5. 詳細な説明
本発明は部分的に、配列番号5に例示した少なくともε-migisペプチドの一部分とcεmxペプチドの一部分を含む新規エピトープと特異的に結合する抗体の発見に基づく。本発明の新規エピトープは、例えば、「cεmx.migisエピトープ」、「εmx.migisペプチド」または簡単に「cεmx.migis」およびその抗原性断片と呼ばれる。本発明の新規エピトープはまた、さらに広い用語「本発明のmigisエピトープ」および「migisエピトープ」により包含される。本発明の新規cεmx.migisエピトープと特異的に結合する抗体は、本明細書において特定して「cεmx.migis抗体」と呼ばれ、そしてまたさらに広い用語「本発明の抗体」によっても包含される。本発明はまた、新規エピトープと結合する抗体を単離する方法および本発明の抗体をIgE介在性疾患を治療するために用いる方法も提供する。
本発明の抗体が特異的に結合するcεmx.migisエピトープは、膜結合型IgE(本明細書では「mIgE」と略する)上に存在する。一実施形態において、新規cεmx.migisエピトープと特異的に結合するcεmx.migis抗体はmIgEと結合する。他の実施形態において、mIgEと結合する本発明の抗体はADCCおよび/またはCDC活性に介在する。
一実施形態において、本発明の抗体はヒトcεmx.migisペプチド配列のペプチド配列(配列番号5)と特異的に結合する。他の実施形態において、本発明の抗体は膜結合型IgE(mIgE)と特異的に結合する。特定の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体はmIgE以外の膜結合型免疫グロブリン(本明細書で一緒に「mIg」と呼ばれ、かつ個々には「mIgG」、「mIgA」、「mIgE」、「mIgM」および「mIgD」と呼ばれる)と結合しない。他の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体はヒトε-migis(配列番号1)および/またはヒトcεmxペプチド配列(配列番号6)のペプチド配列と結合しない。さらに他の特定の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体はホスホイノシチド結合タンパク質エピトープ(配列番号3)および/またはKIAA1227ペプチドエピトープ(配列番号4)のポリペプチドと結合しない。
一実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号1のペプチドと特異的に結合する抗体と同じエピトープに結合しない。他の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号6のペプチドと特異的に結合する抗体と同じエピトープに結合しない。さらなる他の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体のmIgEとの結合は、配列番号1および配列番号6のペプチドにより阻害されない。
一実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、A1c(配列番号50および51によりコードされる)およびB1(配列番号60および61によりコードされる)の可変領域を含む抗体と同じエピトープに結合しない。他の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、A1c(配列番号50および51によりコードされる)およびB1(配列番号60および61によりコードされる)の可変領域を含む抗体により阻害されない。
一実施形態において、migisエピトープ(例えば、cεmx.migisエピトープ)と特異的に結合する本発明の抗体は、mIgEを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。枯渇は、B細胞または形質細胞枯渇を測定するように設計したアッセイでin vitroで起こりうるし、または被験体でin vivoで起こりうる。さらに特定の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、mIgEを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。他の特定の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、ADCCを介してmIgEを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。さらに他の特定の実施形態において、配列番号5のペプチド配列と特異的に結合する本発明の抗体は、CDCを介してmIgEを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合する。
ペプチド(例えば、cεmx.migis)と特異的に結合する抗体または断片は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に公知の他の技法により同定することができる。抗体またはその断片がmigisエピトープまたはその断片と特異的に結合するというのは、放射免疫測定法(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技法を用いて測定してそれが交差反応抗原と結合するより高いアフィニティでmigisエピトープまたはその断片と結合することである。抗体特異性に関する考察は、例えば、Paul ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336を参照されたい。
本発明はさらに、migisエピトープ(例えば、cεmx.migisエピトープ)と高い結合アフィニティを有する本発明の抗体を包含する。特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に高い結合アフィニティを有する本発明の抗体は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1の会合速度定数またはkon速度を有する。他の実施形態において、migisエピトープと特異的に高い結合アフィニティを有する本発明の抗体は、少なくとも2×105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1のkonを有する。特別な実施形態において、本明細書に開示したkonを有する本発明の抗体のmigisエピトープはcεmx.migisエピトープである。他の特別な実施形態において、本明細書に開示したkonを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるペプチドである。特定の実施形態において、本明細書に開示したkonを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドである。
他の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、10-1s-1未満、5×10-1s-1未満、10-2s-1未満、5×10-2s-1未満、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のkoffを有する。他の実施形態においは、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のkoffを有する。特別な実施形態において、本明細書に開示したkoffを有する本発明の抗体のmigisエピトープはcεmx.migisエピトープである。他の特別な実施形態において、本明細書に開示したkoffを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるペプチドである。特定の実施形態において、本明細書に開示したkoffを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドである。
他の実施形態においては、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、少なくとも102M-1、少なくとも5×102M-1、少なくとも103M-1、少なくとも5×103M-1、少なくとも104M-1、少なくとも5×104M-1、少なくとも105M-1、少なくとも5×105M-1、少なくとも106M-1、少なくとも5×106M-1、少なくとも107M-1、少なくとも5×107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも5×108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも5×109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも5×1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも5×1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも5×1012M、少なくとも1013M-1、少なくとも5×1013M-1、少なくとも1014M-1、少なくとも5×1014M-1、少なくとも1015M-1、または少なくとも5×1015M-1のアフィニティ定数またはKa(kon/koff)を有する。特別な実施形態において、本明細書に開示したKaを有する本発明の抗体のmigisエピトープはcεmx.migisエピトープである。他の特別な実施形態において、本明細書に開示したKaを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるペプチドである。特定の実施形態において、本明細書に開示したKaを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドである。
さらに他の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、10-2M未満、5×10-2M未満、10-3M未満、5×10-3M未満、10-4M未満、5×10-4M未満、10-5M未満、5×10-5M未満、10-6M未満、5×10-6M未満、10-7M未満、5×10-7M未満、10-8M未満、5×10-8M未満、10-9M未満、5×10-9M未満、10-10M未満、5×10-10M未満、10-11M未満、5×10-11M未満、10-12M未満、5×10-12M未満、10-13M未満、5×10-13M未満、10-14M未満、5×10-14M未満、10-15M未満、または5×10-15M未満の解離定数またはKd (koff/kon)を有する。さらなる他の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、約10-7M〜約10-8M、約10-8M〜約10-9M、約10-9M〜約10-10M、約10-10M〜約10-11M、約10-11M〜約10-12M、約10-12M〜約10-13M、約10-13M〜約10-14Mの解離定数またはKd (koff/kon)を有する。さらに他の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体は、10-7M〜10-8M、10-8M〜10-9M、10-9M〜10-10M、10-10M〜10-11M、10-11M〜10-12M、10-12M〜10-13M、10-13M〜10-14Mの解離定数またはKd (koff/kon)を有する。特別な実施形態において、本明細書に開示したKdを有する本発明の抗体のmigisエピトープはcεmx.migisエピトープである。他の特別な実施形態において、本明細書に開示したKdを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるペプチドである。特定の実施形態において、本明細書に開示したKdを有する本発明の抗体のmigisエピトープは配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドである。
平衡解離定数(Kd)がkoff/konとして定義されることは当技術分野において周知である。一般的に、低いKdをもつ結合分子(例えば、および抗体)は高いKdをもつ結合分子(例えば、および抗体)より好ましいと解釈されている。しかし、場合によっては、konまたはkoffの値がKdの値より関連性が高い。当業者は、所与の抗体応用にとってどちらの動力学パラメーターが重要であるかを決めることができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は1つの抗原に対して他の抗原に対してより低いKdを有する。
一実施形態において、本発明の抗体は配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドに対して、配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドに対するKdと比較して、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも102、少なくとも5x102、少なくとも103、少なくとも5x103、少なくとも104、少なくとも5x104、少なくとも105、少なくとも5x105、または少なくとも106倍低いKdを有する。
一実施形態において、本発明の抗体は配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドに対して、配列番号6のアミノ酸配列を有するペプチドに対するKdと比較して、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも102、少なくとも5x102、少なくとも103、少なくとも5x103、少なくとも104、少なくとも5x104、少なくとも105、少なくとも5x105、または少なくとも106倍低いKdを有する。
一実施形態において、本発明の抗体は配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドに対して、配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドと配列番号6のアミノ酸配列を有するペプチドに対するKdと比較して、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも102、少なくとも5x102、少なくとも103、少なくとも5x103、少なくとも104、少なくとも5x104、少なくとも105、少なくとも5x105、または少なくとも106倍低いKdを有する。
本発明は、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合する抗体を含む。本発明はまた、膜結合型IgE(mIgE)と特異的に結合する抗体も提供する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと結合しそしてmIgEと結合する。一実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号9の可変軽鎖(VL)ドメインを含む。特別な実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号7のヌクレオチドがコードするVLドメインを含む。他の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号10の可変重鎖(VH)を含む。特別な実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号8のヌクレオチドがコードするVHドメインを含む。特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号9のVLドメインと配列番号10のVHドメインを含む。特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号7のヌクレオチドがコードするVLドメインと配列番号8のヌクレオチドがコードするVHドメインを含む。
一実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号60の可変軽鎖(VL)ドメインを含む。特別な実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号62のヌクレオチドがコードするVLドメインを含む。他の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号63の可変重鎖(VH)を含む。特別な実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号61のヌクレオチドがコードするVHドメインを含む。特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号62のVLドメインと配列番号63のVHドメインを含む。特定の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、配列番号60のヌクレオチドがコードするVLドメインと配列番号61のヌクレオチドがコードするVHドメインを含む。
本発明は膜結合型IgE(mIgE)と特異的に結合する抗体を含む。一実施形態において、膜結合型IgE(mIgE)と特異的に結合する本発明の抗体は配列番号81の可変重鎖(VH)ドメインを含む。特別な実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合する本発明の抗体は配列番号80のヌクレオチドがコードするVHドメインを含む。
他の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの抗体D5またはF4由来のCDRを含む。さらに他の実施形態において、mIgEと特異的に結合する本発明の抗体は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つの抗体D9由来のCDRを含む。抗体D5のCDRのアミノ酸配列を図12に示しかつ配列番号:11(VLCDR1)、12(VLCDR2)、13(VLCDR3)、14(VHCDR1)、15(VHCDR2)、および16(VHCDR3)によって表した。抗体F4のCDRのアミノ酸配列を図15に示しかつ配列番号:74(VLCDR1)、75(VLCDR2)、76(VLCDR3)、77(VHCDR1)、78(VHCDR2)、および79(VHCDR3)によって表した。抗体D9のCDRのアミノ酸配列を図16に示しかつ配列番号:82(VHCDR1)、83(VHCDR2)、および84(VHCDR3)によって表した。
本発明はまた、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはmIgEと特異的に結合する抗体であって、D5抗体の軽鎖CDR1と少なくとも80%同一であるCDR、D5抗体の軽鎖CDR2と少なくとも80%同一であるCDR、D5抗体の軽鎖CDR3と少なくとも80%同一であるCDR、D5抗体の重鎖CDR1と少なくとも80%同一であるCDR、D5抗体の重鎖CDR2と少なくとも80%同一であるCDR、D5抗体の重鎖CDR3と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の軽鎖CDR1と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の軽鎖CDR2と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の軽鎖CDR3と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の重鎖CDR1と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の重鎖CDR2と少なくとも80%同一であるCDR、F4抗体の重鎖CDR3と少なくとも80%同一であるCDR、D9抗体の重鎖CDR1と少なくとも80%同一であるCDR、D9抗体の重鎖CDR2と少なくとも80%同一であるCDR、およびD9抗体の重鎖CDR3と少なくとも80%同一であるCDRからなる群より選択される少なくとも1つのCDRを含む前記抗体も包含する。また、考えられるのは、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと特異的に結合するおよび/またはD5、F4およびD9からなる群より選択される抗体に存在するCDRと少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%同一である少なくとも1つのCDRを有するmIgEと特異的に結合する抗体である。
本発明はさらに本発明の抗体をコードするヌクレオチドを包含する。一実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号9または10のアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号7または8を含む。他の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号72または73のアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号70または71を含む。さらに他の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号81のアミノ酸配列をコードする。特定の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は配列番号80を含む。また、本発明が包含するのは、配列番号9、10、72、73または81のアミノ酸配列をコードする少なくとも1つの本発明の核酸配列を含む細胞である。
他の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は、配列番号9、10、72、73または81のアミノ酸配列と少なくとも60%同一、または少なくとも70%同一、または少なくとも80%同一、または少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一、または100%同一であるポリペプチドをコードする。さらに他の実施形態において、本発明の単離された核酸配列は、配列番号7、8、70、71または80の核酸配列と少なくとも60%同一、または少なくとも70%同一、または少なくとも80%同一、または少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一、または100%同一である。
2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)の%同一性は、例えば、配列を最適な比較のためにアラインメントすることにより決定できる(例えば、ギャップを第1配列の配列中に導入してもよい)。次いで、対応する位置におけるアミノ酸またはヌクレオチドを比較し、そして2つの配列の間の%同一性を両配列が共有する同一位置数の関数で表す(すなわち、%同一性=同一位置数/全位置数 x 100)。2つの配列の実際の比較は、周知の方法により、例えば、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい、限定するものでない、かかる数学的アルゴリズムの例は、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-5877 (1993)に記載されている。かかるアルゴリズムを、Schafferら, Nucleic Acids Res., 29:2994-3005 (2001)に記載のBLASTNおよびBLASTXプログラム(バージョン2.2)に組み込む。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使う場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTN)のデフォルトのパラメーターを利用することができる。2002年4月10日のhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。一実施形態において、検索したデータベースは非重複性(NR)データベースであり、そして配列比較用のパラメーターは、次のとおり設定できる:フィルターなし;期待値10;ワードサイズ3;マトリックスはBLOSUM62;そしてギャップコスト(Gap Cost)はエグジステンス(Existence)が11であり、エキステンション(Extension)が1である。
配列比較に用いる別の好ましい、限定するものでない、数学アルゴリズムの例はMyersおよびMiller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムを、GCG(AcceLrys)配列アラインメント・ソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込む。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120 ウエート残テーブル(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ(gap length penalty)12、およびギャップペナルティ(gap penalty)4を使う。配列分析のためのさらなるアルゴリズムが当技術分野で公知であり、それには、ADVANCE and ADAM(TorellisおよびRobotti, Comput. Appl. Biosci., 10:3-5 (1994)に記載); およびFASTA(PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci USA、85: 2444-8 (1988)に記載)が挙げられる。
他の実施形態において、2つのアミノ酸配列間の%同一性は、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(2001年8月31日のhttp://www.accelrys.comで入手しうる)を用いて、Blossom 63マトリックスまたはPAM250マトリックス、および12、10、8、6、または4のギャップ重み(gap weight)および2、3、または4の長さ重み(length weight)を使って求めることができる。さらに他の実施形態において、2つの核酸配列間の%同一性は、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.cgc.comで入手しうる)を利用して、50のギャップ重み(gap weight)および3の長さ重み(length weight)を使って求めることができる。
本発明はまた、D5の可変領域(配列番号7および8によりコードされる)を含む抗体と同じエピトープに結合する抗体も包含すると考えられる。また、D5の可変領域(配列番号7および8によりコードされる)を含む抗体のエピトープの結合と競合する抗体も包含される。本発明はさらに、D5の可変領域(配列番号7および8によりコードされる)を含む抗体と同じエピトープに結合して、約10-7M〜約10-8M、約10-8M〜約10-9M、約10-9M〜約10-10M、約10-10M〜約10-11M、約10-11M〜約10-12M、約10-12M〜約10-13M、約10-13M〜約10-14MのKdを有する抗体を包含する。
本明細書(例えば、実施例3を参照)に開示したように、本発明の抗体はmIg、特にmIgEを発現する標的細胞に対するADCCに介在することができる。従って、本明細書に開示したcεmx.migis抗体は、IgEのFcεRIとの結合から生じるまたは関連する障害およびIgEを発現するB細胞のモノクローナル増殖が原因である障害を含む、IgE介在性障害の治療に有用である。IgE介在性または関連する疾患または障害としては、例えば、限定されるものでないが、IgE抗体および肥満細胞メディエーターが原因であるアレルギー性疾患(限定されるものでないが、アレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を含む)、アレルギー性喘息{季節性花粉(イネ科草本:ライムギ、チモシー、ブタクサ)および樹木(カバノキ)、ダストダニ、動物の毛、羽毛および真菌性胞子などの四季を通じてのアレルゲンならびに界面活性剤および金属などの職業性抗原などの特定の抗原因子に関連する喘息を含む}、感染などの非抗原特異的因子、煙、煙霧、ジーゼル排気粒子および二酸化硫黄などの刺激物質、気道冷却(運動、冷たい気道温度)および情動性ストレスに関連する喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性胃腸病ならびにアナフィラキシー疾患{全身アナフィラキシーおよび食品のタンパク質(例えば、ピーナッツ)、毒液、ワクチン、ホルモン、抗血清、酵素およびラテックスに対する反応を含む}、ハプテン(抗生物質、筋肉弛緩薬、ビタミン、細胞毒およびオピエートを含む)に対する反応、およびデキストラン、鉄デキストランおよびポリゲリンなどの多糖に対する反応およびじんま疹-血管性浮腫などの他のアナフィラキシー疾患または障害、ならびにヨブ病、移植後リンパ球増殖性の障害(PTLD)、および意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)などのB細胞増殖疾患が挙げられる。さらに、本発明の抗体はIgE介在性胃腸炎症性障害の治療に有用であって、ここで前記傷害はIgEの影響による病理から生じる傷害または感染が原因である様々な侵襲に対する広範囲の宿主反応への難治性慢性応答として広く定義しうる前記傷害ある。この用語の範囲に含まれる特別な傷害としては、炎症性腸疾患(例えば、クローン疾患、潰瘍性大腸炎、非定型的大腸炎および感染性大腸炎)、胃腸病、腸炎、粘膜炎(例えば、経口粘膜炎、胃腸粘膜炎、経鼻粘膜炎および直腸炎)、壊死性全腸炎および食道炎)が挙げられる。
従って、本発明は、B細胞のモノクローナル増殖から生じるまたはそれに関連する、そして特にIgEが介在するB細胞介在性疾患および障害を予防、管理、治療または改善するために有用な方法を提供する。一実施形態において、本発明はヒトにおけるIgE介在性疾患を治療する方法であって、かかる予防、改善、または治療を必要とする個体に、本発明の抗体の有効量を投与するステップを含んでなる前記方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明はヒトにおけるIgE介在性疾患を治療する方法であって、かかる予防、改善または治療を必要とする個体に、配列番号5、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドと特異的に結合する本発明の抗体の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
他の実施形態において、本発明はヒトにおけるIgE介在性疾患を治療する方法であって、かかる予防、改善、または治療を必要とする個体に、本発明の抗体の有効量を他の予防または治療薬と併用して投与することを含む前記方法を提供する。
前記の通り、膜結合型免疫グロブリンにだけ存在するmigisペプチドは、異なる免疫グロブリンアイソタイプに対してユニークである。それ故に、この免疫グロブリン膜結合型性ペプチドの細胞外セグメントは、全体でまたは部分で、特別な膜結合型免疫グロブリンアイソタイプを発現するB細胞にユニークなエピトープを形成する。従って、migisペプチドを特異的に標的化する抗体のような治療薬は、アレルギー性疾患およびモノクローナルB細胞増殖が介在する疾患を治療するために特定のクラスのB細胞を標的化するために有用でありうる。
しかし、本明細書に開示したように、特別なmigisペプチドに特異的であることおよび膜結合型免疫グロブリンと結合することの両方を備えた抗体を同定するときに、望ましくない特徴を有しうるmigisペプチド内の優性エピトープの存在に対応しなければならない。例えば、本明細書に実証したように、優性migisエピトープは他のタンパク質に共有されるかまたは膜に結合型された免疫グロブリン上で隠されるうる。従って、本発明はまた、目的のポリペプチド(例えば、migisペプチドならびにmigisペプチドおよびその断片を含むペプチド)上に存在する優性エピトープと結合しない抗体を同定し単離し、そして使用する方法も提供する。
本発明は、優性エピトープと結合しない抗体を生成する方法であって、(a)抗体に対する優性エピトープを含むポリペプチドと結合する抗体であって、前記ポリペプチド上に存在するその優性エピトープを認識する抗体により阻害されない前記抗体について、選択前または後の抗体ライブラリーをスクリーニングするステップ;および(b)前記ステップ(a)から少なくとも1つの抗体を単離するステップを含んでなる前記方法を包含する。優性エピトープは、アクセス可能で、抗原性のエピトープでありかつさらにそれに対する抗体が容易に生成され、同定され、または単離されるエピトープであると考えられる。単一ポリペプチドが2以上の優性エピトープを含んでもよい。優性エピトープは線状ポリペプチド配列であってもよいしまたは三次元立体配置のポリペプチドから生じてもよい。さらに、優性エピトープは抗体ライブラリー中に存在する複数の抗体結合ドメインが認識しうるエピトープであってもよいと考えられる。優性エピトープを認識する抗体は、本発明の方法で用いたのと同じライブラリーから予め単離された抗体であってもよい。抗体は、もし、例えば、その抗体が同じポリペプチドと結合する他の抗体と結合について競合するのであれば、優性エピトープと結合すると考えることができる。一実施形態において、migisペプチド(またはその断片)を含むポリペプチドの優性エピトープと結合しない抗体を生成する方法が本発明で提供される。例えば、mIgEペプチドに対するかかる抗体を生成する方法が本発明で提供される。
一実施形態において、優性エピトープと結合しない抗体を生成する方法は、(a)抗体ライブラリーから優性エピトープを含むポリペプチドと結合するこれらのクローンを単離するステップ;(b)前記ステップ(a)で単離されたクローンを、優性エピトープと特異的に結合する抗体により阻害されないクローンをスクリーニングするステップ;および(c)ステップ(b)から少なくとも1つの抗体を単離するステップを含んでなる。一実施形態において、migisペプチド(またはその断片)を含むポリペプチドの優性エピトープと結合しない抗体を生成する方法が本発明で提供される。例えば、mIgEペプチドに対するかかる抗体を生成する方法が本発明で提供される。
抗体ライブラリーからクローンを生成しかつ単離する方法は当技術分野で周知である。いくつかの代表的な方法を第5.3節「抗体を生成する方法」および第6.1節、実施例1に開示した。他の抗体の結合を阻害するまたは阻害しない抗体をスクリーニングする方法は当技術分野で周知である。いくつかの代表的な方法を第5.5節「生物学的アッセイ」および第6.1節、実施例1に開示した。本発明の方法により同定した抗体クローンは、当技術分野で周知の方法により容易に単離することができる。優性エピトープを含むポリペプチド上に存在する優性エピトープと結合する1以上の抗体の存在のもとで、抗体クローンを抗体ライブラリーから単離し、それにより、優性エピトープと結合する1以上の抗体により阻害されない抗体クローンだけを単離しうると考えられる。抗体ライブラリーから抗体クローンの単離中に優性エピトープと結合する抗体を使用すると、さらなる所望の結合特性(例えばmIgEに対する特異性)をスクリーニングするためのクローン数を減ずることができる。
本発明の方法はまた、優性エピトープでない、他のタンパク質により共有されない、そして膜結合型免疫グロブリン上で隠されないmigisエピトープと特異的に結合する抗体の生成にも有用である。一実施形態において、優性エピトープでない、他のタンパク質により共有されない、そして膜結合型免疫グロブリン上で隠されないmigisエピトープと特異的に結合する抗体を生成する方法は、(a)抗体ライブラリーからmigisエピトープを含むポリペプチドと結合するクローンを単離するステップ;(b)前記ステップ(a)から単離されたクローンを、migisエピトープを含む前記ポリペプチド上に存在する優性エピトープを認識する抗体により阻害されないクローンについてスクリーニングするステップ;(c)前記ステップ(b)で阻害されないクローンを、膜結合型免疫グロブリンを有する細胞と特異的に結合するクローンについて、スクリーニングするステップ;(d)前記ステップ(c)で特異的に結合するクローンを、膜結合型免疫グロブリンを有しない細胞と結合しないクローンついてスクリーニングするステップ;および(e)前記ステップ(d)から得た少なくとも1つの抗体を単離するステップを含んでなる。
従って、本発明の方法は、膜結合型免疫グロブリン(本明細書では一緒にして(mIgs)、そして個々に「mIgG」、「mIgA」、「mIgE」、「mIgM」および「mIgD」と呼ぶ)と特異的に結合し、優性エピトープと結合しないそして他のタンパク質と結合しない抗体の生成に有用である。特定の実施形態において、特異的にmIgsと結合する抗体により認識されるエピトープはmigisエピトープである。例示のmigisエピトープには、限定されるものでないが、図1Aに示したものおよび配列番号1、2、5、47、48および49に記載したものが含まれる。他の例示のmigisエピトープには、migisペプチドを含むアミノ酸残基および隣接重鎖配列(例えば、配列番号5および17〜49)の1以上のアミノ酸残基が含まれる。
一実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はmIgsと特異的に結合する。特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はヒト抗体である。さらに他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はADCCおよび/またはCDC活性に介在する。さらに他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、B細胞介在性疾患、例えば、限定されるものでないが、喘息、アレルギー性疾患(例えば、mIgEを発現するB細胞を標的化することによる)、骨髄腫、自己免疫性および炎症性疾患、例えば慢性関節リウマチ、およびループス(例えば、mIgGまたはmIgAを発現するB細胞を標的化することによる)、ならびにB細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、例えば、限定されるものでないが、ヨブ病(例えば、IgEを発現するB細胞を標的化することによる)、Waldenstromマクログロブリン血症(例えば、mIgMを発現するB細胞を標的化することによる)、移植後リンパ球増殖性の障害(PTLD)、および意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)の治療に有用である。
1つの特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はα鎖上に存在するmigisエピトープと特異的に結合する。他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はδ鎖上に存在するmigisエピトープと特異的に結合する。さらに他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はγ-鎖上に存在するmigisエピトープと特異的に結合する。さらに他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はμ-鎖上に存在するmigisエピトープと特異的に結合する。さらに他の特定の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体はε-鎖上に存在するmigisエピトープと特異的に結合する。
一実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、膜結合型免疫グロブリン(mIgs)と特異的に結合する。他の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、mIgAと特異的に結合するがmIgA以外のmIgsと結合しない。さらに他の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、mIgDと特異的に結合するがmIgD以外のmIgsと結合しない。さらに他の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、mIgGと特異的に結合するがmIgG以外のmIgsと結合しない。さらに他の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、mIgMと特異的に結合するがmIgM以外のmIgsと結合しない。さらに他の実施形態において、本発明の方法により生成される抗体は、mIgEと特異的に結合するがmIgE以外のmIgsと結合しない。
一実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体は、mIgを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。枯渇は、B細胞または形質細胞枯渇を測定するように設計されたin vitroアッセイで起こりうるし、または被験体でin vivoで起こりうる。特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体はADCCを介してmIgを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。他の特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体はCDCを介してmIgを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。
一実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体は、mIgAを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体は、mIgDを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。他の特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体はmIgGを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。さらに他の特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する本発明の方法により生成される抗体はmIgMを発現するB細胞または形質細胞を枯渇させる。
5.1 本発明の抗体
本明細書で使用する用語「抗体」は、モノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、1本鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、Fab断片、F(ab')断片、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および以上のいずれかのエピトープ結合断片を意味する。特に、抗体は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含み、これらの断片は限定されるものでないがFc域またはその断片を含む他の免疫グロブリンドメインと融合していてもよいしまたは融合していなくてもよい。本明細書に概要を記載したように、用語「抗体」は具体的に本明細書に記載のcεmx.migis抗体、全長抗体、およびFc域を含むそのFc変異体、または、免疫グロブリンの免疫学的活性断片ともしくは本明細書に記載の他のタンパク質と融合した少なくとも1つの本明細書に記載の新規アミノ酸残基を含むその断片を含むものである。かかる変異体のFc融合体には、限定されるものでないが、scFv-Fc融合体、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合体、scFv-scFv-Fc融合体が含まれる。免疫グロブリン分子はいずれの型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。
本発明の抗体には、限定されるものでないが、合成抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、遺伝子組換えで生成した抗体、細胞内発現抗体、多特異的抗体、二特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、1本鎖Fv-Fc融合体(scFv-Fc)、1本鎖Fv(scFv)、および抗イディオタイプの(抗Id)抗体が含まれる。特に、本発明の方法に用いる抗体は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分を含む。本発明の抗体はいずれの型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。
本発明の抗体は、鳥類および哺乳動物を含むいずれの動物(例えば、ヒト、げっ歯類、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ)由来であってもよい。一実施形態において、抗体はヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で使用する「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、およびヒト免疫グロブリンライブラリーからまたはヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから単離された抗体を含む。
抗体は、全てのポリペプチドの様に、一般にポリペプチドが正味電荷を保持しないpHとして定義される等電点(pI)を有する。当技術分野で、タンパク質溶解度は通常、溶液のpHがタンパク質の等電点(pI)と等しいときに最低であることが公知である。抗体中のイオン化残基の数および位置を変えてpIを調節することにより溶解度を最適化することが可能である。例えば、ポリペプチドのpIは、適当なアミノ酸置換を行うことにより(例えば、リシンなどの荷電アミノ酸をアラニンなどの非荷電残基と置換することにより)操作しうる。特別な理論に縛られることなく、前記抗体のpIの変化をもたらす抗体のアミノ酸置換は抗体の溶解度および/または安定性を改善しうる。当業者は、特にその抗体が所望のpIを達成するためにどのアミノ酸置換が最も適当であるかを理解しうる。タンパク質のpIは、限定されるものでないが、等電点電気泳動および様々な計算機アルゴリズムを含む様々な方法により決定することができる(例えば、Bjellqvistら, 1993, Electrophoresis 14:1023-1031を参照)。一実施形態において、本発明の抗体のpIは約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、または約9.0より高い。一実施形態において、本発明の抗体のpIの変化をもたらす置換はmigisエピトープに対する結合アフィニティを有意に減少しないであろう。他の実施形態において、本発明の抗体のpIは6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0より高い。FcγRとの結合の改変をもたらすFc域の置換(前記)はまたpIの変化をもたらしうることを具体的に意図する。他の実施形態において、Fc域の置換は所望のFcγR結合における改変およびいずれかの所望のpIにおける変化の両方に作用するように特定して選ぶ。本明細書で使用するpI値は、支配的な電荷型のpI値として定義される。タンパク質のpIは、限定されるものでないが、等電点電気泳動および様々な計算機アルゴリズムを含む様々な方法により決定することができる(例えば、Bjellqvistら, 1993, Electrophoresis 14:1023を参照)。
抗体のFabドメインの熱融解温度(Tm)は抗体の熱安定性の良い指標でありかつさらに有効期間の指標である。より低いTmは、より高い凝集性/より低い安定性を示すが、より高いTmはより低い凝集性/より高い安定性を示す。従って、より高いTmを有する抗体が好ましい。一実施形態において、本発明の抗体のFabドメインは少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃または120℃より高いTm値を有する。タンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン)のTmは、当技術分野で公知のいずれかの標準的方法を用いて、例えば、示差走査熱量測定により測定することができる(例えば、Vermeerら、2000、Biophys. J. 78:394-404; Vermeerら、2000、Biophys. J. 79: 2150-2154を参照)。
本発明の抗体は単特異的、二特異的、三特異的であってもまたはさらに高い多特異性を有してもよい。多特異的抗体は所望の標的分子の異なるエピトープと免疫特異的に結合してもよいしまたは標的分子ならびに異種エピトープ(異種ポリペプチドまたは固体支持材料など)の両方と結合してもよい。例えば、国際公開WO 94/04690;WO 93/17715;WO 92/08802;WO 91/00360;およびWO 92/05793;Tuttら、1991、J. Immunol. 147:60-69;米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、および 第5,601,819号;および Kostelnyら、1992、J. Immunol. 148:1547-1553)。本発明の場合、結合特異性の1つはmigisエピトープ(例えば、cεmx.migis)に対するものであり、そして他の1つはいずれか他の抗原(例えば、CD3、シグナル伝達またはエフェクター分子)に対するものである。
多特異的抗体は少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する。かかる分子は通常2つの抗原だけと結合しうる(すなわち二特異的抗体、BsAbs)が、三特異的抗体のようなさらなる特異性をもつ抗体も本発明により包含される。BsAbsの例には、限定されるものでないが、migisエピトープに対する1つのアームといずれか他の抗原に対する他のアームをもつ抗体が含まれる。二特異的抗体を作る方法は当技術分野で公知である。全長の二特異的抗体の伝統的な生成は、2つの鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づく(Millsteinら,1983、Nature、305:537-539)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な詰め合わせであるので、これらのハイブリドーマ(クアドローマ;quadromas)は異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、それらのうちの1つだけが正しい二特異的構造を有する。正しい分子の精製は通常、親和性クロマトグラフィステップにより行い、手間がかかりかつ生成収率は低い。類似の手順がWO 93/08829、およびTrauneckerら、1991、EMBO J.、10:3655-3659に開示されている。もっと直接的な手法は、ジ-ダイアボディ(Di-diabody)、すなわち四価二特異的抗体の作製である。ジ-ダイアボディを生成する方法は当技術分野で公知である(例えば、Luら、2003、J Immunol Methods 279:219-32;Marvinら、2005、Acta Pharmacolical Sinica 26:649を参照)。
異なる手法によれば、所望の結合特異性をもつ抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合する。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常域(CH1)が融合体の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体および、もし所望であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクター中に挿入し、そして好適な宿主生物中に共トランスフェクトする。これは、構築物に使われる3つのポリペプチド鎖の不等比が最適収率を与える実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調節する上で大きいフレキシビリティを与える。しかし、2つまたは全3つのポリペプチド鎖に対するコード配列を1つの発現ベクター内に挿入することが可能であるのは、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率で得られるときかまたはその比が特に重要でないときである。
この手法の一実施形態において、二特異的抗体は1つのアームにおける第1の結合特異性をもつハイブリッド免疫グロブリン重鎖(例えば、cεmx.migisのようなmigisエピトープ)、および他のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を与える)から構成される。この不斉構造は二特異的分子の片方の半分だけの免疫グロブリン軽鎖の存在が容易な分離方法を提供するので、所望の二特異的化合物の欲しない免疫グロブリン鎖組合わせからの分離を容易にすることが見出された。この手法はWO 94/04690に開示されている。二特異的抗体のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、1986、Methods in Enzymology、121:210を参照されたい。WO 96/27011に記載の別の手法によれば、一対の抗体分子を遺伝子操作によりヘテロダイマーの百分率を最大化するように作り、これを組換え細胞培養から回収することができる。好ましいインターフェースは少なくとも抗体定常ドメインのCH3ドメインの一部分を含む。この方法では、第1抗体分子のインターフェースからの1以上の小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)と置き換える。第2抗体分子のインターフェース上で大きいアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えばアラニンまたはトレオニン)と置き換えることにより、大きい側鎖と同一または類似サイズの代償「空洞」を作製する。これは、ホモダイマーなどの他の欲しない最終産物を超えてヘテロダイマーの収率を増加する機構を提供する。
二特異的抗体はクロスリンクされたまたは「へテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、へテロコンジュゲートの抗体の1つをアビジンと、また他の1つはビオチンとカップリングしていてもよい。かかる抗体が、例えば、免疫系細胞を欲しない細胞に標的化するために(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373、および EP 03089)提案されている。へテロコンジュゲート抗体はいずれの好都合なクロスリンク方法を用いて行ってもよい。好適なクロスリンク剤は当技術分野で周知であり、米国特許第4,676,980号において、いくつかのクロスリンク技法と共に開示されている。
本発明の少なくとも1つのヒンジ改変を組み込んだ3価以上の抗体が考えられる。例えば、三特異的抗体を調製することができる。例えば、Tuttら, J. Immunol. 147: 60 (1991)を参照されたい。
本発明の抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体を含む単一ドメイン抗体を包含する(例えば、Muyldermansら, 2001, Trends Biochem. Sci. 26:230;Nuttallら, 2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253;ReichmannおよびMuyldermans, 1999、J. Immunol. Meth. 231:25;国際特許公開WO 94/04678およびWO 94/25591;米国特許第6,005,079号を参照)。
他の抗体は特定すると「オリゴクローナル」抗体であると考えられる。本明細書で使用する用語「オリゴクローナル」抗体は異なるモノクローナル抗体の所定の混合物を意味する。例えば、PCT公開WO 95/20401;米国特許第5,789,208号および第6,335,163号を参照されたい。一実施形態において、オリゴクローナル抗体は単一細胞において1以上のエピトープに対して生成された抗体の所定の混合物からなる。他の実施形態において、オリゴクローナル抗体は共通の軽鎖と対になって多特異性をもつ抗体を生成できる複数の重鎖を含む(例えば、PCT公開WO 04/009618)。オリゴクローナル抗体は、単一標的分子(例えば、mIgE、mIgG、mIgA、mIgD、mIgM)上の多エピトープを標的化することを所望するときに有用である。当業者はどの型の抗体または抗体の混合物が意図する目的および所望のニーズに対して応用しうるかを知るかまたは決定することができよう。
本発明の抗体はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)において、5日より長い、10日より長い、15日より長い、20日より長い、25日より長い、30日より長い、35日より長い、40日より長い、45日より長い、2か月より長い、3か月より長い、4か月より長い、または5か月より長い半減期(例えば、血清半減期)を有する抗体を包含する。哺乳動物(例えばヒト)における本発明の抗体の半減期の増加は、哺乳動物における前記抗体または抗体断片の血清力価の向上をもたらし、従って、前記抗体または抗体断片の投与頻度を低減しおよび/または投与すべき前記抗体または抗体断片の濃度を低減する。in vivo半減期の増加した抗体は、当業者に公知の技法により作製することができる。例えば、in vivo半減期の増加した抗体は、FcドメインとFcRn受容体の間の相互作用に関わると同定されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、欠失または付加)することにより作製することができる(例えば、国際公開WO 97/34631;WO 04/029207;米国特許第6,737056号および米国特許公開第2003/0190311号を参照)。
一実施形態において、本発明の抗体を化学的に改変するか(例えば、1以上の化学部分を抗体に付着させてもよい)またはそのグリコシル化を変えるように改変して、再びその抗体の1以上の機能的特性を変えることができる。
さらに他の実施形態においては、本発明の抗体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体を作ることができる(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)。グリコシル化を改変して、例えば、抗体の標的抗原に対する親和性を増加することができる。かかる糖鎖改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を改変することにより実施することができる。例えば、1以上のアミノ酸置換を行い、1以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を排除し、それによりその部位におけるグリコシル化を排除することができる。かかる非グリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を増加することができる。かかる手法は、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳しく記載されている。
さらにまたはあるいは、フコシル残基量の低下した低フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNAc構造の増加した抗体などの改変された型のグリコシル化を有する本発明の抗体を作ることができる。かかる改変されたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増加することが実証されている。かかる糖鎖改変は、例えば、グリコシル化機構の改変された宿主細胞において抗体を発現させることにより達成することができる。グリコシル化機構の改変された細胞は当技術分野で記載されているので、その宿主細胞で本発明の遺伝子組換え抗体を発現させてそれによりグリコシル化の改変された抗体を生成することができる。例えば、Shields、R.L.ら (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umanaら (1999) Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに、欧州特許EP 1,176,195;PCT公報WO 03/035835;WO 99/54342を参照されたい。
さらに他の実施形態においては、本発明のある抗体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体を作ることができる(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)。グリコシル化を改変して、例えば、抗体の標的抗原に対する親和性を増加することができる。かかる糖鎖改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を改変することにより実施することができる。例えば、1以上のアミノ酸置換を行い、1以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を排除し、それによりその部位におけるグリコシル化を排除することができる。かかる非グリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を増加することができる。かかる手法は、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳しく記載されている。
さらにまたはあるいは、フコシル残基量の低下した本発明の低フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNAc構造の増加した本発明の抗体などの改変された型のグリコシル化を有する本発明の抗体を作ることができる。かかる改変されたグリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増加することが実証されている。かかる糖鎖改変は、例えば、グリコシル化機構の改変された宿主細胞において抗体を発現させることにより達成することができる。グリコシル化機構の改変された細胞は当技術分野で記載されているので、その宿主細胞で本発明の遺伝子組換え抗体を発現させてそれによりグリコシル化の改変された抗体を生成することができる。例えば、Shields、R.L.ら (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umanaら (1999) Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに、欧州特許EP 1,176,195;PCT公報WO 03/035835;WO 99/54342を参照されたい。
5.2 抗体コンジュゲートと誘導体
本発明の抗体は、改変された(すなわち、いずれかの型の分子の抗体との共有結合により)誘導体を含む。例えば、限定されるものでないが、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞のリガンドまたは他のタンパク質との連結、などにより改変されている抗体が含まれる。多数の化学的改変のいずれを公知の技法により行ってもよく、それには、限定されるものでないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが含まれ、さらに誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含有してもよい。
in vivo半減期の増加した抗体またはその断片は、前記抗体または抗体断片に高分子ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子を結合することにより作製することができる。PEGを、多官能基リンカーを用いてまたは用いないで、前記抗体または抗体断片のN-またはC-末端に対するPEGの部位特異的なコンジュゲーションを介してまたはリシン残基上に存在するε-アミノ基を介して、抗体に結合させてもよい。生物学的活性の消失を最小化する直鎖または分枝鎖ポリマー誘導体化を利用しうる。コンジュゲーションの程度をSDS-PAGEおよび質量分析により厳密にモニターして、PEG分子の抗体との適切なコンジュゲーションを確実なものにすることができる。未反応PEGはサイズ排除によりまたはイオン交換クロマトグラフィにより抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。
さらに、in vivoでより安定したまたはin vivoでより長い半減期を有する抗体または抗体断片を作る目的で、抗体をアルブミンとコンジュゲートしてもよい。その技法は当技術分野において周知であり、例えば、国際特許公開WO 93/15199、WO 93/15200、および WO 01/77137;および 欧州特許EP 413,622を参照されたい。本発明は1以上の部分とコンジュゲートまたは融合した抗体またはその断片の使用を包含し、前記部分としては、限定されるものでないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣作用薬、合成薬物、無機分子および有機分子が含まれる。
本発明は、異種タンパク質またはポリペプチド(またはその部分、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)と、遺伝子組換えで融合したまたは化学的にコンジュゲートした(共有結合および非共有結合の両方を含む)抗体またはその断片の使用を包含する。融合は、必ずしも直接的でなくてよく、リンカー配列を介して生じていてもよい。例えば、抗体を用いて異種ポリペプチドを特別な細胞型にin vitroまたはin vivoで標的化することができ、その標的化は前記抗体を、特別な細胞表面受容体に対して特異的な抗体と融合またはコンジュゲートすることによって達成する。異種 ポリペプチドと融合またはコンジュゲートした抗体はまた、当技術分野で公知の方法を利用してin vitroイムノアッセイおよび精製法に使用することもできる。例えば、国際特許公開WO 93/21232;欧州特許 EP 439,095;Naramuraら, 1994, Immunol. Lett. 39:91-99;米国特許第5,474,981号;Gilliesら, 1992, PNAS 89:1428-1432;およびFellら, 1991, J. Immunol. 146:2446-2452を参照されたい。
本発明はさらに、抗体断片と融合またはコンジュゲートした異種タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドを含有する製剤を含む。例えば、異種ポリペプチドを、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VLドメイン、VHCDR、VLCDRまたはその部分と融合またはコンジュゲートしてもよい。ポリペプチドを抗体部分と融合またはコンジュゲートする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、および第5,112,946号;欧州特許EP 307,434;EP 367,166;国際公開WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Zhengら, 1995, J. Immunol. 154:5590-5600;およびVil ら, 1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337- 11341を参照されたい。
例えば、抗-migis 抗体のさらなる融合タンパク質を、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(総称として「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技法を通して作製することができる。DNAシャフリングを使用すると、本発明の抗体またはその断片(例えば、親和性が高く、解離速度が低い抗体またはその断片)の活性を変化させることができる。一般に、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号;および第5,837,458号、ならびにPattenら, 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2): 76-82;Hanssonら, 1999, J Mol. Biol. 287:265-76;およびLorenzoおよびBlasco, 1998, BioTechniques 24(2): 308- 313を参照されたい。抗体もしくはそのフラグメント、またはコードされた抗体もしくはそのフラグメントは、組換えを行う前に、エラー-プローンPCR、ランダム・ヌクレオチド挿入、または他の方法によるランダム変異誘発で処理することによって改変することができる。抗体または抗体断片をコードするポリヌクレオチドの1以上の部分であってmigisエピトープと特異的に結合する前記部分を、1以上の異種分子の1以上の構成成分、モチーフ、切片、一部、ドメイン、断片などと組み換えることができる。
さらに、抗体またはその断片をペプチドなどのマーカー配列と融合して精製を容易にすることができる。ある特定の実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、市販される多くの他のものなかでも、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)で提供されるタグのようなヘキサヒスチジン・ペプチドである。Gentzら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載のとおり、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の精製に好都合である。精製に有用な他のペプチド・タグには、限定されるものでないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilsonら, 1984, Cell 37:767)および「フラグ」タグが含まれる。
他の実施形態においては、本発明の抗体またはその類似体または誘導体を、診断または検出可能な物質とコンジュゲートする。かかる抗体は、特定の治療の効力の確認などの臨床試験手順の一部として、癌の発生または進行をモニターまたは予測するのに有用でありうる。かかる診断および検出は抗体を検出可能な物質とカップリングすることによって実施することができ、前記検出可能な物質としては、限定されるものでないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;限定されるものでないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;限定されるものでないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンなどの蛍光物質;限定されるものでないが、ルミノールなどの発光物質;限定されるものでないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの生物発光物質;限定されるものでないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I,)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In,)、およびテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、弗素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re,142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなどの放射性物質;様々な陽電子放出断層撮影法を用いる陽電子放出金属および非放射性常磁性金属イオンおよび放射標識したまたは特定の放射性同位体とコンジュゲートした分子が挙げられる。
本発明はさらに、治療薬とコンジュゲートした本発明の抗体またはその断片の使用を包含する。
他の実施形態において、本発明の抗体は、細胞毒などの治療薬部分、例えば、細胞増殖抑制剤または細胞破壊剤、または治療薬、または放射性金属イオン、例えばα放射体とコンジュゲートすることができる。細胞毒すなわち細胞傷害薬は、細胞に有害ないずれかの物質を含む。例としては、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、およびシクロホスファミド、ならびにこれらの類似体または相同体が挙げられる。治療薬としては、限定されるものでないが、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC))、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)およびアウリスタチンE化合物(例えばモノメチルアウリスタチンE;例えば 米国特許第6,884,869号を参照)が挙げられる。治療部分のさらに広範なリストは、PCT公開WO 03/075957に見出すことができる。
他の実施形態において、本発明の抗体は所与の生物学的応答を改変する治療薬または薬物部分とコンジュゲートすることができる。治療薬または薬物部分は古典的な化学治療薬に限定されると推量してはならない。例えば、薬物部分は所望の生物学的活性を所持するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。かかるタンパク質としては、例えば、毒、例えばアブリン、リシンA、オンコナーゼ(または他の細胞毒性RNアーゼ)シュードモナス外毒素、コレラ毒、またはジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来の成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス剤、例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(国際特許公開WO97/33899を参照)、AIM II(国際特許公開WO97/34911を参照)、Fasリガンド(Takahashiら, 1994, J. Immunol., 6:1567)、およびVEGI(国際特許公開WO99/23105を参照)、血栓薬または抗血管形成薬、例えば、アンギオスタチンまたはエンドスタチン;または、生物学的応答改変因子、例えば、リンホカイン(例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF))、または成長因子(例えば、成長ホルモン(GH))が挙げられる。
他の実施形態においては、本発明の抗体を、放射性材料または放射性金属イオンとコンジュゲートするために有用な大環状キレーターなどの治療薬部分とコンジュゲートする(前記の放射性材料の例を参照)。ある特定の実施形態において、大環状キレーターは、リンカー分子を介して抗体に付着しうる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N''-四酢酸(DOTA)である。かかるリンカー分子は、当技術分野で公知であり、Denardoら, 1998, Clin Cancer Res. 4 : 2483-90;Petersonら, 1999, Bioconjug. Chem. 10 : 553;およびZimmermanら, 1999, Nucl. Med. Biol. 26 : 943-50に記載されている。
治療成分を抗体にコンジュゲートする技法は周知である。治療部分を当技術分野で公知のいずれの方法により抗体とコンジュゲートしてもよく、その方法としては、限定されるものでないが、アルデヒド/シッフ結合、スルフヒドリル結合、酸不安定結合、cis-アコニチル(aconityl)結合、ヒドラゾン結合、酵素分解性結合が挙げられる(一般的にはGarnett, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:171-216を参照)。治療成分を抗体にコンジュゲートする技法は周知であり、例えば、Arnonら, 「癌治療における薬物の免疫標的化用のモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編), 243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら、「薬物送達用抗体(Antibodies For Drug Delivery)」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623〜53(Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe、「癌治療における細胞傷害薬の抗体担体:レビュー(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer THerapy:A Review)」, Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編), 475〜506(1985);「癌治療における放射性抗体に治療利用の分析、結果、および将来展望(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編), 303-16 (Academic Press 1985);およびThorpeら, 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照されたい。
抗体をポリペプチド成分に融合またはコンジュゲートする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5336603号、第5622929号、第5359046号、第5349053号、第5447851号、および第5112946号;EP 307434;EP 367166;国際公開WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら, 1991, PNAS 88:10535〜10539;Zhengら, 1995, J. Immunol. 154:5590〜5600;およびVilら, 1992, PNAS 89:11337〜11341を参照されたい。抗体とある部分との融合は、必ずしも直接的でなくてもよく、リンカー配列を介して生じてもよい。かかるリンカー分子は、当技術分野で一般に知られており、Denardoら, 1998, Clin Cancer Res. 4:2483〜90;Petersonら, 1999, Bioconjug. Chem. 10:553;Zimmermanら, 1999, Nucl. Med. Biol. 26:943〜50;Garnett, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:171〜216に記載されている。
あるいは、抗体を第2の抗体とコンジュゲートして、Segalの米国特許第4,676,980号に記載のような抗体へテロコンジュゲートを形成させてもよい。
抗体はまた、特に、標的抗原のイムノアッセイまたは精製に有用である固体支持体と結合させることもできる。かかる固体支持体としては、限定されるものでないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられる。
migisエピトープと特異的に結合する抗体またはその断片とコンジュゲートされた治療成分または薬物は、被験体の特別な傷害に対して所望の予防または治療効果を達成するように選ばねばならない。臨床医または他の医療関係者は、どの治療成分または薬物をmigisエピトープと特異的に結合する抗体またはその断片とコンジュゲートするかを決定するときに、次の事項:疾患の性質、疾患の重症度、および被験体の症状を考慮しなければならない。
5.3 抗体を作製する方法
本発明の抗体は、抗体の合成について当技術分野で公知のいずれの方法、特に、化学合成によってまたは組換え発現技法によって生成することができる。
migisエピトープ(例えば、cεmx.migis)に対するポリクローナル抗体は当技術分野で周知の様々な方法により生成することができる。例えば、migisエピトープ(例えば、cεmx.migis)またはその免疫原性断片を、限定されるものでないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む様々な宿主動物に投与してmigisエピトープ(例えば、cεmx.migis)に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の生成を誘導することができる。宿主種に応じて、様々なアジュバントを用いて免疫反応を増加することができ、限定されるものでないが、フロイントのアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられる。かかるアジュバントも当技術分野では周知である。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージ・ディスプレイ技法、またはその組合せの使用を含む当技術分野で公知の多種多様な技法を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は当技術分野で公知の技法および例えば、Harlowら, Antibodies:A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerlingら:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, p.563-681(Elsevier, N.Y., 1981)に教示の技法を含むハイブリドーマ技法を用いて生成することができる。本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」はハイブリドーマ技法により生成した抗体だけに限定されない。用語「モノクローナル抗体」はいずれかの真核生物、原核生物、またはファージのクローンを含む単一クローン由来の抗体を意味し、それを生成する方法を問わない。
ハイブリドーマ技術を使用して特定の抗体を生成し、スクリーニングする方法は、日常的な方法であり、当技術分野では周知である。概要を述べると、マウスをmigisエピトープ(例えば、cεmx.migis)またはその断片で免疫感作し、いったん免疫応答が検出されたなら、例えば、マウス血清中にmigisエピトープに特異的な抗体が検出されたなら、マウスの脾臓を摘出し、脾細胞を単離する。次いで脾細胞を、周知の技法によって、いずれかの好適な骨髄腫細胞、例えばATCCから入手可能なSP20細胞系由来の細胞と融合させる。さらにRIMMS(反復免疫化、多部位)技法を用いて動物を免疫感作してもよい(Kilpatrickら、1997、Hybridoma 16:381-9)。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によってクローン化する。次いで、当技術分野で公知の方法によって、本発明のポリペプチドと結合できる抗体を分泌する細胞について、ハイブリドーマ・クローンをアッセイする。マウスを陽性のハイブリドーマ・クローンで免疫感作することによって、一般に高レベルの抗体を含む腹水を作製することができる。
従って、モノクローナル抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することによって作製することができ、その場合、好ましくは、前記ハイブリドーマは、migisエピトープ(例えば、cεmx.migis)またはその免疫原性断片で免疫感作したマウスから単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合することによって作製し、次いで融合で得たハイブリドーマを、migisエピトープ、そしてさらに特定すれば、膜結合型免疫グロブリン分子に関するmigisエピトープと結合できる抗体を分泌するハイブリドーマ・クローンについてスクリーニングする。
本発明の抗体は、そのFc域に新規アミノ酸残基を含有する。抗体は当業者に周知のいくつもの方法により作製することができる。限定するものでない例としては、抗体コード領域(例えば、ハイブリドーマからの)を単離し、単離した抗体コード領域のFc域に1以上の所望の置換を行うことが挙げられる。あるいは、可変領域を1以上の高いエフェクター機能を含むFc域をコードするベクター中にサブクローニングしてもよい。さらなる方法と詳細を以下に記載する。
特定のmigisエピトープを認識する抗体断片は、当業者に公知のいずれかの技法によって作製することができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab')2断片は、パパイン(Fab断片を生成する酵素)またはペプシン(F(ab')2断片を生成する酵素)などの酵素を用いた免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生成することができる。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。さらに、本発明の抗体はまた、当技術分野で公知の様々なファージ・ディスプレイ法を用いて作製することもできる。
一実施形態においては、migisエピトープと特異的に結合する抗体をファージディスプレイ法により作製することができる。
ファージ・ディスプレイ法では、機能性抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特に、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、リンパ系組織のヒトまたはネズミcDNAライブラリー)から増幅される。VHおよびVLドメインをコードするDNAをscFvリンカーと一緒にPCRによって組換え、ファージミド・ベクター(例えば、p CANTAB 6またはpComb 3 HSS)中にクローニングする。このベクターを大腸菌(E. coli)中にエレクトロポレーションし、その大腸菌にヘルパー・ファージを感染させる。これらの方法で使用するファージは、典型的にはfdおよびM13を含む線状ファージであり、VHおよびVLドメインをファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかと通常、組換え融合する。目的のmigisエピトープと結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原、例えば、標識した抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を用いて、選択または同定することができる。本発明の抗体を作製するために使用できるファージ・ディスプレイ法の例としては、Brinkmanら, 1995, J. Immunol. Methods 182:41〜50;Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persicら, 1997, Gene 187:9;Burtonら, 1994, Advances in Immunology 57:191-280;PCT公開 WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982、WO 95/20401、およびW0 97/13844;ならびに米国特許第5698426号、第5223409号、第5403484号、第5580717号、第5427908号、第5750753号、第5821047号、第5571698号、第5427908号、第5516637号、第5780225号、第5658727号、第5733743号および第5969108号に記載されている方法が挙げられる。
特定の実施形態においては、migisエピトープと特異的に結合する抗体を、配列番号5と結合しかつ少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10倍低いアフィニティで配列番号1および配列番号6と結合する抗体について、ライブラリーをスクリーニングすることにより生成する。他の特定の実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する抗体を、配列番号5と結合しかつ配列番号5との結合がA1c(配列番号50および51によりコードされる)およびB1(配列番号60および61によりコードされる)の可変領域を含む抗体により阻害されない抗体について、ライブラリーをスクリーニングすることにより生成する。
前記の参考文献に記載のように、ファージ選択の後、ファージから抗体コード領域を単離し、それを用いて、ヒト抗体を含む全抗体、またはいずれか他の所望の抗原結合断片を生成し、そして、例えば、下記に記載のように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含むいずれか所望の宿主中で発現させることができる。Fab、Fab'およびF(ab')2断片を組換え生成する技法も、国際公開WO 92/22324;Mullinaxら, 1992, BioTechniques 12(6):864-869;Sawaiら, 1995, AJRI 34:26-34;およびBetterら, 1988, Science 240:1041-1043に開示された当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
全抗体を生成するためには、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位、および制限部位の消化を容易にするための隣接配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローンのVHまたはVL配列を増幅させることができる。当業者に公知のクローニング技法を利用することによって、PCRで増幅したVHドメインをVH定常域、例えば、ヒトγ定常域を発現するベクター中にクローン化することができ、PCRで増幅したVLドメインをVL定常域、例えば、ヒトκまたはλ定常域を発現するベクター中にクローン化することができる。一実施形態において、定常域は少なくとも1つの高いエフェクター機能アミノ酸を含有するFc域である。特定の実施形態において、VHまたはVLドメインを発現するためのベクターは、プロモーター、分泌シグナル、可変ドメインおよび定常ドメインの両方に対するクローニング部位、ならびにネオマイシンなどの選択マーカーを含む。VHおよびVLドメインはまた、所望の定常域を発現する1つのベクター中にクローニングすることもできる。次いで、当業者に公知の技法を用いて、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを細胞系中に同時トランスフェクトして、全長抗体、例えばIgGを発現する安定なまたは一過性の細胞系を作製する。
一実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を生成する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら, 1986, BioTechniques 4:214;Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、第4,816,397号、および第6,311,415号を参照されたい。
ヒトにおける抗体のin vivo使用およびin vitro検出アッセイを含むいくつかの用途ではヒトまたはキメラ抗体を使用することが好ましいであろう。ほとんどのヒト被験者の治療処置にとっては完全なヒト抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いて前記のファージ・ディスプレイ法を含む当技術分野で公知の様々な方法により作製することができる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741も参照されたい。一実施形態において、本発明の抗体はヒト抗体である。
ヒト化抗体は、所定の抗原に結合可能であり、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域と、非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するCDRとを含む抗体もしくはその変異体、またはその断片である。ヒト化抗体は少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、Fv)を実質的にすべて含み、その場合、すべてまたは実質的にすべてのCDR域は非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のCDR域に対応しかつすべてまたは実質的にすべてのフレームワーク領域はヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列のフレームワーク領域である。一実施形態において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常域の少なくとも一部分を含む。通常、抗体は、軽鎖ならびに少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域も含みうる。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むいずれかのクラスの免疫グロブリン、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むいずれかのアイソタイプから選択することができる。通常、定常ドメインは、ヒト化抗体が細胞傷害活性を示すことが望ましい補体結合性定常ドメインであり、そのクラスは典型的にはIgG1である。こうした細胞傷害活性が望ましくない場合、定常ドメインはIgG2クラスであってもよい。ヒト化抗体は、2以上のクラスまたはアイソタイプの配列を含んでもよく、特別な定常ドメインを選択して所望のエフェクター機能を最適化することは、当技術分野の通常の技術の範囲内である。ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域は、親配列と正確に対応している必要は無く、例えば、ドナーCDRまたはコンセンサス・フレームワークを少なくとも1つの残基の置換、挿入または欠失によって突然変異させて、その部位におけるCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスまたは移入抗体に対応しないようにすることができる。しかし、かかる突然変異は広範囲のものでない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より頻繁には90%、最も好ましくは95%より多い残基が、親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列の残基に対応する。ヒト化抗体は、限定されるものでないが、CDR移植(欧州特許EP 239400;国際公開WO 91/09967;および米国特許第5225539号、第5530101号、および第5585089号)、張り合わせ(veneering)または再表面化(resurfacing)(欧州特許EP 592106およびEP 519596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;およびRoguskaら, 1994, PNAS 91:969-973)、鎖シャフリング(chain shufflling)(米国特許第5,565,332号)を含む当技術分野で周知の様々な技術ならびに例えば、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、WO 9317105、Tanら, J. Immunol. 169:1119-25 (2002)、Caldasら, Protein Eng. 13(5): 353 - 60 (2000)、Moreaら, Methods 20(3): 267-79 (2000)、Bacaら, J. Biol. Chem. 272(16): 10678-84 (1997)、Roguskaら, Protein Eng. 9(10): 895-904 (1996)、Coutoら, Cancer Res. 55 (23 Supp): 5973s - 5977s (1995)、Coutoら, Cancer Res. 55(8): 1717-22 (1995)、Sandhu JS、Gene 150(2): 409-10 (1994)、およびPedersenら, J. Mol. Biol. 235(3): 959-73 (1994)に開示されている技術を用いて生成することができる。多くの場合、フレームワーク領域中のフレームワーク残基を、CDRドナー抗体の対応する残基で置換して、抗原結合性を改変、好ましくは改善しうる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングして抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定することにより、または配列比較を行って特定部位における異常フレームワーク残基を同定することにより、特定される(例えば、Queenらの米国特許第5585089号;およびRiechmannら, 1988, Nature 332:323を参照のこと)。
ヒト抗体はまた、機能性内因免疫グロブリンを発現できないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生成することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、マウス胚幹細胞中にランダムにまたは相同組換えによって導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常域、および多様性領域を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えてマウス胚幹細胞に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによりヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入によって別々にまたは同時に非機能化することができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体生成を阻止する。改変した胚幹細胞を増殖させ、胚盤胞にマイクロインジェクションしてキメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生成する。トランスジェニックマウスを、選択した抗原、例えば、migisエピトープまたはその免疫原性断片を用いて通常の方法で免疫感作する。該抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技法を用いて、その免疫感作したトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の際に再配列を起こし、続いてクラス・スイッチングおよび体細胞変異を生じる。従って、このような技術を用いることによって、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技法およびかかる抗体を生成するためのプロトコルの詳細な説明については、例えば、国際特許公開WO 98/24893、WO 96/34096、およびWO 96/33735;ならびに米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、および第5,939,598を参照されたい。さらに、Abgenix, Inc.(Freemont、CA)、Genpharm (S
an Jose, CA)およびMedarex(Princeton、NJ)などの会社は、前記と類似の技法を用いて選択した抗原に対するヒト抗体の提供を引き受けることができる。
さらに、次いで本発明の抗体を利用し、当業者に周知の技法を用いてmigisエピトープ(例えばcεmx.migis)を「模倣する(mimic)」抗イディオタイプ抗体を作製することができる。(例えば、Greenspan & Bona、1989、FASEB J. 7(5):437〜444;およびNissinoff、1991、J. Immunol. 147(8):2429〜2438を参照のこと)。例えば、migisエピトープと結合しかつそのリガンドとの結合を競合して阻害する(当技術分野で周知のおよび以下に開示のアッセイにより確認して)本発明の抗体を用いて、migis結合ドメインを「模倣する(mimic)」抗-イディオタイプを作製し、その結果、migis含有タンパク質および/またはそのリガンドと結合しかつ中和化することができる。かかる抗イディオタイプまたはかかる抗イディオタイプのFabフラグメントを治療レジメンに用いてmigis含有タンパク質を中和化することができる。本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの使用を利用する方法を提供する。
一実施形態において、migisエピトープと特異的に結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を得て、本発明の抗体を作製するために用いる。前記ヌクレオチド配列は、例えば、ハイブリドーマクローンDNAを配列決定することから得てもよい。もし特別な抗体またはそのエピトープ結合断片をコードする核酸を含有するクローンは入手できないが、前記抗体またはその結合断片の配列が公知であれば、その免疫グロブリンをコードする核酸を化学的に合成するか、あるいは、適切な供給源(例えば、抗体を発現するとして選択されたハイブリドーマ細胞などの本抗体を発現するいずれかの組織または細胞から単離した核酸、好ましくはポリA+RNA、それから作製したcDNAライブラリー、または抗体cDNAライブラリー)から、その配列の3'末端および5'末端にハイブリダイズする合成プライマーを使用するPCR増幅法によって、または、特別な遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチド・プローブを使用し、例えば、その抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを同定してクローニングすることによって得ることができる。PCRによって生成した増幅した核酸は、次いで、当技術分野でよく知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニング・ベクター中にクローン化することができる。
抗体のヌクレオチド配列をいったん決定すれば、その抗体のヌクレオチド配列を、ヌクレオチド配列の遺伝子操作のための当技術分野でよく知られている方法、例えば、組換えDNA技法、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら, ed., John Wiley & Sons (Chichester, England, 1998);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3nd Edition, J. Sambrookら, ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY, 2001); Antibodies: A Laboratory Manual, E. Harlow and D. Lane, ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY, 1988);および、Using Antibodies: A Laboratory Manual, E. Harlow and D. Lane, ed., Cold Spring Harbor Laboratory (Cold Spring Harbor, NY, 1999)に記載の技法を参照)を用いて遺伝子操作して、例えば、抗体の所望の領域における欠失、および/または挿入により、色々なアミノ酸配列を有する抗体を作製することができる。
一実施形態においては、1以上の置換を、migisエピトープと特異的に結合することができる抗体のFc域(例えば、前掲)内に行う。他の実施形態においては、アミノ酸置換は1以上のFcリガンド(例えば、FcγR、C1q)との結合を改変してADCCおよび/またはCDC活性を変える。
特定の実施形態においては、通常の組換えDNA技術を用いて1以上のCDRをフレームワーク領域内に挿入する。そのフレームワーク領域は、天然またはコンセンサス・フレームワーク領域であってもよく、特定して考えられるのは、ヒトフレームワーク領域である(例えば、ヒトフレームワーク領域の記載についてはChothiaら, 1998, J. Mol. Biol. 278:457-479を参照のこと)。一実施形態において、フレームワーク領域とCDRの組合せによって作製されるポリヌクレオチドは、migisエピトープ(例えば、cεmx.migis)と特異的に結合する抗体をコードする。他の実施形態においては、前記のように、1以上のアミノ酸置換をフレームワーク領域内で行ってもよく、そのアミノ酸置換が抗体のその抗原との結合を改善することが考えられる。さらに、かかる方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に関与する1以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を行い、1以上の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体を作製することができる。ポリヌクレオチドに対するその他の改変が本発明により包含されかつ当技術分野の技術範囲内にある。
5.4 抗体の組換え発現
本発明の抗体、その誘導体、類似体または断片(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはその一部分、または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現には、本抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が必要である。本発明の抗体分子、または抗体の重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを得た後、当技術分野で周知の技術を用いて組換えDNA技法により抗体または融合タンパク質分子を生成するためのベクターを生成することができる。従って、抗体または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製する方法を本明細書に記載する。当業者に周知の方法を用いて、抗体コード配列ならびに適切な転写および翻訳調節シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えばin vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えがある。本発明は、このように、プロモーターに機能しうる形で連結された、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。かかるベクターは抗体分子の定常域をコードするヌクレオチド配列を含み(例えば、国際公開WO 86/05807;国際公開WO 89/01036;ならびに米国特許第5,122,464号を参照のこと)、そして本発明の抗体の可変ドメインをかかるベクター中にクローニングして全長抗体鎖(例えば、重鎖および軽鎖)を発現させることができる。
発現ベクターを従来の技法によって宿主細胞に導入し、次いでそのトランスフェクトした細胞を従来の技術により培養して本発明の抗体を生成する。従って、本発明は、異種プロモーターに機能しうるように連結された本発明の抗体もしくはそのフラグメント、またはその重鎖もしくは軽鎖、またはその一部分、または本発明の一本鎖抗体、をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二本鎖抗体を発現させる他の実施形態では、以下に詳述するように、重鎖と軽鎖の両方をコードするベクターを宿主細胞中で同時発現させて、免疫グロブリン分子全体を発現させることができる。
様々な宿主-発現ベクター系を利用して、本発明の抗体を発現させることができる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照のこと)。かかる宿主-発現系は、それによって目的のコード配列を生成し、その後、精製することのできるビヒクルを表すが、また適切なヌクレオチドをコードする配列で形質転換またはトランスフェクトしたときに本発明の抗体分子をin situで発現しうる細胞も表す。これらには、限定されるものでないが、抗体をコードする配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌および枯草菌(B. subtilis))などの微生物;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス・ピチア(Saccharomyces Pichia));抗体をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;抗体をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイクウイルス、CaMV;タバコ・モザイクウイルス、TMV)を感染させたか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞ゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;牛痘ウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保持する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NSO、および3T3細胞)が含まれる。特に組換え抗体分子全体の発現では、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞、さらに好ましくは真核細胞を使用して、組換え抗体分子を発現させる。例えば、ヒト・サイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併用するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体の有効な発現系である(Foeckingら, 1986, Gene 45:101;およびCockettら, 1990, BioTechnology 8:2)。特定の実施形態において、cεmx.migisエピトープと結合する抗体をコードするヌクレ
オチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導プロモーターまたは組織特異的プロモーターにより制御される。
細菌系では、いくつもの発現ベクターを、発現される抗体の意図する使用に応じて有利になるよう選択することができる。例えば、抗体の医薬組成物を作製するために大量のかかるタンパク質を生産する場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベル発現を誘導するベクターが望ましいであろう。かかるベクターには、限定されるものでないが、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら、1983、EMBO 12:1791)[この場合、抗体または融合タンパク質コード配列は個々にベクター中にlacZコード領域とインフレームでライゲートされて、lacZ-融合タンパク質が生成されうる];pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101〜3109;Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503〜5509)などが含まれる。pGEXベクターを使用して、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来タンパク質を発現することもできる。一般に、こうした融合タンパク質は可溶性であり、マトリックス・グルタチオン-アガロース・ビーズへの吸着および結合と、それに続く遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化した標的遺伝子産物をGST成分から遊離できるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して外来遺伝子を発現する。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。抗体コード配列を個々にウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)にそれぞれクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
哺乳動物宿主細胞では、いくつものウイルスに基づく発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、所定の抗体コード配列をアデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば、後期プロモーターおよびトリパタイトリーダー配列と連結することができる。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えによってアデノウイルス・ゲノムに挿入することができる。ウイルス・ゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)への挿入によって、感染宿主中で生存可能でありかつ抗体を発現できる組換えウイルスが得られる(例えば、Logan & Shenk、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:355-359を参照のこと)。挿入した抗体コード配列の効率的な翻訳には特定の開始シグナルも必要でありうる。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。さらに、全挿入断片を確実に翻訳するために、開始コドンは所望のコード配列の読み枠と同調していなければならない。これらの外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンの起源は様々であってよく、天然でも合成でもよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって高めることができる(例えば、Bittnerら、1987、Methods in Enzymol. 153:516〜544を参照のこと)。
抗体の発現は、当技術分野で公知の任意のプロモーター又はエンハンサーエレメントにより制御しうる。抗体または融合タンパク質をコードする遺伝子の発現の制御に使用しうるプロモーターとしては、限定されるものではないが、SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端リピートに含まれるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42)、テトラサイクリン(Tet)プロモーター(Gossenら, 1995, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:5547-5551);原核生物発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroffら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)またはtacプロモーター(DeBoerら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25;また、Scientific American, 1980, 242:74-94の「組換え細菌からの有用タンパク質(Useful proteins from recombinant bacteria)」も参照);植物発現ベクター、例えばノパリンシンターゼプロモーター領域(Herrera-Estrellaら, Nature 303:209-213)又はカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら, 1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)及び光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら, 1984, Nature 310:115-120);酵母もしくは真菌由来の他のプロモーターエレメント、例えばGal 4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(フォスファチジルグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、ならびに組織特異性を示し、トランスジェニック動物で使用されている次の動物転写制御領域:膵腺房細胞にて活性を有するエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら, 1984, Cell 38:639-646;Ornitzら, 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515)、すい臓β細胞において活性を有するインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ細胞において活性を有する免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら, 1984, Cell 38:647-658;Adamesら, 1985, Nature 318:533-538; Alexanderら, 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ腫及び肥満細胞において活性を有するマウス乳癌ウイルス制御領域(Lederら, 1986, Cell 45:485-495)、肝臓において活性を有するアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら, 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓において活性を有するαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648; Hammerら, 1987, Science 235:53-58)、肝臓において活性を有するα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら, 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞において活性を有するβ-グロビン遺伝子制御領域(Mogramら, 1985, Nature 315:338-340; Kolliasら, 1986, Cell 46:89-94)、脳内のオリゴ樹状細胞において活性を有するミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, 1987, Cell 48:703-712)、骨格筋において活性を有するミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:283-286)、神経細胞において活性を有する神経特異的エノラーゼ(NSE)(Morelliら, 1999, Gen. Virol. 80:571-83)、神経細胞において活性を有する脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子制御領域(Tabuchiら, 1998, Biochem. Biophysic. Res. Com. 253:818-823)、星状細胞において活性を有するグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Gomesら, 1999, Braz J Med Biol Res 32(5):619-631; Morelliら, 1999, Gen. Virol. 80:571-83)ならびに視床下部において活性を有するゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら, 1986, Science 234:1372-1378)が挙げられる。
抗体をコードする遺伝子のインサートを含有する発現ベクターは、3つの一般的な手法により同定しうる:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在又は不在、(c)挿入配列の発現。最初の手法では、発現ベクターにおけるポリペプチドをコードする遺伝子の存在を、該ペプチド、ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする挿入遺伝子と相同的な配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションにより検出しうる。第2の手法では、組換えベクター/宿主系を、抗体をコードするヌクレオチド配列のベクターへの挿入により生じる、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成など)の存在又は不在に基づいて同定し選択しうる。例えば、抗体をコードするヌクレオチド配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合には、抗体インサートをコードする遺伝子を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の不在により同定しうる。第3の手法では、組換え発現ベクターを、組換え体により発現されるその遺伝子産物(例えば抗体)をアッセイすることにより同定しうる。かかるアッセイは、例えば、in vitroアッセイ系における抗体の物理的又は機能的性質、例えば抗生物活性分子との結合に基づきうる。
さらに、挿入された配列の発現をモジュレートするかまたは所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主細胞系を選択することができる。ある特定のプロモーターからの発現はある特定の誘導因子(インデューサー)の存在のもとで上昇させることができ、従って、遺伝子操作された融合タンパク質の発現を制御することができる。さらに、異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳及び翻訳後のプロセシング及び修飾(例えばタンパク質のグリコシル化、リン酸化)のための特徴的なかつ特定の機構を有する。適当な細胞系又は宿主系を選んで、発現された外来タンパク質の所望の修飾とプロセシングを保証することができる。例えば、細菌系における発現によってグリコシル化されてない産物が生成され、また酵母における発現によりグリコシル化産物が生成される。遺伝子産物の一次転写物の適切なプロセシング(例えば、グリコシル化及びリン酸化)のための細胞機構を持つ宿主真核細胞を使用することができる。かかる哺乳動物宿主細胞としては、限定されるものでないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、NS0、そして特に、神経細胞系、例えばSK-N-AS、SK-N-FI、SK-N-DZヒト神経芽細胞腫(Sugimotoら, 1984, J. Natl. Cancer Inst. 73: 51-57)、SK-N-SHヒト神経芽細胞腫(Biochim. Biophys. Acta, 1982, 704: 450-460)、Daoyヒト小脳髄芽細胞(Heら, 1992, Cancer Res. 52: 1144-1148)、DBTRG-05MG神経膠芽腫細胞(Kruseら, 1992, In vitro Cell. Dev. Biol. 28A: 609-614)、IMR-32ヒト神経芽細胞腫(Cancer Res., 1970, 30: 2110-2118)、1321N1ヒト星状細胞腫(Proc. Natl Acad. Sci. USA ,1977, 74: 4816)、MOG-G-CCMヒト星状細胞腫(Br. J. Cancer, 1984, 49: 269)、U87MGヒト神経膠芽腫−星状細胞腫(Acta Pathol. Microbiol. Scand., 1968, 74: 465-486)、A172ヒト神経膠芽腫(Olopadeら, 1992, Cancer Res. 52: 2523-2529)、C6ラットグリオーマ細胞(Bendaら, 1968, Science 161: 370-371)、Neuro-2aマウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1970, 65: 129-136)、NB41A3マウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1962, 48: 1184-1190)、SCPヒツジ脈絡叢(Bolin et al., 1994, J. Virol. Methods 48: 211-221)、G355-5、PG-4ネコ正常星状細胞(Haapalaら, 1985, J. Virol. 53: 827-833)、Mpfフェレット脳(Trowbridgeら, 1982, In vitro 18: 952-960)など、並びに正常細胞系、例えばCTX TNA2ラット正常脳皮質(Radanyら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6467-6471)、例えばCRL7030及びHs578Bstなどが挙げられる。さらに種々のベクター/宿主発現系が様々な程度のプロセシング反応に影響を及ぼしうる。
組換えタンパク質を長期間にわたり高収量で生産するためには、安定した発現がしばしば好ましい。例えば、安定して抗体を発現する培養細胞系を遺伝子操作によって作ることができる。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりもむしろ、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNAおよび選択マーカーを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、遺伝子操作をした細胞を、1〜2日間富栄養培地で増殖させ、次いで選択培地に切り換える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体中に安定的に組み込み、増殖して細胞巣を形成することを可能にするので、これを次にクローニングして培養細胞系に拡大することができる。この方法を利用してcεmx.migisエピトープと特異的に結合する本発明の抗体を発現する細胞系を遺伝子操作により有利に作製することができる。かかる遺伝子操作をした細胞系は、cεmx.migisエピトープと特異的に結合する抗体の活性に影響を与える化合物のスクリーニングと評価に特に有用である。
いくつもの選択系を利用することができ、限定されるものでないが、例えば単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)、及びアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22:817)遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk-、hgprt-又はaprt-細胞において使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性を選択の基礎として利用し、メトトレキセート耐性を付与するdhfr(Wiglerら, 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:357;O'Hareら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072);アミノグリコシドG-418耐性を付与するneo(Colberre-Garapinら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1);並びにハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Santerreら, 1984, Gene 30:147)を選択することができる。
本発明のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体が組換え発現により一旦生成すれば、抗体分子は、抗体を精製するための当技術分野で公知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインA後の特異的抗原に対する親和性、及びサイズ分離カラムクロマトグラフィ)により、遠心分離、示差溶解度により、または抗体を精製する他の任意の標準技術により、精製することができる。
抗体の発現レベルは、ベクター増幅により増加することができる(総説については、BebbingtonおよびHentschel, 「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞のクローン化遺伝子を発現するための、遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」, Vol.3. (Academic Press, New York, 1987)を参照)。抗体または融合タンパク質を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能であれば、宿主細胞培養中に存在するインヒビターレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加しうる。増幅される領域は、抗体遺伝子と関連しているので、抗体の生成も増加しうる(Crouseら, 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
宿主細胞を、本発明の2つの発現ベクターを用いて共トランスフェクトすることができる。例えば、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1ベクターと軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2ベクターを用いる。この2つのベクターは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択マーカーを含有してもよい。あるいは、融合タンパク質または重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードしかつ発現できる単一ベクターを利用してもよい。融合タンパク質または重鎖と軽鎖のコード配列はcDNA又はゲノムDNAを含んでいてもよい。
5.5 生物学的アッセイ
本発明の抗体の結合特異性、親和性および機能活性は、当分野で周知の様々なin vitro結合および細胞接着アッセイにより特徴付けることができ、かかる方法としては、限定するものではないが、ELISA、ウエスタンブロット分析、細胞表面染色、リガンド−受容体相互作用の阻害、フローサイトメトリー分析、ならびに国際公開特許番号WO 04/014292、WO 03/094859、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、WO 03/040304、WO 00/78815、WO 02/070007、およびWO 03/075957、ならびに米国特許第5,795,734号、第6,248,326号、および第6,472,403号;Pecheurら、2002, FASEB J. 16(10):1266-1268;Almedら、The Journal of Histochemistry & Cytochemistry 50:1371-1379(2002)に開示されている方法が挙げられる。例えば、本発明の抗体の親和性、結合特異性および解離速度は、競合的結合アッセイによって本発明の抗体のmigisエピトープとの結合に対する阻害活性を測定することにより、決定することができる。競合的結合アッセイの一例として、非標識ペプチドの存在下でその量を増やしながら、本発明の抗体と一緒にmigisを含有するペプチド(例えば、3Hまたは125I)をインキュベートした後、標識ペプチドに結合した抗体を検出することを含む放射免疫測定法がある。migisエピトープに対するFc変異体の親和性および結合解離速度は、そのデータからスキャッチャードプロット分析により決定することができる。第2抗体との競合も、放射免疫測定法により決定することができる。この場合、migisを含有するペプチドを、増加する量の第2の非標識モノクローナル抗体の存在下で、標識化合物(例えば、3Hまたは125I)にコンジュゲートした本発明の抗体と一緒にインキュベートする。
また、当分野では周知の表面プラスモン共鳴(SPR)アッセイを用いて、本発明の抗体の速度論的パラメーターを決定することができる。SPRを用いた技術について詳しくは、Mulletら、2000, Methods 22:77-91;Dongら、2002, Review in Mol. Biotech., 82:303-23;Fivashら、1998, Current Opinion in Biotechnology 9:97-101;Richら、2000, Current Opinion in Biotechnology 11:54-61を参照されたい。さらに、米国特許第6,373,577号;第6,289,286号;第5,322,798号;第5,341,215号;第6,268,125号に記載のタンパク質-タンパク質相互作用を測定するためのSPR装置およびSPRに基づくいずれの方法も本発明の方法において考えられる。
本発明の抗体のmigisペプチドとの結合特異性は、当技術分野で公知のいずれの方法によってアッセイしてもよく、それには、限定されるものでないが、migisエピトープとの結合を測定する方法および他のmigisを含有するペプチドとの交差反応性を測定する方法が含まれる。
mIg上に存在するmigisエピトープと結合する本発明の抗体の能力は、フローサイトメトリー分析および、限定されるものでないが、免疫組織化学を含む他の細胞染色技法などの当技術分野で周知の方法により決定することができる。
本発明のプロトコルおよび製剤は、ヒトに使用する前に、所望の治療または予防活性についてin vitroで、次にin vivoで試験することを考えている。例えば、本発明の特定の治療プロトコル、製剤または組合せ療法の投与が必要であるかどうかを決定するために利用できるアッセイとしては、標的細胞を培養で増殖し、本発明の製剤に暴露または接触させ、そして組織サンプルに対するかかる製剤の効果を観察するin vitro細胞培養アッセイが挙げられる。
特に、特定の抗体のADCCまたはCDCにより標的細胞の溶解に介在する能力をアッセイすることができる。ADCC活性を評価するためには、目的の抗体を免疫エフェクター細胞と組み合わせて標的細胞に添加し、これらを抗原抗体複合体により活性化させることにより、標的細胞の細胞溶解を起こすことができる。細胞溶解は、一般に、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料もしくは天然の細胞内タンパク質)の放出により検出することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。In vitro ADCCアッセイの具体例は、Wisecarverら, 1985, 79:277-282;Bruggemannら, 1987, J Exp Med 166:1351-1361;Wilkinsonら, 2001, J Immunol Methods 258:183-191;Patelら, 1995 J Immunol Methods 184:29-38におよび本明細書(実施例3を参照)に記載されている。あるいはまたはさらに、目的の抗体のADCC活性をin vivoで、例えば、Clynesら, 1998, PNAS USA 95:652-656に開示された動物モデルで評価することもできる。抗体のCDC活性を評価するためには、例えば、Gazzano-Santoro ら, 1996, J. Immunol. Methods、202:163に記載のCDCアッセイを実施することができる。
予防または治療薬は、ヒトで試験する前に、限定されるものでないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなど好適な動物モデル系で試験することができる。例えば、喘息の研究に最も関係のある動物系はアカゲザル(Rhesus Monkey)モデルである。線虫に感染している少数のアカゲザルモデルは、線虫の動物回虫(Ascaris suum)のエキスに過敏性を発症するという事実を利用する。これらの過敏症のサルに回虫抗原を含有するスプレーをかけると、これらのサルは喘息に類似する呼吸問題を発症する。Patterson、R.、J. Clini. Invest. 57: 586-593 (1976)。回虫過敏症のサルに実験治療または対照治療を施し、治療の臨床成果を確認する測定を行う。測定値には、1以上の次の指標、回虫チャレンジ時の喘息症候群、循環中のIgEのレベル、循環中のIgEを保持するB細胞のレベル、および好塩基球上のIgE密度の数値化が含まれる。
5.6 予防および治療上の用途
先に考察したように、migisエピトープと特異的に結合する薬剤はB細胞介在性疾患および傷害の予防、管理、治療または改善に利用することができ、前記疾患および傷害にはB細胞のモノクローナル増殖から生じるもの、特にIgEが介在するものが含まれる。
IgEが介在する疾患および障害としては、IgEのFcεRIとの結合に関連する疾患および障害、例えば、IgE抗体と肥満細胞メディエーターが原因であるアレルギー性疾患、限定されるものでないが、アレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を含む、アレルギー性喘息{季節性花粉(イネ科草本:ライムギ、チモシー、ブタクサ)および樹木(カバノキ)、ダストダニ、動物の毛、羽毛および真菌性胞子などの四季を通じてのアレルゲンならびに界面活性剤および金属などの職業性抗原などの特定の抗原因子に関連する喘息を含む}、感染などの非抗原特異的因子、煙、煙霧、ジーゼル排気粒子および二酸化硫黄などの刺激物質、気道冷却(運動、冷たい気道温度)および情動性ストレスに関連する喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性胃腸病ならびにアナフィラキシー疾患{全身アナフィラキシーおよび食品のタンパク質(例えば、ピーナッツ)、毒液、ワクチン、ホルモン、抗血清、酵素およびラテックスに対する反応を含む}、ハプテン(抗生物質、筋肉弛緩薬、ビタミン、細胞毒およびオピエートを含む)に対する反応、およびデキストラン、鉄デキストランおよびポリゲリンなどの多糖に対する反応およびじんま疹-血管性浮腫などの他のアナフィラキシー疾患または障害が挙げられる。
さらに、ある特定の胃腸の炎症障害にIgEが介在することは公知である。かかるIgE介在性胃腸炎症性障害は、IgEの影響による病理により特徴づけられるまたは生じる傷害または感染が原因である様々な侵襲に対する難治性慢性反応として広く定義しうる。IgE介在性胃腸炎症性障害の範囲に含まれる特別な傷害としては、炎症性腸疾患(例えば、クローン疾患、潰瘍性大腸炎、非定型的大腸炎および感染性大腸炎)、胃腸病、腸炎、粘膜炎(例えば、経口粘膜炎、胃腸粘膜炎、経鼻粘膜炎および直腸炎)、壊死性全腸炎および食道炎)が挙げられる。
B細胞増殖疾患に関連する疾患および障害としては、例えば、高IgE症候群(ヨブ病)、移植後リンパ球増殖障害(PTLD)、意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)、Waldenstromマクログロブリン血症、神経障害、腎障害、骨髄腫、炎症性および自己免疫性疾患、例えば慢性関節リウマチおよびループスが挙げられる、
1以上の本発明の抗体の有効量を投与することにより予防、治療または阻害することができる疾患および障害としては、限定されるものでないが、喘息、自己免疫性障害(例えば、ループス、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、橋本病、および免疫不全症候群)、炎症性障害(例えば、喘息、アレルギー性の障害、および慢性関節リウマチ)、感染性疾患(例えば、AIDS)、および増殖性障害(例えば、白血球病、癌、およびリンパ腫)が挙げられる。特定の実施形態において、本抗体を喘息の治療に利用しうる。他の実施形態において、本抗体を本抗体を病理の主構成要素としてムチン生成に関わる疾患を治療するために利用しうる。かかる疾患には、例として、嚢胞性線維症、気腫およびCOPDが含まれる。
5.7 製剤および投与
前記の通り、本発明は、B細胞介在性疾患または障害を予防、管理、治療または改善するための、migisエピトープと特異的に結合する薬剤の使用に関する。従って、本発明は、migisエピトープと特異的に結合する1以上の本発明の抗体を含む製剤(例えば、医薬組成物)(本明細書では「本発明の製剤」または単に「製剤」とも呼ぶ)を提供する。特定の実施形態において、前記薬剤はcεmx.migisエピトープと特異的に結合しかつIgE生成を阻害する。従って、migisエピトープと特異的に結合する製剤は、IgE介在性疾患(例えばアレルギー)またはその1以上の症候群を予防、管理、治療または改善するために有用であると考えられる。
一実施形態において、1以上の本発明の抗体を含む製剤(例えば、医薬組成物)は、液体製剤(本明細書では、「液体製剤」と呼び、総称「本発明の製剤」および「製剤」に特定して含まれる)である。特定の実施形態では、液体製剤は、界面活性剤および/または無機塩を実質的に含まない。他の特定の実施形態において、液体製剤は、約5.0〜約7.0、約5.5〜約6.5、約5.8〜約6.2、および約6.0のpH範囲を有する。他の特定の実施形態において、液体製剤は、5.0〜7.0、5.5〜6.5、5.8〜6.2、および6.0のpH範囲を有する。さらにまた他の特定の実施形態において、液体製剤は、濃度が約1mM〜約100mM、約5mM〜約50mM、約10mM〜約25mMのヒスチジンを含む。さらに他の特定の実施形態において、液体製剤は、濃度が1mM〜100mM、5mM〜50mM、10mM〜25mMのヒスチジンを含む。
他の実施形態では、液体製剤は、濃度が約50mg/ml、約75mg/ml、約100mg/ml、約125mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、約225mg/ml、約250mg/ml、約275mg/ml、もしくは約300mg/mlの1以上の本発明の抗体を含む。他の実施形態において、液体製剤は、濃度が50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、225mg/ml、250mg/ml、275mg/ml、または300mg/mlの1以上の本発明の抗体を含む。さらに他の実施形態において、液体製剤は、以下に挙げる特性の1以上を表す:安定性;低いないし検出不可能である抗体断片化および/または凝集のレベル;ほとんどまたは全くない製造、調製および貯蔵中の抗体または抗体フラグメントの生物活性喪失。ある特定の実施形態において、液体製剤は約4℃の好適な条件下の1年以内の貯蔵で、50%未満、30%未満、20%未満、10%未満、あるいは5%もしくは1%未満しか抗体活性を喪失しない。抗体の活性は、それぞれの抗体について好適な抗原結合またはエフェクター機能アッセイにより決定することができる。さらに他の実施形態において、液体製剤は、粘度および濁度が低い。特別な実施形態において、液体製剤は、1℃〜26℃の範囲内のあらゆる温度で10.00cP未満の粘度を有する。粘度は、当分野では周知の多数の方法により決定することができる。例えば、ポリペプチド溶液の粘度はViscoLab 4000粘度計システム(Cambridge Applied Systems)を用いて測定することができ、このシステムはViscoLab Piston(SN:7497、0.3055”、1〜20cP)およびS6S参照標準(Koehler Instrument Company, Inc.)を備えかつ分析するサンプルの温度を調節する水浴に接続されている。サンプルを所望の出発温度(例えば、2℃)のチャンバーに充填し、ピストンをサンプル中に下げる。サンプルをチャンバーの温度まで平衡化した後、測定を開始する。温度を所望の速度で所望の最終温度(例えば、≧25℃)まで上昇させる。そして粘度の時間経過を記録する。
液体製剤はさらに、1以上の賦形剤、例えば、糖、アミノ酸(例えば、アルギニン、リシン、およびメチオニン)およびポリオールを含むと考えられる。液体製剤についてのその他の説明、調製および分析方法については、例えば、WO 03/106644;WO 04/066957;およびWO 04/091658に記載されている。
一実施形態において、本発明の製剤(例えば、液体製剤)は、内毒素および/または関連する発熱物質を実質的に含まない発熱物質非含有製剤である。内毒素とは、微生物の内部に閉じ込められ、該微生物が分解されるかまたは死ぬとき、遊離する毒素を意味する。発熱物質はまた、細菌およびその他の微生物の外膜からの熱誘発性熱安定性物質(糖タンパク質)も含む。これらの物質は両方とも、ヒトに投与すると、熱、低血圧およびショックを引き起こしうる。有害な作用が考えられるため、静脈内投与する医薬剤溶液から、たとえ低レベルの量であっても内毒素を除去するのが有益である。米国食品医薬品局(FDA)は、静脈内の薬剤適用の場合、1時間に体重1キログラム当たりの用量につき5内毒素単位(EU)の上限を定めている(The United States Pharmacopeial Convention, Pharacopeial Forum 26 (1):223(2000))。モノクローナル抗体の場合に考えられるように、体重1キログラム当たり数百から数千ミリグラムの量の治療タンパク質を投与する場合、痕跡量の内毒素であっても除去するのが有益である。一実施形態において、組成物中の内毒素および発熱物質レベルは、10 EU/mg未満、または5 EU/mg未満、または1 EU/mg未満、または0.1 EU/mg未満、または0.01 EU/mg未満、または0.001 EU/mg未満である。
必要とする被検者(例えば、ヒト)に投与しようとする1以上の本発明の抗体を含む製剤は薬学的に許容される賦形剤で製剤化すべきであることは、当業者にとって明らかであろう。本発明の製剤、特に医薬組成物の例としては、限定するものではないが、PCT公開番号WO 02/070007、WO 03/075957およびWO 04/066957に開示された製剤が挙げられる。概要を説明すると、これらの製剤(例えば液体製剤)中に本発明の抗体と一緒に含まれる賦形剤は、治療に用いる製剤の予想される投与経路に基づいて選択することができる。製剤の投与経路は、治療しようとする状態に応じて変わる。例えば、静脈内注射は、リンパ系癌または転移した腫瘍のような全身性疾患の治療に好ましいと考えられる。投与しようとする製剤の用量は、過度の実験を行なうことなく、標準的用量応答試験との関連で当業者が決定することができる。このような決定を実施する上で考慮すべき関連状況として、治療しようとする状態、投与しようとする製剤の選択、個々の被験体の年齢、体重、および応答、ならびに被験体の症状の重症度が挙げられる。例えば、実際の被験体の体重を用いて、投与しようとする製剤における本発明の抗体の用量をミリリットル(mL)単位で計算することができる。「理想の」体重までの下方調節値がないこともある。そのような状況では、以下の式により適切な用量を計算することができる:
用量(mL)=[被験体の体重(kg)×用量レベル(mg/kg)/薬剤濃度(mg/mL)]
状態に応じて、製剤を被験体に経口、非経口、筋内、鼻内、膣内、直腸、舌、舌下、頬側、口腔内、静脈内、皮膚、皮下および/または経皮投与することができる。
従って、経口、非経口、筋内、鼻内、膣内、直腸、舌、舌下、頬側、口腔内、静脈内、皮膚、皮下および/または経皮投与するために設計された製剤を、過度の実験を行なうことなく、当分野で周知の手段により、例えば、不活性希釈剤または食用担体を用いて製造することができる。製剤は、ゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的では、本発明の製剤に賦形剤を含有させ、錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューイングガムなどの剤形で使用することができる。
また、錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤などに、結合剤、受容体、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、および/または香味料を含有させてもよい。結合剤の例として、微晶質セルロース、トラガカントおよびゼラチンが挙げられる。賦形剤の例として、デンプンおよびラクトースが挙げられる。崩壊剤の例として、アルギン酸、コーンスターチなどが挙げられる。滑沢剤の例として、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カリウムが挙げられる。滑り剤の例は、コロイド状二酸化ケイ素である。甘味料の例として、ショ糖、サッカリンなどが挙げられる。香味料の例として、ハッカ、サリチル酸メチル、オレンジ香料などが挙げられる。このような各種製剤を製造するのに用いる材料は、使用する量で薬学的に純粋であり、かつ無毒でなければならない。
本発明の製剤は、例えば、静脈内、筋内、硬膜下腔内および/または皮下注射などにより、非経口投与することができる。非経口投与は、本発明の製剤を溶液または懸濁液に含有させることにより達成することができる。このような溶液または懸濁液として、滅菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールおよび/またはその他の合成溶剤が挙げられる。非経口投与製剤には、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールおよび/またはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸および/または亜硫酸水素ナトリウム;ならびにキレート剤、例えば、EDTAも含まれる。また、バッファー、例えば、酢酸、クエン酸およびリン酸バッファー;ならびに、等張性調節剤、例えば、塩化ナトリウムおよびデキストロースを添加してもよい。非経口投与製剤は、アンプル、使い捨て注射器および/またはガラスまたはプラスチック製の多用量バイアルに封入することができる。直腸投与は、直腸および/または大腸への製剤の投与を含む。これは、座薬および/または浣腸を用いて達成することができる。当分野で周知の方法により座薬製剤を製造することができる。経皮投与は、皮膚を通して製剤を経皮吸収させることを含む。経皮投与製剤として、パッチ、軟膏、クリーム、ゲル、軟膏剤などが挙げられる。本発明の製剤を被験体に鼻内投与することができる。本明細書で用いる表現「鼻内投与(する)」とは、被験体の鼻内経路および/または鼻腔の粘膜に製剤を投与することを含む。
ある特定の実施形態において、製剤(例えば、液体製剤)を皮下(すなわち、皮膚の下)投与により哺乳動物に投与する。この目的のために、注射器を用いて、製剤を注射することができる。しかし、製剤を投与するためのその他の装置を使用してもよく、そのような装置として、例えば、注射装置(例:Inject-easeおよびGenject device)、インジェクターペン(例:GenPen(登録商標));自動インジェクター装置、針のない装置(例:MejiJectorおよびBioJector);ならびに皮下パッチ送達系などが挙げられる。
本発明の他の態様においては、徐放製剤を提供する。特定の実施形態において、徐放製剤は液体製剤を含む。徐放製剤は、限定するものではないが、ポリマー性ナノまたはミクロ粒子およびゲル(例えば、ヒアルロン酸ゲル)を含む多数の薬剤から製剤化することができる。利便性以外にも、徐放製剤はタンパク質薬剤の送達の場合に長時間にわたりタンパク質(例えば、Fc変異体および/または変異体Fc融合物)を分解または放出から保護しかつタンパク質を特定の部位または身体区分に局所的に送達することによって全身への暴露を低減できるといった利点を提供する。
本発明はまた、例えば、タンパク質(例えば、本発明の抗体)を生物分解性ポリマーマトリックスに包理した注射可能な貯留物製剤も考慮する。用いることができるポリマーとして、限定するものではないが、乳酸とグリコール酸のホモおよびコポリマー(PLGA)が挙げられる。PLGAは加水分解により分解して最終的に酸性モノマーをもたらすが、例えば、微小球を製造するために利用する条件下では化学的に非反応性であるためタンパク質を改変することはない。皮下または筋内注射後、拡散とポリマー分解の組み合わせによりタンパク質を放出する。様々な組成物および分子量のポリマーを用いることにより加水分解速度を変えて、放出を数日から数ヶ月持続させるさせることができる。さらなる態様において、本発明は鼻内スプレー製剤を提供する。特定の実施形態においては、鼻内スプレー製剤は本発明の液体製剤を含む。
本発明の製剤は、本発明の方法に従い、限定されるものでないが、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患(特にIgE介在性疾患)またはそれらの1以上の症状の予防、管理、治療もしくは改善のために用いることができる。一実施形態では、本発明の製剤は無菌であり、しかも、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患(特にIgE介在性疾患)を有する被検者に対する特定の投与方法に適した形態をしている。
本発明の製剤は、他の活性成分を含んでよく、それらの活性成分としては、限定されるものでないが、吸入喘息処方、例えば、限定されるものでないが、喘息関連治療薬、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋肉弛緩薬、麻薬薬、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗疥癬薬、副腎皮質ステロイド、タンパク質同化ステロイド、喘息関連薬、ミネラル、栄養、甲状腺作用薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、下剤薬、抗凝血下剤薬、エリスロポエチン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン置換薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳薬、毛様体筋麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、有糸分裂インヒビター、放射性医薬品、抗抑制薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経模倣薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息治療薬、βアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエンインヒビター、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたは類似体、ドルナーゼα、サイトカイン、またはサイトカインアンタゴニストが挙げられる。
特に、本発明の喘息関連組成物は、場合により、さらに喘息関連治療薬、TNFアンタゴニスト(例えば、限定されるものでないが、TNF Ig由来のタンパク質または断片、可溶性TNF受容体または断片、その融合タンパク質、または小分子TNFアンタゴニスト)、抗リウマチ薬、筋肉弛緩薬、麻薬性薬、非ステロイド抗-炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔性薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホアミド、テトラサイクリン、他の抗菌薬)、抗疥癬薬、コルチコステロイド、喘息関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐薬、抗潰瘍薬、下剤、抗凝血薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン置換薬、エストロゲン受容体モジュレーター、散瞳薬、毛様体筋麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、有糸分裂のインヒビター、放射性医薬品、抗抑制薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、吸入グルココルチコステロイド、交感神経模倣薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息治療薬、βアゴニスト、吸入ステロイド、ロイコトリエンインヒビター、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリンまたは類似体、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニストから選択される少なくとも1つの薬物を含んでもよい。好適な量および用量は当技術分野で周知である。例えば、Wellsら, eds., Pharmacotherapy Handbook, 2.sup.nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照されたい。
本発明は、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患(特にIgE介在性疾患)またはそれらの1以上の症状を予防、管理、治療もしくは改善する方法であって、(a)必要とする被験体に、migisエピトープと特異的に結合する1以上の本発明の抗体を含む製剤の予防または治療に有効な量の1用量を投与するステップ、および(b)次いで前記製剤の1以上の用量を投与して、本発明の抗体の血漿濃度を所望のレベル(例えば、約0.1〜約100μg/ml)に維持するステップを含んでなる前記方法を提供する。特定の実施形態では、本発明の抗体の血漿濃度を10μg/ml、15μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、35μg/ml、40μg/ml、45μg/mlもしくは50μg/mlに維持する。特定の実施形態では、投与しようとする本発明の抗体の前記有効量は、1用量当たり、少なくとも1mg/kg〜100mg/kgである。他の特定の実施形態では、投与しようとする本発明の抗体の前記有効量は、1用量当たり、少なくとも1mg/kg〜20mg/kgである。他の特定の実施形態では、投与しようとする本発明の抗体の前記有効量は、1用量当たり、少なくとも4mg/kg〜10mg/kgである。さらに他の実施形態では、投与しようとする前記本発明の抗体の有効量は、1用量当たり、50mg/kg〜250mg/kgである。さらにまた他の実施形態では、投与しようとする本発明の抗体の前記有効量の有効量は、1用量当たり、100mg〜200mgである。
本発明は、検出可能な薬剤、治療薬剤もしくは薬物とコンジュゲートまたは融合した、migisエピトープと特異的に結合する1以上の本発明の抗体を1以上の容器内に含むキットであって、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患、特にIgE介在性疾患または障害を予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングまたは診断するために用いる前記キットを提供する。「IgE介在性障害」および「IgE介在性疾患」は、免疫グロブリンIgEに対する過剰生成および/または過敏性を特徴とする症状または疾患を意味する。特定すると、IgE介在性障害としては、アナフィラキシー過敏性およびアトピー性アレルギーに関連する症状、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎および結膜炎(花粉症)、湿疹、じんま疹および食品アレルギーなどが挙げられる。
本発明はまた、migisペプチドと特異的に結合する1以上の本発明の抗体を第1の容器内に含みかつ本発明の抗体以外の1以上の予防または治療薬を第2の容器内に含むキットであって、限定されるものでないが、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患、特にIgE介在性疾患または障害を予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングまたは診断するために用いる前記キットも提供する。本発明はまた、治療薬剤もしくは薬物とコンジュゲートまたは融合した、migisペプチドと特異的に結合する1以上の本発明の抗体を第1の容器内に含み、かつ本発明の抗体以外の1以上の予防または治療薬を第2の容器内に含むキットであって、限定されるものでないが、アレルギー疾患、骨髄腫、B細胞のモノクローナル増殖が原因である疾患、自己免疫および炎症性疾患を含むB細胞介在性疾患、特にIgE介在性疾患または障害を予防、治療、管理、改善、検出、モニタリングまたは診断するために用いる前記キットも提供する。キットはさらに包装材料および/または取扱説明書を含んでもよい。
実施例
これから本発明を次の実施例を参照して説明する。これらの例は説明の目的だけで提供したものであって、いかなる方法にしろ本発明はこれらの例に限定されないと解釈すべきであり、そしてむしろ本明細書に記載の教示の結果として明らかにになるいずれのおよび全ての変化を包含すると解釈すべきである。
6.1 実施例1 ヒト抗ε-migis抗体の開発
ε-migisペプチド(配列番号1)と結合した15個のユニークなファージクローンを、ナイーブ(naive)なヒトFabファージディスプレイ・ライブラリーから標準の可溶および固定化抗原パニング技法を用いて単離した。ELISAによれば、単離した抗体の全てはε-migisペプチドと特異的に結合したが、スクランブルしたペプチドと結合しなかった。しかし、「A1c」と名づけた抗体(図13を参照)だけは膜結合型IgEを発現する細胞と結合した。さらに研究をすると、A1cはまた、膜IgM、IgAを発現する細胞およびT細胞(データは示してない)を含む他の細胞型とも結合することが確認された。ε-migisアミノ酸配列の試験はエピトープの一部分が、anthrax PAに対する受容体であることが最近見出されたホスホイノシチド結合タンパク質(Lu Q、ら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2004、101:17246-17251)および未知の仮想タンパク質KIAA1227を含む、他のタンパク質により共有されることを明らかにした(図1Bを参照)。ε-migisと類似するホスホイノシチド結合タンパク質の領域に対応するペプチド(「材料と方法」に記載のペプチドvi)を合成して抗ε-migis抗体の結合を試験するELISAアッセイに用いた。図7Aに示したように、抗ε-migis抗体A1cはこのペプチドと、ε-migisペプチドと結合したのとほとんど同じように効率的に結合することを見出した。対照的に、cεmx-migis(下記参照)と結合した抗体はこのペプチドと結合しなかった。これらの結果は共に、ε-migisペプチドがmIgE特異的抗体結合に対する効果的な標的でないことを示唆する。
さらに高い特異性をもつヒト抗体クローンを得るために、ヒト膜結合型ε鎖の長いアイソタイプのcεmx領域からのさらなる8個のアミノ酸を含有する第2のペプチド(「cεmx.migis」と名づけた)(配列番号5)を用いて、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーからさらなるクローンを単離した。3ラウンドのパニングの後に、ほぼ2500個の個々の細菌コロニーからのファージ単離物をペプチドELISAによりスクリーニングした。cεmx.migisペプチドとの結合にポジティブなほぼ364個の単離したクローンの結合特性を試験した。ELISA研究は、大まかに、クローンの3分の2がcεmx.migisとε-migisの両方と結合し、残る3分の1(ほぼ108個)はcεmx.migisペプチドとだけ結合することを実証した。これらはε-migisまたは試験した他の関係ペプチドと結合しなかった(データは示してない)。20個をさらなる研究のために無作為に選んで、全長IgGへ変換した。cεmx.migis特異的クローンのFACS分析は、最初に単離したε-migis特異的クローンのように、cεmx.migis抗体が2つのカテゴリーに分類されることを示した。ほぼ25%は膜結合型IgEを発現する細胞と結合しない一方、75%は膜結合型IgEを発現する細胞に対して特異的でなかった(すなわち、クローンA1cと同様に、IgEを発現するしないに関わらず、試験した全てのヒト細胞と結合した)。
標準スクリーニング法を用いると、ε-migis特異的ペプチドとcεmx.migis特異的ペプチドの両方は、mIgE発現に関係なくヒト細胞と結合するかまたは全く細胞と結合しなかった。これらの研究は共に、1つの優性エピトープのε-migisペプチドが少なくとも1つの広く発現された細胞表面タンパク質に共有されること(「共有されるエピトープ」と名づけた)およびε鎖が細胞表面上に存在するときに、1つのε-migis依存性エピトープのcεmx.migisペプチドが隠されるかまたは不在であること(「隠されたエピトープ」と名づけた)を示す。例えば、A1cは共有されるエピトープと結合する一方、CP1-B1(「B1」とも名づけた、図14を参照)は隠されたエピトープと結合する。
cεmx-migisペプチド上に存在する他のエピトープを認識するヒト抗体クローンを得るために、共有されるおよび隠されたエピトープ特異的抗体(それぞれ、A1cおよびB1)の両方を用いる阻害ELISA技法を工夫して、異なるエピトープ特異性を有しうるクローンだけを同定した。cεmx.migisスクリーニングで単離されたユニークなクローンを、共有されるおよび隠されたエピトープに対して特異的な抗体により阻害されなかったクローンについてスクリーニングした(例えば、図3および4を参照)。いくつかの異なるプロファイル、すなわち、A1cまたはB1により阻害された抗体、A1cまたはB1により阻害されなかった抗体が見られ(例えば、図4、白い矢印を参照)、さらに、A1cとB1の両方により阻害されたいくつかの抗体が同定された(例えば、図4、黒い矢印を参照)。ほぼ25クローンがcεmx.migisペプチドに対して特異的でありかつA1cまたはB1により阻害されないと同定され、恐らくA1cまたはB1エピトープ以外のエピトープと結合したことを示唆するので、これらのクローンを選択してさらなるスクリーニングを行った。これらの選択したFabクローンを、軽鎖を欠くクローンD9を除いて、全長IgGに変換した。FACS分析は、D5抗体(D5 IgGとも名づけた)は膜結合型IgEを発現する細胞とだけ結合する(図5、6および8)ことを実証し、そしてELISA研究は、D5がcεmx.migisペプチドで特異的に結合しそしてPIBPペプチドにより表される共有されるエピトープではないことを実証した(図7A)。2つのさらなるクローン、F4およびD9も、mIgEを発現する293トランスフェクタントと選択的に結合するがトランスフェクトされてない細胞と結合しないことが見出された(図8)。図6Bに示したように、D5抗体はまた、mIgMを発現するヒトB細胞系RPMI 1788、ヒトmIgAを発現するDaikiki、IgGを分泌するRAJI細胞、およびT細胞系であるCCRF-CEMまたはヒトB-リンパ様細胞系であるSKO-007(mIgEを発現すると報じられているが、実際には本発明者らは一致してこの発現は非常に弱くかつ不安定であることを見出した)と結合しなかった(本発明者らの未刊のデータおよびChen HYら, Int Arch A
llergy Immunol., 2002, 128:315-24)。図8は、D5、F4およびD9抗体だけが膜結合型IgEを発現する細胞と結合することを実証する。従って、これらの抗体は、膜結合型ε鎖と特異的に結合しかつ他の細胞表面タンパク質と有意に交差反応しない全ヒト抗体を表す。以下に記載のさらなる研究を、クローンD5について実施した。クローンD9は重鎖だけの抗体として最適化するかまたは適当な結合特異性をもつ軽鎖パートナーをスクリーニングするための重鎖パートナーとして用いることができる。
材料と方法 ペプチド:アミノヘキサミン酸リンカー(Ahx)に続いてビオチン化リシン(K-biot)残基を、それぞれのペプチドのC末端に結合した。色々なペプチドを表2に総括する。(iii)と(iv)を除く全てのペプチドはPBS、pH 7.4に溶解した。ペプチド(iii)と(iv)はPBSに溶解しないので10%DMSOに溶解した。
組換えタンパク質:3つの異なる組換えタンパク質を本研究に用いた。それらは:(i)膜繋留部分を欠くIgE、(ii)CH4ドメインの末端にcεmx部分に対応する52個のアミノ酸をもつIgEおよび(iii)CH4ドメインの末端にmIgEのcεmxおよびmigis部分に対応する67個のアミノ酸をもつIgEである。カルボキシル末端伸展部を欠く、およびcεmx部分をもつ、およびcεmx.migis部分をもつタンパク質間の唯一の相違はCH4の末端にある。IgEは配列SVNPGKで終わる。cεmxおよびcεmx.migisをCH4ドメインの末端にもつ他の2つのタンパク質において、CH4はSVNPで終わる。この相違は可溶性IgE(sIgE)とmIgEの間の相違に対応する。これらのタンパク質用のベクターは、タンパク質を培地へ分泌するように設計した哺乳動物発現ベクターにおいて、CMVプロモーターのもとで重鎖および軽鎖をコードするオープンリーディングフレームをクローニングすることにより作製した。3つのタンパク質は非常に低いレベルで発現したので、これらを精製しなかった。これらの細胞培養上清中の存在は、タンパク質を抗ヒトIgE Fc特異的抗体(5μg/ml、PBS中、7.4)を用いて捕獲しそしてHRPとコンジュゲートした抗ヒトκ抗体で検出することに関わるサンドイッチELISAによりモニターした(データは示してない)。これらの3つの異なるタンパク質のcεmx.migis特異的抗体(後にD5と名づけた)による結合を研究するために行った他の実験においては、タンパク質を、抗IgG-Fc抗体を介してELISAプレート上に固定したD5 IgG(PBS中の5μg/ml、7.4)により捕獲し、HRPとコンジュゲートしたIgE FC特異的抗体を用いて検出した(図7C)。合胞体ウイルスのFタンパク質と結合する治療用モノクローナル抗体であるSynagis(登録商標)をネガティブ対照としてD5 IgGによる結合が特異的であることを示した。
ファージ ライブラリー:これらの研究に用いたファージライブラリーはFAB-310 Fabライブラリーと呼ばれ、Dyax社(Dyax Corp.)から得た。ライブラリーは全ヒトFabライブラリーである。ライブラリーの複雑度は1010を超え、多様なヒトおよび非ヒト抗原に対する効果的な抗体供給源であることが示されている(Hoet RMら、Nature Biotechnology 2005、23、344-8)。
ε-migisペプチドのパニング:(1)溶液中で:各ラウンドにおいてファージライブラリーをTPBS(0.1% Tween 20を含むPBS、pH 7.2)中の3%BSAを用いて1時間ブロックし、次いでストレプトアビジンをコートした磁性ビーズ上で2時間選択解除(deselect)した。次いでライブラリーを、C末端にリンカーを介してビオチン化したε-migisペプチドと共にインキュベートした。ペプチド-ファージ複合体(ならびにフリーのペプチド)をストレプトアビジンをコートした磁性ビーズ上に捕獲した。ビーズを次いで7回それぞれTPBSおよびPBSを用いて洗浄し、それぞれの洗浄は2分間とした。洗浄後、ファージを100mMトリエチルアミン水溶液を用いて15分間溶出した。溶出したファージを直ぐに0.5M Tris、pH 8を用いて中和し、滴定し、そして大腸菌に感染させて増幅して次のラウンドのパニングに備えた。ラウンド1および2では2.0μg/ml(ほぼ1μM)のペプチド濃度を用い、ラウンド3では0.20μg/ml(ほぼ0.1μM)を用いた。(2)固定して:溶液パニングで記載したように、ファージライブラリーをTPBS中(0.1% Tween 20を含むPBS、pH 7.2)の3%BSAを用いてブロックし、次いで2mg/mlニュートラアビジンの1mlをコートしたニュートラアビジン・コート・イムノチューブ上で選択解除(deselect)した。別のチューブでビオチン化ε-migisペプチドを5μg/mlコートしたニュートラアビジン表面上に捕獲しそして選択解除(deselect)したライブラリーを捕獲したペプチド床上でインキュベートした。前記床を15分間、それぞれTPBSおよびPBSを用いて洗浄し、ファージを100mMトリエチルアミン水溶液を用いて15分間溶出した。上記のように、溶出したファージを直ぐに中和し、滴定し、そして大腸菌に感染させて増幅して次のラウンドのパニングに備えた。ラウンド1および2では25μg/ml(ほぼ13μM)のペプチド濃度を用い、ラウンド3では2.5μg/ml(ほぼ1.3μM)を用いた。近似的に500クローンを、ε-migisペプチドとだけ結合するがスクランブルしたペプチドと結合しないクローンについてELISAによりスクリーニングした。全部で51(10%)個のELISAポジティブクローンが存在し、18個がユニークなFabを表した。これらの18個のクローンをバッチでIgGに変換した。全IgGクローンのうち、ε-migisと特異的に結合するがスクランブルしたペプチドと結合しない12個を回収した。1つのクローン、A1cだけが、mIgE発現細胞と結合できることを示したが、次いでmIgEは非存在であっても細胞と結合することが見出され、その後、共有されるエピトープと結合することを確認した(図7Aを参照)。
cεmx.migisペプチドのパニング:パニングは、本質的に上記ε-migisペプチドパニングのように実施した。(1)溶液中で:ブロックしたライブラリーをストレプトアビジンをコートした磁性ビーズ上で選択解除し、次いでライブラリーを、C末端にリンカーを介してビオチン化したcεmx.migisペプチドと共にインキュベートした。ペプチド-ファージ複合体(ならびにフリーのペプチド)をストレプトアビジンをコートした磁性ビーズ上に捕獲した。次いでビーズを洗浄し、ファージを溶出した。ラウンド1および2では2.0μg/mlのペプチド濃度を用い、ラウンド3では0.25μg/ml(ほぼ0.1μM)を用いた。(2)固定して:ブロックしたライブラリーを、ニュートラアビジンをコートしたイムノチューブ上で選択解除した。ビオチン化cεmx.migisペプチドをニュートラアビジン表面上に捕獲しそして選択解除したライブラリーを捕獲したペプチド床上でインキュベートした。前記床を洗浄しかつ溶出した。ラウンド1および2では25μg/mlのペプチド濃度を用い、ラウンド3では2.5μg/mlを用いた。近似的に2500個の単離したクローンを、次いでcεmx.migisペプチドとの結合についてELISAによりスクリーニングし、364個がポジティブであった。ポジティブクローンを次いでcεmx.migisとε-migisペプチドの両方との結合についてスクリーニングした。256クローンがcεmx.migisとε-migisペプチドの両方と結合する一方、108クローンはcεmx.migisと優性的に結合した。分析した190クローン配列のうち、120がユニークであった。8個の無作為に拾ったクローンを最初にIgGに変換した。しかし、mIgEを発現する細胞と特異的に結合するものはなかった。cεmx.migisペプチドのパニングから得た120のユニークなクローンを阻害ELISAにより、A1cにより強く阻害されないクローンについてスクリーニングした。A1cに対してスクリーニングしたいくつかの代表的クローンを図3に示す。全部で66クローンを選択した。これらのクローンを統合して阻害ELISAにより、A1cまたはB1により強く阻害されないクローンについてスクリーニングした。図4はA1cおよびB1両方に対してスクリーニングしたいくつかの
代表的クローンから得た結果を示す。
ELISAスクリーニング:スクリーニング研究のために、単一細菌コロニー由来のファージ粒子を、Chowdhuryら(Mol Immunol. 1997 Jan;34(1):9-20)に記載の98ウエルフォーマットで救出した。次いで細菌培養を4℃に冷却し、そして細胞をほぼ3000〜5000 x gで15分間4℃にて遠心分離により取除いた。組換えファージ粒子を含有する上清をスクリーニングアッセイに用いた。ビオチン化cεmx-migs ペプチドを、TPBS中の3%BSAを用いてブロックしておいたニュートラアビジンコートされたELISAプレート上に固定した。ウエルをブロックした後、個々のファージクローンを含有する細菌培養上清をELISAウエルに加えた。60分間、周囲温度におけるインキュベーションの後、ウエルを洗浄し、結合したファージを、HRPとコンジュゲートした抗-M13抗体を用いて検出した。ELISAプレートをPierceからのTMB基質溶液により現像した。反応を、2N硫酸を用いて停止し、発色強度を450nmにて測定した。
阻害ELISAスクリーニング:ビオチン化cεmx-migsペプチドを、先に記載したニュートラアビジンコートしたELISAプレート上に固定した。ペプチドパニングにより単離した個々のファージクローンを含有する細菌培養を、無関係なIgGアイソタイプ(呼吸器合胞体ウイルスのFタンパク質に対して特異的)対照またはA1c(抗-共有されるエピトープ抗体)またはB1(抗-隠されたエピトープ抗体)とともに、別のELISAウエルに加えた。60分間の周囲温度におけるインキュベーション後に、ウエルを洗浄し、結合したファージクローンを、先に記載のHRPとコンジュゲートした抗-M13抗体を用いて検出した。阻害スクリーニングから得たいくつかの代表的なELISAデータを図3および4に示す。いくつかのクローン、すなわち、A8、CP3-B1、C3、C11、D2、D5、D8、D9、F4およびE6を選択して、IgGに変換し、膜IgEでトランスフェクトした細胞との結合を分析した(下記参照)。
全長IgGの変換と発現:ファージディスプレイのベクター中のFab遺伝子は、細菌リボソーム侵入部位(RBS)を表すDNA片によるFd断片から分離された全軽鎖から成る。ファージライブラリーから選択されたFab断片を全長IgGに変換するために、Fabカセットを、ユニークな制限酵素ApaLIおよびNheIを用いて単離し、そして哺乳動物発現ベクター中に、Fd断片が重鎖の定常ドメインの残部とインフレームでライゲートされるように、ライゲートする。この後、細菌RBSを2つの他の制限酵素切断部位により取り除いてかつ哺乳動物発現系として作用するIRES配列により置き換える。最終ベクターは従ってモノシストロンであり、その場合、軽鎖と重鎖はmRNA中に転写されるが2つの異なる鎖として翻訳される。
Fab(複数)を全IgGに変換した後、一過性トランスフェクションにより293細胞にIgGを発現させる。293細胞を、IgGをコードする哺乳動物発現ベクターを用いて(Invitrogen社のLipofectamine 2000を用いて製造業者取扱説明書に従い)トランスフェクトしそして72時間、Invitrogen社からの10%FBSを含有する超低IgGを含有するDMEM中で培養した。順化培地中のIgG濃度をサンドイッチELISAにより評価し、その場合、Sigma社からの抗ヒトκ抗体を用いてヒトIgGを順化培地から捕獲しそしてHRPとコンジュゲートした抗-ヒトIgG Fc抗体を用いて捕獲したIgGを検出した。順化培地中に存在するIgGの量は、精製ヒトIgG1-kを対照抗原として用いて平行の実験ランの標準曲線を作製することにより評価した。IgG濃度を正規化した後、順化上清をペプチド結合についてELISAによりスクリーニングし、次いでmIgE発現細胞との結合についてFACSに基づくアッセイでスクリーニングした。
細胞系作製:ヌクレオポレーション(Nucleoporation)を用いてトランスフェクトされた細胞系を作製した。293細胞を、(i)EphA2抗原と結合するmIgE重鎖および軽鎖または呼吸器の合胞体ウイルス(RSV)のFタンパク質と結合する他のmIgE重鎖および軽鎖対をコードする1本鎖バイ-シストロンの哺乳動物発現ベクター、および(ii)膜免疫グロブリンと会合してB細胞受容体複合体(BCR)を形成することが公知であるCD79a(Igα)およびCD79b(Igβ)をコードする1本鎖バイ-シストロンの哺乳動物発現ベクターを用いて共トランスフェクトした。トランスフェクション後24時間に、細胞を96ウエルプレートの1ウエル当たり500細胞/ウエルの密度で接種し、そして500μg/mlネオマイシン(mIgEを発現するプラスミドに対して)および100μg/mlハイグロマイシン(CD79aおよびCD79bを発現するプラスミドに対して)により、Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)(Invitrogen、Carlsbad、CAから入手)中で二重選択処理をした。2〜3週後にコロニーが現れ始めた。これらを拡大し、mIgE、CD79aおよびCD79bの発現について試験した。3つの抗原全てが良く発現する集団を、3色FACSにより単一細胞/ウエルをソートして、mIgE、CD79aおよびCD79bを一貫して発現するいくつかのクローンを得た。次いでこれらのクローンを0.2細胞/ウエルにおける限界希釈クローニングによりさらにサブクローニングした。図17は抗-huIgE、抗-Igα、抗-Igβおよび二次抗体対照による細胞表面染色のFACS分析のグラフであって、クローン1、2および5が全3つの細胞表面マーカーに対して染色することを示す。
FACS分析:FACS実験の全ステップは4℃にて実施した。競合ELISAにより同定した8クローンをmIgEと結合する能力について試験した。概要を説明すると、一過的にmIgEを発現する細胞(293-mIgE)を、抗-ヒトκ、抗-ヒトλ、抗-ヒトIgG-Fcおよび上記クローンのそれぞれ由来の抗体(A8、CP3-B1、C3、C11、D2、D5、D8、およびE6)ならびにA1cおよびB1(CP1-B1として示した)を用いて染色した。細胞を次いでFACSにより分析した(図5を参照)。
mIgE(293-mIgE)、IgA(Daikiki)、IgM(RPMI 1788)または非免疫グロブリン(293およびCCRF-CEM)を発現する細胞を、二次抗体単独(ヤギ抗-マウス(GtαMu)またはモルモット抗-ヒト(GαHu))または一次(マウス抗-ヒトIgE(MuαHuIgE)またはD5)+二次で染色するかまたは無染色のままとした。細胞を次いでFACSにより分析した(図6を参照)。実験を一過的にトランスフェクトした293細胞で行ったので、染色および平均蛍光の変化を示す細胞の両方の%を、図6Aにプロットした。
同様な実験を、2 x104 293、またはmIgE、CD79aおよびCD79bを用いて安定してトランスフェクトした293、またはRAJI、RPMI1740、Daikikiなどの他のヒトB細胞系、またはT-細胞系CCRF-CEMを用いて実施した。細胞を最初にPBS中の2%BSA(ブロッカー)を用いてブロックした。それらを次いで200μlブロッカー中に2〜5μgヒトIgGを含有する順化培地に45分間曝した。細胞を3時間、5mlブロッカーを用いて洗浄しそして5分間、400gにて遠心分離した。細胞を次いで、Alexar488を用いて標識した抗-ヒトIgG1 Fc特異的抗体により染色しそしてGuavaで分析した。結合を示したクローンのIgGを次いでさらに、migisまたはスクランブルしたペプチド(20ug/ml)の非存在および存在の両方のもとでFACS染色をすることにより研究した(データは示してない)。
6.2 実施例2 D5、ヒト抗cεmx.migis抗体の結合の特徴
ヒト抗cεmx.migis抗体D5の結合特異性をさらに特徴付けるために、組換えIgE抗体(rIgE)を作製して293細胞に発現させた。cεmx領域(52アミノ酸残基)またはcεmx-migis領域(67アミノ酸残基)をCH4端末に融合した可溶性rIgEのいくつかの変異体(それぞれ、rIgE.cεmxおよびrIgE.cεmx.migisと呼ぶ)も作製して発現させた。ELISA分析は、D5抗体がrIgE.cεmx.migisとだけ結合しそしてIgEまたはIgE.cεmxと結合しないことを実証し、D5はcεmx領域だけと有意に結合しないことを示した。これは、cεmx.migis特異的D5抗体が可溶IgEと結合しないこと、そしてIgEがcεmxおよびmigisペプチドの両方をC-末端に有するときだけIgEと結合することを示唆する。これらのデータはまた、ε-migisペプチドの一部が、D5により認識されるエピトープを形成するのに関わることを示唆する(図7B)。
cεmx領域またはcεmx-migis領域をIgGのCH3端末と融合した第2シリーズの組換え免疫グロブリン分子(それぞれ、rIgG.cεmxおよびrIgG.cεmx.migisと呼ぶ)も作製した。ELISA分析は再び、D5抗体がrIgG.cεmx.migisだけと結合することを実証した(図7C)。このデータは、cεmx.migis領域のコンフォメーションがIgEおよびIgG定常域両方の環境におけるものと類似していることを示す。
D5が認識するエピトープをさらに規定するために、cεmx.migisおよびε-migisペプチドに対する結合のBIAcore分析を実施した。図9に示したように、D5はε-migisペプチドだけと結合しないでむしろcεmx.migisペプチド中にのみ存在するエピトープと結合する。このデータは前記のELISA研究を立証し、cεmxとε-migisの両方のアミノ酸残基が、D5が認識するエピトープの形成に関わることを示す。
材料と方法
rIgEおよびrIgE変異体の作製:無関係な抗体の重鎖の可変領域を用いて組換えIgE(rIgE)を作製した。全体のcεmx領域(全52残基)または組み合わせたcεmx.migis領域(67残基)をrIgE構築物のCH4端末に融合してrIgE.cεmxおよびrIgE.cεmx.migisを作製した。3つの構築物の全てを293細胞中にトランスフェクトして発現させ、発現されたタンパク質の相対レベルをサンドイッチELISAにより確認した。概要を説明すると、様々なrIgE構築物を抗軽鎖抗体を用いて捕獲し、そしてHRPとコンジュゲートした抗IgE Fc抗体を用いて検出した。
rIgE結合ELISAアッセイ:D5またはアイソタイプ対照抗体(cont.)をELISAプレートと結合した抗IgG Fc抗体により捕獲した。様々なrIgE構築物を発現する細胞から得た順化培地をELISAウエルに加え、HRPとコンジュゲートした抗IgE Fc抗体を用いて結合を検出した。
BIAcore分析:D5のストレプトアビジン捕獲したcεmx.migisおよびε-migisペプチドとの相互作用を、BIAcore3000計器(Pharmacia Biosensor、Uppsala、Sweden)を用いる表面プラズモン共鳴検出によりモニターした。概要を説明すると、ペプチドをストレプトアビジンコートしたチップ上に捕獲し、D5抗体をその表面上に通過させる。
実施例3 D5、ヒト抗-cεmx.migis抗体の生物学的特徴
D5をADCCアッセイで試験して、cεmx.migisに対するヒト抗体は膜結合したIgEを発現する細胞を枯渇させるのに有用であることを実証した。D5は、トランスフェクトされて膜結合したIgEを発現する293細胞に対してだけ、ADCC活性に介在することがわかった。ADCC活性に介在する能力は、cεmx.migisペプチドの付加により特異的に阻害しうる(図11)。
抗体のFc域の位置239にアスパラギン酸、位置330にロイシンおよび位置332にグルタミン酸を有する、D5抗体の変異体を作製し(番号システムはKabat ら,1991、NIH Publication 91-3242、National Technical Information Service、Springfield、VAに記載のEU指数によるものである)、この変異体を「D53M」と名付けた。IgGのFcドメイン内のこれらの位置におけるこれらのアミノ酸残基の存在がADCC活性を増強することは示されている。図10および11に示したように、D53M Fc変異体抗体についてのADCC活性の増強が見られる。D5抗体に見られるように、D53M抗体のADCCに介在する能力は、cεmx.migisペプチドにより阻害される(図11)。
材料と方法
D53M Fc変異体の作製:D53M変異体を作製するために、D5重鎖の可変領域を、次の非野生型アミノ酸残基、239D、330Lおよび332Eを有するFc域変異体と融合した。
末梢血単球(PBMC)の調製:ヒト血液サンプルを複数の個々の健常なボランティアから、ヘパリン処理したシリンジを用いて採集し、二倍容のPBSバッファーにより希釈し、Lymphoprep勾配液(ICN、Irvine、CA)上に重層し、400gで30分間、室温にて遠心分離した。末梢血単球(PBMC)をその界面から収穫してPBSを用いて3回洗浄した。
ADCC:抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を、非放射性乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイ(Promega Corporation、Madison、WI)で試験した。概要を説明すると、293または293-mIgE標的細胞を96ウエルプレート中に分散させて、抗体(50μl)を連続希釈して20分間、37℃にてプレインキュベートした。次いでヒトエフェクター細胞(100μl)を25:1〜50:1の比で加えた。ヒトエフェクター細胞は、健常なドナーからリンパ球分離培地(MP Biomedicals、Irvine、CA)を用いて精製した末梢血単球(PBMC)であった。インキュベーション後、プレートを遠心分離し、そして細胞死を、細胞上清中へのLDH放出を30分間結合酵素アッセイを用いて測定することにより分析した。%比溶解(specific lysis)は、式:
%比溶解 = 100 x (EX - Espon- Tspon)/(Tmax - Tspon)
[式中、EXは実験ウエルからの放出を表し、Esponはエフェクター細胞だけからの自発性放出であり、Tsponは標的細胞だけからの自発性放出であり、そしてTmaxは溶解した標的細胞からの最大放出である]により計算した。
さらなるアッセイを293細胞ならびにmIgEおよびCD79aおよびCD79bを発現する293細胞を用いて実施した(図10C)。293細胞ならびにmIgEおよびCD79aおよびCD79bを発現する293細胞は、細胞解離バッファー(Invitrogen)を用いて収穫し、そして5%FBS(アッセイバッファー)を補充したRPMI 1640に2 x 105 細胞/mlの密度で再懸濁した。次いでこれらを96-ウエル丸底組織培養プレート(BD Biosciences、Bedford、MA)に50μl/ウエルにて加えると共に、アッセイバッファー(前記参照)中の様々な濃度の抗体を50μl/ウエルにて加え、そして37℃にて30分間プレインキュベートした。PBMCを、アッセイバッファー(前記参照)中の5 x 106細胞/ml(エフェクター(E):標的(T)比が50:1の場合)および2.5x106/ml(E:T比が25:1の場合)にて再懸濁し、そして100μl/ウエルにてアッセイプレートに加えた。9% Triton X-100(Promega、Madison、WI)の25μl/ウエルを完全溶解の対照として加えた。プレートを300gにて3分間遠心分離し、そしてインキュベーションを37℃にて4時間続行した。プレートを次いで300gにて10分間遠心分離し、そしてそれぞれのウエルからの上清50μlをMaxiSorp 96-ウエルプレート(BD Biosciences、Bedford、MA)に移した。再構成した基質ミックス(CytoTox 96非放射性細胞傷害性アッセイキット、Promega、Madison、WI)50μlを次いで全てのウエルに加え、暗所で室温にて30分間インキュベートした。停止溶液(Promega、Madison、WI)50μlをそれぞれのウエルに加え、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を、490nmの吸収を測定することにより数値化した。%細胞傷害性を前記のように計算した。
本発明の特別な実施形態を説明の目的で以上に記載したが、当業者は、多数の詳細の変法が添付した請求の範囲に記載した本発明から逸脱することなく行われうることを理解するであろう。
本明細書に記載したすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかもその各々が具体的にかつ個別に参考として本明細書に取り込まれていたと同程度に、本明細書中に参照によりその全文が全ての目的に対して本明細書に取り込むものとする。さらに、米国特許仮出願第60/721,525号(2005年9月29日出願)が本明細書に参照によりその全てが全ての目的に対して組み入れられる。