JP2009508487A - 細胞遊走アッセイ - Google Patents

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Abstract

本発明は、三次元血管内皮細胞間隙遊走(TEM)アッセイ用の構成物及び方法を提供する。これらの構成物及び方法は、ハイスループットTEMアッセイ、並びにTEMの過程を阻害又は刺激するTEMメディエータの分析及び識別に特に適している。細胞遊走検出用の構成物は、コラーゲンゲルを含む固層と、固層と接しており、第一タイプの細胞を含む第一細胞層と、この第一細胞層上に散布された第二タイプの遊走細胞とを備えている。コラーゲンゲルには、必要に応じて、ゼラチンが加えられている。96ウェルのフォーマットが開示されおり、ハイスループット細胞スキャナと組み合わせると、ハイスループットTEMアッセイが実現する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、一般的には、血管外遊出アッセイの方法に関するものであり、より詳細には、血管内皮細胞遊走アッセイ用の構成物、この構成物の製造方法及び使用方法に関するものである。
血管内皮を通しての細胞の遊走は、炎症、アテローム性動脈硬化症、癌の転移といった状態の病態生理の鍵を握る現象である。インビトロでの細胞遊走を測定する方法は、長年に渡って開発されてきた。最も一般的に使用されている方法では、人工バリア(膜)を使用しており、通常、遊走した細胞を手作業でカウントする必要がある。細胞遊走アッセイに関してすでに市販されている装置としては、古典的なボイデンチャンバ、細胞培養インサート(ボイデンチャンバの改良版)、FluoroBlock(登録商標)(BD Biosciences)、Cell Motility HitKit(登録商標)(Cellomics)がある。こうした装置の主要な限界としては、処理量が少ないこと、細胞を手作業でカウントせねばならないこと、細胞を透過させる材料として生物学的関連性の低い材料を用いていること、得られた結果の解析が難しいことなどを挙げるkとができる。
最近、インビボでの遊走細胞の環境を模倣するために多層とした機構が提案されている。(国際公開第2003/027256号及び同第2004/046337号参照)。しかし、この装置は準備が複雑で、処理量の多いスクリーニングには不向きである。
このように、簡便に使用できる優れた血管内皮細胞遊走(TEM)アッセイシステムであって、特に、創薬産業でのハイスループットスクリーニングに用いることができるようなアッセイシステムが必要とされている。
国際公開第2003/027256号パンフレット 国際公開第2004/046337号パンフレット
本発明の目的は、血管内皮細胞遊走アッセイ用の構成物及び方法を提供することにある。これらの構成物及び方法は、ハイスループットTEMアッセイ、並びにTEMの過程を阻害したり刺激したりするメディエータの分析に特に適したものである。
本発明の一つの側面では、細胞の遊走を検出する構成物を提供する。この構成物は、コラーゲンゲルを含む固層と、この固層と接し、第一タイプの細胞を含む第一細胞層と、上記第一細胞層上に散布された第二タイプの遊走細胞とを備えている。必要に応じて、コラーゲンゲル層は、ゼラチンを含む。本発明では、この側面の特定の形態として、96ウェルプレートのフォーマットとした構成物を提供する。この構成物は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)からなるコンフルエントな第一細胞層を備え、第二タイプの細胞として、好中球又は末梢血単核細胞(PBMC)を含むものである。詳細な説明及び請求項には、この形態の各種の変形事例が記載してある。
本発明の別の側面では、細胞遊走検出用構成物を製造する方法を提供する。この方法は、容器にコラーゲンゲルを堆積して固化させ、コラーゲンゲルを含む固層を形成する工程と、第一タイプの細胞を固層上に載置し、第一タイプの細胞を恒温培養して、上記固層に接したコンフルエントな細胞層を形成する工程と、第二タイプの細胞を、第一細胞層上に散布する工程とを含んでいる。各種の形態について詳細に記載してあるので、TEMなどの細胞遊走についてハイスループット解析を行ううえで理想的な96ウェルプレートのフォーマットを始めとして、各種の構成物を製造できるはずである。必要に応じて、固層を形成する前に、コラーゲンゲルにゼラチン液を混合しておくこともできる。
本発明のさらに別の側面では、TEMを始めとする細胞遊走を検出する方法を提供する。この方法は、上記の構成物を恒温培養する工程と、この構成物の固層の第一位置で、遊走細胞を検出する工程を含むものである。この方法の特定の形態では、96ウェルプレートのフォーマットとした構成物を採用しているので、この形態は、自動細胞解析装置による細胞遊走のハイスループット自動解析に適している。
本発明のさらに別の側面では、細胞遊走のメディエータを識別する方法を提供する。この方法は、細胞遊走メディエータの候補物質を、上記の構成物に加える工程と、上記の構成物を恒温培養する工程と、このメディエータ候補物質の存在下で、細胞遊走を測定する工程とを含むもので、メディエータ候補物質を含まない構成物との反応の違いを利用して、細胞遊走メディエータを識別する。この方法を、ハイスループットで実施できれば、多数の細胞遊走/TEMメディエータを迅速に調べるプラットホームが実現されるわけで、製薬産業を推進する基本技術となるはずである。
本発明の他の側面利点については、以下の詳細の説明から明らかとなるはずである。
本発明では、血管内皮細胞遊走(TEM)及び血管外遊出アッセイを始めとする細胞遊走アッセイ用の構成物及び方法と提供する。この構成物では、三次元アッセイシステムが、インビボでの状態により近い状態を再現するよう設計されている。このアッセイは、96ウェルのフォーマットとしてあるので、自動化されたハイスループットスクリーニングを実施でき、製薬産業の細胞ベースの機能アッセイのニーズに合致している。本発明で得られた結果からも示唆されるように、このアッセイは、炎症、アテローム性動脈硬化症、腫瘍の転移などの病理生理学的な状態を調べるのに適している。このアッセイは、ハイスループットスクリーニングアッセイに理想的であり、本発明の構成物及び方法は、アッセイのもつ優れた生物学的性質と、細胞解析装置(例えば、IN Cell Analyzer 3000)を定量的解析に向けて自動化するという特徴の相乗効果を実現するものでもある。したがって、本発明の構成物及び方法は、サイトカインのようなメディエータや、この過程を阻害したり刺激したりする薬剤を調べるうえで恰好のツールとなるはずである。
本発明で使用する場合には、「血管内皮細胞間隙遊走(transendothelial migration、TEM)」という用語は、走化性因子に反応して、(こうした因子の濃度が、血管内皮細胞の先端面より、基底膜の方が高い場合に)生じる基底膜細胞の先端面から基底膜、そしてさらにその先へと細胞が遊走する動きのことをいう。白血球は、血管内皮中を、個々の血管内皮細胞が結合している箇所をすり抜けるように遊走する。一般に、TEMは、TNF、IL−1などの炎症誘発性メディエータなどによって血管内皮細胞が活性化した場合に生じる。TEMは内因的にも生じ、たとえ血管内皮細胞の直接活性化が生じていない場合であっても、白血球が接着した結果、培養した血管内皮細胞を横断する遊走が、低レベルかつ強度の弱いレベルで生じる。このように、TEMは、インビボでは、炎症の生じている箇所で生じ、インビトロでは、培養血管内皮細胞を通して、好ましくは、血管内皮細胞の活性化後及び/又は走化性勾配の形成後に、生じるものである。
本発明で使用する場合には、「血管外遊出」という用語は、白血球が、血管内皮を横断して間質液(IF)へと移動する過程のことをいう。この過程は、走化性因子によって駆動される。血管外遊出は、通常、ある領域が傷ついたり損傷を被ったりして、炎症反応が必要な場合に生じるものである。
構成物
図1は、本発明の三次元血管内皮細胞遊走(TEM)アッセイの一形態のモデルを示す。左側は、システムの模式的な説明である。最上部の緑色の点は、蛍光標識白血球を示す。茶色のバンドは、コンフルエントな血管内皮細胞を、無色の領域は、厚さ約200μmの固化したコラーゲンゲルを示す。内皮細胞層より下側に散在する緑色の点は、遊走した細胞である。なお、固化したコラーゲンゲルには、必要に応じてゼラチンが含まれている点、また、コラーゲンゲル層の厚さは、画像解析に使用する顕微鏡の焦点領域によって変わる点に注意されたい。大抵の場合、コラーゲン層の厚さを約50〜500μmとすると、TEMアッセイを行ううえで適当な厚さとなる。右側に、血管内皮細胞(EC)の単層の写真を示す。写真の核は、ヘキスト(青)で染色してある。F−アクチンは、Alexa Fluor(登録商標)488を結合させたファロイジン(green)で染色してある。赤色に染色された部分は、タンパク質であるVE−カドヘリンを示しており、カドヘリンは、細胞が密接に結合している場合に、細胞の境界部分に発現されている。
本発明のシステムは、従来技術のシステムに比べて単純であるにもかかわらず、頑強であり、この点で有利である。また、本発明のシステムは、誘導が可能であり、ヒト臍静脈内皮細胞及びヒト白血球を用いることによって、インビボでの血管外遊出に類似した状態が再現されている。本発明者らは、好中球のTEMが、2時間でプラトーに達すること、また、MMP−9阻害物質によって特異的に阻害されることを明らかにした。本発明者らは、化学誘引物質の分子をコラーゲンゲルに加えれば、このシステムは、走化性の研究にも使用可能だとの結論に達している。
図1の三次元のTEMモデル図は、単一の容器での組立例であり、96ウェルプレートのフォーマットの開発については、実施例のセクションで詳述する。本発明者らは、コラーゲンの質が好中球のTEM(図2)及びPBMCのTEM(図3)に及ぼす影響について確認し、正常なゲル担持条件と、高い回転速度を用いれば、十分な質のコラーゲンゲル層を安定的に作成できることも実証した。標準的な96ウェルプレートを使用した場合の、各ウェルのコラーゲンゲルの作業容量も決定し(図4及び5)、遊走細胞密度の最適値についても試験を行って、細胞300,000〜500,000個/ウェルで、満足のいくアッセイ結果が得られるという結論に達した(図6)。また、ゼラチンをコラーゲンゲル層に加えても、システムの性能に影響はなかった。ゼラチンを使用すると、固化させたコラーゲンゲルを、室温でより長期にわたって保存できる。
96ウェルフォーマットでのTEMモデルには、幾つかの利点がある。まず、このフォーマットは、より小型のシステムであり、96ウェルプレートの各ウェルで、アッセイを行うことができる。自動細胞解析装置を使用し、適正な画像解析ソフトウェアと組み合わせれば、ハイスループット薬剤スクリーニングアッセイを行うこともできる。このフォーマットを使用すると、細胞の移動を、空間的、時間的、また三次元(共焦点顕微鏡のZ方向に積層する機能を利用)で定量的に測定することも可能となる。また、アッセイシステムを三層のかたちで組み立てると、プラスチックの多孔質膜など、生体にとって不適切な材料の使用を避けることも可能となる。
構成物の製造
詳しい材料及びアッセイシステムの製造方法については、実施例の記載部分で、説明するが、ここで簡単に説明しておくと、製造に当たっては、まず、コラーゲンゲルを容器に堆積し、固化して、固層を形成する。あるいは、三次元での内皮の成長と細胞遊走を支えるような合成マトリックスゲルを使用することもできる。必要に応じて、コラーゲン層を固化する前に、コラーゲンゲルにゼラチン液を加えることもできる。次に、第一タイプの細胞(血管内皮細胞)を固層上に載置し、恒温培養して、固層と接したコンフルエントな細胞層を形成する。さらに、遊走細胞を調製して、第一タイプの細胞のコンフルエントな層の上に散布する。通常、第一タイプの細胞は、血管内皮細胞、例えばHUVECとする。他の一次血管内皮細胞、例えばHCAEC(冠動脈血管内皮細胞)、HMVEC(肺微小血管内皮細胞)、又は管内皮細胞の株化細胞、例えば、SK−HEP−1(ATCC HTB−52)を使用することもできる。このシステムでは、遊走するようなタイプの細胞であれば、任意のもの、例えば、好中球の株化細胞であるHL−60(ATCC CCL−240)、リンパ球、腫瘍細胞の株化細胞であるHT−1080(ATCC CCL−121)、及び精子を実際また試験的に使用できるが、遊走細胞としては、一次好中球とPBMCを調べた。
遊走細胞は、検出が容易となるよう、標識してから散布して解析することができる。このモデルは、細胞の標識に使用される多岐にわたる染料、例えば、ヘキスト、カルセイン、フルオレセインデキストラン、テキサスレッド・デキストランなどが使用できる。例として、本研究では、CellTracker(登録商標)グリーン(Invitrogen)を用いた標識を行った。
また、固形のコラーゲンゲル層の製造時に、コラーゲンゲルに蛍光発生化合物を混合しておくこともできる。この場合、細胞がゲルまで遊走すると、細胞と蛍光発生物質との相互反応、例えばプロテアーゼによる消化、内部移行、又は他の生化学的な反応が生じた結果、蛍光信号が発せられる。この信号が、さらに、蛍光顕微鏡で捕捉されることで、定量的測定が行われる。この場合は、遊走細胞を、アッセイの前に標識しておく必要がないので、アッセイが、さらに実施しやすく、頑強で、ハイスループット用途に適したものとなる。遊走細胞が、血管内皮を通過して遊走するまでは未標識であるため、血管内皮細胞を通過して遊走した細胞のみが、蛍光信号を発することになり、遊走しなかった細胞は、まったく信号を発しない。そのため、遊走しなかった予め標識された細胞がバックグラウンドとなることがなく、アッセイの正確さと感度が上昇する。
構成物の使用方法
本発明者らが開発した細胞遊走アッセイシステムは、細胞の遊走について調べる場合にも、細胞遊走を促進又は阻害するメディエータや薬剤のスクリーニングを行う場合にも利用できる。細胞遊走のメディエータをスクリーニングする場合に用いる方法は、以下の工程、すなわち、(a)細胞遊走のメディエータの候補となる物質を、構成物に導入するか、遊走細胞を、メディエータの候補物質であらかじめ処理する工程、(b)遊走細胞を散布した構成物を恒温培養する工程、(c)細胞の遊走を、メディエータの候補物質とともに測定する工程、(d)測定結果を、メディエータの候補物質の不在下での同じタイプの細胞について得られた結果と比較して、遊走結果の測定値から、細胞遊走のメディエータを識別する工程を含むものである。
本発明者らは、このシステムを、細胞遊走を刺激又は阻害する分子のスクリーニングに用いる可能性についても、成功裡に調べることができた。インターロイキン−1−β(IL−1β)は、好中球とPBMCの双方に対しての、内因性の細胞遊走メディエータである。IL−1βは、明らかに、血管内皮細胞を刺激し、細胞接着分子を発現させ、この細胞接着分子が、この双方のタイプの細胞で、血管内皮の遊走を増強する。IL−1βの存在下では、好中球のTEMは、比較的迅速に進行し、約0.5〜2時間で、有意なシグナルノイズ比(S/N比)に達する(IL−1βによる刺激を行った場合と行わなかった場合を比較、図7)。好中球のTEMのS/N比(IL−1βによる刺激を行った場合と行わなかった場合)は、一晩の恒温培養でプラトーに達することにも気づいた。一方、PBMCのTEMは、相対的にゆっくりと進行し、一般に、6〜8時間の恒温培養時間が必要である(図8)。
IL−1βをHUVEC培養用の培養液に加え、一晩恒温培養する一方で、別のかたちで化学誘引物質を導入する方法についても調べた。インターロイキン−8(IL−8)は、好中球に対する公知の強力な誘引物質である。IL−8が、好中球のTEMに及ぼす影響を示すために、IL−8を含む培養液に、コラーゲンゲルを4時間にわたって予め浸漬し、その後、HUVEC層の散布を行った。本発明者らが得た結果からは、IL−8の浸漬によって、TEMに対して、IL−1βによるHUVECの活性化と似た効果が得られた(図9)。
阻害物質についても調べ、このシステムは、TEMの阻害物質についても識別が可能であったことを示すものである。1,10−フェナトロノリンは、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ−9)を阻害することが公知である。好中球を1,10−フェナトロノリンで予め処理した。この阻害物質は、TEMアッセイの過程を通じて、常に存在していた。好中球のTEMの阻害については、図9及び10に示してある。(図9については、IN−とIN+を比較のこと)。別のMMP−9阻害物質であるドキシサイクリンも調べたところ、TEMを阻害することが示された。移動中の細胞から放出されるプロテアーゼ、例えばMMP−9は、組織内での細胞遊走を促進することが知られている。プロテアーゼを阻害すると、細胞遊走のダウンレギュレーションが生じる。
ハイスループット三次元細胞遊走アッセイシステム
上記の構成物は、96ウェルプレートのプラットホームで成功裡に実施することができた。アッセイでは、底部が透明な96ウェルプレートを使用したが、こうした製品の例としては、PerkinElmerのViewPlate(登録商標)を挙げることができる。自動細胞解析装置、例えば、IN Cell Analyzer(登録商標)(GE Healthcare)を用いて、細胞遊走の解析を行った。例として、所定の視野に関して特定のZプレートでの共焦点画像を何枚か生成した。これらの画像を、自動解析装置及び定量用ソフトウェアで処理した。このアッセイシステムを96ウェルのフォーマットで実施し、自動画像化及びデータ解析と組み合わせると、ハイスループット細胞遊走システムを実現することができ、このシステムは、TEMを始めとする細胞遊走のメディエータについての大規模な発見及び評価に使用することができる。
本システムは、単一のZ平面の画像を得るだけでなく、細胞遊走の三次元画像を生成することができる。アッセイシステムを攪乱することなく画像を獲得できるため、一連のデータを時系列で得ることも可能である。図11に、96ウェルプレートのウェルを視野とした白血球のTEMについての三次元画像を示す。この画像は、コラーゲンゲル層のZプレート画像切片(10μm/切片)21枚を重ね合わせて再構成したものである。この三次元画像は、ゲル層を通過する白血球のTEMを示すもので、白血球は、ゲル中に化学誘引物質のより高い勾配が存在する下方に向かって遊走している。
システムの信頼性を、HUVECの活性化を行った場合と、行わなかった場合について、Z:120μmでの細胞数というかたちで、好中球のTEMの散乱をプロットすることによって調べた(図12)。本発明者らは、タイトな散乱分布を見いだした。この結果からわかるように、処理内の変異が極めて少なく、2つの処理同士の差が有意で区別可能であり、したがって、このアッセイは、ハイスループット用途での利用に適格である。この同じアッセイフォーマットは、必要に応じて、384ウェルのフォーマットにも利用できるはずである。
以下の実施例は、本発明を例示する目的でのみ示したものであり、本発明の範囲が、これらの実施例によって限定されることはなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。以下の実施例を始めとして、本明細書で言及する文献については、本明細書において言及することをもって、本発明の一部として本明細書に組み込むものである。
材料及び方法
表1に、以下のアッセイで使用する必須の材料のリスト並びに製造業者及び対応するカタログ番号についての情報を載せてある。
さらなる材料については、その後の方法について記載してある。
Figure 2009508487
以下の部分では、アッセイシステムの作成及び性能に関して使用したプロトコールを記載する。
コラーゲンゲル層の製造
コラーゲンIを、製造業者の指示にしたがって製造した。略述すると、予め冷却しておいたピペットと、4℃で保存してあった試薬を用いて、8mlのコラーゲンを、1mlの10×PBS及び1mlのNaOH(0.1N)と混合した。必要に応じて、0.12NのHClを加えることによって、混合物のpHを、pH7.5に調整した。
96ウェルプレート(PerkinElmer Life and Analytical Sciences製のViewPlate(登録商標))を氷上に載置し、各ウェルに、40μlのゲル(2.5mg/ml)を、ステッパ・リピート・ピペット(500又は1000μlのチップ)を使用して分注した。プレートを1,500rpmで4℃で2分間回転させた。ゲルを、CO2不在の恒温培養装置で、37℃にて固化させ、96ウェルプレートにコラーゲンゲルの厚い層(200μm)を形成した。こうして調製したコラーゲンゲルを用いて、以下のTEMアッセイを実施した。
別の方法として、コラーゲンゲル混合物を96ウェルプレートのウェルに分注する前に、ゼラチン溶液をコラーゲンゲル混合物に加えた。すなわち、5グラムの粉末剤を組織等級の水に加え、完全に溶解するまで加熱することによって、5%ゼラチン液を調製した。10NのNaOHでpH7.2に調製し、溶液を、121℃で30分間蒸気滅菌した。4℃で1mlずつ保存した。1mlの各コラーゲン混合物に対して、125μlの5%ゼラチン液を加えた。コラーゲンゲル混合物と同様にして、コラーゲン/ゼラチン混合物を、分注して固化した。固化したゲル入りのプレートは、以下に記載するTEMアッセイにただちに使用できる。別法として、プレートをプレートシールで封止して、室温の湿潤環境に保持して、その後の使用に備えることもできる。
ゲル上にコンフルエントな単層を形成するためのHUVECの培養
各ウェルのコラーゲンゲルを、ヒトフィブロネクチン(BD Biosciences)の無血清EGM−2培地へのlμg/ml溶液200μlで、室温で1時間覆った。フィブロネクチン含有培地を除去後、HUVEC細胞(CAMBREX)をゲル上に散布し、EGM−2培地で、細胞40,000個/ウェルの濃度で、37℃にて3日間培養を行った。細胞は、継代早期(3〜4代目)の、70〜80%程度のコンフルエンシーとなったHUVEC細胞培養を選んだ。アッセイ前日に、HUVEC培養液を、新鮮なEGM−2培地単独、又は10ng/mlのIL−lβ(又はTNF−α、又は他の化学誘引物質)を含む新鮮なEGM−2培地で置換した。混合物は一晩恒温培養して、TEMを刺激した。
また、IL−8が好中球のTEMに関して主要な化学誘引物質であることを示すために、IL−8を200ng/ml含有する培養液に、コラーゲンゲルを前もって4時間浸漬しておいてから、遊走細胞の散布を行うこともできる。
血液サンプルからの白血球の単離と標識
好中球又は末梢血単核細胞(PBMC)を、血液バフィーコートから新たに単離した。略述すると、RBCを、デキストラン沈降法によって除去し、次に、PBMCを、Ficoll−Hypaque遠心分離によって単離した。好中球は、Ficoll−Hypaque遠心分離のペレット中に残存しているRBCを低張液で溶解することによって精製した。細胞のCellTracker(登録商標)グリーンによる標識を、0.5〜1μmの染料のRPMIへの溶液中で、細胞を37℃で45分間恒温培養することによって行った。RPMIを染料を除去し、細胞を無血清RPMI培地で洗浄した。細胞を、0.2%のHASを含有するRPMI(アッセイ培地)に、細胞2.5×106個/mlで再懸濁した。
TEMアッセイの実施及び測定
アッセイ当日は、HUVEC細胞培養の培養液を除去し、HUVECの単層をPBSで2回、アッセイ培地(HASのRPMIへの0.2%溶液)で1回洗浄した。各ウェル中のHUVECの単層上に、CellTracker(登録商標)グリーンで標識した500,000個(200μl)の好中球又はPBMCを載置した。アッセイは、37℃でさらに恒温培養を続けた。恒温培養時間の長さは、第一タイプの細胞に応じて決まり、好中球については、2時間、PBMCについては、6〜10時間を要する可能性がある。
必要な恒温培養時間の後、HUVEC層より下方に遊走した好中球/PBMC細胞の画像を取得した。Z方向の単一の位置での画像を取得し、標的としたZ位置でのゲル中の遊走細胞の数を数えるので十分なことも多い。例として、Z方向の120μmの位置での平面での画像を、IN Cell Analyzer 3000(GE Healthcare)のZ切片作成機能を使用して定量化した。画像は、Object Intensity Analysis Moduleを用いて解析した。実験は複数回繰り返し、図面中の各データの打点は、各ウェルにつき1枚Z平面画像6ウェル分についての平均プラス/マイナス標準偏差を示す。
結果
コラーゲンゲルの製造
質の高いTEMアッセイを行うためには、ゲルを適切に形成することが必須である。図2及び3に、ゲルの質が、TEMの結果に有意な影響を及ぼすことを示す。ゲル層にピペットのチップを挿入するか、ゲルに大きな気泡を形成することによって、破砕したゲルを調製した。比較用に、12チャネルのピペットを使用して、各ウェルに、各種容量の対照ゲルを分注した。好中球及びPBMCのいずれについても、気泡が、TEMアッセイの変化に影響を及ぼす主要な要因であるようであっった。破砕したゲルも、正常な対照と比較すると、アッセイの結果に影響を及ぼしているものの、影響の程度は気泡の場合ほどではなかった。本発明者らは、マルチチャネルピペットを使用してゲルを注入する際に余分な力が加わると、小さな気泡が生じることに気づいたが、プレートを、1,500rpmで、4℃で2分間にわたって回転させると、気泡の大半が除去できることを見いだした。また、洗浄の過程を丁寧に行うことで、ゲルの破砕を防止できることも見いだした。
解析装置の側からの制限があるため、アッセイを組み立てるうえでは、ゲルの容量も重要である。IN Cell Analyzerで焦点として使用できるのは、Z方向の距離で、プレート底部から200μmのところまでに限られている。本発明者らの分析では、ゲルの容量を40μlとすると、ウェルの中央部に層を形成するのにちょうどよいゲルの深さとなり、アッセイ及び解析装置側の要件が満たされる。図4及び5に、ゲルの容量が、好中球及びPBMCのそれぞれのTEMに及ぼす影響について示す。
HUVECの培養
CAMBREXより購入したHUVECを、EGM−2培地で、上述の材料及び方法によって培養した。コラーゲンゲル上に、単層のHUVECを、適切なコンフルエンシーとなるまで培養し、カドヘリン−5を用いた免疫染色によって確認を行った。図1右側のカラー画像に、コンフルエントな血管内皮細胞の単層に、緊密な結合が形成されていることを示す。細胞核は、ヘキスト(青色)で染色した。Fアクチンは、Alexa Fluor(登録商標)488を結合したファロイジン(緑色)で染色した。赤色の染まり方から、緊密な結合が形成されている場合に細胞の境界部分に発現されるタンパク質であるVE−カドヘリンがが存在していることがわかる。
好中球及びPBMCの散布密度
好中球とPBMCの散布密度を変化させて、アッセイに必要な最適細胞数を特定した。好中球の出発細胞密度の分析を行った結果を図6に示す。図にも示したように、妥当なシグナルノイズ比(S/N比)を得るためには、1ウェル当たり細胞300,000〜500,000個という密度が必要である。PBMCについても、同様の範囲であることがわかった。
好中球及びPBMCのTEMの時間的経過
好中球のTEMは、比較的迅速に生じ、約0.5〜2時間で有意なS/N比(IL−1βで刺激した場合と、刺激を行わなかった場合を対比した場合)に達した。図7に、好中球のTEMの時間的経過を調べたアッセイの結果を示す。遊走細胞は、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間の各時点で、プレート底面からZ方向に120μm上方の地点で定量した。好中球のTEMのS/N比(IL−1βで刺激した場合と、刺激を行わなかった場合を対比した場合)が、一晩恒温培養を行うとプラトーに達することにも気づいた。
PBMCのTEMは、比較的ゆっくり生じ、一般に、6〜8時間の恒温培養時間を要した。図8に、PBMCのTEMの時間的経過を調べたアッセイの結果を示す。遊走細胞は、2時間、4時間、6時間、8時間の各時点で、プレート底面からZ方向に120μm上方の地点で定量した。
IL−8への浸漬による好中球のTEMの増大
IL−8は、公知の強力な好中球誘引物質である。IL−8が、好中球のTEMに及ぼす影響を示すために、コンフルエントなHUVECの単層が設けられたコラーゲンゲルを、200ng/mlのIL−8を含有する培養液に予め4時間浸漬させてから、アッセイを開始した。図9は、この研究の結果を示す。結果に示されているように、IL−8を浸漬させることによって、IL−1βによるHUVECの活性化と似たTEM効果が得られた。IN+/IN−:MMP−9阻害物質の存在下/不在下(下記参照)。
MMP−9阻害物質による好中球のTEMの阻害
TEMアッセイの前に、MMP−9の阻害物質(12〜1000μm)である1,10−フェナトロノリンで、好中球を予め0.5時間処理した。阻害物質は、TEMアッセイの間を通して、連続的に存在していた。好中球のTEMの阻害を、図9及び10に示す。図10の各データの点は、各ウェルにつき1枚の画像を、Z方向に60μmの地点で撮影した画像の6ウェル分の平均プラス/マイナス標準偏差を示す。別のMMP−9阻害物質であるドキシサイクリンについても調べたが、この物質もTEMを阻害した(データ示さず)。
TEMイメージの三次元での再構成物
図11に、96ウェルプレートの1ウェルで白血球のTEMを撮影した三次元細胞画像を示す。IN Cell Analyzer 3000を用いて、Z方向で一連の共焦点画像切片を製作した。ゲル層の0〜200μmの地点に位置する1切片当たり10μmの切片合計21枚からの画像を取得した。三次元の画像を、画像解析プログラムであAutoDeblur&AutoVisulize 9.3(AutoQuant Imaging)を用いて作成した。図11には、ウェルのごく一部である約0.75mm2の視野内の部分のみを示してある。この三次元画像には、ゲル層の白血球のTEMが示されており、白血球が、化学誘引物質を含有するゲルに向かって下向きに遊走している。
好中球のTEMの大規模研究
図12には、好中球のTEMの散乱を、HUVECの活性化を行った場合と、行わなかった場合について、Z方向に120μmの地点での遊走細胞数としてプロットしてある。密集した散乱分布からわかるように、処理内部での変異は極めて小さいのに対し、2つの処理の間には、十分な信号の差があるので、このアッセイは、ハイスループット用途に用いるアッセイとして適格である。
すべての特許、公開公報、その他の公表文献は、本明細書で言及することをもって、各文献を個別具体的に本発明に組み込んだ場合と同様のかたちで、各文献の全体を本発明に組み込むものである。本明細書では、本発明の好適で具体的な形態について記載したが、当業者であれば、本発明は、本明細書に本発明の例示のみの目的で記載した形態以外のかたちでも実施できることを理解できるはずである。本発明は、これらの形態によって限定されるものではなく、請求の範囲に記載した内容のみによって限定される。
図1は、本発明の一形態にしたがって組み立てた三次元血管内皮細胞遊走(TEM)アッセイを示す。左側に、システムの側面図を模式的に示す。右側に、血管内皮細胞(EC)の単層の上面図を示す。 図2は、コラーゲンゲルの質が、好中球のTEMに及ぼす影響を示す図である。 図3は、コラーゲンゲルの質が、末梢血単核細胞(PBMC)のTEMに及ぼす影響を示す図である。 図4は、コラーゲンゲルの容量が、好中球のTEMに及ぼす影響を示す。 図5は、コラーゲンゲルの容量が、PBMCのTEMに及ぼす影響を示す。 図6は、出発細胞密度が、好中球のTEMに及ぼす影響を示す。 図7は、好中球のTEMの時間的経過を示す。遊走細胞は、0.5時間、1時間、1.5時間、及び2時間の時点で、プレート底部上方で定量した(Z:12μm)。 図8は、PBMCのTEMの時間的経過を示す。遊走細胞は、2時間、4時間、6時間、及び8時間の時点で、プレート底部上方で定量した(Z:120μm)。 図9は、ゲル層を予めIL−8に浸漬しておいた場合の、好中球のTEMの増加を示す。 図10は、MMP−9阻害物質である1,10−フェナトロノリンが、好中球のTEMを阻害することを示す。. 図11は、ゲル層の透過写真であるZスライスを21枚重ね合わせて三次元イメージを再構成物したものである。 図12は、好中球のTEMを、ポジティブコントロール(IL−βによる刺激あり)及びネガティブコントロール(ILβによる刺激なし)について大規模に調べた結果を示す。

Claims (24)

  1. (a)コラーゲンゲル又は合成マトリックスゲルを含む固層と、
    (b)上記固層と接しており、第一タイプの細胞を含む第一細胞層と、
    (c)上記第一細胞層上に散布された第二タイプの遊走細胞と
    を備えた細胞遊走検出用構成物。
  2. 細胞の遊走が、血管内皮細胞間隙遊走(TEM)である請求項1記載の構成物。
  3. 固層が、蛍光発生化合物をさらに含むものである請求項1記載の構成物。
  4. 固層が、化学誘引物質をさらに含むものである請求項1記載の構成物。
  5. 第一細胞層を加える前に、化学誘引物質をコラーゲンゲルに加えておく請求項4記載の構成物。
  6. 化学誘引物質が、サイトカインによる刺激の後に、第一細胞層の第一タイプの細胞によって放出される請求項4記載の構成物。
  7. 第一細胞層がコンフルエントである請求項1記載の構成物。
  8. 第一タイプの細胞が、ヒト臍静脈血管内皮細胞(HUVEC)である請求項1記載の構成物。
  9. 第一タイプの細胞が、サイトカインによって刺激される請求項1記載の構成物。
  10. 第二タイプの細胞が、単球、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞、腫瘍細胞、精子からなる群から選択される請求項1記載の構成物。
  11. 第二タイプの細胞が、好中球又は末梢血単核細胞(PBMC)である請求項1記載の構成物。
  12. 第二タイプの細胞が、染料で標識されている請求項1記載の構成物。
  13. 96ウェルプレートのフォーマットである請求項1記載の構成物。
  14. 第一タイプの細胞が、HUVECのコンフルエントな層、第二タイプの細胞が、好中球又はPBMCである請求項13記載の構成物。
  15. 384ウェルプレートのフォーマットである請求項1記載の構成物。
  16. 画像取得用の自動化蛍光顕微鏡をさらに備えている請求項13記載の構成物。
  17. 自動化蛍光顕微鏡が、共焦点顕微鏡と、自動化された画像取得及びオンラインでの同時解析のためのソフトウェアとを備えているものである請求項16記載の構成物。
  18. 細胞遊走検出用構成物を製造する方法であって、
    (a)容器にコラーゲンゲルを堆積して固化させ、コラーゲンゲルを含む固層を形成し、
    (b)第一タイプの細胞を固層上に載置し、この第一タイプの細胞を恒温培養して、上記固層に接したコンフルエントな細胞層を形成し、
    (c)第二タイプの細胞を、第一細胞層上に散布する
    工程を含む方法。
  19. 細胞遊走を検出する方法であって、
    (a)請求項1記載の構成物を恒温培養し、
    (b)この構成物の固層の第一位置で、遊走細胞を検出する
    工程を含む方法。
  20. 細胞遊走のメディエータを識別する方法であって、
    (a)細胞遊走メディエータの候補物質を、請求項1の構成物に加え、
    (b)上記構成物を恒温培養し、
    (c)メディエータ候補物質の存在下で、細胞遊走を測定し、メディエータ候補物質を含まない構成物との反応の違いによって、細胞遊走メディエータを識別する方法。
  21. 固層が、ゼラチンをさらに含むものである請求項1記載の構成物。
  22. 堆積工程が、ゼラチン溶液をコラーゲンゲルと混合する工程をさらに含むものである請求項18記載の方法。
  23. 画像取得用の自動化蛍光顕微鏡をさらに備えている請求項15記載の構成物。
  24. 自動化蛍光顕微鏡が、共焦点顕微鏡と、自動化された画像取得及びオンラインでの同時解析のためのソフトウェアとを備えているものである請求項23記載の構成物。
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