JP2009299725A - ボールジョイントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボールジョイントを容易に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】ボールジョイントを製造する場合、まず、第1分割樹脂シート31をボール部となる球体41の外周側に組み付けることにより、シート付球体42を得る。次いで、シート付球体42を中子としたダイカスト鋳造により、シート付球体42の第1分割樹脂シート31を覆うハウジング5を成形する。その鋳造後に、第2分割樹脂シート32をシート付球体42の球体41の外周側に組み付ける。
【選択図】図4
【解決手段】ボールジョイントを製造する場合、まず、第1分割樹脂シート31をボール部となる球体41の外周側に組み付けることにより、シート付球体42を得る。次いで、シート付球体42を中子としたダイカスト鋳造により、シート付球体42の第1分割樹脂シート31を覆うハウジング5を成形する。その鋳造後に、第2分割樹脂シート32をシート付球体42の球体41の外周側に組み付ける。
【選択図】図4
Description
本発明は、ボールジョイントを容易に製造できるボールジョイントの製造方法に関するものである。
例えば自動車の操舵装置或いは懸架装置等に用いられるボールジョイントは、ボール部を有するボール側部材と、ボール受け部を有するボール受け側部材と、ボール部とボール受け部との間に配設されボール部を回動可能に保持するシート部材とを備えている。そして、このようなボールジョイントの製造方法として、例えば下記の特許文献1に記載された方法が知られている。
この従来の製造方法は、ボール部となる球体を中子として型内にインサートした状態で射出成形を行って球体を覆うシート部材である樹脂ライナを成形し、球体および樹脂ライナを中子として型内にインサートした鋳造により樹脂ライナを覆うボール受け側部材を成形し、その鋳造の終了後に樹脂ライナを加熱することにより樹脂ライナの球体に対する締め付け力を軽減する方法である。
特許第3862669号公報
しかしながら、上記従来のボールジョイントの製造方法では、例えば鋳造後における樹脂ライナの加熱が不十分だと樹脂ライナの球体に対する締め付け力が軽減されず、また逆に樹脂ライナを加熱し過ぎると球体と樹脂ライナとの間に余分な隙間が生じる等、鋳造後における樹脂ライナ(シート部材)の加熱調整が難しく、ボールジョイントの製造に手間取るおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ボールジョイントを容易に製造できるボールジョイントの製造方法を提供することを目的とする。
請求項1記載のボールジョイントの製造方法は、ボール部を有するボール側部材と、ボール受け部を有するボール受け側部材と、少なくとも第1分割樹脂シートおよび第2分割樹脂シートにて構成され、前記ボール部と前記ボール受け部との間に配設され、前記ボール部を回動可能に保持するシート部材とを備えるボールジョイントの製造方法であって、前記第1分割樹脂シートを前記ボール部となる球体の外周側に組み付けることにより、シート付球体を得る工程と、前記シート付球体を中子とした鋳造により、前記シート付球体の第1分割樹脂シートを覆う前記ボール受け側部材を成形する工程と、前記鋳造後に、前記第2分割樹脂シートを前記シート付球体の球体の外周側に組み付ける工程とを備えるものである。
請求項2記載のボールジョイントの製造方法は、請求項1記載のボールジョイントの製造方法において、第1分割樹脂シートは、開口径寸法が球体の外径寸法より小さい端面開口を軸方向両端部に有する略円筒状に形成され、前記第1分割樹脂シートを前記球体のうちこの球体の赤道を含む部分の外周側に組み付けるものである。
請求項1に係る発明によれば、第1分割樹脂シートをボール部となる球体の外周側に組み付けることによりシート付球体を得る工程と、シート付球体を中子とした鋳造によりシート付球体の第1分割樹脂シートを覆うボール受け側部材を成形する工程と、鋳造後に第2分割樹脂シートをシート付球体の球体の外周側に組み付ける工程とを経て、ボールジョイントを容易に製造できる。
請求項2に係る発明によれば、開口径寸法が球体の外径寸法より小さい端面開口を軸方向両端部に有する略円筒状に形成された第1分割樹脂シートを球体のうちこの球体の赤道を含む部分の外周側に組み付けるため、組み付け後に第1分割樹脂シートが球体から分離することを防止でき、シート付球体の取り扱いが容易となり、ボールジョイントをより一層容易に製造できる。
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1において、1はボールジョイントで、このボールジョイント1は、例えば自動車の懸架装置或いは操舵装置等に用いられる球面軸受である。
ボールジョイント1は、略球状のボール部2を有する鋼鉄製等のボール側部材であるボールスタッド3と、両端面開口状の略円筒状のボール受け部4を有する金属製等のボール受け側部材であるハウジング5と、ボール部2の外周面とボール受け部4の内周面との間に配設されボール部2の外周面を回動可能に保持する両端面開口状の略円筒状のシート部材6とを備えている。すなわち、ボールスタッド3のボール部2は、ベアリングシート等のシート部材6とともにハウジング5のボール受け部4内に収容され、そのシート部材6を介してボール受け部4の内周面にて回動可能に保持されている。
ボールスタッド3は、球頭部であるボール部2と、このボール部2が先端に一体に設けられた丸軸状のスタッド部11と、このスタッド部11の軸方向中間の外周側に一体に設けられた鍔部13とを有している。スタッド部11の基端側の外周面にはねじ溝12が形成されており、このねじ溝12にナットが螺合されることにより被固定体が鍔部13とナットとの間で挟持固定される。
ハウジング5は、ボール部2をシート部材6を介して保持するボール受け部4と、このボール受け部4をリンク等に連結するための連結部16とを有している。ボール部2は、シート部材6の内周面にて構成された摺接面6aに対してのみ回動可能に接触しており、ボール受け部4には非接触である。そして、ボール部2の赤道Aを含む略2/3程度の球面(外周面)がシート部材6の保持面である摺接面6aにて覆われて摺動可能に保持されている。なお、ボール部2の赤道Aは、ボールスタッド3の軸方向に対して正面視で直交している。
ボール受け部4は、軸方向一端部(図1中、上端部)に第1開口17を有し、軸方向他端部(図1中、下端部)に第2開口18を有している。そして、第1開口17にはボールスタッド3が挿通され、第2開口18は略円板状のプラグ等の蓋部材21にて閉塞されている。
蓋部材21は、外周端部に係止部22を有し、この係止部22がかしめ部23により係止されることにより蓋部材21がハウジング5に対してかしめ固定されている。そして、蓋部材21とボール部2とシート部材6とにて囲まれた空間が、グリースを収容する潤滑剤収容部であるグリース溜まり空間24となっている。
また、ハウジング5のボール受け部4とボールスタッド3の鍔部13との間には、両端面開口状の略円筒状のカバー部材であるダストカバー26が配設されている。ダストカバー26は、ダストシール或いはブーツ等とも呼ばれるもので、例えば軟質ゴム或いは軟質合成樹脂等にて形成されている。ダストカバー26の軸方向一端部が鍔部13の外周側に嵌着され、ダストカバー26の軸方向他端部がボール受け部4の外周側に嵌着されている。そして、ダストカバー26とボールスタッド3とボール受け部4とシート部材6とにて囲まれた空間が、グリースを収容する潤滑剤収容部であるグリース溜まり空間25となっている。
シート部材6は、このシート部材6の軸方向に分割されその軸方向に隣接して並んだ少なくとも2つの略円筒状の分割樹脂シート、すなわち例えば第1分割樹脂シート31と第2分割樹脂シート32とによって構成されている。すなわち例えばシート部材6は、第1分割樹脂シート31および第2分割樹脂シート32のみにて構成された2分割構造である。
第1分割樹脂シート31は、例えばポリエーテルエーテルケトン等の合成樹脂にて、開口径寸法がボール部2の外径寸法より小さい略円形状の端面開口33,34を軸方向両端部に有する略円筒状に形成されている。第1分割樹脂シート31の軸方向長さ寸法は第2分割樹脂シート32の軸方向長さ寸法より大きく、第1分割樹脂シート31は例えばボール部2の外周面の半分以上を覆っている。第1分割樹脂シート31は、軸方向両端側に向って徐々に縮径した形状で、最大内径寸法がボール部2の外径寸法と略同じである。第1分割樹脂シート31の一方の端面開口33の開口径寸法は他方の端面開口34に比べて小さくなっている。すなわち、蓋部材21側の径大開口である端面開口34が、スタッド部11側の径小開口である端面開口33より径大状に形成されている。
そして、第1分割樹脂シート31は、ボール部2のうちこのボール部2の赤道Aを含む部分の外周側に赤道Aを覆うように組み付けられている。なお、第1分割樹脂シート31は、ボール部2の外周面に沿った形状の内周面31aを有し、この内周面31aが摺接面6aの一部となっている。
また、第2分割樹脂シート32は、例えばポリエステル或いはポリアセタール等の合成樹脂にて、開口径寸法がボール部2の外径寸法より小さい略円形状の端面開口36,37を軸方向両端部に有する略円筒状に形成されている。第2分割樹脂シート32の端面開口36の開口径寸法と第1分割樹脂シート31の端面開口34の開口径寸法とは略同じであり、第1分割樹脂シート31の端面開口34側の端部と第2分割樹脂シート32の端面開口36側の端部とが接触している。なお、第1分割樹脂シート31と第2分割樹脂シート32との間に間隙があってもよい。
そして、第2分割樹脂シート32は、ボール部2のうちこのボール部2の赤道Aを含まない部分、すなわち例えば蓋部材21側の部分の外周側に組み付けられている。なお、第2分割樹脂シート32は、ボール部2の外周面に沿った形状の内周面32aを有し、この内周面32aが摺接面6aの一部となっている。
次に、上記ボールジョイント1の製造方法について説明する。
図2中の41は鋼球等の球体で、この球体41がボールスタッド3のボール部2となる。まず、予め合成樹脂の射出成形等により別体成形した第1分割樹脂シート31を球体41のうちこの球体41の赤道Aを含む部分の外周側に赤道Aを覆うように組み付けることにより、シート付球体42を得る。
この際、例えば球体41を端面開口34から第1分割樹脂シート31内に第1分割樹脂シート31の端面開口34側の端部分を若干弾性変形させながら挿入して組み込む。
次いで、図3および図4に示すように、シート付球体42を中子としたダイカスト鋳造により、シート付球体42の第1分割樹脂シート31の外周面全体を覆いかつ球体41と非接触なハウジング5を成形した後、第2分割樹脂シート32をシート付球体42の球体41の赤道Aを含まない部分の外周側に組み付ける。
ここで、ダイカスト鋳造の際には、第1型44と第2型45とにて構成されたダイカスト金型46内にシート付球体42をインサートし、この状態でダイカスト金型46のキャビティ47内に高温のアルミニウム等の溶融金属である溶湯を圧入して凝固させる。この際、シート付球体42の第1分割樹脂シート31は、溶湯から熱を受けるが、その熱に耐えうる耐熱性を有しており、溶湯からの熱により使用不可能なレベルまで気化消耗することはない。
すなわち、キャビティ47内に圧入する溶湯は、第1分割樹脂シート31を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い温度を有しているものの、第1分割樹脂シート31を形成する合成樹脂は、気化に潜熱を要し、またその熱伝導率が著しく小さいため、気化の進行が極めて徐々であり、通常の鋳造工程で行われる冷却過程を若干早める程度で気化消耗の内部への進行を容易に食い止めることが可能である。したがって、第1分割樹脂シート31を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い温度の溶湯をキャビティ47に圧入しても、第1分割樹脂シート31は、溶湯からの熱により使用不可能なレベルまで気化消耗することはなく、この成形によってハウジング5にシート付球体42を組み付ける工程を別個に要することなく、ハウジング5の成形と同時に組み付けを完了することが可能になる。
また、第2分割樹脂シート32のシート付球体42への組み付けの際には、第2分割樹脂シート32の端面開口36を球体41側に向けた状態で、第2分割樹脂シート32を球体41とハウジング5のボール受け部4との間に挿入して組み込む。
その後、球体41にスタッド部11を溶接する等してボール部2を有するボールスタッド3を得るとともに、蓋部材21およびダストカバー26等を取り付けて、図1に示すボールジョイント1が完成する。
そして、このようなボールジョイント1の製造方法によれば、従来とは異なりダイカスト鋳造後におけるシート部材6の加熱調整が不要なため、ボールジョイント1の製造に手間取ることがなく、ボールジョイント1を容易に製造できる。
また、開口径寸法が球体41の外径寸法より小さい端面開口33,34を軸方向両端部に有する略円筒状に形成された第1分割樹脂シート31を球体41のうちこの球体41の赤道を含む部分の外周側に組み付けるため、組み付け後に第1分割樹脂シート31が球体41から分離することを防止でき、シート付球体42の取り扱いが容易となり、ボールジョイント1をより一層容易に製造できる。
さらに、ハウジング5のダイカスト鋳造後に第2分割樹脂シート32を組み付けるため、第2分割樹脂シート32は、ダイカスト鋳造時の溶解金属から受ける熱に耐えうる耐熱性を有する必要がなく、第1分割樹脂シート31を形成する合成樹脂(ポリエーテルエーテルケトン等)に比べて耐熱性が低く安価な合成樹脂(ポリエステル、ポリアセタール等)で第2分割樹脂シート32を形成でき、よって、製造コストのボールジョイント1の低減を図ることができ、しかも、第2分割樹脂シート32を形成する合成樹脂として種々のバネ特性を持ったものを使用できるため、ボールジョイント特性を自由にアレンジできる。
また、例えば第1分割樹脂シート31および第2分割樹脂シート32の両方を球体41に組み付けたものを中子としてダイカスト鋳造する場合に比べて、両シート31,32間にエア等を巻き込む等の不具合がなく、鋳込み品質が良好で、安定したボールジョイント特性を得ることができる。
さらに、シート部材6が分割構造であるため、シート成形時の離型性や球体41への組み付け時のシート割れ等の問題もなく、掛り代aを十分に確保でき、またシート形状に制約がなくなるので、ボール部2の外周面を確実に覆い包むことができ、所望の受圧面積を確保でき、耐久性が良好である。
なお、第1分割樹脂シート31がボール部2の赤道Aを覆うものでその端面開口(径大開口)34が赤道Aより蓋部材21側の位置に位置する構成には限定されず、例えば図5に示すように、第1分割樹脂シート31の端面開口34が赤道A上に位置する構成でもよく、また例えば図示しないが、第1分割樹脂シート31の端面開口34が赤道Aよりスタッド部11側の位置に位置する構成でもよい。そして、端面開口34が赤道A上およびスタッド部11側の位置に位置する構成では、シート成形時の離型性や球体41への組み付け時のシート割れ等の問題を確実に解消できる。
また、シート部材6が第1分割樹脂シート31および第2分割樹脂シート32のみからなる2分割構造には限定されず、3分割以上の分割構造でもよく、この場合には、例えば鋳造前に第1分割樹脂シート31を含む少なくとも1つの分割樹脂シートを球体41に組み付け、鋳造後に第2分割樹脂シート32を含む残りの分割樹脂シートを球体41に組み付ける。
さらに、第1分割樹脂シート31と第2分割樹脂シート32とは互いに材質が異なる場合について説明したが、同じ材質であってもよい。
また、本発明の製造方法は、ボールジョイントしてのボールブッシュ(ピロボール)の製造にも適用できる。
1 ボールジョイント
2 ボール部
3 ボール側部材であるボールスタッド
4 ボール受け部
5 ボール受け側部材であるハウジング
6 シート部材
31 第1分割樹脂シート
32 第2分割樹脂シート
33,34 端面開口
41 球体
42 シート付球体
A 赤道
2 ボール部
3 ボール側部材であるボールスタッド
4 ボール受け部
5 ボール受け側部材であるハウジング
6 シート部材
31 第1分割樹脂シート
32 第2分割樹脂シート
33,34 端面開口
41 球体
42 シート付球体
A 赤道
Claims (2)
- ボール部を有するボール側部材と、
ボール受け部を有するボール受け側部材と、
少なくとも第1分割樹脂シートおよび第2分割樹脂シートにて構成され、前記ボール部と前記ボール受け部との間に配設され、前記ボール部を回動可能に保持するシート部材とを備えるボールジョイントの製造方法であって、
前記第1分割樹脂シートを前記ボール部となる球体の外周側に組み付けることにより、シート付球体を得る工程と、
前記シート付球体を中子とした鋳造により、前記シート付球体の第1分割樹脂シートを覆う前記ボール受け側部材を成形する工程と、
前記鋳造後に、前記第2分割樹脂シートを前記シート付球体の球体の外周側に組み付ける工程と
を備えることを特徴とするボールジョイントの製造方法。 - 第1分割樹脂シートは、開口径寸法が球体の外径寸法より小さい端面開口を軸方向両端部に有する略円筒状に形成され、
前記第1分割樹脂シートを前記球体のうちこの球体の赤道を含む部分の外周側に組み付ける
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントの製造方法。
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