このようなサーミスタを利用した警報機が広く使われているが、図示したように、増幅器、トランジスタおよび多数の抵抗を含む回路が複雑であるという短所がある。
一方、他の例として、バイメタル(bimetal)を利用した温度センサーがあるが、バイメタルもやはり、低コストで広く使われているものの、特定温度の範囲が過度に広いという短所を有する。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一定の特定温度を正確に感知できる温度センサー、および該センサーを備えてシンプルな回路を有する警報機を提供することである。
このような目的を達成するために、本発明は、急激なMIT薄膜および前記遷移薄膜にコンタクトする少なくとも2つの電極薄膜を備えた急激なMIT素子を含み、前記急激なMIT素子は、一定の遷移温度で急激な金属−絶縁体遷移を起こす特性を有する急激なMIT素子を利用した温度センサーを提供する。
本発明の実施例によれば、前記急激なMIT素子は、前記遷移温度以下では、絶縁体の性質を示し、前記遷移温度以上では、金属の性質を示す。
前記急激なMIT素子の遷移薄膜は、酸素、炭素、半導体元素(III−V族、II−VI族)、遷移金属元素、希土類元素、ランタン系元素を含む低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体および絶縁体、低濃度の正孔が添加された有機物半導体および絶縁体、低濃度の正孔が添加された半導体、および低濃度の正孔が添加された酸化物半導体および絶縁体のうちの少なくとも一つを含みうる。
前記急激なMIT素子の電極薄膜は、W、Mo、W/Au、Mo/Au、Cr/Au、Ti/W、Ti/Al/N、Ni/Cr、Al/Au、Pt、Cr/Mo/Au、YBa2Cu3O7−d、Ni/Au、Ni/Mo、Ni/Mo/Au、Ni/Mo/Ag、Ni/Mo/Al、Ni/W、Ni/W/Au、Ni/W/AgおよびNi/W/Alのうちの少なくとも一つの物質を含みうる。
前記温度センサーは、前記急激なMIT素子に流れる電流量の変化を通じて、温度が前記遷移温度以上であることを感知するために、前記電極薄膜が外部電気または電子回路に連結されるように構成される。
本発明はまた、上述した目的を達成するために、警報機において、急激なMIT素子を備えた温度センサーと、前記温度センサーと直列に連結された警報信号機とを備える警報機を提供する。
本発明の実施例によれば、前記警報信号機は、電気信号、光および音のうちの少なくとも一つの信号を発生させる素子であり、望ましくは、発光ダイオードまたはブザーが適切である。また、発光ダイオードとブザーとを同時に使用することもできる。
さらに、本発明は、上述した目的を達成するために、警報機において、急激なMIT素子を備えた温度センサーと、前記温度センサーと連結されたリレースイッチと、前記リレースイッチに連結された警報信号機とを備える警報機を提供する。
本発明の実施例によれば、前記温度センサーは、遷移温度以上の温度を感知し、前記リレースイッチを連結することにより、前記警報信号機に信号を伝達する。このようなリレースイッチの連結は、前記温度センサーの前記遷移温度以上で急激に変化した電流によってなされる。
本発明は、急激なMIT素子を利用して温度センサーを製作することにより、簡単で正確な、温度を感知できる温度センサーを提供する。また、本発明の警報機は、急激なMIT素子を利用した温度センサーを利用することにより、非常にシンプルな回路を有する警報機を作り、経済的にも非常に安い警報機を製作しうる。
さらに、本発明の警報機は、極小型に製作できる急激なMIT素子を利用することにより、従来のサーミスタあるいはバイメタルを使用して製作された警報機に比べて、はるかに小型に製作しうる。
以下に、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施例を詳細に説明する。以下の説明において、ある構成要素が他の構成要素の上部に存在すると記述されるとき、これは、他の構成要素の上に直接存在することもでき、その間に第3の構成要素が介在されることもある。また、図面において、各構成要素の厚さやサイズは、説明の便宜および明確性のために省略されるか、または誇張され、図面上で、同じ参照符号は、同じ構成要素を表す。
本発明では、外部の特定温度によって電気的特性が急激に変わる新たな素子を利用して、温度を感知する温度センサーおよびその温度センサーを備えた警報機を提案する。前記新たな素子を、以下では急激なMIT(abrupt metal-insulator transition)素子という。また、急激なMIT素子が急激な金属−絶縁体遷移を起こす温度を「遷移温度(transition temperature)」という。
急激なMIT素子は、急激な金属−絶縁体遷移薄膜(以下、「遷移薄膜(transition thin film)」という。)および少なくとも2つの電極薄膜を備える。急激なMIT素子は、遷移薄膜および電極薄膜の位置によって積層型(または垂直型)構造と平面形構造とを有しうる。
図2は、積層型構造を有する急激なMIT素子の断面図である。
図2を参照すれば、積層型構造を有する急激なMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200の上部に形成された第1電極薄膜410、遷移薄膜300および第2電極薄膜420を備える。
バッファ層200は、基板100と第1電極薄膜410との間の格子不整合を緩和させる役割を担う。基板100と第1電極薄膜410との間の格子不整合が非常に小さい場合には、バッファ層200なしに第1電極薄膜410を基板100上に形成しうる。このようなバッファ層200は、SiO2またはSi3N4膜を備えて形成しうる。
遷移薄膜300は、酸素、炭素、半導体元素(III−V族、II−VI族)、遷移金属元素、希土類元素、ランタン系元素を含む低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体および絶縁体、低濃度の正孔が添加された有機物半導体および絶縁体、低濃度の正孔が添加された半導体、および低濃度の正孔が添加された酸化物半導体および絶縁体のうちの少なくとも一つを含みうる。また、遷移薄膜300は、n型であり、かつ非常に大きい抵抗を有する半導体および絶縁体を含んで形成されることもある。
一方、電極薄膜400は、W、Mo、W/Au、Mo/Au、Cr/Au、Ti/W、Ti/Al/N、Ni/Cr、Al/Au、Pt、Cr/Mo/Au、YBa2Cu3O7−d、Ni/Au、Ni/Mo、Ni/Mo/Au、Ni/Mo/Ag、Ni/Mo/Al、Ni/W、Ni/W/Au、Ni/W/AgおよびNi/W/Alのうちの少なくとも一つの物質を含んで形成される。このような電極薄膜400は、スパッタリング蒸着法、真空蒸着法およびE−ビーム蒸着法のうちの少なくとも一つの蒸着法を利用して形成しうる。
基板100は、Si、SiO2、GaAs、Al2O3、プラスチック、ガラス、V2O5、PrBa2Cu3O7、YBa2Cu3O7、MgO、SrTiO3、NbがドーピングされたSrTiO3および絶縁薄膜上のシリコン(SOI:Silicon On Insulator)のうちの少なくとも一つの物質を含んで形成される。
本発明に適用される急激なMIT素子は、温度によって電気的特性が急激に変わる。すなわち、急激なMIT素子は、遷移温度以下で絶縁体の特性を示し、遷移温度以上で急激な遷移が発生して、金属性物質の性質を示す。
図3は、平面形構造を有する急激なMIT素子の断面図である。
図3を参照すれば、平面形構造を有する急激なMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200の上面の一部に形成された遷移薄膜300a、バッファ層200の上部に遷移薄膜300aの側面と上面に相互に対向しつつ形成された第1電極薄膜410aおよび第2電極薄膜420aを備える。すなわち、第1電極薄膜410aと第2電極薄膜420aとは、遷移薄膜300aを介して相互に分離されている。
バッファ層200は、遷移薄膜300aと基板100との間の格子不整合を緩和させる。基板100と遷移薄膜300aとの間の格子不整合が非常に小さい場合には、バッファ層200なしに遷移薄膜300aを基板100上に形成しうる。
バッファ層200、遷移薄膜300a、電極薄膜400および基板100は、図2の説明で前述した材質で形成される。一方、積層型および平面型の急激なMIT素子は、μm単位で小型に作り、経済的にも非常に低いコストで製作しうる。
図4は、遷移温度で急激な金属−絶縁体遷移現象を起こすバナジウムジオキシド(VO2)で製造された急激なMIT素子を利用した温度センサーの温度に対する抵抗のグラフである。図4を参照すれば、グラフの横軸は、絶対温度を表し、単位は、Kであり、縦軸は、抵抗を表し、単位は、Ωである。温度センサーは、絶対温度約338K以下では、105Ω以上の高い抵抗を示し、ほとんど絶縁体としての特性を有する。しかし、約338K、すなわち、約65℃(A)で抵抗が急激に低下して数十Ωほどの抵抗を有する金属としての性質を示す。温度センサーが急激な抵抗の変化を示す理由は、前述したように、急激なMIT素子が約65℃で急激な金属−絶縁体遷移現象を起こすためである。したがって、本実験例の温度センサーとして使われる急激なMIT素子の遷移温度は、約65℃である。
本実験例においてVO2で製作された温度センサーは、65℃で急激な金属−絶縁体遷移を起こすが、適切な物質をドーピングすることによって遷移温度を変更しうる。また、急激なMIT素子を構成する構成要素の材質や構造を変化させても、遷移温度を変更させうる。このように、遷移温度で急激な金属−絶縁体遷移現象を起こす急激なMIT素子を利用して、温度センサーを作りうる。
一方、本発明の温度センサーは、遷移温度以上の温度を感知し、外部にそのような状態を知らせるために、温度センサーに電気または電子素子が連結される。また、温度センサーは、遷移温度で電気的特性、すなわち、抵抗が急激に変化するので、そのような変化を測定するためには、所定の特定電圧が電極薄膜を通じて遷移薄膜に持続的に印加されねばならない。
本発明の温度センサーは、急激なMIT素子を利用することにより、急激なMIT素子の遷移温度に該当する特定温度以上の温度を正確に感知でき、小型および経済的なコストで製作しうる。
図5は、本発明の一実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサーを備えた警報機の回路図である。図5を参照すれば、警報機は、急激なMIT素子を利用した温度センサー800、温度センサー800に連結されたリレースイッチ500、並びにリレースイッチに連結されたブザー600および発光ダイオード700を備える。リレースイッチ500、ブザー600および発光ダイオード700には、それぞれ電源電圧Vccが印加される。温度センサー800は、前述したように、遷移温度で急激な金属−絶縁体遷移を起こす急激なMIT素子で製作される。
ここで、ブザー600および発光ダイオード700は、温度センサー800によって感知された遷移温度以上の温度状態を知らせる警報信号機である。すなわち、感知された温度が遷移温度以上となれば、ブザー600は音を出し、発光ダイオード700は光を発する。ブザー600および発光ダイオード700は、警報信号機の一つの例示に過ぎず、電気信号、光、音を発生させうる多様な電気または電子素子が警報信号機として使われうる。一方、本実施例では、ブザー600と発光ダイオード700とを共に使用しているが、そのうちの一つのみが利用されてもよい。
一方、図5に示したように、発光ダイオード700は、直列連結されたダイオード保護用抵抗Rを含みうる。図5において、温度センサー800の近くに警報信号機600、700が表現されているが、遠距離の管制所に警報信号機600、700を設置し、電線を通じて温度センサーと連結されうる。この場合、温度センサー800は、温度変化を測定しようとする所に設置される。
本実施例による警報機の作用を簡単に説明すれば、外部の温度が遷移温度以上となれば、温度センサー800は、急激な金属−絶縁体遷移を起こして電流が急増する。増加した電流は、リレースイッチ500をターンオンさせ、それにより、ブザー600および発光ダイオード700に電流が通じて音および光の信号を発生させる。
本実施例は、図1の従来の警報機のセンサー部分の多数の回路の構成部分をただ一つの急激なMIT素子を利用した温度センサーに代替する。したがって、シンプルな警報機回路を製作しうる。また、本発明の温度センサーは、急激なMIT素子の遷移温度を精密に調節することによって、正確な温度で警報機が作動するようにしうる。また、前述したように、センサーを小型および経済的に製作しうるので、それにより、本実施例の警報機も小型および経済的に製作しうる。
図6は、本発明の一実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサーを備えた警報機の回路図である。図6を参照すれば、本実施例による警報機は、上述した実施例の警報機と類似しているが、リレースイッチが省略される。したがって、リレースイッチに印加される電源電圧Vccも省略される。
本実施例の警報機の作用を説明しようとするならば、遷移温度で急激なMIT素子を利用した温度センサー800が急激な金属−絶縁体遷移を起こして多量の電流が流れ、それにより、ブザー600および発光ダイオード700にも電流が流れて音および光の信号が発生する。もちろん、遷移温度以下でも少量の電流が流れるが、そのような電流は、ブザー600を作動するのには微弱である。また、発光ダイオード700もほとんどの電圧が温度センサー800に印加されることによって、発光ダイオード700の両端の電圧は、発光ダイオード700をターンオンさせるのには微弱な電圧となる。
本実施例においても、上述した実施例と同様に、警報信号機としてブザー600および発光ダイオード700だけでなく、多様な電気信号、光、音を発生させうる電気または電子素子が利用される。また、ブザー600および発光ダイオード700のうちの一つのみを警報信号機として使用でき、この警報信号機600、700が温度センサー800から遠距離にある管制所に設置されることもある。本実施例では、リレースイッチまで省略することにより、警報機の内部回路をさらに単純化させうる。
図7は、図1の回路でリレースイッチなしに製作された従来の警報機の写真である。図7において、点線の円部分が従来の温度センサー部分であり、前述したように、複雑な回路の形態を示している。
図8は、図4の回路図を利用して製作された本発明による警報機の写真である。図8から分かるように、本発明の警報機は、急激なMIT素子を利用した温度センサーを使用することにより、非常に簡単に構成しうることを示している。すなわち、矢印で表示した部分(小さい点線の円)が温度センサー部分であり、急激なMIT素子を利用した一つの温度センサーで従来の温度センサー部分を代替していることを示す。
以上、本発明を図面に示された実施例を参照して説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形および均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。