク質は、肺原発性腫瘍の約10%で消失しているという報告がある(Reisman, 2003)。
断片解析は、しかし、アレルの増加と消失を区別することができず、マーカーの変化はAIとしか報告されない。我々のアレイCGH結果は、腫瘍サンプルの19p13領域には消失と増加の両方が存在し、特に非被曝患者サンプルには増加が存在することを示唆している。従って、この領域と被曝との関連は、現在の結果では過小評価される可能性がある。この領域で生じる変化の性質についてより深い洞察を得るために、例えば、定量的PCRによって更なる研究を実施するべきである。このような研究は、19p内の異常、特に消失、とアスベスト被曝との関連性を強めることが期待される。
結論として、種々のハイスループット法を組み合わせることで、我々は、アスベスト被曝肺癌患者は、被曝と有意に関連するいくつかの染色体領域(例えば19p)を含む独特な遺伝子発現プロファイルを有することを始めて見出した。
アスベスト関連肺癌の異常プロファイルを検出する方法
本願で明らかにした異常は、例えば、以下の方法で検出することができる: オリゴクローンチップまたはBACクローンチップに基づくアレイCGH、SNPアレイ、in situハイブリダイゼーション(FISH、CISH)プローブセット、アレル不均衡用の断片解析、および定量的遺伝子量PCR(quantitative gene-dose PCR)。
9q32-q34
表8に、アスベスト被曝患者と非被曝患者における、腺癌と他の組織型の肺腫瘍から検出される、9q31.3-q34.3のアレル不均衡に関する断片解析結果を示す。一般的に、非被曝患者の腫瘍よりもアスベスト被曝患者の腫瘍により多くのアレル不均衡が発見された。アレル不均衡の試験は、顕微解剖した腫瘍組織に対して行った。
3種のFISHプローブ、即ち、BACプローブであるRP11-10i9、RP11-375D21とRP11-100C15、を肺腫瘍切片に対して試験した。これら3種のプローブを用いて得た結果を表9に示す。BACプローブRP11-375D21を用いると、全ての組織型において、非被曝患者の腫瘍よりも多くの欠失と増加がアスベスト被曝患者の腫瘍から検出されたが、他の2種のプローブを用いると、アスベスト被曝患者の腺癌以外は、非被曝患者の腫瘍により多くの異常が検出された。
表10に、19pと9q内のアレル不均衡とBACプローブRP11-375D21の結果の組み合わせを示した。この組み合わせは、アスベスト関連肺腫瘍と非関連肺腫瘍を同定する際の特異性を向上する。
2p16-p21
表11に、2p16-p21内のアレル不均衡を示す。14例のアスベスト被曝患者腫瘍と14例の非被曝患者腫瘍について、マイクロサテライトマーカーを用いた断片解析を実施した。各群において少なくとも6例の有益なアレルを検出したマーカーについて結果を表示した。アレル不均衡の試験は顕微解剖した腫瘍組織に対して行った。より多くのアレル不均衡が、非被曝患者の腫瘍よりもアスベスト被曝患者の腫瘍で検出された。
16p13.3
表12に、マイクロサテライトマーカーを用いた断片解析で検出した16p13.3内のアレル不均衡を示す。より多くのアレル不均衡が、非被曝患者の腫瘍よりもアスベスト被曝患者の腫瘍で検出された。アレル不均衡の試験は顕微解剖した腫瘍組織に対して行った。
9qの結果と同様に、被曝患者の腺癌は、他の組織型の腫瘍とは異なっていた。
5q35.3
表13に、アスベスト被曝患者と非被曝患者の肺腫瘍における、5q35.3内のアレル不均衡を示す。アレル不均衡の試験は顕微解剖した腫瘍組織に対して行った。アレル不均衡の断片解析は、被曝患者の腫瘍と非被曝患者の腫瘍の間に明確な違いを示さなかった。しかし、表14のアレイCGHの結果は、この領域の更なる研究を是認するものである。
この実施例の目的は、既に検出されたアスベスト関連ゲノム異常プロファイルと相関する特異的な遺伝子発現プロファイルがアスベスト被曝によって発生するか否かを検出することであった。遺伝子発現データを比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)アレイデータと組み合わせることで、我々は、遺伝子発現変化とDNAレベルの変化の両方を有する6つの個別の染色体領域を検出することができた。その1つである19p13.3-19p13.1については、職歴と肺アスベスト繊維数から決定したアスベスト被曝の存在または不存在に基づいて選択した62人の男性患者の肺癌に対して19種のマイクロサテライトマーカーを用い、アレル不均衡を更に特徴付けた。
材料と方法
患者由来材料
全ての患者が、フィンランド白色人種を先祖とし、組織学的に確認した原発性肺癌を発症しているが、過去に悪性腫瘍を発症したことのない患者である。遺伝子発現解析のためのサンプルは、14人の重度アスベスト被曝患者と14人の非被曝患者から得た、肺腫瘍とそれに対応する正常肺サンプルからなる(表17)。続く19p内のアレル不均衡に関するマイクロサテライト解析においては、初めに使用したサンプルセットである28例と、アスベスト被曝状態に基づいて選択した追加の34例(重度被曝肺癌症例11例、職務中にアスベストに被曝した中度被曝肺癌症例8例、および非被曝肺癌症例15例)を解析した(表18)。ヘルシンキ/ウーシマー県 病院地区の、職務上の健康と安全に関する研究に対する倫理審査委員会(The Ethical Review Boards for Research in occupational Health and Safety)および調整倫理審査委員会(Coordinating Ethical Review Board)はこの研究のプロトコル(223/E0/2005と75/E2/2001)を承認した。法医学的業務のための国内当局(National Agency for Medicolegal Affairs)は診断用サンプルを研究目的で使用することを許可し(4476/33/300/05)、社会保健省(Ministry for Social Affairs and Health)は、研究のために患者の個人情報を収集することを許可した(STM/2474/2005)。
全ての症例について、アスベスト被曝の状態を、職歴と肺のアスベスト繊維濃度の測定(Karjalainen et al., 1993)の両方から推定した。個人面談から職務上の被曝が確定または予想され、肺のアスベスト繊維数が500万線維/乾燥肺組織(g)を超える患者のみを重度被曝群に加えた。繊維濃度が100万〜500万線維/乾燥肺組織(g)の患者を中度被曝群として分類した。通常は乾燥肺組織(g)当たりの線維数が最低100万であることが、職務上のアスベスト被曝の指標となる(Karjalainen et al., 1993)。非被曝群には、被曝歴からも、肺のアスベスト繊維数からも、アスベスト被曝が考えられない患者のみを加えた。
発現マイクロアレイ
各患者について、(Wikman et al., 2002)の記載に従い、UltraspecTM RNA単離システムを用いて腫瘍とその近傍の正常周辺肺組織からRNAを単離した。RNAの品質を2100 バイオアナライザー(RNAナノラボチップ;カリフォルニア州、パロアルト、Agilent Technologies)で確認し、分光光度計で定量した。遺伝子発現のプロファイリングを6μgの全RNAと共にAffymetrix HU133A GeneChips(カリフォルニア州、サンタクララ、Affymetrix)を用いて行った。ワンサイクルcDNA合成キット(カリフォルニア州、カールスバッド、Invitrogene)を用いてRNAをcDNAに変換し、精製し、Affymetrixの推奨する方法に従って標識cRNA(ニューヨーク州、ファーミングデール、Enzo)に変換した。断片化cRNAを16時間ハイブリダイズした。スライドの洗浄、染色とスキャンは標準的なAffymetrixのプロトコルに従って行った。Affymetrixチップ(HU133A)とのハイブリダイゼーションは、28人の患者それぞれから得た腫瘍肺RNAサンプルと正常肺RNAサンプルについて行った。
遺伝子発現データのデータ解析
標的値が100となるようにスケーリングし、コールの存在/不存在を決定するために、Affymetrix Analysis Suite version 5(MAS5)を用いた。バックグランド値が40〜70であり、ハウスキーピング遺伝子の対照シグナル比(5’から3’のプライムエンド転写産物比)が1に近いサンプルのみをデータ解析に含めた。この基準によって、3例の正常肺サンプルが研究から除外された。腫瘍チップについては、対応する正常肺サンプルのチップを参照用に用いた。正常肺結果の存在しない3例については、同じ被曝群サンプルのシグナル平均値を参照値の代わりに使用した。被曝サンプル群または非被曝サンプル群の少なくとも3分の1に存在した遺伝子(Affymetrixのp値<0.04)を解析に含めた。次にデータをlog2変換し、Lowess法で正規化した。発現レベルの変動する遺伝子を検出し、被曝群を非被曝群から区別することのできる最小遺伝子セットを同定するために、2段階解析モデルを使用した。2つの被曝群の大きさが類似していたため、第一段階として、AUROC(ROC)解析モデル(Kettunen et al, 2004)を選択した。ROC値が0.4未満または0.6超であり、p値が0.4未満の遺伝子をその後の解析に含めた。
第二段階では、各遺伝子について、遺伝子発現と被曝状態(アスベスト被曝対非被曝)の間の相関係数を計算した。我々は主としてアスベスト被曝患者の腫瘍と非被曝患者の腫瘍の間の差異に興味があったため、個別の正常肺組織サンプルにおいて遺伝子発現の変動が与える影響を最小にするために、相関解析を実施する前にデータを再スケーリングした。アスベスト関連腫瘍と非関連腫瘍との間の差異を強調するために、アスベスト関連腫瘍シグナルを非関連腫瘍シグナルの中央値でスケーリングし、非関連腫瘍シグナルをアスベスト関連腫瘍シグナルの中央値でスケーリングした。
相関係数の絶対値に基づいて遺伝子の順位付けを行った。腫瘍の正しい分類に必要な遺伝子の数を最適化するために、その順位に基づいて遺伝子を連続的に加えながら、正しく分類された患者の数を決定した。分類の信頼度を求めるために、“leave-one-out”交差検証法を使用した。
遺伝子発現とDNAコピー数の複合データの解析
被曝群の遺伝子発現比を非被曝群に対して局所的に比較することで、被曝関連遺伝子発現変化を有する染色体面積を同定した。染色体を部分的に重なる0.5〜1Mbpの染色体節に分け、各染色体節の発現変動を試験した。発現が変動する領域を仮説検定で同定した。各遺伝子の遺伝子発現比によって正しく分類された患者の数を計算し、染色体節の平均分類能力を検定統計量とした。この解析で見出した領域を、被曝関連コピー数変化を有することが判明した領域と比較した。発現データセットとコピー数データセットの両方で検出された領域が特に興味深い領域である。
アレル不均衡の検出のためのマイクロサテライト解析
アレル不均衡の存在を確認するための検証法として、マイクロサテライト解析を使用した。マイクロサテライト解析に使用したサンプルには、顕微解剖したDNA標本と顕微解剖していないDNA標本が含まれていた。重度アスベスト被曝患者と非被曝患者から得た最初の28例の腫瘍サンプルは、顕微鏡を使用せずに解剖したものであるが、一方、追加した34例の患者サンプルについては、DNAを得るために顕微解剖を行った。マイクロサテライト解析用のサンプルの内、52例は新鮮凍結組織から得たものであり、10例はパラフィン包埋組織から得たものであった。
顕微解剖は、1%トルイジンブルー−0.2%メチレンブルー溶液で染色した9μmの組織切片に対してArcturus Veritas装置を用いて行った。不均一な腫瘍組織から癌細胞を収穫するために、レーザー捕獲顕微解剖(LCM)技術を用いた。DNAの単離は、PicoPureTM DNA抽出キット(Arcturus)を用い、製造者のマニュアルに従って実施した。
染色体領域19p13.3-p13.1(19番染色体: 550,811〜22,287,245bp、22.29Mbp)内のアレルの平衡度は、22Mbpを概ねカバーする5〜19個のマイクロサテライトマーカーを用いて求めた。長さが80〜300bpのジヌクレオチド繰り返し断片またはトリヌクレオチド繰り返し断片を増幅するために、FAMまたはHEXで末端標識したプライマーペアを用いた。マーカーのプライマー配列は、国立バイオテクノロジーセンターのデータベースから入手した。標的配列をPCRで増幅し、次にPCR産物を、310-または3100-Avant遺伝子解析装置(Applied Biosystems)で電気泳動に付した。
アレル断片の長さを検討するために、GeneMapper解析ソフトウエアバージョン3.5(Applied Biosystems)を使用した。アレルは、予測サイズ範囲内の2つの最も高いピークと定義した。ヘテロ接合性マーカーのアレル不均衡(AI)は、腫瘍アレルと正常アレルのピーク高さの比を計算することで評価した。1.5以上の比をAIとしてスコアした。AI保有者を決定するための基準は、有益なマイクロサテライトマーカーの少なくとも25%がAI陽性であることと定義した。モノヌクレオチド繰り返し単位BAT−26を、BAT−26と肺癌のMSI表現型との相関性を試験するために用いた。このマーカーは、散発性直腸癌と胃癌の高頻度MSI表現型を99.4〜100%の精度で明らかにするために使用されている(Hoang et al., 1997)。
結果
遺伝子発現プロファイル
14例の重度アスベスト被曝患者肺腫瘍を14例の非被曝患者肺腫瘍から最も効率よく分離する遺伝子を検出するために、遺伝子発現データを用いてROC解析を行った。12,865個の遺伝子が1回目のROC解析に含まれていた(含めるための基準は、いずれかの被曝群の患者の少なくとも1/3にシグナルが存在することである)。
最も高いROC値(0.4未満または0.6超であり、p値は0.4未満)を有する遺伝子に基づく、未完成の、教師付きアルゴリズムによって、28例の腫瘍を、患者の被曝量に基づいて2群に分けることに成功した(データは示さない)。患者の被曝分類に基づく腫瘍の明確な分離は、約6000個の遺伝子転写産物に基づいて、腫瘍を上記2種に分類可能であることを示唆している。
次に、各遺伝子について、遺伝子発現と患者の被曝状態(アスベスト被曝対非被曝)の相関係数を計算した。2つの腫瘍群を区別することのできる最も小さな遺伝子セットを同定するために、相関係数の絶対値に基づいて遺伝子の順位付けを行った。被曝関連遺伝子の同定によって、ピアソンの相関係数が0.8超または−0.8未満である47個の遺伝子が明らかとなった。我々が選択した参照値(非関連腫瘍シグナルの中央値をアスベスト関連腫瘍の参照値とし、アスベスト関連腫瘍シグナルの中央値を非関連腫瘍の参照値とした)は比較的高い相関係数をもたらすが、各群の正常組織から得られるシグナルの中央値を使用しても同様の結果が得られることに気が付いた。47個の上位遺伝子の内の38個については、どちらの参照値を使用しても同じ結果が得られた。このような大きさの相関係数を有する単一遺伝子のみが、データのランダム順列化の後でも検出可能であった。この上位遺伝子(47個)からなる小さなセットの機能的解釈は、特定機能または染色体位置を明らかに過剰に表現するものではない。
遺伝子発現プロファイルとDNA異常プロファイルの組み合わせ
発現量の変化している被曝関連面積の同定によって、アスベスト被曝患者の腫瘍が非被曝患者の腫瘍とは異なる34個の面積(5Mbp以下の面積は結合した)が明らかとなった(データは示さない)。面積の検出は、CGHアレイ(Nymark et al., 2006)と同様に、0.5〜1Mbpの染色体節内で、2つの腫瘍群の遺伝子発現データを互いに比較することで行った。被曝関連変化を有する面積の同定は、並べ替え検定によって行った。観察された発現差が、並べ替え分布から推定した上側または下側の1%信頼区間を越えた時に、領域を有意であると判定した。mRNAレベル(発現データ)とDNAレベル(CGHアレイ)の両方で検出される被曝関連変化を有する遺伝子座を同定するために、これら2つのデータ解析結果を組み合わせた。6個の面積、即ち、2p21-p16.3、3p21.31、5q35.2-q35.3、16p13.3、19p13.3.-13.11と22q12.3-q13.1(表15)が2つの解析に共通していた。データは、2p21は被曝患者の腫瘍サンプルでは増幅され、同時に非被曝患者の腫瘍サンプルでは欠失しており、3p21.3-p21.1、5q35.3と22q13.1は被曝群患者の腫瘍では欠失しているこを示唆している。最も大きな有意領域が染色体19p13.3-19p13.1内に検出され、被曝患者では遺伝子の消失と下方制御を示し、一方、非被曝患者では、増加を示した。
19p13.3-13.1内のアレル不均衡
3種の被曝分類(重度被曝、中度職務被曝、およびアスベスト被曝なし)のいずれかに該当する男性患者から得た62例の肺癌について、19番染色体のp腕の被曝関連変化を実証し、異常の程度を明らかにするために、マイクロサテライト(LOH)解析を実施した。大部分のサンプルについて、19p13.3-p13.1内の22.3Mbp領域にかかる19個のマイクロサテライトマーカーを使用した。10例のパラフィンサンプルについては、19個のマーカーの内、200bp未満の断片を産生する5個のマーカーについてのみ解析した。被曝患者の80%(20/25)と非被曝患者の45%(13/29)(p=0.0045)は、腫瘍組織の19p領域にアレル不均衡(AI)を有することが判明した。中度被曝患者の75%(6/8)にもAIが検出された。検出されたアレル不均衡は、CGHアレイが示した結果(Nymark et al., 2006)と一致していた。
AI頻度の差が、腫瘍の組織型の間に見られた。被曝群においては、組織型に関係なく、AIは広く分布していた(表16)。重度被曝患者と中度被曝患者の結果をまとめて示したが、これは2つの被曝群のAI頻度の間に明らかな差が検出されなかったためである。一方、非被曝群においては、AIは腺癌に共通して検出された。種々の肺癌サブタイプ間のより詳細な比較は、群の大きさが限られていたために不可能であった。
個別のマーカーのAIの程度は、被曝患者の腫瘍で50〜90%、中度被曝患者の腫瘍で40〜100%、そして非被曝患者の腫瘍で20〜50%の範囲内であった(有益なマーカーのみを考慮した)。個別のマーカーによって判定したAI頻度の差に焦点を合わせると、非被曝患者と比べてアスベスト被曝患者の腫瘍サンプルにおいて、19個のマーカーの内の11個のマーカーで検出される染色体変化の頻度が有意に高かった。大方の場合AIは、検討した22Mbpの領域全体に渡っており、これは染色体19の短腕が完全に消失していることを意味する。
更に、非被曝患者の10%(3/29)が、検討した領域の全体に渡ってマイクロサテライト不安定性(MSI)を有することが判明した。直腸MSIマーカーであるBAT−26を用いて更にMSIについて評価すると、個別のマーカーの高い不安定性を示した3例の内の2例(54番と60番)は、このマーカーについても不安定性を示した。中度被曝患者と非被曝患者の間でMSI例が検出されたため、MSIはアスベスト関連肺癌の主要な原因とは考えられず、更なる検討は行わなかった。
* * * * *
ここに記載した実施例および発明の態様はいずれも説明のために記載したものであり、これら記載に基づく種々の修飾や変化は当業者には示唆されており、本願および添付の請求項の精神およびその範囲に含まれるものであることを理解されたい。本願に記載した全ての出版物、特許、特許出願、ヒトゲノムデータ(例えば、GenBankのアクセッション番号)は、個別の出版物、特許、特許出願および配列データを本願に取り込むために具体的且つ個別に記載した場合と同様に、本願の記載によって、いかなる目的のためであれ、完全に取り込まれたものとする。
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Claims (15)

  1. アスベスト被曝に関連した肺癌を同定するための方法であって、肺癌を患う個体から採取した肺癌細胞サンプルを提供し、そして肺癌細胞の以下の染色体領域:
    a) 19p13.3-p13.1、
    b) 9q32-34.3、
    c) 2p21-p16.3、
    d) 16p13.3、
    e) 22q12.3-q13.1 および
    f) 5q35.3
    の少なくとも1種に存在するアレル不均衡(AI)を検出することを包含する方法。
  2. 該領域の少なくとも1種に存在するアレル不均衡が、肺癌細胞の悪性度とアスベスト被曝との関連性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 染色体領域が19p13.3-p13.1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 染色体領域が9q33.1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 染色体領域19p13.3-p13.1内のアレル不均衡を、以下のマイクロサテライト:
    19s814、19S883、19S878、19S424、19S894、19S216、19S177、19S1034、
    19S873、19S884、19S916、19S583、19S535、19S906、19S221、19S840、
    19S917、19S895 および 19S568
    からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて検出することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. アレル不均衡の存在を、ヘテロ接合性喪失(LOH)解析によって検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. アレル不均衡の存在を、遺伝子発現プロファイルの作製によって検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  8. 遺伝子発現プロファイルが、表5に示した遺伝子の少なくとも1種の発現データを包含することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. アレル不均衡の存在を、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いて検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  10. アレル不均衡の存在を、レーザー顕微解剖技術を用いて検出することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  11. 請求項1の方法を実施するための手段を包含するキット。
  12. 癌細胞の以下の染色体領域:
    a) 19p13.3-p13.1、
    b) 9q32-34.3、
    c) 2p21-p16.3、
    d) 16p13.3、
    e) 22q12.3-q13.1 および
    f) 5q35.3
    の少なくとも1種に存在するアレル不均衡(AI)を検出するための、請求項11に記載のキット。
  13. 肺癌の危険度を同定するための方法であって、個体から採取した生物学的サンプルを提供し、そして肺癌細胞の以下の染色体領域:
    a) 19p13.3-p13.1、
    b) 9q32-34.3、
    c) 2p21-p16.3、
    d) 16p13.3、
    e) 22q12.3-q13.1 および
    f) 5q35.3
    の少なくとも1種に存在するアレル不均衡(AI)を検出することを包含し、該染色体領域に存在するアレル不均衡は、肺癌の危険度の変化の指標となることを特徴とする方法。
  14. 危険度の変化が、肺癌の危険度の上昇であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. 生物学的サンプルが、個体から採取した喀痰サンプル、気管支洗浄液サンプル、気管支肺胞洗浄サンプル、全血サンプル、血漿サンプルまたは血清サンプルであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
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