JP2009502913A - 調節因子 - Google Patents

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Abstract

線維増殖性疾患を治療又は予防するための薬物の製造における、STATを調節する組成物の使用。上記線維増殖性疾患はケロイド瘢痕化を含みうる。上記組成物は、STATの活性、リン酸化、発現レベル又は細胞内局在のうちの1つ又は複数を調節するものであってもよい。上記STATはSTAT3であってもよい。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
本発明は、線維増殖性疾患を治療するための組成物及び医薬組成物に関する。
過度な線維芽細胞増殖及び過剰なコラーゲンの沈着が、とりわけ強皮症、肺線維症、ケロイド瘢痕化、手術癒着等の線維増殖性疾患の特徴である。線維増殖性疾患の潜在的治療の1つが硫酸グリコサミノグリカン(GAG)の阻害剤である。いくつかの線維増殖性疾患モデルで、GAGの阻害剤が線維増殖性組織の阻害及びコラーゲン発現の減弱を示したことが知られている。しかし、現在のところ、線維増殖性疾患に適した使用中の治療は存在しないようである。
創傷治癒は、フィブリン塊の分解、細胞外マトリックス(ECM)の分解、血管新生の促進、並びに細胞の移動及び増殖を含む、調節されているが複雑な事象である。皮膚損傷の場合には、ケラチノサイト及び線維芽細胞が、増殖及び移動することが見出されている細胞である。正常な創傷治癒を促進させるために、好中球、マクロファージ、ケラチノサイト及び線維芽細胞から、ケモカイン、サイトカイン及び成長因子のカクテルが時間的かつ空間的に分泌され、適切な反応を指示する。過度な皮膚創傷治癒の場合、肥厚性瘢痕からケロイド瘢痕までの多岐に渡る瘢痕形成が起こる。ケロイド瘢痕は、ヒトのみが患う皮膚瘢痕化の最も極端な例であり、その再帰的性質のため、治療戦略が大部分効き目のない、創傷治癒に対する病理反応である。「ケロイド」という用語は、カニの鉤爪のような上記瘢痕の外観を描写するために1806年に案出された。ケロイド瘢痕は、元の傷の境界を越えて広がり、自発的に縮退しない瘢痕と定義されている。対照的に、肥厚性瘢痕は、損傷の外縁を超えて発達せず、自発的な軟化及び平坦化を伴う。ケロイド瘢痕は、ヒトのみが患い、刺激となる皮膚外傷は、耳のピアス及び擦傷のような小さな損傷から、手術又は火傷のようなより重度な外傷まで多岐に渡る。
ケロイド瘢痕は、性質が攻撃的であり、アフリカ人及びアジア人でより一般的なようである。ケロイド瘢痕の治療及び管理は、それらの再発のため、これまで困難であり、無数の治療が利用可能ではあるが、どれも単独で満足なものではない。ケロイド瘢痕の既知の治療は、ケロイドが現れた直後に開始した場合に、最もよい結果を与える。利用可能な治療には以下のものが含まれる。
・従来の手術による除去は信頼性の低い手法である。除去後に再帰するケロイドは元のものより大きいものとなりうるので、これは重大な注意を必要とする。ケロイドは、手術によって除去した場合、45パーセントを超える人々で再帰する(Cosmanら、1961年)。
・シリコーンゲルシート製の湿性傷カバー又は包帯は、ケロイドの突出を経時的に低減することが研究で示されている。この治療は安全かつ無痛である。
・トリアムシノロンアセトニド又は別のコルチコステロイド薬のようなコルチコステロイドの注射は、通常4〜6週間毎に繰り返す。この治療は、ケロイドのサイズ及び刺激作用を軽減しうるが、注射は不快である。
・6〜12カ月の期間に渡って1日24時間、持続的に圧力を加えるための包帯又はテープを用いた加圧。そのような加圧は、皮膚を薄くする作用を与えうる。
・冷凍外科療法、又は液体窒素を用いた冷凍治療を、20〜30日毎に繰り返す。これは、皮膚色を薄くする副作用を引き起こしうる。それによってこの治療の有用性が制限されている(Alster及びTanzi、2003年)。
・放射線照射は、癌の危険性を増大させる点で問題がある。放射線治療は、手術直後、手術創が治癒している間に使用された場合、瘢痕形成を軽減しうる(Ragoowansiら、2001年)。
・レーザ療法は、従来の手術に代わる、ケロイドを除去するための代替手段である。レーザ療法の後に、通常の手術の後より、ケロイドが再発する可能性が低いという確かな証拠はない(Alster及びTanzi、2003年)。
・様々なタイプのインターフェロン、5−フルオロウラシル、ブレオマイシン等の薬を用いた実験的な治療も試験されている。
これらの治療は、大部分信頼性が低く、重大な注意を必要とする。ケロイド瘢痕は多くの場合再発し、元の瘢痕より大きくなることがある。
ケロイド瘢痕は、皮膚線維芽細胞による、フィブロネクチン等のコラーゲン及び他のECM成分の過剰な沈着と、創傷の際の線維芽細胞増殖の増大と、を特徴とする。ケロイド瘢痕でのプロコラーゲンのmRNA発現レベルに関しては、相互に矛盾した報告が存在する。ケロイド線維芽細胞において、III型プロコラーゲンのmRNAレベルの変化を伴わない、I型プロコラーゲンmRNAの過剰産生が示され、ケロイド線維芽細胞におけるI/III型プロコラーゲンmRNAの比率が、正常線維芽細胞培養物と比較して、逆転することが示されている(Uittoら、1985年、及びAbergelら、1985年)。しかし、それより後の出版物は、プロコラーゲンIII mRNAも、ケロイド組織で20倍発現上昇していたと報告している(Naitohら、2001年)。IL−6(Xueら、2000年)及びVEGF(Wuら、2004年)発現の増大もケロイド線維芽細胞で観測されている。
皮膚損傷によるケロイド発病の正確な機構はまだ明らかでない。ケロイド線維芽細胞における創傷後のサイトカイン及び成長因子又はそれらの受容体のレベルの増大、並びにこれらの分泌因子に対する有糸分裂反応の感作が示唆されている。ケロイド線維芽細胞では、TGF−β1及びTGF−β2が増大し、TGF−β3は増大しなかった(Leeら、1999年)。そして、ケロイド線維芽細胞における、TGF−β1に対する感受性の増大は、フィブロネクチン(Babuら、1992年)及びコラーゲンの産生、並びに細胞増殖を増大させた。PDGFα受容体の発現がケロイド線維芽細胞で増強されたが、これは、3種のPDGFアイソフォームすべてについて生じた、有糸反応の増大に対応していた(Haisaら、1994年)。ケロイド線維芽細胞で検出されたIGF−1受容体の過剰発現は、それらの侵襲性を強化したが、線維増殖は強化しなかった(Yoshimotoら、1999年)。皮膚線維芽細胞に加えて、ケロイド組織上にある表皮も、サイトカイン(VEGF等)の過剰発現を示した(Giraら、2004年)。加えて、異常な表皮−間充織間相互作用もケロイド発病に関係付けられており、これは、ケロイド由来のケラチノサイトと同時培養された場合に、正常ヒトケラチノサイトと同時培養された場合と比較して、正常線維芽細胞における増殖(Limら、2001年)並びにコラーゲンI及びIIIの分泌(Limら、2002年)が増大していたことを証拠としている。ケロイドケラチノサイトと同時培養された線維芽細胞は、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β受容体1、Smad2、I型コラーゲン、結合組織成長因子(CTGF)、及びIGF−II受容体の発現増大も示したが、ケロイド線維芽細胞と同時培養されたケロイドケラチノサイトは、TGF−β1、TGF−β3、及びTGF−β受容体1の発現増大を示した(Xiaら、2004年)。瘢痕線維症における、制御遺伝子(p53等)中の変異も提唱されている(Saedら、1998年)。
STATタンパク質は、シグナル伝達及び転写の活性化という二重機能を有する。STATタンパク質は、二次メッセンジャー及び転写因子として機能する細胞質タンパク質のファミリーである。それらは、サイトカイン及び成長因子に反応する正常な細胞シグナル伝達で根本的な役割を演じる。哺乳動物では、現在、7種の既知のSTATタンパク質(STAT1、2、3、4、5a、5b及び6)があり、それぞれ異なった遺伝子にコードされているが、選択的RNAスプライシング又はタンパク質分解性の翻訳後プロセシングを受け、これによって、悪性細胞におけるSTATの追加変種が説明される。最も注目すべきことは、悪性腫瘍の中でも、とりわけ乳房癌、頭頚部癌、黒色腫及び多発性骨髄腫で、STAT3及び5が構成的に活性化されていることである。いくつかの上流経路を介した異常なシグナル伝達は、腫瘍細胞でSTATの構成的な活性化をもたらすことができ、これによって、Bcl遺伝子の発現上昇によるアポトーシスの防止、及びサイクリンDI遺伝子の発現上昇による細胞周期進行の調節異常を含む、いくつかの共通した生物学機構を介した悪性進行がもたらされる。STAT3の阻害が癌の阻止に有効であることが知られており、頭頚部癌(Leongら、2003年)及び皮膚癌(Chanら、2004年、及びPedranziniら、2004年)に対して効果的に作用することが示されている。
シグナル伝達性転写因子3(STAT3)は、細胞増殖、移動、炎症、免疫応答及び細胞生存を含む様々な過程に関与している潜在性転写因子である。STAT3は、不可避的なTyr705リン酸化(obligatory Tyr705 phosphorylation)により、様々な成長因子及びサイトカインによって活性化される(Darnell、1997年)。このリン酸化によって、そのホスホチロシン残基と、その2量体パートナーの、対応するSH2ドメインと、を介した2量体化が可能となる。STAT3は、ホモ2量体を形成することも、Stat1とヘテロ2量体を形成することもできる。その後、この2量体は核内に移動して、標的DNA配列に結合し、標的遺伝子の転写に作用する(Darnellら、1994年)。Tyr705リン酸化がSTAT3活性化に必須である一方、Ser727リン酸化は、最大限の遺伝子活性化に必要であることが示された(Wenら、1995年)。内在的チロシンキナーゼ活性を欠失したサイトカイン受容体では、受容体に結合したJanusキナーゼ(Jak)によってTyr705リン酸化が行われた(Darnell、1997年)。STAT3ノックアウトは、胎生致死を引き起こし(Takedaら、1997年)、それにより、さらなる条件的な組織又は細胞特異的ノックアウト分析が促進された(Takedaら、2000年)。STAT3破壊ケラチノサイトが創傷治癒の遅延を示したことが以前に報告されている。詳細には、ケラチン5特異的プロモーターによって転写されるCreリコンビナーゼを用いて、ケラチノサイト内でSTAT3発現を破壊したところ、表皮及び毛嚢の発生は正常に見え、増殖は影響されないままであったが、マウスのSTAT3欠損上皮細胞の、創傷治癒及び成長因子依存性の移動には障害が見られた(Sanoら、1999年)。最近、A549カルシノーマ細胞内でStat3Cを過剰発現させた後のマイクロアレイ分析によって、Stat3によって調節される遺伝子が、細胞侵入/移動、血管新生、及びECMの再構築を含めて、創傷治癒及び癌の双方に共通していることが判明した(Dauerら、2005年)。
多数の研究が、STAT活性化、特にSTAT3を癌進行に関連付けている。腫瘍細胞内でのSTATタンパク質の作用を遮断するために、アンチセンス法(米国特許第6727064号明細書)、干渉ペプチド(interfering peptide)(例えば、低分子量組成物STA−21(Songら、2005年)、ホスホチロシンペプチド(Turksonら、2001年))、STAT3デコイオリゴヌクレオチド(Leongら、2003年)、及びククルビタシン組成物(例えば、ククルビタシンI(Blaskovichら、2003年)、ククルビタシンQ(Blaskovichら、2005年))を含む様々な戦略が用いられている。
本発明者らは、正常患者及びケロイド患者から得た、皮膚組織、ケラチノサイト及び線維芽細胞を検査することによって、ケロイド瘢痕の発病機序を調査した。
まとめると、本発明者らは、線維増殖性疾患の発病機序におけるSTATの新規な役割を初めて示した。
本発明の第1の態様は、線維増殖性疾患を治療又は予防するための薬物の製造における、STATを調節する組成物の使用を提供する。
上記線維増殖性疾患は、ケロイド瘢痕化を含むことが好ましい。
調節という用語は、STATの活性、STATへのRNAスプライシング若しくは翻訳後プロセシング、STATのリン酸化、STAT発現(mRNA発現及びタンパク質発現の両方を含む。)のレベル、又はSTATの細胞内局在、のうちの1つ又は複数の活性化、阻害、遅延、抑制又は干渉を指すことが好ましい。調節という用語は、STAT3に媒介されたシグナル伝達の低減を指すことがより好ましい。STATの調節は、下記の実施例に記載の方法を用いて、又は前に参照した文献中の方法のような、当技術分野で一般的に使用されている方法によって評価することができる。
上記STATは、STAT3を含むことが好ましい。STAT3は、生物学、特に癌の分野(Wenら、1995年)で周知のタンパク質である。STAT3の特性の一部は上述の通りである。ヒトSTAT3のGenbankアクセッション番号はNM_139276である。
一実施形態では、上記組成物は、STAT、好ましくはSTAT3、のSiRNAであることが好ましい。短鎖干渉リボ核酸SiRNA又はRNA干渉(RNAi)は、転写後レベルで遺伝子発現を調節する新規な細胞機序として、そして遺伝子機能を制御する強力な手段として現れた。有効なsiRNA配列を選択する判定規準の改良、並びに哺乳類細胞、組織及び動物で遺伝子サイレンシングを行うためのsiRNAを送達するベクターの作製が進展している。siRNAを調製する方法には、化学合成、in vitro転写、siRNA発現ベクター、及びPCR発現カセットのようないくつかの方法がある。どの方法を用いるかにかかわらず、siRNAを設計するための最初のステップは、siRNAの標的遺伝子部位を選択することである。最適なsiRNAの選択は、ある遺伝子を特異的に標的とするように設計された数種のsiRNAのin vitro試験の結果として実現される。通常、そのようなin vitro試験は、対象とする遺伝子を安定発現する細胞にいくつかのsiRNA2本鎖を形質移入するものである(Nencioniら、2004年)。特異的に設計されたSiRNAは、STAT発現のレベルを調節可能なものでありうる。
上記STAT3のSiRNAは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3(下記参照)を含むことが好ましい。これらは、STAT3、Genbankアクセッション番号NM_139276から、STAT3に対して設計されたものである。STAT3配列は長さ4978塩基対である。SiRNA系でSTAT3を阻害する、STAT3配列に沿った3つの配列が同定された。上記3種の標的は次のように命名されている。
STAT3 siRNA1(nt.461〜480)
配列番号1:AGTCGAATGTTCTCTATCA;
STAT3 siRNA2(nt.1264〜1283)
配列番号2:GGCGTCCAGTTCACTACTA;及び
STAT3 siRNA4(nt.1662〜1681)
配列番号3:GCGTCCATCCTGTGGTACA
一実施形態では、上記STAT3のSiRNAは、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9を含む。1つのヘアピンループが保存されており、その上流には、上述した3種の標的配列、すなわち配列番号1又は配列番号2又は配列番号3の1つがセンス方向(下線部)で隣接し、そしてその下流には、相補的なアンチセンス配列(イタリック体)が隣接する。次に、超過の塩基対、好ましくはTリッチ配列を3’及び5’末端に追加する。対応するプライマーは、RNAiによって断片化されるSiRNAヘアピンループを生成する。上記ヘアピン配列に隣接する配列が19塩基対のSTAT3 mRNAセクションに相補的である限り、SiRNAによって、STAT3の翻訳が妨害されると予測されることは当業者ならば理解するであろう。この場合、ヘアピンループ(太字)を形成させるのに9ヌクレオチドの短い配列を用いたが、様々な研究グループが、3〜23ヌクレオチドの範囲のループサイズを有するヘアピンsiRNAを用いた遺伝子サイレンシングの成功結果を報告している。以下は、様々な研究グループによって用いられたループサイズ、及び特異的ループ配列の概要である。
STAT3活性を調節するのにSiRNA変種が使用可能であることは、当業者ならば理解するであろう。ここで「変種」は、1又は複数の箇所で保存的又は非保存的なヌクレオチド挿入、欠失又は置換が生じたSiRNAを指す。ただし、そのような変化は、基本的性質(例えば、活性を調節する性質)が顕著に変化していないSiRNAをもたらすものであることを条件とする。この文脈における「顕著」とは、当業者であれば、この変種の性質は、元のSiRNAの性質と比べてなお異なっている可能性があるが、それは非自明ではないであろう、と言うであろうことを意味する。
一実施形態では、上記STAT3のSiRNAは、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9、からなる群より選択される。ベクターは、当技術分野で知られている手法を用いて調製することができる。下記の実施例に一例が記載されている。SiRNAのベクターは、STAT3 SiRNA標的を含有するように構築し、空のベクターで7〜9時間、293TベースのPhoenix−Amphoパッケージング細胞系に形質移入し、48時間後にアンホトロピックレトロウイルスを採取し、ペレットにして非付着細胞及び細胞片を除去し、0.45μmのセルロースアセテート膜に通して濾過した。分子生物学分野の当業者ならば、治療に使用可能なSiRNAを送達するのに、多くのベクター及びパッケージング細胞系が利用可能であることを理解するであろう。
典型的な原核細胞ベクタープラスミドは、Biorad Laboratories社(米国カリフォルニア州リッチモンド(Richmond)所在)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322及びpBR329;Pharmacia社(米国ニュージャージー州ピスキャタウェイ(Piscataway)所在)から入手可能なpTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540及びpRIT5;Stratagene Cloning Systems社(米国CA92037ラホーヤ(La Jolla)所在)から入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46Aである。
典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia社(米国ニュージャージー州ピスキャタウェイ所在)から入手可能なpSVLである。このベクターは、クローニングされた遺伝子を発現させるのにSV40後期プロモーターを使用し、最も高いレベルの発現は、COS−1細胞等のT抗原産生細胞で見られる。誘導性哺乳類発現ベクターの一例がpMSGであり、これもPharmacia社(米国ニュージャージー州ピスキャタウェイ所在)から入手可能である。このベクターは、クローニングされた遺伝子を発現させるのに、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復のグルココルチコイド誘導性プロモーターを使用する。
有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403〜406及びpRS413〜416であり、概ね、Stratagene Cloning Systems社(米国CA92037ラホーヤ所在)から入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405及びpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIp)であり、酵母の選択マーカーであるHIS3、TRP1、LEU2及びURA3を取り込んでいる。プラスミドpRS413−416は、酵母セントロメアプラスミド(YCp)である。
発現ベクターを構築するには、当業者に周知の方法を用いることができる。そのような方法の1つは、ホモポリマー末端を介した連結を行うものである。末端デオキシヌクレオチド転移酵素によってクローニングするべきDNA断片の露出3’OH基に、polydA(又はpolydC)ホモポリマーテールを付加する。その後、この断片は、線状化されたプラスミドベクターの末端に付加されたpolydT(又はpolydG)テールにアニールすることができる。
別の方法は、付着末端を介した連結を行うものである。適当な制限酵素の作用によって、核酸断片及びベクターに適合した付着末端を生成させることができる。これらの末端は、相補的な塩基対合を介して迅速にアニーリングするであろう。そして、残っているニックは、リガーゼの作用によって閉じることができる。
様々な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーが、International Biotechnologies社(米国コネティカット州ニューヘブン(New Haven)所在)を含む多くの供給源から購入可能である。
一実施形態では、上記組成物はククルビタシンであることが好ましい。ククルビタシン、C32 H46 O8は、主として、スカッシュ等のウリ科植物から単離される光化学物質である。ククルビタシンQは、STAT3の活性化を阻害するが、JAK2の活性化は阻害せず、ククルビタシンAは、JAK2活性化を阻害するが、STAT3活性化は阻害せず、ククルビタシンB、E及びIは、両方の活性化を阻害する。ククルビタシンのC3カルボニルをヒドロキシルに変換すると、抗JAK2活性が減失する結果となるが、ククルビタシンのC11にヒドロキシル基を付加すると、抗STAT3活性が減失する結果となる。ククルビタシンQは、STAT3の活性化を選択的に阻害し、JAK2、Src、Akt、Erk又はJNK活性化を阻害せずにアポトーシスを誘導する。さらに、ククルビタシンQは、構成的に活性化されたSTAT3を含有するヒト腫瘍及びマウス腫瘍において、それを含有しないものと比較して、より強力にアポトーシスを誘導する(Blaskovichら、2005年)。STATのリン酸化を阻害することによって、そのSTAT2量体は核へ移行できなくなる可能性があり、それにより、そのSTATがDNAに結合するのが阻害され、そのような経路を介した遺伝子調節が阻害される。
上記ククルビタシンは、ククルビタシンI又はククルビタシンQを含むことが好ましい。ククルビタシンIは、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)多様性セット(Diversity Set)から、v−Srcで形質転換されたNIH3T3細胞及びヒト癌細胞内のホスホチロシンSTAT3のレベルを強力かつ迅速に1〜2時間以内に抑制するものとして同定された(JSI−124)。ホスホチロシンSTAT3レベルの抑制は、STAT3 DNAの結合の阻害と、STAT3媒介性ではあるが、血清応答エレメント媒介性ではない遺伝子転写と、をもたらした。ククルビタシンIは、チロシンリン酸化されたJanusキナーゼ(JAK)のレベルも低下させたが、Srcではそのレベルを低下させなかった。ククルビタシンIは、JAK/STAT3に関して高度に選択的であり、Akt、細胞外シグナル制御キナーゼ1/2、又はc−Jun NH(2)末端キナーゼによって媒介された経路のような、他の発癌経路及び腫瘍生存経路は阻害しない。ククルビタシンIは、構成的に活性化されたSTAT3を高レベルで発現するモデルで強力に成長を阻害したが、それは、STAT3非依存的な発癌性腫瘍の成長には影響を与えなかった(Blaskovichら、2003年)。線維増殖性細胞では、癌細胞内での阻害と比較して、より高いククルビタシンIの感受性が存在する可能性がある。ククルビタシンIによりJak2及びStat3の両方を阻害することによって、STAT3発現のみを阻害するのと比較して、より強力な阻害作用を細胞増殖及び移動に及ぼしうる。
一実施形態では、上記組成物はSTAT3デコイオリゴヌクレオチドを含むことが好ましい。STAT3デコイは、15merの2本鎖オリゴヌクレオチドを含み、それは、c−fosプロモーター内のStat3応答エレメントに密接に対応している。STAT3デコイは、活性化されたStat3に特異的に結合し、Stat3がSTAT3結合エレメントに結合するのを阻止する。STAT3デコイオリゴヌクレオチド配列は次の通りである。
配列番号5:
5’CATTTCCCGTAAATC3’ 3’GTAAAGGGCATTTAC5’
一実施形態では、上記組成物はホスホチロシンペプチドであることが好ましく、より好ましくは、上記ホスホチロシンペプチドはXYL又はAYLを含む。Stat3の小分子ホスホチロシンペプチド阻害物質は、Stat3 SH2ドメイン結合ペプチドであるPYLKTK(配列中、Yはホスホチロシンを表す。)の能力を破壊する。PYLKTK又はPFLKTKではなく、PYLKTKが核抽出物中に存在する場合に、STAT3のDNA結合活性レベルの有意な低下、そしてより少ない程度のSTAT1の低下が起こり、STAT5のそれには影響がない。アラニンスキャニング変異誘発及びPYLKTKの欠失誘導体の分析は、Y+1位置のLeu残基及びY−1位置の置換基(ただし必ずしもProではない。)が活性STAT3の破壊に必須であることを明らかにし、それによって、最小活性配列をXYLというトリペプチドにマッピングする。ビーズ結合のPYLKTKペプチドを用いた研究は、このホスホペプチドがin vitroで直接的にSTAT3単量体と複合体形成することを実証し、PYLKTKがSTAT3:STAT3 2量体を破壊することを示唆する。STAT3のペプチド誘導性阻害の機能的重要性に関する証拠として、PYLKTK−mts(mtsは膜移行配列)は、構成的でリガンド誘導性のSTAT3活性化をin vivoで選択的に阻害した。さらに、PYLKTK−mtsは、Src腫瘍性タンパク質による形質転換を抑制するが、これは、構成的なSTAT3活性化を必要とすることが以前に示されている。XYLは、STAT3シグナル伝達を阻害する最小ペプチドである。
STAT3のSH2ドメイン結合ホスホペプチドであるPYLKTK、並びにそのトリペプチド誘導体であるPYL及びAYL(配列中、Yはホスホチロシンを表す。)は、STAT3の生化学的活性及び生物学的機能を阻害する。ベンジル、ピリジル又はピラジニルによるY−1残基の置換を有するPYL(又はAYL)の変異に基づいて、新規誘導体は、STAT3活性のin vitroでの破壊に関して、PYL又はAYLトリペプチドより5倍強力であった(Turksonら、2001年)。
一実施形態では、上記組成物は、小さな低分子量組成物であるSTA−21であることが好ましい。STA−21は、Stat3DNA結合活性、Stat3 2量体化、及びStat3依存性ルシフェラーゼ活性を阻害する。さらに、STA−21は、構成的なStat3シグナル伝達を有する乳癌細胞の生存を低減するが、構成的Stat3シグナル伝達を有しない細胞には最小限の影響を有する(Songら、2005年)。
一実施形態では、上記組成物は、上述の通りの、STAT3を調節する組成物と、薬学的に許容される担体と、を含むことが好ましい。上記組成物は、活性成分の、1日量若しくは単位、1日サブ用量、又はその適切な一部を含有する単位用量であることが好ましい。
通常、ヒトでは、上記組成物の経口又は局所投与が好ましい経路であり、最も好都合である。受容者が嚥下障害又は経口投与後における薬物吸収障害を患っている状況では、上記薬物は、非経口投与、例えば舌下又は頬側投与することができる。本発明の組成物は、通常、局所的に、又は任意の非経口経路によって、活性成分を含む医薬組成物の形態で、(任意選択で非毒性の有機又は無機の酸又は塩基又は付加塩の形態で、)薬学的に許容される剤形で投与されるであろう。上記組成物は、治療するべき線維増殖性疾患及び患者、並びに投与経路に応じて、様々な用量で投与することができる。
ヒト治療では、上記組成物を単独で投与することもできるが、通常は、意図された投与経路及び標準的な調剤実務に考慮して選択された適切な医薬品添加剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
一実施形態では、上記組成物は、患者への局所投与に適していることが好ましい。皮膚への局所投与には、上記組成物は、例えば、ミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン組成物、乳化ろう及び水のうちの1つ又は複数を有する混合物中に懸濁又は溶解された活性組成物を含有する適当な軟膏剤として処方することができる。或いは、例えば、ミネラルオイル、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水のうちの1つ又は複数を有する混合物中に懸濁又は溶解された適当なローション又はクリームとして、それらを処方することもできる。上記組成物は、ローション、溶液、クリーム、軟膏剤又は散布剤の形態で局所的に投与することもできる。
一実施形態では、上記医薬組成物はシリコーンゲルを含むことが好ましい。これは、医療用グレードのポリシロキサン組成物シーティングの形態であってもよい。それは再使用可能であってもよい。それは、液体ゲルの形態にある、実質的に水を含まない組成物であってもよい。上記シリコーンゲルは、上記組成物との混合物の形態であってもよく、或いは、上記組成物の投与後に上記シリコーンゲルを患者に貼付してもよい。
本発明の別の態様は、STATを調節する組成物と、シリコーンゲルと、を含む部品キットである。上記組成物は、上述の通りSTAT3を調節することが好ましい。
口内の局所投与に適した組成物には、風味付きベース、通常はショ糖及びアカシア又はトラガントの中に活性成分を含むトローチ剤;ゼラチン、グリセリン、又はショ糖及びアカシア、のような不活性ベース中に活性成分を含むパステル剤;並びに適当な液体担体中に活性成分を含む洗口剤、が含まれる。
本発明の組成物は、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋内又は皮下に投与することもでき、或いは注入法によってそれらを投与することもできる。それらは、他の物質、例えばその溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースを含有しうる無菌水溶液の形態で用いるのが最もよい。上記水溶液は、必要に応じて、(好ましくはpH3〜9に)適切に緩衝されているのがよい。無菌状態での適当な非経口組成物の調製は、当業者に周知の標準的な調剤技術によって容易に行われる。
非経口投与に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び上記組成物を、意図された受容者の血液と等張にする溶質を含有する水性及び非水性の無菌注入液、並びに懸濁薬剤及び増粘剤が含まれる水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。上記組成物は、単位用量又は多用量容器(例えば、密封されたアンプル及びバイアル)に入れて提供することもでき、また、使用直前の無菌液体担体(例えば注射用水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。即時注射用溶液及び懸濁液は、上述の種類の無菌粉末、果粒及び錠剤から調製することができる。
一実施形態では、上記医薬組成物はさらにコルチコステロイドを含むことが好ましい。トリアムシノロンアセトニド又は別のコルチコステロイド薬のようなコルチコステロイドを含む非経口投与は、通常、4〜6週間の間隔で反復することができる。上記コルチコステロイドは、上記組成物との混合物の形態であってもよく、或いは上記組成物の投与後にコルチコステロイドを患者に非経口投与してもよい。
本発明の別の態様は、STATを調節する組成物と、コルチコステロイドと、を含むキットである。上記組成物は、上述の通りSTAT3を調節することが好ましい。
上記組成物は、例えば皮膚用パッチ剤の使用によって、経皮投与することもできる。一実施形態では、上記組成物を経皮投与することが好ましい。経皮投与は、患者の皮膚に貼付した膜、パッチ又はシートを介したものでよい。上記膜は、コルチコステロイド又は他の混合物を含む、上記組成物の徐放投与用に設計されたものでよい。上記膜は、実質的に水を含まない組成物の利点を有するように設計されたものでもよい。無菌状態での適当な膜組成物の調製は、当業者に周知の標準的な経皮的手法によって容易に行われる。
一実施形態では、上記組成物は、患者へのエアゾール送達に適した処方を含む。本発明の組成物は、鼻腔内投与することも、吸入によって投与することもでき、適当な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン(1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A3)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルプロパン(HFA 227EA3)等)、二酸化炭素、又は他の適当な気体)を使用した加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーからの、乾燥粉末吸入器又はエアゾールスプレーの形態での送達が好都合である。加圧エアゾールの場合には、計量された量を送達するバルブを提供することによって、用量単位を決定することができる。上記加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーは、例えば、エタノール及び高圧ガスの混合物を溶媒として用いた、活性組成物の溶液又は懸濁液を含有しうるものであり、上記混合物は、潤滑剤(例えば、トリオレイン酸ソルビタン)をさらに含有しうる。吸入器又は注入器で使用するための(例えばゼラチン製の)カプセル及びカートリッジは、本発明の組成物と、適当な粉末基剤(ラクトース、デンプン等)と、の粉末混合物を含有するように処方することができる。
エアゾール又は乾燥粉末組成物は、患者に送達するために、各計量用量又は「一服」が、本発明の組成物を少なくとも1mg含有するように調製することが好ましい。エアゾールを用いた総日用量は、患者によって異なること、そして、それを単回用量で投与しても、より一般的に、その日全体に渡った分割量で投与してもよいことが理解されよう。エアロゾル投与は、とりわけ肺線維症の患者に適したものでありうる。
例えば、本発明の組成物は、風味剤又は着色剤を含有しうる、即時放出、徐放又は制御放出投与用の、錠剤、カプセル剤、腟坐薬、エリキシール、溶液又は懸濁液の形態で、経口、頬側又は舌下投与することができる。無菌状態での適当な経口組成物の調製は、当業者に周知の標準的な調剤技術によって容易に行われる。本発明の組成物は、陰茎海綿体注射を介して投与することもできる。或いは、坐剤又は腟坐剤の形態で本発明の組成物を投与することもできる。
とりわけ眼の線維増殖性疾患の治療用には、経眼経路で組成物を投与することができる。眼科使用では、本発明の組成物は、等張のpH調整無菌食塩水中の微粉状懸濁液として、又は好ましくは等張のpH調整無菌食塩水溶液として、任意選択で塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤と組み合わせて処方することができる。或いは、それらはペトロラタムのような軟膏剤中に処方することもできる。
本発明のさらに別の態様は、線維増殖性疾患を治療するのに有用と予測される組成物を同定する方法であって、線維増殖性細胞を試験混合物で処理するステップと、前記試験混合物の、STATへの影響を評価するステップと、を含む方法である。
上記方法は、STATを調節する組成物を選択するステップを含むことが好ましい。上記組成物は、STAT活性、STATのリン酸化、STATのmRNA又はタンパク質発現レベル、又はSTATの細胞内局在、のうちの1つ又は複数を調節することがより好ましい。上記STATの活性を調節する組成物は選択することができる。例えば、STATの活性を低下させる組成物は、選択されたものであっても、また、さらなる研究又は化合物設計のための出発点であってもよい。選択された組成物は、より好ましくは、STAT3媒介シグナル伝達の活性を低下させるものであるのがよい。STATの調節は、下記実施例に記載する方法を用いて、或いは前に引用した文献中の方法のような、当技術分野で一般的に使用されている方法によって評価することができる。
一実施形態では、STATはSTAT3であることが好ましい。さらに別の実施形態では、上記線維増殖性細胞はヒトケロイド組織に由来することが好ましい。
本発明の方法は、コンピュータモデリングを用いて選択された組成物を、当業者に知られている通りに、準備、合成、精製及び/又は処方するステップと、上記組成物がSTATの活性を調節するかどうかを評価するステップと、をさらに含みうる。上記組成物は、薬学的使用のために、例えば動物又はヒトでのin vivo試験で使用するために処方することができる。
一実施形態では、上記試験混合物の影響を評価するステップは、STATによって調節されるポリペプチドの量又は活性を評価することを含むことが好ましい。コラーゲン等のタンパク質、又はSTAT3によって発現上昇する可能性のある遺伝子(サイクリンD1、Myc、Mcl−1、SOCS3、Bcl2、Bol−xL等)、の活性又はレベルを調節する組成物の能力を評価することができる。例えば、既知のアッセイを用いて、Mycの活性又はレベルを評価することができる。そのような評価は、高スループットスクリーニングに適したマイクロタイタープレートフォーマット又は他のフォーマットで行ってもよい。上記評価は、当業者に周知の酵素アッセイ法を用いて行ってもよい。
上述の通り、選択又は設計された組成物は、合成(既に合成されていない場合)又は精製し、STATへの影響について試験することができる。上記組成物は、コラーゲンI及び/又はコラーゲンIIIのmRNAレベル及び/又はポリペプチドレベルを含むコラーゲン発現への影響、或いはコラーゲンが存在する細胞又は組織への影響に関して、in vitroスクリーニングで試験することができる。上記細胞又は組織は、内因性コラーゲンを含有してもよく、或いは外因性コラーゲン(コラーゲンをコードする内因性核酸の操作の結果として発現されるコラーゲンも含む。)を含有してもよい。上記組成物は、ex vivo又はin vivoスクリーニングで試験してもよく、この場合、トランスジェニック動物又は組織を使用しうる。適当な試験は当業者には明らかであろう。そして、それらの例には、生物学的により重要な評価又は経路評価(例えば、細胞増殖、線維性ポリペプチドの産生、レポーター遺伝子活性の測定)が含まれる。
当業者には周知の通り、組成物は、他の試験、例えば毒性試験又は代謝試験にも供することができる。
一実施形態では、上記試験混合物の影響は、細胞増殖の量及び/又は細胞移動の量を評価することをさらに含むことが好ましい。STAT3の阻害剤は、ケロイド線維芽細胞のコラーゲン産生、細胞増殖及び移動を、正常線維芽細胞に匹敵するレベルにまで抑制することができた。
本発明のさらに別の態様は、線維増殖性疾患を発生する患者の危険性又は線維増殖性疾患の重度の評価を補助する方法を提供し、この方法は、試料中でのSTAT発現又はSTAT活性のレベルを測定するステップを含む。
好ましい実施形態は、上記レベルが、例えば手術又は傷害の後に患者が線維増殖性疾患を発症する危険性が低いこと、中程度であること、又は高いことを示しているかどうか、の判定を提供する。図2Aは、STAT発現及び活性のレベルから決定することができる、低危険度(NS31、NS32、NS33、NS34、NS35)、中危険度(KS53、KS56)又は高危険度(KS51、KS52、KS54、KS55、KS57、KS58)、の患者の例である。
一実施形態では、上記試料は、手術後、短時間のうちに、そして瘢痕がケロイドを形成するかどうかを他の方法で判定可能となる前に患者から採取されたものである。
一実施形態では、上記試料は瘢痕から得られたものである。これは、特に、上記瘢痕が、上述の肥厚性のものであるかケロイドであるか、に関して不確実性が存在する場合である。
STATはSTAT3であることが好ましい。
以下、非限定的な図及び実施例を参照して本発明を説明する。
本明細書で言及されたすべての参考文献は、参照されることにより本明細書に組み込まれる。

本研究で提示された正常皮膚(NS)、ケロイド皮膚(KS)、正常線維芽細胞(NF)、ケロイド線維芽細胞(KF)、正常ケラチン細胞(NK)及びケロイド角化細胞(KK)
(実施例1)
本発明者らは、ケロイド組織内の表皮及び真皮細胞、並びにケロイド線維芽細胞におけるSTAT3発現及びリン酸化の増大を観測した。siRNA又はククルビタシンIによるSTAT3発現及びリン酸化の阻害は、ケロイド線維芽細胞におけるコラーゲン産生の同時減失、細胞増殖障害、細胞移動の遅延を引き起こした。本発明者らは、初めて、ケロイド発病機序におけるSTAT3の役割と、コラーゲン産生の新規な調節と、を示した。STAT3の阻害剤は、ケロイド瘢痕、及びおそらく他の線維増殖性疾患の将来的治療に有用な治療となりうる。この実施例で、発明者らは、STAT3がケロイド瘢痕の発病機序に関与しているかどうかの解明に取り組んだ。さらに、STAT3は、創傷治癒の間に組織傷害に反応して、様々な細胞成分によって分泌されることが知られている様々なサイトカイン及び成長因子、リガンドで活性化される重要分子である。本発明者らの結果は、ケロイド組織、ケロイド由来線維芽細胞、及び増殖状態にあるケラチノサイトにおける、STAT3発現及び/又はリン酸化の増強を示した。本発明者は、Jak1ではなく、チロシンキナーゼJak2の活性化が、ケロイド線維芽細胞において、正常な皮膚線維芽細胞と比較して、同時的に増強されていることを検出した。加えて、本発明者らは、ケロイド線維芽細胞によるコラーゲン産生、並びにケロイド線維芽細胞の細胞増殖及び移動の増大を観測し、これらは、STAT3 siRNA及びJak2/STAT3の阻害剤であるククルビタシンIを介したSTAT3阻害によって抑制された。これらのデータは、ケロイド瘢痕の発病機序におけるSTAT3の重要な役割を明らかにした。ケロイド瘢痕は、STAT3の阻害によって改善が可能であり、ケロイド線維症の治療のための治療標的として有用でありうる。ケロイド瘢痕は、自然発生的に生じるものではなく、皮膚損傷後における過剰な創傷治癒の結果であり、細胞移動、増殖、炎症、コラーゲン及び他のECM成分の合成及び分泌、並びに創傷部マトリックス(wound matrix)の再構築における異常を示す。本発明者らは、正常皮膚及びケロイド組織切片の両方、並びに線維芽細胞及びケラチノサイト細胞培養でのケロイド発病機序におけるSTAT3の役割を調査した。本発明者らのデータは、ケロイド組織では、基底層でSTAT3がリン酸化されているが、表皮のより表層にある分化した層ではその程度が低いことを示した(図1C)。これは、分化状態ではなく、むしろ増殖性の状態に維持されているケロイドケラチノサイトにおけるTyr705 STAT3リン酸化が増強されていることによって実証される(図4)。真皮では、本発明者らは、STAT3発現及びリン酸化の両方が、ケロイド組織切片、組織溶解物、及び線維芽細胞で増強されていることを示した(図1B、1C、及び2)。ケロイド瘢痕におけるコラーゲン産生、線維芽細胞増殖、及び移動の増大は以前に報告されている。したがって、本発明者らは、本発明者らが観測したSTAT3発現及びリン酸化の増大が、ケロイド発病機序におけるこれらのいずれかの過程に役割を有しているかどうかを、STAT3 siRNAを使って、又はJak2/Stat3活性化の阻害剤であるククルビタシンIによってさらに調査した。実際、本発明者らは、いずれかの方法によるStat3リン酸化及び発現の阻害が、ケロイド線維芽細胞のコラーゲン産生、増殖、及び移動を、正常線維芽細胞のものに匹敵するレベルにまで減弱させることを見出した(図5〜8)。試験されたsiRNAの中では、STAT3 siRNA 4が最も有効であり、1μMという低濃度のククルビタシンIが、ケロイド線維芽細胞の増殖及び移動の速度を正常線維芽細胞の速度にまで低下させるのに有効であった。Tyr705及びSer727 STAT3リン酸化、並びにコラーゲン産生を阻害するにはより高用量のククルビタシンIが効果的であるが(図5B)、細胞形態の変化、並びに、より高用量で起こる一部の細胞死の始まりも本発明者らは観察した(図6C及び8D)。以前に報告されている通り、A549ヒト肺癌細胞を10μMのククルビタシンIで24h処理すると、33%の腫瘍細胞死及び9.8%のアポトーシスを誘導し、さらにヌードマウスにおけるA549腫瘍増殖も55.4%阻害した(Sunら、2005年)。しかし、本発明者らの初代細胞では、これらの癌細胞と比較して、ククルビタシンIに対する感受性が高く、1μM、30分間の曝露にさえ反応することを本発明者らは観測した。ククルビタシンIは、pSTAT3よりも、pJak2の、より強力な阻害剤であることが示されていた。また本発明者らは、ケロイド線維芽細胞では、正常線維芽細胞と比較して、pJak1でなくpJak2の活性化が増強されていることを観測した(図3)。ククルビタシンIによるJak2及びSTAT3の両方の阻害は、siRNAによってSTAT3発現のみを阻害するのと比較して、細胞増殖及び移動に対して、より強力な阻害作用を引き起こしているようであった。
皮膚創傷治癒の過程は、炎症事象、組織形成事象(再上皮化、顆粒組織の形成、新生血管形成)、及び組織再構築事象の三相に、独断的に分割することができ、これらは、様々な細胞成分による、様々なケモカイン、サイトカイン、及び成長因子の時間的かつ空間的に調和した分泌によって支配されている。STAT3は、これらのリガンドの大部分に反応して活性化される重要分子である。ここで本発明者らは、ケロイド組織、線維芽細胞、及びケラチノサイトにおけるSTAT3発現及びリン酸化の増強を観測した。これは、停止シグナル若しくはその下方制御の欠失、及び/又はサイトカイン若しくは成長因子による間断のない刺激を示すものである。実際、STAT3を活性化する一部のサイトカイン(IL−6等)がケロイド組織で増大していることが報告されている(Xueら、2000年)。その一方、ケロイド組織におけるSTAT3に、STAT3が過剰発現されやすくなるなんらかの変異が存在するかどうかはいまだに判定されないままである。Stat3は様々な創傷治癒のすべての相に関与しているので、Stat3の正常な調節はこれらの過程全体を通して必要であり、Stat3シグナル伝達の調節異常は、創傷治癒障害及び線維症に向けて情勢を変化させるものであろうと本発明者らは推測する。炎症を欠失している胎児組織が無瘢痕の完全な創傷治癒を行い、急性炎症性浸潤の存在下では、瘢痕形成がそれに続いたので、炎症誘発性サイトカインによるStat3の活性化も、炎症相での瘢痕形成の進行におけるStat3の役割を示唆する(Yangら、2003年)。
線維芽細胞は、ECMの合成、沈着、及び再構築の原因となっている。ここで本発明者らは、Stat3の過剰発現及びリン酸化が線維芽細胞による過剰なコラーゲン沈着において新規な役割を演じており、それがケロイド等の線維性組織へと導くことを報告する。siRNA又はククルビタシンIによるSTAT3発現の阻害は、それに対応するコラーゲン産生の低減を示し(図5)、これは、コラーゲン産生がSTAT3によって転写レベルで調節されていることを示唆する。コラーゲンIα1型すなわちCOL1A1及びコラーゲンIIIα1型すなわちCOL3A1両方のプロモーター領域の予備的なスキャニングによって、いくつかの推定上のSTAT3結合部位が明らかになった。ケロイドで強い合成が見出されている2種のコラーゲンである、プロコラーゲンI型及びIII型の転写にStat3が直接的影響を有するかどうかを調査するのは興味深いことであろう。
構成的に2量体化/活性化されたSTAT3変異体(STAT3C)の過剰発現が細胞の形質転換及び腫瘍形成を引き起こしたので、STAT3は、潜在的発癌性を有することが示された。最近、腫瘍は「治癒しない創傷」であるという概念に基づき、A549カルシノーマ細胞でSTAT3Cを過剰発現させた後のマイクロアレイ分析によって、細胞侵入/移動、血管新生、及びECMの再構築を含む、STAT3で調節されている遺伝子が、創傷治癒及び癌の両方に共通していることが判明した。これは、線維増殖性疾患、若しくはケロイドに見られるようなおかしくなった創傷治癒において、機能亢進性のSTAT3が役割を演じているという本発明者らの観察を支持するものである。しかし、癌細胞は転移するのに、瘢痕組織は転移しないので、創傷治癒と皮膚癌との間には依然として明白な相違が存在する。創傷治癒と皮膚癌との間で、異なった役割をSTAT3がどのようにして演じているかはいまだ明らかでない。ケラチノサイト特異的なSTAT3欠失を有するマウスは、創傷治癒障害を示した。これは、ケラチノサイトにおけるStat3の発現及び/又は活性化のいずれかがこの過程で重要な役割を演じていることを示唆する。一方、活性なSTAT3Cをケラチノサイト内に導入すると、2週間以内にマウスで自然発生的に乾癬を引き起こす(Sonoら、2005年)。しかし、テープ剥離による創傷で発生する乾癬病巣は、ケラチノサイト内における活性化されたStat3と、活性化されたTリンパ球の存在との両方が必要であり、ケラチノサイト内における活性Stat3のみでは創傷治癒の障害を引き起こすのに不十分であることを実証している。本発明者らは、ケロイド線維芽細胞及び増殖中のケラチノサイトでSTAT3が機能亢進性となっていることを示したが、T細胞もケロイド瘢痕化に必要であるかどうかはいまだに判定されていない。皮膚癌に関しては、2ステップモデルの化学物質誘発性皮膚発癌操作を受けた、ケラチノサイト特異的なStat3欠失マウスにおいて、STAT3は皮膚腫瘍の発生に対して完全な抵抗性を有し、ケラチノサイト内でv−Ha−rasを発現するトランスジェニックマウスにSTAT3阻害剤を局所的に投与したところ、乳頭腫形成を阻害した(Chanら、2004年、及びPedranziniら、2004年)。癌進行におけるT細胞活性化の関与はこれらの報告では取り組まれておらず、この問題に答えるにはT細胞欠失ヌードマウスを用いたさらなる研究が必要であろう。
最近、腫瘍形成及び転写制御における非リン酸化STAT3の関与が提唱されている。本発明者らは、正常組織及びケロイド組織におけるケラチノサイト及び線維芽細胞の両方でSTAT3の強い発現を観測し、DAPIによる核染色との重複画像は、STAT3の強い核内分布を示した。しかし、pSTAT3染色では、本発明者らは、いったいどれだけのSTAT3がリン酸化されているのか決定することができなかった。pTyr705 STAT3が核に移行し、標的DNA配列に結合し、遺伝子の転写を調節することは確固として確立されているが、非リン酸化Stat3の役割はそれほど明らかではない。本発明者らは、細胞質又は核の非リン酸化STAT3がケロイド発病機序における役割を演じているかもしれないが、それは、pTyr705 STAT3亜集団のものとは異なった方法である可能性が最も高いと考える。しかし、この機構はいまだ不明確であり、さらなる調査が必要である。
まとめると、本発明者らは、初めて、ケロイド瘢痕の発病機序におけるSTAT3の新規な役割を示した。STAT3発現又はリン酸化の阻害剤は、ケロイド線維芽細胞によるコラーゲン産生、細胞増殖、及び移動を、正常線維芽細胞に匹敵するレベルにまで抑制することができた。siRNA及びククルビタシンIに加えて、ククルビタシンQ(ククルビタシンIの類似体であり、かつSTAT3の選択的な阻害剤である。)(Sunら、2005年)、STA−21(Songら、2005年)、STAT3デコイオリゴヌクレオチド(Leongら、2003年)、ホスホチロシンペプチド(Turksonら、2001年)等の他の薬物を含む他のSTAT3阻害剤も有用であると考えられる。ここに例示したものはすべて、抗腫瘍活性、アポトーシスの増強、増殖阻害、又は癌由来若しくはvSrc形質転換細胞系の細胞形質転換の抑制のいずれかを示す。STAT3の阻害を標的とするこれらの潜在的癌治療薬、又はSTAT3を阻害するいかなる他の組成物も、ケロイド瘢痕を含む線維増殖性疾患の将来的臨床治療に有用であると考えられる。
(線維増殖性組織の特性分析)
正常組織及びケロイド組織:
皮膚及びケロイド組織の外科的切除の前に、シンガポール大学(National University of Singapore)施設内審査委員会及びシンガポール国立医療グル−プ(National Healthcare Group)領域別審査委員会(Domain Specific Review Board)からの倫理的承認、並びに患者からのインフォームドコンセントを得た。すべての患者が、ケロイド病変のいかなる先行治療も受けていなかった。すべてのケロイド病変のカラースライドフォトドキュメンテーションに加えて、全病歴を聴取し、理学的検査を行った。本明細書で言及した正常皮膚及びケロイド瘢痕組織のリストを表1に示す。
細胞培養:
この研究で言及した正常及びケロイド由来線維芽細胞並びにケラチノサイトのリストを表1に示す。単離された線維芽細胞は、4500mg/mlグルコースを含有し、10%FBS(GIBCO BRL Life Technologies社、米国ニューヨーク州所在)、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン、及び100ng/mlストレプトマイシン(Sigma社、米国ミズーリ州所在)を添加したDMEM中で培養した。単離されたケラチノサイトは、ケラチノサイト増殖培地(KGM;Clonetics社、米国ニューヨーク州所在)又はEpiLife培地(Cascade Biologics社、米国オレゴン州所在)のいずれかの中で培養した。ケラチノサイトが重層化し、最終分化に到達するのを可能にするには、無血清KGM中の細胞を単層培養で100%集密状態まで維持し、それに続いて10%FCSを添加したDMEM中で4日間維持した後、細胞を気相液相界面に曝露した(Limら、2001年)。
正常皮膚組織と対比したケロイド瘢痕組織におけるin vivoでのStat3発現及びリン酸化の増強:
正常皮膚では、非常に薄いケラチン層の下に表皮の薄層がある。対照的に、パラフィン切片のH&E染色(図1A)に示される通り、ケロイド組織のケラチン及び表皮層はそれより厚い。真皮もかなり肥厚しており、より一様に重層しており、規則的に見える正常皮膚と比較して、密集して不規則な結合組織を有する。
ヘマトキシリン及びエオシン染色:
組織切片は、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定し、パラフィンに包埋し、切片にした。組織切片をヘマトキシリンで5〜8分間染色し、流水で洗浄し、1%塩酸及び70%エタノールを含有する酸性エタノールで迅速脱染し、流水で洗浄し、エオシンエタノールで3〜5分間、対比染色した。次に、70%、80%、95%、及び100%エタノール中での漸進的な浸漬によって、組織切片を再水和させ、キシレンで透徹し、最後にエンテランに封入した。写真は、Leica DM4000B顕微鏡を用いて撮影した。
免疫蛍光:
4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで、15〜30分間、室温で、組織試料の凍結切片を固定し、0.1%Triton X−100を含むPBSで、それぞれ10分間、3回洗浄し、PBS中に5%正常なヤギ血清、2%ウシ胎児血清、2%ウシ血清アルブミン、1mM CaCl、1mM MgClを含有する緩衝液でブロッキングした。上記の通りに組織切片を洗浄し、FDB中に1μg/mlに1:200希釈された、モノクローナルp−Stat3(B7)、ポリクローナルStat3(C−20)、抗マウスIgG、又は抗ウサギIgG抗体の1次抗体と共に、室温で1hインキュベートした。組織切片を記載されている通りに再び洗浄し、FDB中に1:400に希釈されたFluoroLink Cy3標識ヤギ抗ウサギIgG(PA43004;Amersham Biosciences社、英国バッキンガムシャー所在)又は抗マウスIgG−Cy3(AP124C;Chemicon International社、米国カリフォルニア州テメキュラ(Temecula)所在)と共に室温で1hインキュベートした。切片を再び洗浄し、DAPIを含有するVectashield封入剤(H−1200;Vector Laboratories社、米国カリフォルニア州バーリンゲーム(Burlingame)所在)で封入した。写真は、Leica DM4000B顕微鏡を用いて撮影した。
(STAT調節の評価)
STAT発現の評価:
Stat3の発現を検査するために、正常皮膚及びケロイド瘢痕の上にある皮膚の凍結切片に、ポリクローナルStat3(C−20)抗体を用いた免疫蛍光法を施した。これは、対照として抗ウサギIgGを用いたものと並行して行った。図1Bに示す通り、Stat3は、正常皮膚及びケロイド組織の両方で検出することができたが、抗ウサギIgG抗体を用いた場合は、弱い蛍光が観測された。両方の皮膚型で、Stat3発現は表皮層中に容易に検出された。これらの皮膚型は、主としてケラチノサイトによって占められている。皮層では、主として線維芽細胞で構成されている細胞性構成要素と共に結合組織が散在しており、これらの細胞性構成要素がコラーゲン線維及び他のECM成分の沈着に関与している。正常皮膚3及び4の皮層における線維芽細胞の小集団もStat3発現を示したが、ケロイド試料25、26、31、及び48では、より多数の線維芽細胞がStat3発現を示した。Stat3免疫蛍光は、正常皮膚と比較して、ケロイドの方がより強いように見えた。これは、ケロイド試料における表皮及び真皮の両細胞集団でStat3発現がより高いことを示す。
レトロウイルスStat3 siRNA:
STAT3に対して設計された4つの異なった標的を選択し、OligoEngine社のpSUPER.retro.puroのBglII及びXhoIにクローニングし、配列決定を行った(STAT3 Genbankアクセッション番号:NM_139276)。4つの標的を、STAT3 siRNA 1(nt.461〜480)配列番号1、STAT3 siRNA 2(nt.1264〜1283)配列番号2、STAT3 siRNA 3(nt.364〜383)GATTGGGCATATGCGGCCA、及びSTAT3 siRNA 4(nt.1662〜1681)配列番号3と命名した。9−ntの短いヘアピンを中央(太字)に有する対応するプライマーは次の通りである。
Stat3 siRNA標的を含有するこれらのベクター及び空のベクターで、7〜9h、293TベースのPhoenix−Amphoパッケージング細胞系に形質移入し、48h後にアンホトロピックレトロウイルスを採取し、ペレットにして非付着細胞及び細胞片を除去し、0.45μmセルロースアセテート膜に通して濾過した。4μg/mlのポリブレンの存在下で終夜、ケロイド線維芽細胞を感染させ、翌日、新たな10%FBS/DMEMで置換した。感染の48h後に、細胞のウェスタンブロットアッセイ、XTT細胞増殖、又は移動アッセイを行った。移動アッセイは、8μmトランスウェル膜に細胞を再播種し、24h後に上記の通り固定することによって行った。
Stat3 siRNA用の、選択された4つの異なった標的のうち、3つ、すなわち、siRNA 3ではなく、Stat3 siRNA 1、2及び4が、293Tベースのアンホトロピックパッケージング細胞系でStat3発現に対する阻害作用を示した(図5A、左側パネル)。
STATのリン酸化、活性及び細胞内局在の評価:
Stat3の活性化も、ホスホStat3(pStat3)モノクローナル抗体を用いて検査した。これは、対照として抗マウスIgGを用いたものと並行して行った。正常皮膚4では、弱いpStat3染色が観察された(図1C)。対照的にケロイド26では、真皮及び表皮の両方で、Stat3の活性化が有意に増強されていた。
細胞内局在の評価:
ケロイド31における核DAPI染色とStat3染色とを重ね合わせたところ、細胞質局在を示す無定形な染色と共に、ドット様のStat3染色と核との共在を示した(図1D、上側パネル)。これによってより多くの活性化されたStat3がケロイド由来の細胞に存在したという示唆が強化された。抗pStat3抗体及びDAPIで同時染色されたケロイド26でも同様な核内分布が観測された(図1D、下側パネル)。ケロイド26をより詳細に検査したところ、Stat3の核染色が主として基底層で検出され、有棘層及び顆粒層の両方で染色がより少ないことが明らかになった。これは、基底膜に隣接した基底層におけるStat3の活性化が、正常ケラチン細胞と比較して、ケロイドケラチノサイトでより強化されていることを示し、細胞分化よりむしろ細胞増殖における、ケロイドケラチノサイトでの活性化Stat3の役割を示唆する。
ケロイド線維芽細胞及び組織溶解物における、正常皮膚線維芽細胞及び組織溶解物と比較して増強されたStat3活性化:
上記のデータをさらに確認するため、5人の個体からの正常皮膚及び8人の個体からのケロイド瘢痕の組織溶解物を、Stat3のリン酸化及び発現に関して調査した。正常皮膚からの3つの試料は、低度のTyr705 Stat3リン酸化を示し、一方、2つは中程度のTyr705 Stat3リン酸化を示した(図2A)。対照的に、1つを除いてすべてのケロイド組織溶解物が中程度から高度のTyr705 Stat3リン酸化を示した。Tyr705 Stat3リン酸化の程度は、Stat3発現のレベルとよく相関していた。加えて、8つのケロイド組織試料のうちの6つが、5つすべての正常皮膚試料と比較して、Ser727 Stat3リン酸化の増大を示した。8つのケロイド組織試料のうちの同じ6つで、コラーゲン産生が増強されており、一方、残りの2つは、正常皮膚試料のものと同程度の発現を示した。
表皮は、95%のケラチノサイトと、メラニン細胞、ランゲルハンス細胞、及びMerkel細胞を含む5%の非ケラチノサイト細胞とによって占められており(33)、一方、線維芽細胞は、一部の内皮細胞及びマスト細胞と共に、真皮において支配的な細胞である。Stat3の活性化をさらに調査するため、正常皮膚組織及びケロイド組織から得られた初代線維芽細胞をさらに検査した。2株の正常線維芽細胞(NF)株及び3株のケロイド線維芽細胞(KF)株をStat3の活性化に関して検査した。ケロイド線維芽細胞では、Stat3のTyr705リン酸化が、正常線維芽細胞と比較して、Stat3発現に関して正規化した後で2.3〜4.3倍増強されていた(図2B)。Stat1及びStat5のTyrリン酸化は、これらの試料のいずれでも検出不可能であった。これらの試料のすべてで、Stat1タンパク質の発現が存在し、他方、Stat5の発現が弱かった。
Tyr705及びSer727 Stat3リン酸化の動態をさらに検査するために、正常及びケロイド線維芽細胞を正常な増殖条件下で5日間培養した。正常線維芽細胞であるNF7では、1日目にはTyr705 Stat3リン酸化がほとんど検出可能でなかったが、2日目には観測され、5日目まで維持されていた(図2C)。対照的に、ケロイド線維芽細胞であるKF48では、Tyr705 Stat3リン酸化が1日目に観測され、それが増強されて、3日目にピークに達し、さらに、5日目には1日目のレベルにまで徐々に減弱された。Ser727 Stat3リン酸化プロフィールは、正常及びケロイド線維芽細胞の両方で、Tyr705 Stat3リン酸化に類似していた。加えて、KF48では、NF7と比較して増強されたStat3発現が観測された。このデータは、組織切片及び組織溶解物で得られた観察とよく相関していた(図1B〜D及び図2A)。
無血清条件下におけるStat3リン酸化も検査した。NF4及びKF48を90%集密状態まで培養し、無血清DMEMで広範に洗浄し、無血清DMEM中でさらに2日間インキュベートした。新たな無血清DMEMを添加し、5日目まで細胞を24h毎に採取した。本発明者らは、NF4における非常に弱いリン酸化と共に、KF48における強い構成的なTyr705及びSer727 Stat3リン酸化を5日間を通して観測した(図2D)。アクチン発現はすべての試料で同様であったが、KF48では、NF4と比較して、Stat3発現がわずかに増強されていた。全体的に、ケロイド線維芽細胞及び組織溶解物では、正常皮膚からの試料と比較して、Stat3のリン酸化及び発現が増強されていた。ケロイド線維芽細胞におけるTyr705及びSer727 Stat3リン酸化も、構成的かつ血清非依存的に起こった。
Jak1ではなくJak2の活性化がケロイド線維芽細胞で増強される:
ケロイド線維芽細胞でTyr705 Stat3リン酸化が増強されていたことは、本発明者らに、既知のStat3 Tyrキナーゼ、すなわちJak、Src、及びEGF受容体の活性化について調査することを促した。ほぼ集密状態の正常及びケロイド線維芽細胞を無血清培地中で維持し、採取し、内因性Jak1及びJak2の活性化を、抗ホスホJak1又は抗ホスホJak2抗体を用いたウェスタンブロットで分析した。図3に示す通り、NF103と比較して増強されたpJak2がKF48で検出されたが、pJak1シグナルは、Jak1発現が両方の細胞型で存在していたのに、正常又はケロイド線維芽細胞のいずれでもほとんど検出不可能であった。一方、ホスホSrc(Tyr416)及びホスホEGFR(Tyr845)シグナルは、NF及びKFの両方でほとんど検出不可能であった(データは示されていない)。
様々な用量の、Jak2/Stat3活性化の阻害剤であるククルビタシンI(32)と共に、又は対照としてDMSOのみと共にKF48を30分間インキュベートし、それに続いて正常な増殖培地中で48hさらにインキュベーションすることによってStat3の阻害も評価した。図5Bに示す通り、ククルビタシンIによるpY705 Stat3、pS727 Stat3、及びコラーゲン産生の用量依存的阻害が観測された。実効濃度は、1μMという低いものであった。アクチン発現はすべての試料でかなり類似したものであったが、Stat3発現の用量依存的低減も観測された。ククルビタシンIはGalchimia社(スペイン国アコルフィア(A Corufia)所在)から入手した。
ケロイドケラチノサイトにおけるStat3活性化:
正常及びケロイド組織から得られたケラチン細胞株でもStat3の活性化を検査した。ケラチノサイトを増殖培地で培養し、5日目まで毎日採取した。Tyr705 Stat3リン酸化は、KK48では検出可能であったが(図4A、矢印によって示されている中央バンド)、NK103では検出可能でなかった。一方、Ser727 Stat3リン酸化は、NK103において1日目から4日目まで通して、KK48と比較して、より高かったが、5日目にはリン酸化レベルが逆転していた。Stat3免疫ブロットは、NK103とKK48との間で等しい発現を示した。
増殖培地中で培養されたケラチノサイトは、増殖期にある基底層のケラチノサイトを表す。上の結果は、ケロイド26の基底層におけるpStat3染色と整合している(図1C)。表皮における他の重層化された層でStat3活性化がin vivoで起こるかどうかをさらに調査するために、ケラチノサイトを分化条件下で培養した。興味深いことに、Tyr705 Stat3リン酸化は、6つの正常ケラチン細胞試料すべてで比較的高かったが、検査された6つのケロイドケラチノサイト試料すべてで有意に弱いものであった。(図4B)。加えて、Stat3発現及びアクチン発現はすべての試料で類似していたが、正常ケラチン細胞の50%は、ケロイドケラチノサイトと比較して、わずかに増強されたSer727 Stat3リン酸化を示した。分化中のケロイドケラチノサイトにおける低減されたTyr705 Stat3リン酸化も、ケロイド26の有棘層及び果粒層における貧弱なpStat3染色(図1C)と整合していた。
抗体及び試薬:
STAT1、STAT3及びSTAT6に対するリン酸化特異抗体のパネルを含む、7つのSTATファミリーメンバーすべてに対する抗体が、Acris Antibodies GmbH社(独国ヒッデンハウゼンイムヒンメルライヒ(Hiddenhausen Im Himmelreich)所在)から市販されている。これらのすべてがウェスタンブロッティングに使用でき、一部のものは免疫組織化学染色にも使用できる。加えて、多くの会社が、1つ又は複数のSTAT抗体を販売している。
ポリクローナル抗ホスホTyr705 Stat3、モノクローナル抗ホスホSer727 Stat3、ポリクローナル抗ホスホJak1(Tyr1022/1023)、及びポリクローナル抗ホスホJak2(Tyr1007/1008)抗体は、Cell Signaling社(米国マサチューセッツ州ビバリー(Beverly)所在)から購入し、モノクローナルpStat3(B7)(sc−8059)、ポリクローナルStat3(C−20)(sc−482)抗体、抗マウスIgG(sc−2025)、及び抗ウサギIgG(sc−2027)は、Santa Cruz Biotechnology社(米国カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz)所在)から入手した。モノクローナル抗Stat3抗体は、BD Transduction Laboratories社(米国ケンタッキー州レキシントン(Lexington)所在)から購入し、ポリクローナル抗アクチン抗体は、Sigma社(米国ミズーリ州セントルイス(Saint Louis)所在)から購入した。
ウェスタンブロット:
プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics社、米国インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)所在)を含有する放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(150mM NaCl、50mMトリス塩酸、pH7.2、1%デオキシコール酸、1%Triton X−100、0.25mM EDTA、pH8.0)又は150mM NaCl、10mMトリス塩酸、pH7.4、0.5%Triton X−100、0.5% NP−40、1mM EDTA、0.2mMバナジウム酸ナトリウムを含有し、プロテアーゼ阻害剤錠剤を添加した溶解緩衝液中に細胞を採取した。4℃、10分間の遠心分離の後に全細胞溶解物を収集し、7.5%又は10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、PVDF膜(Bio−Rad Laboratories社、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在)に転写した。膜を抗ホスホTyr705 Stat3抗体(1:1000希釈;Cell Signaling社、米国マサチューセッツ州ビバリー所在)を用いて、1%BSA及び0.1%Tween 20を含有するPBS中、4℃で終夜ブロッティングし、0.2%Tween 20を含有するPBSで洗浄し、抗ウサギIgG 2次抗体(1:2000希釈;Sigma社、米国ミズーリ州セントルイス所在)と共に室温で1hインキュベートし、0.2%Tween 20を含有するPBSで洗浄し、その後、強化化学発光法(Amersham Biosciences社、英国バッキンガムシャー所在)、又はLumi−Light(Roche Diagnostics社、米国インディアナポリス所在)と、オートラジオグラフィーと、を行った。Restoreウェスタンブロッティングストリッピング緩衝液(Pierce社、米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在)を製造業者の指示に従って用いて、膜をストリッピングし、抗ホスホSer727 Stat3(1:1000希釈;Cell Signaling社、米国マサチューセッツ州ビバリー所在)、及び抗マウスIgG 2次抗体(1:2000希釈;Sigma社、米国ミズーリ州セントルイス所在)を用いて再ブロッティングした。ストリッピング及び再ブロッティング手順をモノクローナル抗Stat3(1:1000希釈;BD Transduction Laboratories社)、ポリクローナル抗アクチン(1:1000希釈;Sigma社)、及びモノクローナル抗コラーゲン抗体(1:1000希釈;MONOSAN)を用いて繰り返した。
(ヒトケロイド組織由来の線維増殖性細胞)
線維芽細胞及びケラチノサイトの単離:
皮膚標本からの線維芽細胞及びケラチノサイトの単離及び培養の手順は以前に記載された通りである(Limら、2002年)。
(STATによって調節されているポリペプチドを評価する方法)
コラーゲンはSTAT3活性化によって調節されているかもしれない:
モノクローナル抗ヒトコラーゲンI、II、IIIは、MONOSAN(オランダ国ウーデン(Uden)所在)から購入した。フィブロネクチン及びマイトマイシンCは、Sigma社(米国ミズーリ州セントルイス所在)から購入した。これらは、上述の通りのウェスタンブロットによって検出した。
8つのケロイド組織試料のうち6つで、コラーゲン産生が増強されていた(図2A)。一方、残りの2つは、正常皮膚試料からのものと類似した発現を示した。
Stat3の阻害はコラーゲン産生を下方制御する:
線維芽細胞によるコラーゲンの分泌は、創傷治癒における組織再構成の過程で起こり、コラーゲン産生の増強が線維症に関係付けられている。STAT3がケロイドコラーゲン産生で何かの役割を演じているかどうかを調査するために、STAT3 SiRNAを発現するレトロウイルスにケロイド線維芽細胞を感染させた。選択された4つの異なったStat3 siRNA用の標的のうち、3つ、すなわちsiRNA 3ではなくStat3 siRNA 1、2、及び4が、293Tベースのアンホトロピックパッケージング細胞系でStat3発現に対する阻害作用を示した(図5A、左側パネル)。これらの3つのStat3 siRNAによるStat3発現の阻害は、KF48のコラーゲン産生の阻害と相関していた(図5A、右側パネル)。併せて、Stat3 siRNAによるStat3発現の阻害、又はククルビタシンIによるStat3活性化の阻害は、コラーゲン産生の同等な阻害をもたらした。
(細胞移動を評価する方法)
ケロイド線維芽細胞の細胞移動は、Stat3 siRNA及びククルビタシンIによって阻害される:
皮膚線維芽細胞の細胞移動におけるStat3の役割を検査するために、Stat3 siRNAを発現するレトロウイルスでKF48細胞を感染させ、上記に記載の通り掻爬アッセイを行った。図8Aにおいて、Stat3 siRNA 1、2、及び4はすべてがStat3発現を阻害するが、これらは、KF48の細胞移動速度を遅らせることができ、一方、ベクターのみ、又はStat3 siRNA 3は遅らせなかった。オーバーラップしてない3箇所の視野を取得し、図8Bに、平均±SDとしてグラフ表示した。上記に記載の通りに、膜貫通細胞移動アッセイも三つ組で行い、平均±SDとして定量化した(図8C)。掻爬アッセイと整合して、Stat3 siRNA 1、2、及び4は、KF48の細胞移動を遅らせることができたが、ベクター及びStat3 siRNA 3は遅らせなかった。図8B及び8Cの右側パネルは、Stat3 siRNAによる阻害の効率を示すための、Stat3及びアクチンの免疫ブロットを示す。
細胞移動におけるStat3の役割も、掻爬アッセイでククルビタシンIを使用して検査した。最初に、KF48細胞を10μg/mlマイトマイシンCと共に2hインキュベートし、その後、DMSO又は1μMククルビタシンIで30分間、処理した。掻爬創傷を行い、それに続いて、正常増殖培地中でさらにインキュベートした。創傷の0h、22h、及び48h後に写真を撮影した。図8Dに示す通り、ククルビタシンIによるStat3活性化の阻害は、DMSO対照と比較して、KF48の移動を減速させた。オーバーラップしていない3箇所の視野における平均±SDの定量化を図8Eに示す。それらは、DMSO対照と比較して、ククルビタシンIによって、細胞移動が22hに有意に減弱しており、48hに移動が遅れていることを示した(P<0.001)。
ケロイド線維芽細胞における細胞移動の増大:
創傷治癒は複雑な多段階過程である。これは、皮膚欠損の領域で表面を再生させるためのケラチノサイト及び線維芽細胞の移動及び増殖を必要とする。本発明者らは、掻爬アッセイを用いて、正常及びケロイド線維芽細胞の移動能力をさらに検査した。最初に細胞を完全な集密状態にまで培養し、10μg/mlマイトマイシンCで2h処理した後、黄色のピペットチップで掻爬創傷した。0h後及び14h後に写真を撮影した(図7A)。オーバーラップしていない3箇所の視野を捕捉し、平均±SDとして定量化した。結果を図7Bに示す。3株のケロイド線維芽細胞、すなわちKF43、KF48、及びKF107は、3株の正常線維芽細胞、すなわちNF2、NF4、及びNF103と比較して、掻爬損傷の正中線に向かった細胞移動速度の増大を示した。8.0μm孔径のポリビニルプロピレン非含有ポリカーボネートトランスウェル膜を用いて三つ組で行った膜貫通アッセイによっても、細胞移動を検査した。1複製あたり3箇所のオーバーラップしていない視野を捕捉し、三つ組における全移動細胞の平均として定量化した。再び、3つのNF試料と比較して、3つのKF試料が移動の増大を示した(図7C)。
移動アッセイ:
掻爬方法を用いた移動アッセイのために、細胞を集密状態にまで培養し、10μg/mlマイトマイシンCと共に2hインキュベートした後、黄色のピペットチップを用いてひっかき傷を導入した。正常増殖培地中で細胞をさらにインキュベートし、創傷の0h、14h、15h、22h、又は48h後に写真を撮影した。オーバーラップしていない3箇所の視野を、Zeiss社製Axiovert135顕微鏡によって捕捉し、損傷部位に移動した細胞を計数し、平均±SDとして表した。
トランスウェル8.0μm孔径ポリカーボネート膜(Corning社)を用いた移動アッセイも行った。底部チャンバー内に0.5mlの10%FBS/DMEMを走化性物質として有し、0.2ml無血清DMEM中にあるインサートの上層に1×10細胞/ウェルを播種した。24h後に、冷PBSで1回細胞を洗浄し、その後、4%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中で、15分間、室温で固定した。0.1%Triton X−100を含有するPBSを用いて、室温で3分間、細胞の透過処理を行い、室温で10分間、ヘマトキシリンで染色し、その後、3回水で脱染色を行った。インサートの上層から、綿棒によって細胞を除去し、インサートを放置して乾燥させた。インサートをスライド上に封入し、Leica DM4000B顕微鏡を用いて、インサートの底部に移動した細胞の、3箇所のオーバーラップしていない視野を捕捉した。
(細胞増殖を評価する方法)
Stat3の阻害は細胞増殖を減弱させる:
線維芽細胞増殖の増強は、ケロイド組織の特徴の1つである。これと整合して、NF2及びNF4と比較して、KF48及びKF107で観察されたように(図6A)、正常な培養条件で培養されたケロイド線維芽細胞は、正常線維芽細胞より速く増殖した。Stat3がケロイド線維芽細胞増殖の増強に関与しているかどうかを調査するために、Stat3 siRNAを発現するレトロウイルスにKF48を感染させ、細胞増殖を検査した。図6Bに示す通り、Stat3 siRNA 4によるStat3の阻害は、非感染対照、ベクター対照、及びStat3を阻害しないStat3 siRNA 3と比較して、KF48の細胞増殖を減弱させた。
XTT増殖アッセイ:
96ウェルプレート中に3000細胞/ウェルに播種され、正常増殖条件で培養された細胞、又はレトロウイルス性Stat3 siRNAに感染した細胞の増殖を、製造業者の指示に従ってXTT増殖キット(Roche社)を使用してアッセイした。XTT試薬の添加の2h後に、450nmの測定値をとり、690nmを対照とした。各試料について、2〜3回の独立した実験を4つ組で行った。データは、平均±SDとして表した。
KF48細胞を様々な用量のククルビタシンI又はDMSO対照で処理し、その後、正常増殖培地中でインキュベートし、4日間超の期間、毎日検査することによっても、細胞増殖を調査した。1μMという低濃度のククルビタシンIによって、DMSO及び未処置対照(0μM)と比較して、KF48の細胞増殖を阻害することができたが、5μM以上のククルビタシンIへの曝露は細胞死を引き起こすようであった(図6C)。
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ケロイド皮膚組織ではStat3の発現及び活性化が増大している。(A)正常皮膚(NS1)及びケロイド瘢痕(KS28)のパラフィン組織切片のH&E染色。D、E及びKは、それぞれ真皮、表皮及びケラチンを示す。 (B)正常皮膚及びケロイド瘢痕組織の凍結切片を、抗ウサギIgG(α−rabbit IgG)又はポリクローナル抗Stat3(C−20)(α−Stat3)で染色し、DAPIで対比染色した。 (B)正常皮膚及びケロイド瘢痕組織の凍結切片を、抗ウサギIgG(α−rabbit IgG)又はポリクローナル抗Stat3(C−20)(α−Stat3)で染色し、DAPIで対比染色した。 (C)凍結切片を、抗マウスIgG(α−mouse IgG)又はモノクローナル抗pStat3(α−pStat3)でプロービングし、DAPIで対比染色した。 (D)抗Stat3(C−20)(α−Stat3)又は抗pStat3(α−pStat3)と、DAPIとの間の対比染色は、Stat3及びpStat3の核共存を示している。写真は、位相差と共に撮影されており、すべてのスケールバーは50μmを表す。 ケロイド組織溶解物及びケロイド線維芽細胞におけるStat3リン酸化及び発現の増強。(A)正常皮膚(NS)及びケロイド試料(KS)からの組織溶解物を、抗pY705 Stat3抗体を用いたウェスタンブロット分析にかけた。ブロットのストリッピングを行い、再プロービングを抗pS727 Stat3で、その後、抗Stat3、抗コラーゲンI、II、III、及び抗アクチンで行った。 (B)示されている抗体を用いた、正常線維芽細胞(NF)及びケロイド線維芽細胞(KF)からの全細胞溶解物のウェスタンブロット分析。 (C)正常線維芽細胞であるNF7、及びケロイド線維芽細胞であるKF48を、10%FBSで刺激する前の2日間、無血清培地中で培養した。1〜5日目に全細胞溶解物を採取し、(A)で記述した通りにウェスタンブロット分析を行った。 (D)Stat3の血清非依存的リン酸化を調査するために、NF4及びKF48線維芽細胞を、5日間に渡って毎日採取する前の2日間、無血清DMEM中で培養した。全細胞溶解物を、示されている抗体を用いたウェスタンブロット分析にかけた。矢印はタンパク質バンドの位置を示す。 Jak1ではなく、Jak2によるStat3リン酸化。正常線維芽細胞であるNF103、及びケロイド線維芽細胞であるKF48からの全細胞溶解物をSDS−PAGEで分離し、ホスホJak1(pJak1)又はホスホJak2(pJak2)抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。ブロットのストリッピングを行い、再プロービングをそれぞれJak1及びJak2抗体で行い、その後、正規化のための抗アクチンで行った。矢はタンパク質バンドの位置を示す。 分化中ではなく、増殖中のケロイドケラチノサイトにおけるTyr705 Stat3リン酸化の増強。(A)正常ケラチン細胞であるNK103、及びケロイドケラチノサイトであるKK48を増殖培地中でほぼ集密状態にまで培養し、細胞を5日間に渡って毎日採取した。矢印はpY705 Stat3タンパク質の位置を示す。KK48試料におけるその下のバンド、及びNK103における強いバンドは非特異的なものである。 (B)6種類の正常ケラチノサイト(NK)及び6種類のケロイドケラチノサイト(KK)を、ケラチノサイトが重層化して最終分化を行う前に増殖培地中で培養した。ウェスタンブロット分析は、図2に記載の通りに行った。 Stat3の阻害はコラーゲン産生を減少させる。(A)Stat3 siRNAの4種の標的をpSuper.retro.puroベクターにクローニングし、ベクター単独も含めて、アンホトロピックな293Tベースのレトロウイルスパッケージング細胞系に形質移入した。形質移入の48h後に採取されたレトロウイルスを、KF48の感染に使用した。アンホトロピックなパッケージング細胞系(左側パネル)及びKF48(右側パネル)の両方から、全細胞溶解物を採取し、Stat3、アクチン及びコラーゲン発現に関してウェスタンブロットで分析した。 (B)KF48は、未処理のままか、或いはDMSO又は様々な用量のククルビタシンI(5μM、10μM、20μM又は30μM)で30分間処理し、その後、採取する前に、10% FBS/DMEM中で48時間さらにインキュベートした。SDS−PAGEで分離された全細胞溶解物を、Stat3のリン酸化及び発現、アクチンの発現、並びにコラーゲンの産生に関して、ウェスタンブロットで分析した。矢/矢印はタンパク質バンドの位置を示す。 Stat3の阻害は細胞増殖を減弱させる。(A)正常線維芽細胞と比較した、ケロイド線維芽細胞の細胞増殖の増強。正常線維芽細胞であるNF2及びNF4、並びにケロイド線維芽細胞であるKF48及びKF107を、96ウェルプレート内、正常成長培地中に、4つ組、3000細胞/ウェルで播種し、XTT細胞増殖キットを製造会社の指示に従って使用して、細胞増殖を毎日、最長6日間まで検査した。 (B)KF48線維芽細胞を96ウェルプレート内に播種し、翌日、18時間、レトロウイルスStat3 siRNAsに感染させた後、10% FBS/DMEMに培地交換した。感染の日から毎日、細胞増殖を検査した。 (C)KF48線維芽細胞を96ウェルプレート内に播種し、未処理のままにするか、或いはDMSO又は様々な用量のククルビタシンIで処理し、4日間に渡って毎日細胞増殖を検査した。 正常線維芽細胞と比較した、ケロイド線維芽細胞の細胞移動の増強。(A)3株の正常線維芽細胞、すなわちNF2、NF4及びNF103、並びに3株のケロイド線維芽細胞、KF43、KF48及びKF107を、60mm培養皿で集密状態まで培養し、10μg/mlマイトマイシンCで2h処理した後、黄色のピペットチップを用いてひっかき傷を導入した。細胞は正常成長培地中でさらに14hインキュベートした。創傷の0h後及び14h後に写真を撮影した。 (B)(A)におけるオーバーラップしていない3箇所の視野の写真を撮り、創傷部位に移動した細胞を定量化して、データを平均±SDで表した。P<=0.05、**P<0.005、***P<0.001、それぞれ、スチューデントのt検定による、3株のNF対KF43、KF48及びKF107。 (C)細胞移動は、三つ組で行ったトランスウェルアッセイも用いて検査した。底部チャンバー内の走化性物質として10% FBS/DMEMを有するインサート上層の無血清DMEM中にKF48細胞を播種した。各組の複製におけるオーバーラップしていない3箇所の視野において、48h後に、インサートの上部から底部に移動していた細胞を計数し、三つ組の平均±SDをグラフ中に表した。P<0.001及び**P<0.005は、それぞれ、スチューデントのt検定による、3株のNF対KF43、KF48及びKF107を示す。 Stat3の阻害による細胞移動の減弱。(A)KF48細胞をStat3 siRNAsを発現するレトロウイルスに感染させ、ひっかき傷アッセイを行った。写真は、創傷の0h後及び15h後に撮った。 (B)データは、(A)におけるオーバーラップしていない3箇所の視野において、創傷部位に移動した細胞の平均±SDを表す。P<0.005は、スチューデントのt検定による、Stat3 siRNA 1、2及び4対ベクターを指し、n.s.は有意でないことを示す。ウェスタンブロットにおける、Stat3 siRNAsによるStat3の阻害を右側パネルに示す。 (C)Stat3 siRNAsを有するレトロウイルスにKF48細胞を感染させ、トランスウェルインサートを用いた同様な細胞移動アッセイを行った。P<0.001は、スチューデントのt検定による、ベクターとの比較であり、n.s.は有意でないことを示す。Stat3 siRNAsによるStat3の阻害は、右側パネルのウェスタンブロットに示されている。 (D)KF48細胞を10μg/mlマイトマイシンCで2h事前処理し、その後、黄色のピペットチップを用いて細胞を傷つける前に、DMSO又は1μMククルビタシンIのいずれかで30分間処理した。10%FBS/DMEM正常成長培地中で細胞をさらにインキュベートし、創傷の0h、22h及び48h後に写真を撮影した。 (E)データは、(D)におけるオーバーラップしていない3箇所の視野において、創傷部位に移動した細胞の平均±SDを表す。P<0.001は、スチューデントのt検定による。 Stat3の阻害による細胞移動の減弱。(A)KF48細胞をStat3 siRNAsを発現するレトロウイルスに感染させ、ひっかき傷アッセイを上記図7Aに記載した通りに行った。写真は、創傷の0h後及び15h後に撮った。 (B)データは、(A)におけるオーバーラップしていない3箇所の視野において、創傷部位に移動した細胞の平均±SDを表す。P<0.005は、スチューデントのt検定による、Stat3 siRNA 1、2及び4対ベクターを指し、n.s.は有意でないことを示す。ウェスタンブロットにおける、Stat3 siRNAsによるStat3の阻害を右側パネルに示す。 (C)Stat3 siRNAsを有するレトロウイルスにKF48細胞を感染させ、トランスウェルインサートを用いた同様な細胞移動アッセイを図7Cで記述した通りに行った。P<0.001は、スチューデントのt検定による、ベクターとの比較であり、n.s.は有意でないことを示す。Stat3 siRNAsによるStat3の阻害は、右側パネルのウェスタンブロットに示されている。 (D)KF48細胞を10μg/mlマイトマイシンCで2h事前処理し、その後、黄色のピペットチップを用いて細胞を傷つける前に、DMSO又は1μMククルビタシンIのいずれかで30分間処理した。10%FBS/DMEM正常成長培地中で細胞をさらにインキュベートし、創傷の0h、22h及び48h後に写真を撮影した。 (E)データは、(D)におけるオーバーラップしていない3箇所の視野において、創傷部位に移動した細胞の平均±SDを表す。P<0.001は、スチューデントのt検定による。

Claims (45)

  1. 線維増殖性疾患を治療又は予防するための薬物の製造における、STATを調節する組成物の使用。
  2. 前記線維増殖性疾患がケロイド瘢痕化を含む、請求項1に記載の使用。
  3. 前記組成物が、STATの活性、リン酸化、発現レベル又は細胞内局在のうちの1つ又は複数を調節する、請求項1又は2に記載の使用。
  4. 前記STATがSTAT3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
  5. 前記組成物がSTAT3のSiRNAを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  6. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号1、配列番号2又は配列番号3を含む、請求項5に記載の使用。
  7. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9を含む、請求項6に記載の使用。
  8. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9、からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
  9. 前記組成物がククルビタシンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  10. 前記組成物がククルビタシンI又はククルビタシンQを含む、請求項9に記載の使用。
  11. 前記組成物がSTAT3デコイオリゴヌクレオチドを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  12. 前記組成物がホスホチロシンペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  13. 前記ホスホチロシンペプチドがXYL又はAYLを含む、請求項12に記載の使用。
  14. 前記組成物が、医薬組成物と、薬学的に許容される担体と、を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
  15. 前記組成物が患者への局所投与に適している、請求項14に記載の使用。
  16. 前記組成物が患者への経皮投与に適している、請求項14に記載の使用。
  17. 前記組成物が患者への非経口投与に適している、請求項14に記載の使用。
  18. 前記組成物が患者へのエアロゾル投与に適している、請求項14に記載の使用。
  19. 前記組成物がシリコーンゲルを含むか、或いは前記薬物が、シリコーンゲルも投与される患者への投与用である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
  20. 前記組成物がコルチコステロイドを含むか、或いは前記薬物が、コルチコステロイドも投与される患者への投与用である、請求項14〜19のいずれか一項に記載の使用。
  21. 線維増殖性疾患を治療するのに有用と予測される組成物を同定する方法であって、線維増殖性細胞を試験混合物で処理するステップと、前記試験混合物の、STATへの影響を評価するステップと、を含む方法。
  22. 前記組成物がSTATを調節する、請求項21に記載の方法。
  23. 前記組成物が、STATの活性、リン酸化、発現レベル又は細胞内局在のうちの1つ又は複数を調節する、請求項21に記載の方法。
  24. 前記試験混合物の影響を評価するステップが、STATによって調節されるポリペプチドの量又は活性を評価することを含む、請求項21に記載の方法。
  25. STATがSTAT3を含む、請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記試験混合物の影響を評価するステップが、細胞増殖の量及び/又は細胞移動の量を評価することを含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記線維増殖性細胞がヒトケロイド組織に由来する、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. STATを調節する組成物と、シリコーンゲルと、を含むキット。
  29. STATを調節する組成物と、コルチコステロイドと、を含むキット。
  30. 前記組成物が、前記STATの活性、リン酸化、発現レベル又は細胞内局在のうちの1つ又は複数を調節する、請求項28又は29に記載のキット。
  31. 前記STATがSTAT3である、請求項28〜30のいずれか一項に記載のキット。
  32. 前記組成物がSTAT3のSiRNAを含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のキット。
  33. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号1、配列番号2又は配列番号3を含む、請求項32に記載のキット。
  34. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9を含む、請求項33に記載のキット。
  35. 前記STAT3のSiRNAが、配列番号4及び/又は配列番号5、或いは配列番号6及び/又は配列番号7、或いは配列番号8及び/又は配列番号9、からなる群より選択される、請求項34に記載のキット。
  36. 前記組成物がククルビタシンを含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のキット。
  37. 前記組成物がククルビタシンI又はククルビタシンQを含む、請求項36に記載のキット。
  38. 前記組成物がSTAT3デコイオリゴヌクレオチドを含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のキット。
  39. 前記組成物がホスホチロシンペプチドを含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のキット。
  40. 前記ホスホチロシンペプチドがXYL又はAYLを含む、請求項39に記載のキット。
  41. 患者の、線維増殖性疾患を発症する危険性の評価、又は線維増殖性疾患の重度の評価を補助する方法であって、試料中でのSTAT発現又はSTAT活性のレベルを測定するステップを含む方法。
  42. 前記レベルが、例えば手術又は傷害の後に患者が線維増殖性疾患を発症する危険性が低いこと、中程度であること、又は高いことを示しているかどうか、を判定するステップを含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記試料が、手術後、短時間のうちに前記患者から採取されたものである、請求項42に記載の方法。
  44. 前記試料が瘢痕に由来する、請求項41又は42に記載の方法。
  45. STATがSTAT3である、請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法。
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