以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す側面図、図2はその平面図、図3及び図4は、図1に示した自走式破砕機に備えられた破砕装置12の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。なお、以下において、図1中の左・右に対応する方向を自走式破砕機の後・前、又は一方・他方とする。
図1及び図2において、本実施の形態の自走式破砕機は、自力走行を可能にする走行体1、走行体1上に設けられ受け入れた被破砕物を破砕する破砕機能構成部2、破砕機能構成部2で破砕された破砕物を搬送し機外に排出する排出コンベヤ3、搭載した各機器の動力源であるエンジン等を備えた動力装置(パワーユニット)4等によって概略構成されている。
走行体1は、トラックフレーム5と、このトラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7と、出力軸を駆動輪6の軸に連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8と、駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9とで構成されている。また、トラックフレーム5上には本体フレーム30が設けられており、この本体フレーム30によって、破砕機能構成部2、排出コンベヤ3及び動力装置4等が支持されている。
破砕機能構成部2は、投入される被破砕物を受け入れるホッパ10と、このホッパ10内に収容配置された被破砕物の搬送手段としての送りコンベヤ11(図2参照)と、この送りコンベヤ11によって導入された被破砕物を破砕する破砕装置12(図3及び図4参照)と、この破砕装置12の手前で破砕装置12に導入される被破砕物を送りコンベヤ11に押し付ける押圧ローラ装置13(図3及び図4参照)とを備えている。
送りコンベヤ11は、後述する破砕ロータ32側(破砕機前方側)に設けられたスプロケット状の駆動輪15と、その反対側(破砕機後方側)に設けた図示しない従動輪と、これら搬送方向両端部に設けた駆動輪15及び従動輪の間に巻回され、幅方向に複数列(例えば4列、図2参照)列設された搬送体(搬送ベルト、チェーンベルト)16とを備えている。
従動輪は、ホッパ10の側壁体17(図1参照)後部に設けた軸受18(図1参照)によって支持され、駆動輪15は、側壁体17の前方側に設けた破砕装置12の側面フレーム19(図3参照)に設けた軸受84によって支持されている。これにより、送りコンベヤ11は、上記ホッパ10内の下部、すなわちホッパ10の側壁体17の内側から破砕ロータ32(後述)近傍にかけ、ほぼ水平に延設されホッパ10及び破砕装置12の側面フレーム19内に収納配置されている。
送りコンベヤ11の駆動輪15の回転軸20は、軸受よりも幅方向外側に設けた駆動装置(図示せず)の出力軸にカップリング等を介して連結している。送りコンベヤ11は、その図示しない駆動装置で駆動輪15を回転駆動させることにより、駆動輪15及び従動輪の間で搬送体16を循環駆動させるようになっている。
押圧ローラ装置13は、破砕ロータ32(後述)の後方側に近接するように、かつ、送りコンベヤ11の上部にその搬送面に対向するように設けられており、送りコンベヤ11上を搬送される被破砕物を上部から押さえ込みながら破砕ロータ32に向かって破砕物を導入する。この押圧ローラ装置13は、破砕装置12の上方において側面フレーム19に設けた軸受21によってその回動軸22が軸支され、これにより鉛直面内を回動自在に(図3中上下方向に揺動自在に)支持された支持部材(アーム)23と、この支持部材23に対し回転自在に設けられた押えローラ24とを備えている。
支持部材23は、一端に回動軸22を備えたアーム部25と、このアーム部25の先端側(他端)に設けられ、押えローラ24を支持するブラケット部26とを備えている。アーム部25の下部側の端面(破砕ロータ32の上部に対向する端面)は円弧状に湾曲して形成されており、この湾曲部には、後述する破砕室31の一部を構成する湾曲板27が取付けられている。一方、ブラケット部26の押えローラ24取付け部分は、押えローラ24の径よりも小径の円弧状に形成されており、押えローラ24の外周面がブラケット部26から突出した構成となっている。押えローラ24の幅方向(図3中の紙面直交方向)の寸法は、送りコンベヤ11の搬送面の幅と同等かそれよりも大きく設定されている。
特に図示していないが、押えローラ24は、その胴部内に駆動装置を内蔵している。押えローラ24は、この図示しない駆動装置によって、送りコンベヤ11の搬送面上を搬送される被破砕物の搬送速度とほぼ同じ周速度で回転駆動され、押え込んだ送りコンベヤ11上の被破砕物を送りコンベヤ11と協動して破砕室31に導入するようになっている。
油圧シリンダ28は、そのボトム側先端部を側面フレーム19に固定したブラケット29にピン53を介して回動可能に連結され、そのロッド側先端部をアーム部25の後方側(図3中左側)先端部に設けられたブラケット54にピン82を介して回動可能に連結されている。この油圧シリンダ28の伸縮動作により、押圧ローラ装置13を回動軸22を中心に回動させ、送りコンベヤ11(破砕装置12)に対して上げ下げ(言い換えれば、破砕装置12に対し離間又は近接)させることが可能なようになっている。
破砕装置12は、本体フレーム30(図1参照)の長手方向ほぼ中央部に位置し、図3に示すように、破砕室31内で高速回転する破砕ロータ32と、この破砕ロータ32の径方向外側に設けられたアンビル(固定刃)33と、このアンビル33や破砕ロータ32などを保護する保護装置14とを備えている。破砕ロータ32の周囲には、送りコンベヤ11及び押えローラ24によって被破砕物が供給される部分(破砕装置12の後方部分)から破砕ロータ32の正転方向(図3中の時計回り方向、破砕物流通方向)に、湾曲板27、アンビル33、湾曲板39、スクリーン(篩部材)40が破砕ロータ32を包囲するように設けられており、これら湾曲板27、アンビル33、湾曲板39、スクリーン40等によって破砕ロータ32周りに破砕片が周回する円筒状の空間である上記破砕室31が画定されている。
破砕ロータ32は、破砕装置12の側面フレーム19(又は本体フレーム30上に別途設けた図示しない支持部材)等に設けた軸受(図示せず)に回転自在に支持されており、その外周部には、複数の支持部材34と、各支持部材34の正転方向前面側にボルト38で取り付けられた破砕ビット(衝突板、或いは破砕刃等)35とを備えている。破砕ビット35は、破砕ロータ32が正転方向に回転する際にその刃面が支持部材34に先行するように配置されており、この刃面により被破砕物を打撃する。
アンビル33は、破砕室31に導入された被破砕物が衝突する衝突面33aを有しており、破砕ロータ32の回転に伴って破砕室31内を周回する破砕片(被破砕物)に衝突面33aが対向するように、ハウジング41における上記湾曲板39の取り付け部よりも破砕ロータ32の正転方向上流側に支持部材51を介して取り付けられている。支持部材51は突起部を有しており、この突起部によりアンビル33に係合され、図示しないボルト等でハウジング41に取り付けられている。
ハウジング41は、破砕室31側にアンビル33を保持し、前出の押圧ローラ装置13の回動軸22の上方にて側面フレーム19に設けられた軸受47に支持された回動軸42を支点に前後方向に回動可能に支持され、その回動軸42から見て前側(図中右側)に延ばした前端部に前方に突出する架かり部46を備えている。ハウジング41は、その回動軸42(支点)からアンビル33(力点)までの距離と架かり部46(作用点)までの長さ(距離)とがほぼ等しくなるように形成されており、アンビル33(力点)にかかる負荷とほぼ同じ負荷が架かり部46(作用点)に作用する。通常時(破砕作業時)はハウジング41の架かり部46が側面フレーム19の内壁面に設けられた保護装置14(詳細は後述)の突起部44に支持され、アンビル33が破砕室31内において被破砕物と対向する閉位置(図3に示す位置)に保持されている。破砕作業中にアンビル33に過大な負荷がかかった場合、保護装置14にも同程度の負荷がかかり、この保護装置14が開方向(図3中時計回り方向)に回動してハウジング41の拘束が解かれ、ハウジング41が回動軸42を中心に、アンビル33が破砕室31から退避する開位置(図4に示す位置)まで回動する構成である。
スクリーン40は、湾曲板39の破砕物流通方向下流側、かつ破砕ロータ32の径方向外側に設けられ、破砕ロータ32と同心の円にほぼ沿って湾曲している。また、スクリーン40は、破砕ロータ32に対向する内径面から反対面に貫通し、破砕物を破砕機外に排出する複数の排出孔(図示せず)を有している。この図示しない排出孔の孔径Rより小さくなった破砕物が破砕機外に排出される。
破砕ロータ32の下方には、スクリーン40を破砕ロータ32の外周側位置に保持する枠型のスクリーン支持部材(スクリーンホルダ)63が設けられている。このスクリーン支持部材63は、後端部が回動軸64を介して側面フレーム19(又は本体フレーム30上に別途設けた図示しない支持部材)に固定され、回動軸64を中心に上下方向に回動する構成となっている。スクリーン支持部材63の前端部には、スクリーン支持部材63を破砕ロータ32に対して進退させるリンク機構69が設けられている。
リンク機構69は、側面フレーム19に固定されたブラケット67にボトム側端部をピン68を介して回動可能に連結された油圧シリンダ66と、油圧シリンダ66のロッド側端部に設けられ、油圧シリンダ66の伸縮に伴って前後に移動するスライダ70と、スクリーン支持部材63の前端部とスライダ70に両端が回動自在に連結されたリンク72とを備えており、シリンダ66が縮むとスクリーン支持部材63が図3の状態から下降するようになっている。
図3に示した状態は破砕作業時のものであり、リンク機構69は油圧シリンダ66を伸長させることによってスクリーン支持部材63の姿勢を保持している。油圧シリンダ66を縮短させると、リンク72の他方側端部(図3中、下側端部)がシリンダ66の縮退方向(図3中、右方向)へ平行移動し、スクリーン支持部材63が回動軸64を中心に下方へ回動する。このようにスクリーン支持部材63を下降させると、側面フレーム19の下部に形成した切り欠き部(図示せず)からスクリーン支持部材63に載置されたスクリーン40を側方に引き抜くことができ、容易にスクリーン40を交換することができる。
ここで、図1及び図2に戻る。排出コンベヤ3は、排出側(前方側、図1及び図2中右側)部分が、動力装置4から突出して設けた支持部材75によって吊り下げ支持されている。また、その反対側(後方側、図1及び図2中左側)部分は、支持部材36を介して本体フレーム30から吊り下げ支持されている。これにより、排出コンベヤ3は、破砕装置12の下方から動力装置4の下方を通され、動力装置4の下方から自走式破砕機前方側外方へ上り傾斜となるように配置されている。排出コンベヤ3は、フレーム77と、このフレーム77の長手方向両端に設けた駆動輪(図示せず)と従動輪(図示せず)との間に巻回したコンベヤベルト(図示せず)上に設けたコンベヤカバー78とを備えている。また、排出コンベヤ3の駆動輪(図示せず)は、軸受よりも幅方向外側に設けた駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)79の出力軸にカップリング等を介して連結されており、この駆動装置79を回転駆動させることにより、駆動輪及び従動輪の間でコンベヤベルトを循環駆動させるようになっている。
また、動力装置4は、本体フレーム30の長手方向他方側(図1及び図2中右側)端部上に、支持部材80を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ幅方向一方側(図2中下側)の区画には、運転席81が設けられており、この運転席81前方(図2中右側)には走行操作用の操作レバー85が設けられている。また、自走式破砕機における運転席81の下方側面には、走行操作以外の操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤83が設けられている。
ここで、前述した保護装置14の詳細を図5及び図6を用いて説明する。
図5は、図3に示した保護装置14及びハウジング41を周辺構成とともに抜き出して示す平面図である。図5中、上・下の方向が図1〜図4に示した自走式破砕機の後・前の方向に対応している。
保護装置14は、機体幅方向一方側(図中左側)一端を図中左側の側面フレーム19の内壁面に設けたベアリング45aと、反対側(図中右側)の側面フレーム19に設けたトルクリミッタ43と、これらベアリング45a及びトルクリミッタ43に両端が支持されたシャフト45と、シャフト45の周胴部に設けた突起部44とを備えている。
シャフト45は、ハウジング41の回動軸42と同じく(機体の)左右方向に延び、回動軸42の前方においてハウジング41の架かり部46の回動半径の外側に配置されている。
突起部44は、図中左右の側面フレーム19,19のほぼ中央、すなわち、ハウジング41の架かり部46に対応する位置にシャフト45の径方向に突出して設けられており、シャフト45の回転に伴ってハウジング41の架かり部46の回転半径内に出入りする。ハウジング41が平位置にあるとき、この突起部44がハウジング41の架かり部46を押さえ、アンビル33が破砕室31に臨む姿勢で保持される。
トルクリミッタ43は、シャフト45の回転動作に対して初動負荷を与えることにより、破砕ロータ32の破砕ビット35とアンビル33の間に過負荷が加わった場合に、そのアンビル33の回動退避を許容する回動退避許容手段である。つまり、突起部44がハウジング41の架かり部46を拘束する力の大きさがトルクリミッタ43により与えられるシャフト45の初動負荷に依存して設定される。このトルクリミッタ43はカバー49により覆われており、被破砕物を破砕した場合に発生する粉塵等がトルクリミッタ43内に進入するのを防止している。
次に、図6を用いてトルクリミッタ43の詳細を説明する。図6は、図5に示したトルクリミッタ43の中心線を含む平面における断面図である。
図6において、トルクリミッタ43は、フランジ部91に複数の凹部93を有する筒状のハブ90と、ハブ90を嵌挿するとともにハブ90の複数の凹部93にそれぞれ対向する位置に複数の貫通孔97を有する取り付けリング92と、取り付けリング92の貫通孔97内にそれぞれ挿入され、この取り付けリング92の厚みよりも直径の大きな複数の剛球94と、ハブ90を緩挿する鋼球押さえ部材86と、ハブ90を緩挿するワッシャー87と、ハブ90を緩挿し、剛球押さえ部材86とワッシャー87を介して剛球94をハブ90のフランジ部91側(機体幅方向外側)に付勢する付勢手段としてのバネ95と、ハブ90を緩挿するバネ押さえ部材88と、内周にめねじ部を設けられ、ハブ90の外周に設けられたおねじ部に螺着されたブラケット89と、外周におねじ部を設けられ、ブラケット89の孔部96aの内周に設けられためねじ部に螺着された頭無しのボルト98と、内周にめねじ部を設けられ、ボルト98の外周に設けられたおねじ部に螺着された締め付けナット96とを備えている。ハブ90は、シャフト45の一端に、取り付けリング92は側面フレーム19にそれぞれボルト等により連結されている。
取り付けリング92の貫通孔97は、ハブ90のフランジ部91に設けた凹部93と対向する位置に設けてあり、この貫通孔97内に設けた鋼球94が凹部93にはまり込み、バネ95のばね力をワッシャー87及び剛球押さえ部材86を介して剛球94に加えることにより、取り付けリング92に対するハブ90の回転方向の運動を制限している(取り付けリング92に対してハブ90が回転方向に保持されている)。そして、予め設定した負荷(初動負荷)を超える負荷(トルク)が突起部44及びシャフト45を介してハブ90に加わると鋼球94がバネ95のバネ力に抗して凹部93から出て、取り付けリング92に対してハブ90が回転し、その結果、シャフト45の突起部44がハウジング41の架かり部46を解放するようになっている。
ボルト98は、バネ95による剛球94への付勢力を調整する負荷調整手段である。ボルト98の図中上方の一端(頭部)には六角穴が設けられており、ボルト98を六角レンチ等によりブラケット89に対して回転することにより、ハブ90のフランジ部91側(図中下方向)又は逆側(図中上方向)に移動する。ボルト98が図中下方向に移動すると、剛球94に対するバネ95の付勢力が大きくなり、従ってハブ90(シャフト45)の回転動作に対して与える初動負荷が大きくなる。逆に、ボルト98が図中上方向に移動すると、剛球94に対するバネ95の付勢力が小さくなり、従ってハブ90の回転動作に対して与える初動負荷が小さくなる。
締め付けナット96は、ブラケット89に対するボルト98の回動を制限するものであり、ボルト98に対して締め付けナット96を締め付けることにより、ボルト98を固定する。
前述のように、ハブ90のフランジ部91に設けられた凹部93と取り付けリング92に設けられた複数の貫通孔97は、それぞれ対向する位置に設けられている。一方で、複数の凹部93及び貫通孔97は、貫通孔97の剛球94と凹部93が全て嵌め合う位置が周方向に関して一箇所(保持位置)のみとなるように、周方向に不等間隔に配置されている。したがって、取り付けリング92に対してハブ90を保持位置に回転する場合の周方向の位置出しが容易である。
ここで、図3及び図4に戻る。ハウジング41は、破砕作業時(図3の状態のとき)には、その架かり部46を側面フレーム19に備えられた保護装置14の突起部44により閉位置、すなわち、アンビル33が破砕ビット35の回転軌道の近傍に配置されるような姿勢で固定、保持されている。このように構成することによって、アンビル33に保護装置14に予め設定した基準を超えた衝撃荷重がかかった場合等には、保護装置14の突起部44が開方向に回動してハウジング41(架かり部46)の拘束が解かれ、ハウジング41(アンビル33)が回動軸42を回動して破砕室31から退避するようになっており、各部の損傷が防止される。また、側面フレーム19には、支持部材48を介してストッパ50が備えられており、このストッパ50によりアンビル33の退避方向へのハウジング41の回動範囲が制限され、ハウジング41と他の構成部材との干渉を防止するようになっている。
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ10内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ11の搬送ベルト16上に載置され、循環駆動する搬送ベルト16によって破砕装置12に向かって搬送される。被破砕物が押圧ローラ装置13付近まで搬送されると、押えローラ24が被破砕物上に乗り上げ、押えローラ24の自重により被破砕物が送りコンベヤ11の搬送面に押し付けられる格好となる。このようにして押えローラ24は、送りコンベヤ11との間に被破砕物を挟持した状態で、送りコンベヤ11と協働して破砕室31へ被破砕物を導入する。その際、被破砕物は押えローラ24と送りコンベヤ11とに挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕室31内に向かって突出する。
破砕室31内に突出した被破砕物には高速回転する破砕ロータ32の破砕ビット35が下方から衝突し、これにより被破砕物が粗破砕される(1次破砕)。このように粗破砕されて破砕室31内に跳ね上げられた被破片はアンビル33に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕される。破砕片はその後も破砕ロータ32の回転に伴って破砕室31内を周回し破砕ビット35、アンビル33、破砕室31の内壁面等と衝突して破砕される(2次破砕)。そして、周回する破砕片のうちスクリーン40の排出孔を通過する大きさに細粒化されたものが順次スクリーン40を通過して破砕室31から排出される。破砕室31から排出された破砕物は、排出コンベヤ3上に落下して排出コンベヤ3によって搬送され機外に排出される。
上記のように破砕作業を行うとき、前述の2次破砕が行われる際に、万一、破砕ビット35とアンビル33の間に石や金属などの異物が噛み込んだ場合には、破砕ビット35からアンビル33に過大な負荷が加わり、その負荷がハウジング41の架かり部46を介して保護装置14の突起部44及びシャフト45に伝わる。
保護装置14のトルクリミッタ43は前述のように、シャフト45に接続されたハブ90に過大な回転負荷(初動負荷以上の負荷)が加わると剛球94が凹部93から外れて保持を開放する構造になっているので、図4に示したように、ハウジング41とアンビル33は側面フレーム19に対して回動軸42を中心に回動退避する。
ハウジング41が回動した際のハウジング41の跳ね上がり衝撃力はストッパ50により吸収される。また、ハウジング41は自重で元の位置(閉位置)に戻る。但し、図示しない位置センサなどにより、ハウジング41の退避を検出すると、自走式破砕機は被破砕物の破砕動作、すなわち、被破砕物の搬入(コンベヤ11の動作)、破砕ロータ32の回転等を停止する。
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態においては、ハウジング41のアンビル33と反対側に架かり部46を設け、この架かり部46の動作を突起部44及びシャフト45を介してトルクリミッタ43により許容するよう構成したので、万一、破砕ビット35とアンビル33の間に石や金属などの異物が噛み込んだ場合にも、トルクリミッタ43が作動(回転)することによりアンビル33を支持するハウジング41が回動し、アンビル33は破砕室31から退避する。これにより過大な負荷が破砕ビット35を介して破砕ロータ32の軸受やアンビル33を含む構造物に加わることを防止することができ、その結果、破砕ロータの軸受や構造物が破損することを防止することができる。
また、ハウジング41の回動中心にトルクリミッタ43を設けた構成と比較して固定刃に加わる衝撃力によりトルクリミッタ43に加わるトルクが小さいので、ハウジング41の保持力を増加させるためにトルクリミッタ43を大型化する必要がなく、狭隘な破砕機内のスペースにおいても十分な保持力を確保することができる。
さらに、トルクリミッタ43は、鋼球94が凹部93から外れ、取り付けリング92に対してハブ90が回転し保持を解放するよう構成したので、アンビル33を保持するハウジング41を閉位置に戻し、トルクリミッタ43を所定の位置に戻すだけで剛球94が凹部93にはまり込み、アンビル33を所定の位置に固定することができる。よって、シャーピンの折損時のように新しい部品の交換を必要とせず、容易かつ迅速に作業復帰することができる。その結果、破砕作業効率の低下を防止することができる。
また、トルクリミッタ43を作動(回転)させるのに要する初動負荷を調整する付勢力調整手段を設けたので、被破砕物の硬さ(強度)によって初動負荷を調整することによって破砕作業時にハウジング41が回動退避する頻度を調整することができる。例えば、異物混入の可能性が少く破砕しやすい性状の被破砕物の場合には、破砕装置が過負荷状態に陥り難いので、初動負荷を大きく設定し、被破砕物をより確実に破砕できるようにする。その一方で、例えば混合廃棄物などのように異物混入の可能性が高い被破砕物の場合には、破砕装置が過負荷状態に陥り易いので、初動負荷を小さく設定し、固定刃33が退避し易いようにすることで破砕装置の損傷を抑制する。このように、破砕ロータ32の軸受や構造物の破損の抑制と被破砕物の破砕力の確保の両方を考慮した初動負荷を設定することができ、効率よく破砕作業を行うことができる。
さらに、ハウジング41の回動軸42からアンビル33までの距離と架かり部46までの長さとがほぼ等しくなるように形成したので、架かり部46にかかる負荷とアンビル33にかかる負荷とがほぼ同じとなり、したがって、アンビル33にかかる負荷を考慮してトルクリミッタ43の初動負荷を設定することが容易である。また、ハウジング41及び保護装置14の設置スペースが制限される場合は、ハウジング41の回動軸42からアンビル33までの長さに対して回動軸42から架かり部46までの長さ(距離)を短縮しても良い。この場合、アンビル33(力点)にかかる負荷よりも大きな負荷が架かり部46(作用点)に作用するが、バネ95のバネ力の調整やトルクリミッタ43の増設などによりハウジング41の架かり部46を保持する保持力を大きくすることで対応可能である。逆に、ハウジング41及び保護装置14の設置スペースに余裕がある場合は、ハウジング41の回動軸42からアンビル33までの長さ(力点側の長さ)に対して回動軸42から架かり部46までの長さ(作用点側の長さ)を長くしても良い。この場合、アンビル33(力点)にかかる負荷よりも小さな負荷が架かり部46(作用点)に作用するので、トルクリミッタ43がハウジング41の架かり部46を保持する保持力に余裕をもたせることができ、したがって、トルクリミッタ43の小型化等の効果が期待できる。
なお、本実施の形態においては、シャフト45の一端のみにトルクリミッタ43を設けた場合を例にとり説明したが、これに限られず、例えば図7に示すようにシャフト45の両端にトルクリミッタ43を設けても良い。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態においては、取り付けリング92の貫通孔97内に挿入された剛球94をハブ90のフランジ部91側に付勢して、初動負荷を与えるように構成したがこれに限られず、例えば、剛球94を用いず、静止摩擦力で初動負荷を与える構成も考えられる。この場合、例えばバネ95により取り付けリング92をハブ90のフランジ部91側に付勢し、取り付けリング92とフランジ部91の間の静止摩擦力を初動負荷として用いる構成が一例に挙げられる。この場合においてもナット96が負荷調整手段である。その他、平面間の摩擦力に限らず、内筒と外筒の周面間の静止摩擦力による回転摺動抵抗を利用することも考えられる。
さらに、本実施の形態においては、剛球95をハブ90のフランジ部91に付勢する付勢手段としてバネ96を用いる場合を例に取り説明したが、これに換えて、金属板バネやエアシリンダ等を付勢手段として用いても良い。
本発明の第2の実施の形態を図8〜図11を用いて説明する。
本実施の形態は、第1の実施の形態で示した破砕装置12の保護装置14をタブ式の自走式破砕機に用いたものである。各図中、第1の実施の形態と同等の部材には、その符号を100番台として示し適宜説明を省略する。
図8は本発明の第2の実施の形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す側面図、図9はその平面図、図10及び図11は、図8に示した自走式破砕機に備えられた破砕装置112の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。なお、以下において、図8中の左・右に対応する方向を自走式破砕機の後・前、又は一方・他方とする。
図10及び図11において、本実施の形態の自走式破砕機は、自力走行を可能にする走行体101、走行体101上に設けられ受け入れた被破砕物を破砕する破砕機能構成部102、破砕機能構成部102で破砕された破砕物を搬送し機外に排出する排出コンベヤ103、搭載した各機器の動力源であるエンジン等を備えた動力装置(パワーユニット)104等によって概略構成されている。
破砕機能構成部102は、自走式破砕機の上方(図1中上方向)に設けられ、その上方に設けた開口部から被破砕物をほぼ鉛直上方から受け入れて貯留する略円筒形状の回転式貯留手段(回転式タブ)99と、この回転式タブ99の下方に設けられ、回転式タブ99によって導入された被破砕物を破砕する破砕装置112(図10及び図11参照)とを備えている。
回転式タブ99は、図示しない油圧モータにより回転駆動されることにより、その内部に蓄えた多数の被破砕部を順次破砕装置112に導入する。
破砕装置112は、図10に示すように、破砕室131内で高速回転する破砕ロータ132と、この破砕ロータ132の径方向外側に設けられたアンビル(固定刃)133と、このアンビル133や破砕ロータ132などを保護する保護装置114とを備えている。破砕ロータ132の周囲には、回転式タブ99によって被破砕物が供給される部分(破砕装置112の上方部分)から破砕ロータ132の正転方向(図10中の時計回り方向、破砕物流通方向)に、アンビル133、湾曲板139、スクリーン(篩部材)140が破砕ロータ132を包囲するように設けられており、これらアンビル133、湾曲板139、スクリーン140等によって破砕ロータ132周りに破砕片が周回する円筒状の空間である上記破砕室131が画定されている。
ハウジング141は、破砕室131側にアンビル133を保持し、前出の回転式タブ99の下方にて自走式破砕機の側面フレーム119に設けられた軸受(図示せず)に支持された回動軸142を支点に前後方向に回動可能に支持され、その回動軸142から見て後方向斜め下側(図中右下側)に延ばした端部に突出する架かり部146を備えている。
通常時(破砕作業時)はハウジング141の架かり部146が側面フレーム119の内壁面に設けられた保護装置114の突起部144に支持され、アンビル133が破砕室131内において被破砕物と対向する閉位置(図10に示す位置)において回動動作が拘束されている。破砕作業中にアンビル133に過大な負荷がかかった場合、保護装置114が開方向(図10中時計回り方向)に回動してハウジング141の拘束が解かれ、ハウジング141が回動軸142を中心に、アンビル133が破砕室131から退避するする開位置(図11に示す位置)まで回動する構成である。
その他の構成は、本実施の形態の第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によって回転式タブ99内に被破砕物を投入すると、回転式タブ99が回転することによって、回転式タブ99内部に蓄えた多数の被破砕部が破砕装置112に導入される。
破砕室131内に導入された被破砕物には高速回転する破砕ロータ132の破砕ビット135が衝突して被破砕物が粗破砕され、その被破片はアンビル133に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕される。破砕片はその後も破砕ロータ132の回転に伴って破砕室131内を周回し破砕ビット135、アンビル133、破砕室131の内壁面等と衝突して破砕される。そして、周回する破砕片のうちスクリーン140の排出孔を通過する大きさに細粒化されたものが順次スクリーン140を通過して破砕室131から排出される。破砕室131から排出された破砕物は、排出コンベヤ103上に落下して排出コンベヤ103によって搬送され機外に排出される。
上記のように破砕作業を行うとき、万一、破砕ビット135とアンビル133の間に石や金属などの異物が噛み込んだ場合には、破砕ビット135からアンビル133に過大な負荷が加わり、その負荷がハウジング141の架かり部146を介して保護装置114の突起部144及びシャフト145に伝わる。
保護装置114のトルクリミッタ143は第1の実施の形態で説明したように、シャフト145を介して過大な回転負荷が加わると保持を開放する構造になっているので、図11に示したように、ハウジング141とアンビル133は側面フレーム119に対して回動軸142を中心に回動退避する。
ハウジング141が回動退避した際のハウジング141の跳ね上がり衝撃力は図示しないストッパにより吸収される。また、ハウジング141は自重で元の位置(閉位置)に戻る。但し、図示しない位置センサなどにより、ハウジング141の退避を検出すると、自走式破砕機は被破砕物の破砕動作、すなわち、被破砕物の搬入(回転式タブ99の回転動作)、破砕ロータ132の回転等を停止する。
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることが出来る。