JP2009283601A - 検出装置、受光素子アレイおよびその製造方法 - Google Patents

検出装置、受光素子アレイおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1.7μmを超える波長域に受光感度をもち、応答性に優れ、暗電流の低いInGaAs受光素子アレイ、その製造方法および検出装置を提供する。
【解決手段】InP基板1上に、受光素子10が、複数、配列された受光素子アレイであって、In組成が0.53を超えるInGaAs受光層3と、n型窓層4とを備え、その窓層はn型キャリア濃度1×1016/cm3以上を有し、受光素子の受光領域のpn接合またはpin接合17を形成するためのp型領域15は、上記の窓層からInGaAs受光層へと導入されたp型不純物によって形成され、そのp型領域は、窓層において上記のn型キャリア濃度の周囲領域19に囲まれている。
【選択図】図2

Description

本発明は、検出装置、受光素子アレイおよびその製造方法に関し、より具体的には、近赤外域に受光感度を有する受光素子アレイ、その製造方法およびその受光素子を備えた撮像装置やセンサなどの検出装置に関するものである。
近赤外の波長域は、動植物などの生体や環境に関連した吸収スペクトルに対応するため、受光層にIII−V族化合物半導体を用いた近赤外〜赤外域の受光素子の開発が盛んに行われている。その中でInP基板に格子整合するIn0.53Ga0.47As半導体(カットオフ波長1.7μm)は、良好な結晶を得ることができるので、ラインセンサや撮像装置への用途を目的に、一次元または二次元に配列した受光素子アレイの開発がなされている(非特許文献1)。また、さらに長波長域に受光感度を拡大するために、In組成を0.53より高くした受光素子について、概括的な解説がなされている(非特許文献2)。この解説には、In組成0.53以下の受光素子も含まれている。
In組成0.53を超えたInGaAs受光層は、InP基板と格子整合がとれないため、InP基板上にグレーディドバッファ層を介在させて徐々に格子定数を変えて当該InGaAs受光層を形成する手法が提案されている(特許文献1)。しかし、グレーディドバッファ層を介在させる手法では、十分良好な結晶を得ることはできず、この結果、実用レベルにまで暗電流を低くすることが難しい。このため、受光層内にpn接合を設ける構造に代えて、InAsP窓層内にpn接合を形成し、空乏層をInAsP窓層内に限定する構造が提案された(特許文献2)。この構造によれば、受光層内で発生した受光による光電荷は拡散によって空乏層に移動し、その後、空乏層内の電界によって移動し、光電流を発生するので、暗電流を低下させることができる。その他に、窓層を薄くすることによって、受光感度を向上させる提案もなされている(特許文献3)。
A.R.Sugg,M.J.Lange, M.H.Ettenberg, M.J.Cohen, G.H.Olsen," InGaAs/InP lineardetector arrays for spectroscopic and imaging applications on 75 mm substrates",1998 IEEE ThH5,9 9:15am-9:30am,pp.73-74 田中章雅,"アイセーフ波長及び中赤外域検知器の最近の進展",レーザー研究,第25巻第1号,pp25-28 特開2002−373999号公報 特開2002−151727号公報 特開平6−188447号公報
撮像装置などを視野において近赤外域の受光素子の実用化をはかる場合、受光素子のアレイ化は必須であり、受光素子アレイの状態で暗電流を低くしなければならない。しかし、受光素子をアレイ化したときに、単一の受光素子における暗電流とは異なる、隣接する受光素子間で生じるとおもわれる大きな暗電流が生じる。特許文献2および3の手法は、上記の受光素子アレイの暗電流抑制については、とくに効果が薄く、また単一の受光素子についても不十分である。そして、その他の機能の劣化を伴う。たとえば、特許文献2におけるように、暗電流を低減するために空乏層を窓層内に限定すると、充分な感度が得られない。充分な感度を得るために逆バイアス電圧を高くすると、この逆バイアス電圧に起因する暗電流が増加してしまう。とくに受光素子アレイでは、逆バイアス電圧増大に起因する暗電流は大きなものとなる。また、特許文献3におけるように、窓層を単に薄くして感度を高くする手法には、p型不純物を拡散導入してpn接合を形成する場合には、拡散深さの制御が十分できないため、限界がある。
本発明は、1.7μmを超える波長域に受光感度をもち、暗電流の低いInGaAs受光素子アレイ、その製造方法およびそのInGaAs受光素子アレイを用いた検出装置を提供することを目的とする。
本発明の受光素子アレイは、InP基板上に形成されたIII−V族化合物半導体の1つのエピタキシャル積層体に、受光素子が、複数、配列された受光素子アレイである。この受光素子アレイは、In組成が0.53を超えるInGaAs受光層と、InGaAs受光層に接して位置するn型窓層とを備える。その窓層はn型キャリア濃度1×1016/cm3以上を有し、受光素子の受光領域のpn接合またはpin接合を形成するためのp型領域は、上記のn型キャリア濃度をもつ窓層から前記InGaAs受光層へと導入されたp型不純物によって形成され、そのp型領域は、窓層においてn型キャリア濃度の周囲領域に囲まれていることを特徴とする。
上記の構造によれば、各受光素子の受光領域はn型不純物濃度が高い周囲の窓層で分離されることになる。このため、p型不純物の拡散導入の際に、隣の受光領域からp型不純物が拡散し、滲んできても、受光領域の周囲の窓層はp型化することがないので、隣接受光領域どうしの短絡などを防止して、暗電流を低減することができる。このため、ノイズの小さいセンサまたは撮像装置を得ることができる。このために必要な窓層のn型キャリア濃度は、1×1016/cm3以上とするが、上限は良好な結晶性を保つために、1×1018/cm3以下とするのがよい。p型不純物の選択拡散においては、InGaAs受光層3上にエピタキシャル成長されたn型InAsP窓層のn型キャリア濃度を超えるp型不純物を導入して、p型領域とする必要がある。
上記の窓層の厚みは0.8μm以下とするのがよい。窓層の厚みが0.8μm以下であれば、横方向(隣の受光素子方向)へのp型不純物の拡散距離を長くすることなく、深さ方向にp型領域を形成することで、pn接合またはpin接合を形成することができる。このため、隣の受光領域と短絡を生じるのを防止することができ、横方向に流れる暗電流の増大を防止することができる。窓層の厚みは、できるだけ薄いほうが好ましい。ただし、窓層の厚みを0.2μmより小さくすると、非常に短時間の拡散処理となってp型不純物の拡散深さのばらつきが無視できなくなる。この結果、意図した位置にpn接合またはpin接合を形成することが困難になる。この問題が解消できるならば、0.2μmより薄くしてもよい。
上記のInGaAs受光層のn型キャリア濃度を、1×1016/cm3以上とすることができる。これによって、窓層における場合と同様に、受光領域の受光層どうしの短絡を防止することができ、この結果、暗電流を小さくすることができ、またそのためにノイズの小さいセンサを得ることができる。上記の目的の達成のために、InGaAs受光層のn型キャリア濃度は、1×1016/cm3以上とするのがよい。また、受光層のn型キャリア濃度の上限は結晶性の良好さを保つために、1×1018/cm3以下とするのがよい。
p型不純物の導入によって形成されたp型領域は、受光層に届き、該受光層の窓層側の面から0.5μm以内の深さ範囲になるように形成されるのがよい。これによって空乏領域を受光層内に形成することができる。このため、大きな逆バイアス電圧を印加しなくても、長波長側の近赤外光について高い受光感度を得ることができる。そして、大きな逆バイアス電圧をかけないので、暗電流が小さい状態で使用することができ、かつ空乏層が受光層に広がるので応答性を損なうことがない。
上記のInGaAs受光層のIn組成を0.6以上0.85以下とすることができる。これによって、InP基板を用いながら、1.8μmを超える波長域の近赤外光に対しても受光感度を得ることができる。この結果、バイオ、生体関連、環境関連の大きな分野に対応することができる。
InP基板とInGaAs受光層との間に、複数層からなるグレーディドバッファ層を介在させることができる。これによって、InP基板に格子整合しない、カットオフ波長が1.7μm以上のバンドギャップエネルギをもつエピタキシャルInGaAs層を、それほど大きな結晶欠陥密度を内在させずに、使用実績のあるInP基板上に形成することができる。
受光素子間のスペースを、2μm以上40μm以下とすることができる。この構成によって高集積化ができ、たとえば受光素子の配列ピッチを20μm以上50μm以下とすることによって、2インチウエハに10万画素クラスの二次元アレイを数個得られるようになり、歩留りを考慮しても、実用化の見込みを得ることができる。スペースがさらに小さくなると、窓層のn型不純物濃度の上昇や、窓層の薄肉化によっては、隣の受光素子との電気的短絡を防止できない。
本発明の受光素子アレイの製造方法は、InP基板上に位置するIII−V族化合物半導体の1つのエピタキシャル積層体に、受光素子が、複数、配列された受光素子アレイの製造方法である。この方法は、InP基板上に、In組成が0.53を超えるInGaAs受光層を形成する工程と、InGaAs受光層の上に接してn型キャリア濃度1×1016/cm3以上の窓層を形成する工程と、受光素子の受光領域に対応するように開口部を有するマスクパターンを窓層上に形成する工程とを備える。そして、400℃以上600℃以下の温度で、p型不純物を開口部の窓層から拡散させて受光領域にpn接合またはpin接合を形成する工程とを備えることを特徴とする。
上記の製造方法によれば、各受光領域に同じように急峻なp型領域が得られる。このため、隣り合う受光素子間の短絡が生じることなくpn接合またはpin接合を形成することができる。この結果、波長1.7μmを超える波長域に感度をもち、暗電流が低い受光素子アレイを得ることができる。
本発明の検出装置は、撮像装置、センサなどの検出装置であって、上記のいずれか一つの受光素子アレイ、または上記の製造方法で製造された受光素子アレイを備え、各受光素子から信号を読み出し電気信号を出力するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を備えることを特徴とする。これによって、上記の各受光素子アレイの特徴を備えた検出装置を得ることができる。
本発明によれば、1.7μmを超える波長域に受光感度をもち、暗電流の低いInGaAs受光素子アレイおよびその製造方法を得ることができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における受光素子アレイ50を用いた撮像装置を光入射側から見た平面図である。素子数や素子サイズ等を示しているが、あくまで例示である。この例示の場合、横14mm×縦12mmのアレイサイズに320×256個の受光素子10が配列されている。図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。この撮像装置50は、窓層4またはp側電極12の側をCMOSのマルチプレクサに接合バンプ22によって電気接続するエピダウン実装、すなわち裏面入射の配置をとる。受光素子の二次元アレイの場合、各受光素子のp側電極からの配線を光入射側で交差させることは好ましくないので、裏面入射の構造をとることになる。
図2の受光素子アレイ50の積層構造は、裏面側からエピタキシャル層側へと順に、次のものから形成されている。
(AR(Anti-Reflection)膜29/InP基板1/n型グレーディドバッファ層2/アンドープまたは低濃度n型InGaAs受光層3/n型InAsP窓層4/Zn選択拡散用マスクパターン5/絶縁保護膜9)
各受光素子10は、pn接合またはpin接合17が形成された領域に対応させて、中央部に受光領域10aを有する。
pn接合17は、Zn選択拡散用マスクパターン5の開口部からn型InAsP窓層4を通してInGaAs受光層3に至るように形成されたp型領域15と、InGaAs受光層3とで形成される。ただし、p型領域15が選択拡散により導入されるので、p型領域15と、その周囲のn型InAsP窓層4または周囲領域19との間でもpn接合17は形成される。p型領域15を形成したあとのInAsP窓層4内で、p型領域15を囲む周囲領域19は、もとのn型InAsP窓層4のn型不純物濃度をほぼ引き継ぐことになる。なお、Zn拡散導入する前はn型InAsP窓層4の部分をp型領域15とするのであるから、拡散導入されるp型不純物すなわちZnは、n型InAsP窓層4のn型キャリア濃度を超えるように導入することは言うまでもない。
p型領域15の形成のための選択拡散の際に、p型不純物またはZnが横方向に拡散して、p型領域15に近接する部分にp型不純物濃度の分布がある。しかし、そのような横方向へのp型不純物の拡散が相当程度あっても、周囲領域19は、確実にn型領域を維持し、p型化させない点に本発明の実施の形態におけるポイントがある。すなわちn型InAsP窓層4を成膜する際に、そのような比較的高いn型キャリア濃度とすることに、主要なポイントがある。この発明の実施の形態におけるポイントについては、順を追って説明してゆく。
n側電極11は、全受光素子10に共通に、n型グレーディッドバッファ層2にアースをとる形で電気的に接続されている。また、p側電極12は、受光素子10ごとに、p型領域15に電気的に接続され、受光素子から個別に光信号を読み出すための電極となる。受光素子アレイ50は、p側電極12を通じて、受光素子10ごとにCMOS21の電極パッドに位置する接合バンプ22に接続されている。CMOS21は、受光素子10からの光電変換された電荷を画素信号として読み出し、次いで電荷信号を電圧信号に変換し、かつ増幅して信号処理部に出力する。
(1)InGaAs受光層3およびグレーディドバッファ層2
図2に示すInGaAs受光層3は、カットオフ波長を1.7μmよりも大きくするために、In組成が0.53よりも大きいIn0.8Ga0.2Asとしている。すなわちバンドギャップエネルギを小さくするためにIn組成を0.8にして、その結果、格子定数は、InP基板1と格子整合するIn組成0.53のIn0.53Ga0.47Asよりも大きくなる。このため、In0.8Ga0.2Asは、InP基板1と格子整合しないことになり、そのままInP基板1に成長させたのでは、格子欠陥密度は非常に高くなるか、またはエピタキシャル層と呼べる受光層を得ることが難しい。このため、InP基板1の格子定数からIn0.8Ga0.2As受光層3の格子定数へと徐々に大きくなるように、グレーディドバッファ層またはステップバッファ層2を介在させる。1層ごとに格子定数を少しずつ大きくしながら積層したグレーディドバッファ層2は、しかしながら、何十層と積層しても、下地とは常に格子定数の相違があるので、格子欠陥が上層へと、順次、増加され累積されてゆく。このため、それほど結晶性の良好なIn0.8Ga0.2As受光層3が得られるわけではない。このため、暗電流は実用レベルで問題にならないほど低減することはできない。なお、In0.8Ga0.2As受光層3は、波長2.6μmまで受光感度を持つことができる。
(2)窓層4およびp型不純物の拡散導入
上記(1)は、単一の受光素子においても問題されることであるが、受光素子アレイ50においては、さらに次のような問題が加わる。グレーディドバッファ層2の介在によって、In0.8Ga0.2As受光層3は結晶性が良くないながらエピタキシャル膜を得ることができるが、そのIn0.8Ga0.2As受光層3に接して形成されるInAsP窓層4も下地であるIn0.8Ga0.2As受光層3の格子欠陥を引き継ぐため、それほど良好な結晶性のエピタキシャル層とはならない。pn接合17を形成するために、p型不純物のZnを選択拡散させるとき、InAsP窓層4を通してIn0.8Ga0.2As受光層3に届くように、温度および時間を設定する。このとき、InAsP窓層4の格子欠陥密度が高いために、Znは格子欠陥を伝って、通常の結晶中の拡散速度よりも大きな速度で拡散すると考えられる。たとえば、原子は、結晶粒内を拡散する場合よりも格子欠陥密度の高い結晶粒界を拡散するほうが拡散速度は大きいことが知られている。
このような格子欠陥を伝って拡散する不純物量は、結晶中を拡散する不純物量に比べればわずかであるため、pn接合を形成するための深さ方向への拡散という点についてみれば大きな問題とならない。しかし、格子欠陥を伝って横方向へ拡散するZnについては、わずかな量といっても、隣り合う受光素子が短いピッチで配列される受光素子アレイ50では、大きな問題となる。受光素子アレイ50の場合、仮に隣の受光素子10にZnが拡散して隣のp型領域15と連続した場合、電気的に短絡された状態が発生し、暗電流は大きなものとなる。すなわち横方向に延びるZn分布によってp型配線が形成されると、受光素子のp型領域15が接続され、暗電流は大きなものとなる。本発明は、このような、カットオフ波長1.7μmを超える長波長域の近赤外光に受光感度をもつ受光素子アレイにおける暗電流を低減することを目的としており、この問題を解決するための本発明の実施の形態のポイントを次に示す。
(3)本発明の実施の形態のポイント
図3は、本発明の実施の形態のポイントを説明するための図である。図3に示す構成では、次の点(P1)および(P2)に特徴を有する。
(P1)n型InAsP窓層4を成膜するとき、通常は、n型キャリア濃度を低くするのに対して、本実施の形態では1×1016/cm3以上として、中濃度以上とする。このように、pn接合17を形成するためにp型不純物を選択拡散する前のn型InAsP窓層4のn型キャリア濃度を中濃度以上とすることで、p型不純物のZnが格子欠陥を伝って横方向に拡散して隣の受光素子のp型領域15に到達しても、その量はわずかであるので、隣の受光素子10との間にn型のままの周囲領域19、すなわち元のn型InAsP窓層4が位置することになる。すなわち、横方向に延びてp型領域15どうしを接続するp型配線が形成されず、n型の周囲領域19が、受光素子10間に位置して、各受光素子を分断する。このため、電気的に障壁が形成されるため、たとえ少量のZnが隣のp型領域に届いても電気的な短絡を生じることにはならず、隣の受光素子間の短絡に起因する暗電流の増加を防止することができる。この特徴(P1)のみでも、本発明の受光素子アレイにおける暗電流を抑制することは、十分可能である。しかし、さらに確実に暗電流の抑制をはかる場合には、本実施の形態におけるように、次の特徴(P2)を併せて行うことができる。
(P2)n型InAsP窓層4の厚みを0.8μm以下と薄くする。p型領域15は、In0.8Ga0.2As受光層3に届くように形成されるが、In0.8Ga0.2As受光層3の上層部分、すなわち受光層3の上面から0.5μm以内の部分に形成されるのがよい。このため、p型不純物のZnの選択拡散では、窓層4の上面から1.5μm以内、望ましくはその数分の一の深さにZnを拡散させればよい。このため、選択拡散の温度および時間条件について、温度はたとえば拡散種の昇華条件などの制約を受けるが、少なくとも時間については非常に短時間化することができる。この結果、Znの横方向への拡散距離は制限され、したがって隣の受光素子のp型領域15に到達するZn量も抑制される。この結果、受光素子アレイにおける上記理由に起因する暗電流を防止することに寄与することができる。
上記の窓層の厚みは、薄いほど好ましい。しかし、窓層の厚みを0.2μmより小さくすると、選択拡散処理チャンバにマスクパターン5を形成したInP基板を装入してから、非常に短時間の拡散処理となってp型不純物の拡散深さのばらつきが無視できなくなる。たとえば、短時間の拡散処理では、InP基板の選択拡散処理チャンバ内の位置や、昇温過程などによっても、p型領域の先端部の位置は変動し、意図した位置にpn接合またはpin接合を形成することが困難になる。このため、窓層4の厚みの下限は、0.2μm程度を目安とするのがよい。拡散処理の制御方法が進歩した場合には、それより薄くすることは構わない。
次に、図1に示す受光素子アレイ50の製造方法について、図4を用いて説明する。
(1)InP基板1上にOMVPE(Organic Metal Vapor Phase Epitaxy)により、n型グレーディドバッファ層2を形成する。このとき、InPの格子定数とIn0.8Ga0.2As受光層3の格子定数との差を、数十段階に分けて、数十層のグレーディドバッファ層2を形成するのがよい。InP基板1は、n側電極11を接続する場合には、Sドープによりn型化しておくのがよい。また、図2に示すように、n型グレーディドバッファ層2の受光層3に接する層にn側電極11を接続する場合には、その層のみをn型としておいてもよいし、すべてのグレーディドバッファ層2をn型としてもよい。
(2)次いで、グレーディドバッファ層2の上に、In0.8Ga0.2As受光層3を厚み2μm〜6μm程度にエピタキシャル成長させる。成長法は、エピタキシャル成長できれば何でもよく、OMVPE法でもMBE(Molecular Beam Epitaxy)法でもかまわない。In0.8Ga0.2As受光層3は、上述のように、波長2.6μmまでの光に受光感度を持つ。In0.8Ga0.2As受光層3は、アンドープまたは低濃度1×1016/cm3以下のn型キャリア濃度とするのがよい。
(3)このあと、In0.8Ga0.2As受光層3上に、n型InAsP窓層4を、厚み0.8μm以下にエピタキシャル成膜する。この成長法についてもエピタキシャル成長できれば何でもよい。n型キャリア濃度は、上記のように1×1016/cm3以上とする。このn型InAsP窓層4のキャリア濃度および厚みが、本発明の実施の形態における重要なポイントである。なお、窓層4をInAsPで形成する代わりに、InAlAsで形成してもよい。
(4)SiNを蒸着法で蒸着し、フォトリソグラフィ法およびエッチングにより、Zn選択拡散用マスクパターン5を形成する。
(5)次いで、当該Zn選択拡散用マスクパターン5の開口部からZnを選択拡散し、p型領域15を形成する。このとき拡散処理用のチャンバとして真空封入管を用い、上記のエピタキシャル成長を行ったInP基板を、p型不純物原料とともに真空封入管に封入し、400℃〜600℃に加熱した炉に装入して5分間〜60分間加熱するのがよい。p型領域15はたとえば平面的には四角形でもよいし、円状でφ35μmとしてもよい。画素を40μmピッチで、横320個×縦256個配列した画素領域を形成する(図1参照)。たとえば2インチ径のInP基板1に、横320個×縦256個の画素を配列した画素領域を数箇所設ける。これによって、2インチウエハに8万画素クラスの2次元アレイを数個配置することができ、歩留りを考慮しても8万画素クラスの2次元アレイを実用化することが可能となる。
(6)その後、絶縁保護膜9で受光層3およびZn選択拡散用マスクパターン5を被覆する。フォトリソグラフィ法とエッチングにより、各受光素子10のp型領域15の所定の位置の絶縁保護膜9をφ35μmの大きさでエッチングして開口を設け、その開口部内にp側電極12を、AuZnによってオーミック接触するように設ける。また、n側電極11を、全受光素子に共通に接地電位となるように、グレーディドバッファ層2の受光層3に接する面に、オーミック接触となるようにAuGeNiで形成する。また、InP基板1の裏面に、AR膜29として、たとえば屈折率1.8、膜厚330nmのSiON膜を全面に形成する。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における一次元の受光素子アレイ50を示す平面図である。また図6は図5におけるVI−VI線に沿う断面図である。図5に示すように、この受光素子アレイ50では、細長い矩形の形状の受光素子10が長手方向を並行させ、その長手方向に直交する方向に沿って一次元配列されている。この受光素子アレイ50の平面的な形状は、たとえば8mm×2mmの矩形である。受光素子10の一方の端には、p側電極12と配線電極27とパッド部25との接続構造が配置される。そして、隣り合う受光素子間で、上記のp側電極12と配線電極27とパッド部25との接続構造は、図5において、交互に上と下になるように配置されている。p側電極12は、一つの受光部または単位受光部に対応する。一次元配列は、たとえば20μmピッチで、合計384個の受光部が一列に配置されている。
図6に示すように、積層構造は、図2に示す二次元配列のものと同じであるが、二次元配列では裏面入射、すなわちエピダウン実装であるのに対して、図6の一次元配列では、上面入射、すなわちエピアップ実装である点が相違する。ただし、二次元配列では裏面入射とせざるをえないが、一次元配列では裏面入射または上面入射とすることが可能である。上面入射を採用するため、電極のうち、p側電極12は、上記のように、受光素子の端に配置される。また、n側電極11はSドープのn型InP基板1の裏面に設けられる。p側電極12およびn側電極11を形成する材料は、実施の形態1と同じとすることができる。
InAsP窓層4が、中濃度以上のn型キャリア濃度であること、および厚みが0.8μm以下であることについても、実施の形態1と同じである。したがって、InAsP窓層4は、p型領域15を構成する部分と、その周りを囲むように位置するn型周囲領域19とからなることも、図2に示す二次元アレイの場合と同じである。
上記より、一次元アレイと二次元アレイの構成の特徴は同じであり、その結果、本実施の形態における一次元の受光素子アレイにおいても、1.7μmを超える波長域に受光感度を持ち、暗電流の低い受光素子アレイを得ることができる。
次に、実施例によって本発明の受光素子アレイの作用効果を検証する。試験体は、本発明例と比較例の2つについて作製した。
(本発明例):図1および図2に示す受光素子の形状を円形の35μmφとして、受光素子間のスペース(図3参照)を、1μm、5μm、10μm、15μmと変えた4種類について、撮像装置を作製した。受光素子10の中心間距離のピッチ(図3参照)は、それぞれ36μm、40μm、45μm、50μmである。
(1)AR(Anti-Reflection)膜29は受光領域に重なるように、SiONによって作製した。
(2)低濃度n型In0.8Ga0.2As受光層3のn型キャリア濃度は、1×1016/cm3とした。
(3)窓層4は、厚み0.7μmのn型InAs0.630.37で形成し、n型キャリア濃度は5×1016/cm3とした。
(4)p型領域15の形成のためのZnの選択拡散は、マスクパターンを形成したウエハを、Zn原料とともに真空封入管内に装入し、真空封入管ごと熱処理する処理方法によって行った。この熱処理の温度は480℃とし、拡散時間は、本発明例では20分間として、InGaAs受光層3の上面0.2μm程度に届かせるようにした。
(比較例):図7に示す受光素子アレイ150を作製した。本発明例との相違点は次のとおりである。
(1)In0.8Ga0.2As受光層103はアンドープとして、そのn型キャリア濃度は、5×1015/cm3であった。
(2)窓層104は、厚み1.2μmのInAs0.630.37で形成し、n型キャリア濃度は1×1015/cm3とした。すなわち、厚みは本発明例の1.7倍であり、n型キャリア濃度は50分の1である。
(3)p型領域115の形成のためのZnの選択拡散は、本発明例と同じ方法によって、InGaAs受光層3の上面0.2μm程度に届かせるようにしたが、窓層104が厚い分、拡散時間を長くして30分間とした。
(評価方法):
(1)Znの深さ方向濃度分布をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって行った。
(2)−1Vの電圧を加えたときの暗電流の測定
(3)±10mVのRoA(シャント抵抗と受光領域面積との積)
(測定結果):
1.Znの深さ方向濃度分布(図8、図9)
本発明例は、図8に示すように、窓層表面から0.8μm程度の深さで、急峻に低下し、裾をあまり引かずにバックグランド濃度2〜3×1015/cm3に低下する。これに対して、図9の比較例では、1.2μmを超えたあたりから急峻に低下するが、たとえば2×1016/cm3から5×1015/cm3にまで低下するのに0.45μmを要し、緩やかに減少している。本発明例では、2×1016/cm3から5×1015/cm3にまで低下するのに、0.23μm程度ですみ、裾の引き方が小さいことがわかる。Zn濃度分布が緩やかに裾を引く場合、応答速度は劣化するので、応答速度という点からも、窓層4を薄くして拡散時間を短くすることは有益である。窓層4の薄肉化は、深さ方向(縦方向)だけでなく横方向へのZnの拡散抑制という点でも、大きな効果がある。
2.暗電流(図10)
隣の受光素子10とのスペース(受光素子間スペース)が1μmでは、本発明例および比較例ともに、暗電流は極端に大きくなる。ただし、本発明例は悪いとはいえ、比較例よりは確実に暗電流は低い。
受光素子間のスペースが5μm以上では、本発明例の暗電流は1×10-7A程度となり、1×10-5〜6×10-6Aの比較例よりも格段に暗電流が低減されていることが分かる。受光素子間が1μmの場合には、本発明例程度の窓層のn型不純物濃度の上昇や、窓層の薄肉化によっては、隣の受光素子との電気的短絡を防止できないものと思われる。
3.RoA(図11)
感度の指標であるRoAについても、暗電流と同様に、受光素子間のスペース1μmでは、本発明例は10Ωcm2であり劣る結果であった。また、比較例については、上記スペース1μmのとき0.1Ωcm2であった。暗電流の場合と同様に、スペース1μmの場合に、本発明例は低いとはいえ、比較例よりは良好である。
上記スペースが5μm以上では、本発明例ではRoAは80Ωcm2を超えて良好となる。これに対して、比較例では、スペース5μmでも0Ωcm2付近であり、スペース10μmになってはじめて数Ωcm2程度となる。
上記の暗電流およびRoAと、受光素子間のスペースとの関係から、本発明例は、比較例に比べて、質的に歴然と、その特性が改善されていることが確認された。
(他の実施の形態)
1.上記の実施の形態では、InP基板とInGaAs受光層との間に、グレーディドバッファ層を介在させる構造を例示したが、InGaAs受光層のエピタキシャル成長が可能であれば、グレーディバッファ層の代わりに単一のバッファ層を用いてもよい。また、In組成が低い場合、またはそのような条件がなくても、InGaAs受光層のエピタキシャル成長が可能であれば、バッファ層はなくてもよい。
2.上記の実施の形態では、二次元受光素子アレイの場合には裏面入射、一次元受光素子アレイでは上面入射、の構造を示したが、本発明にとって光入射をどちらの面にするかは、本質的な問題ではなく、どちらでもよい。ただし、二次元受光素子アレイでは、画素信号の読み出し配線によって各受光領域への入射光に影響を与えないようにするために、裏面入射にするほうがよい。
3.窓層は、InGaAs受光層上にエピタキシャル成長できるものであれば、InAsPに限定されず、InAlAsなど何でもよい。
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明によれば、簡単な機構によって暗電流を低くした、1.7μmを超える波長域に受光感度をもつInGaAs受光素子アレイを得ることができ、高解像度の近赤外域光の撮像装置の進展に貢献が期待される。
本発明の実施の形態1における受光素子アレイを用いた撮像装置を示す平面図である。 図1の受光素子アレイのII−II線に沿う断面図である。 本実施の形態における発明のポイントを説明するための図である。 図1の受光素子アレイの製造方法を示す図である。 本発明の実施の形態2における受光素子アレイを示す平面図である。 図5の受光素子アレイのVI−VI線に沿う断面図である。 実施例における比較例の受光素子アレイを用いた撮像装置の断面図である。 実施例における本発明例の受光素子アレイのp型領域のZnの深さ方向分布を示す図(SIMS測定データ)である。 実施例における比較例の受光素子アレイのp型領域のZnの深さ方向分布を示す図(SIMS測定データ)である 本発明例および比較例の撮像装置の暗電流(実測値)と、受光素子間スペースとの関係を示す図である。 本発明例および比較例の撮像装置のRoA(実測値)と、受光素子間スペースとの関係を示す図である。
符号の説明
1 InP基板、2 バッファ層、3 InGaAs受光層、4 窓層、5 Zn選択拡散用マスクパターン、9 絶縁保護膜、10 受光素子、10a 受光領域、11 n側電極、12 p側電極、15 p型領域、17 pn接合、19 n型周囲領域、21 CMOS(Multiplexer)、22 接合バンプ、25 パッド部、27 配線電極、29 AR(Anti-Reflection)膜、50 撮像装置。

Claims (9)

  1. InP基板に形成されたIII−V族化合物半導体の1つのエピタキシャル積層体に、受光素子が、複数、配列された受光素子アレイであって、
    In組成が0.53を超えるInGaAs受光層と、
    前記InGaAs受光層に接して位置するn型窓層とを備え、
    前記窓層はn型キャリア濃度1×1016/cm3以上を有し、
    前記受光素子の受光領域のpn接合またはpin接合を形成するためのp型領域は、前記n型キャリア濃度をもつ窓層から前記InGaAs受光層へと導入されたp型不純物によって形成され、
    前記p型領域は、前記窓層において前記n型キャリア濃度の周囲領域に囲まれていることを特徴とする、受光素子アレイ。
  2. 前記窓層の厚みが0.8μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の受光素子アレイ。
  3. 前記InGaAs受光層のn型キャリア濃度が1×1016/cm3以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の受光素子アレイ。
  4. 前記p型不純物の導入によって形成されたp型領域は、前記受光層に届き、該受光層の前記窓層側の面から0.5μm以内の深さ範囲になるように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の受光素子アレイ。
  5. 前記InGaAs受光層のIn組成が0.6以上0.85以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の受光素子アレイ。
  6. 前記InP基板と前記InGaAs受光層との間に、複数層からなるグレーディドバッファ層が介在していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の受光素子アレイ。
  7. 前記受光素子間のスペースが、2μm以上40μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の受光素子アレイ。
  8. InP基板上に位置するIII−V族化合物半導体の1つのエピタキシャル積層体に、受光素子が、複数、配列された受光素子アレイの製造方法であって、
    前記InP基板上に、In組成が0.53を超えるInGaAs受光層を形成する工程と、
    前記InGaAs受光層の上に接してn型キャリア濃度1×1016/cm3以上の窓層を形成する工程と、
    前記受光素子の受光領域に対応するように開口部を有するマスクパターンを前記窓層上に形成する工程と、
    400℃以上600℃以下の温度で、p型不純物を前記開口部の窓層から拡散させて前記受光領域にpn接合またはpin接合を形成する工程とを備えることを特徴とする、受光素子アレイの製造方法。
  9. 撮像装置、センサなどの検出装置であって、請求項1〜7のいずれか一つに記載の受光素子アレイ、または請求項8に記載の製造方法で製造された受光素子アレイを備え、各受光素子から信号を読み出し電気信号を出力するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を備えることを特徴とする、検出装置。
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