JP2009274023A - 脱泡方法および塗布方法 - Google Patents

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由貴廣 水鳥
Sadaji Kawabe
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Abstract

【課題】本発明の目的は、液状物に含まれる非常に微細な気泡の除去を効率よく行うことができる脱泡方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る脱泡方法は、気泡を含んだ液状物を脱泡する方法において、前記液状物を入れる減圧容器と、該減圧容器内の圧力を制御する減圧手段と、前記液状物を撹拌する撹拌機構と、を少なくとも備える脱泡装置を用い、(1)前記液状物を前記減圧容器内において減圧下で撹拌する工程と、(2)前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、さらに撹拌する工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、液状物の脱泡方法および塗布方法に関するものである。より具体的には、化学、医薬、製紙、印刷、電子材料、油製品などの工業分野や、化粧品、食品、樹脂、塗料、接着剤、光学材料などの製品の製造過程において、液状物中に混入した気泡を除去するための脱泡方法、および気泡を除去された液状物の塗布方法に関する。
紙、フィルム、その他シート状の物の表面に塗料や塗液を塗布する塗工機ラインにおいて、塗布する塗料や塗液に気泡が混入していると欠陥の原因となる。また、気泡が混入していると塗工液の塗布量が安定せず、塗工部の厚みが不均一になるばかりか、塗面にピンホールや未塗工箇所などの欠陥が発生し、不良品の原因となる。
例えば、絶縁、汚染及び破損等の目的で半導体チップ等の電子部品を液状樹脂からなる封止剤で封止する場合において、気泡が封止剤に混入すると、塗布量が安定しないため、封止剤の充填不良部分が発生してしまう場合がある。また、例えば、フォトレジスト液を塗布する場合も、気泡が混入するとフォトレジスト液の未塗布部分が発生してしまうことがある。さらには、気泡が混入したまま固化した封止剤は、その強度や耐湿性が通常よりも低下してしまうことがある。
また、例えば、光学ディスク用の樹脂材料をディスク基盤に塗布する場合に気泡が存在すると、レーザー等での読み取り及び記録時におけるエラー信号の原因となり、正確なデータの読み書きができなくなることがある。
また、例えば、化学、医薬、食品関連の材料では、気泡中のガス成分が品質上問題となることもある。
また、例えば、液状物に気泡が存在すると、輸送ポンプや配管の腐食や異常振動の原因となる場合がある。また、みかけ密度が変化するため、梱包工程での不具合を生じさせることがある。
したがって、これらの液状物の気泡を除去する必要がある。液状物の脱泡処理の一般的な方法としては、例えば減圧法が挙げられる。しかし、これまでの減圧法による脱泡方法では、特に高粘度の液状物の場合、いったん気泡が混入すると非常に抜けにくいため、バッチ処理では長時間の処理が必要になることがある。また、減圧状態で長時間保持すると、液状物の成分によっては揮発によりその成分比が変化してしまう。液状物の成分比が変化すると、それを使用する製品の性能が低下することになる。さらには、減圧を維持するために排気されるガス中に揮発成分が多く含まれることは、環境において大きな問題となる。排気ガス中の揮発成分を無害化して大気に放出するには、ガス処理設備費用などに多大な投資が必要となる。
さらに、上述した欠陥を防ぐため、除去の必要がある気泡の大きさは近年ますます微細化している傾向にある。微細な気泡は浮力が小さく、特に粘稠な液状物では液体面への移動速度が遅いため、長時間の脱泡処理時間が必要となってしまう。
したがって、これらの問題を解決すべく、効率よく極めて微細な気泡を除去できる方法が望まれている。
これらの液状物に含まれる気泡を除去するための従来の装置としては、上述の減圧法として、減圧したタンク内に液状物を静置する方法、または、減圧したタンク内にある液状物を撹拌する方法がある。しかし、高粘度の液状物を処理する場合や大量の液状物を処理する場合には、脱泡装置を大規模にするか、長時間の脱泡処理を行う必要がり、生産性が低くなり工業的に不利である。
そこで、従来の減圧法を改良すべく、特開2002−113303(特許文献1)では高粘度溶液の効率的な脱泡方法が検討されている。特許文献1では、粘度が30[Pa・s]以上の高粘度溶液の脱泡について検討されている。より具体的には、減圧状態で液面が排気管に到達した場合は、減圧の排気バルブを閉止して容器内の圧力を上昇さる。そして、液面が低下したら、減圧を再開する。これを繰り返し、減圧しても液面が排気管に到達しなくなったら、撹拌回転数を単位体積当たりの所要動力が1/2になるような回転数に設定し、脱泡が完了するまで減圧下で撹拌する、という脱泡方法である。
また、特開2004−290859(特許文献2)には、減圧タンク内で互いに逆方向に回転する主撹拌羽根と副撹拌羽根を有する撹拌機により液中の気泡を除去する方法が記載されている。
特開2002−113303 特開2004−290859
しかし、特許文献1に記載の方法でも、非常に微細な気泡を除去するためには、長時間の減圧下での運転が必要になり、前述したような生産性の低下や揮発成分の排気による弊害を招く。
また、特許文献2に記載の脱泡方法では、減圧と撹拌により非常に微細な気泡を除去しようとする際には、やはり長時間の運転が必要になり、前述したように、揮発成分による弊害を招く。さらに、この方法では撹拌機構が複雑になり、設置コストやメンテナンスコストが必要になる。また、液体からの反作用により撹拌軸が振動すると、主撹拌羽根と副撹拌羽根の軸部が接触してしまう場合があり、異物のコンタミを招く恐れがある。また、複雑な撹拌機構は、液状物の切り替え時における洗浄作業が煩雑になる。
したがって、本発明の目的は、液状物に含まれる非常に微細な気泡の除去を効率よく行うことができる脱泡方法を提供することである。
[1]気泡を含んだ液状物を脱泡する方法において、
前記液状物を入れる減圧容器と、該減圧容器内の圧力を制御する減圧手段と、前記液状物を撹拌する撹拌機構と、を少なくとも備える脱泡装置を用い、
(1)前記液状物を前記減圧容器内において減圧下で撹拌する工程と、
(2)前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、さらに撹拌する工程と、
を有することを特徴とする脱泡方法。
[2]前記工程(1)は、式(1)を満たすまで撹拌する[1]に記載の脱泡方法。
V≦V ・・・式(1)
(V;大気圧下で気泡を含んでいない状態の前記液状物を前記減圧容器に入れて、大気圧から前記工程(1)における圧力に変化させたときのみかけ体積、V;前記工程(1)における脱泡処理の対象となる前記液状物のみかけ体積)
[3]前記工程(1)は、式(2)を満たすまで撹拌する[1]又は[2]に記載の脱泡方法。
H≦H ・・・式(2)
(H;大気圧下で気泡を含んでいない状態の前記液状物を前記減圧容器に入れて、大気圧から前記工程(1)における圧力に変化させたときの液面高さ、H;前記工程(1)における脱泡処理の対象となる前記液状物の液面高さ)
[4]前記液状物の液面高さHを前記減圧容器中に設けた液面検知器によって判断する[3]に記載の脱泡方法。
[5]前記工程(2)において、前記液状物を撹拌しつつ前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻す[1]乃至[4]のいずれかに記載の脱泡方法。
[6]前記液状物の粘度は100mPa・s以上である[1]乃至[5]のいずれかに記載の脱泡方法。
[7][1]乃至[6]のいずれかに記載の脱泡方法により脱泡された液状物を被塗布材料に塗布する液状物の塗布方法。
本発明に係る脱泡方法により、液状物に含まれる非常に微細な気泡の除去を効率よく行うことができる。
本発明に係る脱泡方法は、
気泡を含んだ液状物を脱泡する方法において、
前記液状物を入れる減圧容器と、該減圧容器内の圧力を制御する減圧手段と、前記液状物を撹拌する撹拌機構と、を少なくとも備える脱泡装置を用い、
(1)前記液状物を前記減圧容器内において減圧下で撹拌する工程と、
(2)前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、さらに撹拌する工程と、
を有することを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の脱泡方法は、前記液状物を入れる減圧容器と、該減圧容器内の圧力を制御する減圧手段と、前記液状物を撹拌する撹拌機構と、を少なくとも備える脱泡装置を用いる。
図1は、この発明に係る脱泡方法を実現するのに適した脱泡装置の構成例を説明する概略図である。この脱泡装置は、内圧を減圧される減圧容器1に液状物4が配置される。そして、液状物4は撹拌機構2の撹拌羽根2bにより撹拌される。減圧容器1は減圧手段(不図示)と減圧手段接続口3で接続されており、減圧容器1の内圧は真空ポンプ等の減圧手段により制御される。減圧容器1内には液状物の撹拌状態を調整する邪魔板が設けられていても良い。
減圧容器は密閉可能に構成されており、その内圧は減圧手段により制御される。また、脱泡処理の対象となる液状物はこの減圧容器内に配置される。減圧容器の大きさや形状は特に制限されるものでは無い。例えば、円筒形の直胴部と鏡型の底面とを有する槽などを用いることができる。減圧容器の天面の形状にも制限はなく、平板状や鏡板状の天面を採用することができる。天面は蓋状の構造として、開閉が可能、あるいは取り外しが可能とする事もなんら制限はない。減圧容器の材質も特に制限はなく、液状物の性状に応じて自由に選定できる。
減圧容器は、減圧手段と接続するための減圧手段接続口を有することが望ましい。減圧手段接続口と減圧手段(例えば真空ポンプ)とを接続することにより、減圧容器内を大気圧以下の圧力に減圧することができる。減圧手段接続口の大きさや形状に制限は無い。また、減圧手段としては、真空ポンプに限らず、減圧容器内の圧力を制御できる公知の機器を使用することができる。
減圧容器には、前記減圧手段接続口のほかに、液状物の供給部や排出部を設けても良い。また、減圧状態から大気圧状態に戻す際にガスを供給するためのガス供給接続口を別途設けてもよい。液状物の温度管理が必要な場合は、液状物中にコイル状の熱媒配管を浸して温調することも可能である。または、減圧容器をジャケット構造にし、このジャケット部に熱媒を流して温度調整を行うこともできる。または、減圧容器の側面などにヒーターを取り付け、温度制御可能に構成することも可能である。
減圧容器中の液状組成物は、前記撹拌機構により撹拌される。したがって、減圧容器中には、撹拌機構の構成部である撹拌羽根が少なくとも収納される。撹拌機構は、減圧容器内の液状物を撹拌するものであれば、特に制限はなく、公知の撹拌装置を使用することができる。例えば、パドル翼やタービン翼といった撹拌羽根を撹拌軸に固定したタイプの撹拌機構を使用することができる。撹拌羽根は撹拌軸に1段で設けられていても良いし、2段以上で設けられていてもよい。高粘度の液状物の場合は、ヘリカルリボン翼と呼ばれる撹拌羽根を使用することが好ましい。さらには、構造が単純であるため品種切り替え時の洗浄作業が容易に行えるという観点から、マックスブレンド翼(住友重機械工業社)やフルゾーン翼(神鋼環境ソリューション社)などの一般的に大型翼と呼ばれる撹拌羽根を使用することがより好ましい。
また、減圧容器内に撹拌機構を設置する位置は、液状物を撹拌できれば、特に制限はない。撹拌機構の材質も特に制限は無く、液状物の性状に応じて適宜選択できる。
また、本発明において、撹拌機構の構成部として、減圧容器内に邪魔板を設けることもできる。邪魔板の形状には特に制限はなく、平板状や円柱状などの公知形状を使用することができる。邪魔板の数にも特に制限は無いが、2本または4本設置することが好ましく、それらの設置する位置は、減圧容器の鉛直方向の中心線を軸として軸対象に設置することがより好ましい。邪魔板の材質に制限は無く、液状物の性状に応じて自由に選定できる。
邪魔板は、減圧容器の内壁面と前記邪魔板との間に実質的に液状物の流れが発生する隙間を有して設置されていることがより好ましい。内壁面と前記邪魔板との間に実質的に液状物の流れが発生する隙間を有することで、液状物中に浮遊する気泡の滞留・停滞を防ぐことができるため、より効率よく脱泡することができる。
次に、本発明に係る脱泡方法について、詳細に説明する。
まず、本発明では、工程(1)において液状物を減圧下で撹拌する。より具体的には、液状物を減圧容器内に配置した後、減圧容器内を減圧手段により減圧し、その減圧下で液状物を撹拌する。減圧下での撹拌における撹拌羽根の回転数は、特に制限されるものではなく、液状物の組成や量により適宜設定することができる。
次に、工程(2)において、減圧容器中の圧力を大気圧に戻し、大気圧下で液状物を撹拌する。大気圧に戻す際は、撹拌しながら大気圧に戻すことが好ましい。また、撹拌羽根は液状物に気泡を巻き込まない回転数で操作することが好ましい。工程(1)(減圧状態)における回転数と、大気圧に戻す操作以降の回転数は等しくても良いし、異なる回転数を設定しても良い。本発明において、特に高粘度の液状物を脱泡する際は、低速回転でも気泡の巻き込みを防ぎつつ効率良く撹拌できる大型翼と呼ばれる撹拌羽根を用いることが好ましい。
次に、工程(1)についてより詳細に説明する。
ここで、工程(1)は、下記式(1)を満たすまで撹拌することが好ましい。
V≦V ・・・式(1)
(V;大気圧下で気泡を含んでいない状態の液状物を前記減圧容器に入れて、大気圧から前記工程(1)における圧力に変化させたときのみかけ体積、V;工程(1)における脱泡処理の対象となる前記液状物のみかけ体積)
通常の液状物にはいくらかの気体が溶けている。大気に接していれば、空気の構成成分である窒素や酸素、二酸化炭素などのガス成分が液状物中に溶けるからである。したがって、たとえ大気圧下で気泡を含まない液状物であっても、減圧容器に保持してその内部を減圧状態にすると、その圧力状態に応じて、溶けているガス成分が気泡となって液状物中に現れる。そのとき液状物のみかけ体積が増大し、その結果、減圧容器内での液面の高さが上昇する。なお、本明細書において、大気圧下で気泡を含まない液状物とは、顕微鏡で観察した際に10μm以上の大きさの気泡がない液状物をいう。
また、液状物に溶けるガス成分の量は、液状物の置かれている圧力によって決まることが知られている。したがって、大気圧下で気泡を含まない液状物が工程(1)における圧力(例えば−P[kPa](ゲージ圧))の減圧状態でみかけ体積が増大する割合およびHpを予め把握しておくことができる。
以下、その方法の具体例を詳細に説明する。
形状が分かっているガラス製の減圧容器を用意する。大気圧下で気泡を含まない液状物をg[kg]だけガラス製減圧容器に入れる。そのときの液面の高さをガラス製減圧容器の壁面に印を付ける。次に、ガラス製減圧容器内の圧力を所定の圧力(例えば工程(1)における減圧状態の圧力−P[kPa](ゲージ圧))に減圧すると、液状物の液面が上昇する。上昇した液面の高さをガラス製減圧容器の壁面に印を付ける。大気圧下での印と減圧下での印の距離を定規などで測定して、ガラス製減圧容器の形状から、液状物の増大した分の体積(例えばQ[m])を算出することができる。液状物の量がg[kg]であるので、Q/gは、大気圧下で気泡を含まない液状物を、−P[kPa](ゲージ圧)に減圧した時の、単位質量当たりのみかけ体積の増大量を表わすことになる。
ガラス製容器に入れた大気圧下で気泡を含まない液状物の体積が分かっているとき(例えばq[m])は、Q/qは、大気圧下で気泡を含まない液状物を、−P[kPa](ゲージ圧)に減圧した時の、単位体積当たりのみかけ体積の増大量を表わすことになる。
このQ/g、もしくはQ/qを用いることで、前記減圧容器の形状が異なる様々な場合でも、減圧容器内の液状物の質量もしくは体積が分かっていれば、前記減圧容器の形状に応じて、工程(1)における減圧状態の圧力(例えば−P[kPa](ゲージ圧))に減圧した時の、みかけ体積の増大する量を把握しておくことが可能になる。このとき前記減圧容器の形状を明らかにしておけば、みかけ体積の増大分、およびそれに応じた液面の高さの上昇分を算出することが可能であり、すなわち、VpやHpを予め把握しておくことが可能になるのである。減圧容器内の大気圧下で気泡を含まな液状物の質量や体積は、減圧容器内に注入する前に測定しておいても良いし、液状物の注入の前後の減圧容器の重量を測定したり、減圧容器の形状と液面計による測定結果から、算出しても良い。
なお、液面高さHは、液面が水平な面とならない場合もあるため、液面中の数ヶ所を測定して、その値の平均値とすることが好ましい。また、測定自体を数回行って、平均とすることがより好ましい。
このようにして得られた、大気圧下で気泡を含まない液状物の工程(1)で用いる圧力下における液面高さHの関係を用いて、脱泡対象となる液状物の液面高さHが、下記式(2)の条件を満たすまで、前記工程(1)を行うことが望ましい。なお、Hは、工程(1)における脱泡処理の対象となる液状物の、減圧容器中における液面高さである。
H≦H ・・・式(2)
つまり、工程(1)においては、H(大気圧下で気泡を含まない液状物を工程(1)における圧力にしたときの液面高さ)以下になるまで、脱泡対象となる液状物を撹拌することが好ましい。そうすれば、工程(1)後にその液状物を大気圧に戻した際に、液状物に残存している気泡は液状物に溶けるきることができるからである。
なお、工程(1)における圧力としては、特に限定されるものではないが、例えば、−100〜−48[kPa](ゲージ圧)であることが好ましい。減圧手段の選択の容易さと処理能力のバランスから、−98〜−80[kPa](ゲージ圧)の範囲で操作することがより好ましい。
また、大気圧に戻す際に撹拌を停止してしまうと、液状物の液面から空気成分が液状物に溶解し始めるため、液状物の内部に残存している気泡が溶解せずに溶け残る場合が生じる。したがって、減圧状態から大気圧に戻す際も撹拌を継続し、残存している気泡の液状物への溶解を促進することが好ましい。
さらに、式(1)の状態となってからは速やかに工程(2)に移ることが好ましい。それによって、減圧状態での保持時間が短くなり、液状物の成分が不必要に揮発し成分比が変化することを防ぐことができる。さらに、減圧の排気ガスの環境対策も最小限で済むことになるので好適である。
の算出方法は、上記のように、気泡を含まない液状物を前記ガラス製の減圧容器に入れ、所定の圧力まで減圧し、液面高さを測定することにより直接求めることができる。所定の圧力とは、工程(1)における減圧状態の圧力である。気泡を含まない液状物は、例えば、バッチ式の遠心脱泡装置(シンキー社製、商品名;あわとり練太郎)などで得ることができる。
本発明では、液面高さの基準(例えばゼロとする点)は任意に設定できる。減圧容器の底部の最深部点でも良いし、胴部を有する場合は胴部の任意の場所とすることもできる。減圧容器とは別場所の点を基準とすることも何ら制限は無い。ただし、HとHの基準点は同一でなくてはならない。
減圧状態で脱泡中の液面は、通常であれば、泡沫で覆われた状態となっているため、厳密には液面は一様で水平な面を有していない。また、撹拌されているため、静止状態でもない。さらには、液面における泡沫の存在に因らずとも、撹拌軸や壁面付近の渦の発生のため、液面は水平面を有していないこともある。そこで、本発明では、脱泡中の液面の1ヶ所の高さ、もしくは、多数ヶ所の高さの平均値をHとすればよい。このとき、液面の高さを測定する箇所は、測定する方法に応じて任意に設定することができる。また、Hは、撹拌を停止した状態の水平となっている液面を基準することができる。撹拌中の液面を基準にしても良い。撹拌中の液面を基準にする場合は、多数箇所の高さの平均値を用いることが好ましい。さらには一定時間当たりの高さの平均値を用いることが好ましい。
工程(1)において、減圧状態の液状物の液面高さHが、求めておいたHと等しくなれば、減圧容器を大気圧に戻した際に、液状物に残存している気泡は液状物に溶けきることができる。
本発明においては、液面高さHを液面検知器によって検知することが好ましい。液面高さを検知する液面検知器には、公知の方法を採用することができ、その方法になんら制限はない。レーザー式やレーダー式の液面計などを例示することができる。液状物が接触することで、通電状態の変化を検知したり、回転する羽根車の負荷の変化を検知したりするセンサーを用いる事もできる。
本発明の脱泡方法によって、水、油、溶剤、高分子量単量体、高分子重合体、その他混合物など適宜の種類の液状物を処理することができる。また、適宜の粘度の液状物を処理することができ、液状物の粘度に制限はない。特に、100mPa・s以上の高粘度液状物の脱泡にはより好適に用いることができる。100[mPa・s]未満の粘度であれば、より高い生産性を達成できる。
本発明は、前述のように、単純な構造の機構によって脱泡操作を行えるため、品種切り替えの際の洗浄作業が容易に行え、多品種少量生産には好適である。減圧容器の大きさが小型であれば、分解洗浄も特別な技能を必要とせず簡便に行えるため、医薬品や化粧品、光学材料用途に用いる液状物の脱泡操作には、特に好適である。
本発明の脱泡方法によって除去できる気泡の大きさに制限はない。直径が数百μmから数μmの気泡でも除去できる。特に、高粘度(例えば100[mPa・s]以上)の液状物から直径が10μm以上の気泡を除去することを、工業的に有利に、かつ多品種生産の作業性も良好に達成できる。
本発明に係る脱泡方法を実施する脱泡装置の一例を図3に示す。ただし、本発明は、図3に示す脱泡装置を使用する場合に制限されるものではない。また、図3は、脱泡装置は、液状物を減圧して脱泡する脱泡部とともに、液状物を濾過する濾過部、及び、脱泡処理後の液状物を塗布する塗布部も含んで構成されている。
図3に示されるように。液状物供給口7から供給された液状物は、送液装置23aにより濾過部20へ送られる。濾過部では液状物中の異物を除去する。濾過部は液状物の性状と除去すべき異物の性状に応じて、その素材や形式および運転条件は適宜に選定できる。除去すべき異物に制限はない。濾過部材20aの材料としては、例えば、天然繊維、合成繊維、金属繊維、又は無機質などを用いることができる。これらを平幕状、袋状、プリーツや円盤、円筒状といった成形膜状等に加工して用いることができる。除去すべき異物に応じて、濾過部材の材料を選定することができる。
図3では、脱泡部は濾過部に続いて構成される。濾過部は多大な表面積を有するため、最初に液状物を通液する際に気泡を巻き込みやすい。したがって、濾過部の後に脱泡部を構成することは、異物と気泡をより確実に除去できるので好適である。
脱泡部のあとに濾過部を構成すると、濾過部より下流側の気泡の除去およびその存在の管理が困難になる場合があり工業的に有利とは言えない。例えば、製造開始前の放流によって気泡を除去しようとしても、気泡を放流物に同伴させてゼロにするための条件を確定することは容易ではない。さらに濾過部で異物が捕捉されて濾材の交換が必要になると、その交換作業のたびに気泡の混入の懸念が発生する。
脱泡部21で脱泡された液状物は、送液装置23bにより塗布部22へ送られる。
塗布部は、公知の塗布装置を使用する事ができる。被塗工部の形状や、液状物の性状および運転条件によって、適宜に選定できる。被塗工物がフィルムやシート様の形態の場合は、ロールコーターやダイコーター、ナイフコーターやエアコーターなどの方法が知られている。被塗工物にスプレー等によって噴き付ける方法や液溜まり部に被塗工物をディッピングする方法も可能である。被塗工物が光学ディスクなど比較的小さい形状にはスピンコーターなどの方法が知られている。これらの例示のほか、公知の塗布装置から適宜選んで利用することができる。
また、濾過部、脱泡部、塗布部のそれぞれにおいて、圧送タンク式、ポンプ式などの送液装置またはバルブ類を設けることには何ら制限は無く、液状物の性状や運転条件によって、適宜に選定できる。
本発明の脱泡方法によって、水、油、溶剤、高分子単量体、高分子重合体、又はこれらの混合物など適宜の種類の液状物を脱泡処理することができる。本発明により脱泡処理された液状物は、被塗工物に良好に塗布することができる。特に、本発明は100[mPa・s]以上の高粘度の液状物の脱泡処理を良好に行うことができ、脱処理後の液状物をより良好に塗布することができる。
(液状物の調製)
攪拌機、温度調節器、温度計および凝縮器を備えた三つ口フラスコ(内容積5L)に、イソホロンジイソシアネート1112g(10モル当量)およびジブチル錫ジラウレート0.5gを仕込み、ウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
次に、下記材料を均一に混合溶解させた液を側管付きの滴下ロートに仕込んだ。そして、この滴下ロート内の混合溶解液を、上記フラスコ中に、その内容物を撹拌しつつ、4時間等速滴下により滴下し、2時間撹拌して反応させた。また、滴下及び反応はフラスコ内温を65〜75℃に保ちながら行った。反応後、フラスコ内容物の温度を60℃に下げた。
・N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピルアミド;161g(2モル当量)
・ポリカーボネートジオール(旭化成(株)製CX−4710;平均分子量:1002);1303g(2.6モル当量)
次いで、下記材料を均一に混合溶解させた液を別の滴下ロートに仕込んだ。そして、この混合溶解液を、上記フラスコ中に、その内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を55〜65℃に保ちながら2時間等速滴下により滴下した。
・2−ヒドロキシエチルアクリレート;626g(5.4モル当量)
・ハイドロキノンモノメチルエーテル;1.5g
その後、フラスコ内容物の温度を75〜85℃に保って4時間反応させ、ウレタンアクリレート(UA1)を製造した。反応の終点は残存イソシアネート当量の測定により判断した。また、反応率は99%以上であることを確認した。
次に下記材料を混合溶解し、コーティング材組成物を得た。得られたコーティング材組成物は、無色透明であり、常温(25℃)で約3000[mPa・s]の粘稠な液状物であった。
・UA1;45質量部
・テトラヒドロフルフリルアクリレート;20質量部
・イソボルニルアクリレート;15質量部
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;15質量部
・トリメチロールプロパントリアクリレート;15質量部
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;3質量部
〔実施例1〕
前記コーティング材組成物を、図2に示すように、内径153mmの減圧容器(ガラス製)に2400mL入れて、減圧容器を減圧装置に取り付けた。また、減圧装置の撹拌羽としては、厚みが2mmの1枚の大型平板状の撹拌羽根を取り付けた。まず、コーティング材組成物を撹拌回転数300[rpm]で10分間撹拌し、コーティング材組成物に気泡を含ませた。
次に、減圧手段(真空ポンプ)により減圧容器内の圧力を−91[kPa](ゲージ圧)とし、その減圧状態を維持しながら、撹拌回転数120[rpm]で11分間撹拌した。このとき、コーティング材組成物中には気泡が残っていることが観察された。その後、減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、撹拌をそのまま10分間継続した後、撹拌を停止した。
目視で気泡の有無を確認したところ、気泡は見られなかった。さらに、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に脱泡処理後のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で気泡の有無を観察したが、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔比較例1〕
実施例1と同様に、前記コーティング材組成物を内径153mmの減圧容器に2400mL入れ、減圧容器を減圧装置に取り付けた。また、実施例1と同様に、まず、コーティング材組成物を撹拌回転数300[rpm]で10分間撹拌し、気泡を含んだ状態にした。
次に、減圧手段(真空ポンプ)により減圧容器内の圧力を−91[kPa](ゲージ圧)とし、その減圧状態に維持しながら、撹拌回転数120[rpm]で11分間撹拌した。このとき、コーティング材組成物中に気泡が残っていることが観察された。その後、減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、同時に撹拌も停止した。
目視で気泡の有無を確認したところ、気泡が残っていることが確認できた。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に脱泡処理後のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で気泡の有無を観察したが、100μm以上の大きさの気泡があることが観察された。
さらに、減圧容器をそのまま静置させて10分後に再びコーティング材組成物を観察したが、気泡が残っていることが確認された。
(液状物のHpの測定)
実施例1で脱泡したコーティング材組成物を、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、内径153mmの減圧容器(ガラス製)に2400mL入れた。撹拌機の回転数が120[rpm]より小さい条件のときでは、気泡が巻き込まれていないことを目視で確認した。撹拌機の回転数が210[rpm]より大きい条件では、液面から気泡が巻き込まれていくのが目視で確認できた。 このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径153mmの減圧容器(ガラス製)に2400mL入れた(このときの液面高さをH02mmとする)。そして、そのまま減圧容器内を−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さはH02+7.5mmとなった。
〔実施例2〕
コーティング材組成物を撹拌回転数300[rpm]で10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。そして、撹拌回転数を120[rpm]に変更した後に、減圧容器内の圧力を−91[kPa](ゲージ圧)に減圧したところ、液面高さはH02+26mmとなった。
さらに、撹拌回転数120[rpm]で5分間撹拌を継続したところ、液面高さがH02+7.0mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では脱泡処理後のコーティング材組成物中に気泡は観察できなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)にコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
2バッチ目として、脱泡前の、目視で大きな気泡を多数含む同じコーティング材組成物コーティングを用いて、−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にして、撹拌回転数120[rpm]で液面高さがH02+7.0mmとなるまで攪拌を継続し、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。顕微鏡で観察しても、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔実施例3〕
脱泡済みのコーティング材組成物をステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径153mmの減圧容器に2400mL入れた(このときの液面高さをH03mmとする)。そして、そのまま減圧容器内を−97[kPaゲージ圧]の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さは、H03+18mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻し、撹拌回転数300[rpm]でコーティング材組成物を10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。引き続き減圧容器内の圧力を−97[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にしたところ、液面高さはH03+129mmとなった。
次に、撹拌回転数120[rpm]で3分間撹拌を継続したところ、液面の高さがH03+13mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では脱泡処理後のコーティング材組成物中に気泡は観察できなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)にコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
2バッチ目として、脱泡前の大きな気泡を多数含む同じコーティング材組成物を用いて、−97[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にして、撹拌回転数120[rpm]で液面高さがH03+13mmとなるまで攪拌を継続し、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。顕微鏡で観察しても、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔実施例4〕
脱泡後のコーティング材組成物をステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径が153mmの減圧容器に2400mL入れた(このときの液面高さをH04mmとする)。そして、そのまま減圧容器内を−81[kPaゲージ圧]の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さは、H04+4.5mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻して撹拌回転数300[rpm]でコーティング材組成物を10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。そして、減圧容器内の圧力を−81[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にしたところ、液面高さはH04+129mmとなった。
さらに、撹拌回転数120[rpm]で8分間撹拌を継続したところ、液面の高さがH04+4.4mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では脱泡処理後のコーティング材組成物中に気泡は観察できなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に減圧容器内のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
2バッチ目として、脱泡前の大きな気泡を多数含む同じコーティング材組成物を用いて、−81[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にして、撹拌回転数120[rpm]で液面高さがH04+4.4mmとなるまで攪拌を継続し、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。顕微鏡で観察しても、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔実施例5〕
脱泡済みのコーティング材組成物を、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径153mmの減圧容器に2400mL入れた(このときの液面高さをH05mmとする)。そして、そのまま減圧容器内を−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さは、H05+7.5mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻して撹拌回転数300[rpm]でコーティング材組成物を10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。そして、減圧容器内の圧力を−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にしたところ、液面高さはH05+41mmとなった。
さらに、撹拌回転数120[rpm]で7分間撹拌を継続したところ、液面の高さがH05+6.0mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では脱泡処理後のコーティング材組成物中に気泡は観察できなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に減圧容器内のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したが、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
2バッチ目として、脱泡前の大きな気泡を多数含む同じコーティング材組成物を用いて、−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にして、撹拌回転数120[rpm]で液面高さがH05+6.0mmとなるまで攪拌を継続し、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。顕微鏡で観察しても、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔実施例6〕
脱泡後のコーティング材組成物をステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径153mmの減圧容器に2400mL入れた。そのときの液面高さをH02′mmとした。そして、そのまま減圧容器内を−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さはH02′+7.5mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻し、撹拌回転数300[rpm]でコーティング材組成物を10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。引き続き減圧容器内の圧力を−91[kPaゲージ圧]の減圧状態にしたところ、液面高さはH02′+33mmとなった。
次に、撹拌回転数120[rpm]で1.5分間撹拌を継続したところ、液面の高さがH02′+14mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では脱泡処理後のコーティング材組成物中に気泡は観察されなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に減圧容器内のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、30〜50μmの大きさの気泡がいくつか観察された。
〔比較例2〕
脱泡後のコーティング材組成物を、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
このコーティング材組成物を、実施例1と同様に、内径153mmの減圧容器に2400mL入れた。そのときの液面高さをH03′mmとした。そして、そのまま減圧容器内を−90[kPa](ゲージ圧)の減圧状態に保持したところ、液面の高さはH03′+7.5mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻し、撹拌回転数300[rpm]でコーティング材組成物10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。引き続き減圧容器内の圧力を−90[kPaゲージ圧]の減圧状態にした。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面高さはH03′+33mmとなった。
次に、撹拌回転数120[rpm]で7分間撹拌を継続したところ、液面の高さがH03′+6.0mmとなった。
すぐに、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を停止した。
目視ではコーティング材組成物中に気泡が残存していることが観察された。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に減圧容器内のコーティング材組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、100μm以上の大きさの気泡が観察された。
さらに、減圧容器をそのまま静置させて10分後に再びコーティング材組成物を観察したが、気泡が残っていることが確認された。
〔実施例7〕
前記コーティング材組成物にテトラヒドロフルフリルアクリレートを加えて、粘度を650[mPa・s]に調整した。この組成物をステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に満たし、顕微鏡で観察した。そして、10μm以上の大きさの気泡がないことを確認した。
この組成物を、減圧容器中に2850mL入れた以外は、実施例1と同様に、内径が153mmの減圧容器に入れた。そのときの液面高さをH07mmとしたとき、そのまま減圧容器内を−91[kPaゲージ圧]の減圧状態に保持した。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面の高さは、H07+10mmとなった。
次に、いったん大気圧状態に戻して撹拌回転数300[rpm]で10分間撹拌して気泡を含んだ状態にした。引き続き減圧容器内の圧力を−91[kPaゲージ圧]の減圧状態にした。減圧容器の壁面に定規をあてて液面高さを測定したところ、液面高さはH05+39mmとなった。
さらに、撹拌回転数120[rpm]で5分間撹拌を継続したところ、液面高さがH07+8mmとなった。
次に、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。
目視では液中に気泡は観察できなかった。また、ステンレス製のプレートの凹部(縦20mm横20mm深さ2mm)に減圧容器内の組成物を満たし、顕微鏡で観察したところ、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
2バッチ目として大きな気泡を多数含む粘度650[mPa・s]の同じ組成物を用いて、−91[kPa](ゲージ圧)の減圧状態にして、撹拌回転数120[rpm]で液面高さがH07+8mmとなるまで攪拌を継続し、減圧状態から大気圧に戻して撹拌を10分間継続したのちに撹拌を停止した。顕微鏡で観察しても、10μm以上の大きさの気泡は観察できなかった。
〔実施例8〕
帝人化成(株)製パンライトAD9000TG(ポリカーボネート樹脂)を射出成形して透明円盤状基盤(直径120mm、板圧1.1mm)を得た。
図3に示す濾過部20の濾過素材20aとして、日本ポール製(プロファイル・スター、AB1A0503J)のフィルターエレメントを用い、実施例2で用いたコーティング材組成物を濾過させた。続いて、脱泡部21には、実施例2で用いた減圧容器で実施例2と同様の方法で脱泡した。次いで、減圧容器内のコーティング材組成物を送液装置23で連続的に塗布装置22に送液した。スピンコーター22bの上部に設置されたディスペンサーノズル22aから排出されたコーティング材組成物をスピンコーター22b上に固定した前述の透明円盤状基盤に塗布した。これに高圧水銀灯を照射させてコーティング材組成物を硬化させてコーティング材層を有する透明樹脂円盤を得た。これを顕微鏡で観察したが、異物や気泡は観察できなかった。
脱泡部は単純な構造であるので、品種切り替えの際には、分解して容易に洗浄が可能であった。なお、実施例2〜7及び比較例2の結果について、表1に示した。
Figure 2009274023
実施例1に示したとおり、本発明により、効率よく脱泡操作を完了させることができた。また、実施例2から実施例7までに示したとおり、減圧状態や液状物の粘度によらず、液状物の液面の高さを管理することにより、効率よく脱泡操作を完了させることができた。
また、実施例8に示したとおり、効率よく脱泡操作を行えた結果、気泡を含まない塗布を実現できた。
以上説明したとおり、本発明にかかる脱泡方法によれば、液状物に含まれる非常に微細な気泡の除去を効率よく行うことができる。特に、脱泡操作が困難な高粘度の液状物に対しても、微細な気泡を除去することができる。
また、本発明による塗布方法によれば、異物や微細な気泡が除去された液状物を被塗布物に高品質の状態で塗布することができる。また、品種切り替え作業が容易であり、環境対策として必要なガス処理装置なども低コストに抑ええることが可能なため、工業的に有利である
本発明の脱泡方法に用いる脱泡装置の一形態の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施例1で用いた脱泡装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の塗布方法に用いる一形態の概略構成を示す模式図である。
符号の説明
1 減圧容器
2 撹拌機構
2a 撹拌軸
2b 撹拌羽根
2c 邪魔板
3 減圧手段接続口
4 液状物
5 減圧手段
6 減圧手段排気口
7 液状物供給口
20 濾過部
20a 濾過素材
21 脱泡部
22 塗布部
22a ディスペンサーノズル
22b スピンコーター
23a 送液装置
23b 送液装置

Claims (7)

  1. 気泡を含んだ液状物を脱泡する方法において、
    前記液状物を入れる減圧容器と、該減圧容器内の圧力を制御する減圧手段と、前記液状物を撹拌する撹拌機構と、を少なくとも備える脱泡装置を用い、
    (1)前記液状物を前記減圧容器内において減圧下で撹拌する工程と、
    (2)前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻し、さらに撹拌する工程と、
    を有することを特徴とする脱泡方法。
  2. 前記工程(1)は、式(1)を満たすまで撹拌する請求項1に記載の脱泡方法。
    V≦V ・・・式(1)
    (V;大気圧下で気泡を含んでいない状態の前記液状物を前記減圧容器に入れて、大気圧から前記工程(1)における圧力に変化させたときのみかけ体積、V;前記工程(1)における脱泡処理の対象となる前記液状物のみかけ体積)
  3. 前記工程(1)は、式(2)を満たすまで撹拌する請求項1又は2に記載の脱泡方法。
    H≦H ・・・式(2)
    (H;大気圧下で気泡を含んでいない状態の前記液状物を前記減圧容器に入れて、大気圧から前記工程(1)における圧力に変化させたときの液面高さ、H;前記工程(1)における脱泡処理の対象となる前記液状物の液面高さ)
  4. 前記液状物の液面高さHを前記減圧容器中に設けた液面検知器によって判断する請求項3に記載の脱泡方法。
  5. 前記工程(2)において、前記液状物を撹拌しつつ前記減圧容器内の圧力を大気圧に戻す請求項1乃至4のいずれかに記載の脱泡方法。
  6. 前記液状物の粘度は100mPa・s以上である請求項1乃至5のいずれかに記載の脱泡方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の脱泡方法により脱泡された液状物を被塗布材料に塗布する液状物の塗布方法。
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