JP2009298257A - 車両の操舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが回転操作されても、ロック装置のロック解除後の伝達比可変装置の制御を正確に行う。
【解決手段】電動モータ26により入力軸16に対し出力軸18を相対回転させることにより伝達比を変更する伝達比可変装置20と、電動モータ26の回転角度を検出し、予め設定された基準回転角度範囲を1サイクルの範囲として出力信号を出力する回転角度センサ72と、ロック装置56が伝達比の変化を阻止するロックオン状態にあるときにステアリングホイール12が最大回転可能範囲に亘り回転された場合の電動モータ26の回転角度を制限する回転伝達制限機構33とを有する。ロックオン状態に於ける電動モータ26の回転角度の変化可能範囲を推定し、センサ72の出力信号と推定された回転角度の変化可能範囲とに基づいて電動モータ26の現在の回転角度を推定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、自動車等の車両の操舵制御装置に係り、更に詳細には操舵伝達比を変更する伝達比可変装置を備えた車両の操舵制御装置に係る。
自動車等の車両の操舵制御装置の一つとして、操舵伝達比を変更する伝達比可変装置を備えた操舵制御装置は既に知られている。この種の操舵制御装置は、一般に、回転可能に支持され且つステアリングホイールと相対回転不能に係合された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、入力軸に対し相対的に出力軸を回転させることにより入力軸の回転運動量に対する出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、伝達比可変装置を制御する制御装置とを有している。
伝達比可変装置は従来種々の構成のものが提案されているが、電動モータ及び減速機構を備えた伝達比可変装置がよく知られている。電動モータはステータと、該ステータとの間の相互作用により発生するロータ駆動トルクによってステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを有し、減速機構はロータの回転に伴って回転する回転体を含み、回転体が入力軸に対し第一の回転角度だけ相対回転すると出力軸が入力軸に対し第一の回転角度とは異なる第二の回転角度だけ相対回転すると共に回転体が前記入力軸に対し相対回転しないときには出力軸が入力軸に対し相対回転しないよう構成されている。
伝達比可変装置を制御するためには電動モータへ制御電流を供給する必要があるが、電動モータがステアリングコラムに内蔵されている構造の場合には、車体側より電動モータへ制御電流を供給するためのスパイラルケーブルが必要である。そのためスパイラルケーブルが不要であるよう、ステータが車輌の車体に固定され、ステータに制御電流が供給される構造の伝達比可変装置も既に知られている。
また伝達比可変装置を備えた操舵制御装置に於いては、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、伝達比可変装置が正常である場合には伝達比可変装置による伝達比の変更制御が確実に行われると共に、伝達比可変装置に異常が生じた場合や操舵制御装置の非制御中には入力軸と出力軸との間に確実に回転運動及びトルクが伝達されるよう、入力軸及び出力軸の間の伝達比の変化を許容するロックオフ状態と、ロータ及び出力軸の相対回転を阻止することにより入力軸及び出力軸の間の伝達比の変化を阻止するロックオン状態とに切り替わるロック装置が設けられている。
特開2005−14680号公報
〔発明が解決しようとする課題〕
上述の如き操舵制御装置によれば、ロック装置がロックオン状態にあるときには、ロータ及び出力軸の相対回転を阻止し、入力軸及び出力軸の間の伝達比の変化を確実に阻止することができる。しかしステータが車輌の車体に固定され、ステータに制御電流が供給される構造の伝達比可変装置を備えた操舵制御装置に於いては、ロック装置がロックオン状態にあっても、ステアリングホイールが回転操作されるとロータが出力軸と共にステータに対し相対回転してしまう。
従ってロック装置がロックオン状態にある操舵制御装置の非制御中にステアリングホイールが大きい角度範囲に亘り回転操作されると、前回の制御終了時に回転角度検出手段により検出されたステータに対するロータの回転角度位置に基づいて制御装置が把握しているステータに対するロータの回転角度位置と実際の回転角度位置とが一致しなくなる。そのためその後ロック装置がロックオフ状態に切り替えられ、操舵制御装置の制御が再開された場合に、制御装置は伝達比可変装置を適正に制御することができず、これに起因して操舵伝達比の制御が不適切に行われることがある。
本発明は、ロック装置がロックオン状態にあるときにもステアリングホイールが回転操作されるとロータがステータに対し相対回転するよう構成された伝達比可変装置を備えた従来の操舵制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、ロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが大きい角度範囲に亘り回転操作されても、ロック装置のロックが解除された後の操舵伝達比の制御を適切に行うことができるようにすることである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ちステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、前記回転角度検出手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を示す出力信号であって、予め設定された基準相対回転角度範囲を1サイクルの範囲として各基準相対回転角度範囲毎に一定の繰り返しサイクルにて出力信号を発生し、前記操舵制御装置は前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときに前記ステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合の前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度が前記基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、前記入力軸より前記ロータへの回転伝達を制限する回転伝達制限機構を有し、前記制御手段は前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化可能範囲を推定し、前記回転角度検出手段の出力信号と推定された前記相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて現在の前記相対回転角度を推定することを特徴とする車両の操舵制御装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、ロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合のステータに対するロータの相対回転角度が基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、入力軸よりロータへの回転伝達が回転伝達制限機構により制限される。また前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける相対回転角度の変化可能範囲が推定され、回転角度検出手段の出力信号と推定された相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて現在の相対回転角度が推定される。
よってロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転されてもステータに対するロータの相対回転角度を基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内にすることができると共に、相対回転角度の変化可能範囲内の値として現在の相対回転角度を推定することができる。従って制御装置が把握しているステータに対するロータの回転角度位置と実際の回転角度位置とが一致しなくなることを防止することができ、これによりロック装置のロックが解除された後の操舵制御装置の制御による操舵伝達比の制御が不適切に行われることを防止することができる。
また上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項5の構成、即ちステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、前記回転角度検出手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を示す出力信号であって、予め設定された基準相対回転角度範囲を1サイクルの範囲として各基準相対回転角度範囲毎に一定の繰り返しサイクルにて出力信号を発生し、前記操舵制御装置は前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときに前記ステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合の前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度が前記基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、前記入力軸より前記ロータへの回転伝達を制限する回転伝達制限機構を有し、前記ロック装置は制御が開始された後も前記ロックオン状態に維持され、前記制御手段は前記相対回転角度が前回の制御を終了した際の値になったときに当該値を現在の前記相対回転角度と推定し、前記ロック装置が前記ロックオフ状態に切り替えられることを特徴とする車両の操舵制御装置によって達成される。
上記請求項5の構成によれば、ロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合のステータに対するロータの相対回転角度が基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、入力軸よりロータへの回転伝達が回転伝達制限機構により制限される。またロック装置は制御が開始された後もロックオン状態に維持され、相対回転角度が前回の制御を終了した際の値になったときに当該値が現在の相対回転角度と推定され、ロック装置がロックオフ状態に切り替えられる。
よってロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転されてもステータに対するロータの相対回転角度を基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内にすることができると共に、前回の制御を終了した際の値として現在の相対回転角度を推定することができる。従って制御装置が把握しているステータに対するロータの回転角度位置と実際の回転角度位置とが一致しなくなることを防止することができ、これによりロック装置のロックが解除された後の操舵制御装置の制御による操舵伝達比の制御が不適切に行われることを防止することができる。
また上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項6の構成、即ちステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と制御を開始する際の前記入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化量を推定し、前回の制御を終了した際の前記相対回転角度と前記相対回転角度の変化量とに基づいて制御を開始する際の前記相対回転角度を推定することを特徴とする車両の操舵制御装置によって達成される。
上記請求項6の構成によれば、前回の制御を終了した際の入力軸の回転位置と制御を開始する際の入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける相対回転角度の変化量が推定され、前回の制御を終了した際の相対回転角度と相対回転角度の変化量とに基づいて制御を開始する際の相対回転角度が推定される。
よって入力軸よりロータへの回転伝達を制限する回転伝達制限機構を要することなく、前回の制御を終了した際の相対回転角度と相対回転角度の変化量とに基づいて制御を開始する際の相対回転角度を推定することができる。従って制御装置が把握しているステータに対するロータの回転角度位置と実際の回転角度位置とが一致しなくなることを防止することができ、これによりロック装置のロックが解除された後の操舵制御装置の制御による操舵伝達比の制御が不適切に行われることを防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記制御手段は前記入力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段を有し、少なくとも前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置に基づいて、前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化可能範囲を推定し、制御を開始する際に前記回転角度検出手段の出力信号と推定された前記相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて前記相対回転角度を推定するよう構成される(請求項2の構成)。
上記請求項2の構成によれば、少なくとも前回の制御を終了した際の入力軸の回転位置に基づいて、前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける相対回転角度の変化可能範囲が推定され、制御を開始する際に回転角度検出手段の出力信号と推定された相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて相対回転角度が推定される。
よってロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合に於けるステータに対するロータの相対回転角度の変化可能範囲を推定し、制御を開始する際に回転角度検出手段の出力信号と推定された相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて相対回転角度を推定することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と前記入力軸の回転可能範囲とに基づいて前記入力軸の回転位置の変化可能範囲を推定し、前記入力軸の回転位置の変化可能範囲に基づいて前記相対回転角度の変化可能範囲を推定するよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項3の構成によれば、前回の制御を終了した際の入力軸の回転位置と入力軸の回転可能範囲とに基づいて入力軸の回転位置の変化可能範囲が推定され、入力軸の回転位置の変化可能範囲に基づいて相対回転角度の変化可能範囲が推定される。
よって入力軸の回転位置の実際の変化に基づいて入力軸の回転位置の変化可能範囲を推定することができ、これにより前回の制御を終了した際の入力軸の回転位置のみに基づいて入力軸の回転位置の変化可能範囲を推定する場合に比して、入力軸の回転位置の変化可能範囲を狭い範囲に推定することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記ロック装置は制御が開始された後も前記ロックオン状態に維持され、前記制御手段は前記入力軸が回転限界位置へ回転されたときに前記相対回転角度の変動可能範囲を判定すると共に、前記回転角度検出手段の前記出力信号と前記相対回転角度の変動可能範囲とに基づいて現在の前記相対回転角度を推定し、前記ロック装置が前記ロックオフ状態に切り替えられるよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、制御が開始された後もロックオン状態に維持され、入力軸が回転限界位置へ回転されたときに相対回転角度の変動可能範囲が判定されると共に、回転角度検出手段の出力信号と相対回転角度の変動可能範囲とに基づいて現在の相対回転角度が推定され、ロック装置がロックオフ状態に切り替えられる。
よって入力軸が左旋回及び右旋回の一方の回転限界位置と他方の回転限界位置との間に回転する範囲に対応する相対回転角度の変動範囲を判定相対回転角度の変動可能範囲と判定することができる。
伝達比可変装置による伝達比の制御精度の低下を確実に回避することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項6の構成に於いて、前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と制御を開始する際の前記入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記入力軸の回転位置の変化量を推定し、前記入力軸の回転位置の変化量と前記入力軸の回転角度に対する前記ロータの回転角度の比とに基づいて前記相対回転角度の変化量を推定するよう構成される(請求項7の構成)。
上記請求項7の構成によれば、前回の制御を終了した際の入力軸の回転位置と制御を開始する際の入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける入力軸の回転位置の変化量が推定され、入力軸の回転位置の変化量と入力軸の回転角度に対するロータの回転角度の比とに基づいて相対回転角度の変化量が推定される。
よって入力軸の回転位置の実際の変化に基づいて入力軸の回転位置の変化量を推定し、入力軸の回転角度に対するロータの回転角度の比に基づいて入力軸の回転位置の変化量を相対回転角度の変化量に返還して推定することができる。
伝達比可変装置による伝達比の制御精度の低下を確実に回避することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れか一つの構成に於いて、前記制限相対回転角度範囲は前記電動モータの電気角で見て360°未満の相対回転角度であるよう構成される(請求項8の構成)。
上記請求項8の構成によれば、制限相対回転角度範囲は電動モータの電気角で見て360°未満の相対回転角度であるので、前回の制御を終了した後制御を開始するまでの間に回転角度検出手段の出力信号の信号パターンが1サイクルの範囲を越えて変化することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れか一つの構成に於いて、前記回転角度検出手段は各基準相対回転角度範囲に於いて複数の互いに異なる一定の信号パターンよりなる出力信号を発生し、各信号パターンは各基準相対回転角度範囲内に於ける前記ステータに対する前記ロータの単位相対回転角度範囲に対応しているよう構成される(請求項9の構成)。
上記請求項9の構成によれば、ロック装置がロックオン状態にあるときにステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転されても、回転角度検出手段より出力される出力信号の信号パターン及び相対回転角度の変化可能範囲に基づいてステータに対するロータの相対回転角度を確実に検出することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5又は請求項7乃至9の何れか一つの構成に於いて、減速機構はロータによって回転駆動される回転体の回転により入力軸に対し相対的に出力軸を回転させるよう構成され、回転伝達制限機構はロータと回転体との間にて回転伝達を行い、ロック装置がロックオン状態にあるときには入力軸より回転体へ伝達される回転を減速してロータへ伝達するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、ロック装置はロックオン状態に於いては入力軸及び回転体の相対回転を阻止するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5又は請求項7乃至9の何れか一つの構成に於いて、入力軸はステアリングホイールと一体的に回転する第一の入力軸と、回転伝達制限機構を介して第一の入力軸と回転伝達を行う第二の入力軸とを有し、回転伝達制限機構はロック装置が前記ロックオン状態にあるときには第一の入力軸の回転を減速して第二の入力軸へ伝達することにより第一の入力軸の回転を減速してロータへ伝達するよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、ロック装置はロックオン状態に於いては第二の入力軸及び回転体の相対回転を阻止するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1又は3の構成に於いて、ロック装置はロックオン状態に於いては出力軸及び回転体の相対回転を阻止するよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5又は請求項7乃至9又は上記好ましい態様1乃至5の何れか一つの構成に於いて、ステアリングホイールの最大回転可能範囲は運動変換機構により郭定されるよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2又は上記好ましい態様1乃至6の何れか一つの構成に於いて、制御手段は不揮発性の記憶手段を有し、制御を終了する際には回転位置検出手段により検出された入力軸の回転位置を記憶手段に記憶するよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4又は5又は上記好ましい態様1乃至6の何れか一つの構成に於いて、制御手段は不揮発性の記憶手段を有し、制御を終了する際には回転角度検出手段により検出された相対回転角度を記憶手段に記憶するよう構成される(好ましい態様8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項6又は7又は上記好ましい態様1乃至6の何れか一つの構成に於いて、制御手段は不揮発性の記憶手段を有し、制御を終了する際には回転位置検出手段により検出された入力軸の回転位置及び回転角度検出手段により検出された相対回転角度を記憶手段に記憶するよう構成される(好ましい態様9)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1は本発明による車両の操舵制御装置の第一の実施例を示す概略構成図、図2は伝達比可変装置の波動歯車機構を回転軸線に垂直な切断面にて切断して示す断面図である。尚図2に於いては、簡略化の目的でハッチングは省略されている。
図1に於いて、10は操舵制御装置を全体的に示している。操舵制御装置10は、車両の運転者により操舵操作(回転操作)されるステアリングホイール12と、回転軸線14の周りに回転可能に支持された入力軸としてのアッパステアリングシャフト16と、回転軸線14の周りに回転可能に支持された出力軸としてのロアステアリングシャフト18とを含んでいる。また操舵制御装置10は伝達比可変装置20及び運動変換機構24を含んでいる。伝達比可変装置20は、必要に応じてアッパステアリングシャフト16に対し相対的にロアステアリングシャフト18を回転させることによりアッパステアリングシャフト16の回転運動量に対するロアステアリングシャフト18の回転運動量の比である伝達比を変更する。運動変換機構24はロアステアリングシャフト18の回転運動を操舵輪である左右前輪22L及び22Rの舵角変更運動に変換する。
アッパステアリングシャフト16は上端にて図には示されていないトーションバーを介してステアリングホイール12に連結され、下端に回転軸線14に垂直に延在するディスク部16aを一体に有している。ロアステアリングシャフト18の上端には回転軸線14に垂直に延在するディスク部18aと、該ディスク部18aの外縁部より回転軸線14に整合して上方へ延在する円筒部18bとが一体に設けられている。ディスク部18a及び円筒部18bはディスク部16aより隔置され、これによりディスク部16aを回転軸線14の周りに回転可能に遊嵌状態にて受け入れている。
伝達比可変装置20は回転アクチュエータとしての電動モータ26及び減速歯車機構27を有している。図示の第一の実施例に於いては、電動モータ26はアッパステアリングシャフト16より隔置された位置に配設されている。電動モータ26はブラシレスモータであり、複数の電磁コイルを備えたステータ28と、周方向に配列された複数の永久磁石を備えたロータ30とを有し、ロータ30はステータ28との間の電磁気的相互作用により発生するロータ駆動トルクによってステータ28に対し相対的に回転駆動されるようになっている。ステータ28は車両の車体32に固定され、車体32により支持されている。ロータ30は回転軸線14に平行な回転軸線30aの周りに回転可能である。
アッパステアリングシャフト16の周りには回転体として機能する管状のウェーブジェネレータシャフト31が嵌合しており、ウェーブジェネレータシャフト31は回転軸線14の周りにアッパステアリングシャフト16に対し相対的に回転可能である。ロータ30及びウェーブジェネレータシャフト31は回転伝達制限機構33を介して互いに回転伝達可能に係合している。回転伝達制限機構33はロータ30の下端に固定された歯車部材33aと、ウェーブジェネレータシャフト31に固定され歯車部材33aと噛合する歯車部材33bとを有している。尚歯車部材33a及び33bの歯車は平歯の歯車に限られるものではなく、はすば歯車の如き任意の歯車であってよい。ウェーブジェネレータシャフト31はその下端に回転軸線14に垂直に延在するディスク部31aを一体に有している。ディスク部31aは長径La及び短径Lbを有する楕円形をなしている。
ディスク部16aの外縁部の上面には回転軸線14に整合する平歯の内歯34aを有するリング歯車部材34が固定されており、円筒部18bの上端部の内面には回転軸線14に整合する平歯の内歯36aを有するリング歯車部材36が固定されている。リング歯車部材34は円筒部18bより径方向内方に隔置され且つリング歯車部材36より回転軸線14に沿う方向に隔置されている。リング歯車部材34及び36は互いに同一のピッチ円直径を有しているが、図示の第一の実施例に於いてはそれぞれ100及び102の歯数を有している。
図2に示されている如く、ディスク部31aの回転軸線14に沿う方向の位置はリング歯車部材34及び36に径方向に対向する位置であり、ディスク部31aの外周には平歯の外歯40aを有する環帯状の外歯歯車部材40が軸受38を介して配設されている。軸受38は可撓性を有するインナレース38a及びアウタレース38bとこれらの間に配設された複数のローラ38cとよりなり、インナレース38aはディスク部31aに対し相対回転しないようディスク部30aに圧入式に嵌合している。外歯歯車部材40は可撓性を有し、軸受38のアウタレース38bに対し相対回転しないようアウタレースに圧入式に嵌合し、これにより軸受38及び外歯歯車部材40は回転軸線14の位置を中心とする楕円形をなしている。図示の第一の実施例に於いては、外歯歯車部材40は102の歯数を有している。
また図2に示されている如く、外歯歯車部材40はリング歯車部材34及び36のピッチ円とディスク部31aの長径Laに整合する直線Lとが交差する二つの交点P1及びP2に於いてリング歯車部材34及び36と噛合するが、交点P1及びP2以外の領域に於いてリング歯車部材34及び36と噛合しないようになっている。アウタレース38b及び外歯歯車部材40は可撓性を有するので、ディスク部31aがディスク部16a及び円筒部18bに対し相対的に回転軸線14の周りに回転すると、それに伴って交点P1及びP2もディスク部31aの相対回転角度と同一の角度だけ回転軸線14の周りに回転変位する。
かくしてリング歯車部材34、36及び外歯歯車部材40はディスク部31a及び軸受38と共働して波動歯車機構(ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構)として減速歯車機構27を構成しており、ディスク部31a及び軸受38は波動歯車機構の所謂ウェーブジェネレータとして機能する。波動歯車機構の機能は当技術分野に於いてよく知られているが、以下にその概要を説明する。
ディスク部31aがその下方より見てディスク部16a及び円筒部18bに対し相対的に回転軸線14の周りに時計回り方向へ回転すると、その相対回転に伴って外歯歯車部材40とリング歯車部材34とが噛み合う位置が回転軸線14の周りに時計回り方向へ回転移動する。上述の如く外歯歯車部材40の歯数(102)はリング歯車部材34の歯数(100)よりも多い。従ってディスク部31aがリング歯車部材34に対し相対的に回転軸線14の周りに時計回り方向へ360°回転する間に、外歯歯車部材40はリング歯車部材34に対し二つの歯に相当する角度だけ反時計回り方向へ相対回転する。
またディスク部31aがリング歯車部材36に対し時計回り方向へ相対回転すると、その相対回転に伴って外歯歯車部材40とリング歯車部材36とが噛み合う位置が回転軸線14の周りに時計回り方向へ回転移動する。上述の如く外歯歯車部材40の歯数(102)はリング歯車部材36の歯数(102)と同一である。従ってディスク部31aがリング歯車部材36に対し相対的に回転軸線14の周りに360°回転しても、外歯歯車部材40はリング歯車部材36に対し相対回転しない。
従ってディスク部31aを一体に有するウェーブジェネレータシャフト31がアッパステアリングシャフト16に対し角度θだけ時計回り方向へ相対回転すると、360°に対しリング歯車部材36の二つの歯に相当する角度の比1/N(図示の第一の実施例に於いては、Nは51である)を角度θに乗じた角度θ/Nだけ、ロアステアリングシャフト18はアッパステアリングシャフト16に対し時計回り方向へ相対回転せしめられる。また同様にウェーブジェネレータシャフト31がアッパステアリングシャフト16に対し角度θだけ反時計回り方向へ相対回転すると、ロアステアリングシャフト18は角度θ/Nだけアッパステアリングシャフト16に対し反時計回り方向へ相対回転せしめられる。
かくして伝達比可変装置20は、電動モータ26及び減速歯車機構27によってウェーブジェネレータシャフト31をアッパステアリングシャフト16に対し相対回転させることによりロアステアリングシャフト18をアッパステアリングシャフト16に対し相対回転させ、これによりアッパステアリングシャフト16の回転運動量に対するロアステアリングシャフト18の回転運動量の比である伝達比を変更する。
尚、ウェーブジェネレータシャフト31がアッパステアリングシャフト16に対し相対回転しない(θ=0)場合には、ロアステアリングシャフト18はアッパステアリングシャフト16に対し相対回転しない。即ちウェーブジェネレータシャフト31、アッパステアリングシャフト16及びロアステアリングシャフト18は互いに他に対し相対回転せず、これらのステアリングシャフトはあたかも一つのシャフトの如く回転する。
ロアステアリングシャフト18の回転運動は運動変換機構24により左右の前輪22L及び22Rの舵角を変更する運動に変換される。図示の第一の実施例に於ける運動変換機構24はラックアンドピニオン型の電動式パワーステアリング装置(EPS)42を含み、パワーステアリング装置42は車両横方向に延在するラックバー44及びラックバー44のラック歯に係合するピニオンシャフト46を有している。
ラックバー44は電動モータ及び減速機を有するアクチュエータ48によって周知の如く軸線方向に付勢され、これにより運転者の操舵負担が軽減されるようになっている。ピニオンシャフト46にはユニバーサルジョイント50を介してロアステアリングシャフト18の下端が連結されており、ロアステアリングシャフト18の回転運動はユニバーサルジョイント50を介してピニオンシャフト46に同一方向の回転運動として伝達され、ピニオンシャフト46の回転運動はラックバー44の直線運動に変換される。尚アクチュエータ48はロアステアリングシャフト18又はピニオンシャフト46にアシストトルクを付与するようになっていてもよい。
ラックバー44の両端はボールジョイント52を介して左右のタイロッド54L及び54Rの内端に連結され、タイロッド54L及び54Rの外端は図には示されていないボールジョイントを介してそれぞれ左右の操舵輪22R及び22Lの図には示されていないナックルアームに連結され、これによりラックバー44の直線運動が周知の如く左右の前輪22L及び22Rのキングピン軸周りの揺動運動、即ち舵角変更運動に変換されるようになっている。
周知の如く、ラックバー44の車両横方向の移動範囲はラックバー44が図1には示されていないラックエンドストッパに当接することにより決定される移動可能範囲に制限されており、このラックバー44の移動可能範囲によりステアリングホイール12の最大回転可能範囲、即ち右旋回方向最大回転位置と左旋回方向最大回転位置との間の角度範囲が設定されている。
図1に示されている如く、ステアリングホイール12と伝達比可変装置20との間にはレバー式のロック装置56が設けられており、ロック装置56は必要に応じてアッパステアリングシャフト16及びウェーブジェネレータシャフト31の互いに他に対する相対回転を阻止するようになっている。図示の第一の実施例に於いては、ロック装置56はウェーブジェネレータシャフト31の上端の外側に例えば圧入により固定された被係合部材としてのロックホルダ58と、アッパステアリングシャフト16に固定されたマウント60に取り付けられた電磁式のロックアクチュエータ62と、ロックアクチュエータ62により駆動される係合部材としてのロックレバー64とを有している。
ロックホルダ58の外周部には周方向に互いに隔置され且つ径方向外方へ開いた複数の凹部が設けられている。ロックレバー64は図には示されていない枢軸により枢動可能に支持され、先端がロックホルダ58の凹部に係合するロック位置と先端がロックホルダ58の凹部より離脱する非ロック位置とを取り得るようになっている。ロックアクチュエータ62はロックレバー64を駆動するソレノイドを含み、ソレノイドに制御電流が通電されていないときにはロックレバー64をロック位置に位置決めし、ソレノイドに制御電流が通電されているときにはロックレバー64を非ロック位置に位置決めするようになっている。
かくしてロック装置56は、ロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流が制御されることにより、アッパステアリングシャフト16及びウェーブジェネレータシャフト31の互いに他に対する相対回転を阻止するロックオン状態と、アッパステアリングシャフト16及びウェーブジェネレータシャフト31の互いに他に対する相対回転を許容するロックオフ状態とに切り替わるようになっている。ロック装置56がロックオン状態にあるときには、アッパステアリングシャフト16及びウェーブジェネレータシャフト31は互いに他に対し相対回転することができないので、リング歯車部材34及び外歯歯車部材40は一体的に回転する。リング歯車部材36及び外歯歯車部材40の歯数は同一であるので、これらの歯車部材は互いに他に対し同一の方向へ同一の角度回転し、従ってアッパステアリングシャフト16、ロアステアリングシャフト18、ウェーブジェネレータシャフト31は相対回転することなく、あたかも一つのシャフトの如く回転する。
従ってロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12が回転操作されると、ウェーブジェネレータシャフト31はステアリングホイール12と同一の角度回転軸線14の周りに回転し、ウェーブジェネレータシャフト31の回転は回転伝達制限機構33を介して電動モータ26のロータ30へ伝達され、ロータ30はステータ28に対し相対的に回転する。
ステアリングホイール12とロック装置56との間にはそれ自身周知の構造を有するスパイラルケーブル装置66が設けられている。スパイラルケーブル装置66のケーブルの内端はアッパステアリングシャフト16に支持され、ケーブルの外端は車体32により支持されており、これによりスパイラルケーブル装置66はアッパステアリングシャフト16の回転位置に拘らず車体32の側よりロックアクチュエータ62へ制御電流を供給する。またスパイラルケーブル装置66はステアリングホイール12に設けられたエアバッグや各種スイッチ等の電装部品に対し必要な制御電流を供給する。
ステアリングホイール12とスパイラルケーブル装置66との間には操舵角センサ68が設けられており、操舵角センサ68は操舵角θsを検出し、スパイラルケーブル装置66を経て操舵角θsを示す信号を車体32に設けられた電子制御装置70へ供給する。操舵角センサ68はアブソリュート型のロータリエンコーダであり、車体32に対するアッパステアリングシャフト16の相対回転角度を操舵角θsとして検出する。尚操舵角θsは車両の直進位置に対応する値を0とし、車両の直進位置に対しステアリングホイール12の左切り方向及び右切り方向をそれぞれ負及び正の値として検出される。
電動モータ26には回転角度センサ72が設けられている。回転角度センサ72はインクリメンタル型のロータリエンコーダであり、車体32及びステータ28に対するロータ30の相対回転角度θmの変化量である回転角度変化量Δθmを検出し、検出された回転角度変化量Δθmを示す信号を電子制御装置70へ出力するようになっている。回転角度変化量Δθmとアッパステアリングシャフト16及びロアステアリングシャフト18の相対回転角度との間には一定の関係がある。従って回転角度センサ72による回転角度変化量Δθmの検出は、伝達比可変装置20を制御するために行われると共に、アッパステアリングシャフト16及びロアステアリングシャフト18の相対回転角度を検出するために行われる。よってロアステアリングシャフト18の回転角度を検出する回転角度センサは不要である。
特に図示の実施例に於いては、図3に示されている如く、回転角度センサ72はロータ30の周りの周方向に交互の磁極にて配列され且つロータ30の外周面に固定された8個の永久磁石71と、ロータ30の径方向外方へ永久磁石71より隔置され且つロータ30の周りの周方向に配列された三つの磁気センサ73a〜73cとを有している。永久磁石71の数は電動モータ26のロータ30の永久磁石の数、即ち磁極の数と同数であり、周方向の位置が互いに整合している。また三つの磁気センサ73a〜73cは一つの永久磁石71の角度範囲を三等分する各角度範囲の中央の角度位置に配設され、車体32により支持されている。
ロータ30が回転軸線30aの周りに回転すると、その回転に伴って永久磁石71による磁界が回転し、その磁界の変化が三つの磁気センサ73a〜73cにより検出される。磁気センサ73a〜73cが永久磁石のN極に対向するときにH(ハイ)信号を出力し、永久磁石のS極に対向するときにL(ロー)信号を出力するもとすると、磁気センサ73a〜73cの出力信号の組合せ、即ち回転角度センサ72の信号パターンはロータ30の回転に伴って下記の表1の通りに変化する。
Figure 2009298257
上記表1に示された回転角度センサ72の信号パターン1〜6はロータ30が回転軸線30aの周りに一対のN極及びS極の永久磁石71の角度、即ち90°回転する毎に繰り返されるので、予め設定された基準相対回転角度範囲(機械角)は90°であり、この角度は図示の8極の電動モータ26の360°の電気角に対応している。回転角度センサ72は90°の相対回転毎に六つの互いに異なる一定の信号パターン1〜6よりなる出力信号を発生する。単位相対回転角度は90°÷6、即ち15°である。よって信号パターン1〜6はロータ30が回転軸線30aの周りに15°回転する毎に1信号パターンずつ変化し、信号パターン1〜6の変化の態様によってロータ30の回転方向が判る。例えば回転軸線30aに沿って上方より見てロータ30が時計回り方向へ回転するときに信号パターンが表1の左より右へ変化するものとすると、ロータ30が反時計回り方向へ回転するときには信号パターンは表1の右より左へ変化する。また信号パターンの変化の大きさは相対回転角度の大きさを表す。
図示の第一の実施例に於いては、回転伝達制限機構33の歯車部材33aの歯数は歯車部材3bの歯数よりも大きく、ウェーブジェネレータシャフト31よりロータ30への回転伝達について見た回転伝達制限機構33の減速比、即ち歯車部材33bの歯数に対する歯車部材33aの歯数の比は1よりも大きい。特に回転伝達制限機構33の減速比は、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度が基準相対回転角度範囲(90°)よりも大きさが小さい制限相対回転角度範囲内になるよう設定されている。この場合制限相対回転角度範囲は電動モータ26の電気角で見て360°よりも小さい値である。
電子制御装置70には、操舵角センサ68により検出された操舵角θsを示す信号及び回転角度センサ72により検出されたロータ30の回転角度変化量Δθmを示す信号に加えて、車両に搭載された車速センサ74より車速Vを示す信号が供給される。
電子制御装置70は、車速Vに基づき目標ステアリングギヤ比Rgtを演算し、目標ステアリングギヤ比Rgtに対応するロータ30の目標回転角度変化量Δθmtを演算する。そして電子制御装置70は、回転角度センサ72により検出される回転角度変化量Δθmが目標回転角度変化量Δθmtになるよう、伝達比可変装置20の電動モータ26を制御し、これによりステアリングギヤ比が目標ステアリングギヤ比になるようアッパステアリングシャフト16に対し相対的にロアステアリングシャフト18を回転させる。尚伝達比可変装置20の制御によるステアリングギヤ比や操舵輪の舵角の制御自体は本発明の要旨をなすものではなく、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて実行されてよい。
電子制御装置70は、CPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。また電子制御装置70の電源回路はリレーを有し、イグニッションスイッチが開成されても、暫くの間マイクロコンピュータ、駆動回路等へ電力を供給し得るようになっている。また電子制御装置70は、EEPROMの如くイグニッションスイッチが開成されても情報の記憶を継続することができる非揮発性の記憶手段を備えている。
電子制御装置70は、後に詳細に説明する如く図4に示されたフローチャートに従って伝達比可変装置20及びロック装置56を制御する。特に電子制御装置70は、イグニッションスイッチが閉成されると、伝達比可変装置20の制御に先立ってロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流の通電を開始することによりロック装置56をロックオフ状態に切り替える。また電子制御装置70は、イグニッションスイッチが開成されると、伝達比可変装置20の制御を終了し、しかる後ロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流の通電を終了することによりロック装置56をロックオン状態に切り替える。
電子制御装置70は、伝達比の正常な制御を行うことができない異常が伝達比可変装置20等に生じているか否かを監視し、伝達比可変装置20等に異常が生じていると判定したときには、図には示されていない警報装置を作動させ、伝達比可変装置20の制御を終了すると共に、ロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流の通電を終了することによりロック装置56をロックオン状態に切り替える。尚異常が生じているか否かの判定自体は本発明の要旨をなすものではなく、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて実行されてよい。
ステアリングホイール12とスパイラルケーブル装置66との間にはトルクセンサ80が設けられており、スパイラルケーブル装置66はトルクセンサ80にも必要な電流を供給すると共に、トルクセンサ80により検出された操舵トルクTsを示す信号を図1には示されていないアシストトルク制御用の電子制御装置へ供給する。アシストトルク制御用の電子制御装置は操舵トルクTs及び車速V等に基づき当技術分野に於いて公知の要領にて目標アシストトルクTatを演算し、目標アシストトルクTatに基づきパワーステアリング装置42のアクチュエータ48を制御する。尚アシストトルクの制御も本発明の要旨をなすものではなく、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて実行されてよい。
次に図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於ける伝達比可変装置20及びロック装置56の制御ルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。尚このことは図5乃至図7に示された他の実施例に於いても同様である。
まずステップ410に於いては、イグニッションスイッチが閉成され伝達比可変装置20及びロック装置56の制御が開始される状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ450へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ415へ進む。
ステップ415に於いては非制御中、即ちイグニッションスイッチがオフの状況に於ける左旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsl及び右旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsrが演算される。この場合前回の制御終了時に操舵角センサ68により検出された操舵角をθsfとし、ステアリングホイール12が左旋回方向最大回転位置にあるときの操舵角をθslmaxとし、ステアリングホイール12が右旋回方向最大回転位置にあるときの操舵角をθsrmaxとして、前回の制御終了時以降に於ける左旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθslがθslmax−θsfにて演算され、右旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsrがθsrmax−θsfにて演算される。
ステップ420に於いては電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxが演算される。この場合アッパステアリングシャフト16に対するロータ30の回転角度の比をKrとして、前回の制御終了時以降に於ける左旋回方向へのロータ30の回転角度θmの変化可能量Δθml=Kr・Δθslが演算されると共に、前回の制御終了時以降に於ける右旋回方向へのロータ30の回転角度θmの変化可能量Δθmr=Kr・Δθsrが演算される。そして前回の制御終了時に回転角度センサ72により検出された相対回転角度をθmfとして、電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲の左旋回方向限界値θmlmaxがθmf+Δθmlにて演算され、電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲の右旋回方向限界値θmrmaxがθmf+Δθmrにて演算される。
ステップ430に於いては回転角度センサ72の出力信号の信号パターンと変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxとに基づいて電動モータ26の現在の回転角度θmが演算され、ステップ440に於いてはロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対し制御電流の通電が開始されることによりロック装置56がロックオフ状態に切り替えられる。
ステップ450に於いては車速Vが高ほど目標ステアリングギヤ比Rgtが大きくなるよう車速Vに基づいて目標ステアリングギヤ比Rgtが演算されると共に、ステアリングギヤ比を目標ステアリングギヤ比Rgtにするための電動モータ26の目標回転角度変化量Δθmtが演算され、ステップ460に於いては電動モータ26の回転角度変化量が目標回転角度変化量Δθmtになるよう電動モータ26が制御される。
ステップ470に於いてはイグニッションスイッチが開成されたか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ410へ戻り、これにより上記各ステップ410〜470が繰り返し実行され、肯定判別が行われたときにはステップ480へ進む。
ステップ480に於いては電動モータ26の制御が終了されると共に、ロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流の通電が終了されることによりロック装置56がロックオン状態に切り替えられ、ステップ490に於いては制御が終了される際の操舵角θs及び回転角度θmが次回の制御に備えてそれぞれ前回の制御終了時の操舵角θsf及び回転角度θmfとして非揮発性の記憶手段に記憶され、しかる後図4に示されたフローチャートによる制御が一旦終了する。
以上の説明より解る如く、上述の第一の実施例によれば、イグニッションスイッチが開成されると、ステップ470に於いて肯定判別が行われ、ステップ480に於いて電動モータ26の制御が終了されると共に、ロック装置56がロックオン状態に切り替えられ、ステップ490に於いて操舵角θsが非揮発性の記憶手段に記憶される。
またイグニッションスイッチが閉成されると、ステップ410に於いて肯定判別が行われ、ステップ415に於いて非制御中に於ける左旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsl及び右旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsrが演算され、ステップ420に於いて非制御中に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxが演算される。
そしてステップ430に於いて回転角度センサ72の信号パターンと変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxとに基づいて電動モータ26の現在の回転角度θmが演算され、ステップ440に於いてロック装置56がロックオフ状態に切り替えられる。
そしてステップ450に於いて車速Vに基づいて目標ステアリングギヤ比Rgtが演算されると共に、ステアリングギヤ比を目標ステアリングギヤ比Rgtにするための電動モータ26の目標回転角度変化量Δθmtが演算される。更にステップ460に於いて電動モータ26の回転角度変化量が目標回転角度変化量Δθmtになるよう電動モータ26が制御され、イグニッションスイッチが開成されるまでステップ450及び460の制御が繰り返し実行される。
以上の説明より解る如く、第一の実施例によれば、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度は90°未満であり、回転角度センサ72の出力パターンの変化が1サイクルを越えて変化することはない。尚このことは後述の他の実施例についても同様である。
またロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12が回転操作されることにより変化可能な電動モータ26の回転角度θmの範囲が、左旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsl及び右旋回方向への操舵角θsの変化可能量Δθsrに基づいて回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxとして演算される。
従って第一の実施例によれば、制御開始時の回転角度センサ72の出力信号の信号パターン及び電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxに基づいて、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。またこのことによりイグニッションスイッチが開成されロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12が回転操作された場合にも、その後操舵制御装置10の制御が再開された際の伝達比可変装置20の制御を再開直後より正確に行うことができる。
例えば図10に示されている如く、前回の制御終了時及び制御開始時に於ける回転角度センサ72の出力信号の信号パターンがそれぞれ「4」、「6」であり、電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxが図示の通りであるとする。変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxに於いては回転角度センサ72の出力信号の信号パターン1〜6は1回ずつしか出現しないので、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmは変化可能範囲θmlmax〜θmrmax内の信号パターン「6」に対応する値であると判定することができる。
また第一の実施例によれば、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを判定するための要件として制御開始時に運転者によってステアリングホイール12や電動モータ26が特定の位置へ回転操作されることが必要とされる訳ではないので、後述の第二及び第三の実施例の場合に比して早期に制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを判定することができ、またロック装置56のロックを早期に解除して伝達比可変装置20による伝達比の制御を早期に開始することができる。
特に第一の実施例によれば、操舵角θs及び回転角度θmについては前回の制御終了時及び今回の制御開始時の値が解ればよく、前回の制御終了時より今回の制御開始時までの一連の値や変化が必要とされる訳ではないので、例えば前回の制御終了時より今回の制御開始時までの間に車載バッテリが一旦取り外されるような場合にも、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。
[第二の実施例]
この第二の実施例に於いては、操舵制御装置のハード構成は上述の第一の実施例のハード構成と同一であるので、操舵制御装置のハード構成の図示を省略するが、伝達比可変装置20及びロック装置56は図4に示されたフローチャートに従って制御されるのではなく、図5に示されたフローチャートに従って制御される。
図5に示されたフローチャートのステップ510は上述の第一の実施例のステップ410と同様に行われ、否定判別が行われたときにはステップ550へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ515へ進む。
ステップ515に於いてはラックバー44が左旋回方向又は右旋回方向のステアリングエンド位置にあるか否かの判別、即ちラックバー44がラックエンドストッパに当接しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ515が繰り返し実行され、肯定判別が行われたときにはステップ525へ進む。
尚ラックバー44がステアリングエンド位置にあるか否かの判別自体は本発明の要旨をなすものではなく、ラックバー44がラックエンドストッパに当接している状況を判別し得る限り、例えば操舵角センサ68により検出される操舵角θs又はトルクセンサ80により検出される操舵トルクTsに基づいて判定されてよい。
ステップ525に於いては回転角度センサ72の出力信号の信号パターンに基づき、ラックバー44がステアリングエンド位置にある時の電動モータ26の回転角度θme1が判定され、回転角度θme1に基づき旋回方向が反対側についてラックバー44がステアリングエンド位置にある時の電動モータ26の回転角度θme2が決定され、非制御時に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲がθme1〜θme2に演算される。
ステップ530〜580は第一の実施例のステップ430〜480と同様に実行され、ステップ590に於いては操舵制御終了時の電動モータ26の回転角度θmが次回の制御に備えて前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfとして非揮発性の記憶手段に記憶され、しかる後図5に示されたフローチャートによる制御が一旦終了する。
この第二の実施例によれば、ラックバー44がステアリングエンド位置にあるときの電動モータ26の回転角度θme1に基づいて非制御時に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲がθme1〜θme2に演算される。
従って第二の実施例によれば、制御開始時の回転角度センサ72の出力信号の信号パターン及び電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θme1〜θme2に基づいて、電動モータ26の現在の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。またこのことによりイグニッションスイッチが開成されロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12が回転操作された場合にも、その後操舵制御装置10の制御が再開されロック装置56のロックが解除された後の伝達比可変装置20の制御を正確に行うことができる。
例えば図11に示されている如く、前回の制御終了時及び制御開始時に於ける回転角度センサ72の出力信号の信号パターンがそれぞれ「4」、「6」であり、電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θme1〜θme2が図示の通りであるとする。変化可能範囲θme1〜θme2に於いても回転角度センサ72の出力信号の信号パターン1〜6は1回ずつしか出現しないので、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmは変化可能範囲θme1〜θme2内の信号パターン「6」に対応する値であると判定することができる。
また第二の実施例によれば、ラックバー44がステアリングエンド位置にあるか否かの判別に操舵角θsが使用されない場合には、操舵角θsの検出や記憶を要することなく電動モータ26の現在の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。
[第三の実施例]
この第三の実施例に於いても、操舵制御装置のハード構成は上述の第一の実施例のハード構成と同一であるので、操舵制御装置のハード構成の図示を省略するが、伝達比可変装置20及びロック装置56は図4に示されたフローチャートに従って制御されるのではなく、図6に示されたフローチャートに従って制御される。
図6に示されたフローチャートのステップ610は上述の第一の実施例のステップ410と同様に行われ、否定判別が行われたときにはステップ650へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ620へ進む。
ステップ620に於いては回転角度センサ72の出力信号の信号パターンが非揮発性の記憶手段に記憶されている前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfの信号パターンと一致するか否かの判別により、回転角度センサ72により検出される回転角度θmが非揮発性の記憶手段に記憶されている前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfと一致したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ620が繰り返し実行され、肯定判別が行われたときにはステップ630に於いて前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfの値が現在の電動モータ26の回転角度θmに決定される。
ステップ640〜680は第一の実施例のステップ440〜480と同様に実行され、ステップ690に於いては操舵制御終了時の電動モータ26の回転角度θmが次回の制御に備えて前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfとして非揮発性の記憶手段に記憶され、しかる後図5に示されたフローチャートによる制御が一旦終了する。
以上の説明より解る如く、回転角度センサ72により検出される回転角度θmが非揮発性の記憶手段に記憶されている前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfと一致したときに、前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfの値が現在の電動モータ26の回転角度θmに決定される。
従って第三の実施例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様に電動モータ26の現在の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができるだけでなく、非制御時に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲を演算する必要がないので、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して、電動モータ26の現在の回転角度θmを容易に判定することができる。
例えば図12に示されている如く、前回の制御終了時に於ける回転角度センサ72の出力信号の信号パターンが「4」であり、電動モータ26の回転角度θmの変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxが図示の通りであるとする。変化可能範囲θmlmax〜θmrmaxに於いては、「4」以外の回転角度センサ72の出力信号の信号パターンは2回ずつ出現する可能性があるが、回転角度センサ72の出力信号の信号パターン「4」は1回ずつしか出現しない。よって回転角度センサ72の出力信号の信号パターンが「4」の信号パターンであることを判定することにより、制電動モータ26の現在の回転角度θmを容易に且つ確実に判定することができる。
また第三の実施例によれば、回転角度θmの判定に操舵角θsは使用されないので、操舵角θsの検出や記憶を要することなく電動モータ26の現在の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。
この第三の実施例によれば、前回の制御終了後にステアリングホイール12が運転者によって全く回転操作されない場合には、ステップ610に於いて肯定判別が行われた直後にステップ620に於いて肯定判別が行われる。また前回の制御終了後にステアリングホイール12が運転者によって一旦回転操作されても、電動モータ26の現在の回転角度θmを判定するに当りステアリングホイール12がステアリングエンド位置まで回転操作される必要はない。従って上述の第二の実施例の場合に比して早期に制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを判定することができ、またロック装置56のロックを早期に解除して伝達比可変装置20による伝達比の制御を早期に開始することができる。
尚上述の第三の実施例に於いては、前回の制御終了後にステアリングホイール12が運転者によって一旦回転操作された場合には、回転角度センサ72により検出される回転角度θmが前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfと一致するよう運転者によって回転操作されない限り、電動モータ26の現在の回転角度θmを判定することができない。よって例えばステップ610に於いて肯定判別が行われたときには、電動モータ26が回転駆動され、これにより運転者によるステアリングホイール12の回転操作に依存せずに電動モータ26の現在の回転角度θmを判定することができるよう修正されてもよい。
[第四の実施例]
この第四の実施例に於いても、操舵制御装置のハード構成は上述の第一の実施例のハード構成と同一であるので、操舵制御装置のハード構成の図示を省略するが、伝達比可変装置20及びロック装置56は図4に示されたフローチャートに従って制御されるのではなく、図7に示されたフローチャートに従って制御される。
図7に示されたフローチャートのステップ710は上述の第一の実施例のステップ410と同様に行われ、否定判別が行われたときにはステップ750へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ720へ進む。
ステップ720に於いては操舵角センサ68により検出された操舵角θsと前回の制御終了時の操舵角θsfとの偏差として、前回の制御終了時より現在までの操舵角θsの変化量Δθsが演算される。
ステップ725に於いては係数Krと操舵角θsの変化量Δθsとの積として前回の制御終了時より現在までの電動モータ26の回転角度θmの変化量Δθmが演算され、ステップ7305に於いては前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfと回転角度θmの変化量Δθmとの和として現在の電動モータ26の回転角度θmが演算される。
ステップ740〜790は第一の実施例のステップ440〜490と同様に実行され、ステップ790に於ける制御終了時の操舵角θs及び回転角度θmの記憶が完了すると、図5に示されたフローチャートによる制御が一旦終了する。
以上の説明より解る如く、前回の制御終了時と今回の制御開始時との間の操舵角θsの変化量Δθsに基づいて前回の制御終了時より現在までの電動モータ26の回転角度θmの変化量Δθmが演算され、前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmfと回転角度θmの変化量Δθmとの和として現在の電動モータ26の回転角度θmが演算される。
従って第四の実施例によれば、操舵角θsの変化量Δθsと回転角度θmの変化量Δθmとの関係が一定であることを利用して、前回の制御終了時の電動モータ26の回転角度θmf及び回転角度θmの変化量Δθmに基づいて、電動モータ26の現在の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。
また第四の実施例によれば、非制御時に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化範囲の制約を受けないので、非制御時に於ける電動モータ26の回転角度θmの変化範囲が電動モータ26の電気角で見て360°よりも大きい値であってもよい。
例えば図13に示されている如く、前回の制御終了時に於ける回転角度センサ72の出力信号の信号パターンが「4」であるとすると、前回の制御終了時に於ける回転角度センサ72の出力信号の信号パターンは電動モータ26の電気角で見て360°を越える範囲にある任意の信号パターン、例えば図示の「5」であつてもよい。よって回転角度センサ72の出力信号の信号パターンが「4」の信号パターンであることを判定することにより、制電動モータ26の現在の回転角度θmを容易に且つ確実に判定することができる。
また第四の実施例によれば、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを判定するための要件として制御開始時に運転者によってステアリングホイール12や電動モータ26が特定の位置へ回転操作されることが必要とされる訳ではないので、上述の第一の実施例の場合と同様、後述の第二及び第三の実施例の場合に比して早期に制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを判定することができ、またロック装置56のロックを早期に解除して伝達比可変装置20による伝達比の制御を早期に開始することができる。
また第四の実施例によれば、操舵角θsについては前回の制御終了時及び今回の制御開始時の値が解ればよく、回転角度θmについては前回の制御終了時の値が解ればよく、前回の制御終了時より今回の制御開始時までの一連の値や変化が必要とされる訳ではないので、上述の第一の実施例の場合と同様、例えば前回の制御終了時より今回の制御開始時までの間に車載バッテリが一旦取り外されるような場合にも、制御開始時の電動モータ26の回転角度θmを確実に且つ正確に判定することができる。
また第四の実施例によれば、回転伝達制限機構33の減速比は、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作された場合に、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度が基準相対回転角度範囲(90°)よりも大きさが大きい値になるよう設定されていてもよい。従って上述の第一乃至第三の実施例の場合に比して、回転伝達制限機構33の減速比の制約を受けることを回避することができる。
[第五の実施例]
図8は本発明による車両の操舵制御装置の第五の実施例を示す概略構成図である。尚図8に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。このことは後述の第六乃至第九の実施例についても同様である。
この第五の実施例に於いては、ロック装置56は減速歯車機構27と回転伝達制限機構33との間に設けられており、ロックアクチュエータ62は伝達比可変装置20の円筒部18bの上端に固定されている。従ってこの実施例のロック装置56はロックオン状態に於いてはロアステアリングシャフト18及びウェーブジェネレータシャフト31の互いに他に対する相対回転を阻止する。尚この実施例のロック装置56のソレノイドに対する制御電流は例えば減速歯車機構27の円筒部18bに設けられたスパイラルケーブル装置を経て供給されるようになっていてよい。
この第五の実施例の他の点は上述の第一の実施例の場合と同様に構成されている。従ってウェーブジェネレータシャフト31よりロータ30への回転伝達について見た回転伝達制限機構33の減速比は、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度が上記予め設定された制限相対回転角度範囲内になるよう設定されている。
[第六の実施例]
図9は本発明による車両の操舵制御装置の第六の実施例を示す概略構成図である。
この第六の実施例に於いては、減速歯車機構27のアッパステアリングシャフト16の側のリング歯車部材34はロアステアリングシャフト18の側のリング歯車部材36よりも上方、即ちステアリングホイール12の側に位置している。リング歯車部材34及び外歯歯車部材40は互いに同一の例えば100の如き歯数を有するのに対し、リング歯車部材36はリング歯車部材34及び外歯歯車部材40の歯数とは異なる例えば102の如き歯数を有している。
また減速歯車機構27のディスク部30aは回転軸線14に沿って延在するウェーブジェネレータシャフト90の上端に一体に設けられており、ウェーブジェネレータシャフト90は出力軸としての中空のロアステアリングシャフト18を遊嵌状態にて貫通して下方へ延在している。ロアステアリングシャフト18の上方部の外周にはウォームギヤが設けられており、該ウォームギヤにはアクチュエータ48の回転軸に固定されたピニオンギヤ92が噛合している。従ってこの実施例に於ける電動式パワーステアリング装置42はロアステアリングシャフト18に対し回転付勢力を付与することによりアシストトルクを発生する。ロアステアリングシャフト18の下方部の外周にはピニオンギヤ94が設けられており、ピニオンギヤ94は電動式パワーステアリング装置42のラックバー44のラック歯に係合している。
この第六の実施例のロック装置56は必要に応じてロアステアリングシャフト18及びウェーブジェネレータシャフト90の互いに他に対する相対回転を阻止するようになっている。ロック装置56はウェーブジェネレータシャフト90に例えば圧入により固定された被係合部材としてのロックホルダ58と、ディスク部18aに固定されたマウント60に取り付けられた電磁式のロックアクチュエータ62と、ロックアクチュエータ62により駆動される係合部材としてのロックレバー64とを有している。尚この実施例のロック装置56のソレノイドに対する制御電流も例えば減速歯車機構27の円筒部18bに設けられたスパイラルケーブル装置を経て供給されるようになっていてよい。
ロック装置56は、ロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流が制御されることにより、ロアステアリングシャフト18及びウェーブジェネレータシャフト90の互いに他に対する相対回転を阻止するロックオン状態と、ロアステアリングシャフト18及びウェーブジェネレータシャフト90の互いに他に対する相対回転を許容するロックオフ状態とに切り替わるようになっている。ロック装置56がロックオン状態にあるときには、ロアステアリングシャフト18及びウェーブジェネレータシャフト90は互いに他に対し相対回転することができないので、リング歯車部材36及び外歯歯車部材40は一体的に回転する。リング歯車部材34及び外歯歯車部材40の歯数は互いに同一であるので、これらの歯車部材は互いに他に対し同一の方向へ同一の角度回転し、従ってアッパステアリングシャフト16及びロアステアリングシャフト18は相対回転することなく、あたかも一つのシャフトの如く回転する。
ウェーブジェネレータシャフト90の下端部は回転伝達制限機構33を介して電動モータ26に駆動接続されている。回転伝達制限機構33は電動モータ26のロータ30の下端部に固定された歯車部材33aと、ウェーブジェネレータシャフト90の下端部に固定され歯車部材33aと噛合する歯車部材33bとを有している。
この第六の実施例の他の点は上述の第一の実施例の場合と同様に構成されている。従ってウェーブジェネレータシャフト90よりロータ30への回転伝達について見た回転伝達制限機構33の減速比は、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度が上記予め設定された制限相対回転角度範囲内になるよう設定されている。
[第七乃至第九の実施例]
図10乃至図12はそれぞれ第一、第五、第六の実施例の修正例として構成された本発明による車両の操舵制御装置の第七乃至第九の実施例を示す概略構成図である。
これらの実施例に於いては、アッパステアリングシャフトは第一のアッパステアリングシャフト16aと入力軸として機能する第二のアッパステアリングシャフト16bとよりなっている。ステアリングホイール12は第一のアッパステアリングシャフト16aの上端に連結されている。第一のアッパステアリングシャフト16aは回転軸線14に平行な回転軸線14aの周りに回転可能に支持されており、第一のアッパステアリングシャフト16aの下端及び第二のアッパステアリングシャフト16bの上端は回転伝達制限機構33を介して互いに回転伝達可能に係合している。回転伝達制限機構33は第二のアッパステアリングシャフト16bの上端に固定された歯車部材33aと、第一のアッパステアリングシャフト16aの下端に固定され歯車部材33aと噛合する歯車部材33bとを有している。
第七及び第八の実施例に於いては、電動モータ26は減速歯車機構27より上方にて第二のアッパステアリングシャフト16bの周りに配設され、回転伝達制限機構を介することなくウェーブジェネレータシャフト31を回転軸線14の周りに直接回転駆動するようになっている。従ってウェーブジェネレータシャフト31は電動モータ26のロータ30としても機能し、回転角度センサ72は回転軸線14の周りの車体32に対するウェーブジェネレータシャフト31(ロータ30)の相対回転角度θmの変化量を回転角度変化量Δθmとして検出する。
これに対し第九の実施例に於いては、電動モータ26は減速歯車機構27よりも下方にてウェーブジェネレータシャフト90の周りに配設され、回転伝達制限機構を介することなくウェーブジェネレータシャフト90を回転軸線14の周りに直接回転駆動するようになっている。従ってウェーブジェネレータシャフト90は電動モータ26のロータ30としても機能し、回転角度センサ72は回転軸線14の周りの車体32に対するウェーブジェネレータシャフト90(ロータ30)の相対回転角度θmの変化量を回転角度変化量Δθmとして検出する。
第八及び第九の実施例のロック装置56はそれぞれ上述の第五及び第六の実施例のロック装置56と同様に設けられ同様に機能するようになっているが、第七の実施例のロック装置56はロックオン状態に於いては第二のアッパステアリングシャフト16b及びウェーブジェネレータシャフト31の互いに他に対する相対回転を阻止する。第七乃至第九の何れの実施例に於いても、ステアリングホイール12に設けられたエアバッグや各種スイッチ等の電装部品に対する制御電流は第一のアッパステアリングシャフト16aに設けられたスパイラルケーブル装置66aを経て供給される。特に第七の実施例に於いては、ロック装置56のロックアクチュエータ62のソレノイドに対する制御電流は第二のアッパステアリングシャフト16bに設けられたスパイラルケーブル装置66bを経て供給される。
第七乃至第九の実施例の他の点はそれぞれ上述の第一、第五、第六の実施例の場合と同様に構成されている。従ってウェーブジェネレータシャフト31又は90よりロータ30への回転伝達について見た回転伝達制限機構33の減速比は、ロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度が上記予め設定された制限相対回転角度範囲内になるよう設定されている。
尚上述の第五乃至第九の実施例に於ける伝達比可変装置20及びロック装置56の制御は、図4乃至図7の何れかに示されたフローチャートに従って制御されてよく、従って第五乃至第九の実施例によれば、伝達比可変装置20及びロック装置56の制御に応じて上述の第一乃至第四の実施例の何れかの場合と同一の作用効果を得ることができる。
また一般に、電動モータ26や回転角度センサ72の極数を少なくすれば、電動モータ26の360°の電気角に対応する電動モータ26の回転角度や回転角度センサ72の予め設定された相対回転角度範囲を大きくすることができるが、その場合には電動モータ26の回転角度の制御精度が低下し、これに起因して伝達比可変装置20による伝達比の制御精度が低下する。
これに対し上述の各実施例によれば、上述の如くロック装置56がロックオン状態にある状況に於いてステアリングホイール12がその最大回転可能範囲に亘り回転操作されても、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度は回転角度センサ72の予め設定された相対回転角度範囲未満であるので、電動モータ26や回転角度センサ72の極数を少なくする必要がなく、これにより電動モータ26の回転角度の制御精度を確保し、伝達比可変装置20による伝達比の良好な制御精度を確保することができる。
また一般に、回転角度センサ72の磁気センサの数を多くすれば、電動モータ26や回転角度センサ72の極数を少なくしても、電動モータ26の回転角度の制御精度が低下したり伝達比可変装置20による伝達比の制御精度が低下したりすることを抑制することができる。しかしその場合には電動モータ26の円滑な回転動作を確保することが困難になると共に、磁気センサの数が多くなることに起因して高コスト化が避けられず、また回転角度センサの信号パターンの数が多くなるので回転角度の判定が煩雑になる。
これに対し上述の各実施例によれば、回転角度センサ72の磁気センサの数を多くする必要がなく、また電動モータ26や回転角度センサ72の極数を少なくする必要がないので、電動モータ26の円滑な回転動作を確保することができ、また磁気センサの数が多くなること及びこれに起因する高コスト化を確実に回避することができ、更には回転角度センサの信号パターンの数が多くなることを確実に回避することができる。
特に第一乃至第六の実施例によれば、回転伝達制限機構33は電動モータ26のロータ30と減速歯車機構27のウェーブジェネレータシャフト31との間に設けられ、これらの間にて回転伝達を行うので、ロック装置56がロックオフ状態にあるときにも、アッパステアリングシャフト16の回転運動量はステアリングホイール12の回転運動量と同一である。よってロック装置56がロックオフ状態にある状況に於いて回転伝達制限機構33がステアリングギヤ比に影響することを確実に回避することができる。
また第七乃至第九の実施例によれば、回転伝達制限機構33は上端にてステアリングホイール12に連結された第一のアッパステアリングシャフト16aと下端にて減速歯車機構27に連結された第二のアッパステアリングシャフト16bとの間に設けられ、これらの間にて回転伝達を行い、電動モータ26はロータ30として機能するウェーブジェネレータシャフト31又は90を直接回転駆動するので、ロータ30の回転が増速されてウェーブジェネレータシャフト31又は90へ伝達されること、換言すれば伝達比可変装置20による伝達比の制御精度の低下を確実に回避することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例に於いては、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度を検出する回転角度検出手段としての回転角度センサ72は回転軸線30a又は14aの周りの45°の角度範囲毎に交互に配列されたN極及びS極の永久磁石71と、45°の角度範囲に於いて均等な角度互いに隔置された三つの磁気センサ73a〜73cとを有し、ロータ30の回転に伴って出力パターン1〜6の信号を出力するようになっているが、ステータ28に対するロータ30の相対回転角度を示す出力信号であって、予め設定された基準相対回転角度範囲を1サイクルの範囲として一定の繰り返しサイクルにて出力信号を発生するものである限り、回転角度検出手段はホールIC型の回転角度検出手段に限らず、例えばアナログ式のロータリエンコーダの如く当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
例えば永久磁石71の極数が8以外に設定されてもよく、また磁気センサの数が3以外に設定されてもよい。また上述の各実施例に於いては、回転角度センサ72の永久磁石71の極数は電動モータ26の極数と同一であるが、電動モータ26の極数と異なっていてもよい。
また上述の各実施例に於いては、伝達比可変装置20は回転アクチュエータとしての電動モータ26及び減速歯車機構27を有し、減速歯車機構27は特定の波動歯車機構を有するものであるが、減速歯車機構は当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
また上述の各実施例に於いては、ロック装置56はロックレバー64がロックアクチュエータ62によって駆動されることにより、ロックホルダ58との係合が制御されるようになっているが、ロック装置56はアッパステアリングシャフト16及びロアステアリングシャフト18の相対回転を阻止し得ると共に、ロックオン状態にあるときにも電動モータ26のロータ30がステータ28に対し相対的に回転可能なものである限り、当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
本発明による車両の操舵制御装置の第一の実施例を示す概略構成図である。 伝達比可変装置の波動歯車機構を回転軸線に垂直な切断面にて切断して示す断面図である。 第一の実施例に於ける回転角度センサを示す断面図である。 第一の実施例に於ける伝達比可変装置及びロック装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の操舵制御装置の第二の実施例に於ける伝達比可変装置及びロック装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の操舵制御装置の第三の実施例に於ける伝達比可変装置及びロック装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の操舵制御装置の第四の実施例に於ける伝達比可変装置及びロック装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の操舵制御装置の第五の実施例を示す概略構成図である。 本発明による車両の操舵制御装置の第六の実施例を示す概略構成図である。 第四の実施例の修正例として構成された本発明による車両の操舵制御装置の第七の実施例を示す概略構成図である。 第五の実施例の修正例として構成された本発明による車両の操舵制御装置の第八の実施例を示す概略構成図である。 第六の実施例の修正例として構成された本発明による車両の操舵制御装置の第九の実施例を示す概略構成図である。 第一の実施例に於いて回転角度センサの出力信号の信号パターンに基づいて電動モータの現在の回転角度θmを判定する要領を示す説明図である。 第二の実施例に於いて回転角度センサの出力信号の信号パターンに基づいて電動モータの現在の回転角度θmを判定する要領を示す説明図である。 第三の実施例に於いて回転角度センサの出力信号の信号パターンに基づいて電動モータの現在の回転角度θmを判定する要領を示す説明図である。 第四の実施例に於いて電動モータの現在の回転角度θmを判定する要領を回転角度センサの出力信号の信号パターンについて示す説明図である。
符号の説明
10…操舵制御装置、12…ステアリングホイール、16…アッパステアリングシャフト、18…ロアステアリングシャフト、20…伝達比可変装置、24…運動変換機構、26…電動モータ、27…減速機構、28…ステータ、30…ロータ、31…ウェーブジェネレータシャフト、32…車体、33…回転伝達制限機構、34、36…リング歯車部材、40…外歯歯車部材、42…パワーステアリング装置(EPS)、56…ロック装置、58…ロックホルダ、62…ロックアクチュエータ、64…ロックレバー、66…スパイラルケーブル装置、68…操舵角センサ、70…電子制御装置、72…回転角度センサ、74…車速センサ、80…トルクセンサ、90…ウェーブジェネレータシャフト

Claims (9)

  1. ステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、
    前記回転角度検出手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を示す出力信号であって、予め設定された基準相対回転角度範囲を1サイクルの範囲として各基準相対回転角度範囲毎に一定の繰り返しサイクルにて出力信号を発生し、前記操舵制御装置は前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときに前記ステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合の前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度が前記基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、前記入力軸より前記ロータへの回転伝達を制限する回転伝達制限機構を有し、前記制御手段は前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化可能範囲を推定し、前記回転角度検出手段の出力信号と推定された前記相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて現在の前記相対回転角度を推定することを特徴とする車両の操舵制御装置。
  2. 前記制御手段は前記入力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段を有し、少なくとも前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置に基づいて、前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化可能範囲を推定し、制御を開始する際に前記回転角度検出手段の出力信号と推定された前記相対回転角度の変化可能範囲とに基づいて前記相対回転角度を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵制御装置。
  3. 前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と前記入力軸の回転可能範囲とに基づいて前記入力軸の回転位置の変化可能範囲を推定し、前記入力軸の回転位置の変化可能範囲に基づいて前記相対回転角度の変化可能範囲を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵制御装置。
  4. 前記ロック装置は制御が開始された後も前記ロックオン状態に維持され、前記制御手段は前記入力軸が回転限界位置へ回転されたときに前記相対回転角度の変動可能範囲を判定すると共に、前記回転角度検出手段の前記出力信号と前記相対回転角度の変動可能範囲とに基づいて現在の前記相対回転角度を推定し、前記ロック装置が前記ロックオフ状態に切り替えられることを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵制御装置。
  5. ステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、
    前記回転角度検出手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を示す出力信号であって、予め設定された基準相対回転角度範囲を1サイクルの範囲として各基準相対回転角度範囲毎に一定の繰り返しサイクルにて出力信号を発生し、前記操舵制御装置は前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときに前記ステアリングホイールが最大回転可能範囲に亘り回転された場合の前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度が前記基準相対回転角度範囲よりも小さい制限相対回転角度範囲内になるよう、前記入力軸より前記ロータへの回転伝達を制限する回転伝達制限機構を有し、前記ロック装置は制御が開始された後も前記ロックオン状態に維持され、前記制御手段は前記相対回転角度が前回の制御を終了した際の値になったときに当該値を現在の前記相対回転角度と推定し、前記ロック装置が前記ロックオフ状態に切り替えられることを特徴とする車両の操舵制御装置。
  6. ステアリングホイールと共に回転可能に支持された入力軸と、回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の回転運動を操舵輪の舵角変更運動に変換する運動変換機構と、前記入力軸に対し相対的に前記出力軸を回転させることにより前記入力軸の回転運動量に対する前記出力軸の回転運動量の比である伝達比を変更する伝達比可変装置と、前記伝達比の変化を阻止するロックオン状態と前記伝達比の変化を許容するロックオフ状態とに切り替わるロック装置と、前記伝達比可変装置を制御する制御手段とを有し、前記伝達比可変装置は前記車両の車体に固定されたステータと該ステータに対し相対的に回転駆動されるロータとを含む電動モータと、前記ロータの回転を減速して前記出力軸へ伝達する減速機構とを有し、前記制御手段は前記ステータに対する前記ロータの相対回転角度を検出する回転角度検出手段を含み、前記回転角度検出手段により検出される前記相対回転角度に基づいて前記電動モータを制御し、前記ロック装置は前記制御手段が制御を終了する際に前記ロックオフ状態より前記ロックオン状態に切り替えられ、前記ロータは前記ロック装置が前記ロックオン状態にあるときにも前記ステータに対し相対的に回転可能である車両の操舵制御装置に於いて、
    前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と制御を開始する際の前記入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記相対回転角度の変化量を推定し、前回の制御を終了した際の前記相対回転角度と前記相対回転角度の変化量とに基づいて制御を開始する際の前記相対回転角度を推定することを特徴とする車両の操舵制御装置。
  7. 前記制御手段は前回の制御を終了した際の前記入力軸の回転位置と制御を開始する際の前記入力軸の回転位置とに基づいて前回の制御を終了した後制御を開始するまでに於ける前記入力軸の回転位置の変化量を推定し、前記入力軸の回転位置の変化量と前記入力軸の回転角度に対する前記ロータの回転角度の比とに基づいて前記相対回転角度の変化量を推定することを特徴とする請求項6に記載の車両の操舵制御装置。
  8. 前記制限相対回転角度範囲は前記電動モータの電気角で見て360°未満の相対回転角度であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の車両の操舵制御装置。
  9. 前記回転角度検出手段は各基準相対回転角度範囲に於いて複数の互いに異なる一定の信号パターンよりなる出力信号を発生し、各信号パターンは各基準相対回転角度範囲内に於ける前記ステータに対する前記ロータの単位相対回転角度範囲に対応していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の車両の操舵制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014118914A (ja) * 2012-12-18 2014-06-30 Suzuki Motor Corp 電子制御スロットル装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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