JP2009511073A6 - インフルエンザウイルス製造用マルチプラスミド系 - Google Patents

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Abstract

細胞培養により組換えインフルエンザワクチンとして適したインフルエンザウイルスを生産するためのベクターと方法が提供される。マルチプラスミドインフルエンザウイルス発現系で使用するための2方向性発現ベクターが提供される。さらに本発明は、発育鶏卵及び/又は細胞(例えばVero及び/又はMDCK)中で複製する能力が増強されたインフルエンザウイルスを製造する方法を提供し、さらに増強された複製特性を有するインフルエンザウイルスを提供する。

Description

本発明は、細胞培養により組換えインフルエンザワクチンとして適したインフルエンザウイルスを製造するためのベクター及び方法に関する。
インフルエンザウイルスは、断片化された1本鎖RNAゲノムを含有する内部リボ核タンパク質コアと、マトリックスタンパク質をおおう外部リポタンパク質エンベロープとから構成される。A型及びB型インフルエンザウイルスはそれぞれ、負の極性を有する1本鎖RNAの8つのセグメントを含有する。A型インフルエンザゲノムは少なくとも11個のポリペプチドをコードする。セグメント1〜3は3つのポリペプチドをコードし、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼを構成する。セグメント1は、ポリメラーゼ複合体タンパク質PB2をコードする。残りのポリメラーゼタンパク質であるPB1とPAは、それぞれセグメント2及びセグメント3によりコードされる。さらに、いくつかのA型インフルエンザ株のセグメント1は、PB1コード領域内の別のフレームワークから産生される小タンパク質PB1-F2をコードする。セグメント4は、感染時の細胞付着と侵入に関与するヘマグルチニン(HA)表面糖タンパク質をコードする。セグメント5は、ウイルスRNAに関連する主要な構造成分であるヌクレオカプシド核タンパク質(NP)ポリペプチドをコードする。セグメント6は、ノイラミニダーゼ(NA)エンベロープ糖タンパク質をコードする。セグメント7は、示差的にスプライシングされたmRNAから翻訳される2つのマトリックスタンパク質(M1及びM2と呼ぶ)をコードする。セグメント8は、選択的にスプライシングされたmRNA変種から翻訳される2つの非構造タンパク質NS1及びNS2(NEP)をコードする。
B型インフルエンザの8つのゲノムセグメントは11個のタンパク質をコードする。3つの最も大きな遺伝子がRNAポリメラーゼの成分PB1、PB2、及びPAをコードする。セグメント4はHAタンパク質をコードする。セグメント5はNPをコードする。セグメント6はNAタンパク質とNBタンパク質とをコードする。NB及びNAの両タンパク質は、バイシストロニックmRNAの重複したフレームワークから翻訳される。B型インフルエンザのセグメント7はまた、2つのタンパク質M1及びBM2をコードする。最も小さいセグメントは2つの産物をコードする(NS1は全長RNAから翻訳され、NS2はスプライスmRNA変種から翻訳される)。
インフルエンザウイルスに特異的な防御免疫応答を生じさせることができるワクチンが、50年以上にわたって製造されている。ワクチンは、全ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、表面抗原ワクチン、及び弱毒化生ウイルスワクチンとして特徴付けることができる。これらのワクチン種のいずれかの適切な製剤は全身性免疫応答を生じさせることができるが、弱毒化生ウイルスワクチンは呼吸器官で局所的な粘膜免疫を刺激することもできる。
FluMistTMは、インフルエンザ疾患から小児や成人を防御する弱毒化生ワクチンである(非特許文献1、2)。FluMistTMワクチン株は、共通のマスタードナーウイルス(MDV)由来の6つの遺伝子セグメント(PB1, PB2, PA, NP, M, 及びNS)とともに、現在流行している野生型株由来のHA及びNA遺伝子セグメントを含有する。FluMistのA型インフルエンザ株用のMDV(MDV-A)は、連続して低くなる温度で、初代ニワトリ腎組織培養物において、wt A/Ann Arbor/6/60 (A/AA/6/60)株の連続継代により作製された(非特許文献3)。MDV-Aは25℃で効率的に複製する(ca、低温順応性)が、その増殖は38及び39℃で制限される(ts、温度感受性)。さらにこのウイルスは、感染したフェレットの肺では複製しない(att、弱毒化)。ts表現型は、その複製を呼吸器官の最も低温の領域を除く全てで制限することにより、ヒトでのワクチンの弱毒化に寄与すると考えられている。この性質の安定性は、動物モデルと臨床試験で証明されている。化学的突然変異誘発により作製されるインフルエンザ株のts表現型とは反対に、MDV-Aのts性質は、感染したハムスターによる継代、又は小児からの脱落分離株での継代後では復帰しなかった(最近の総説については、非特許文献4を参照)。
20,000人を超える成人と小児における12種の別々の6:2再集合株を含む臨床試験は、これらのワクチンが弱毒化されており、安全で有効であることを示した(非特許文献1、2、5、6)。MDV-Aの6つの内部遺伝子とwtウイルスの2つのHA及びNA遺伝子セグメントとを保持する再集合体(6:2再集合体)は常にca、ts及びatt表現型を維持する(非特許文献7)。
今日まで、米国におけるすべての市販のインフルエンザワクチンは、発育鶏卵で増殖させている。インフルエンザウイルスは鶏卵中で十分に増殖するが、ワクチンの製造は卵が入手できるかどうかに依存する。卵の供給は組織化する必要があり、ワクチン製造のための株は次のインフルエンザシーズンの何ヶ月も前に選択する必要があるため、このアプローチの柔軟性が制限され、その製造及び流通が遅延したり不足することがしばしばある。残念ながらいくつかのインフルエンザワクチン株(例えば2003〜04のシーズンに流通したプロトタイプA/Fujian/411/02株など)は発育鶏卵中で十分に複製せず、コストと時間のかかる方法である細胞培養により単離しなければならない。本発明はさらに、発育鶏卵中で複製するワクチン株の能力を上昇させる新しい技術を提供する。さらに本発明は、インフルエンザワクチンのより効率的で費用効率の高い製造を可能にする。
最近、細胞培養でインフルエンザウイルスを製造するシステムも開発されている(例えば、非特許文献8、9参照)。典型的にはこれらの方法では、選択されたウイルス株を適当な不死化宿主細胞に感染させる。これらの方法は鶏卵でのワクチン製造に関連する多くの困難性を排除するが、確立された組織培養法では必ずしもすべてのインフルエンザ病原性株が十分に増殖し、製造できるとは限らない。さらに弱毒化生ワクチンの製造に適した所望の性質(例えば、弱毒化、温度感受性、及び低温順応性)を有する多くの株は、確立された方法を使用する組織培養ではうまく培養されていない。
組換えDNAからのインフルエンザウイルスの製造は、インフルエンザワクチン製造のための組織培養法の柔軟性と有用性を大幅に上昇させるであろう。最近、ウイルスゲノムをコードするcDNAを組み込んだ組換えプラスミドからA型インフルエンザウイルスを製造する系が報告された(例えば、特許文献1及び非特許文献10〜12参照)。これらの系は、任意の選択された株から免疫原性HA及びNAタンパク質を発現する組換えウイルス及び再集合ウイルスを製造する可能性を与える。しかしA型インフルエンザウイルスと異なり、B型インフルエンザウイルスのプラスミド単独系を記載する報告は無い。
WO 01/83794 Belshe et al. (1998) The efficacy of live attenuated, cold-adapted, trivalent, intranasal influenza virus vaccine in children N Engl J Med 338:1405-12 Nichol et al. (1999) Effectiveness of live, attenuated intranasal influenza virus vaccine in healthy, working adults: a randomized controlled trial JAMA 282:137-44 Maassab (1967) Adaptation and growth characteristics of influenza virus at 25 degrees C Nature 213:612-4 Murphy & Coelingh (2002) Principles underlying the development and use of live attenuated cold-adapted influenza A and B virus vaccines Viral Immunol 15:295-323 Boyce et al. (2000) Safety and immunogenicity of adjuvanted and unadjuvanted subunit influenza vaccines administered intranasally to healthy adults Vaccine 19:217-26 Edwards et al. (1994) A randomized controlled trial of cold adapted and inactivated vaccines for the prevention of influenza A disease J Infect Dis 169:68-76 Maassab et al. (1982) Evaluation of a cold-recombinant influenza virus vaccine in ferrets J Infect Dis 146:780-900 Furminger. Vaccine Production, in Nicholson et al. (eds) Textbook of Influenza pp. 324-332 Merten et al. (1996) Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation, in Cohen & Shafferman (eds) Novel Strategies in Design and Production of Vaccines pp. 141-151 Neumann et al. (1999) Generation of influenza A virus entirely from cloned cDNAs. Proc Natl Acad Sci USA 96:9345-9350 Fodor et al. (1999) Rescue of influenza A virus from recombinant DNA. J. Virol 73:9679-9682 Hoffmann et al. (2000) A DNA transfection system for generation of influenza A virus from eight plasmids Proc Natl Acad Sci USA 97:6108-6113
さらに現在利用可能なプラスミド単独系のいずれも、弱毒化生ワクチン製造に適した弱毒化、温度感受性、低温順応性株を生成するのに適していない。本発明は、完全にクローン化cDNAからB型インフルエンザウイルスを生成するための8プラスミド系、及びワクチン製剤(例えば鼻内投与に有用な生ウイルスワクチン製剤)に適したA型及びB型弱毒化生インフルエンザウイルスの製造方法、ならびに本明細書を検討する際に明らかになる多くの他の利点を提供する。
本発明は、細胞培養においてインフルエンザウイルスを製造するためのマルチベクター系、及び鼻内ワクチン製剤での投与に適したものなど、ワクチン(弱毒化生インフルエンザワクチンを含む)として適した、例えば弱毒化(att)、低温順応性(ca)、及び/又は温度感受性(ts)インフルエンザウイルスを含む、組換え及び再集合インフルエンザウイルスの製造方法に関する。
第1の態様において本発明は、例えばヘルパーウイルスの非存在下の細胞培養(すなわちヘルパーウイルス不含細胞培養系)において組換えB型インフルエンザウイルスを製造するためのベクター及び方法を提供する。本発明の方法は、複数のベクターを導入することを含み、該ベクターのそれぞれが、B型インフルエンザウイルスの一部を、ウイルス複製を支持することができる宿主細胞集団中に導入する。宿主細胞は、ウイルス増殖を許容する条件下で培養され、インフルエンザウイルスが回収される。いくつかの実施形態において、B型インフルエンザウイルスは、弱毒化ウイルス、低温順応性ウイルス、及び/又は温度感受性ウイルスである。例えばある実施形態において、ベクター由来の組換えB型インフルエンザウイルスは、弱毒化、低温順応性、温度感受性ウイルス(例えば鼻内ワクチン製剤で弱毒化生ワクチンとして投与するのに適したものなど)である。例示的な実施形態において、ウイルスは、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルスゲノム(例えばca B/Ann Arbor/1/66ウイルスゲノム)のすべてまたは一部を組み込んだ複数のベクターを導入することにより製造される。
例えば、いくつかの実施形態において、B型インフルエンザウイルスは、インフルエンザ株ca B/Ann Arbor/1/66の特徴的な生物学的性質に影響を与える1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込んだ、人工的に操作されたインフルエンザウイルスである。かかるインフルエンザウイルスは、位置PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34の1つ以上でアミノ酸置換を生じる突然変異(例えばPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G))を含む。個々に又は組合せで野生型ウイルスと比較して温度感受性、低温順応性、又は弱毒化を上昇させる(これらの位置の1つまたはそれ以上における)任意の突然変異が、本発明に関連して適切な突然変異である。
いくつかの実施形態において、異なるインフルエンザ株の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする1つまたはそれ以上のゲノムセグメントとともに、あるB型インフルエンザ株の少なくとも6つの内部ゲノムセグメントを含む複数のベクターが、宿主細胞集団中に導入される。例えば、選択された弱毒化、低温順応性、及び/又は温度感受性B型インフルエンザ株(例えば、B/Ann Arbor/1/66のa ca、att、ts株)の少なくとも6つの内部ゲノムセグメント(「骨格」)、又は上記位置の1つまたはそれ以上でアミノ酸置換を含む人工的に操作したB型インフルエンザ株が、別のウイルス株由来の免疫原性抗原をコードする1つまたはそれ以上のセグメントとともに、宿主細胞集団中に導入される。典型的に、免疫原性表面抗原には、ヘマグルチニン(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)抗原のいずれか又は両方が含まれる。免疫原性表面抗原をコードする単一のセグメントが導入される実施形態において、選択されたウイルスの7つの相補的セグメントも宿主細胞中に導入される。
特定の実施形態において、B型インフルエンザウイルスゲノムセグメントを組み込んだ複数のプラスミドベクターが宿主細胞集団中に導入される。例えば、それぞれ異なるゲノムセグメントを組み込んだ8種のプラスミドが、宿主細胞中に完全なB型インフルエンザゲノムを導入するのに使用される。あるいは、より小さいゲノム配列を組み込んだ、より多数のプラスミドを使用することができる。
典型的には、本発明のプラスミドベクターは、2方向性発現ベクターである。本発明の2方向性発現ベクターは、典型的には、第1プロモーターと第2プロモーターとを含み、ここで第1プロモーターと第2プロモーターは、インフルエンザウイルスゲノムのセグメントを含む、ウイルス核酸をコードする同じ2本鎖cDNAの別の鎖に機能できる形で結合している。場合により、2方向性発現ベクターは、ポリアデニル化シグナル及び/又はターミネーター配列を含む。例えばポリアデニル化シグナル及び/又はターミネーター配列は、2つのプロモーターの内部のインフルエンザウイルスゲノムのセグメントに隣接して存在することができる。本発明において好適なポリアデニル化シグナルの1つはSV40ポリアデニル化シグナルである。本発明の例示的なプラスミドベクターは、図1に示すプラスミドpAD3000である。
ベクターは、ベクタープロモーターからのインフルエンザウイルスの複製を支持することができる宿主細胞中に導入される。宿主細胞の好適な例には、Vero細胞、Per.C6細胞、BHK細胞、PCK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、293細胞(例えば、293T細胞)、及びCOS細胞などがある。本明細書に記載のpAD3000プラスミドベクターとの組合せにおいて、Vero細胞、293細胞、及びCOS細胞が特に適している。いくつかの実施形態において、これらの細胞株の少なくとも2つの混合物、例えばCOS細胞とMDCK細胞との組合せ、又は293T細胞とMDCK細胞との組合せの共培養物は、宿主細胞の集団を構成する。
次にB型インフルエンザウイルスを含む宿主細胞は、ウイルスの複製とアセンブリとを許容する条件下での培養で増殖される。典型的には、本発明のB型インフルエンザプラスミドを組み込んだ宿主細胞は、37℃より低い温度、好ましくは35℃又はこれ以下の温度で培養される。典型的には、細胞は32℃〜35℃の温度で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は、約32℃〜34℃の温度、例えば約33℃で培養される。適当な期間培養してウイルスを高力価まで複製させた後、組換え及び/又は再集合ウイルスが回収される。場合により回収されたウイルスは不活性化することができる。
本発明はまた、インフルエンザウイルスゲノムを組み込んだ複数のベクターを、インフルエンザウイルスの複製を支持できる宿主細胞集団中に導入し、細胞を35℃またはそれ以下の温度で培養し、インフルエンザウイルスを回収することにより、細胞培養で組換えインフルエンザウイルスを製造する広く適用可能な方法を提供する。
特定の実施形態において、インフルエンザウイルスゲノムセグメントを組み込んだ複数のプラスミドベクターが宿主細胞集団中に導入される。特定の実施形態において、その各々が異なるゲノムセグメントを組み込んだ8種のプラスミドが、宿主細胞に完全なインフルエンザゲノムを導入するために使用される。典型的には、本発明のプラスミドベクターは2方向性発現ベクターである。本発明のプラスミドベクターの例は、図1に示すプラスミドpAD3000である。
いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスはB型インフルエンザウイルスに対応する。いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスに対応する。特定の実施形態において、前記方法は、被験者への投与(例えば鼻内投与)により免疫応答を誘発することができる組換え及び/又は再集合インフルエンザウイルスを回収することを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスは投与前に不活性化され、別の実施形態では、弱毒化生ウイルスが投与される。本発明の方法で製造される組換え及び再集合A型インフルエンザ及びB型インフルエンザウイルスも、本発明の特徴である。
特定の実施形態において、ウイルスは、弱毒化インフルエンザウイルス、低温順応性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、又はこれらの所望の性質の任意の組合せを有するウイルスを含む。ある実施形態において、インフルエンザウイルスは、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス株、例えばB型/Ann Arbor/1/66の低温順応性、温度感受性、弱毒化株を含む。別の実施形態において、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザ/Ann Arbor/6/66ウイルス株、例えばA型/Ann Arbor/6/60の低温順応性、温度感受性、弱毒化株を含む。本発明の別の実施形態において、ウイルスは、例えばca A/Ann Arbor/6/60又はca B/Ann Arbor/1/66の特徴的な生物学的性質に影響を与える1つまたはそれ以上の置換されたアミノ酸を含む人工的に操作されたインフルエンザウイルスである。かかる置換アミノ酸は、好ましくは、ca A/Ann Arbor/6/60又はca B/Ann Arbor/1/66に固有のアミノ酸、例えばA型ウイルス株中のPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G);及びB型ウイルス株中のPB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)に対応する。同様に、温度感受性、低温順応性、及び/又は弱毒化を生じるこれらの位置のいずれかにおける他のアミノ酸置換が、本発明のウイルス及び方法に含まれる。一部のA型ウイルス又はB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は、生じるウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。
場合により、再集合ウイルスは、選択された(例えば病原性)株の表面抗原(HA及びNA)をコードするゲノムセグメントと組合せて、ワクチン製造に関する好適な性質について選択されたウイルス株の6つの内部遺伝子を含むベクターを導入することにより製造される。例えば、HAセグメントは、好ましくは、ワクチン製造のために通常行われるように、病原関連H1、H3、又はB株から選択される。同様に、HAセグメントは、例えばH2株(例えばH2N2)、H5株(例えばH5N1)、又はH7株(例えばH7N7)などの新生の病原株から選択することができる。あるいは、第1の株の7つの相補的遺伝子セグメントが、HA又はNAコードセグメントと組合せて導入される。特定の実施形態において、内部遺伝子セグメントは、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66又はA型/Ann Arbor/6/60株に由来する。
さらに本発明は、ワクチン製造に関して所望の性質を有する新規インフルエンザウイルス(例えば、温度感受性、弱毒化、及び/又は低温順応性インフルエンザウイルス)を製造する方法、ならびにかかる新規インフルエンザウイルスを含むインフルエンザワクチンを提供する。特定の実施形態において、新規A型インフルエンザウイルス株は、温度感受性表現型について重要であることが本明細書で証明された特定の位置(例えば、PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34)の1つまたはそれ以上でアミノ酸置換を生じる突然変異を導入することにより製造される。例えば、突然変異は、ヌクレオチド位置PB11195、PB11766、PB12005、PB2821、及びNP146、又は特定のアミノ酸位置でアミノ酸置換を生じる他のヌクレオチド位置で導入される。野生型ウイルスと比較して単独で又は組合せで温度感受性、低温順応性、又は弱毒化を上昇させる(これらの位置の1つ又はそれ以上における)任意の突然変異は、本発明において適切な突然変異である。例えばPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)から選択される突然変異を野生型のA型インフルエンザ株(例えばPR8)のゲノムに導入して、弱毒化生ワクチンとしての投与に適した温度感受性変変異体を製造することが好ましい。所望の表現型の安定性を上昇させるために、典型的には複数の突然変異が導入される。選択した突然変異をインフルエンザゲノムに導入した後、ウイルスが産生される条件下で突然変異インフルエンザゲノムが複製される。例えば、突然変異インフルエンザウイルスゲノムは鶏卵中で複製することができる。あるいは、インフルエンザウイルスゲノムは細胞培養で複製することができる。後者の場合、力価を上昇させるためにウイルスは鶏卵中でさらに増幅される。本発明の方法に従って製造された温度感受性、及び場合により弱毒化、及び/又は低温順応性ウイルスも本発明の特徴であり、そのようなウイルスを含むワクチンも同様である。同様に、位置PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34における1つまたはそれ以上の突然変異、例えばPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)から選択される突然変異、を含む新規組換えウイルス核酸、及びかかるアミノ酸置換を有するポリペプチドは、本発明の特徴である。
同様に、本明細書に記載の方法は、B型インフルエンザゲノム中に1つまたはそれ以上の特定の突然変異を導入することにより、温度感受性、及び場合により弱毒化、及び/又は低温順応性表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応される。例えばPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される位置でアミノ酸置換を生じる1つまたはそれ以上の突然変異が、B型インフルエンザ株のゲノム中に導入されて、温度感受性B型インフルエンザウイルスが製造される。アミノ酸置換の例として以下が含まれる:PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)。上記したように、かかるウイルスを含むワクチン、ならびにこれらの突然変異及びアミノ酸置換を含む核酸やポリペプチドはすべて、本発明の特徴である。ある好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸置換を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)。特に、これらの位置における保存的及び非保存的アミノ酸置換も本発明の範囲内であることが意図される。別の好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸位置に突然変異を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431、NP114、NP410、M1159、及びM1183。別の好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザを製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸位置に突然変異を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431、NP114、NP410、及びM1183。別の好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸位置に突然変異を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431、NP114、NP410、及びM1159。ある好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸置換を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、M1159(H159Q)、M1183(M183V)、及びPA497(Y497H)。ある好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸置換を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、M1159(H159Q)、及び/又はM1183(M183V)、及びPA497(Y497H)。特に、これらの位置における保存的及び非保存的アミノ酸置換も本発明の範囲内であることが意図される。一部のB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。別の好適な実施形態において、本明細書に記載の方法は、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造するように適応され、該方法は以下のアミノ酸位置に突然変異を導入することを含むか又は導入することからなる:PA431、NP114、NP410、M1159、M1183、及びPA497
従って、本発明の突然変異を含むインフルエンザウイルスは、これが製造される方法に関係なく本発明の特徴である。すなわち本発明は、本発明の突然変異を含むインフルエンザ株、例えばPB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34から選択される1つまたはそれ以上の位置で、野生型に対するアミノ酸置換を有する任意のA型インフルエンザウイルス、又はPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される1つまたはそれ以上の位置で、野生型に対するアミノ酸置換を有する任意のB型インフルエンザウイルスを包含するが、ただしca A/Ann Arbor/6/60株とB/Ann Arbor/1/66株は本発明の特徴とは見なされない。ある好適な実施形態において、それぞれ、A型インフルエンザウイルスは、PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)から選択される複数の突然変異を含み、B型インフルエンザウイルスは、PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)から選択される複数の突然変異を含む。一部のA型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。ある好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)。一部のB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、及びM1159(H159Q)。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、及びM1183(M183V)。一部のB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。特に、これらの位置における保存的及び非保存的アミノ酸置換も本発明の範囲内であることが意図される。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431、NP114、NP410、M1159、及びM1183。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431、NP114、NP410、及びM1159。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431、NP114、NP410、及びM1183。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、M1159(H159Q)、M1183(M183V)、及びPA497(Y497H)。一部のB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。別の好適な実施形態において、温度感受性及び弱毒化表現型を有する新規B型インフルエンザ株は、以下の位置にアミノ酸置換/突然変異を含むか又はこれらからなる:PA431、NP114、NP410、M1159、M1183、及びPA497。一部のB型ウイルスが、記載の位置に記載の残基を予め有し得ることは理解されるであろう。この場合、置換は生じたウイルスが好適な置換のすべてを有するように行われる。
ある実施形態において、インフルエンザウイルスゲノムを組み込んだ複数のプラスミドベクターが宿主細胞に導入される。例えばインフルエンザウイルスゲノムのセグメントを、少なくとも8つのプラスミドベクターに組み込むことができる。ある好適な実施形態において、インフルエンザウイルスゲノムのセグメントは8つのプラスミドに組み込まれる。例えば8つの各プラスミドは、好ましくは、インフルエンザウイルスゲノムの異なるセグメントを組み込んでいる。
本発明のベクターは、2方向性発現ベクターであることができる。本発明の2方向性発現ベクターは、典型的には、第1プロモーターと第2プロモーターとを含み、ここで第1プロモーターと第2プロモーターは、インフルエンザウイルスゲノムのセグメントを含む同じ2本鎖ウイルス核酸の別の鎖に機能できる形で結合している。場合により、2方向性発現ベクターは、ポリアデニル化シグナル及び/又はターミネーター配列を含む。例えば、ポリアデニル化シグナル及び/又はターミネーター配列は、2つのプロモーターの内部にあるインフルエンザウイルスゲノムのセグメントに隣接して存在することができる。本発明において1つの好適なポリアデニル化シグナルはSV40ポリアデニル化シグナルである。本発明のプラスミドベクターの例は、図1に示すプラスミドpAD3000である。
ベクタープロモーターからのインフルエンザウイルスの複製を支持することができる宿主細胞のいずれもが、本発明に適している。宿主細胞の好適な例には、Vero細胞、Per.C6細胞、BHK細胞、PCK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、293細胞(例えば、293T細胞)、及びCOS細胞などがある。本明細書に記載のpAD3000プラスミドベクターとの組合せにおいて、Vero細胞、293細胞、及びCOS細胞が特に適している。いくつかの実施形態において、これらの細胞株の少なくとも2つの混合物、例えばCOS細胞とMDCK細胞との組合せ、又は293T細胞とMDCK細胞との組合せの共培養物は、宿主細胞の集団を構成する。
本発明の特徴は、37℃より低い温度、好ましくは35℃以下の温度での、本発明のプラスミドを取り込んだ宿主細胞の培養である。典型的には、細胞は32℃〜35℃の温度で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は、約32℃〜34℃の温度、約33℃で培養される。
本発明の別の態様は、培養中のVero細胞からの組換え又は再集合A型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルス(すなわち、A型インフルエンザ及び/又はB型インフルエンザウイルスの野生型及び変異株)をレスキューするための新規方法に関する。インフルエンザウイルスゲノムを組み込んだ複数のベクターが、Vero細胞集団中にエレクトロポレートされる。細胞はウイルス複製を許容する条件下で増殖され、例えば低温順応性、弱毒化、温度感受性ウイルス株の場合、Vero細胞は37℃より低い温度、好ましくは35℃以下の温度で増殖される。典型的には、細胞は32℃〜35℃の温度で培養される。いくつかの実施形態において、細胞は、約32℃〜34℃の温度、例えば約33℃で培養される。場合により(例えばワクチン製造のために)、Vero細胞は動物由来の産物を含まない無血清培地中で増殖される。
上記した本発明の方法において、ウイルスは、インフルエンザゲノムプラスミドを組み込んだ宿主細胞の培養後に回収される。いくつかの実施形態において、回収されたウイルスは組換えウイルスである。いくつかの実施形態において、ウイルスは、2つ以上の親ウイルス株からの遺伝的寄与を有する再集合インフルエンザウイルスである。場合により、回収された組換え又は再集合ウイルスは、培養細胞中又は鶏卵中で継代することによりさらに増幅される。
場合により、回収されたウイルスは不活性化される。いくつかの実施形態において、回収されたウイルスはインフルエンザワクチンを含む。例えば、回収されたインフルエンザワクチンは、A型インフルエンザ又はB型インフルエンザの選択された株に由来するHA及び/又はNA抗原を有する再集合インフルエンザウイルス(例えば、6:2又は7:1再集合ウイルス)であることができる。特定の好適な実施形態において、再集合インフルエンザウイルスは、弱毒化表現型を有する。場合により、再集合ウイルスは、低温順応性及び/又は温度感受性であり、例えば表17の置換から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する弱毒化、低温順応性、又は温度感受性B型インフルエンザウイルスである。かかるインフルエンザウイルスは、例えば、選択された(例えば病原性)インフルエンザ株に特異的な免疫応答の予防的生成のための弱毒化生ワクチンとして有用である。本発明の方法で製造されるインフルエンザウイルス、例えば弱毒化再集合ウイルスは、本発明の特徴である。
別の態様において、本発明は、インフルエンザウイルスの複製を支持することができる宿主細胞集団中に、インフルエンザウイルスゲノムを組み込んだ複数のベクターを導入し、宿主細胞を35℃以下の温度で培養し、そして被験者への投与により免疫応答を誘発することができるインフルエンザウイルスを回収することを含む、組換えインフルエンザウイルスワクチンの製造方法に関する。本発明のワクチンは、A型インフルエンザ又はB型インフルエンザウイルス株のいずれかであることができる。いくつかの実施形態において、インフルエンザワクチンウイルスは、弱毒化インフルエンザウイルス、低温順応性インフルエンザウイルス、又は温度感受性インフルエンザウイルスを含む。特定の実施形態において、ウイルスは、これらの所望の性質の組合せを有する。ある実施形態において、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザ/Ann Arbor/6/60ウイルス株を含む。別の実施形態において、インフルエンザウイルスは、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス株を含む。あるいは、ワクチンは、ca A/Ann Arbor/6/60又はca B/Ann Arbor/1/66の特徴的な生物学的性質に影響を与える少なくとも1つの置換されたアミノ酸(例えばこれらの株に固有のアミノ酸)を含む人工的に操作したA型インフルエンザ又はB型インフルエンザウイルスを含む。例えば、本発明に包含されるワクチンには、PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34から選択される位置にアミノ酸置換を生じる少なくとも1つの突然変異を含む人工的に操作した組換え及び再集合A型インフルエンザウイルス、並びにPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される位置にアミノ酸置換を生じる少なくとも1つの突然変異を含む人工的に操作した組換え及び再集合B型インフルエンザウイルスが挙げられる。
いくつかの実施形態において、ウイルスは、2つ以上のインフルエンザウイルス株に由来するウイルスゲノムセグメントを有する再集合インフルエンザウイルス(例えば、6:2又は7:1再集合体)を含む。例えば、再集合インフルエンザウイルスワクチンは、好ましくは、ワクチン製造に関する所望の性質について選択されたウイルス株の内部ゲノムセグメントとの組合せで、A型又はB型インフルエンザの選択された株に由来するHA及び/又はNA表面抗原を含む。病原性株(例えば上記したもの)の局地的又は世界的流行の予測に基づいて、HA及び/又はNAをコードするセグメントが由来するインフルエンザ株を選択することがしばしば好ましい。いくつかの場合に、内部ゲノムセグメントを与えるウイルス株は、例えばA/Ann Arbor/6/60、B/Ann Arbor/1/66の、弱毒化、低温順応性、及び/又は温度感受性インフルエンザ株であるか、又は所望の表現型を生じる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する人工的に操作したインフルエンザ株、例えばPB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34から選択される位置にアミノ酸置換を生じる少なくとも1つの突然変異を含むA型インフルエンザウイルス、及びPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される位置にアミノ酸置換を生じる少なくとも1つの突然変異を含むB型インフルエンザウイルスである。例えば、好適な再集合ウイルスは、PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する人工的に操作したA型インフルエンザウイルス、及びPB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むB型インフルエンザウイルスを含む。
所望であれば、インフルエンザワクチンウイルスは、回収時に不活性化される。
本発明の方法により製造されるインフルエンザウイルスワクチン(弱毒化生ワクチンを含む)も本発明の特徴である。特定の好適な実施形態において、インフルエンザウイルスワクチンは再集合ウイルスワクチンである。
本発明の別の態様は、2方向性発現ベクターであるプラスミドを提供する。本発明の2方向性発現ベクターは、第2プロモーターとポリアデニル化部位(例えばSV40ポリアデニル化部位)との間に挿入された第1プロモーターを含む。ある実施形態において、第1プロモーターと第2プロモーターは、少なくとも1つのクローニング部位にフランキングして逆配向に位置することができる。本発明のベクターの例は、図1に示すプラスミドpAD3000である。
いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスゲノムの少なくとも1つのセグメントが、例えば2本鎖核酸としてクローニング部位中に挿入される。例えば、本発明のベクターは、第2プロモーターとSV40ポリアデニル化部位との間に挿入された第1プロモーターを有するプラスミドを含み、ここで第1プロモーターと第2プロモーターは、インフルエンザウイルスの少なくとも1つのセグメントにフランキングして逆配向に位置する。
本発明の1つまたはそれ以上の発現ベクターを含むキットも本発明の特徴である。典型的には、キットは、以下の1つまたはそれ以上をさらに含む:インフルエンザウイルス複製を支持できる細胞株、緩衝液、培養培地、説明書セット、パッケージ材料、及び容器。いくつかの実施形態において、キットは複数の発現ベクターを含み、そのそれぞれはインフルエンザウイルスゲノムの少なくとも1つのセグメントを含む。それぞれが選択されたウイルス株(例えばワクチン製造又は投与に関する所望の性質について選択された)の内部ゲノムセグメントの1つを含む複数の発現ベクターを含むキットは、本発明の特徴である。例えば、選択されたウイルス株は、弱毒化、低温順応性、及び/又は温度感受性株、例えばA/Ann Arbor/6/60もしくはB/Ann Arbor/1/66株であるか、又は所望の性質を有する別の株、例えば本明細書表17に記載されるようなアミノ酸置換の1つまたはそれ以上を有する人工的に操作した株であることができる。ある実施形態において、キットは、変異HA及び/又はNA抗原をコードする核酸のライブラリーのメンバーを組み込んだ発現ベクターを含む。
35℃以下の温度でインフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを取り込んだ少なくとも1つの細胞を含む生産的に増殖する細胞培養物も、本発明の特徴である。組成物は細胞培養培地を含むこともできる。いくつかの実施形態において、複数のベクターは、例えば第2プロモーターとSV40ポリアデニル化部位との間に挿入された第1プロモーターを含む、2方向性発現ベクターを含む。例えば、第1プロモーターと第2プロモーターは、インフルエンザウイルスの少なくとも1つのセグメントにフランキングして逆の配向で位置することができる。本発明の細胞培養物は、35℃以下、例えば約32℃〜35℃、典型的には約32℃〜約34℃、例えば約33℃の温度で維持される。
本発明はまた、上記の通り、インフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを取り込んだ少なくとも1つの細胞の生産的に増殖する細胞培養物と、該培養物を35℃以下で維持するためのレギュレーターとを含む細胞培養システムを含む。例えば、レギュレーターは、好ましくは、細胞培養物を約32℃〜35℃、典型的には約32℃〜約34℃、例えば約33℃の温度で維持する。
本発明の別の特徴は、温度感受性、低温順応性、及び/又は弱毒化に影響を与える1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む人工的に操作した組換え又は再集合インフルエンザウイルスである。例えばPB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34から選択される位置に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する人工的に操作したA型インフルエンザウイルス、及びPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される位置に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する人工的に操作したB型インフルエンザウイルスは、本発明の好適な実施形態である。実施形態の例は、以下のアミノ酸置換:PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)、のいずれか1つまたはそれ以上を有するA型インフルエンザウイルス、及び以下のアミノ酸置換:PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)、のいずれか1つまたはそれ以上を有するB型インフルエンザウイルスである。特定の実施形態において、ウイルスは、複数の突然変異、例えば上記の位置における、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9つのアミノ酸置換を含む。従って、上記の5つのすべての位置におけるアミノ酸置換、例えばPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)、を有する人工的に操作したA型インフルエンザウイルス、及び上記の8つ又は9つのすべての位置におけるアミノ酸置換、例えばPB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)、を有する人工的に操作したB型インフルエンザウイルスは、本発明に包含される。さらに、これらのウイルスは、上に列挙していない1つまたはそれ以上の追加のアミノ酸置換を含むことができる。さらに、以下の5つの位置:PA431、NP114、NP410、M1159、及びM1183にアミノ酸置換を有する人工的に操作したA型又はB型インフルエンザウイルスは、本発明に包含される。さらに、これらのウイルスは、上に列挙していない1つまたはそれ以上の追加のアミノ酸置換を含むことができる。
特定の実施形態において、人工的に操作したインフルエンザウイルスは、温度感受性インフルエンザウイルス、低温順応性インフルエンザウイルス、及び/又は弱毒化インフルエンザウイルスである。例えば、本発明の温度感受性インフルエンザウイルスは、典型的には、野生型インフルエンザウイルスと比較して、39℃で約2.0〜5.0 log10の増殖低下を示す。例えば、温度感受性ウイルスは、好ましくは、野生型インフルエンザウイルスと比較して、39℃で少なくとも約2.0 log10、少なくとも約3.0 log10、少なくとも約4.0 log10、又は少なくとも約4.5 log10の増殖低下を示す。典型的には(しかし必ずしもそうではないが)温度感受性インフルエンザウイルスは33℃で強い増殖特性を保持する。本発明の弱毒化インフルエンザウイルスは、典型的には、野生型インフルエンザウイルスと比較して、フェレット弱毒化アッセイにおいて約2.0〜5.0 log10の増殖低下を示す。例えば、本発明の弱毒化インフルエンザウイルスは、野生型インフルエンザウイルスと比較して、フェレット弱毒化アッセイにおいて少なくとも約2.0 log10、しばしば約3.0 log10、及び好ましくは少なくとも約4.0 log10の増殖低下を示す。
ある実施形態において、細胞培養でインフルエンザウイルスを製造する方法であって:i)宿主細胞集団中にインフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを導入し(この宿主細胞集団はインフルエンザウイルスの複製を支持することができる);ii)該宿主細胞集団を35℃以下で培養し;そしてiii)複数のインフルエンザウイルスを回収することを含んでなる方法が提供される。
包括的な実施形態において、本発明の上記方法は、少なくともB型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス、又は少なくとも1つの置換されたアミノ酸をコードする人工的に操作したB型インフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを導入することを含んでなり、この置換されたアミノ酸はB/Ann Arbor/1/66の特徴的な生物学的性質に影響を与える。
別の包括的な実施形態において、本発明の上記方法は、少なくともB型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス、又は以下の位置:PB2630、PA431、NP114、NP410、及びNP509で少なくとも1つの置換されたアミノ酸をコードする人工的に操作したB型インフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを宿主細胞集団中に導入することを含んでなる。好適な実施形態において、B型インフルエンザBウイルス株のゲノムは、以下の位置:M1159とM1183の1つまたはそれ以上で置換されたアミノ酸をさらに含む。
別の包括的な実施形態において、本発明の上記方法は、少なくともB型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス又は人工的に操作したB型インフルエンザウイルスゲノムを含む複数のベクターを宿主細胞集団中に導入することを含み、ここで前記ゲノムは、PB2630(S630R)、PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、及びNP509(A509T)よりなる群から選択されるアミノ酸置換の1つまたはそれ以上をコードする。好適な実施形態において、B型インフルエンザウイルス株のゲノムは少なくとも5つ全てのアミノ酸置換を含む。
好適な実施形態において、低温順応性(ca)インフルエンザウイルスを製造する方法であって、(a) 以下のアミノ酸位置:PB2630、PA431、NP114、NP410、及びNP509における突然変異の少なくとも1つを、B型インフルエンザウイルスゲノム中に導入し、(b) ウイルスが製造される条件下で突然変異インフルエンザウイルスゲノムを複製することを含んでなる方法が提供される。
好適な実施形態において、低温順応性(ca)インフルエンザウイルスを製造する方法であって、(a) 少なくとも以下の突然変異:PB2630(S630R)、PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、及びNP509(A509T)を、B型インフルエンザウイルスゲノム中に導入し、(b) ウイルスが製造される条件下で突然変異インフルエンザウイルスゲノムを複製することを含んでなる方法が提供される。
別の好適な実施形態において、25℃で効率的に複製する低温順応性(ca)インフルエンザウイルスを製造する方法であって、(a)以下のアミノ酸位置:PB2630、PA431、NP114、NP410、及びNP509における突然変異の少なくとも1つを、B型インフルエンザウイルスゲノム中に導入し、(b) ウイルスが製造される条件下で突然変異インフルエンザウイルスゲノムを複製することを含んでなる方法が提供される。
別の好適な実施形態において、25℃で効率的に複製する低温順応性(ca)インフルエンザウイルスを製造する方法であって、(a) 少なくとも1つの以下の突然変異:PB2630(S630R)、PA431(V431M)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、及びNP509(A509T)を、B型インフルエンザウイルスゲノム中に導入し、(b) ウイルスが製造される条件下で突然変異インフルエンザウイルスゲノムを複製することを含んでなる方法が提供される。
別の好適な実施形態において、上記方法により製造されるインフルエンザウイルス(及びこれを含む免疫原性組成物)が提供される。
別の好適な実施形態において、上記方法により製造される低温順応性ウイルス(及びこれを含む免疫原性組成物)が提供される。
本発明はまた、細胞及び発育鶏卵中でのインフルエンザウイルス複製に影響を与える、HA及びNA中のアミノ酸残基の同定及び操作に関する。本発明はさらに、発育鶏卵及び/又は細胞中での複製が改善されたHA及びNAインフルエンザウイルスワクチン変種を作成するための、逆遺伝学の使用に関する。本発明はさらに、HA受容体結合活性及びNAノイラミニダーゼ活性をモジュレートする方法に関する。さらに本発明は、発育鶏卵及び/又は細胞中での複製能力が増強したインフルエンザウイルスを提供する。
ある実施形態において、本発明は、発育鶏卵及び/又は細胞でインフルエンザウイルスが複製する能力を上昇させるために、HA及び/又はNAのアミノ酸残基を操作する方法を提供する。この方法は、HA及び/又はNA中のアミノ酸残基置換の導入を含み、インフルエンザウイルスの複製を支持できる宿主細胞集団中に、インフルエンザウイルスゲノムを組み込んだ複数のベクターを導入し、細胞を培養し、インフルエンザウイルスを回収することにより、細胞培養でインフルエンザウイルスを製造する方法を利用する。好ましくは、回収されたインフルエンザウイルスは、発育鶏卵及び/又は細胞中で複製する能力が上昇している。別の実施形態において、本発明は、非改変インフルエンザウイルス株と比較して、発育鶏卵中で複製する能力が上昇したインフルエンザウイルス変異体を提供する(以後「複製増強インフルエンザ変異体」と呼ぶ)。
多くの病原性インフルエンザウイルス株は組織培養ではあまり増殖せず、弱毒化生ウイルスワクチンの製造に適した株(例えば、温度感受性、低温順応性、及び/又は弱毒化インフルエンザウイルス)は、商業的生産のための培養細胞での増殖は成功していない。本発明は、標準的細胞培養条件下での増殖に順応していないインフルエンザウイルス株の増殖と回収とを可能にするマルチプラスミドトランスフェクション系を提供する。インフルエンザワクチンを開発し製造するためのさらなる課題は、1つまたはそれ以上の流行しているインフルエンザ株が発育鶏卵中で複製しないことがあることである。本発明は、HA及びNAタンパク質の活性に影響を与えるいくつかのアミノ酸残基を同定し、これらの活性をモジュレートすることができる特定のアミノ酸置換を同定した。本発明は、HA受容体結合活性及び/又はNAノイラミニダーゼ活性のモジュレーションが、卵及び/又は宿主細胞(例えば、Vero細胞又はMDCK細胞)中でのインフルエンザの複製を増強することができることを開示する。特に本発明は、HA及び/又はNA中のアミノ酸置換の組合せが、卵及び/又は細胞におけるウイルス複製を増強することができることを開示し、これらのアミノ酸置換がこれらの組換えインフルエンザウイルスの抗原性に有意な影響を与えないことを証明する。すなわち本発明は、インフルエンザウイルスワクチンの製造を改善するための逆遺伝学的技術の使用を提供する。
第1の態様において、本発明の方法は、完全に、クローン化ウイルスDNAから細胞培養で組換えB型インフルエンザウイルスを製造するためのベクター及び方法を提供する。別の態様において、本発明の方法は、一部には、培養細胞におけるin vitroでのワクチン製造に関して所望の性質(例えば、弱毒化された病原性又は表現型、低温順応性、温度感受性など)を有するウイルス株(A型及びB型インフルエンザウイルス株)の増殖を支持する組織培養条件の開発に基づく。インフルエンザウイルスは、クローン化ウイルスゲノムセグメントを組み込んだ複数のベクターを宿主細胞中に導入し、35℃を超えない温度で細胞を培養することにより製造される。インフルエンザウイルスゲノムを含むベクターがトランスフェクトされるとき、ワクチンとして適した組換えウイルスは標準的精製法により回収することができる。本発明のベクター系及び方法を使用して、ワクチン製造に関して所望の性質について選択された株の6つの内部遺伝子セグメントと、選択された(例えば病原性)株からの免疫原性HA及びNAセグメントとを組み込んだ再集合ウイルスを、組織培養で迅速かつ効率的に製造することができる。すなわち、本明細書に記載の系及び方法は、組換え及び再集合A型及びB型インフルエンザウイルス(ワクチン(例えば鼻内投与に適したワクチンなどの弱毒化ワクチンを含む)としての使用に適したウイルスを含む)の細胞培養での迅速な製造に有用である。
典型的には、単一のマスタードナーウイルス(Master Donor Virus)(MDV)株は、AサブタイプとBサブタイプのそれぞれについて選択される。弱毒化生ワクチンの場合、マスタードナーウイルス株は、典型的には、ワクチン製造に関して好適な性質(例えば、温度感受性、低温順応性、及び/又は弱毒化)について選択される。例えば、マスタードナー株の例には、それぞれ、A/Ann Arbor/6/60及びB/Ann Arbor/1/66の温度感受性、弱毒化、及び低温順応性株などがある。本発明は、これらのウイルス株のca、ts、及びatt表現型を生じる基礎になる突然変異を解明し、組換え及び再集合ワクチン製造においてドナー株として使用するのに適した新規インフルエンザ株の製造方法を提供する。
例えば、選択されたマスタードナーA型ウイルス(MDV-A)又はマスタードナーB型ウイルス(MDV-B)は、ウイルスゲノムを構成する複数のクローン化ウイルスcDNAから製造される。ある例示的な実施形態において、組換えウイルスは、8つのクローン化ウイルスcDNAから製造される。選択されたMDV-A又はMDV-B配列いずれかのPB2、PB1、PA、NP、HA、NA、M、及びNSに相当する8つのウイルスcDNAは、ウイルスゲノムRNAが1つの鎖のRNAポリメラーゼI(pol I)プロモーターから転写され、ウイルスmRNAがもう一方の鎖のRNAポリメラーゼII(pol II)プロモーターから合成され得るように、例えばプラスミド(例えばpAD3000)などの2方向性発現ベクター中にクローンニングされる。場合により、(例えば複数の塩基性アミノ酸切断部位(malti-basic cleavage site)を除去するために)HAセグメントを含む任意の遺伝子セグメントを改変することができる。
次に、感染性組換えMDV-A又はMDV-Bウイルスは、8つのウイルスcDNAを有するプラスミドを適切な宿主細胞(例えばVero細胞、共培養MDCK/293T、又はMDCK/CO7細胞)にトランスフェクションした後に回収される。本明細書に記載のプラスミド及び方法を使用することにより、本発明は、例えば、対応する型(A又はB)と異なるインフルエンザウイルスに由来するHA及びNAと一緒に、選択されたウイルス(例えば、MDV-A、MDV-B)の6つの内部遺伝子(PB1、PB2、PA、NP、M及びNS)を同時トランスフェクトすることにより、6:2再集合インフルエンザワクチンを生成するのに有用である。例えばHAセグメントは好ましくは、ウイルス製造で通常行われるように、病原性関連H1、H3、又はB株から選択される。同様に、HAセグメントは、H2株(例えばH2N2)、H5株(例えばH5N1)、又はH7株(例えばH7N7)などの病原性株として関連性が現れている株から選択することができる。MDVの7つのゲノムセグメントと選択した株のHA又はNA遺伝子とを組み込んだ再集合体(7:1再集合体)を製造することもできる。さらに、この系は、ワクチン製造に関する表現型特性、例えば弱毒化(att)、低温順応性(ca)、及び温度感受性(ts)表現型の分子的基礎を決定するのに有用である。
別の態様において、本発明は、発育鶏卵及び/又は細胞におけるインフルエンザウイルスの複製能力を上昇させるために、HA及び/又はNAのアミノ酸残基を操作する方法を提供する。例えば、卵及び/又は細胞におけるインフルエンザウイルスの複製能力を上昇させるために、本発明の方法を使用して、HA受容体結合活性及び/又はNAノイラミニダーゼ活性をモジュレートすることができる。さらに、本発明は、発育鶏卵及び/又は細胞における複製能力が上昇しているインフルエンザウイルスを提供する。
定義
特に明記しない場合は、すべての科学用語及び技術用語は、それらが関係する分野で通常使用されているものと同じ意味を有すると理解される。本発明の目的において以下の用語が下記に定義される。
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、及び「核酸配列」は、1本鎖もしくは2本鎖デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマー、又はこれらのキメラもしくは類似体を指す。本明細書で使用されるこの用語は、場合により、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で1本鎖核酸にハイブリダイズするという点で天然ヌクレオチドの本質的性質を有する、天然に存在するヌクレオチドの類似体のポリマー(例えばペプチド核酸)を含む。特に明記しない場合は、本発明の特定の核酸配列は、明示されている配列に加えて、相補配列を包含する。
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連する任意の核酸を意味するのに広く使用される。すなわち遺伝子は、コード配列及び/又はその発現に必要な調節配列を含む。用語「遺伝子」は、特定のゲノム配列、ならびにそのゲノム配列にコードされるcDNAもしくはmRNAに適用される。
遺伝子はまた、例えば他のタンパク質の認識配列を形成する、発現されない核酸セグメントを含む。発現されない調節配列は「プロモーター」及び「エンハンサー」を含み、転写因子などの調節タンパク質がこれに結合して、隣接する又は近くの配列の転写を引き起こす。「組織特異的」プロモーター又はエンハンサーは、特定の種類の組織又は細胞で転写を調節するものである。
用語「ベクター」は、核酸を生物、細胞若しくは生物間で伝播する及び/又は輸送することができる手段を指す。ベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、及び人工染色体などがあり、これらは自立的に複製するか、又は宿主細胞の染色体中に組み込まれ得る。ベクターはまた、自立的に複製しない裸のRNAポリヌクレオチド、裸のDNAポリヌクレオチド、同じ鎖中でDNAとRNAの両方からなるポリヌクレオチド、ポリ−リジン−コンジュゲート型DNA又はRNAなどであることもできる。最も一般的には本発明のベクターはプラスミドである。
「発現ベクター」は、組み込まれる核酸の発現ならびに複製を促進することができる、プラスミドなどのベクターである。典型的には、発現される核酸は、プロモーター及び/又はエンハンサーに「機能できる形で結合」しており、プロモーター及び/又はエンハンサーにより転写の調節的制御を受ける。
「2方向性発現ベクター」は、典型的には、発現が両配向で開始されて、例えばプラス(+)もしくはセンス鎖、及びマイナス(−)もしくはアンチセンス鎖RNAの転写を生じるように、2つのプロモーターの間に位置する核酸に関して反対の方向に配向している2つの別のプロモーターにより特徴付けられる。あるいは2方向性発現ベクターは、ウイルスmRNAとウイルスゲノムRNA(cRNAとして)が同じ鎖から発現されるアンビセンスRNAであることができる。
本発明において、用語「単離された」は、その天然の環境で通常付随するか又は相互作用する成分から実質的に遊離している、核酸もしくはタンパク質などの生物学的物質を指す。単離された物質は、場合により、その天然の環境(例えば細胞)中では見られない物質を含む。例えば、その物質がその天然の環境(細胞など)にある場合、その物質は、本来その環境で見られる物質ではない細胞(例えば、ゲノム又は遺伝子要素)中の位置に置かれる。例えば天然に存在する核酸(例えば、コード配列、プロモーター、エンハンサーなど)は、天然に存在しない手段により、その核酸の本来の遺伝子座ではないゲノムの遺伝子座に導入される(例えば、プラスミド若しくはウイルスベクターなどのベクター、又はアンプリコン)場合、単離されるようになる。かかる核酸はまた「異種」核酸と呼ばれる。
用語「組換え体」は、ヒトの介入により人工的又は合成的(天然ではない)により改変されている物質(例えば核酸又はタンパク質)を示す。改変は、その天然の環境又は状態内の物質又はそこから除かれた物質について行うことができる。具体的に、ウイルス(例えばインフルエンザウイルス)について言及すると、これが組換え核酸の発現により生産されるとき、ウイルスは組み換え体である。
ウイルスについて言及するとき、用語「再集合体」は、そのウイルスが、2つ以上の親ウイルス株又は起源に由来する遺伝子及び/又はポリペプチド成分を含むことを示す。例えば、7:1再集合体は、第1の親ウイルス由来の7つのウイルスゲノムセグメント(又は遺伝子セグメント)と、第2の親ウイルス由来の、例えばヘマグルチニン又はノイラミニダーゼをコードする1つの相補的ウイルスゲノムセグメントとを含む。6:2再集合体は、6つのゲノムセグメント、最も一般的には第1の親ウイルスからの6つの内部遺伝子と、異なる親ウイルスからの2つの相補的セグメント(例えばヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ)とを含む。
異種の又は単離された核酸に言及する際の用語「導入された」は、核酸を細胞のゲノム(例えば染色体、プラスミド、プラスチド、又はミトコンドリアDNA)組み込まれ、自律レプリコンに変換され、又は一過的に発現され得る(例えばトランスフェクトされたmRNA)場合、核酸の原核又は真核細胞への組込みを指す。この用語は、「感染」、「トランスフェクション」、「形質転換」、及び「形質導入」などの方法を含む。本発明において、核酸を原核細胞に導入するのに種々の方法を使用することができ、これにはエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、脂質介在トランスフェクション(リポフェクション)などがある。
用語「宿主細胞」は、異種核酸(例えばベクター)を含有し、該核酸の複製及び/又は発現、並びに場合によりポリペプチド及び/又はウイルスを含む1つまたはそれ以上のコード産物の産生を支持する細胞を意味する。宿主細胞は大腸菌(E. coli)などの原核細胞、又は酵母、昆虫、両生類、鳥類、もしくは哺乳動物細胞などの真核細胞であることができる。本発明において、宿主細胞の例には、Vero(アフリカミドリサル腎)細胞、Per.C6細胞(ヒト胚網膜細胞)、BHK(ベビーハムスター腎)細胞、雛初代腎(PCK)細胞、Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)細胞、Madin-Darbyウシ腎(MDBK)細胞、293細胞(例えば293T細胞)、及びCOS細胞(例えば、COS1、COS7細胞)などがある。宿主細胞という用語は、例えば異なる種類の細胞又は細胞株(例えばVero細胞及びCEK細胞)の混合培養物を含む、細胞の組合せ又は混合物を包含する。エレクトロポレートしたsf Vero細胞の共培養は、例えばPCT/US04/42669(2004年12月22日出願)(これは参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載されている。
用語「温度感受性」、「低温順応性」、及び「弱毒化」は当該分野で周知である。例えば、用語「温度感受性」(「ts」)は、ウイルスが、A型インフルエンザ株に関し、33℃と比較して39℃で力価の100倍またはそれ以上の低下を示し、B型インフルエンザB株に関し、33℃と比較して37℃で力価の100倍またはそれ以上の低下を示すことを表わす。例えば、用語「低温順応性(「ca」)は、ウイルスが25℃で33℃での増殖の100倍以内の増殖を示すことを表わす。例えば、用語「弱毒化」(att)は、ウイルスがフェレットの上気道で複製するが肺組織では検出可能ではなく、フェレットでインフルエンザ様症状を引き起こさないことを表わす。中間の表現型を有するウイルス、すなわち39℃(A型ウイルス株について)又は37℃(B型ウイルス株について)で100倍未満の力価低下を示すウイルス、25℃で33℃での増殖より100以上の増殖(例えば、200倍以内、500倍以内、1000倍以内、10,000倍未満)を示すウイルス、フェレットの上気道での増殖に比較して肺で増殖低下(すなわち、部分的に弱毒化)を示すウイルス、及び/又はフェレットでインフルエンザ様症状の低下を示すウイルス(これらのウイルスは本明細書に記載のアミノ酸置換の1つまたはそれ以上を有する)も、本発明に包含される有用なウイルスであることは理解されるであろう。増殖は、力価、プラークサイズ若しくは形態、粒子密度、又は当業者に周知の他の基準により示される。
用語「人工的に操作した」は、本明細書で、ウイルス、ウイルス核酸、又はウイルスにコードされる産物(例えばポリペプチド、ワクチン)が、組換え法(例えば、部位特異的突然変異誘発、PCR突然変異誘発など)により少なくとも1つの突然変異を含むことを指すべく使用される。「人工的に操作した」という表現は、1つまたはそれ以上のヌクレオチド突然変異及び/又はアミノ酸置換を含むウイルス(又はウイルス成分もしくは産物)に言及するとき、ウイルスゲノム又はウイルス(又はウイルス成分又は産物)をコードするゲノムセグメントが、天然に存在する供給源、例えば天然に存在するもしくは非組換え法(例えば25℃での連続継代)により製造される既存の実験室ウイルス株(例えば、野生型もしくは低温順応性A/Ann Arbor/6/60もしくはB/Ann Arbor/1/66株)由来ではないことを表わす。
インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスのゲノムは、免疫原性ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、及び6つのコアポリペプチド(ヌクレオカプシド核タンパク質(NP);マトリックスタンパク質(M);非構造タンパク質(NS);及び3つのRNAポリメラーゼ(PA、PB1、PB2)タンパク質)をコードする線状(−)鎖リボ核酸(RNA)の8つのセグメントからなる。複製中、ゲノムウイルスRNAは、宿主細胞の核内の(+)鎖メッセンジャーRNAおよび(−)鎖ゲノムcRNAに転写される。8つの各ゲノムセグメントは、RNAに加えて、NPとポリメラーゼ複合体(PB1、PB2、及びPA)とを含むリボ核タンパク質複合体にパッケージングされる。
本発明において、8つの各セグメントに対応するウイルスゲノムRNAは、インフルエンザウイルスの操作及び製造のために、組換えベクター中に挿入される。本発明において、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、ファージ、及び人工染色体を含む種々のベクターを使用することができる。典型的には、操作を容易にするために、ウイルスゲノムセグメントはプラスミドベクターに挿入されて、細菌細胞及び真核細胞で機能する1つまたはそれ以上の複製起点と、場合によりプラスミド配列を取り込んだ細胞をスクリーニング又は選択するために便利なマーカーを与える。例示的なベクターであるプラスミドpAD3000を図1に示す。
通常、本発明のプラスミドベクターは、挿入されたウイルスゲノムセグメントの転写をいずれの方向にも開始することができる(すなわち、(+)鎖及び(−)鎖のウイルスRNA分子を生じる]2方向性発現ベクターである。2方向性転写を行うために、各ウイルスゲノムセグメントは、少なくとも2つの独立したプロモーターを有するベクター中に挿入され、その結果、ウイルスゲノムRNAのコピーが一方の鎖から第1のRNAポリメラーゼプロモーター(例えばPol I)により転写され、ウイルスmRNAが第2のRNAポリメラーゼプロモーター(例えばPol II)から合成される。従って、2つのプロモーターは、少なくとも1つのクローニング部位(すなわち制限酵素認識配列)、好ましくはウイルスゲノムRNAセグメントの挿入に適した固有のクローニング部位、にフランキングして反対配向で配置される。あるいは「アンビセンス」ベクターを使用することができ、その際、(+)鎖mRNAと(−)鎖ウイルスRNA(cRNAとして)は該ベクターの同じ鎖から転写される。
発現ベクター
発現されるべきインフルエンザウイルスゲノムセグメントは、mRNA合成を指令するための適切な転写制御配列(プロモーター)に機能できる形で結合される。種々のプロモーターが、インフルエンザウイルスゲノムセグメントの転写を調節するために、発現ベクターで使用するのに適している。特定の実施形態において、例えばベクターがプラスミドpAD3000である場合、サイトメガロウイルス(CMV)DNA依存性RNAポリメラーゼII(Pol II)が使用される。所望であれば、例えば条件発現を調節するために、特定の条件下で又は特定の組織もしくは細胞中でRNA転写を誘導する他のプロモーターを代用することができる。無数のウイルスおよび哺乳動物(例えばヒト)プロモーターが利用可能であるか、又は意図される具体的な用途に従って単離することができる。例えば動物及びヒトウイルスのゲノムから得られる別のプロモーターとして、アデノウイルス(例えば2型アデノウイルス)、パピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオーマウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、及び種々のレトロウイルスプロモーターなどのプロモーターが挙げられる。哺乳動物のプロモーターとして、特に、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターなどが挙げられる。さらに、バクテリオファージプロモーターを同種のRNAポリメラーゼ(例えばT7プロモーター)とともに使用することができる。
転写は、場合により、エンハンサー配列を含めることにより上昇させることができる。エンハンサーは、典型的には、短い、例えば10〜500bpのシス作用性DNA要素であり、プロモーターと共同作用して転写を上昇させる。哺乳動物の遺伝子(ヘモグロビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテイン、及びインスリン)及び真核細胞ウイルスから多くのエンハンサー配列が単離されている。エンハンサーは、異種コード配列の5'位又は3'位でベクター中に挿入されるが、典型的には、プロモーターの5'部位に挿入される。異種DNAが導入される宿主細胞種における発現を最適化するために、典型的にはプロモーター、及び所望であれば追加の転写増強配列が選択される(Scharf et al. (1994) Heat stress promoters and transcription factors Results Probl Cell Differ 20:125-62; Kriegler et al. (1990) Assembly of enhancers, promoters, and splice signals to control expression of transferred genes Methods in Enzymol 185: 512-27)。場合により、アンプリコンは、翻訳開始のためのリボゾーム結合部位又は内部リボゾーム侵入部位(IRES)をさらに含むことができる。
本発明のベクターは、好ましくは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列、例えばポリアデニル化部位又はターミネーター配列をさらに含む。かかる配列は、一般的に真核生物又はウイルスDNAもしくはcDNAの5'末端、及び時に3'非翻訳領域から、利用可能である。例えばプラスミドpAD3000を含む、一実施形態において、SV40ポリアデニル化配列はポリアデニル化シグナルを与える。
さらに、上記したように、形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質を与えるために、発現ベクターは、場合により、既に列挙した遺伝子に加えて1つまたはそれ以上の選択マーカー遺伝子を含む。ジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性などのマーカーは真核細胞培養での選択に適している。
上記の適切なDNA配列ならびに適切なプロモーターもしくは制御配列を含有するベクターを宿主細胞の形質転換に使用して、タンパク質を発現させることができる。本発明のベクターは細菌細胞中で複製することができるが、発現のために、これらを哺乳動物細胞(例えば、Vero細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞、COS細胞)中に導入することが好ましいことが非常に多い。
追加の発現要素
一般的には、インフルエンザウイルスタンパク質をコードするゲノムセグメントは、その発現(機能的ウイルスタンパク質への翻訳を含む)に必要な任意の追加の配列を含む。他の状況では、ウイルスタンパク質(例えばHA又はNAタンパク質)をコードするミニ遺伝子又は他の人工的構築物を使用することができる。この場合、異種コード配列の効率的な翻訳を助ける特定の開始シグナルを含むことがしばしば望ましい。これらのシグナルとして、例えばATG開始コドン及び隣接配列を挙げることができる。インサート全体の翻訳を確実にするために、開始コドンはウイルスタンパク質に対して正しいリーディングフレームで挿入される。外因性の転写要素及び開始コドンは様々な起源(天然及び合成)であることができる。発現の効率は、使用する細胞系に適したエンハンサーを含むことにより増強することができる。
所望であれば、追加の発現要素(シグナル配列、分泌又は局在化配列など)をコードするポリヌクレオチド配列は、ベクター中に通常は目的のポリヌクレオチド配列と共にインフレームで組み込まれ、ポリペプチド発現を所望の細胞コンパートメント、膜、もしくは細胞小器官、又は細胞培養培地に標的化することができる。かかる配列は当業者に公知であり、分泌リーダーペプチド、細胞小器官標的化配列(例えば、核局在化配列、ER保持シグナル、ミトコンドリア輸送配列)、膜局在化/アンカー配列(例えば、ストップトランスファー配列、GPIアンカー配列)などがある。
インフルエンザウイルスワクチン
歴史的に、インフルエンザウイルスワクチンは、関連する株の経験的予測に基づいて選択されたウイルス株を使用して、発育鶏卵で製造されている。さらに最近は、認可された弱毒化、温度感受性マスター株の関連で、選択されたヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ抗原を組み込んだ再集合ウイルスが製造されている。鶏卵中で複数回継代してウイルスを培養した後、インフルエンザウイルスを回収し、場合により、例えばホルムアルデヒド及び/又はβ-プロピオラクトンを使用して不活性化する。しかしこの方法によるインフルエンザワクチンの製造はいくつかの大きな欠点がある。鶏卵からの残存汚染物質は非常に抗原性、発熱原性であり、投与するとしばしばかなりの副作用を引き起こす。さらに重要なことは、典型的にはインフルエンザウイルスの製造及び不活性化のための時間を考慮するために、次のインフルエンザシーズンの何ヶ月も前に、製造のために指定される株を選択し、配分する必要がある。細胞培養で組換えワクチン及び再集合ワクチンを製造する試みは、ワクチン製造のために認可された株のいずれもが標準的細胞培養条件下で効率的に増殖することができないことによって制限されている。
本発明は、1つまたは多くの選択された抗原性ウイルス株に対応するワクチンを迅速に製造することを可能にする、ベクター系、並びに組換えウイルス及び再集合ウイルスを培養で製造する方法を提供する。特に、細胞培養でマルチプラスミド系からのウイルスの効率的な製造をもたらす条件及び株が提供される。場合により、所望であればウイルスを鶏卵中でさらに増幅することができる。
例えば、標準的細胞培養条件下(例えば37℃)でB型インフルエンザマスター株/Ann Arbor/1/66を増殖させることは可能ではなかった。本発明の方法では、それぞれがインフルエンザウイルスゲノムのセグメントを組み込んだ複数のプラスミドが、適当な細胞に導入され、35℃以下の温度で培養物中に維持される。典型的には、培養物は約32℃〜35℃、好ましくは約32℃〜約34℃、例えば約33℃で維持される。
典型的には、培養物は、細胞培養インキュベーターなどシステム中、制御された湿度及びCO2下、温度が35℃を超えないことを保証する温度調節器(例えばサーモスタット)を使用して一定温度で維持される。
再集合インフルエンザウイルスは、マスターインフルエンザウイルスのゲノムセグメントに対応するベクターのサブセットを、目的の株(例えば目的の抗原性変異体)由来の相補的セグメントと一緒に導入することにより、容易に得ることができる。典型的には、マスター株はワクチン投与に関する所望の性質に基づいて選択される。例えば、ワクチン製造のために、例えば弱毒化生ワクチンの製造のために、マスタードナーウイルス株は、弱毒化表現型、低温順応性、及び/又は温度感受性について選択することができる。この関連で、A型インフルエンザca A/Ann Arbor/6/60株;B型インフルエンザca B/Ann Arbor/1/66株;又はその所望の表現型性質、例えば弱毒化、低温順応性、及び/又は温度感受性株について選択された他の株、例えば実施例4に記載の人工的に操作したA型インフルエンザ株;又は表17で特定されるアミノ酸置換の1つまたはそれ以上を含む人工的に操作したB型インフルエンザ株は、マスタードナー株として好適に選択される。
ある実施形態において、インフルエンザマスターウイルス株の6つの内部遺伝子を組み込んだプラスミド(すなわち、PB1、PB2、PA、NP、NB、M1、BM2、NS1、及びNS2)は、抗原性が所望である株、例えば重大な局地的又は世界的なインフルエンザ感染を引き起こすことが予測される株、由来のヘマグルチニン及びノイラミニダーゼセグメントと一緒に、適切な宿主細胞にトランスフェクトされる。効率的な回収のために、適切な温度、例えば35℃以下、例えば約32℃〜35℃、例えば約32℃〜約34℃、又は約33℃での細胞培養で再集合ウイルスを複製した後、再集合ウイルスが回収される。場合により、回収されたウイルスは、ホルムアルデヒド又はβ-プロピオラクトンなどの変性剤を使用して不活性化することができる。
弱毒化、温度感受性、及び低温順応性インフルエンザウイルスワクチン
ある態様において、本発明は、好適なマスタードナーのウイルス株においてts表現型の基礎をなす突然変異の決定を基礎とする。MDV株ゲノムにおける単一ヌクレオチド変化の機能的重要性を判定するために、A/AA/6/60系統内の高度に関連する株に由来する再集合ウイルスを温度感受性について評価した。2つの親株の同種同系性が、ts表現型に対する単一ヌクレオチド変化の評価を可能にする。従って、MDV-Aのts表現型の遺伝子的根拠が、PB1、PB2、及びNP内の特定のアミノ酸残基に対してヌクレオチドレベルでマッピングされる。
ca A/AA/6/60のts表現型の遺伝子的根拠をマッピングする以前の試みは、A/AA/6/60と無関係のwt株との単一の及び複数の遺伝子再集合を作製するために、古典的な共感染/再集合技術を使用した。これらの研究は、PB2とPB1の両方がts表現型に寄与することを示唆した(Kendal et al. (1978) Biochemical characteristics of recombinant viruses derived at sub-optimal temperatures: evidence that ts lesions are present in RNA segments 1 and 3, and that RNA 1 codes for the virion transcriptase enzyme, p. 734-743. In B. W. J. Mahy, and R.D. Barry (ed.) Negative Strand Viruses, Academic Press; Kendal et al. (1977) Comparative studies of wild-type and cold mutant (temperature sensitive) influenza viruses: genealogy of the matrix (M) and the non-structural (NS) proteins in recombinant cold-adapted H3N2 viruses J Gen Virol 37:145-159; Kendal et al. (1979) Comparative studies of wild-type and cold-mutant (temperature sensitive) influenza viruses: independent segregation of temperature-sensitivity of virus replication from temperature-sensitivity of virion transcriptase activity during recombination of mutant A/Ann Arbor/6/60 with wild-type H3N2 strains J Gen Virol 44:443-4560; Snyder et al. (1988) Four viral genes independently contribute to attenuation of live influenza A/Ann Arbor/6/60 (H2N2) cold-adapted reassortant virus vaccines J Virol 62:488-95)。しかし、これらの研究の解釈は、2つの分岐するA型インフルエンザ株からの遺伝子セグメントを混合することにより引き起こされるコンステレーション効果(constellation effect)によって複雑化した。相互作用の低下は、A/AA/6/60と、A/AA/6/60バックグラウンドからのts表現型の発現に特異的に関与するもの以外のw遺伝子セグメントとの間の変化により起きた可能性があった。コンステレーション効果が、M遺伝子セグメントとatt表現型との関連性の解釈も複雑にすることも示された(Subbarao et al. (1992) The attenuation phenotype conferred by the M gene of the influenza A/Ann Arbor/6/60 cold-adapted virus (H2N2) on the A/Korea/82 (H3N2) reassortant virus results from a gene constellation effect Virus Res 25:37-50)。
本発明において、位置PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34でアミノ酸置換を生じる突然変異は、MDV-Aウイルス株に温度感受性表現型を付与する上で機能的に重要であるとして同定される。当業者により理解されるように、位置PB11195、PB11766、PB12005、PB2821、及びNP146におけるヌクレオチドの突然変異は、それぞれPB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34におけるアミノ酸置換を表す。すなわち、これらの位置でアミノ酸置換を生じる任意のヌクレオチド置換は本発明の特徴である。例示的な突然変異であるPB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)は単独で、又はより好ましくは組合せで、温度感受性表現型を生じる。これらの突然変異の野生型への同時転換はts表現型を排除するが、野生型バックグラウンドへのこれらの突然変異の導入はts表現型を有するウイルスを生じる。ウイルスの継代中のこれらの表現型の安定性に一致して、得られるウイルスの温度感受性プロフィールを野生型のものへ単独で復帰させることができる単一変化はない。むしろ、これらの変化は、互いに協力してts表現型を十分に発現するようである。この知見は、弱毒化生インフルエンザワクチン製造用のマスタードナーウイルスに適した温度感受性A型インフルエンザウイルスの追加の株の操作を可能にする。
同様に、B型マスタードナーウイルス株における個々のアミノ酸の置換は、表17に示すようにts表現型に相関する。従って、本明細書に記載の方法は、1つまたはそれ以上の特定の突然変異をB型インフルエンザゲノムに導入することにより、温度感受性、及び場合により弱毒化及び/又は低温順応性表現型を有する新規B型インフルエンザ株を製造することに適応される。例えば、PB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される位置でアミノ酸置換を生じる1つまたはそれ以上の突然変異が、B型インフルエンザ株のゲノムに導入されて、温度感受性B型インフルエンザウイルスが製造される。例示的なアミノ酸置換には以下が含まれる:PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)。
本発明の突然変異を組み込んだインフルエンザウイルスは、これらが製造される方法に関係なく本発明の特徴である。すなわち本発明は、本発明の突然変異を含むインフルエンザ株を包含し、例えば、PB1391、PB1581、PB1661、PB2265、及びNP34から選択される1つまたはそれ以上の位置で野生型と比較してアミノ酸置換を有する任意のA型インフルエンザウイルス、又はPB2630、PA431、PA497、NP55、NP114、NP410、NP509、M1159、及びM1183から選択される1つまたはそれ以上の位置で野生型と比較してアミノ酸置換を有する任意のB型インフルエンザウイルスを包含するが、ただしca A/Ann Arbor/6/60株とB/Ann Arbor/1/66株は本発明の特徴とはみなされない。特定の好適な実施形態において、それぞれ、A型インフルエンザウイルスは、PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、PB1661(A661T)、PB2265(N265S)、及びNP34(D34G)から選択される複数の突然変異(例えば、2、又は3、又は4、又は5、又はそれ以上の突然変異)を含み、B型インフルエンザウイルスは、PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)から選択される複数の突然変異を含む。例えば、ワクチン製造に関係する所望の表現型を有するウイルスを提供することに加えて、例えば1、又は2、又は3、又は4、又は5つの選択された突然変異のサブセットを含むウイルスは、該ウイルスの表現型への追加の突然変異の寄与を解明するのに有用である。特定の実施形態において、インフルエンザウイルスは少なくとも1つの追加の非野生型ヌクレオチド(例えば、場合により追加のアミノ酸置換を与える)を含み、これは場合により所望の表現型を改良するか、又は更なる所望の表現型特性を与える。
増強されたウイルス複製
本発明はまた、発育鶏卵及び/又は宿主細胞におけるインフルエンザウイルスの複製能力を上昇させるために、HA及びNA中に少なくとも1つのアミノ酸残基置換を導入する方法を提供する。本発明はさらに、HA及び/又はNA非置換インフルエンザウイルスと比較して、発育鶏卵及び/又は宿主細胞中での複製能力が増強したインフルエンザウイルス変異体(以後「複製増強変異体」と呼ぶ)を提供する。特に、本発明の方法が宿主細胞におけるインフルエンザウイルスの複製を増強するのに使用できること、及び複製増強変異体は鶏卵及び/又は宿主細胞で複製が増強されることが意図される。インフルエンザウイルスの複製に適した宿主細胞には、例えばVero細胞、Per.C6細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞、及びCOS細胞(293T細胞、COS7細胞を含む)がある。
ある実施形態において、本発明の方法は、HA及び/又はNAに少なくとも1つのアミノ酸置換を導入し、これはインフルエンザウイルスが卵及び/又は宿主細胞中で複製する能力を、非改変インフルエンザウイルスと比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%増強する。特に、HAとNAの両方にアミノ酸置換が行われ得ることが意図される。好ましくは、本発明の方法は、非置換ウイルスと比較して、置換されたインフルエンザウイルスの抗原性を大きくは変化させない。具体的な実施形態において、本発明の方法は、非置換ウイルスと比較して、置換されたインフルエンザウイルスの抗原性を10%未満、又は20%未満、又は30%未満、又は40%未満、又は50%未満、又は60%未満、又は70%未満、又は80%未満、又は90%未満、又は100%未満低下させる。ウイルス抗原性を測定する方法は当該分野で公知である(「実施例11」も参照)。
ある実施形態において、本発明の方法はさらに、弱毒化インフルエンザウイルス、低温順応性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、又はこれらの所望の性質の任意の組合せを有するウイルスを含む。好ましくは、本発明の方法に含まれるウイルスには、特に限定されないが、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス株、A型インフルエンザ/Ann Arbor/6/60ウイルス株がある。別の実施形態において、本発明の方法は、ワクチン製造について好適な性質について選択されたウイルス株の6つの内部遺伝子を含むベクターを、所望の操作をしたHA及びNA表面抗原をコードするゲノムセグメントと組合せて導入して、発育鶏卵及び/又は宿主細胞中で複製する能力が増強したインフルエンザウイルスを製造する(前述、及び「実施例11」も参照)。別の実施形態において、本発明の方法はさらに、非弱毒化インフルエンザウイルスを含む。
ある実施形態において、本発明の方法は、HAの受容体結合活性をモジュレートする少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。HAの受容体結合活性は、特に限定されないが、細胞表面糖タンパク質又は糖脂質上に存在するシアル酸残基(例えば、2,6-結合シアリル−ガラクトシル部分[Siaα(2,6)Gal]、及び2,3-結合シアリル−ガラクトシル部分[Siaα(2,3)Gal])へのHAの結合を含む。HA結合をアッセイする1つの方法を「実施例11」(下記)に示し、他の方法は当該分野で周知である。別の実施形態において、本発明の方法は、[Siaα(2,6)Gal]及び/又は[Siaα(2,3)Gal]部分に対するHAの受容体結合特異性をモジュレートするアミノ酸置換を導入する。好ましくはこの方法は、[Siaα(2,3)Gal]部分へのHAの結合を増強する。
ある実施形態において、本発明の方法は少なくとも1つのアミノ酸置換を導入し、これはHAの受容体結合活性を増強する。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%上昇される。
別の実施形態において、本発明の方法は少なくとも1つのアミノ酸置換を導入し、これはHAの受容体結合活性を低下する。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%低下する。
好適な実施形態において、この方法は、HA中の183位、186位、196位、及び/又は226位に少なくとも1つのアミノ酸置換を導入する。ある実施形態において、アミノ酸は、183位と226位、又は186位と226位、又は183位と196位、又は186位と196位、又は196位と226位、又は183位と、196位と、226位で置換される。具体的な実施形態において、アミノ酸が183位、186位、196位、又は226位のいずれかで置換される場合、これらの位置で以下のアミノ酸:183-ロイシン、186-バリン、196-スレオニン、及び226-アラニンを生じるように置換される。別の具体的な実施形態において、これらの位置における変化は、上記変化について保存的アミノ酸変化が作製されるように行うことができる。別の具体的な実施形態において、置換は、183位(例えばH183L)、186位(例えばG186V)、196位(例えばA196T)、及び226位(例えばV226A)よりなる群から選択される1つまたはそれ以上のHA残基の位置で行われる。
ある実施形態において、本発明の方法は、NAのノイラミニダーゼ活性をモジュレートする少なくとも1つのアミノ酸置換を導入する。NAのノイラミニダーゼ活性には、特に限定されないが、α−ケトシド結合の(alpha-ketosidically linked)N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を含有する基質の加水分解などがある。ノイラミニダーゼ活性を測定する方法は、当該分野で周知である(前述、及び「実施例11」も参照)。
ある実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのアミノ酸置換を導入し、これはNAのノイラミニダーゼ活性を増強する。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%上昇する。
別の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのアミノ酸置換を導入し、これはNAのノイラミニダーゼ活性を低下する。好ましくは、ノイラミニダーゼ活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%低下する。
好適な実施形態において、本発明の方法は、NA中の119位及び/又は136位に少なくとも1つのアミノ酸置換を導入する。好ましくは、アミノ酸は、119位がグルタミン酸で136位がグルタミンになるように置換される。
いくつかの場合で、HA及び/又はNAタンパク質はすでに上記位置の1つまたはそれ以上に好適なアミノ酸残基を有することを当業者は理解するであろう。この場合、置換は残りの不一致の位置でのみ導入される。
既述の通り、特に、HAの183位、186位、196位、及び/又は226位、並びにNAの119位及び/又は136位で前記アミノ酸置換について保存的アミノ酸置換が行われることが意図される。
「保存的アミノ酸置換」が機能的に同等のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を指すことは当該分野で周知である。保存的アミノ酸変化は、生じるペプチドのアミノ酸配列にサイレント変化をもたらす。例えば、類似した極性のアミノ酸の1つまたはそれ以上は機能的同等物として働き、ペプチドのアミノ酸配列内にサイレント変化をもたらす。残基が異なる群に属する場合であっても、電荷が中性で、より小さい残基で残基を置換する置換も「保存的置換」とみなされる(例えば、フェニルアラニンの、より小さいイソロイシンによる置換)。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野で規定されている。保存的アミノ酸置換のファミリーには、特に限定されないが、非極性(例えば、Trp, Phe, Met, Leu, Ile, Val, Ala, Pro)、非荷電極性(例えば、Gly, Ser, Thr, Asn, Gln, Tyr, Cys)、酸性/陰性荷電(例えばAsp, Glu)、塩基性/陽性荷電(例えばArg, Lys, His)、ベータ分岐(例えばThr, Val, Ile)、鎖の配向に影響を与える残基(例えばGly, Pro)、及び芳香族(例えばTrp, Tyr, Phe, His)などがある。用語「保存的アミノ酸置換」はまた、アミノ酸類似体又は変異体の使用を指す。表現型としてサイレントなアミノ酸置換を作製する方法についての指針は、Bowie et al.,「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」 (1990, Science 247:1306-10)に規定されている。
ある実施形態において、本発明は、本明細書において「複製増強インフルエンザ変異体」と呼ぶ改変型インフルエンザウイルスを提供し、これはHA及び/又はNAに少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、これが非改変型インフルエンザウイルスと比較して発育鶏卵及び/又は宿主細胞におけるこれらの複製を増強する。好ましくは、複製増強インフルエンザ変異体の卵及び/又は宿主細胞中で複製する能力は、非改変型インフルエンザウイルスと比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%増強される。
特定の実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体はさらに、弱毒化インフルエンザウイルス、低温順応性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、又はこれらの所望の性質の任意の組合せを有するウイルスを含む。好ましくは、複製増強インフルエンザ変異体に含まれるウイルスには、特に限定されないが、B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66ウイルス株、A型インフルエンザ/Ann Arbor/6/60ウイルス株などがある。特に、複製増強インフルエンザ変異体が、ワクチン製造に関する好適な性質について選択されたウイルス株の6つの内部遺伝子を含むベクターを、所望の置換を有するHA及びNA表面抗原をコードするゲノムセグメントと組み合わせて導入することにより製造されることが意図される(前述、及び「実施例11」参照)。
ある実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、HAの受容体結合活性をモジュレートする少なくとも1つのアミノ酸置換をHA中に含む(前述参照)。好ましくは、この方法は、[Siaα(2,3)Gal]部分へのHAの結合を増強する。
具体的な実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、HAの受容体結合活性を増強する少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%上昇する。特に、卵増強インフルエンザ変異体は、非置換型インフルエンザウイルスと比較して、ウイルス抗原性を大きくは変化しないことが意図される。具体的な実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、非置換型ウイルスと比較して、抗原性が10%未満、又は20%未満、又は30%未満、又は40%未満、又は50%未満、又は60%未満、又は70%未満、又は80%未満、又は90%未満、又は100%未満低下している。ウイルス抗原性を測定する方法は当該分野で周知である(前述、及び「実施例11」も参照)。
別の実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、HAの受容体結合活性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%低下される。
好適な実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、HA中の183位、186位、196位、及び/又は226位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。ある実施形態において、アミノ酸は、183位と226位、又は186位と226位、又は183位と196位、又は186位と196位、又は196位と226位、又は183位と、196位と、226位で置換される。具体的な実施形態において、アミノ酸が183位、186位、196位、又は226位のいずれかで置換される場合、これらの位置が以下のアミノ酸:183-ロイシン、186-バリン、196-スレオニン、及び226-アラニンを生じるように置換される。別の具体的な実施形態において、これらの位置における変化は、上記変化について保存的アミノ酸変化が作製されるように行われる。
ある実施形態において、再集合インフルエンザウイルスの複製を少なくとも10%上昇させる方法であって、a) 再集合インフルエンザウイルスのアミノ酸配列と、発育卵中で高力価まで複製する異なるインフルエンザウイルスのアミノ酸配列とを比較する工程;b) 再集合ウイルスの配列の1つまたはそれ以上のアミノ酸を改変させて、その異なるインフルエンザウイルスの配列に一致させることにより、1つまたはそれ以上の改変型再集合ウイルスを製造する工程、及びc) 卵中で該1つまたはそれ以上の改変型再集合ウイルスを増殖させる工程、を含んでなる方法が提供される。これらの方法により製造されるインフルエンザウイルスも本発明の実施形態である。
別の具体的な実施形態において、(a) 183位にロイシン、及び226位にアラニンを含むHAタンパク質;(b) 186位にバリン、及び226位にイソロイシンを含むHAタンパク質;(c) 119位にグルタミン酸、及び136位にグルタミンを含むNAタンパク質;(d) 186位にバリン、及び226位にイソロイシンを含むHAタンパク質、並びに119位にグルタミン酸、及び位にグルタミンを含むNAタンパク質;(e) 186位にバリン、226位にイソロイシン、及び196位にスレオニンを含むHAタンパク質;(f) 196位にスレオニンを含むHAタンパク質;並びに(g) HAタンパク質の186位と196位の置換、よりなる群から選択されるメンバーを含む複製増強再集合インフルエンザウイルスが提供される。本発明のインフルエンザウイルスを含む、免疫原性組成物及びワクチンも提供される。
別の具体的な実施形態において、インフルエンザウイルスの複製を少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも50%、又は少なくとも80%上昇させる方法であって、a) 置換がなされる場合には、183位にロイシン残基、186位にバリン、196位にスレオニン、及び226位にアラニンが生じるように、必要に応じて以下のHA位置:183、186、196、又は226の1以上でアミノ酸を置換する工程、及びb) HA置換を含むインフルエンザウイルスを卵中で増殖させる工程、を含む方法が提供される。本発明のインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物及びワクチンも提供される。
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の位置:183、186、196、又は226の1つまたはそれ以上に置換を含み、発育卵中で少なくとも8.0 log10 PFU/ml、又は少なくとも8.5 log10 PFU/ml、又は少なくとも9.0 log10 PFU/mlの力価まで増殖する、再集合インフルエンザウイルスを含む。本発明のインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物及びワクチンも提供される。
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の位置:183、186、196、又は226の1つまたはそれ以上に置換を含み、置換されていない同じ再集合ウイルスより少なくとも50%高い、又は少なくとも80%高い、又は少なくとも100%高い力価まで増殖する、再集合インフルエンザウイルスを含む。本発明のインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物及びワクチンも提供される。
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の位置:183、186、196、又は226の1つまたはそれ以上に置換を含む再集合インフルエンザウイルスを含み、その際、少なくとも1つの置換は、196位に非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばセリン)、又は186位に非極性側鎖を有する非アラニンアミノ酸(例えばバリン)を生じる。別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の位置:183、186、196、又は226の1つまたはそれ以上に置換を含む再集合インフルエンザウイルスを含み、その際、1つの置換は、196位に非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばセリン)、及び186位に非極性側鎖を有する非アラニンアミノ酸(例えばバリン)を生じる。本発明のインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物及びワクチンも提供される。
ある実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、NAのノイラミニダーゼ活性をモジュレートする少なくとも1つのアミノ酸置換を含む(前述参照)。
ある実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、NAのノイラミニダーゼ活性を増強する少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。好ましくは、受容体結合活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%上昇する。
別の実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、NAのノイラミニダーゼ活性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。好ましくは、ノイラミニダーゼ活性は、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%低下する。
好適な実施形態において、複製増強インフルエンザ変異体は、NAの119位及び/又は136位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。好ましくは、アミノ酸は、119位がグルタミン酸であり、136位がグルタミンであるように置換される。
細胞培養
典型的には、ウイルスの増殖は、宿主細胞が通常培養される培地組成物中で行われる。インフルエンザウイルスの複製のための適当な宿主細胞には、例えばVero細胞、Per.C6細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞、及びCOS細胞(293T細胞、COS7細胞を含む)などがある。複製効率を改善するために、通常、上記細胞株の2つを含む共培養物(例えば、MDCK細胞と293TもしくはCOS細胞)が例えば1:1の比で使用される。典型的には、細胞は、標準的な市販の培養培地、例えば血清(例えば10%ウシ胎児血清)を補充したダルベッコ改変イーグル培地、又は血清無含培地中、中性緩衝化pH(例えば、PH7.0〜7.2)を維持するのに適したCO2濃度及び制御された湿度下で培養される。場合により、培地は、細菌増殖を防ぐための抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)、及び/又は追加の栄養物質(例えば、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸など)、好適な増殖特性を促進するための追加の補助物質(例えばトリプシン、β−メルカプトエタノール)などを含有する。
培養中に哺乳動物細胞を維持する方法は広範に報告されており、当業者に公知である。一般的プロトコールは、例えばFreshney (1983) Culture of Animal Cells: Manual of Basic Technique, Alan R. Liss, New York; Paul (1975) Cell and Tissue Culture, 第5版, Livingston, Edinburgh; Adams (1980) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Cell Culture for Biochemists, Work and Burdon (編) Elsevier, Amsterdamに記載されている。in vitroでのインフルエンザウイルスの製造に特に関連する組織培養法のさらなる詳細は、例えばその全体を本明細書に組み入れるMerten et al. (1996) Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation. Cohen and Shafferman (eds) Novel Strategies in Design and Production of Vaccinesに記載されている。さらに、本発明に適合するそのような方法の変法は、慣用の実験により容易に決定される。
インフルエンザウイルス製造用の細胞は、血清含有培地又は血清無含培地で培養することができる。いくつかの場合、例えば精製ウイルスの調製のために、宿主細胞を血清無含条件で増殖させることが望ましい。細胞は小規模(例えば25ml未満の培地)で、培養試験管もしくはフラスコ又は大きなフラスコで攪拌しながら、ローテーターボトルで、又はフラスコ、ボトル、もしくはリアクター培養中のマイクロキャリアービーズ(例えば、DEAE−Dextranマイクロキャリアービーズ、Dormacell、Pfeifer & Langenなど; Superbead、Flow Laboratories; スチレンコポリマー−トリ−メチルアミンビーズ、例えばHillex、SoloHill、Ann Arboなど)で培養することができる。マイクロキャリアービーズは、細胞培養物の単位容量当たりの接着細胞増殖のために大きな表面積を与える小球(直径100〜200ミクロンの範囲)である。例えば、1リットルの培地は、2000万個を超えるマイクロキャリアービーズを含むことができ、これは8000平方cm以上の増殖表面を与える。ウイルスの商業的製造(例えばワクチン製造)のために、細胞をバイオリアクター又は発酵槽で培養することが望ましい場合が多い。バイオリアクターは1リットルから100リットルを超える容量で入手可能であり、例えばCyto3バイオリアクター(Osmonics, Minnetonka, MN); NBSバイオリアクター (New Brunswick Scientific, Edison, N.J.); B. Braun Biotech International (B. Braun Biotech, Melsungen, Germany)製の実験室スケール及び商業スケールのバイオリアクターがある。
本発明に関連して、培養容量には無関係に、本明細書に記載のマルチプラスミド系を使用する組換え及び/又は再集合インフルエンザウイルスの効率的回収を確実にするために、培養物を35℃以下の温度で維持することが重要である。例えば、細胞は約32℃〜35℃の温度、典型的には約32℃〜34℃の温度、通常約33℃で培養される。
典型的には、ウイルス複製期間中に温度が35℃を超えないことを保証するために、調節装置、例えばサーモスタット、又は細胞培養系の温度を感知し維持するための他の装置が使用される。
宿主細胞へのベクターの導入
真核細胞に異種核酸を導入するための当該分野で周知の方法(例えばリン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、及びポリアミントランスフェクション試薬を使用するトランスフェクション)に従って、インフルエンザゲノムセグメントを含むベクターが宿主細胞に導入(例えばトランスフェクト)される。例えば、ベクター(例えばプラスミド)は、ポリアミントランスフェクション試薬TransIT-LT1(Mitrus)を製造業者の説明書に従って用いて、宿主細胞(例えばCOS細胞、293T細胞、又はCOS細胞又は293T細胞及びMDCK細胞との組合せ)にトランスフェクトすることができる。160μl培地、好ましくは血清無含培地、に希釈した約2μlのTransIT-LT1により、宿主細胞集団に約1μgの各ベクターが総量200μlで導入される。このDNA:トランスフェクション試薬混合物は室温で45分間インキュベートされた後、さらに800μlの培地を加える。トランスフェクション混合物を宿主細胞に加え、該細胞を上記したように培養する。組換え又は再集合ウイルスを細胞培養で製造するために、8つの各ゲノムセグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、NS、HA、及びNA)を組み込んだベクターを約20μlのTransIT-LT1と混合し、宿主細胞にトランスフェクトする。場合により、トランスフェクション前に血清含有培地を血清無含培地(例えばOpti-MEM I)で取換え、4〜6時間インキュベートする。
あるいは、インフルエンザゲノムセグメントを組み込んだベクターを宿主細胞に導入するためにエレクトロポレーションを使用することができる。例えば、A型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルスを組み込んだプラスミドベクターは、エレクトロポレーションを以下の手順に従って使用してVero細胞中に導入されることが好ましい。簡単に説明すると、例えば10%ウシ胎児血清(FBS)を補充した改変イーグル培地(MEM)中で増殖させた5×106個のVero細胞を、0.4mlのOptiMEMに再懸濁し、エレクトロポレーションキュベットに入れる。最大25μl容量中の20μgのDNAをキュベット中の細胞に加え、次にこれを軽くたたいて穏やかに混合する。製造業者の説明書(例えば、Capacitance Extender Plusを接続したBioRad Gene Pulser II)に従って、300ボルト、950マイクロファラド、時定数28〜33msecでエレクトロポレーションを行う。細胞を約1〜2分間軽くたたいて再度混合し、エレクトロポレーションの約1〜2分後、10%FBSを含む0.7mlのMEMをキュベットに直接加える。次に細胞を2mlのMEM、10% FBS、又は血清無含のOPTI-MEMを含有する標準的な6ウェル組織培養皿に移す。キュベットを洗浄して残存する細胞を回収し、洗浄懸濁液を2つのウェルに分ける。最終容量は約3.5mlである。次に、ウイルス増殖が可能な条件下、例えば低温順応性株については約33℃で、細胞をインキュベートする。
ウイルスの回収
ウイルスは、典型的には、感染(トランスフェクト)した細胞が増殖した培養培地から回収される。典型的には、インフルエンザウイルスの濃縮前に粗培地は浄化される。一般的方法には、ろ過、限外ろ過、硫酸バリウムへの吸着及び溶出、並びに遠心分離がある。例えば、感染培養物からの粗培地は、まず細胞残屑や他の大きな粒状物質を除去するのに充分な時間(例えば10〜30分)で遠心分離(例えば1000〜2000xg)することにより浄化することができる。あるいは、培地を0.8μmの酢酸セルロースフィルターでろ過して、無傷の細胞や大きな粒状物質を除去する。場合により、浄化した培地上清は、次に、例えば15,000xgで約3〜5時間遠心分離してインフルエンザウイルスをペレット化する。適切な緩衝液、例えばSTE(0.01M Tris-HCl;0.15M NaCl;0.0001M EDTA)又はpH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でウイルスペレットを再懸濁した後、ショ糖(60%〜12%)又は酒石酸カリウム(50%〜10%)による密度勾配遠心分離によりウイルスを濃縮する。連続勾配又は段階的勾配(例えば、12%〜60%のショ糖勾配を4段階の12%で)が適している。勾配は、ウイルスを回収のための視覚可能なバンドまで濃縮するのに十分な速度と時間で遠心分離される。あるいは、大部分の大規模商業的用途のために、連続的な様式で稼動するゾーン遠心分離ローターを使用して、密度勾配からウイルスが溶出される。
当業者を組織培養物からのインフルエンザウイルスの調製に導くのに十分なさらなる詳細は、例えばFurminger. Vaccine Production, Nicholson et al. (eds) Textbook of Influenza pp. 324-332; Merten et al. (1996) Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation, Cohen & Shafferman (eds) Novel Strategies in Design and Production of Vaccines pp. 141-151、及び米国特許第5,690,937号に記載されている。所望であれば、回収されたウイルスは、安定化剤としてショ糖−ホスフェート−グルタメート(SPG)の存在下、-80℃で保存することができる。
ワクチンの予防的投与のための方法及び組成物
本発明の組換え及び再集合ウイルスは、インフルエンザウイルスの1つまたはそれ以上の株に特異的な免疫応答を刺激するために、適切な担体又は賦形剤中で予防的に投与することができる。典型的には、担体又は賦形剤は、薬剤学的に許容される担体もしくは賦形剤、例えば無菌水、食塩水、緩衝化生理食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセロール水溶液、エタノール、非感染鶏卵からの尿膜腔液(すなわち、正常な尿膜腔液「NAF」)、又はこれらの組合せである。無菌性、pH、等張性、及び安定性を確保するかかる溶液の調製は、当該分野で確立されたプロトコールに従う。一般に、担体又は賦形剤は、アレルギー及び他の好ましくない作用を最小化し、特定の投与経路(例えば、皮下、筋肉内、鼻内など)に適合するように選択される。
一般に、本発明のインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスの1つまたはそれ以上の株に特異的な免疫応答を刺激するのに十分な量で投与される。好ましくは、インフルエンザウイルスの投与は防御免疫応答を誘発する。1つまたはそれ以上のインフルエンザ株に対する防御免疫応答を誘発するための用量及び方法は当業者に公知である。例えば、不活性化インフルエンザウイルスは約1〜1000 HID50(ヒト感染用量)、すなわち1回の投与当たり約105〜108pfu(プラーク形成単位)の範囲で提供される。あるいは、約10〜50μg、例えば約15μgのHAがアジュバント無しで投与され、より少量がアジュバントとともに投与される。典型的には、用量はこの範囲内で、例えば年齢、身体症状、体重、性別、食事、投与時間、及び他の臨床因子に基づいて調整される。予防ワクチン製剤は、例えば針とシリンジ又は針の無い注射器具を用いた皮下もしくは筋肉内注射により全身投与される。あるいは、ワクチン製剤は、液滴、大粒子エアロゾル(約10ミクロンより大きい)により鼻内に、又は上気道への噴霧により投与される。上記送達経路はいずれも防御全身性免疫応答をもたらすが、鼻内投与はインフルエンザウイルスの侵入部位で粘膜免疫を誘発するという追加の利点を付与する。鼻内投与については、弱毒化生ウイルスワクチン、例えば弱毒化、低温順応性、及び/又は温度感受性組換えもしくは再集合インフルエンザウイルスが好適であることが多い。一回の投与による防御免疫応答の刺激が好ましいが、同じかまたは異なる経路により追加用量を投与して、所望の予防効果を達成することができる。
あるいは、インフルエンザウイルスで樹状細胞をex vivo又はin vivoで標的化することにより、免疫応答を刺激することができる。例えば増殖性樹状細胞を、樹状細胞によるインフルエンザ抗原の捕捉を可能にするのに十分な量及び十分な期間で、ウイルスに暴露する。次に細胞を被験体に移して、標準的な静脈内移植法によりワクチン接種する。
場合により、インフルエンザウイルスの予防的投与用の製剤又はそのサブユニットは、インフルエンザ抗原に対する免疫応答を増強するための1つまたはそれ以上のアジュバントをさらに含有する。適当なアジュバントには以下がある:サポニン、ミネラルゲル(例えば水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油、又は炭化水素エマルジョン)、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、及び合成アジュバントであるQS-21とMF59など。
所望であれば、1つまたはそれ以上の免疫刺激分子の投与と組み合わせてインフルエンザウイルスの予防的ワクチン投与を行うことができる。免疫刺激分子には、免疫刺激活性、免疫増強活性、及び炎症促進活性を有する種々のサイトカイン、リンホカイン、及びケモカイン、例えばインターロイキン類(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)−コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子(例えばマクロファージ炎症因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2など)がある。免疫刺激分子はインフルエンザウイルスと同じ製剤中で投与できるか、又は別に投与することができる。免疫刺激作用を生成するために、タンパク質又はタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを投与することができる。
別の実施形態において、インフルエンザゲノムセグメントを含む本発明のベクターを使用して、異種核酸を宿主生物又は宿主細胞(例えば哺乳動物細胞、例えばヒト被験体由来の細胞)に、上記の適切な製薬担体又は賦形剤と組合せて導入することができる。典型的には、異種核酸は、遺伝子又は遺伝子セグメントの非必須領域(例えばセグメント7のM遺伝子)中に挿入される。異種ポリヌクレオチド配列は、ポリペプチド又はペプチド、又はRNA(例えばアンチセンスRNA又はリボザイム)をコードすることができる。次に異種核酸を組み込んだ組換えウイルスを製造することにより、異種核酸は宿主又は宿主細胞に導入され、ウイルスが上記したように投与される。
あるいは、異種核酸を含む本発明のベクターは、インフルエンザウイルスで感染された細胞に該ベクターを共トランスフェクトすることにより導入され、宿主細胞中で発現され得る。場合により、細胞は次に、典型的にはこれらが得られた部位で、被験体に戻すか又は送達される。いくつかの用途において、細胞は、確立された細胞移入又は移植法を使用して、目的の組織、器官、又は系の部位(上記)に移植される。例えば造血系の幹細胞(例えば骨髄、臍帯血、又は末梢血由来の造血幹細胞を、標準的な送達又は輸血技術を使用して被験体に送達することができる。
あるいは、異種核酸を含むウイルスはin vivoで被験体の細胞に送達することができる。典型的には、かかる方法には、標的細胞集団(例えば、血球、皮膚細胞、肝細胞、神経(脳を含む)細胞、腎細胞、子宮細胞、筋肉細胞、腸細胞、子宮頚部細胞、膣細胞、前立腺細胞など、ならびに種々の細胞、組織及び/又は器官由来の腫瘍細胞)への、ベクター粒子の投与が含まれる。投与は全身性(例えばウイルス粒子の静脈内投与)であるか、又は注射(例えば、針又はシリンジを使用)、針を使用しないワクチン送達、局所投与、もしくは組織、器官、もしくは皮膚部位へのプッシングを含む種々の方法により、目的の部位に直接ウイルス粒子を送達することにより行うことができる。例えばウイルスベクター粒子は、吸入、経口、静脈内、皮下(subcutaneously)、皮下(subdermal)、皮内、筋肉内、腹腔内、くも膜下、膣内、もしくは直腸投与により、又は例えば手術中にウイルス粒子を体腔もしくは体の他の部位に配置することにより送達することができる。
上記方法は、治療上または予防上効果的なポリペプチド(又はペプチド)又はRNA(例えば、アンチセンスRNA又はリボザイム)をコードする異種ポリヌクレオチドを含む本発明のベクターを、標的細胞集団にin vitro、ex vivo、又はin vivoで導入することにより、疾患または障害を治療的に及び/又は予防的に治療するのに有用である。典型的には、ポリペプチド(又はペプチド)をコードする目的のポリヌクレオチド、又はRNAは、「発現ベクター」及び「追加の発現要素」の節で上記した適切な調節配列に機能できる形で連結される。場合により、2つ以上の異種コード配列が単一のベクター又はウイルスに組み込まれる。例えば、治療または予防活性のあるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はRNAに加えて、ベクターは、追加の治療または予防ポリペプチド、例えば抗原、共刺激分子、サイトカイン、抗体など、及び/又はマーカーなどをさらに含むことができる。
本発明の方法及びベクターは、遺伝性疾患及び後天的疾患を含む広範な疾患を治療的または予防的に治療するために、例えばウイルス、細菌などによる感染性疾患のためのワクチンとして、使用することができる。
キット
本発明のベクター及びベクター系の使用を容易にするために、任意のベクター(例えば、コンセンサスインフルエンザウイルスプラスミド、変異体インフルエンザポリペプチドプラスミド、インフルエンザポリペプチドライブラリープラスミドなど)、及び実験目的又は治療目的でインフルエンザウイルスのパッケージングや感染に有用な追加の成分(例えば、緩衝剤、細胞、培養培地)をキットの形でパッケージングすることができる。典型的には、キットは、上記成分に加えて、追加の物質(例えば本発明の方法を実施するための説明書、パッケージング材料、及び容器などを含むことができる)を含む。
ウイルス核酸及びタンパク質の操作
本発明において、インフルエンザウイルス核酸及び/又はタンパク質は、周知の分子生物学的技術に従って操作される。増幅、クローニング、突然変異誘発、形質転換などを含む非常に多くのそのような方法についての詳細なプロトコールは、Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (supplemented through 2000) John Wiley & Sons, New York (「Ausubel」); Sambrook et al. Molecular Cloning-A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989 (「Sambrook」)、及びBerger and Kimmel Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (「Berger」)に記載されている。
上記文献に加えて、例えば本発明のcDNAプローブを増幅するのに有用な、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ−レプリカーゼ増幅、及び他のポリメラーゼ介在技術(例えばNASBA)などのin vitro増幅技術のプロトコールは、Mullis et al. (1987) 米国特許第4,683,202号; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990) (「Innis」); Arnheim and Levinson (1990) C&EN 36; The Journal Of NIH Research (1991) 3:81; Kwoh et al. (1989) Proc Natl Acad Sci USA 86, 1173; Guatelli et al. (1990) Proc Natl Acad Sci USA 87:1874; Lomell et al. (1989) J Clin Chem 35:1826; Landegren et al. (1988) Science 241:1077; Van Brunt (1990) Biotechnology 8:291; Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560; Barringer et al. (1990) Gene 89:117, and Sooknanan and Malek (1995) Biotechnology 13:563で見出すことができる。本発明において核酸をクローニングするのに有用なさらなる方法には、Wallace et al. 米国特許第5,426,039号などがある。大きな核酸をPCRにより増幅するための改良法は、Cheng et al. (1994) Nature 369:684及びその中の文献に要約されている。
本発明の特定のポリヌクレオチド(例えばオリゴヌクレオチド)は、モノヌクレオチド−及び/又はトリヌクレオチド−ベースのホスホラミダイトカップリング化学を含む、種々の固相法を使用して合成することができる。例えば、核酸配列は、伸長ポリヌクレオチド鎖に活性化モノマー及び/又はトリマーを連続的に付加することにより合成することができる。例えばCaruthers, M.H. et al. (1992) Meth Enzymol 211:3を参照されたい。
所望の配列を合成する代わりに、実質的にいかなる核酸も、様々な商業的供給源、例えばThe Midland Certified Reagent Company (mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company (www.genco.com)、ExpressGen, Inc. (www.expressgen.com)、Operon Technologies, Inc. (www.operon.com)などのいずれかから特注することができる。
さらに、例えば部位特異的突然変異誘発により、ウイルスポリペプチド中の選択したアミノ酸残基を置換することができる。例えば、所望の表現型特性(例えば、弱毒化表現型、低温順応性、温度感受性)と機能的に相関するアミノ酸置換を有するウイルスポリペプチドは、該ポリペプチドをコードするウイルス核酸セグメントに特定の突然変異を導入することにより製造することができる。部位特異的突然変異誘発方法は当該分野で周知であり、例えばAusubel、Sambrook及び Berger(前述)に記載されている。部位特異的突然変異誘発を行うための非常に多くのキットが市販されており(例えばChameleon Site Directed Mutagenesis Kit (Stratagene, La Jolla))、製造業者の説明書に従って使用して、例えば表6又は表17に記載のアミノ酸置換の1つまたはそれ以上を、それぞれ、A型又はB型インフルエンザポリペプチドをコードするゲノムセグメントに導入することができる。
実施例1:pAD3000の構築
プラスミドpHW2000(Hoffmann et al. (2000) A DNA transfection system for generation of influenza A virus from eight plasmids Proc Natl Acad Sci USA 97:6108-6113)を改変して、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナルをシミアンウイルス40(SV40)由来のポリアデニル化シグナル配列で置換した。
SV40由来の配列をTaq MasterMix (Qiagen)により、3〜5方向で示す以下のオリゴヌクレオチドを使用して増幅した:
polyA.1: AACAATTGAGATCTCGGTCACCTCAGACATGATAAGATACATTGATGAGT (配列番号1)
polyA.2: TATAACTGCAGACTAGTGATATCCTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTA (配列番号2))。
プラスミドpSV2Hisを鋳型として使用した。予測された175bp産物に一致する断片を得て、Topo TAクローニングベクター(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って用いて、pcDNA3.1中にクローニングした。生じたプラスミドからEcoRVとBstEIIとを用いて、SV40ポリアデニル化シグナルを含有する所望の138bp断片を切り出し、アガロースゲルから単離し、pHW2000中の固有のPvuIIとBstEII部位との間で従来技術を使用して連結した(例えば、Ausubel、Berger、及びSambrookを参照)。得られたプラスミドpAD3000(図1)を配列決定し、SV40ポリアデニル化部位が正しい配向で含むことを確認した。pAD3000中のヌクレオチド295〜423は、それぞれSV40 777株(AF332562)中のヌクレオチド2466〜2594に対応する。
実施例2:MDV-Aを製造するための8プラスミド系
低温順応性A型インフルエンザウイルス/AA/6/60変異株は、一般的に、鼻内投与用のA型インフルエンザワクチンを製造するためのマスタードナーウイルスとして使用されている。この株は本発明におけるマスタードナーウイルス(MDV)の例である。簡潔にするために、このA/AA/6/60変異株をここではMDV-Aと呼ぶ。MDV-AウイルスRNAをRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して抽出し、8つの対応するcDNA断片を表1に列挙したプライマーを用いてRT-PCRにより増幅した。
Figure 2009511073
AarI制限酵素認識部位を含むプライマーを使用して増幅したHA及びPB2をコードするインフルエンザゲノムセグメントを除いて、残りの6つの遺伝子は、BsmBI制限酵素認識部位を含むプライマーを用いて増幅した。AarIとBsmBI cDNA断片の両方とも、pAD3000ベクターの2つのBsmBI部位の間でクローニングした。
配列決定分析は、すべてのクローン化cDNA断片が、コンセンサスMDV-A配列について、おそらくクローニング工程中に導入された突然変異を含有することを示した。各遺伝子セグメント中の突然変異を表2にまとめる。
Figure 2009511073
QuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)と表3に示す合成オリゴヌクレオチドプライマーとを使用して、すべての突然変異をコンセンサスMDV-A配列に修正し戻した。
Figure 2009511073
実施例3:感染性組換えMDV-A及び再集合インフルエンザウイルスの生成
Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)細胞とヒトCOS7細胞とを、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する改変イーグル培地(MEM)で維持した。ヒト胚腎細胞(293T)を5%FBSを含有するOpti-MEM I(Life Technologies)で維持した。MDCKとCOS7又は293T細胞を6ウェルプレート中で1:1の比率で共培養し、細胞を約80%コンフルエンスでトランスフェクションのために使用した。293T細胞とCOS7細胞は高トランスフェクション効率を有するが、インフルエンザウイルスの複製には許容されない。MDCK細胞との共培養により、組換えウイルスの効率的複製が確保される。トランスフェクションの前に、血清含有培地を血清無含培地(Opti-MEM I)で取換え、4〜6時間インキュベートした。TransIT-LT1(Mirus)を使用して、8つの各プラスミドDNA(PB2、PB1、PA、NP、M、NS、HA、及びNA)1μgを、160μlのOpti-MEM Iで希釈した20μlのTransIT-LT1を総量200μlで混合することにより、プラスミドDNAトランスフェクションを行った。DNA:トランスフェクション試薬混合物を室温で45分間インキュベートした後、800μlのOpti-MEM Iを加えた。次に、トランスフェクション混合物を共培養したMDCK/293T又はMDCK/COS7細胞に加えた。トランスフェクトした細胞を35℃又は33℃で6時間〜24時間、例えば一晩、インキュベートし、トランスフェクション混合物を各ウェルにおいて1mlのOpti-MEM Iで置換した。35℃又は33℃で24時間インキュベーション後、1μg/mlのTPCK-トリプシンを含有する1mlのOpti-MEM Iを各ウェルに加え、さらに12時間インキュベートした。次に回収したウイルスをコンフルエントMDCK細胞で増幅したか又は発育鶏卵で直接増幅した。12ウェルプレート中のMDCK細胞に0.2mlのトランスフェクション混合物を室温で1時間感染させ、その後、混合物を取り出し、1μg/mlのTPCK-トリプシンを含有する2mlのOpti-MEM Iで置換した。細胞を35℃又は33℃で3〜4日間インキュベートした。増幅したウイルスを-80℃、SPG安定化剤の存在下で保存するか、又はプラーク精製し、MDCK細胞もしくは発育鶏卵で増幅した。
MDV-Aポリメラーゼタンパク質の機能的発現
4つのMDV-Aポリメラーゼタンパク質PB2、PB1、PA、及びNPの機能活性を、EGFPレポーター遺伝子をコードするインフルエンザウイルスミニゲノムを複製するそれらの能力により分析した。A/PR/8/34株(H1N1)のcDNAを含有する8つの発現プラスミドのセット(例えば表4を参照)(Hoffmann et al. (2001) Eight plasmid rescue system for influenza A virus; Options for the control of influenza International Congress Series 1219:1007-1013)と、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP、pHW72-EGFP)をコードするレポーター遺伝子を含有するインフルエンザウイルスミニゲノム。
MDV-A、PB1、PB2、PA及びNP、又はPB1、PA、NP(-PB2を陰性対照として)を、共培養したMDCK/293T細胞に、A型インフルエンザウイルスEGFPミニゲノムを示すプラスミド(pHW72-EGFP)(Hoffmann et al. (2000) 「Ambisense」 approach for the generation of influenza A virus: vRNA and mRNA synthesis from one template Virology 15:267(2):310-7)とともにトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの48時間後に位相差顕微鏡又は蛍光顕微鏡下で観察した。あるいはフローサイトメトリーを使用してEGFP発現を検出することができる。
図2に示すように、EGFPミニゲノムの発現を示す緑色の蛍光が、MDV-AのPB2、PB1、PA、及びNPでトランスフェクトした細胞で観察されたが、3つのポリメラーゼタンパク質のみでトランスフェクトした細胞では観察されなかった。これは、pAD3000中のMDV-Aポリメラーゼタンパク質が機能的であったことを示す。
他のアッセイでは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子(pFlu-CATと呼ぶ)を含むミニゲノムを使用して、ポリメラーゼ活性が測定される。かかるアッセイでは、CAT発現は、ミニゲノム複製の指標としてタンパク質(例えばELISA)又はRNAレベルで測定される。
単一の遺伝子再集合実験によるMDV-Aプラスミドの解析
pAD3000にクローニングされた8つの各MDV-Aゲノムセグメントは、再集合実験で、MDA-Aからの単一の遺伝子セグメントを、対照A/PR/8/34株からの相補的な7つのセグメントと共に共トランスフェクトすることにより、機能的に発現されることが示された。8つすべての単一のゲノムセグメントプラスミドを相補的制御セグメントと組合せると、感染したMDCK細胞で細胞変性効果を引き起こす感染性再集合ウイルスが生成し、これは8つすべてのプラスミドが機能的MDV-Aタンパク質をコードすることを示している。
Figure 2009511073
A型インフルエンザウイルスのパッケージング制約条件をさらに調べるために、NSセグメントを2つの別々の遺伝子セグメントに分離した:一方はNS1ゲノムセグメントをコードするものであり、もう一方はNS2ゲノムセグメントをコードするものである。A型インフルエンザのゲノムセグメントを組み込んだ9つのプラスミドを上記したようにMDCK/COS細胞にトランスフェクトし、回収したウイルスを発育鶏卵で増幅した後、MDCK細胞で滴定した。上記の8プラスミド系と比較して、9プラスミド系でプラークサイズの低下が観察された。RT-PCR分析は、NS2セグメントのみがウイルス粒子中に存在し、NS1遺伝子セグメントはパッケージングされなかったことを証明した。
MDV-A及び6:2再集合ウイルスの回収
上記方法に従って、8つのMDV-Aプラスミド(組換え)、又は6つのMDV-A内部遺伝子とA/PR/8/34由来のHA及びNAとを組み込んだプラスミド(6:2再集合体)でトランスフェクトした3日後、トランスフェクトした培養物上清を使用して新鮮なMDCK細胞を感染させ、感染した細胞を1μg/ml TPCK−トリプシンの存在下、33℃で3日間インキュベートした。感染MDCK細胞に対する組換えウイルスの細胞質効果を顕微鏡を用いて観察した。ウイルスヘマグルチニンの発現を標準的な赤血球凝集アッセイ(HA)を使用してモニターした。HAアッセイは、連続2倍希釈した培養物上清50μlと1%雛赤血球50μlとを96ウェルプレートで混合することにより行った。トランスフェクトした8つのMDV-Aプラスミド又は6:2再集合ウイルスに由来する増幅ウイルスについて、約1:254〜1:1024のHA力価が検出された。E. Hoffman博士から得た8つのA/PR/8/34プラスミドを使用するトランスフェクション反応物を陽性対照として使用した。表5に示すように、これらの3つのトランスフェクション反応から感染性インフルエンザウイルスが製造された。
Figure 2009511073
回収したウイルスの遺伝子型をマッピングするためにRT-PCRを行った。RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して感染細胞培養物上清からウイルスRNAを単離し、各MDV-A遺伝子セグメントに特異的なプライマーとH1-及びN1特異的プライマーとを使用して、RT-PCRにより、8つのインフルエンザウイルスセグメントを増幅した。図3に示すように、rMDV-Aは、MDV-Aに特異的なPB2、PB1、NP、PA、M、及びNSと、H2及びN2サブタイプに特異的なHA及びNAとを含んだ。6:2再集合体は、MDV-A由来の6つの内部遺伝子と、A/PR/8/34(H1N1)由来のHA及びNAとを含んだ。これによりトランスフェクトしたプラスミドから生成されるウイルスが正しい遺伝子型を有することを確認した。
レスキューしたウイルスをMDCK細胞に対するプラークアッセイにより滴定し、該プラークがインフルエンザウイルスであることをMDV-Aに対して生じたニワトリ血清を用いた免疫染色により確認した。12ウェルプレート上の100%コンフルエントのMDCK細胞に、10倍連続希釈したウイルス100μlを室温で1時間静かに振盪しながら感染させた。接種物を取り出し、細胞に0.8%アガロースと1μg/ml TPCK−トリプシンとを含有する1X L15を重層した。プレートを35℃又は33℃で3日間インキュベートし、100%メタノールで固定し、PBS中5%ミルクでブロックし、1:2000希釈したニワトリ抗MDV-A抗血清と共に1時間インキュベートし、次にHRPコンジュゲート型ウサギ抗ニワトリIgGと共に1時間インキュベートした。HRP基質溶液(DAKO)を添加してプラークを視覚化した。回収した全てのウイルスは陽性の免疫染色を示した。
実施例4:MDV-Aのca、ts、att表現型の遺伝子的根拠をマッピングする
MDV-Aインフルエンザウイルスワクチン株は、ワクチン(例えば弱毒化生ワクチン)の製造に関連するいくつかの表現型を有する:低温順応性(ca)、温度感受性(ts)、及び弱毒化(att)。MDV-A株と非ts毒性wt A/AA/6/60株との配列比較は、これらの2つの株の間の少なくとも17ntの差を明らかにした(表6)。GeneBankデータベースで入手可能な全てのA型インフルエンザウイルスと比較した際、MDV-A配列における変化のいくつかはこの株に固有であり、これは、これらのアミノ酸置換の1つまたはそれ以上がatt、ca、及びts表現型に機能的に関連していることを示唆する。PB2821における単一アミノ酸変化は、MDV-Aのts表現型の決定因子としてすでに報告された唯一のヌクレオチド位置であった(Subbarao et al. (1995) Addition of Temperature-Sensitive Missense Mutations into the PB2 Gene of Influenza A Transfectant Viruses Can Effect an Increase in Temperature Sensitivity and Attenuation and Permits the Rational Design of a Genetically Engineered Live Influenza A Virus Vaccine J. Virol. 69:5969-5977)。
MDV-A表現型に関与する最小の置換を特定するために、wt A/AA/6/60とは異なるMDV-Aクローン中のヌクレオチドを個々にwt A/AA/6/60のものに変化させた(すなわち、「復帰」)。次に、各復帰遺伝子セグメントをMDV-Aの相補的セグメントと組合せて宿主細胞中に導入して、単一遺伝子再集合体を回収した。さらに、復帰遺伝子セグメント及び対応するMDV-Aセグメントも、他の野生型株(例えばA/PR/8/34株)由来のセグメントと組合せてトランスフェクトして、ウイルスの表現型に対する各遺伝子セグメントの寄与を評価することができる。上記の組換えMDV-Aプラスミド系を使用して、部位特異的突然変異誘発を行い、6つの内部遺伝子をさらに改変して非ts再集合体を製造した。全部で15個のヌクレオチド置換突然変異を6つのMDV-Aプラスミドに導入して、表6に列挙した組換え野生型A/AA/6/60ゲノム(rWt、Flu064)とした。Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)細胞とCOS-7細胞とを上記のように維持し、トランスフェクトした。次に、回収したウイルスをMDCK細胞で1回継代した後、発育鶏卵の尿膜腔中で増幅した。温度選択圧力を最小化するために、MDCK及び卵におけるトランスフェクション及びウイルス増殖は、33℃(ca及びwtウイルスの両方で許容される温度)で行った。ウイルスの遺伝子型は、ウイルスRNAから増幅したcDNA断片の配列分析により確認した。
Figure 2009511073
表現型特性は、例えばParkinの米国特許第6,322,967号、表題「Recombinant tryptophan mutants of influenza」(その全体を本明細書に組み入れる)に既に記載されているように、当該分野で公知の方法により決定した。簡単に説明すると、組換えウイルスの温度感受性は、33、38、及び39℃でMDCK細胞に対するプラークアッセイにより決定した。6ウェルプレート中のMDCK細胞を400μlの10倍連続希釈ウイルスで感染させ、室温で60分間吸着させた。接種物を取り出し、1%アガロースと1μg/mlTPCK-トリプシンとを含有する1xL15/MEMで置換した。感染細胞をCO2インキュベーター中33℃で、又は38±0.1℃もしくは39±0.1℃に維持した循環ウォーターバス中に浸した5% CO2を含有する防水容器中でインキュベートした(Parkin et al. (1996) Temperature sensitive mutants of influenza A virus generated by reverse genetics and clustered charged to alanine mutagenesis. Vir. Res. 46:31-44)。3日間インキュベーション後、単層をニワトリ抗MDVポリクローナル抗体を使用して免疫染色し、プラークを数えた。各温度で得られたプラーク数を比較して、各ウイルスのts表現型を評価し、各アッセイを少なくとも3回行った。シャットオフ温度を、33℃と比較して100倍またはそれ以上の力価低下がある最低の温度として規定した。
8つのプラスミド(pMDV-PB2、pMDV-PB1、pMDV-PA、pMDV-NP、pMDV-HA、pMDV-NA、pMDV-M、及びpMDV-NS)でトランスフェクトした共培養COS-7/MDCK細胞から得られた感染ウイルスを発育卵で増幅し、これが非組換え生物体由来のMDV-Aの特徴的なts表現型を示すことが証明された(表7)。MDV-AもrMDV-Aも39℃で明瞭なプラークを形成しなかったが、いずれも33℃では容易に見えるプラークを形成した。
Figure 2009511073
MDV-Aのts表現型の遺伝子的根拠の体系的かつ詳細な分析を行うために、いくつかの密接に関連した非ts、非att wtA/AA/6/60株(caA/AA/6/60とは17〜48ntの差を有する)(高度に関連する分離株wt A/AA/6/60 E10SE2を含む)の配列を比較に使用した。E10SE2とMDV-Aとの間で合計19ntの差が存在する(表6)。フェレットでE10SE2は、非ts(表7)であり非attであることが示された。組換え非ts株を生成するために、MDV-Aプラスミドを部位特異的突然変異誘発により改変して、10個のアミノ酸の変化を示す19個の差のうちの15個を組み込んだ。4つのヌクレオチド位置PB2-1182、1212、PB1-123、及びNP-1550(これらはMDV-AとE10SE2との間で異なった)は、A/AA/6/60の他の非ts分離株で観察され、従ってts表現型の発現に関与しないことが予測されたため(Herlocher et al. (1996) Sequence comparisons of A/AA/6/60 influenza viruses: mutations which may contribute to attenuation. Virus Research 42:11-25)、これらのヌクレオチドはMDV-A配列から改変されなかった。15個のヌクレオチド変化をコードする組換えウイルス(rWt、Flu064)は、8つのプラスミドのセット(pWt-PB2、pWt-PB1、pWt-PA、pWt-NP、pWt-M、pWt-NS、pMDV-HA、及びpMDV-NA)でトランスフェクトした共培養COS-7/MDCK細胞から得られた。配列決定分析は、rWtが設計された遺伝子変化を含有し、生物体由来のwt A/AA/6/60と同様に39℃で非tsであった。これらの観察結果は、ts表現型がこれらの15nt変化のサブセットにマッピングされたことを証明した。
ウイルスts表現型への6つの内部遺伝子セグメントの寄与
MDV-A ts表現型に対する各wt遺伝子セグメントの効果を、組換え単一遺伝子再集合体(表7)を作製することによって評価した。rMDV-AにwtPB2を導入すると、38℃でのみ非tsであるウイルスが得られた;しかし、これは39℃でtsのままであった。38℃及び39℃での(33℃と比較した)ウイルス力価の低下は、MDCK細胞におけるプラークアッセイにより測定すると、それぞれ0.6 log10と2.7 log10であった。wtPB1遺伝子セグメントを含有する再集合体は、38℃と39℃の両方でプラークを形成する能力について非tsであった。しかしこの組換え体のプラークサイズは、温度の上昇により影響を受け、rWtと比較して39℃で有意に低下した。wt NP遺伝子セグメントをrMDV-Aに導入すると、38℃で非tsであるウイルスが得られたが、wt PB2組み換え体と比較して、wt NP遺伝子セグメントを含有するウイルスは39℃でプラークを形成しなかった。wt PA、M、又はNS遺伝子セグメントを独立にrMDV-Aに導入してもts表現型は変化せず、これはこれらの遺伝子セグメントがこの表現型の維持において最小の役割を有することを示している。
MDV-Aバックグランドで個々に発現されたwtPB1、wtPB2、又はwtNPのいずれも非ts rWTと同じプラーク効率及びプラークサイズプロフィールを生じることができなかったため、これらの遺伝子セグメントを種々の組合せでMDV-Aに導入した。wtPB1とwtPB2の組合せにより、38℃と39℃の両方で非tsであるウイルスが得られた(表7)。プラークサイズはいずれかの単独の遺伝子再集合体のものより大きかったが、rWTよりは有意に小さかった。rMDV-Aにおけるwt PB1/PB2/NPの3者の組合せにより、39℃でのプラーク効率及びプラークサイズにおいてrWtと類似するか又は同一であるウイルスが得られた。従って、wtPB2、PB1、及びNP遺伝子セグメントは個々に導入されるとts表現型を部分的にのみ復帰させたが、3つ全てのwt遺伝子セグメントの組合せは、ts表現型をrWTと同じ非ts挙動に完全に復帰させることができた。
これらの3つの遺伝子セグメントが特徴的なMDV-A ts表現型をrWTに付与することができるかどうかを判定するために、MDV-A由来の6つの内部遺伝子セグメントを個々に又は組合せてrWTに導入した。単一のPB1、PB2、又はNP遺伝子セグメントをrWtに導入すると、38℃でウイルス力価が低下し、39℃ではさらに低下したが、これらの単一の遺伝子再集合体はいずれも、rMDV-Aのように高温で制限されてはいなかった(図10)。MDV-A由来のPA、M、及びNS遺伝子セグメントは、rWtの非ts表現型に影響を与えなかった。以前の再集合体と一致して、MDV-A PB1及びPB2遺伝子の両方のrWT骨格への導入により、38℃でのウイルスts表現型が大幅に増加することが証明された。しかしウイルスts表現型の完全な復帰にはNP遺伝子の追加が必要であった。すなわち、MDV-A由来のPB1、PB2、及びNP遺伝子セグメントは、完全なts表現型を与える上で重要であった。
MDV-A ts表現型を決定した遺伝子座のマッピング
ts表現型に重要な役割を果たす変化を特定するために、rWt及びrMDV-AのPB1、PB2、及びNP遺伝子セグメントの間の特定の差異を体系的に調べた。rMDV-AのNP遺伝子はrWtNPとはnt146でのみ異なった(G34D、表6)。rMDV-AのPB2遺伝子は3つの部位でrWtと異なったが、nt821のみがアミノ酸変化を生じ(N265S、表6)、これはおそらくPB2遺伝子セグメントに位置するts遺伝子座を示す。MDV-AのPB1遺伝子はwtPB1とは6nt位置で異なり、そのうち4つはコーディング変化であった(表6)。各wtアミノ酸残基置換をrMDV-AのPB1遺伝子セグメントに個々に置換して、ts表現型におけるその役割を評価した。1395G(Glu-457)と2005G(Ala)はMDV-A ts表現型に影響を与えなかった。1195A(Lys-391)と1766A(Glu-581)はそれぞれ38℃でts表現型をわずかに低下させたが、39℃では影響はなかった(表8)。これらのデータは、1195Aと1766AがPB1遺伝子セグメント中の有望なts遺伝子座であったことを示す。しかし、1195Aと1766Aの組合せは、wtPB1に似たts表現型を生じなかった(表6)。2005G(1395Aではなく)をPB1-1195A/1766Aに加えると、39℃でのウイルスts表現型がさらに低下し、これは2005AがMDV-AのPB1セグメントにより特定されるts表現型の発現における役割も有することを示している。
Figure 2009511073
次にPB1単一部位突然変異を、wtPB2とwtNPとともにrMDV-Aに導入した。WtPB2/NPとrMDV-A再集合体は38℃で非tsであり、39℃で力価低下が1.25 log10であったが、そのプラークサイズはrWtと比較してはるかに低下していた。PB1-1195A又は1766Aの追加はwtPB2/NO再集合体の表現型を有意には変化させなかった。wtPB2及びwtNPと併せたPB1-1195Aと1766Aの組合せのみが、PB1/PB2/NP及びrMDV-A再集合体と同じ非ts表現型を有するウイルスを生じた(表8)。PB1-1395G又は2005GをwtPB1-1766/PB2/NPに加えても、このウイルスを特徴的なrWt非ts表現型に変換しなかった。従って、これらのデータは、PB1、PB2、及びNPの3つの遺伝子中に分布する4つのアミノ酸がMDV-A ts表現型を完全に復帰させることができたことを証明する。
MDV-A及び再集合ウイルスの宿主細胞制限
MDV-Aウイルス及び上記の1つまたはそれ以上のMDV-A由来セグメントを含む再集合ウイルスにより示される温度感受性及び弱毒化表現型に加えて、MDV-Aウイルスは、MDCK細胞における増殖と比較してPer.C6細胞において増殖が低下していることにより示されるように宿主細胞制限を示した。MDV-A及びMDV-A由来PB1及びPB2セグメントを含む再集合ウイルスは、図20AとBに示されるように、MDCK細胞における増殖と比較してPer.C6細胞において有意に低下した増殖を示した。
温度感受性、弱毒化ウイルス株の操作
MDV-AのPB1、PB2、及びNP遺伝子セグメント中で同定された5つのアミノ酸がMDV-Aのts及びatt表現型を再現できるかどうかを判定するために、PB1-391E、581G、661T、PB2-265S、NP-34Gを分岐した野生型ウイルス株(A/PR/8/34;「PR8」)に導入すると、得られたウイルスは38℃でウイルス力価が1.9 log10低下し、39℃で4.6 log10低下し、これはrMDV-Aのものと非常によく似ていた(図11)。
ca A/AA/6/60(MDV-A)とA/PR/8/34のPB1、PB2、及びNP遺伝子間の配列比較は、MDV-AのPB1とPB2遺伝子中で同定される4つの置換アミノ酸が固有のものであることを明らかにした。NP34はMDV-AとPR8の間で保存されていた。従って、MDV-AのPB1遺伝子中で同定された3つのts部位、PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、及びPB1661(A661T)を、部位特異的突然変異誘発によりA/PR/8/34のPB1中に導入し、PB2265(N265S)をA/PR/8/34のPB2中に導入した。PB1及びPB2遺伝子に導入された突然変異を、配列決定分析により確認した。突然変異誘発反応のために使用されたプライマー対を表9に列挙する。これらのウイルスは模式的に図16に示す。
Figure 2009511073
PR8のPB1及びPB2遺伝子に導入されたts突然変異がインビトロでts表現型を付与するかどうかを調べるために、ミニゲノムアッセイを行った。インフルエンザミニゲノムレポーター(pFlu−CATと呼ぶ)は、polIプロモーターの制御下でクローニングされたマイナス鎖CAT遺伝子を含有した。CATタンパク質の発現は、インフルエンザPB1、PB2、PA、及びNPタンパク質の発現に依存した。
簡単に説明すると、HEp-2細胞を、リポフェクタミン2000(Invitrogen)により、各1μgのPB1、PB2、PA、NP、及びpFlu−CATミニゲノムでトランスフェクトした。33℃又は39℃で一晩(約18時間)インキュベートした後、細胞抽出物をCAT ELISAキット(Roche Bioscience)によりCATタンパク質発現について分析した。CAT mRNAのレベルをプライマー伸長アッセイにより測定した。トランスフェクションの48時間後、総細胞RNAをTRIzol試薬(Invitrogen)により抽出し、RNAの1/3を、6μlの水中のその5'末端を[r-32P]-ATPで標識した過剰のDNAプライマー(5’-ATGTTCTTTACGATGCGATTGGG (配列番号89))及びT4ポリヌクレオチドキナーゼと混合した。95℃で3分の変性後、0.5mM dNTPを含有する酵素とともに供給された反応バッファー中の50Uのスーパースクリプト逆転写酵素(Invitrogen)の添加後、プライマー伸長を42℃で1時間行った。転写産物を、TBEバッファー中に8M尿素を含有する6%ポリアクリルアミドゲルで分析し、オートラジオグラフィーにより検出した。
図12AとBに示されるように、3つのアミノ酸置換(PR8-3s)、PB1391(K391E)、PB1581(E581G)、及びPB1661(A661T)を保持するPB1遺伝子は、PR8対照と比較して33℃での活性が低下した。この変異体について39℃ではCATタンパク質発現のより大きな低下が観察され(図12A)、これは3つの導入したMDV-A ts部位を含むPB1遺伝子がこのin vitroアッセイで温度感受性複製を提示したことを示す。PB2265(N265S)をPR8に導入しても、許容(33℃)温度と非許容温度(39℃)の両方でその活性に対してほとんど影響が無かった。PB1-3sとPB2-1sの両方の組合せは、タンパク質活性(PR8-4s)をより大きく低下させ、これはMDV-Aよりさらにtsであるようであった。予測されたように、wt A/AA/6/60(wt A/AA)と比較して、MDV-A由来のPB2、PB1、PA、NP遺伝子でトランスフェクトした細胞において、39℃で低レベルの活性(15%)が検出された。
上記したようにPR8突然変異体ウイルスを作製し回収した。簡単に説明すると、共培養したCOS7細胞とMDCK細胞とを、PR8由来のPR8 HA、NA、PB1、PB2、PA、NP、M、及びNS遺伝子をコードする8種のプラスミドでトランスフェクトした。4つのts遺伝子座を保持するウイルス(PR8-4s)を作製するために、PB1の位置nt1195(K391E)、nt1766(E581G)、及びnt2005(A661T)にPB1の3つの変化を含むPB1-3s、並びにPB2の位置821(N265S)に1つの変化を含むPB1-1sを使用した。さらに、PB1(PR8-3s)における3つの突然変異又はPB2(PR8-1s)における1つの突然変異を保持するPR8ウイルスも別に回収した。これらのウイルスを図16に模式的に示す。4種全ての組換え突然変異体PR8ウイルスは発育鶏卵中で非常に高力価まで増殖し、表10に示すように9.0 log10PFU/mlまたはそれ以上の力価まで到達した。
感染細胞中のウイルスタンパク質合成を調べるために、MDCK細胞をm.o.i 5でウイルスと感染させ、感染の7時間後、細胞を35S-Transで1時間標識した。標識した細胞溶解物をSDS含有1.5%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、オートラジオグラフィーを行った。タンパク質合成はウェスタンブロッティングによりさらに試験した。感染の8時間後にウイルス感染細胞を採取し、4〜15%勾配ゲルで電気泳動した。ブロットを抗M1抗体又はニワトリ抗MDV-Aポリクローナル抗体でプロービングし、次にHRPコンジュゲート型2次抗体と共にインキュベートした。抗体コンジュゲート型タンパク質のバンドをChemiluminescent Detection System(Invitrogen)により検出し、次にX線フィルムに曝露した。
図19に示すように、33℃ですべてが同様のタンパク質合成レベルを有したが、39℃ではPR8-1sでタンパク質合成レベルがわずかに低下し、PR8-3sとPR8-4s感染細胞では大幅に低下した。ウェスタンブロット分析はまた、PR8-4s>PR8-3s>PR8-1sの順でタンパク質合成の低下を示した。すなわちts変異体の複製低下は、おそらく非許容温度での複製低下の結果であった。
PR8突然変異体ウイルスの温度感受性を、33℃、37℃、38℃、及び39℃でMDCK細胞のプラークアッセイにより測定した。回収したウイルスを上記のように発育鶏卵で増幅し細胞に導入した。記載の温度で3日間ウイルス感染細胞をインキュベートした後、細胞単層をニワトリ抗MDVポリクローナル抗体を使用して免疫染色し、プラークを数えた。各温度で得られたプラーク数を比較して、各ウイルスのts表現型を評価した。シャットオフ温度を、33℃と比較して100倍またはそれ以上の力価低下がある最低の温度として規定した。
表10及び図17に示すように、すべての突然変異体は33℃でよく複製したが、ウイルス力価のわずかな低下が観察された。38℃ではすべての突然変異体について、ウイルス力価の有意な低下が観察された。39℃では、PB1遺伝子に3つのts遺伝子座を保持するウイルス(PR8-3sとPR8-4s)について4.0 log10を超えるウイルス力価の低下が観察された。PR8-1sも39℃でtsであった。PR8-4sのts表現型は、33℃と比較して39℃で4.6 log10の低下を有するMDV-Aのものと非常によく似ていた。3種すべてのPR8突然変異体は、37℃で2.0 log10を超えるウイルス力価の低下はなかったが、そのプラークの形態は33℃での形態とは異なっていた。図18に示すように、各突然変異体のプラークサイズは、PR8と比較して33℃でほんのわずかに低下した。37℃ではPR8-3sについてプラークサイズの有意な低下が観察され、PR8-4sではさらに大きかった。PR8-1sは37℃でプラークサイズの有意な低下はなかった。39℃では、PR8-3sとPR8-4sの両方について数個のわずかなサイズのプラークが観察された。PR8-1sについては、wtPR8の約30%のプラークサイズが観察された。
Figure 2009511073
突然変異体PR8ウイルスの弱毒化をフェレットで調べた。簡単に説明すると、9〜10週齢のオスのフェレットを使用して、動物宿主の呼吸器でのウイルス複製を評価した。フェレットを個々に収容し、8.5 log10PFUのウイルスを鼻内に接種した。感染の3日後、フェレットをケタミン−HClで鎮静させ、肺と鼻甲介(NT)を採取した。肺組織ホモジネートを連続希釈し、10日齢の発育鶏卵で滴定した。肺でのウイルス力価(log10EID50/ml)をKarber法により計算した。NTでのウイルス複製をプラークアッセイにより測定し、log10PFU/mlとして表した。
肺と鼻甲介におけるウイルス複製レベルをEID50又はプラークアッセイにより測定した(表11)。感染の3日後、PR8は肺組織1g当たり5.9 log10EID50のレベルまで複製した。しかし、PR8-1sはフェレット肺で3.0 log10の複製低下を示し、PR8-3sについてはほとんど複製が検出されなかった。独立に得られたウイルスで感染した2つのウイルス群で調べたPR8-4sでは、複製は全く検出されなかった。EID50アッセイによるフェレット肺中のウイルス検出限界は1.5 log10であり、従ってPR8-4sには1.5 log10EID50の力価を割り当てた。対照として、MDV-Aはフェレット肺中で複製されず、wt A/AA/6/60は4.4 log10の力価まで複製した。鼻甲介(NT)中のウイルス複製をMDCK細胞のプラークアッセイにより調べた。PR8は鼻で6.6 log10PFU/gの力価まで複製した。PR8-1sとPR8-3sについてはウイルス力価のわずかな低下のみが観察された。PR8-4s(A)については2.2 log10の低下が観察されたが、PR8-4s(B)については4.3 log10の低下が観察された(これらはPB1遺伝子に1つの変化(E390G)を保持した)。PR8-4s(B)の大幅な複製低下は、37℃でのそのts表現型と良く相関する。ここでは、MDV-A由来のインフルエンザワクチンの弱毒化表現型を評価するのに通常使用された7.0 log10PFUの代わりに、8.5 log10PFUの感染用量を使用した。この結果は、MDV-A由来の4つのts遺伝子座を保持するPR8が、フェレットの下気道で複製が低下していることを示した。
Figure 2009511073
tsとattアッセイの両方で、PR8突然変異体ウイルスはtsとatt表現型の両方を示し、これはMDV-Aのものと非常によく似ていた。これらのデータは、分岐インフルエンザウイルス株へのMDV-Aに固有のアミノ酸置換の導入が、(例えば弱毒化生)ワクチンを製造するのに所望の温度感受性及び弱毒化表現型を示すウイルスをもたらすことを示す。さらに、ts、attのPR-8ウイルスは高力価まで増殖し、これは弱毒化又は不活性化生インフルエンザワクチンを製造するためのマスタードナーウイルスとして使用するのに適している。これらの結果は、5つのMDV-A突然変異:PB1-391E、PB1-581G、PB1-661T、PB2-265S、及びNP-34Gが、任意のA型インフルエンザ株にts及びatt表現型を付与することができることを示す。同様に、ワクチン製造に適した新規B型ts、att株は、B型インフルエンザウイルス株へMDV-B株の突然変異を導入することにより製造することができる。弱毒化生ウイルスワクチンを製造することに加えて、ドナー株へのこれらの突然変異の導入は、より安全な不活性化ワクチンの製造につながる。
実施例5:MDV-Bの製造のための8プラスミド系
B型インフルエンザ/Ann Arbor/1/66(ca/Master Ann Arbor/1/66 P1 Aviron 10/2/97)の低温順応性変異体(これはB型インフルエンザマスタードナー株(MDV-B)の一例である)からのウイルスRNAを、RNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して感染発育卵からの尿膜腔液100μlから抽出し、RNAを40μlの水に溶出させた。One Step RT-PCRキット(Qiagen, Valencia, CA)を提供されたプロトコールに従って用い、各反応について1μlの抽出RNAを使用して、ゲノムセグメントのRT-PCRを行った。RT反応は、50℃で50分、次に94℃で15分行った。PCRは、94℃で1分、54℃で1分、及び72℃で3分を25サイクル行った。P遺伝子はBsmBI部位を有するセグメント特異的プライマーを使用して増幅し、2つの断片を生成した(表12)。
Figure 2009511073
プラスミドのクローニング
PCR断片を単離し、BsmBI(又はNP用のBsaI)で消化し、上記したようにBsmBI部位でpAD3000(マイナス鎖vRNA及びプラス鎖mRNAの転写を可能にするpHW2000の誘導体)に挿入した。生じた各2〜4のプラスミドを配列決定し、RT-PCR断片の直接的な配列決定に基づいてMDV-Bのコンセンサス配列と比較した。コンセンサス配列とは異なるアミノ酸変化を生じるヌクレオチド置換を有するプラスミドは、プラスミドをクローニングすることにより、又はQuikchangeキット(Stratagene, La Jolla, CA)を使用することにより「修復」した。生じたB/Ann Arbor/1/66プラスミドを、pAB121-PB1、pAB122-PB2、pAB123-PA、pAB124-HA、pAB125-NP、pAB126-NA、pAB127-M、及びpAB128-NSと名付けた。この2方向性転写系を使用してすべてのウイルスRNAとタンパク質を細胞内で製造して、感染性B型インフルエンザウイルスを生成した(図4)。
コンセンサス配列と比較して、pAB121-PB1とpAB124-HAは2つのサイレントヌクレオチド置換を有し、pAB128-NSは1つのサイレントヌクレオチド置換を有したことは注目に値する(表13)。これらのヌクレオチド変化はアミノ酸を変化させず、ウイルス増殖とレスキューに影響を与えないと予測される。これらのサイレント置換は、組換えウイルスの遺伝子型判定を容易にするために保持されている。
Figure 2009511073
PA、NP、及びM1遺伝子にヌクレオチド置換を有するプラスミドを構築するために、プラスミドpAB123-PA、pAB125-NP、pAB127-Mを鋳型として使用した。ヌクレオチドをQuikchangeキット(Stratagene, La Jolla, CA)により変化させた。あるいは2つの断片を、所望の突然変異を含むプライマーを使用してPCRにより増幅し、BsmBIを用いて消化し、3つの断片の連結反応でpAD3000-BsmBIに挿入した。生成したプラスミドを配列決定して、cDNAが好ましくない突然変異を含まないことを確認した。
鋳型DNAの配列を、AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼFS (Perkin-Elmer Applied Biosystems, Inc, Foster City, CA)と共にRhodamine又はdRhodamineダイ-ターミネーターサイクルシーケンシングレディリアクションキットを使用して測定した。サンプルを電気泳動により分離し、PE/ABIモデル373、モデル373 Stretch、又はモデル377 DNAシーケンサーで分析した。
別の実験で、増幅を94℃で30秒、54℃で30秒、及び72℃で3分を25サイクル行ったこと以外は、B型インフルエンザ/Yamanshi/166/98からのウイルスRNAを、MDV-B株について上述したように増幅し、pAD3000にクローニングした。B/Yamanashi/166/98株セグメントの増幅には、NP及びNAセグメントの増幅のために以下のプライマーに代えたこと以外は同一のプライマーを使用した:それぞれMDV-B 5'BsmBI-NP: TATTCGTCTCAGGGAGCAGAAGCACAGCATTTTCTTGTG (配列番号75)、及びMDV-B 3'BsmBI-NP:ATATCGTCTCGTATTAGTAGAAACAACAGCATTTTTTAC (配列番号76)、及びBm-NAb-1: TATTCGTCTCAGGGAGCAGAAGCAGAGCA (配列番号77)、及びBm-NAb-1557R:ATATCGTCTCGTATTAGTAGTAACAAGAGCATTTT(配列番号78)。B/Yamanashi/166/98プラスミドをpAB251-PB1、pAB252-PB2、pAB253-PA、pAB254-HA、pAB255-NP、pAB256-NA、pAB257-M、及びpAB258-NSと命名した。3つのサイレントヌクレオチドの差をPAで同定し、これは組換え及び再集合B/Yamanashi/166/98ウイルスの遺伝子型判定を容易にする。
実施例6:感染性組換え及び再集合B型インフルエンザウイルスの生成
ヘルパーウイルス無含細胞培養系でB型インフルエンザを増殖させる場合に直面する障害を克服するために、本発明は組換え及び再集合B型インフルエンザウイルス株の製造のための新規ベクター及びプロトコールを提供する。B型インフルエンザウイルスのレスキューに使用されるベクター系は、A型インフルエンザウイルスの生成のために開発されたものに基づく(Hoffmann et al. (2000) A DNA transfection system for generation of influenza A virus from eight plasmids Proc Natl Acad Sci USA 97:6108-6113; Hoffmann & Webster (2000) Unidirectional RNA polymerase I-polymerase II transcription system for the generation of influenza A virus from eight plasmids J Gen Virol 81:2843-7)。293T細胞又はCOS-7細胞(高トランスフェクション効率とpolI活性とを有する霊長類細胞)をMDCK細胞(インフルエンザウイルスについて許容性)と共培養し、293T細胞を5% FBS細胞を含有するOptiMEM I-AB培地で維持し、COS-7細胞を10%FBSを含有するDMEM I-AB培地で維持した。MDCK細胞を1xMEM、10%FBS中で抗生物質と抗真菌薬とを添加して維持した。ウイルスゲノムベクターでトランスフェクトする前に、細胞を5mlのPBS又はFBSを含まない培地で1回洗浄した。75cm2のフラスコ中のコンフルエント細胞に10mlのトリプシン−EDTAを加えた(MDCK細胞を20〜45分インキュベートし、293T細胞を1分インキュベートした)。細胞を遠心分離し、10mlのOptiMEM I-ABに再懸濁した。次に1mlの各懸濁細胞株を18mlのOptiMEM I-AB中に希釈し、混合した。次に細胞を3ml/ウェルで6ウェルプレートに分注した。6〜24時間後、1μgの各プラスミドを、1.5mlのエッペンドルフチューブ中で、OptiMEM I-ABとともにプラスミドに混合した(xμlプラスミド+xμl OptiMEM I-AB+xμl TransIT-LT1=200μl);1μgプラスミドDNA当たり2μl TransIT−LT1。混合物を室温で45分インキュベートした。次に800μlのOptiMEM I-ABを加えた。細胞から培地を除去し、トランスフェクション混合物を細胞に(t=0)33℃で6〜15時間加えた。トランスフェクション混合物をゆっくり細胞から除去し、1mlのOptiMEM I-ABを加え、細胞を33℃で24時間インキュベートした。トランスフェクションの48時間後、1μg/ml TPCK-トリプシンを含有する1mlのOptiMEM I-ABを細胞に加えた。トランスフェクションの96時間後、1μg/ml TPCK-トリプシンを含有する1mlのOptiMEM I-ABを細胞に加えた。
トランスフェクションの4日〜7日後に、1mlの細胞培養物上清を取りだし、HA又はプラークアッセイによりモニターした。簡単に説明すると、1mlの上清をエッペンドルフチューブに分注し、5000rpmで5分遠心分離した。900μlの上清を新しいチューブに移し、500μl/ウェルでMDCK細胞に連続希釈を行った(例えば、12ウェルプレート中)。上清を細胞と1時間インキュベートし、次に取り出し、1μg/mlのTPCK-トリプシンを含有する感染培地(1xMEM)で置換した。次にHAアッセイ又はプラークアッセイを行った。例えばプラークアッセイのために、上清をMDCK細胞(これは、0.8%アガロース上層と共に33℃で3日間インキュベートした)で滴定した。卵の感染のために、トランスフェクションの6日又は7日後にトランスフェクト細胞の上清を採取し、Opti-MEMI中の100μlのウイルス希釈物を11日齢の発育鶏卵に33℃で注入した。接種の3日後に力価をMDCK細胞におけるTCID50アッセイにより測定した。
MDV-Bを生成するために、共培養293T-MDCK又はCOS-7-MDCK細胞を1μgの各プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの5〜7日後に調べると、共培養MDCK細胞は細胞変性作用(CPE)を示し、これはクローン化cDNAからの感染性MDV-Bウイルスの生成を示している。7つのプラスミドでトランスフェクトした細胞ではCPEは観察されなかった(表14)。ウイルス生成のためのDNAトランスフェクション系の効率を測定するために、トランスフェクションの7日後に細胞の上清をMDCK細胞で滴定し、ウイルス力価をプラークアッセイにより測定した。共培養293T-MDCKの上清のウイルス力価は5.0x106PFU/mlであり、COS7-MDCK細胞では7.6x106PFU/mlであった。
Figure 2009511073
一過性の共培養293T-MDCK(1,2)又は共培養COS7-MDCK細胞(3,4)を7つ又は8つのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの7日後に、細胞変性作用(CPE)を共培養MDCK細胞でモニターした。トランスフェクションの7日後、トランスフェクト細胞の上清をMDCK細胞で滴定した。PFU/mlのデータは、複数(例えば3つ又は4つ)のトランスフェクション実験の平均を示す。
B/Yamanashi/166/98プラスミドベクターを使用するトランスフェクション実験で、匹敵する結果が得られた。これらの結果は、トランスフェクション系が、8つのプラスミドからのB型インフルエンザウイルスの再現性あるde novo生成を可能にすることを示す。
B型組換えインフルエンザの遺伝子型判定
MDCK細胞でのその後の継代後、感染細胞の上清のRT-PCRを使用して、生成したウイルスの確実性を確認した。8つのセグメント全てについてセグメント特異的プライマーを使用したRT-PCRを行った(表12)。図5Aに示すように、すべてのセグメントについてPCR産物を生じた。PB1、HA、及びNSセグメントのPCR産物の直接配列決定は、分析した4つのヌクレオチドがプラスミドpAB121-PB1、pAB124-HA、及びpAB128-NS中で見出されるものと同じであることを明らかにした。これらの結果は、生成したウイルスが設計したプラスミドから生じたものであること、及び親ウイルスによる実験室での汚染の可能性を(陰性対照に加えて)排除することを証明した(図5B)。
同様に、B/Yamanashi/166/98プラスミドベクターによるトランスフェクション後、ウイルスを回収し、PAセグメントのヌクレオチド1280〜1290を含む領域を増幅した。配列決定は、回収したウイルスがプラスミド由来組換えB/Yamanashi/166/98に対応することを証明した(図5C及びD)。
rMDV-Bの表現型判定
MDV-Bウイルスは2つの特徴的表現型を示す:温度感受性(ts)と低温順応性(ca)。定義によれば、33℃と比較して37℃でのウイルス力価の2 log(またはそれ以上)の差はtsを規定し、caは33℃と比較して25℃でのウイルス増殖の2 log未満の差により規定される。初代ニワトリ腎(PCK)細胞を、親ウイルスMDV-Bとプラスミド由来のトランスフェクトウイルスとで感染させて、3つの温度でのウイルス増殖を調べた。
プラークアッセイのために、6ウェルプレート中のコンフルエントMDCK細胞(ECACC)を使用した。ウイルス希釈物を33℃で30〜60分インキュベートした。細胞に0.8%アガロース上層を重層した。感染細胞を33℃又は37℃でインキュベートした。感染の3日後、細胞を0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色し、プラークの数を測定した。
25、33、及び37℃でのウイルスサンプルのTCID50滴定により、ca-ts表現型アッセイを行った。このアッセイフォーマットは、異なる温度(25℃、33℃、37℃)で96ウェル細胞培養プレート中の初代雛腎細胞単層上でのインフルエンザウイルスの細胞変性作用(CPE)を調べることによりTCID50力価を測定する。このアッセイはプラーク形態(これは温度及びウイルス株により変動する)に依存しない。その代わりに、これはインフルエンザウイルスが複製しCPEを引き起こす能力にのみ依存する。1次組織のトリプシン処理により調製した初代ニワトリ腎(PCK)細胞懸濁物を、5%FCSを含有するMEM(Earl's)培地に懸濁した。>90%コンフルエンスの単層を調製するために、PCK細胞を96ウェル細胞培養プレートに48時間播種した。48時間後、PCK細胞単層を、5mM L-グルタミン、抗生物質、非必須アミノ酸を含有する血清無含MEM培地(表現型アッセイ培地(PAM)と呼ぶ)で1時間洗浄した。PAMを含有する96ウェルブロック中でウイルスサンプルの連続10倍希釈物を調製した。次に、希釈したウイルスサンプルを96ウェルプレート中の洗浄したPCK単層に塗布した。ウイルスサンプルの各希釈で、6ウェルの複製物を希釈ウイルスで感染させるために使用した。細胞対照としての非感染細胞は、各サンプルについて6ウェルの複製物として含めた。各ウイルスサンプルを2〜4の複製物において滴定した。25℃、33℃、及び37℃で規定の力価を有する表現型対照ウイルスを各アッセイに含めた。ウイルスサンプルのts表現型を決定するために、プレートを33℃及び37℃で5%CO2細胞培養インキュベーター中で6日間インキュベートした。ca表現型の特徴付けのために、プレートを25℃で10日間インキュベートした。ウイルス力価はKarber Methodにより計算し、Log10 平均(n=4)TCID50 力価/ml±標準偏差として報告した。図1〜3に示すウイルス力価の標準偏差は0.1〜0.3の範囲であった。33℃及び37℃でのウイルス力価の差を使用してts表現型を決定し、ウイルスの25℃及び33℃での力価の差を使用してca表現型を決定した。
プラスミド由来組換えMDV-B(recMDV-B)ウイルスは、予測されたように細胞培養物で2つの特徴的な表現型(caとts)を発現した。25℃で効率的複製をするca表現型は、PCK細胞でアッセイするとき、25℃と33℃での力価の差が2 log10以下であるとして関数的に測定される。親MDV-BとrecMDV-Bはcaを発現した。すなわち25℃と33℃での差は、それぞれ0.3と0.4 log10であった(表15)。ts表現型はまた、PCK細胞における2つの異なる温度での力価を観察することにより測定される。しかしこの表現型について、37℃での力価は33℃での力価より2 log10またはそれ以上小さくなければならない。親MDV-BとrecMDV-Bの33℃と37℃での差は、それぞれ3.4と3.7 log10であった(表15)。すなわち組換えプラスミド由来MDV-Bウイルスは、caとts表現型の両方を発現した。
この組換えウイルスは33℃で7.0 log10 TCID50/mlの力価と、37℃で3.3 log10 TCID50/mlの力価と、25℃で8.8 log10 TCID50/mlの力価を有した(表15)。すなわち、8つのインフルエンザMDV-Bゲノムセグメントプラスミドでのトランスフェクションに由来する組換えウイルスは、caとts表現型の両方を有する。
Figure 2009511073
実施例7:再集合B/Yamanashi/166/98ウイルスの製造
B型インフルエンザの主要な系統であるいくつかの異なる株のHA及びNAセグメントを、実質的に上記したように、増幅し、pAD3000にクローニングした。プライマーは、HA及びNAセグメントの同時RT-PCR増幅のために最適化した。セグメント4(HA)及びセグメント6(NB/NA)の非コード領域であるvRNAの末端領域の比較は、5'末端の20個の末端ヌクレオチドと3'末端の15個のヌクレオチドが、B型インフルエンザウイルスのHAとNA遺伝子との間で同一であることを明らかにした。RT-PCR用のプライマー対(下線の配列はB型インフルエンザウイルスに特異的である)Bm-NAb-1: TAT TCG TCT CAG GGA GCA GAA GCA GAG CA (配列番号87); Bm-NAb-1557R: ATA TCG TCT CGT ATT AGT AGT AAC AAG AGC ATT TT (配列番号88)を合成し、種々のB型インフルエンザ株からのHA及びNA遺伝子を同時に増幅するために使用した(図8)。B/Victoria/504/2000、B/Hawaii/10/2001、及びB/Hong Kong/330/2001のHA及びNA PCR断片を単離し、BsmBIで消化し、pAD3000に挿入した。これらの結果は、B型インフルエンザの主要な系統であるいくつかの異なる野生型ウイルスからのB型インフルエンザHA遺伝子とNA遺伝子とを含有するプラスミドの効率的生成のための、これらのプライマーの適応性を証明した。RT-PCR産物は、配列決定及び/又は発現プラスミドへのクローニングのために使用することができる。
種々のB型インフルエンザ系統から抗原を効率的に発現するB/Yamanashi/166/98(B/Yamagata/16/88様ウイルス)の有用性を証明するために、B/Yamanashi/166/98からのPB1、PB2、PA、NP、M、NSと、Victoria及びYamagata系統の両方を示す株からのHAとNAとを含有する再集合体(6+2再集合体)を生成した。一過的に共培養したCOS7-MDCK細胞を、B/Yamanashi/166/98を示す6つのプラスミド、並びにB/Victoria/2/87系統からの2つの株(B/Hong Kong/330/2001及びB/Hawaii/10/2001)及びB/Yamagata/16/88系統からの1つの株(B/Victoria/504/2000)のHA及びNAセグメントのcDNAを含有する2つのプラスミドで、上記方法に従って共トランスフェクトした。トランスフェクションの6〜7日後、新鮮なMDCK細胞で上清を滴定した。3つ全ての6+2再集合ウイルスは4〜9x106 PFU/mlの力価を有した(表16)。これらのデータは、B/Yamanashi/166/98の6つの内部遺伝子が、両B型インフルエンザ系統からのHA及びNA遺伝子セグメントを有する感染性ウイルスを効率的に生成することができることを証明した。
トランスフェクションの6日又は7日後に、共培養したCOS7-MDCK細胞の上清を滴定し、ウイルス力価をMDCK細胞でのプラークアッセイにより測定した。
Figure 2009511073
卵での野生型B/Yamanashi/166/98の複製により比較的高い力価が得られた。この性質がこのウイルスの6つの「内部」遺伝子の本来の表現型かどうかを調べるために実験を行った。この性質を評価するために、卵でほんのわずかに複製した野生型B/Victoria/504/2000の収量を、B/Victoria/504/2000のHA及びNAを発現する6+2再集合体の収量と比較した。野生型及び組換えB/Yamanashi/166/98に加えて、これらのウイルスを、それぞれ3又は4つの発育鶏卵に100又は1000 PFUで接種した。感染の3日後、尿膜腔液を卵から採取し、TCID50力価をMDCK細胞で測定した。6+2再集合体は尿膜腔液中でwt及び組換えB/Yamanashi/166/98株と同様の量のウイルスを産生した(図9)。B/Victoria/504/2000と6+2再集合体との力価の差は、約1.6 log10 TCID50(0.7〜2.5 log10 TCID50/ml、95%CI)であった。B/Victoria/504/2000と6+2再集合体との差は、3つの別の実験で確認した(P<0.001)。これらの結果は、B/Yamanashi/166/98の卵増殖性が、卵ではあまり複製されない株から通常発現されるHA及びNA抗原に付与できたことを証明した。
実施例8:ca B/Ann Arbor/1/66の弱毒化のための分子的根拠
MDV-Bウイルス(ca B/Ann Arbor/1/66)はヒトで弱毒化しており、フェレットで弱毒化表現型を示し、細胞培養物で低温順応性及び温度感受性表現型を示す。MDV-Bの内部遺伝子の推定アミノ酸配列を、BLAST検索アルゴリズムを使用してLos Alamosインフルエンザデータベース(flu.lanl.govのworld wide web)中の配列と比較した。MDV-Bに固有であり、他の株には存在しない8つのアミノ酸を同定した(表17)。PB1、BM2、NS1、及びNS2をコードするゲノムセグメントは、固有の置換残基を示さない。PA及びM1タンパク質はそれぞれ2つの固有の置換アミノ酸を有し、NPタンパク質は4つの固有の置換アミノ酸を有する(表17)。PB2中の630位に1つの置換アミノ酸が存在する(追加の株B/Harbin/7/94(AF170572)はまた630位にアルギニン残基を有する)。
これらの結果は、遺伝子セグメントPB2、PA、NP、及びM1がMDV-Bの弱毒化表現型に関与していることを示唆した。MDV-Aについて上記したものと同様の様式で、8プラスミド系を使用して、MDV-Aについて上記したように関連プラスミドを培養細胞に単に共トランスフェクトすることにより、ヘルパー非依存的に組換え及び再集合体(1つ及び/又は2つ、すなわち、7:1;6:2再集合体)を生成することができる。例えば、B/Lee/40からの6つの内部遺伝子を、MDV-B由来のHA及びNAセグメントと組合せて使用して、6+2再集合体を生成することができる。
Figure 2009511073
8つの固有のアミノ酸の差が特徴的なMDV-B表現型に何らかの影響を与えるかどうかを調べるために、8つ全てのヌクレオチド位置がwtインフルエンザの遺伝子相補体を反映するアミノ酸をコードする組換えウイルスを構築した。野生型アミノ酸(表17で示される)を反映するために、PA、NP、及びM1遺伝子の8つの残基を部位特異的突然変異誘発により変化させたプラスミドのセットを構築した。構築したプラスミドを共培養したCOS7-MDCK細胞に共トランスフェクトすることにより、8つの変化を有する組換え体(rec53-MDV-Bと呼ぶ)を生成した。MDCK細胞の共培養及び33℃での増殖により、トランスフェクションの6〜7日後に上清が高ウイルス力価を有することを確認した。トランスフェクトした細胞の上清を滴定し、MDCK細胞でのプラークアッセイと33℃及び37℃でのPCK細胞により力価を測定した。
図13に示すように、2つの異なる独立した実験で、recMDV-BはMDCK細胞とPCK細胞の両方でts表現型を発現した。8つ全てのアミノ酸変化を有するように設計した3重再集合ウイルスrecMDV-Bは非ts表現型を発現し、33℃と37℃での力価の差はPCK細胞でわずかに0.7 log10であった。この力価は、tsの定義において要求される特徴的な2 log10の差より小さく、recMDV-Bで観察された約3 log10の差より有意に小さかった。これらの結果は、PA、NP、及びM1タンパク質内の8つのアミノ酸の変化が、同種の及び異種の糖タンパク質を含む非ts野生型様ウイルスを生成するのに十分であることを示す。
次に、ts表現型への各遺伝子セグメントの寄与を判定した。野生型アミノ酸相補体とともにPA、NP、又はM遺伝子セグメントを含むプラスミド由来の組換え体を、DNA共トランスフェクト法により生成した。すべての単一遺伝子組換え体はMDCK細胞とPCK細胞において37℃で増殖制限を示し(図14)、これはどの単一遺伝子セグメントにおける変化もts表現型を復帰させることができなかったことを示す。さらに、NPとM又はPAとM遺伝子セグメントの両方を保持する組換えウイルスもts表現型を保持した。これに対して、PAとNP遺伝子セグメントの両方を有する組換えウイルスは、37℃と33℃での力価の差が2.0 log10またはそれ以下であり、rec53-MDV-Bと同様であった。これらの結果は、NP及びPA遺伝子がts表現型に大きく寄与することを示す。
NPタンパク質における4つのアミノ酸とPAタンパク質の2つのアミノ酸のすべてが非tsに寄与するかどうかを調べるために、改変NP及びPA遺伝子を有する3遺伝子及び2遺伝子組換え体を生成した(図15)。NPタンパク質中の2つのアミノ酸の置換A114→V114及びH410→P410により非ts表現型が得られた。核タンパク質中に単一の置換H410→P410を有するウイルスは、MDCKとPCKで非ts表現型を示した。一方、単一の置換A55→T55は、509位の単一置換と同様にts表現型を示した。これらの結果は、NP中のアミノ酸残基V114とP410が37℃での効率的増殖に関与していることを示す(図21A)。PA遺伝子中の2つのアミノ酸の寄与を詳細に調べるために、同様の方策を使用した。それぞれが、4つの野生型コンセンサスアミノ酸を有するNP遺伝子セグメントと、2つのコンセンサス野生型アミノ酸のうちの1つのみを有するPA遺伝子とを保持する、組換え体のセットを構築した。H497→Y497の置換はtsのままであり(図21B)、これはこの遺伝子座が表現型の発現にほとんど影響が無いことを示す。これに対して、M431のV431による置換はts表現型を復帰させた。これらの結果は、NP中のアミノ酸A114とH410及びPA中のM431が、MDV-Bの温度感受性の主要な決定因子であることを示す。
先の証拠に基づくと、ts表現型と弱毒化表現型とは高度に相関している。ca B/Ann Arbor/1/66ウイルスは感染フェレットの肺組織では検出されないが、鼻内感染後に肺で非弱毒化B型インフルエンザウイルスが検出され得ることは、十分に確立されている。ts表現型とatt表現型に同じ突然変異が基礎になっているかどうかを調べるために、以下の試験を行った。
トランスフェクション後に得られた組換えウイルスを発育鶏卵で継代してウイルスストックを製造した。9週齢のフェレットに、5.5、6.0、又は7.0 log10PFU/mlの力価を有するウイルスを鼻孔当たり0.5ml鼻内接種した。感染の3日後、フェレットを屠殺し、記述のようにその肺と鼻甲介を調べた。
フェレット(各群4匹)にrecMDV-B又はrec53-MDV-Bを鼻内感染させた。ウイルス感染の3日後、鼻甲介と肺組織とを採取し、ウイルスの存在を調べた。7.0 log10PFUのrecMDV-Bで感染させたフェレットの肺組織にはウイルスは検出されなかった。7.0 log10PFUでrec53-MDV-Bウイルスを感染させた4匹のうち3匹で、ウイルスが肺組織に検出された(この群の1匹は理由が不明)。より低用量(5.5 log10PFU/ml)のrec53-MDV-Bで感染させたフェレットの4つの肺組織のうちの2つで、ウイルスを肺組織から単離できた。すなわち、PA、NP、及びM1タンパク質中の8つの固有のアミノ酸の野生型残基への変化は、att表現型を非att表現型に変換するのに十分であった。
細胞培養のデータがPA及びNPがts表現型の主要な寄与因子であることを示したため、第2の実験では、フェレットにrec53-MDV-B(PA、NP、M)、rec62-MDV-B(PA)、NP rec71-MDV-B(NP)を6 log PFUで感染させた。rec53-MDV-Bで感染させた4匹のうち2匹は肺にウイルスが存在した。単一及び2重再集合ウイルスで感染させたフェレットの肺組織には、検出可能なレベルのウイルスは存在しなかった。このように、PA及びNPタンパク質中のアミノ酸に加えて、M1タンパク質がatt表現型に重要である。wtPA及びNPを有するウイルスはフェレットの肺で複製せず、これは弱毒化に関与する突然変異のサブセットがts表現型に関与していることを示す。
このように、B/Ann Arbor/1/66のts及びatt表現型は、せいぜい3つの遺伝子により決定される。PA、NP、及びM1タンパク質中の8つのアミノ酸の野生型残基への変換は、37℃で効率的に複製する組換えウイルスを生じた。同様に、B/Hong Kong/330/01からのHA及びNAセグメントを有するMDV-Bの6つの内部遺伝子を示す6+2再集合ウイルスはts表現型を示し、3重組換え体は非tsであった。
MDV-B骨格を使用する本発明者らの結果は、ts/att表現型を非ts/非att表現型に変換するのに6つのアミノ酸で十分であることを示した。従って本発明者らは、これらの6つの「弱毒化」残基の導入が、異種野生型(B/Yamanashi/166/98などの弱毒化B型インフルエンザウイルス)にこれらの生物学的性質を伝達するかどうかを調べることに興味を抱いた。
6つのアミノ酸変化PA(V431→M431、H497→Y497)、NP(V114→A114、P410→H410)、及びM1(H159→Q159、M183→V183)を有する組換え野生型B/Yamanashi/166/98(recYam)(7)と組換えウイルス(rec6-Yam)とを製造した。recYamは33℃に比較して37℃で0.17 log10の力価低下を示し、一方、rec6Yamは明らかにtsであり、37℃と33℃でのウイルス力価の差は4.6 log10であった。典型的な野生型B型インフルエンザウイルスについて予測されるように、recYamで感染させたフェレットからウイルスが効率的に回収された。rec6Yamをフェレットに接種すると、肺組織中にウイルスは検出されなかった(表18)。このように、MDV-Bからのts/att遺伝子座の伝達は、分岐ウイルスにts表現型及びatt表現型を伝達するのに十分である。
Figure 2009511073
A型インフルエンザ株について上記したように、上記残基の置換、例えば、PB2630(S630R)、PA431(V431M)、PA497(Y497H)、NP55(T55A)、NP114(V114A)、NP410(P410H)、NP509(A509T)、M1159(H159Q)、及びM1183(M183V)は、ts及びatt表現型に寄与する。従って、これらのアミノ酸置換の1つまたはそれ以上を有するB型インフルエンザウイルス株の人工的に操作した変異体はts及びatt表現型を示し、例えば弱毒化生インフルエンザウイルスワクチンの製造におけるマスタードナー株ウイルスとしての使用に適している。
実施例9:Vero細胞のエレクトロポレーションによる8つのプラスミドからのインフルエンザのレスキュー
すでに、組換えA型インフルエンザがVero細胞からレスキューできることが示唆されている(Fodor et al. (1999) Rescue of influenza A virus from recombinant DNA J. Virol. 73:9679-82; Hoffmann et al. (2002) Eight-plasmid system for rapid generation of influenza virus vaccine Vaccine 20:3165-3170)。報告された方法は脂質試薬を必要とし、A型インフルエンザの高複製能実験室株の単一株(A/WSN/33とA/PR/8/34)についてのみ記載されており、ワクチン製造に適した弱毒化生ウイルスの製造における用途は限定される。本発明は、エレクトロポレーションを使用してVero細胞から組換えインフルエンザウイルスを回収する新規方法を提供する。これらの方法は、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザウイルス株の両方の製造に適しており、血清無含条件下で増殖させたVero細胞からの例えば低温順応性、温度感受性、弱毒化ウイルスの回収を可能にし、これは、例えば鼻内ワクチン製剤で投与するのに適した弱毒化生ワクチンの調製を容易にする。ウイルス株にわたるその広い応用性に加えて、エレクトロポレーションは細胞基質のための増殖培地以外に追加の試薬を必要とせず、従って好ましくない汚染物質についての可能性が小さい。特にこの方法は、血清無含条件下での増殖に適応させたVero細胞(例えば、病原体を含まず、ワクチン製造に適したVero細胞分離株)を使用して組換え及び再集合ウイルスを生成するのに有効である。この特徴は、細胞基質へのDNAの商業的導入のための適切な方法として、エレクトロポレーションの選択を支持する。
エレクトロポレーションを、Vero細胞へDNAを導入するための種々の方法(非常に多くの脂質ベースの試薬を使用するトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、及びマイクロインジェクションを含む)と比較した。A型インフルエンザのレスキューのために脂質ベースの試薬を使用してある程度の成功は得られたが、エレクトロポレーションのみがVero細胞からB型インフルエンザならびにA型インフルエンザをレスキューすることが証明された。
エレクトロポレーションの1日前に、90〜100%コンフルエントのVero細胞を分け、ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)、L-グルタミン、必須アミノ酸、及び10% FBSを補充したMEM(MEM、10%FBS)に、T225フラスコ当たり9x106細胞の密度で接種した。翌日、細胞をトリプシン処理し、T225フラスコ当たり50mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に再懸濁した。次に細胞をペレット化し、T225フラスコ当たり0.5mlのOptiMEM1に再懸濁した。場合により、ヒト又は動物由来の成分を含まない特注のOptiMEM培地を使用することができる。例えば1:40希釈物を血球計算器で計測して細胞密度を測定後、5x106個の細胞を0.4cmのエレクトロポレーションキュベットに最終容量400μl OptiMEMIで加えた。次いで、MDV-A又はMDV-Bゲノムのいずれかを組み込んだ8つのプラスミドの等モル混合物からなる20μgのDNAを25μl以下の容量でキュベット中の細胞に加えた。細胞を静かにたたいて混合し、Capacitance Extender Plusを接続したBioRad Gene Pulser II(BioRad, Hercules, CA)で300ボルト、950マイクロファラドでエレクトロポレートした。時定数は28〜33msecの範囲にすべきである。
キュベットの内容物をたたいて静かに混合し、エレクトロポレーションの1〜2分後、1mlのピペットで0.7mlのMEM、10%FBSを加えた。細胞をピペットで数回上下させて穏やかに混合し、次にウェル当たり2mlのMEM、10%FBSを含有する6ウェルディッシュの2つのウェル間で分けた。次にキュベットを1mlのMEM、10%FBSで洗浄し、ウェル当たり最終容量約3.5mlで2つのウェル間で分けた。
別の実験で、血清無含増殖条件に適応させたVero細胞を、例えば、OptiPro (SFM) (Invitrogen, Carlsbad, CA)中で、OptiMEMIにおけるエレクトロポレーション後に細胞をこれらをその後のウイルスレスキューのために培養するOptiPro(SFM)中に希釈したことを除いて、上記の通りにエレクトロポレートした。
次に、エレクトロポレートした細胞を、導入したウイルスの複製と回収に適した条件下で、すなわち低温順応性マスタードナー株について33℃で増殖させた。翌日(例えば、エレクトロポレーションの約19時間後)、培地を除去し、細胞をウェル当たり3mlのOptiMEMI又はOptiPro(SFM)で洗浄した。ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strp)を含有するウェル当たり1mlのOptiMEMI又はOptiPro(SFM)を各ウェルに加え、培地を交換して上清を毎日採取した。上清をSPG中で-80℃で保存した。ウイルス製造のピークは、典型的には、エレクトロポレーションの2日後と3日後の間で観察された。
Figure 2009511073
実施例10:遺伝子送達のためのインフルエンザウイルスベクター系
本発明のベクターはまた、遺伝子送達系として、及び遺伝子治療のために使用することもできる。かかる用途のために、組換えインフルエンザウイルス、例えば外来タンパク質を発現する組換えA型又はB型インフルエンザウイルスを生成することが望ましい。例えば、B型インフルエンザウイルスのセグメント7はスプライシングされないため、これは異種核酸配列の挿入のための便利な遺伝子要素を提供する。このmRNAは、M1とBM2タンパク質とをコードする2つのオープンリーディングフレームを有する2つのシストロンを含む。BM2又はM1のオープンリーディングフレームは、目的の異種配列(例えば、増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードする遺伝子)により置換される。本発明のプラスミドベースのベクター系を使用して、M1-EGFP及びBM2のオープンリーディングフレームをコードするcDNAが2つの異なるプラスミドにクローニングされる。このオープンリーディングフレームはセグメント7の非コード領域に挟まれ、該領域は複製と転写に必要なシグナルを含有する。あるいは、2つのプラスミドが構築される(1つはM1 ORFを含有し、もう一方はEGFP-BM2を含有する)。生じた9つのプラスミドの共トランスフェクションにより、異種遺伝子配列を含有する組換えB型インフルエンザウイルスが生成される。同様に、EGFPをA型インフルエンザのNS1セグメントから発現させることができる。
典型的な「緑の」B型インフルエンザウイルスを、ウイルスアッセイ(例えばマイクロ中和アッセイ)の標準化のために使用することができる。プラスミドベースの技術とタンパク質発現の単純な検出(図2に図示されるように、EGFP由来の蛍光は顕微鏡によりモニタリングすることができる)との組合せは、タンパク質発現の最適化を可能にする。
実施例11:最近のH3N2インフルエンザワクチン株の遺伝的研究
典型的な好ましい実施形態において、弱毒化低温順応性A型生インフルエンザ/AA/6/60株は、A型インフルエンザ FluMist(商標)ワクチンのためのマスタードナーウイルス(MDV-A)である。MDV-Aの6つの内部遺伝子は、各ワクチン株に低温順応性(ca)、温度感受性(ts)、及び弱毒化(att)表現型を付与する。逆遺伝学を使用して、複数のアミノ酸が3つの遺伝子セグメントに分かれることが証明される(MDV-Aのts及びatt表現型の発現を制御する、PB1-K391E、E581G、A661T、PB2-N265S、及びNP-D34G)。6:2ワクチン株のプラスミドレスキューは、古典的な再集合技術より効率的なインフルエンザワクチンの生成を可能にする。
2003-04シーズンの不活性化インフルエンザワクチンはA/Panama/99(H3N2)抗原を含有し、このシーズンに流行したドリフトA/Fujian/411/02様H3N2株に対して血清陰性の小児では強い抗体応答を誘発することができなかった。図22と23を参照されたい。残念ながら、A/Fujian/411/02は発育鶏卵中で十分に複製せず、従って、ワクチン製造用に使用することが妨げられた。逆遺伝学技術を使用して、本発明者らは、HA及びNA活性のバランスの消失が卵でのプロトタイプA/Fujian/411/02株の複製の悪さの原因であることを示した。図29〜34を参照されたい。A/Fujianウイルスは、そのHA活性を上昇させるか又はそのNA活性を低下させることにより、卵での効率的な複製を獲得することができた。特に、本発明者らは、いくつかの異なる単一のアミノ酸置換が卵でのA/Fujian/411/02の複製をわずかに増強することができたが、いくつかの組合せははるかに強い増強を与えたことを証明する。図35〜38を参照されたい。この研究は、HA又はNA遺伝子に特定の変化を導入することにより、ウイルス抗原性に影響を与えることなく発育鶏卵及び/又は宿主細胞におけるインフルエンザウイルス増殖を改善する可能性を証明した。
卵で生存し得る株を製造するために、A/Fujian/411/02系統の関連するH3N2 6:2再集合体のセットを、MDCK細胞、発育卵、及びフェレットでの複製について評価した。A/Fujian/411/02は卵で増殖しなかったが、このウイルスの卵適応によりHAで2つのアミノ酸置換(H183LとV226A)が起き、これが発育卵中でウイルス増殖を可能にした。さらに、卵及びフェレット中でよく増殖した卵適応のA/Wyoming/03/2003株、及び卵中によく増殖したがフェレット中ではあまり増殖しなかったA/Sendai/H-F4962/02ワクチンを、配列について比較した。in vitro及びin vivoでの効率的なウイルス複製には、HA中のG186VとV2261、及び/又はNA中のQ119EとK136Qが必要であったことが判定された。それにも関わらず、これらのアミノ酸変化はウイルス抗原性には何の影響もなかった。他のインフルエンザウイルスに関し、卵で増殖可能な株(卵中で増殖することが困難/問題である株について)又は卵でより増殖可能な株(卵ですでに増殖できる株について)を製造するためにそのような技術を用いることが意図され及び期待される。
A/Panama/99からのHA残基のクラスターをA/Wyoming/03のものに変化させることにより、A/Panama/99からA/Fujian/02様株への抗原ドリフトの分子的基礎を試験した。図24を参照されたい。A/Panama/99又はA/Wyoming/03で免疫したフェレットからのフェレット血清を使用したHAI及びマイクロ中和アッセイにより、改変型6:2再集合体の抗原性を試験した。図25〜28を参照されたい。ほんのわずかな変化が抗原ドリフトを引き起こし、その他はウイルス複製に対してより劇的な影響を有することが分かった。すなわち、データで示されるように、ウイルス抗原性に影響を与えることなくワクチン収量を上昇させるために、ワクチン株を改変するのに適宜逆遺伝学が使用される。
材料と方法
ウイルス株、細胞、及び抗体:野生型(wt)A型インフルエンザウイルス株、A/Fujian/411/02(A/Fujian)、A/Sendai-H/F4962/02(A/Sendai)、及びA/Wyoming/03/03(A/Wyoming)を疾病管理センター(Center for Disease Control (Atlanta, GA))から得て、MDCK細胞又は発育鶏卵(卵)で増幅した。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ(MVA-T7)を発現する改変型ワクシニアウイルスAnkara株をCEK細胞中で増殖させた。HEp-2、COS-7、及びMDCK細胞(American Type Culture Collection、ATCCから得た)を5%ウシ胎児血清(FBS)を含有する最小必須培地(MEM)で維持した。A/Ann Arbor/6/60、A/Sendai-H/F4962/02、及びA/Wyoming/03/03に対するポリクローナル抗血清をニワトリで産生させた。A型インフルエンザのNPタンパク質に対するモノクローナル抗体をBioDesign(Saco, MI)から得た。
組換え6:2再集合体の生成:MDV-Aに再集合されたH3N2株のHA及びNA RNAセグメントを含有する組換え6:2再集合体を、既に記載されている方法に従って生成した。簡単に説明すると、MDV-Aの内部遺伝子を含有する6つのプラスミドのセットをHA及びNA発現プラスミドとともに、TransIT LT1試薬(Mirus, Madison, WT)を使用して共培養COS-7/MDCK細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、トランスフェクトした細胞培養物上清を採取し、新鮮なMDCK細胞と10日齢の発育鶏卵を感染させるのに使用した。感染したMDCK細胞を33℃で、80〜90%の細胞が細胞変性作用を示すまでインキュベートした。感染した発育鶏卵を33℃で3日間インキュベートし、尿膜腔液を採取し、SPG安定化剤(0.2Mショ糖、3.8mM KH2PO4、7.2mM K2HPO4、5.4mM グルタミン酸一ナトリウム)の存在下、-80℃で保存した。1xL15/MEM、1%アガロース、及び1μg/ml TPCK-トリプシンからなる上層下、33℃で3日間インキュベートしたMDCK細胞でのプラークアッセイにより、ウイルス力価を測定した。ニワトリ抗MDV-Aポリクローナル抗体を使用して免疫染色することにより、プラークを数えた。
HA及びNA発現プラスミドのクローニング:H3N2サブタイプのHA及びNAセグメントと6つの内部MDV-A RNAセグメントとを含有する組換え6:2再集合ウイルスを作製するために、SuperscriptIII逆転写酵素 (Invitrogen, Carlsbad, CA) 及びpfu DNA ポリメラーゼ (Stratagene, La Jolla, CA)、 鋳型として抽出されたvRNA、並びにH3及びN2特異的プライマーを使用したRT-PCRにより、wt A/Sendai-H/F4962/02とA/Wyoming/03/03のHA及びNA cDNAを増幅した。HA-AarI5 (5'cacttatattcacctgcctcagggagcaaaagcagggg3' 配列番号90)及びHA-AarI3 (5'cctaacatatcacctgcctcgtattagtagaaacaagggtgtt3' 配列番号91)プライマーを使用して、HAセグメントを増幅した。N2-AarI5 (5'cacttatattcacctgcctcagggagcaaaagcaggagt3' 配列番号92)及びN2-AarI3 (5'cctaacatatcacctgcctcgtattagtagaaacaaggagttt3' 配列番号93)プライマーを使用してNAセグメントを増幅した。HA及びNAプライマー対は、pAD3000 polI/polII発現プラスミド中に存在するBsmBI部位に適合可能になるように設計されたAarI制限部位を含有した。HA及びNA cDNAクローンを配列決定し、HA及びNAのRT-PCR増幅したcDNA産物の直接配列決定により得られたコンセンサスHA及びNA配列と比較した。クローニングプロセス中にcDNAクローンに導入された任意の突然変異をQuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)により補正した。
HAIアッセイ(インフルエンザウイルスのための赤血球凝集阻害アッセイ):試薬:0.5% cRBC(PBSで3回洗浄、2〜3日以内に使用することができる);96ウェルU底マイクロプレート;PBS(Ca及びMgを含まず);Tips;インフルエンザウイルス;血清サンプル、並びに高力価及び低力価の陽性対照血清調製物;HAアッセイによりウイルスのHA力価を測定する(HAIについて1:8のウイルス力価を使用。所与のウイルスのHA力価が1:256である場合、これを8で割る。すなわちウイルスを1:32に希釈する必要がある。各96ウェルプレートについて2.5mlのウイルスを調製する);フェレットサンプルについて適宜血清をRDE(受容体破壊酵素)で処理する;RDEは製造業者の説明の通りに調製する;RDEと血清サンプルとを1:4希釈で混合する。例えば100μlの血清を300μlのRDEに加える。ボルテックス混合し37℃インキュベーター中で一晩(18〜20時間)インキュベートする。混合物を56℃で45〜50分加熱する。非特異的アグルチニンについて血清をスクリーニングする;ピペットを3回上下させることにより25μlのRDE処理血清を25μlのPBSと混合する;50μlの0.5% cRBSをこの混合物とPBSのみを含有する対照ウェルとに加える;室温で30〜45分インキュベートする(+は部分的又は完全な非特異的赤血球凝集を示す、−は赤血球凝集が無いことを示す;非特異的cRBC凝集素は血清を濃縮(packed)RBCと20:1の比、4℃で1時間プレインキュベートし、次に2000rmp、4℃で10分遠心分離することにより除去することができる)。対照は典型的には以下を含む:cRBC細胞対照;ウイルス逆滴定:8ユニット/50μlウイルスを1:2から1:32まで2倍希釈して、使用されるウイルスが正しい濃度であることを確認する;陽性血清対照;力価既知の血清を試験血清サンプルで連続2倍希釈する。典型的なHAIプロトコールは以下を含むことができる:血清サンプルを連続2倍希釈する;各ウェルに25μlのPBSを加える;ウェル1Aに25μlのウイルスを加え(例えば1:2)、ピペットを3回上下させて混合する;ウェルAからウェルBに25μlを移し(例えば1:4)、上記のように3回混合し、ウェルHまで希釈を繰り返す(例えば1:256);ウイルス25μl(8ユニット/50μl)を希釈血清サンプルに加え、3回上下混合し、室温で30〜40分インキュベートする;50μlの0.5% cRBCを加え、ピペットを3回上下させて混合する;室温で30〜45分インキュベートする;血球凝集を記録する。HAI力価は、血球凝集を完全に阻害する血清の最大希釈として定義される。阻害が観察されない場合、力価は<1:4である。すべての我々が阻害を示す場合、力価は>1:256である。
一過的に発現されたNAタンパク質のノイラミニダーゼ活性の測定:NAタンパク質のノイラミニダーゼ活性を測定するために、wtNA及びその改変型誘導体をプラスミドトランスフェクト細胞から発現させた。NAタンパク質の高レベル発現を得るために、T7及びCMVプロモーターの下流に該遺伝子を挿入することにより、NA RNAをこれら2重プロモーターから転写した。10cmディッシュ中のHEp-2細胞をMVA-T7によりmoi 5.0で1時間感染させて、次にLipofectmine2000試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用してNAプラスミド5μgをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を35℃で48時間インキュベートした。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄後、細胞をディッシュからはがし、100μlの0.125M NaOAc(pH5.0)に溶解させた。トランスフェクト細胞中のノイラミニダーゼ活性を蛍光アッセイにより測定した。1回凍結−融解後、50μlの細胞溶解物を連続2倍希釈し、150μlの1.2mM 2'-(4-メチルウンベリフェリル)-α-D-N-アセチルノイラミン酸(MU-NANA)基質(Sigma, St. Louis, MO)とともに37℃で1時間インキュベートし、75μlの1.0Mグリシン(pH5.5)で反応を停止させた。放出された発色団4-メチルウンベリフェロンの蛍光レベルをSpectroMAXプレートリーダーで362nmで測定した。トランスフェクト細胞中で発現された各NAタンパク質のレベルを、ニワトリ抗A/Wyoming抗血清を使用したウェスタンブロッティングによりモニターした。100μl中に6.0 log10PFUを含有するA/Wyoming及びwtA/Sendaiウイルスのノイラミニダーゼ活性も蛍光アッセイにより測定した。
MDCK細胞における6:2再集合体の受容体結合及び複製:組換え6:2再集合体のHA受容体結合と増殖速度をMDCK細胞で測定した。6ウェルプレート中のMDCK細胞を6:2 A/Fujian、A/Sendai、A/Wyoming、及び2つの改変型組換えウイルスによりmoi 1.0で感染させた。33℃又は4℃で30分吸着後、感染細胞をPBSで3回洗浄するか、又は1μg/ml TPCK-トリプシンを含有する3mlのOptiMEMIを直接重層し、33℃でインキュベートした。感染の6時間後、1セットの感染プレートを1%パラホルムアルデヒドにより室温で15分固定し、PBS中0.2%Triton X-100で15分間透過性にし、次に抗NPモノクローナル抗体を使用して免疫蛍光分析を行った。ORCA-100デジタルカメラで撮った細胞画像をCompix画像捕捉および動的強度分析ソフトウェア、バージョン5.3(Cranberry Township, PA)により分析して、感染細胞の割合を計算した。別のセットのプレートを33℃でインキュベートした。種々の時間間隔で、250μlの培養上清を採取し、SPGの存在下で-80℃で保存後、ウイルス滴定を行った。各アリコートを取りだした後、等量の新鮮な培地を細胞に加えた。これらのアリコート中のウイルス力価を、33℃でのMDCK細胞のプラークアッセイにより測定した。
これらのウイルス間での結合の差がMDCK細胞におけるウイルス増殖速度に影響を与えたかどうかを調べるために、感染MDCK細胞を33℃でインキュベートし、ウイルス滴定のために培養上清を種々の時間に採取した。33℃で吸着すると、6:2 A/Fujianはより遅い増殖速度と低力価とを有し(図2)、HA-V1861226又はHA-L183A226を有するA/Fujian、6:2 A/Sendaiは、6:2 A/Wyomingと同様の挙動をした。4℃で吸着を行うと、6:2 A/Fujianならびに6:2 A/Sendaiはより遅い増殖速度を有した。6:2 A/Wyomingと2つのA/Fujian変異体は同様に増殖した。これらの結果は、ウイルス結合アッセイと一致したが、洗浄工程により両方の温度でA/Fujianの効率的感染が低下した。
6:2組換えウイルスの抗原性:各ウイルスの抗原性を、フェレット抗A/Sendai及び抗A/Wyoming血清を使用したヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイにより分析した。連続2倍希釈したフェレット抗血清の25μlのアリコートを、4HAユニットの6:2再集合ウイルスを含有する25μlのウイルスと共に37℃で1時間インキュベートし、次に50μlの0.5%七面鳥赤血球(RBC)と25℃で45分インキュベートした。HAI力価は、血球凝集を阻害した最も高い血清希釈率の逆数として定義した。
6:2 A/Fujian、A/Sendai、およびA/Wyomingワクチン株の生成
野生型(wt)A型インフルエンザウイルス株、A/Fujian/411/02、A/Sendai-H/F4962/02、およびA/Wyoming/03/03は疾病管理センター(Atlanta, GA))から得て、MDCK細胞又は発育鶏卵中で1回増幅した。表20に示すように、A/Fujianは細胞培養で3回だけ継代し、A/SendaiとA/Wyomingは卵で11回継代した。これらの3つの株のHA及びNA配列を、これらのウイルスから抽出したvRNAを使用したRT-PCR産物の配列決定により決定した。これらの3つのH3N2株のHA及びNA配列の差を表1に列記する。A/SendaiはそのHA1アミノ酸配列がA/Fujianと同じであったが、NA配列は119、146、および347位の3つのアミノ酸で異なっていた。A/WyomingはA/Fujianと同じNA配列を有したが、HA1では4つのアミノ酸でA/FujianとA/Sendaiとは異なっていた。さらにA/Sendai及びA/Wyomingも、HA2においてGly-150の代わりにGlu-150を有した。MDCK細胞で1回増幅後、wtA/FujianのHA1中の183残基はHis-183からLeu-183に突然変異し、His-183を有するwtA/Fujianウイルスを単離することは困難であった。これはHis-183を有するウイルスがin vitroでの増殖の利点を有することを示す。
これらの3つのwtウイルスはMDCK細胞中で増殖が異なり、wtA/Fujian、wtA/Sendai、及びwtA/Wyomingについてそれぞれ6.1、8.1、及び6.7 log10PFU/mlの力価に達した。wtA/Fujianは卵中で複製が悪く、4.1 log10PFU/mlの力価に達した(表20)。卵から単離されたウイルスはHA中にH183Lの変化を有した。これに対してwtA/SendaiとwtA/Wyomingは卵中でよく増殖し、それぞれ9.0及び8.9 log10PFU/mlの力価を有した。
これらのH3N2株のHA及びNAセグメントが卵及び細胞におけるウイルス複製を制御したことを確認するために、HA及びNA遺伝子セグメントを低温順応性A/Ann Arbor/6/60株(弱毒化生インフルエンザFluMistワクチンのためのマスタードナーウイルス(MDV-A))の内部遺伝子セグメントと再集合させて、3つの6:2再集合ウイルスを生成した。これらの3つのウイルスの複製をMDCK細胞と発育鶏卵とで評価した。6:2 A/Fujian(6.2 log10PFU/ml)は、MDCK細胞で6:2 A/Sendai(7.1 log10PFU/ml)やA/Wyoming(7.0 log10PFU/ml)より低い力価を示した。wtA/Fujianと同様に、6:2 A/Fujianは発育鶏卵中での複製が悪く、4.1 log10PFU/mlの力価であった。6:2 A/Sendai及びA/Wyomingは、それぞれ8.7及び8.1 log10PFU/mlの高力価まで複製した。すなわち、wtHA及びNA遺伝子セグメントのMDV-Aへの伝達は、各ウイルスが卵中で複製する能力を変化させなかった。
Figure 2009511073
ノイラミニダーゼ活性とウイルス複製に対するNA中のアミノ酸変化の影響
A/FujianはA/SendaiとNA中の3つのアミノ酸で異なり(E119Q、Q136K、及びH347Y)(表20)、これらの変化の1つまたはそれ以上が、A/Sendaiを発育鶏卵中でA/Fujianより高力価まで複製することを可能にしたと仮定する。E119のG、D、A、又はV残基による置換は、ノイラミニダーゼ活性を低下させたいくつかの抗ノイラミニダーゼ薬剤耐性株で報告されいる。E119Q、又はNA中の他の2つの変化のいずれかが、A/FujianのNA活性及び発育鶏卵中で複製する能力に影響を与えるかどうかを調べるために、A/Fujian NA発現プラスミドに単一のおよび2重の置換突然変異を導入し、トランスフェクトHEp-2細胞中のNA活性を測定した。さらに、A/Fujian NA中に突然変異を有する組換え6:2再集合ウイルスも回収し、MDCK細胞及び卵におけるその増殖を比較した(表21)。A/Fujian(E119Q136H147)はA/Sendai(Q119K136Y147)と比較して約80%高いNA活性を有した。単一のQ119突然変異は66%のNA活性を有し、Y347変化はNA活性に最小の影響を有したが、K136はわずかに25%の活性を有した。2重突然変異K136Y347、Q119Y347、及びQ119K136はNA活性をA/Fujianのそれぞれ29%、52%、及び25%のレベルで低下させた。これらのデータは、これらの3つのNA残基がK136>Q119>Y347の順序でNA活性に影響を与えたことを示す。
NA突然変異体のNA活性と発育鶏卵におけるウイルス複製との相関を調べた(表21)。6つの改変型ウイルスはMDCK細胞中でよく複製し、力価が6.2〜6.9 log10PFU/mlに達することを示したが、卵中では複製が有意に異なった。A/Fujianの66%及び99% NA活性を有したFJ-Q119及びFJ-347は卵中で増殖できなかった。25%NA活性を有するFJ-K136は卵中で4.8 log10PFU/mlの力価まで増殖することができたが、A/Sendai(8.8 log10PFU/ml)より4.0 log10PFU/ml低かった。予想外に、K136Y347はin vitroでNA活性を有意に低下させたが、これらの2つの突然変異(FJ-K136Y347)を保持する組換えウイルスは発育鶏卵中で複製できなかった。NA活性の52%を有したQ119Y347は卵中で4.5 log10PFU/mlの力価まで複製した。A/Sendaiよりわずかに高いNA活性を有するQ119K136は6.2 log10PFU/mlの力価まで複製したが、それでもA/Sendaiより2.6 log10低かった。これらの結果は、A/FujianとA/Sendaiとの間で異なった3つのNA残基のそれぞれがウイルス複製に異なる影響を与えたことを示した。いくつかのNA突然変異はNA活性をA/Sendaiのものに近いレベルまで低下させることができたが、Q136KとE119Q変化のみが発育鶏卵におけるウイルス複製を有意に改善させることができた。Q119K136の2重突然変異は卵中でA/Sendaiウイルスと同程度には効率的に複製しなかったため、Y347残基もまた卵におけるウイルス複製に影響を与えるかも知れない。
Figure 2009511073
ウイルス複製に対するHA残基の影響
A/Fujianとは異なるA/Wyoming/03/03中の4つのHA1残基の変化を、ウイルス複製におけるその役割について調べた。単一および複数の置換突然変異をA/Fujian HA cDNAに導入し、改変型HAプラスミドをいずれかのA/Fujian NAとともにMDV-Aに導入した。すべての6:2再集合ウイルス突然変異体はMDCK細胞中でよく複製したが、発育鶏卵中での増殖は異なっていた(表33)。A/Fujian HAを有する6:2再集合体(T128G186S219V226)は卵中で複製できなかった。単一のT128A変化は卵中のウイルス増殖を改善しなかった。しかし単一のG186V又はV226I変化は卵中でのウイルス複製を増加させた。HA中の2重G186V及びV226I変化は卵中で効率的に複製した。残基128及び/又は219での追加の置換はウイルス複製を有意に上昇させなかった。すなわち最小の2つのG186V及びV226I変化が6:2 A/Fujianを発育鶏卵中で効率的に増殖することを可能にした。
Figure 2009511073
6:2 A/Fujian/411/02の適応
6:2 A/Fujian株が発育鶏卵中で増殖できるように適応できるかどうかを調べるために、ウイルスをMDCK細胞中で増幅し、次に卵で継代した(表23)。3.0 log10PFUのウイルスを卵に接種すると、採取した尿膜腔液中に2.0 log10PFU/ml未満のウイルスが検出された。この物質の継代後、感染性ウイルスは回収できなかった。第2の継代実験中に、発育鶏卵に接種されたウイルスの量は5.9 log10PFUに増加した。採取した尿膜腔液(FJ-EP1)中に3.9 log10PFU/mlの力価が検出され、卵でさらに継代を行うと6.2 log10PFU/mlまでウイルス力価を上昇させた(FJ-EP2)。卵でさらに継代すると(FJ-EP3)ウイルス力価は8.2 log10PFU/mlまで上昇した。FJ-EP2ウイルスの配列分析は、HA RNAセグメント中のnt625でのAからUへの突然変異を明らかにし、これはHAタンパク質のH183L変化を引き起こした。さらに分析すると、この変化がまた、MDCK細胞中でのウイルス増幅中にも起きることが示された。H183L突然変異はまた、上記したように、wtA/Fujian HAにおいてMDCK及び卵中でのその複製中にも見られた。V226A置換を引き起こすHAのnt754でのUからCへのさらなる突然変異が、FJ-EP3増幅ウイルス中で見られた(表23)。NAセグメントでは変化は検出されなかった。
HA中のH183LとV226A突然変異が卵中の6:2 A/Fujianの複製上昇の原因かどうかを確認するために、H183LとV226AとをA/Fujian HAに単独で又は組合せて導入した。3つの組換えウイルスが得られ、これらはFJ-H183Lについて7.4 log10PFU/ml、FJ-V226Aについて7.9 log10PFU/ml、そしてFJ-H183L/V226Aについて8.4 log10PFU/mlの力価まで増殖した(表23)。従って、H183LとV226Aは、発育鶏卵中のA/Fujianウイルスの複製の改善に独立して寄与した。
Figure 2009511073
組換えウイルスの受容体結合性及び複製
上記研究から、A/FujianのNA活性を低下させたNA変化が、このウイルスが卵で増殖するのに十分であることが示された。一方、HA変化(G186VとV226I又はH183LとV226A)がA/Fujianのより高いNA活性を補うために受容体結合活性を上昇させたのかもしれない。A/FujianのHAタンパク質における変化がその受容体結合活性を上昇させたかどうかを調べるために、HA-V186I226変化を有する6:2 A/Fujian及びHA-L183A226変化を有する卵適応性6:2 A/Fujianの吸着を、6:2 A/Fujian、A/Sendai、及びA/Wyomingと比較した。各ウイルスをmoi 1.0でMDCK細胞に4℃又は33℃で30分吸着させ、接種物を取り出し、感染細胞を3回洗浄したか又は洗浄をしなかった。33℃で6時間インキュベート後、感染細胞%を抗NP抗体を使用した免疫蛍光分析により測定した。図36に示すように、4℃で吸着を行った時、6:2 A/Fujian及びA/Sendaiは26〜27%の細胞を感染させたが、ウイルスの大部分は洗浄工程により容易に除去された。33℃では、洗浄により6:2 A/Fujianウイルスの感染は大幅に低下した(37.8%に対して6.2%)が、6:2 A/Sendaiの感染には有意な影響は無かった(51.7%に対して42.8%)。これに対して、HA-V186I226又はHA-L183A226を有する6:2 A/Fujian、6:2 A/Wyomingは、細胞が4℃又は33℃で吸着されても及び洗浄工程有りでも無しでも、同様の感染率を有した。これらのデータは、A/Fujian及びA/Sendai HAが、4℃で結合したウイルスが細胞から容易に洗い流され得る程度の、低い結合親和性を有したことを示した。結合とウイルス侵入速度は33℃でより速く、すなわち洗浄工程は6:2 A/Sendaiウイルス感染に対してごくわずかな影響しかなかった。しかし、結合した6:2 A/Fujianの大部分は、そのより高いNA活性が33℃での効率的なウイルス結合を妨害したため、同様の条件下で洗い流された(データは示していない)。
組換えウイルスの抗原性
改変型HA及びNA残基を有するウイルスがウイルス抗原性に影響を与えるかどうかを調べるために、フェレット抗A/Wyoming血清および抗A/Sendai血清を使用して血球凝集阻害アッセイ(HAI)を行った(表24)。抗A/Wyoming又は抗A/Sendaiフェレット血清は、6:2 A/Fujian又はA/Sendaiウイルスで測定した時、同様のHAI力価を有した。6:2 A/Wyomingウイルスでわずかに高いHAI力価が検出され、これはおそらく赤血球上の細胞受容体へのA/Wyoming HAのより強い結合によると思われる。2つの改変型ウイルス(A/Fujian HA-V186I226及びA/Fujian HA-L183A226)は、いずれかの血清で測定するとA/Wyomingと同様のHAI力価を有した。これらの結果は、A/SendaiとA/Wyoming及びこの研究で作製した改変型HAウイルスとの間のアミノ酸の差がウイルス抗原性を変化させなかったことを示した。
Figure 2009511073
追加の試験:ウイルスが細胞受容体に結合する能力を上昇させるHAタンパク質中のG186VとA196Tは卵におけるウイルス複製を上昇させる
上記したように、発育鶏卵中でのA/Fujian/411/02(A/Fujian)の弱い複製は、HA分子の受容体結合領域中のアミノ酸残基を置換することにより改善することができる。このアプローチが最近のH3N2株に適用できるかどうかを試験するために、本発明者らはA/Singaore/21/04(A/Singaore、CDC, Atlanta, GAから得られた)(これは、抗原性がワクチン株A/California/7/04(A/California)に関連している)の卵中で増殖する能力を試験した。A/Wyoming/03/03(A/Wyoming、卵適応A/Fujian様株)、A/California、およびA/SingaoreのHA及びNAをRT-PCR増幅し、pAD3000発現プラスミドにクローニングした。低温順応性A/Ann Arbor/6/60(FluMist(登録商標)ワクチンのA型インフルエンザワクチン成分のマスタードナーウイルス(MDV-A))の6つの内部遺伝子により6:2再集合ウイルスを作製した。これらの株のHA受容体結合領域のアミノ酸残基を比較し、ウイルス複製と抗原性に対するこれらの影響を評価した。
A/Singaore、A/California、およびA/WyomingのHA配列と複製性の比較
これらのH3N2株のHA受容体結合部位中のアミノ酸残基の差を表25に要約する。卵中でのウイルス複製に決定的に重要であることが示された残基I266は、これらのすべての株で同じである。しかし、A/Singaoreは2つの位置(186と196)でA/CaliforniaやA/Wyomingと異なる。
3つ全てのウイルスはMDCK細胞中で同様の増殖性を有し、約7.0 log10PFU/mlの力価に達した。A/CaliforniaとA/Wyomingの両方が卵でよく増殖した(約9.0 log10PFU/ml);しかし、A/Singaoreは卵中の増殖が弱く、わずかに2.1 log10PFU/mlの力価であった(表1)。低温順応性A/Ann Arbor/6/60株(MDV-A)からの6つの内部遺伝子とこれらの3つのwtH3N2株からのHA及びNAとを含有する6:2再集合体は、MDCKと卵とで対応するwtと同様に複製し(表25)、これはMDV-AへのwtHA及びNA遺伝子セグメントの伝達はその複製を変化させなかったことを示す。
Figure 2009511073
ウイルス複製に対するHA残基の作用
A/Singaore、A/Wyoming、及びA/Californiaとで異なるHA-186とHA-196残基とを、ウイルス複製におけるその役割について調べた。これらの2つの部位の1つにおける置換突然変異をA/Singaore HA cDNAに導入し、改変型HAプラスミドをA/Singaore NAプラスミドとともにMDV-Aに導入した。いずれかの部位に置換突然変異を有する回収した6:2再集合ウイルスは発育鶏卵中で効率的に複製して、それぞれ8.0及び8.5 log10PFU/mlの力価に達した(表25)。すなわち、186又は196部位における単一のアミノ酸変化は、6:2 A/Singaoreを卵中で効率的に増殖させるのに十分であった。
MDCK細胞における6:2再集合体の受容体結合効率
186及び196残基の両方ともHA受容体結合領域中に存在する(Weis et al., Nature 1988;333:426-31を参照)ため、G186V又はA196Tを含有する6:2再集合ウイルスのMDCK細胞への結合をwtウイルスと比較した。6ウェルプレート中のMDCK細胞をwtウイルス又は2つの改変型組換え体によりmoi 1.0、4℃で30分感染させ、PBSで3回洗浄し、2mlのOptiMEMIを重層し、33℃で6時間インキュベートした。次いで、細胞単層を1%パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中0.2% TritonX-100で透過性にし、抗NPモノクローナル抗体で免疫染色した。感染細胞%を計算し、結合効率として表した。A/Wyoming(56%)又はA/California(60%)と比較して、A/Singaoreは5%の非常に弱い結合効率を有した。A/Singaoreと比較して、2つの改変型ウイルス(A/Sing-G186V又はA/Sing-A196T)は有意に高い結合効率(55〜60%)を有した。
組換えウイルスの抗原性
改変型HA及びNA残基を有するウイルスがウイルス抗原性に影響を与えたかどうかを調べるために、フェレット抗A/Wyoming血清および抗A/California血清を使用して血球凝集阻害アッセイ(HAI)を行った(表26)。連続2倍希釈したフェレット抗血清の25μlのアリコートを、25μl(4HAU)の6:2再集合ウイルスと共に37℃で1時間インキュベートし、次に50μlの0.5%七面鳥赤血球と共に25℃で45分インキュベートした。HAI力価は、血球凝集を阻害した最も高い血清希釈率として定義した。HAIアッセイに基づいて、A/SingaoreはA/Californiaに密接に関連することが示されたが、A/Wyomingとは2倍異なっていた。2つの改変型ウイルス(A/Sing-G186V及びA/Sing-A196T)は、いずれかの血清を使用するとA/Singaore又はA/Californiaと同じHAI力価を有した。これらの結果は、この試験で作製したHA改変型ウイルスがウイルス抗原性を変化させなかったことを示した。
Figure 2009511073
実施例12:B/Ann Arbor/1/66インフルエンザウイルスの低温順応性表現型を制御する遺伝子座の決定
低温順応性(ca)B/Ann Arbor/1/66は、弱毒化生B型インフルエンザFlumist(登録商標)ワクチンのマスタードナーウイルス(MDV)である。ca B/Ann Arbor/1/66由来の6つの内部遺伝子と、流行している野生型株からのHA及びNA表面糖タンパク質とを有する6:2 B型インフルエンザワクチンは、低温順応性(ca)、温度感受性(ts)、及び弱毒化(att)表現型により特徴付けられる。配列分析は、MDV-Bが野生型B型インフルエンザ株には見られないPB2、PA、NP、及びM1タンパク質中の9つのアミノ酸を含有することを明らかにした。本発明者らは、PA(M431V)とNP(A114V、H410P)中の3つのアミノ酸がts表現型を確定し、これらの3つのts遺伝子座に加えて、M1中の2つのアミノ酸(Q159H、V183M)がatt表現型を付与することを確定した。
ca表現型の分子的基礎を理解するために、プラスミドベースの逆遺伝学系を使用して、これらの9つのMDV-B特異的アミノ酸のca表現型への寄与を評価した。組換えMDV-Bはニワトリ胚腎(CEK)細胞中で25℃と33℃で効率的に複製した。これに対して、9つの野生型アミノ酸を含有する組換え野生型B/Ann Arbor/1/66は25℃で効率的に複製しなかった。MDV-B ca表現型を完全に復帰させるのに、全部で5つの野生型アミノ酸[PB2中の1つ(R630S)、PA中の1つ(M431V)、及びNP中の3つ(A114V、H410P、T509A)]が必要であると確定された。さらに、MDV-B又は6:2 ワクチン株のM1タンパク質中の2つのアミノ酸(Q159H、V183M)を野生型アミノ酸で置換すると、CEK細胞において33℃でのウイルス複製が大幅に上昇したが25℃では上昇しなかった;V183M変化はこの変化に対してより大きな影響を有した。
明瞭化と理解のために本発明をある程度詳細に説明したが、本開示を読むことにより、本発明の範囲を逸脱することなく形態や詳細に種々の変更が可能であることは当業者に明らかであろう。例えば、上記全ての方法及び装置は種々の組合せで使用することができる。本出願で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、又は他の文献は、各刊行物、特許、特許出願、又は他の文献がすべての目的において個別に参照されるのと同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特に以下の特許出願が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:米国仮特許出願No. 60/574,117(2004年5月24日出願); 60/578,962(2004年6月12日出願); 60/631,892(2004年12月1日出願); 60/643,278(2005年1月13日出願); 及び U.S. 60/657,372(2005年3月2日出願); 60/532,164(2003年12月23日出願); 60/375,675(2002年4月26日出願); 60/394,983(2002年7月9日出願); 60/410,576(2002年9月12日出願); 60/419,802(2002年10月18日出願); 60/420,708(2002年10月23日出願); 60/457,699(2003年3月24日出願)、及び60/462,361(2003年4月10日出願); 米国出願 Nos.: 11/018,624(2004年12月23日出願); 10/423,828; PCT出願No. US03/12728(2003年4月25日出願); US04/42669(2004年12月23日出願);及びUS05/017734(2005年5月20日出願)。
図1は、pAD3000プラスミド(配列番号94)の図を示す。 図2は、感染細胞の顕微鏡写真を示す。 図3は、プラスミドトランスフェクションからのrMDV-Aと6:2 H1N1再集合ウイルスの遺伝子型分析を示す。 図4は、B型インフルエンザウイルスの製造のための8プラスミド系の図を示す。 図5A及びBは、RT-PCRによる組換えMDV-Bウイルスの特徴付けを示す。 図5C及びDは、RT-PCRによる組換えB/Yamanashi/166/98の特徴付けを示す。 図6は、GenBankフォーマットのpAD3000の配列を示す。 図6-1の続き。 図7は、MDV-Bと8つのプラスミド(配列番号95〜102)との配列アライメントを示す。 図7-1の続き。 図7-2の続き。 図7-3の続き。 図7-4の続き。 図7-5の続き。 図7-6の続き。 図7-7の続き。 図7-8の続き。 図7-9の続き。 図7-10の続き。 図7-11の続き。 図7-12の続き。 図7-13の続き。 図7-14の続き。 図7-15の続き。 図7-16の続き。 図7-17の続き。 図7-18の続き。 図7-19の続き。 図7-20の続き。 図7-21の続き。 図7-22の続き。 図7-23の続き。 図7-24の続き。 図7-25の続き。 図7-26の続き。 図7-27の続き。 図7-28の続き。 図7-29の続き。 図7-30の続き。 図8は、B型インフルエンザ株のHA及びNAセグメントの同時増幅に由来するRT-PCR産物を示す。 図9は、組換え及び再集合ウイルスの相対力価を示す棒グラフである。 図10は、許容及び制限温度下での再集合ウイルスの相対力価(温度感受性)を示す棒グラフである。 図11は、温度感受性に相関する特異的突然変異(ノックイン)を組み込んだ再集合ウイルス(左のパネル)の図解と、許容及び制限温度での相対力価(温度感受性)(右のパネル)を示す。 図12は、ミニゲノムアッセイにおけるts突然変異の測定を示す。A. HEp-2細胞をPB1、PB2、PA、NP、及びpFlu−CATでトランスフェクトし、33又は39℃で18時間インキュベートし、細胞抽出物をCATレポーター遺伝子発現について分析した。B. プライマー伸長アッセイによるCAT mRNA発現。 図13は、PA、NP、及びM1タンパク質における野生型残基との3遺伝子組み換え体の略図を示す。 図14は、1遺伝子及び2遺伝子組換えウイルスの増殖の表を示す。 図15は、非ts表現型に対応する核タンパク質のアミノ酸残基の表を示す。 図16は、組換えPR8突然変異体の略図を示す。PB1及び/又はPB2遺伝子に導入された突然変異は黒点で示される。 図17は、33℃と39℃の相対力価を示す棒グラフである。 図18は、種々の温度でのPR8突然変異体のプラーク形態を示す顕微鏡写真である。MDCK細胞を記載のようにウイルスでトランスフェクトし、33、37、及び39℃で3日間インキュベートした。免疫染色してウイルスプラークを視覚化し、写真を撮った。 図19は、許容及び非許容温度でのタンパク質合成を示す。MDCK細胞を記載のようにウイルスでトランスフェクトし、33又はび39℃で一晩インキュベートした。放射標識したポリペプチドをSDS-PAGEで電気泳動し、オートラジオグラフィー分析した。ウイルスタンパク質HA、NP、M1、及びNSを示す。 図20Aは、MDCK細胞における複製と比較した、Per.C6細胞におけるMDV-AとMDV-Bの示差的複製を示す線グラフである。 図20Bは、Per.C6細胞におけるMDV-A 単一遺伝子再集合体の示差的複製を示す線グラフである。 図21は、再集合ウイルスの示差的複製を示す棒グラフである。灰色の四角は野生型アミノ酸残基を示す。点線は2.0 log10のシャットオフ温度(ts)を示す。 図22は、A/Panama/99(H3N2)とA/Fujian/411/02-like(H3N2)の抗原性の比較を示す。 図23は、A/Panama/99(H3N2)とA/Fujian/411/02-like(H3N2)の抗原性の比較を示す。 図24は、A/Panama/99からA/Fujian/02-likeへの抗原連続変異についての分子的基礎を示す。 図25は、A/Panama/99からA/Fujian/02-likeへの抗原連続変異についての分子的基礎を示す。 図26は、A/Panama/99からA/Fujian/02-likeへの抗原連続変異についての分子的基礎を示す。 図27は、A/Panama/99からA/Fujian/02-likeへの抗原連続変異についての分子的基礎を示す。 図28は、A/Panama/99からA/Fujian/02-likeへの抗原連続変異についての分子的基礎を示す。 図29は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図30は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図31は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図32は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図33は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図34は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図35は、発育卵におけるウイルス増殖を上昇させるための、株の詳細な改変を示す。 図36は、組換えウイルスのHA受容体結合親和性を示す。6:2 A/Fujian、A/Sendai、A/Wyoming、及びV186とI226又はL183とA226変化を有するA/Fujian変異体を、MDCK細胞にmoi 1.0、4℃又は33℃で30分吸着させ、感染細胞を3回洗浄(+)したか又は処理しなかった(−)。33℃で6時間のインキュベーション後、細胞を免疫蛍光染色のために処理した。各画像で示された感染細胞の%(平均±SD)は、6つの画像の平均である。 図37は、MDCK細胞における組換えウイルスの増殖速度を示す。MDCK細胞をmoi 1.0、33℃又は4℃、30分で感染させ、PBSで3回洗浄した。感染細胞を33℃で記載の時間間隔でインキュベートし、培養物上清を収集し、プラークアッセイによりウイルス量を測定した。 図38は、H3N2サブタイプのHA及びNA中の受容体結合部位を示す。シアル酸(SIA)結合部位との関連でHA受容体結合親和性を上昇させ、NA酵素活性を低下させることが示された残基を示す。WebLab ViewerLite 3.10(Accelrys, San Diego, CA)を使用して、2BATに基づいてNAモノマーをモデル化し、5HMGを使用してHAモノマーをモデル化した。

Claims (18)

  1. 再集合インフルエンザウイルスの複製を少なくとも10%上昇させる方法であって、
    a) 再集合インフルエンザウイルスのアミノ酸配列と、発育卵中で高力価まで複製する異なるインフルエンザウイルスのアミノ酸配列とを比較する工程;
    b) 再集合ウイルスの前記配列の1つまたはそれ以上のアミノ酸を改変させて、前記異なるインフルエンザウイルスの配列に一致させることにより、1つまたはそれ以上の改変再集合ウイルスを作製する工程、及び
    c) 卵中で1つまたはそれ以上の改変再集合ウイルスを増殖させる工程
    を含んでなる、前記方法。
  2. 工程(b)は以下よりなる群から選択されるメンバーの工程を含んでなる、請求項1に記載の方法:
    i) 183位がロイシンであり、226位がアラニンであるように、HAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程;
    ii) 186位がバリンであり、226位がイソロイシンであるように、HAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程;
    iii) 119位がグルタミン酸であり、136位がグルタミンであるように、NAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程;
    iv) 186位がバリンであり、226位がイソロイシンであるように、HAアミノ酸残基を必要に応じて置換し、かつ119位がグルタミン酸であり、136位がグルタミンであるように、NAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程;
    v) 196位がスレオニンであるように、HAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程;及び
    vi) 186位がバリンであり、226位がイソロイシンであり、196位がスレオニンであるように、HAアミノ酸残基を必要に応じて置換する工程。
  3. 請求項1に記載の方法により製造される複製増強再集合インフルエンザウイルス。
  4. 請求項1に記載の複製増強再集合インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物。
  5. 発育卵における再集合インフルエンザウイルスの増殖を上昇させる方法であって、再集合ウイルスをMDCK細胞及び発育卵で複数回継代することを含み、その際、増殖は少なくとも1logPFU/mL上昇するものである、前記方法。
  6. 以下よりなる群から選択されるメンバーを含む複製増強再集合インフルエンザウイルス:
    i) 183位にロイシンを含み、226位にアラニンを含むHAタンパク質;
    ii) 186位にバリンを含み、226位にイソロイシンを含むHAタンパク質;
    iii) 119位にグルタミン酸を含み、136位にグルタミンを含むNAタンパク質;
    iv) 186位にバリンを含み、226位にイソロイシンを含むHAタンパク質、及び119位にグルタミン酸を含み、位にグルタミンを含むNAタンパク質;
    v) 186位にバリンを含み、226位にイソロイシンを含み、196位にスレオニンを含むHAタンパク質;
    vi) 196位にスレオニンを含むHAタンパク質;及び
    vi) HAタンパク質における186位と196位での置換。
  7. 請求項6に記載の複製増強再集合インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物。
  8. インフルエンザウイルスの複製を少なくとも10%上昇させる方法であって、
    a) アミノ酸置換がなされた場合に、183位にロイシン残基を、186位にバリン残基を、196位にスレオニン残基を、そして226位にアラニン残基を生じるように、HAの183位、186位、196位又は226位の1つ以上で、必要に応じてアミノ酸置換を行う工程:及び
    b) 前記HA置換を含むインフルエンザウイルスを卵で増殖させる工程、
    を含んでなる、前記方法。
  9. 183位、186位、196位、又は226位の1つ以上で置換を含む再集合インフルエンザウイルスであって、発育卵中で少なくとも8.0 log10PFU/mlの力価まで増殖する、前記インフルエンザウイルス。
  10. 183位、186位、196位、又は226位の1つ以上で置換を含む再集合インフルエンザウイルスであって、発育卵中で少なくとも9.0 log10PFU/mlの力価まで増殖する、前記インフルエンザウイルス。
  11. 183位、186位、196位、又は226位の1つ以上で置換を含む再集合インフルエンザウイルスであって、前記置換を有しない同じ再集合ウイルスより少なくとも50%高い力価まで増殖する、前記インフルエンザウイルス。
  12. 少なくとも1つの置換は、196位にスレオニン、又は186位にバリンを生じる、請求項9、10、又は11に記載の再集合ウイルス。
  13. 少なくとも1つの置換は、196位に非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、又は186位に非極性側鎖を有するかつアラニンではないアミノ酸を生じる、請求項9、10、又は11に記載の再集合ウイルス。
  14. インフルエンザウイルスは低温順応性であり、温度感受性であり、かつ弱毒化されている、請求項9、10、11、12、又は13に記載のインフルエンザウイルス。
  15. インフルエンザウイルスはMDV-A株又はPR8株の骨格をさらに含む、請求項9、10、11、12、又は13に記載のインフルエンザウイルス。
  16. 請求項9、10、11、12、又は13に記載のインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物。
  17. 請求項9、10、11、12、又は13に記載のインフルエンザウイルスを含むインフルエンザワクチン。
  18. 請求項9、10、11、12、又は13に記載のインフルエンザウイルスを含む、低温順応性弱毒化温度感受性生インフルエンザワクチン。
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