JP2009302319A - 分光機能を有する光電変換素子およびこれを用いたイメージセンサー - Google Patents
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Abstract
【課題】分光される光(入射光)が微弱な場合であっても、これを分光することが可能な高感度の光電交換素子を提供する。
【解決手段】基板と、該基板に形成される層であって、入射光が吸収されることにより発生するキャリアを捕獲するための第一層と、該第一層に接するように配置され、該第一層で捕獲されたキャリアを外部に取り出すための第二層と、該第一層上に配置される誘電体層と、該誘電体層上に配置され、ゲート電圧が印加されるゲート電極層とを備え、該ゲート電極層の少なくとも一部は、入射光に対して透光性を有する材料からなる光電変換素子およびこれを用いたイメージセンサーである。
【選択図】図1
【解決手段】基板と、該基板に形成される層であって、入射光が吸収されることにより発生するキャリアを捕獲するための第一層と、該第一層に接するように配置され、該第一層で捕獲されたキャリアを外部に取り出すための第二層と、該第一層上に配置される誘電体層と、該誘電体層上に配置され、ゲート電圧が印加されるゲート電極層とを備え、該ゲート電極層の少なくとも一部は、入射光に対して透光性を有する材料からなる光電変換素子およびこれを用いたイメージセンサーである。
【選択図】図1
Description
本発明は、分光機能を有する光電変換素子に関し、より詳しくは、分光フィルター等を用いることなく入射光の分光を行なうことができる光電変換素子に関する。また、本発明は、当該光電変換素子を用いたイメージセンサーに関する。
分光分析は、化学物質、バイオ関連物質の同定、反応解析において重要な手法である。たとえば、赤外線分光分析や紫外・可視分光分析により、シグマ結合・パイ結合の分子振動による吸収程度から分子官能基の特定や立体構造、さらに分子転位などを明らかにすることが可能となっている。また、バイオ分野において広く使用されている蛍光分析や発光分析は、細胞・DNA・タンパク・抗体などのイメージングや微量物質の量、反応活性、シーケンスの特定などの用途で必要不可欠なものとなっている。
従来、上記のような分光分析装置内で光を電気に変換する素子としては、SiのPIN型接合構造を有するPINフォトダイオード(PIN−PD)やデジタルカメラ等でも広く使用されている電荷結合型素子(Charge Coupled Device:CCD)が主に用いられている。
PIN−PDおよびCCDは、ともにシリコンをベースとしたデバイスであるため、その感度は波長分散をあまり持たず、紫外から赤外まであらゆる波長で感度をもってしまう。そのため、分光分析装置に適用する場合など、画像を得る等の目的で分光が必要な場合には、一般に、分光フィルターを別途設けるか、もしくは光学プリズムなどを用いてRGBの光をそれぞれ別々の光電変換素子に入射するような装置構成が必要であった。また、入射光がどのような波長の光を含み、それらの波長の光がどの程度の強度を有しているかを示すスペクトルデータを取得しようとする場合には、グレーティングによる回折現象を利用した分光が必要であった。
しかしながら、分光フィルターを用いた場合、当該分光フィルターでの光強度減衰が起きることにより、微弱な光を検出できなくなるという問題がある。また、光学プリズムやグレーティングは装置自体が大きくなってしまう上、位置ズレに対して非常に弱いので壊れやすく、素人では修理できないという欠点を抱えている。
このように、従来の分光分析装置においては、微弱な光に対する感度が低い、装置が大型で、初期投資およびランニングコスト共に高価であるという問題を有していた。具体例を挙げれば、たとえば、赤外線顕微鏡やラマン顕微鏡は、バイオ・製薬・化粧品分野で最近注目されているが、上記のような従来の光学系を用いており、装置が大型であるため、分析室での使用以外難しいのが現状である。また、バイオ・医療分野における蛍光・発光イメージングにおいても同様に、分光器と検出器が大型で熱変動も大きいため、装置の維持管理に多大な労力を要する。
上記課題を解決するため、特許文献1では、分光フィルターや光学プリズムを使用しない光電変換素子が提案されている。
特開2005−010114号公報
上記特許文献1に記載の光電変換素子によれば、分光フィルターや光学プリズム等の分光のための装置一式が不要となるため分光装置の小型化が可能である。しかし、バイオ蛍光のような弱い光に対する感度が不十分であり、改善の余地があった。すなわち、特許文献1の光電変換素子は、ゲートに電圧をかけることにより半導体中にポテンシャルの勾配を生じさせ、その時に流れる光起電流を測定することで分光しているため、普通のトランジスタなどと違い、ゲート絶縁膜自体が光の取り入れ口となる必要があり、ゲート絶縁膜の面積を大きくする必要がある。また、ゲート絶縁膜の直下にある光を吸収する半導体全体を均一にゲート電圧でポテンシャル変化させるために、ゲート絶縁膜と略同じ大きさでゲート電圧が印加される電極を形成せねばならない(特許文献1の図1参照)。しかし、特許文献1の光電変換素子においては、ゲート電圧が印加される電極は多結晶シリコン(poly−Si)から形成されている。したがって、この構成では、分光したい光は、必ずpoly−Siからなる電極を通らねばならないが、poly−Siは、紫外〜赤外(およそ1μm波長)で幅広く吸収をもつため、分光したい光が半導体に届くまでに光強度が減衰してしまう。また、poly−Siからなる電極を用いた場合、Siの屈折率が可視〜赤外領域の光に対して3.5〜5もあり、空気との屈折率差が大きいことから、当該電極表面での光反射が比較的大きく、これによっても半導体に届く光の強度が減少する。結果、特に微弱光について感度が弱くなる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、分光される光(入射光)が微弱な場合であっても、これを分光することが可能な高感度の光電交換素子を提供することである。
本発明は、基板と、該基板に形成される層であって、入射光が吸収されることにより発生するキャリアを捕獲するための第一層と、該第一層に接するように配置され、該第一層で捕獲されたキャリアを外部に取り出すための第二層と、該第一層上に配置される誘電体層と、該誘電体層上に配置され、ゲート電圧が印加されるゲート電極層とを備え、該ゲート電極層の少なくとも一部は、入射光に対して透光性を有する材料からなる光電変換素子を提供する。
本発明の光電変換素子において、第一層は、400nm以上の波長を有する入射光を吸収する材料からなり、ゲート電極層の少なくとも一部は、400nm以上の波長を有する入射光に対して透光性を有する材料からなることが好ましい。
また、本発明の光電変換素子において、ゲート電極層は、バンドギャップが3eV以上の導電性酸化物からなることが好ましい。当該導電性酸化物は、2族元素、12族元素または13族元素のいずれかを含む酸化物であることが好ましい。
本発明の光電変換素子において、ゲート電極層における誘電体層側とは反対側の表面は、凹凸面を含むことが好ましい。当該凹凸のピッチは、分光の対象となる光が有する最小波長以下であることが好ましい。また、第一層と誘電体層との界面および/または誘電体層とゲート電極層との界面が、凹凸面を含んでいてもよい。
さらに、本発明は、上記いずれかに記載の光電変換素子の複数を2次元に配置したアレイを用いたイメージセンサーを提供する。
本発明によれば、比較的簡易な構造を有し、したがって作製が容易であり、分光フィルター等の別途の分光手段を用いることなく、分光を行なうことができる光電変換素子を提供することが可能となる。本発明の光電変換素子は、ゲート電極層に、分光の対象となる紫外光や可視光に対して透過率が高く、反射率が低い材料を用いているため、分光される光を含む入射光を効率的に吸収することができる。したがって、入射光が微弱な場合であっても、高感度に分光を行なうことができる。
かかる本発明の光電変換素子は、分光フィルターなしで分光を行なうことができるフィルターレスイメージセンサーや蛍光観察のような微弱な光であっても検出する波長を選択したい用途に好適に適用することが可能である。
本発明の光電変換素子およびイメージセンサーによれば、分光とイメージングの両方が可能な小型の(たとえばハンディータイプの)分光イメージング装置を実現し得る。このような小型分光イメージング装置の実現により、分析施設でしか行なうことができなかった化学物質の同定やバイオ分析を、ハーディータイプの小型装置で簡便に行なうことが可能であり、専門知識を有さない一般のユーザーへの大幅な普及が期待されるとともに、屋外での測定や従来使用されてきた分析施設と同じスペースを用いた多量同時測定といった実験の効率化も図れる。たとえば、これまでDNA分析やイムノアッセイは屋外で行なうことが困難であったが、本発明の光電変換素子およびイメージングセンサーの適用により、医療の発展していない地域、途上国における迅速なウイルス検査・感染症診断が可能となる。また、食品衛生や品種改良での分析もその場で可能となるので、適切な管理や病気への対応も効果的に行なうことができる。
以下、実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す概略断面図である。この光電変換素子は、分光機能を有しており、当該素子に入射された光を分光し、当該入射光の波長測定(入射光の波長の特定、各波長における光強度等)を行なう分光センサーとして機能することができる。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す概略断面図である。この光電変換素子は、分光機能を有しており、当該素子に入射された光を分光し、当該入射光の波長測定(入射光の波長の特定、各波長における光強度等)を行なう分光センサーとして機能することができる。
図1に示される光電変換素子は、n型シリコンからなる基板101、基板101中に形成されたp型ウェル層である第一層102、第一層102内であって、第一層102と接するように形成されたn+拡散層である第二層103、第一層102上および一部の基板101上に配置された誘電体層(ゲート絶縁膜)104、誘電体層104上に配置されたゲート電極層105、ゲート電極層105を被覆するパッシベーション膜106を備える。なお、本発明においてパッシベーション膜106は必須ではないが、これを設けることにより、素子の信頼性を向上させることができる。また、図1に示される光電変換素子には、第二層103上であってこれに接するように配置された第一の電極107と、第一層102上であってこれに接するように配置され、かつ接地される第二の電極108とが設けられている。図1に示される例において、第二層103は、第一層102内であって、その一端側(図1における右側)近傍に、第一層102の誘電体層104側表面と第二層の誘電体層104側表面が1つの連続した表面を形成するように設けられているが、かかる構成に限定されるものではない。また、第二の電極108は、第一の電極107が配置される第一層102の一端側とは反対側の端部近傍に、第一層102に接続されるように配置されている。
第一層102は、ゲート電極層105、誘電体層104等を透過してきた入射光を吸収し、これにより発生するキャリア(本実施形態では電子)を捕獲するための層である。第二層103は、第一層で捕獲したキャリアを外部に取り出すための層であり、当該キャリアは、第二層104に接続された第一の電極107を通して外部に取り出される。第一の電極107には、当該光電変換素子を用いて入射光の分光を行なう際、基準電圧Vresが印加される。第二の電極108は、第一層102の電位を確立するための接地電極である。また、ゲート電極層105は、ゲート電圧(図1におけるG)が印加される電極である。
かかる構造を有する光電変換素子によれば、第一層102に入射した光の強度が、第一層102中で減衰すること、および、その減衰の程度が光の波長に依存することを利用し、第一層102の表面からのキャリアの捕獲される深さを変化させ、当該キャリアの捕獲される深さまでに発生する電流を測定することにより、第一層102に入射された光のうち、ある特定波長の光の強度を測定することができる。複数の波長についての光強度を測定するためには、測定したい波長の数だけキャリアの捕獲される深さを変化させて測定すればよい。キャリアの捕獲される深さは、ゲート電極層105に印加するゲート電圧の調整により変化させることができる(このような、半導体中に侵入した光の強度が、その波長に応じて次第に減衰する現象を利用した分光原理の詳細については、上記特許文献1を参照。)。
ここで、本実施形態の光電変換素子において、ゲート電極層105は、入射光(当該光電変換素子を用いた分光測定に供される光)に対して透光性を有する材料からなり、たとえば70%以上の透過率を有する材料からなる。かかる材料を用いてゲート電極層を形成することにより、ゲート電極層による光吸収が抑制されるため、ゲート電極層を通過して第一層に入射される光のロスを小さくすることができる。したがって、入射光の強度が低い場合であっても効率よく分光を行なうことが可能となる。また、このような高い透過率を示す材料は、概して屈折率が低いため、ゲート電極層表面による反射を低く抑えることもできる。したがって、このような点からも、高い透過率を示す材料を用いると、光のロスを抑えて、効率的に第一層へ光を入射させることができる。
本発明の分光機能を有する光電変換素子は、たとえば紫外〜赤外領域の光を分光するのに用いることができ、分光に供される光の好ましい波長領域は、たとえば300〜1000nm程度である。基板としてSiを用いると、1μmより短い波長の光に対して感度があり、かつ分光計算のための回路を同時に作ることができる。400nm未満の紫外光ではSiへの侵入長が短くなることから、基板にSiを用いる場合には、本発明の光電変換素子は、400〜1000nm波長の光の分光に好適に用いられる。400nm以下の波長の光を分光する場合には、(Al)GaNや(Mg)ZnOを基板101および第一層102に用いるとよい。
以上の点に鑑み、ゲート電極層を構成する材料は、400nm以上の波長を有する入射光に対して70%以上の透過率を有することが好ましく、400nm以上1000nm以下の波長を有する入射光に対して透光性を有する(たとえば70%以上の透過率を有する)ことがより好ましい。また、たとえば、本発明の光電変換素子を、400nm以上の波長を有する光の分光に用いる場合には、第一層は、400nm以上の波長を有する光を吸収する材料から構成する。このような材料としては、たとえばシリコン、InGaAs、GaAs、AlGaAs、InGaAlP、InGaNなどが挙げられる。
このような高い透過率を示し、ゲート電極層に好適に適用できる材料としては、バンドギャップが3eV以上の導電性酸化物を挙げることができ、より具体的には、2族元素、12族元素または13族元素のいずれかを含む導電性酸化物を挙げることができる。かかる導電性酸化物は、屈折率も一般に3程度以下であるため、かかる材料を用いることによりゲート電極層表面での光の反射も抑制することができる。2族元素、12族元素または13族元素のいずれかを含む導電性酸化物の好適な例を挙げれば、特に制限されないが、たとえば、ZnO、MgZnO、ITO(インジウム−スズ酸化物)およびIGZO(インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物)などを挙げることができる。なかでもMgZnOを用いると、分光に供される光が紫外光を含む場合でも、高い透過率で透過させることができるとともに、耐水性に優れるため、光電変換素子の耐久性を向上させることができる。なお、パッシベーション膜106として、ゲート電極層105と空気の間の屈折率を有する材料(たとえばSiONなど)を選択したり、たとえばZnO膜から始まりゲート電極層表面側(空気側)に進むに従い屈折率が小さくなるような積層膜をゲート電極層105として用いることにより、ゲート電極層表面での反射を低減することが可能である。
図3は、MgxZn1-xO(0≦x≦1)におけるMgの組成比xとバンドギャップ相当波長との関係を示すグラフである。ZnOやMgZnOは、直接遷移半導体であるため、図示されるバンドギャップ相当波長で急激な吸収を起こすようになる。そして、図示されるように、当該バンドギャップ相当波長は、Mg組成比xが大きくなるほど小さくなる傾向にある。Mg組成比が0である場合(ZnOの場合)には、380nm以下の波長を有する光、すなわち紫外光に対して高い吸収を示すが、Mg組成比xを増加させることにより、バンドギャップ相当波長が短波長側へシフトすることがわかる。したがって、分光に供される光が紫外光を含む場合には、ゲート電極層には、ZnOよりMgZnOを用いることが好ましい。ITOも吸収端がZnOより短波長であるため、分光に供される光が紫外光を含む場合には、ゲート電極層として好ましく用いることができる。
上記ZnO、MgZnO、ITO(インジウム−スズ酸化物)およびIGZO(インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物)などからなるゲート電極層は、たとえば分子線エピタキシー(MBE)、蒸着、スパッタなどにより形成することができる。なかでも、ZnOやMgZnOからなるゲート電極層を形成する場合には、MBEのような蒸着法などを用いると、低ダメージで低抵抗率化が図れるため好ましい。
MBEによりMgZnOまたはZnOからなるゲート電極層を形成する際には、Znおよび/またはMgを加熱して昇華させ、Znおよび/またはMgを分子線として供給する。酸素源としては、たとえば6NのO2ガスを原料ガスとしてプラズマを生じさせ、反応活性を上げた酸素ラジカルの状態としたものを用いることが好ましい。O2ガスをそのまま酸素源として用いてもZnO、MgZnO薄膜は形成されない。酸素プラズマは、たとえば、O2ガスを、電解研磨内面を持つSUS管を通じて円筒の一部に小さいオリフィスを開けた放電管を備えたRFラジカルセルに、0.1〜5sccm程度で供給し、100〜300W程度のRF高周波を印加することにより生じさせることができる。
誘電体層104(ゲート絶縁膜)上にZnOまたはMgZnO薄膜を形成する際の基板温度は、たとえばMBEの場合、200〜900℃、好ましくは350〜650℃である。基板の加熱は、耐酸化性に優れる装置を用いた方法であれば特に限定されない。抵抗加熱による場合、耐酸化性に優れるSiCコートしたカーボンヒータを用いることが好ましい。抵抗加熱のほか、ランプ加熱、レーザ加熱などを用いることもできる。
ゲート電極層としてMgZnO薄膜を形成する場合、Mgは、Znセルと同じ構造のセルから供給することができる。この際、セル温度の調整によりMg供給量を変えることによって、MgZnOにおけるMg組成比を制御することができる。具体的には、Mgセルの温度250〜400℃、Mg供給量1×10-9〜1×10-7Torrの範囲内で調整することにより、Mg組成比を0〜50%(MgxZn1-xO(0≦x≦1)において0≦x≦0.5)の範囲内で制御することが可能である。なお、Mg組成比は、元々のZn/O供給比にも依存するため、成長条件によって同じMg組成比を得るためのMg供給量が異なる場合がある。
MBEによるZnOまたはMgZnO薄膜の成長の際には、上記原料とともに、13族元素(B、Al、Ga、In、Tl)を供給する。13族元素濃度が19乗のオーダーになると縮退し始め、半導体から金属になってくる。20乗のオーダーを超えると、抵抗率がITOなみの1×10-4Ωcmのオーダーになる。ここまで抵抗率が下がってくると、100nm程度の厚さで、100mmオーダーの電流広がりを得ることができるようになるので、ゲート電極層として十分に使用することができる。なお、1ピクセルの大きさが10μm×10μmのオーダーであれば、抵抗率はそこまで低くなくてもよく、1×10-3Ωcmのオーダーでよい。1ピクセルの大きさが100μm×100μmのオーダーである場合には、ゲート電極層の抵抗率は、1×10-4Ωcmのオーダーであることが好ましい。
ゲート電極層の形成にスパッタを用いる場合は、酸素が優先的にスパッタリングされてしまうので、非常に遅い速度で成長するか、もしくはメタルおよび酸素を用いたリアクティブスパッタが望ましい。リアクティブスパッタとしては、ECRスパッタが好適である。
なお、ゲート電極層は、そのすべてが必ずしも上記したような入射光に対して高い透過率を示す材料で構成されていなくてもよく、ゲート電極層の一部が当該透過率の高い材料から構成されていてもよい。少なくとも一部に上記透過率の高い材料を用いることにより、その部位において、上記したような効果を得ることができる。ただし、より高感度の光電変換素子を得るためには、ゲート電極層全体が、上記したような高い透過率を示す材料からなることが好ましい。
ゲート電極層105の厚みは特に制限されないが、ゲートリーク電流をなくし、かつ印加電圧を大きくしすぎないという観点から、5〜500nm程度とすることが好ましく、より好ましくは10〜200nm程度である。
基板101、第一層102(p型ウェル層)および第二層103(n+拡散層)は、本実施形態のように、シリコンからなることが好ましい。これは、分光スペクトルを得るための演算回路をも同時形成できるためである。シリコンからなる第一層および第二層の形成は従来公知の方法を用いることができる。
ただし、分光したい波長によっては基板101上に、AlGaN(GaNを含む)あるいはMgZnO(ZnOを含む)を用いて、第一層102(p型ウェル層)および第二層103(n+拡散層)を形成してもよい。この場合、基板101には、格子不整合が小さく、熱膨張係数の差が小さいものを選択することが好ましく、GaN基板、ZnO基板をその例として挙げることができる。ただし、コスト等に鑑み、基板としてサファイア基板を用い、その上にAlGaNを成長させて第一層および第二層を形成するようにしてもよい。AlGaN層やMgZnO層にn+拡散層(第二層)を形成する方法としては、イオン注入(インプラ)などを挙げることができる。この場合、注入されるイオンは、結晶へのダメージが少ないことからAlGaNを用いる場合には酸素イオン、MgZnOを用いる場合ではホウ素イオンであることが好ましい。
また、n−GaN層上にp−GaNを成長させた後、p−GaN層を誘電体マスクで覆った上で、p−GaN層の一部を除去し、該誘電体マスクをマスクにして、p−GaN層を除去した部分にn+−GaN層を再成長させることにより第二層(n+拡散層)を形成するようにしてもよい。この場合、分光される光の波長等に応じて、GaNの代わりに、たとえばInGaN、AlGaNなどが用いられてもよい。
第一層にAlGaNを用いた場合には370nm程度以下(吸収する光の波長は、Al、Ga組成比に依存する。)、MgZnOを用いた場合には380nm程度以下の波長を有する光を吸収する。したがって、第一層にAlGaNやMgZnOを用いた場合には、紫外領域の光を分光できる光電変換素子を得ることができる。
誘電体層104(ゲート絶縁膜)を構成する材料としては、従来公知のものを用いることができ、たとえばSiO2、SiN、Al2O3、Ta2O5、HfO2、HfAlO2、HfSiO2およびこれらの複合酸化物などを用いることができる。誘電体層104は、CVD法により形成されてもよいが、誘電体層/Si(あるいはAlGaN)間の意図しない酸素組成ゆらぎを抑制できることから、酸素ラジカルによる直接酸化による方法が、第一層がSi、AlGaNである場合には好適である。
パッシベーション膜106は、ゲート電極層105表面を保護するためのものであり、たとえば酸化誘電体膜、窒化誘電体膜などから構成することができる。酸化誘電体膜、好ましくは窒化誘電体膜から構成されるパッシベーション膜をゲート電極層表面に形成することにより、ゲート電極層への水付着等を防止することができ、光電変換素子の耐久性を向上させることができる。また、パッシベーション膜106は、疎水性部位を有する分子を用いてゲート電極層表面を処理することにより形成される疎水性分子膜からなっていてもよい。当該分子膜を形成する疎水性部位を有する分子としては、たとえばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)等のゲート電極層表面に存在するOH基とシランカップリングし得る化合物を挙げることができる。かかる化合物のさらなる具体例としては、CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3、CH3(CH2)17Si(OCH3)3などのCH3基もしくはCF3基を末端に有する有機シラン化合物などを挙げることができる。ゲート電極層表面の該化合物による表面処理は、該化合物を含有する溶液にゲート電極層を浸漬させる方法、該化合物の蒸気を用いて表面処理する方法などにより行なうことができる。このような分子膜をゲート電極層表面に形成することにより、ゲート電極層の導電性を安定化させることができるともに、光電変換素子の耐久性を向上させることができる。なお、パッシベーション膜106は、省略することもできる。
<第2の実施形態>
図2は、本発明の光電変換素子の別の一例を示す概略断面図である。この光電変換素子の基本構成は、上記第1の実施形態と同様である。すなわち、図2に示される光電変換素子は、n型シリコンからなる基板201、基板201中に形成されたp型ウェル層である第一層202、第一層202内であって、第一層202と接するように形成されたn+拡散層である第二層203、第一層202上および一部の基板201上に配置された誘電体層(ゲート絶縁膜)204、誘電体層204上に配置されたゲート電極層205、ゲート電極層205を被覆するパッシベーション膜206を備える。また、第二層203上であってこれに接するように配置された第一の電極207と、第一層202上であってこれに接するように配置され、かつ接地される第二の電極208とが設けられている。
図2は、本発明の光電変換素子の別の一例を示す概略断面図である。この光電変換素子の基本構成は、上記第1の実施形態と同様である。すなわち、図2に示される光電変換素子は、n型シリコンからなる基板201、基板201中に形成されたp型ウェル層である第一層202、第一層202内であって、第一層202と接するように形成されたn+拡散層である第二層203、第一層202上および一部の基板201上に配置された誘電体層(ゲート絶縁膜)204、誘電体層204上に配置されたゲート電極層205、ゲート電極層205を被覆するパッシベーション膜206を備える。また、第二層203上であってこれに接するように配置された第一の電極207と、第一層202上であってこれに接するように配置され、かつ接地される第二の電極208とが設けられている。
ここで、本実施形態の光電変換素子においては、ゲート電極層205における誘電体層204側とは反対側の表面は凹凸面を含む。このような表面凹凸を設けることにより、ゲート電極層表面における光反射を抑制することができ、たとえば入射光の透過率を90%以上まで向上させることも可能である。反射ロスの抑制効果を得るための当該凹凸のピッチは、通常1μm以下であり、具体的には、分光の対象となる光が有する最小波長以下であることが好ましい。たとえば、分光される光の波長領域が400〜800nmである場合には、凹凸のピッチは、400nm以下であることが好ましい。
ゲート電極層表面に凹凸形状を付与することにより、分光センサーとしての感度をより向上させることができる。また、上記した有機分子を当該凹凸に施すことにより、撥水性が向上し、素子の信頼性にとって好適である。
また、図4に示されるように、上記ゲート電極層205表面に凹凸を形成するとともに、あるいは当該表面凹凸の代わりに、第一層202と誘電体層204との界面、および/または誘電体層204とゲート電極層205との界面が凹凸面を含んでもよい。材料が変化し、屈折率差が生じるこのような界面に凹凸を設けることにより、屈折率差に伴う光反射を抑制することができる。ここで、図4(a)の光電変換素子においては、第一層202と誘電体層204との界面に凹凸が形成されている。図4(b)の光電変換素子においては、誘電体層204とゲート電極層205との界面に凹凸が形成されている。図4(c)の光電変換素子においては、第一層202と誘電体層204との界面とともに、誘電体層204とゲート電極層205との界面にも凹凸が形成されている。また、図4(d)の光電変換素子においては、誘電体層204とゲート電極層205との界面に凹凸が形成されているとともに、ゲート電極層205表面にも凹凸が形成されている。なお、反射は、屈折率差があることにより生じるため、これらの例に限らず、素子構造中、最も屈折率差が大きいところに凹凸面を設けると好適である。また、凹凸の断面形状は、矩形であってもよいが、凸部の幅が厚み方向に次第に変化するような三角形状とすることが好ましい。これは、光が厚み方向に進むとき、屈折率差をなだらかに感じるようになるため、反射する機会を失いやすく、反射がより生じにくくなるためである。
本発明の光電変換素子は、分光フィルター等の別途の分光手段を用いることなく、高感度に分光を行なうことができることから、これらの複数を2次元に配置しアレイ化した、分光フィルターなしで分光を行なうことができるフィルターレスイメージセンサーとすることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
101,201 基板、102,202 第一層、103,203 第二層、104,204 誘電体層、105,205 ゲート電極層、106,206 パッシベーション膜、107,207 第一の電極、108,208 第二の電極。
Claims (8)
- 基板と、
前記基板に形成される層であって、入射光が吸収されることにより発生するキャリアを捕獲するための第一層と、
前記第一層に接するように配置され、前記第一層で捕獲されたキャリアを外部に取り出すための第二層と、
前記第一層上に配置される誘電体層と、
前記誘電体層上に配置され、ゲート電圧が印加されるゲート電極層と、
を備え、
前記ゲート電極層の少なくとも一部は、入射光に対して透光性を有する材料からなる光電変換素子。 - 前記第一層は、400nm以上の波長を有する入射光を吸収する材料からなり、
前記ゲート電極層の少なくとも一部は、400nm以上の波長を有する入射光に対して透光性を有する材料からなる請求項1に記載の光電変換素子。 - 前記ゲート電極層は、バンドギャップが3eV以上の導電性酸化物からなる請求項1または2に記載の光電変換素子。
- 前記導電性酸化物は、2族元素、12族元素または13族元素のいずれかを含む酸化物である請求項3に記載の光電変換素子。
- 前記第一層は、シリコンからなる請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子。
- 前記ゲート電極層における前記誘電体層側とは反対側の表面は、凹凸面を含む請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
- 前記第一層と前記誘電体層との界面および/または前記誘電体層と前記ゲート電極層との界面は、凹凸面を含む請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子の複数を2次元に配置したアレイを用いたイメージセンサー。
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