JP2009286818A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 着色剤と、水と、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種のワックスエマルションを含有するボールペン用水性インキ組成物。前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
【選択図】 なし
Description
前記ボールペンのうち、特に出没式機構を有するものはキャップ式のものと比べ、優れた筆記性能や保管時の性能(所謂垂れ下がりやボタ落ち性能)を長期間維持するためのインキ調製が必要とされる。例えば、内蔵されるインキが比較的高粘度である場合、ペン先からのインキの垂れ下がりをある程度抑制できるものの、筆記感が重くなったり、筆跡に線割れを生じる等、筆記性能を悪化する虞がある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記筆記性能を満足するために低粘度のインキを用いた際には、筆記時に紙繊維等をボールと小口の間に挟みこんだり、落下等によりチップ先端が傷付いたり変形することで不用意にインキ流通路が広がってしまった場合、インキの垂れ下がりやボタ落ちを生じることがある。これを抑制するために着色剤等によりインキ中の固形分を増量する試みも行われるが充分な効果は得られず、ペン先部が短時間で乾燥(ドライアップ)してしまい、筆跡にカスレ等を生じるものとなる。
更に、前記インキ組成物の粘度が、20℃、30rpmでの回転粘度計による測定値が1〜20mPa・sの範囲にあると共に、剪断減粘指数が、0.6〜1.0の範囲にあることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、前記ボールペンが0.7mm以上のボールを筆記先端部に備えること、前記ボールペンが、水性インキ組成物をレフィル内に内蔵したボールペンレフィルを1本又は複数本収容し、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式形態であることを要件とする。
0.05重量%以下ではインキ中のイオン性物質(例えば染料成分等)との反応量が充分ではなく、又、5重量%を越えて配合すると反応物(微粒子)が多量に生成されるためにインキの流通が阻害される虞が生じる。
尚、前記酸化ポリエチレンや酸化ポリプロピレンを水性インキ中でより安定して分散させるために、ワックスタイプのものをエマルションとした状態で使用することが好ましい。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、香料又は香料カプセル顔料などを例示できる。
尚、顔料を用いる場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。
前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子等が用いられる。
前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもできる。
その他、必要に応じてpH調整剤、防錆剤、防腐剤或いは防黴剤、潤滑剤、湿潤剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
前記湿潤剤としては、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
尚、インキの剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。
前記物性のインキは、高粘度のものや剪断減粘指数が低いものに比べて、保管状態での垂れ下がりやボタ落ちを生じ易いため、より有効に作用し、垂れ下がり防止と耐ドライアップ性を満足させると共に、筆記性能、即ち、筆記感、初期書き出し、筆跡の乾燥性や良好な筆跡の形成等を満足させることができる。
尚、前記剪断減粘指数とは、粘度計による剪断応力値(T)及び剪断速度(j)値の流動学的測定により導かれる、実験式(T=Kjn:但し、Kは計算された定数である)を適用して計算されるn値である。
キャップ式ボールペンとしては、ボールペンチップが直接又は接続部材を介して連結されるインキ収容管を軸筒(外軸)又はレフィル(外軸内に収容するもの)として用い、該インキ収容管内にインキを直接収容したものが適用できる。
前記インキ収容管としては、金属加工体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体が用いられる。尚、前記樹脂製のインキ収容管においては、透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等が確認できるものとなる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面(窓孔内)にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。また、スライド式筆記具としては、前記スライド部と接続された状態のレフィルが窓孔後端等から交換可能な構造の多芯筆記具も例示できる。
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm、より好ましくは0.7〜1.6mmのボールが有効であり、前記チップのボール抱持部の内径とボールとの径方向の可動距離は10〜50μm、ボールの軸方向の可動距離は10〜30μmの範囲であることが好ましい。
尚、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することもできる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、10〜40gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
以下の表に実施例及び比較例の水性インキの組成、粘度、剪断減粘指数を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
各実施例、比較例のインキ粘度は、20℃でB型回転粘度計〔東京計器(株)製〕を用いて30rpmで測定した。また、剪断減粘指数は各インキ粘度の測定値より算出した値である。
(1)オリエント化学工業(株)製、C.I.ダイレクトブラック154、商品名:フィスコブラック886(有効成分15%)
(2)アイゼン保土谷(株)製、C.I.45410、商品名:フロキシン
(3)住友化学工業(株)製、C.I.42655、商品名:アシッドブルーPG
(4)酸化ポリエチレンワックスエマルション、明成化学工業(株)製、商品名:メイカテックスPENO(有効成分:25%)
(5)酸化ポリプロピレンワックスエマルション、明成化学工業(株)製、商品名:メイカテックスAP−1550(有効成分:40%)
(6)太陽化学(株)製、商品名:サンカラ634
(7)BASF社製、商品名:ルビスコールK−30
(8)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸モノエステル及びジエステル混合物
(9)1,2−ベンズチアゾリン−3−オン、アビシア(株)製、商品名:プロキセルXL−2
各実施例、比較例に記載された原料を混合して室温でディスパーにて攪拌した後、濾過することによりインキを作製した。
ボールペンレフィルは、先端部に直径0.7mmのボールを回転可能に抱持したボールペンチップ(ボールを前方に弾発するボール押しバネを収容する)と、該ボールペンチップが前部に固着された接続部材と、該接続部材が先端開口部に固着され、且つ、内部に各インキ及びインキ逆流防止体が収容されたインキ収容管と、該インキ収容管の後端開口部に固着された尾栓からなる。尚、前記インキ逆流防止体は、基油としてポリブテン、増粘剤として脂肪酸アマイドを用いて混練したインキ逆流防止体である。
試料ボールペンは、軸筒の後部外面にクリップを形成すると共に、軸筒の内部には、前記各ボールペンレフィルがコイルスプリングにより後方付勢状態で収容され、軸筒の後端部(ノック操作部)を前方へノック操作することにより軸筒の先端孔よりボールペンチップが外部に突出する機構を備えたものである。
垂れ下がり試験
各ボールペンのボールペンチップ先端に小傷を付けた後、温度20℃、相対湿度60%の雰囲気下にペン先下向き(出没状態)で20時間放置し、チップ先端の外観を目視で観察した。
耐ドライアップ試験
各ボールペンを横置き(出没状態)で温度20℃、相対湿度40%の雰囲気下に60日間放置した後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで丸を1行に12個筆記し、何個目から正常な筆跡が得られるかを目視により観察した。
垂れ下がり試験
○:インキの垂れ下がりが認められない。
△:チップ先端にインキ小滴が認められる。
×:インキの垂れ下がりが認められる。
耐ドライアップ試験
○:書き出し1丸以内に正常な筆跡が得られる。
△:1行以内に筆記可能。
×:1行以内に筆記できない、或いは筆記不能。
Claims (5)
- 着色剤と、水と、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールと、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種のワックスエマルションを含有するボールペン用水性インキ組成物。
- 前記インキ組成物の粘度が、20℃、30rpmでの回転粘度計による測定値が1〜20mPa・sの範囲にあると共に、剪断減粘指数が、0.6〜1.0の範囲にある請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
- 前記ボールペンが0.7mm以上のボールを筆記先端部に備える請求項3記載のボールペン。
- 前記ボールペンが、水性インキ組成物をレフィル内に内蔵したボールペンレフィルを1本又は複数本収容し、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式形態である請求項3又は4に記載のボールペン。
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