JP2009268299A - 磁束分流制御回転電機システム - Google Patents

磁束分流制御回転電機システム Download PDF

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Abstract

【課題】
磁石励磁回転電機に於いて,エネルギー効率の良い磁束分流制御回転電機システムを提供する。
【解決手段】
電機子に対向する界磁部分を二分して相対偏倚可能に構成し,界磁磁石には界磁磁石からの磁束を電機子を介して環流する主磁路及び界磁部内で環流するバイパス磁路が並列接続され,主磁路を流れる磁束量を機械的な偏倚により制御する。これにより磁束量制御を容易とする回転電機システム,磁束量制御方法が実現される。さらに上記磁路の磁気抵抗を調整して両磁路間の短絡磁束量を小さく,偏倚に必要な力を小とする手段,方法が提案されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は,永久磁石界磁を持つ回転電機に関し,特に弱め界磁制御により出力を最適に制御する回転電機システムに関する。
永久磁石界磁と電機子との相対的回転によって電磁的に生ずる電力を取り出す発電機,或いは電機子に供給する電流によって生ずる磁界と永久磁石界磁との相互作用により永久磁石界磁と電機子との相対的回転を生ずる電動機等の回転電機装置はエネルギー効率に優れ,永久磁石の技術的進歩に伴い日常的に広く使われている。しかしそのような回転電機は、界磁からの磁束が一定であるので電動機として用いられるにしても発電機として用いられるにしても広い回転速度範囲で常に最適の出力が得られる訳ではない。すなわち,電動機の場合は高速回転域では逆起電力(発電電圧)が高すぎる結果となって制御が困難となり,弱め界磁制御として界磁強度を弱める種々の手段が提案されている。また発電機の場合,広い回転速度範囲に於いて発電電圧を所定のレベルとする為に専ら界磁電流制御による定電圧発電或いは半導体による発電電圧の定電圧化回路が用いられている。
電動機では進み位相電流による弱め界磁制御が広く採用されているが,回転に直接寄与しない電流を流す為にエネルギー損失を大とする。永久磁石励磁に制御用電流励磁を併用する場合は回転電機の構造を複雑にし,その上にエネルギー損失を伴う。さらに発電機の場合,大電力での定電圧化電子回路のコスト負担が大であるとの問題があった。したがって,回転電機装置の構成を工夫して電子回路制御を最小限に留めて装置全体としてのコストを低減する方策は以前から求められ,種々の提案が為されてきた。
上記提案例に界磁回転子を二分し,二つの界磁回転子を周方向に相対偏倚させて実効的に界磁強度を制御する方法がある(特許文献1)。前記相対偏倚は機構的に保持出来るので制御の為のエネルギー損失は少ない長所はあるが,電機子に流入する界磁磁束量は変わらないので高速回転域で渦電流損が大きい欠点がある。他の提案例に界磁磁石を含む磁気回路の磁気抵抗を変えて磁束を制御する方法がある(特許文献2,3)。更に他の提案例として界磁磁石を短絡制御する方法がある(特許文献4,5,6)。一般に磁石を含む磁気回路に可動部分が存在する場合,磁気回路を流れる磁束を大にする方向(磁気抵抗を小にする方向)に可動部分を偏倚させようとする磁気力が存在する。界磁磁石は回転電機装置に於いて,力を発生し或いは電力を発生する源泉である。上記提案はこれら力の源泉を直接に制御しようとする試みであって,機構の偏倚制御に大きな力を要すると共に部材の振動或いはハンチング等を招来して精密な制御は難しい。さらに大出力のアクチュエータ,過分な機械強度を伴う制御機構等を必要として実現には困難を伴っている。
本願発明者は先に特願2007−212690により,永久磁石界磁の制御方法及び回転電機システムを提案した。界磁磁石に磁束が電機子側を通る主磁路,及び電機子を通らないバイパス磁路を並列に接続する構成として機構偏倚により主磁路に分流する界磁磁束量を変える構造であり,次の特徴がある。すなわち,(1)界磁磁石を減磁させる懸念の無い事,(2)界磁制御に際して機構偏倚を妨げる磁気力発生を抑制できる事,(3)界磁の条件保存が可能な機構手段である事,(4)電機子側への界磁磁束をゼロ近傍にまで減少できて渦電流損を抑制出来る事,(5)電機子と対向する磁性体突極を流れる界磁磁束をゼロ近傍にまで制御して磁性体突極の磁性体全てをリラクタンストルク発生に開放可能な構成である事,等々である。
しかしながら,量産段階で各部材は公差範囲内でバラツキ,また経時的変化,さらには運転状態により主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が設計値よりずれる事で磁路の磁気抵抗は変動し,上記機構偏倚を妨げる磁気力が現れる場合がある。また,主磁路とバイパス磁路,それぞれの磁気抵抗間の差が大になると,磁路間の短絡磁束量が大となり,磁束量の分流制御の精度が著しく損なわれる場合がある。
米国特許3713015「ALTERNATING CURRENT GENERATOR HAVING A TWIN PM ROTOR WHICH IS ADJUSTABLE IN RESPONSE TO OUTPUT VOLTAGE」 特開2004−320864「同期回転電機及びその制御方法」 特開2004−328944「磁束制御型発電機」 米国特許4885493「Output voltage control apparatus of a permanent magnet alternator」 特開2004−357357「永久磁石形モータ及び洗濯機」 特開2006−246662「永久磁石式回転機」
したがって,本発明が解決しようとする課題は,主磁路及びバイパス磁路間での短絡磁束量を低減して精密な磁束量制御を可能として出力を最適に制御できる回転電機システム及び磁束量制御方法を提供する事である。
本発明による回転電機システムは,電機子を流れる磁束量を機構偏倚により変える事が出来る。その具体的な構成は以下の通りである。
請求項1の発明は,電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する界磁部とを有する回転電機であって,界磁部には表面磁極部と励磁部とが配置され,表面磁極部は電機子との対向面に複数の磁性体突極が周方向に配置されると共に励磁部との対向面には磁性体突極延長部及びバイパス磁極が配置され,励磁部は界磁磁石を有して界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極は磁性体突極延長部及びバイパス磁極に対向し,隣接する磁性体突極を互いに異極に磁化するよう配置され,界磁磁石の一方の磁極から磁性体突極延長部に流入した磁束が電機子,隣接磁性体突極を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路及びバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とが界磁磁石に並列に接続され,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう構成され,表面磁極部或いは励磁部の何れかが可動磁極部として界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変える事が出来るよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成され,回転電機システムの出力が最適化されるように前記出力に応じて可動磁極部が偏倚して電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする回転電機システムである。
上記構成に於いて,界磁磁石に磁性体突極延長部及びバイパス磁極が微小間隙を介して対向し,磁束は界磁磁石及び磁性体近傍ではそれらの境界面にほぼ直交するので界磁磁石からの磁束はほぼ層流状に磁性体突極延長部及びバイパス磁極に流入し,磁性体突極延長部に分流される磁束量は磁性体突極延長部と界磁磁石の対向面積に比例する。さらに主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう構成されているのでそれぞれの磁路の磁気抵抗間に差が現れる場合でも磁路間の短絡磁束量は小さく抑えられ,磁束量の精密な制御が可能になる。また,主磁路に流入する磁束量を変更しても界磁磁石にはバイパス磁路が接続されているので界磁磁石が減磁されるリスクは避けられる。主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯との相対位置により変動するが,本発明で主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯間の各相対位置に関して平均化された値を示している。
しかし,磁路の磁気抵抗を変動させる要因は多い。すなわち,量産段階で部品寸法は設定公差内でばらついて各磁路の磁気抵抗を変動させ,磁路間の磁束漏洩が無視できない場合は可動磁極部の偏倚位置が各磁路の磁気抵抗に影響し,磁性体の透磁率は温度の影響を受けやすいので各磁路の磁気抵抗は変化する。更にまた電機子コイルに電流が流れると主磁路の磁気抵抗は実効的に変動する。このように各磁路の磁気抵抗は変動するので回転電機システムの仕様に合わせて回転子の静止状態或いは平均的な運転条件に於いて主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう設定する。
回転電機には,界磁部が回転し電機子が静止する構造及びその逆の構造,さらに円筒状の電機子と界磁部が径方向に空隙を介して対向する構造,或いは略円盤状の電機子と界磁部が軸方向に空隙を介して対向する構造等のいずれの構造も存在する。本発明は永久磁石励磁の界磁部を持つ上記何れの構造の回転電機にも適用される。また,回転電機は電機子コイルへの電流を入力として回転力を出力とすれば電動機であり,回転力を入力として電機子コイルから電流を出力すれば発電機である。電動機或いは発電機に於いて最適の磁極構成は存在するが,可逆的であり,上記の回転電機システムは電動機,発電機の何れにも適用される。
請求項2の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,バイパス磁路の磁気抵抗及び主磁路の磁気抵抗が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定される事を特徴とする。前記主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する事により磁路間の短絡磁束量は小さく抑えられる。さらに界磁磁石からの磁束総量は一定に保たれるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力を小として精密な磁束量制御を可能にする。「ほぼ等しい」の意味は回転電機システムの仕様に沿って前記短絡磁束量が許容レベルに抑えられるよう,或いは前記偏倚に用いるアクチュエータの出力以下に前記偏倚を妨げる磁気力を抑制するよう両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する事である。
請求項3の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗が調整される事を特徴とする。前記磁気抵抗調整手段を有して回転電機の製造後或いは運転中に主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差を小として精密な磁束量制御を可能にする提案をし,さらに,回転電機の運転条件により変わる磁路の磁気抵抗に適合させる。磁気抵抗調整の具体的な手段,方法として磁路の一部に配置した磁気空隙寸法諸元の変更制御及び磁路に巻回したコイルへの通電制御等を提案している。さらに温度或いは磁気飽和等を利用して磁性体の磁気特性を制御する方法も可能である。
請求項4の発明は,請求項3記載の回転電機システムに於いて,磁気抵抗調整手段としてバイパス磁路内の空隙に於ける空隙長調整手段を有する事を特徴とする。空隙長調整手段はバイパス磁路に設けた空隙を構成する部材の位置を変えて空隙長を変える。回転電機の組み立て後の調整,或いはアクチュエータを用いて動作中に調整制御する。
請求項5の発明は,請求項3記載の回転電機システムに於いて,磁気抵抗調整手段としてバイパス磁路に巻回した磁気抵抗調整コイルを有する事を特徴とする。バイパス磁路に磁気抵抗調整コイルを配置し,供給する電流量により実効的にバイパス磁路の磁気抵抗を調整する。
請求項6の発明は,請求項3記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,前記磁気力が予め定められた範囲内になるよう磁気抵抗調整手段により主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大とする事を特徴とする。
主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は,可動磁極部の偏倚位置の影響を受け,温度による磁気特性変化,さらに経時的な磁気特性変化等の影響を受ける。本発明は主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事で現れる磁気力の検知手段を有し,主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗の差の程度を検知し,磁気抵抗調整手段を制御する。静止状態或いは平均的な運転条件に於いて主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定し,本発明に沿って連続的に主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を調整すれば,常に磁路間の短絡磁束量を小さく抑え,さらに偏倚を妨げる磁気力を小さく抑える事が出来て精密な磁束量制御を実現できる。
請求項7の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石から磁性体突極に至る磁路の一部が磁性体突極の平均的な導電率より大きい磁性体で構成される事を特徴とする。磁性体突極と磁性体歯との相対関係に応じて電機子コイルに流れる電流により主磁路の磁気抵抗は実効的に脈動し,脈動的な磁路間の磁束漏洩及び磁気力が発生する。本発明は両磁路間の磁束漏洩を小とするよう形状及び配置を設定するのは当然として,さらに界磁磁石から磁性体突極に至る磁路の一部を磁性体突極の平均的な導電率より大きい素材で構成して高周波数帯域の交流磁束を通り難い構成を提案している。この構成により磁路間の脈動的な磁束漏洩を減少させて精密な磁束量制御が可能となる。
請求項8の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに可動磁極部の偏倚規制手段を有し,界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの面積を変わる範囲内に可動磁極部の相対偏倚量が規制される事を特徴とする。可動磁極部の相対偏倚量と磁性体突極延長部に分流される界磁磁束量とが比例し,磁束量制御をシンプルに出来る。
請求項9の発明は,請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,回転力を入力とし,発電電力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より大の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を小とされ,発電電圧が所定の値より小の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を大とされ,発電電圧が所定の値に制御される事を特徴とする回転電機システムである。広範な回転速度範囲で定電圧の発電電圧を得る事が出来,高価な電圧制御装置を不要とし,エネルギー効率を向上出来る。
請求項10の発明は,請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により回転速度が所定の値より大で電機子を流れる磁束量を減少させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を小とされ,回転速度が所定の値より小で電機子を流れる磁束量を増大させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を大として回転力が最適に制御される事を特徴とする回転電機システムである。広範な回転速度範囲で電動機としての出力を最適に制御する。
請求項11の発明は,請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度を減少させる場合には制御装置により電機子を流れる磁束量を大とされるよう可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積が大とされて回転エネルギーが発電電力として取り出される事を特徴とする回転電機システムである。回生制動の能力を改善して総合的なエネルギー効率を向上させた電動機を提供する。
請求項12の発明は,電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する表面磁極部と,表面磁極部に対向し,隣接する磁性体突極を互いに逆極性に磁化するよう配置された界磁磁石を含む励磁部とを有する回転電機の電機子を流れる磁束量を制御する磁束量制御方法であって,励磁部と対向する表面磁極部の側に配置された磁性体突極延長部及びバイパス磁極に界磁磁石の一方の磁極を対向するよう配置し,界磁磁石の一方の磁極から磁性体突極延長部に流入する磁束が電機子及び隣接する磁性体突極を介して他方の磁極に環流する主磁路及び界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入する磁束が主として界磁部内で他方の磁極に環流するバイパス磁路を界磁磁石に並列に接続し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大にし,表面磁極部或いは励磁部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和を一定に保ちながら前記それぞれの面積を変えるよう可動磁極部を残余に対して相対的に偏倚可能に構成し,可動磁極部を偏倚させて電機子を流れる磁束量を制御する。
磁石励磁回転電機システムに於ける磁束量制御方法であって,磁性体突極を励磁する界磁磁石に磁性体突極及び電機子側を通る主磁路及び電機子側を通らないバイパス磁路とが並列に接続され,主磁路に接続される磁性体突極延長部及びバイパス磁路に接続されるバイパス磁極と界磁磁石の磁極との対向面積を機構偏倚により変えて主磁路,すなわち電機子側を流れる磁束量を制御する。さらに主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう構成されているので磁路間の短絡磁束量は小さく抑えられ,磁束量の精密な制御が可能になる。また,主磁路を流れる磁束量を変更しても界磁磁石には磁路が接続されているので界磁磁石が減磁される懸念は少ない。
請求項13の発明は,請求項12記載の界磁制御方法に於いて以下のステップを含む。バイパス磁路及び主磁路の磁気抵抗をほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する。前記主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する事により磁路間の短絡磁束量は小さく抑えられる。さらに界磁磁石からの磁束総量は一定に保たれるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力を小として精密な磁束量制御を可能にする。
請求項14の発明は,請求項12記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する。前記磁気抵抗調整手段を有して回転電機の製造後或いは運転中に主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差を小として精密な磁束量制御を可能にする提案をし,さらに,回転電機の運転条件により変わる磁路の磁気抵抗に適合させる。磁気抵抗調整の具体的な手段,方法として磁路の一部に配置した磁気空隙寸法諸元の変更制御及び磁路に巻回したコイルへの通電制御等を提案している。さらに温度或いは磁気飽和等を利用して磁性体の磁気特性を制御する方法も可能である。
請求項15の発明は,請求項14記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,前記磁気力が予め定められた範囲内になるよう磁気抵抗調整手段により主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大とする。
主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は,可動磁極部の偏倚位置の影響を受け,温度による磁気特性変化,さらに経時的な磁気特性変化等の影響を受ける。本発明は主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事で現れる磁気力の検知手段を有し,主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗の差の程度を検知し,磁気抵抗調整手段を制御する。静止状態或いは平均的な運転条件に於いて主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定し,本発明に沿って連続的に主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を調整すれば,常に磁路間の短絡磁束量を小さく抑え,さらに偏倚を妨げる磁気力を小さく抑える事が出来て精密な磁束量制御を実現できる。
永久磁石励磁の回転電機システムに於いて,磁性体突極には励磁部から界磁磁束を供給する構成とし,機構偏倚により界磁磁石の磁束を主磁路及びバイパス磁路に分流制御させるとして,磁路間に於ける磁束量短絡を抑え,さらに機構偏倚の障害となる磁気力を抑制して電機子を流れる磁束量を制御可能とした。磁性体突極及び電機子を通る主磁路の磁気抵抗は回転電機が電動機或いは発電機として動作中に実効的に変動し,更に量産時の部材寸法公差によりばらつく事を考慮し,回転電機の組み立て後或いは動作中に主磁路,バイパス磁路の磁気抵抗の設定条件に実効的に調整制御出来る回転電機システムとした。本発明により種々の要因により量産段階で特性がばらついた場合でも磁路間に於ける磁束短絡は抑制され,前記機構偏倚に際して磁気力は抑制して精密な磁束量制御が可能である。本発明により,永久磁石励磁の回転電機システムに於ける弱め界磁制御が容易となり,高エネルギー効率で出力を最適に制御する回転電機システムを実現出来る。
以下に本発明による回転電機システムについて,その実施例及び原理作用等を図面を参照しながら説明する。
本発明による回転電機システムの第一実施例を図1から図8を用いて説明する。第一実施例は,磁性体突極と磁気空隙部が周方向に交互に並ぶ表面磁極部を励磁部に対して回動可能に構成し,表面磁極部を偏倚させて磁束量を制御する回転電機システムである。図1は回転電機の縦断面図,図2は電機子と回転子とを示す断面図,図3(a),3(b)は偏倚した表面磁極部及び励磁部の断面図,図4は界磁磁石近傍の磁束の流れを示す図,図5は界磁磁石を含む磁気回路のモデル図,図6(a)はスリーブの斜視図,図6(b)は回転軸の斜視図,図7は回転子と表面磁極部との係合部を示す斜視図,図8は回転電機システムのブロック図である。
図1はラジアルギャップ構造の回転電機本発明を適用した実施例を示し,回転軸11がベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,磁性体歯14と,電機子コイル16とから構成されている。回転子の界磁部は磁性体歯14と径方向に対向する表面磁極部17,表面磁極部17と微小間隙を介して対向する励磁部18とから成り,励磁部18は回転子支持体19に固定され,表面磁極部17は表面磁極部支持体1aと共にベアリング1bを介して回転子支持体19及び励磁部18に回動可能に支持されている。
表面磁極部17の偏倚制御手段は,回転軸11外周に摺動自在に配置された円筒状のスリーブ1c,スプリング1k,回転軸11に設けられた斜交溝1j,プッシュロッド1e,摺動棒1h,ハウジング12に固定されたアクチュエータ1fとから構成されている。番号1dは回転子11の中空部を,番号1gは冷却ファンを示す。回転子支持体19に設けた凹部1mと表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nは表面磁極部17の偏倚規制の為の係合部を構成している。
図2は図1のA−A’に沿う電機子及び回転子の断面図を示し,相互の関係を説明する為に構成部分の一部に番号が付されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,円筒状磁気ヨーク15から径方向に延び,周方向に磁気空隙を有する複数の磁性体歯14と,磁性体歯14に巻回された電機子コイル16とから構成されている。本実施例では9個の電機子コイル16より構成され,それらは三相に結線されている。
電機子の磁性体歯14先端には径方向に短い可飽和磁性体結合部28を隣接する磁性体歯14先端部間に設けてある。磁性体歯14及び可飽和磁性体結合部28はケイ素鋼板を型で打ち抜いて積層し,電機子コイル16を巻回した後,円筒状磁気ヨーク15と組み合わせて電機子としている。可飽和磁性体結合部28は磁性体歯14と一体として磁性体歯14の支持強度を向上させ,磁性体歯14の不要な振動を抑制させる。可飽和磁性体結合部28の径方向の長さは短く設定して容易に磁気的に飽和する形状としたので電機子コイル16が発生させる磁束或いは界磁磁束によって容易に飽和し,その場合に電機子コイル16が発生させる磁束及び界磁磁束の短絡を僅かな量とする。電機子コイル16に電流が供給されると,時間と共に可飽和磁性体結合部28は磁気的に飽和させられて周辺に磁束を漏洩させるが,磁気飽和した可飽和磁性体結合部28に現れる実効的な磁気空隙の境界はクリアではないので漏洩する磁束の分布は緩やかとなり,可飽和磁性体結合部28はこの点でも磁性体歯14に加わる力の時間変化を緩やかにして振動抑制に寄与する。
図2に於いて,回転子の界磁部は表面磁極部17と励磁部18に区分され,微小間隙を介して配置されている。表面磁極部17との対向面には第一磁性体突極21,磁気空隙部23,第二磁性体突極22,磁気空隙部23が周方向に順次配置されている。番号2dは回転子の回転方向を示す。表面磁極部17の励磁部18との対向面には第一磁性体突極21の延長部2a,第一バイパス磁極24,第二磁性体突極22の延長部2b,第二バイパス磁極25がこの順で繰り返して配置されている。第一磁性体突極延長部2a,第二磁性体突極延長部2b間は等間隔に設定されている。第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24,第二磁性体突極延長部2bは互いに磁気的に分離され,第一バイパス磁極24,第二磁性体突極延長部2bは微小間隙を介して配置され,第二磁性体突極延長部2bと第二バイパス磁極25は結合されて連続に形成されている。
第一磁性体突極21,第二磁性体突極22は互いに磁気的に分離される必要が有るが,可飽和磁性体で結合して機械的に強固に構成する事が出来る。可飽和磁性体の趣旨は断面積が小さな磁性体であって僅かな磁束を流す事によって容易に磁気飽和する磁性体部分である。磁気的に飽和した磁性体は比透磁率が空気とほぼ同じとなり,磁気的にその存在は無視出来る。第一磁性体突極21,第二磁性体突極22はケイ素鋼板を所定の型で打ち抜き,軸方向に積層して形成され,磁気空隙部23には樹脂を充填して表面磁極部支持体1aに固定されている。第一磁性体突極延長部2a,第二磁性体突極延長部2bを配置する部分には同一形状のスロットを形成し,軟鉄製のブロックを挿入している。第一バイパス磁極24を配置する部分には第一バイパス磁極24の断面形状のスロットを形成し,軟鉄製のブロックを挿入して第一バイパス磁極24としている。
励磁部18は回転子支持体19に固定された円筒状磁気コア29及び円筒状磁気コア29に配置された界磁磁石26,27とより構成されている。番号2cは磁束短絡を回避する為の磁気空隙部である。隣り合う界磁磁石26,27は互いに逆の径方向磁化を持ち,それらの間の周方向角度長は第一磁性体突極延長部2a,第二磁性体突極延長部2b間の周方向角度長と等しく設定されている。界磁磁石26,27に図示された矢印はそれぞれの磁化方向を示す。
第一磁性体突極延長部2aの周方向角度長は第一バイパス磁極24の周方向角度長より小さく設定され,界磁磁石26の周方向角度長を第一磁性体突極延長部2aの周方向角度長及び第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24間間隙の周方向角度長の和に等しくなるよう設定し,表面磁極部17及び励磁部18間の相対偏倚量は第一磁性体突極延長部2aの周方向角度長以下とし,常に界磁磁石26が第一磁性体突極延長部2a及び第一バイパス磁極24と対向する構成としている。
図3は図2に示した回転子の断面図の一部であって,第一磁性体突極21,第二磁性体突極22と磁性体歯14間の界磁磁束を制御する原理作用を説明する為の図である。図3(a),3(b)はそれぞれ表面磁極部17及び励磁部18間の相対偏倚量が最小,最大の場合,すなわち第一磁性体突極21,第二磁性体突極22と磁性体歯14間を流れる界磁磁束量をそれぞれ最大,最小にする場合を示している。
図3(a)に於いて,界磁磁石26は第一磁性体突極延長部2aに最大の周方向角度長で対向し,第一バイパス磁極24とは一部で対向している。界磁磁石26の一方の磁極から第一磁性体突極延長部2aに流入した磁束は第一磁性体突極21,磁性体歯14,第二磁性体突極22,界磁磁石27,円筒状磁気コア29を介して界磁磁石26の他方の磁極に環流して主磁路31を形成し,図3(a)の場合は殆どの界磁磁束が主磁路31を流れている。
図3(b)に於いて,界磁磁石26は第一磁性体突極延長部2aに最小の周方向角度長で対向し,第一バイパス磁極24に最大の周方向角度長で対向している。界磁磁石26の一方の磁極から第一バイパス磁極24に流入した磁束は第二磁性体突極延長部2b,第二バイパス磁極25,界磁磁石27,円筒状磁気コア29を介して界磁磁石26の他方の磁極に環流してバイパス磁路32を構成し,図3(b)の場合は殆どの界磁磁束がバイパス磁路32を流れている様子を示している。界磁磁石26からの界磁磁束は界磁磁石26近傍に於いてその端面と直交する方向に流れるので,ほぼ第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24と対向するそれぞれの周方向角度長に比例して第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24に分流される。さらに主磁路31の平均的な磁気抵抗とバイパス磁路32の磁気抵抗はほぼ等しくなるように諸元を設定したので,主磁路及びバイパス磁路を流れる磁束量の和は常に一定である。
主磁路31の磁気抵抗とバイパス磁路32の磁気抵抗とを等しく設定するには第一バイパス磁極24と第二磁性体突極延長部2b間の間隙長及び対向面積により調整する。磁路の磁気抵抗は空隙部に於ける対向面積及び空隙間隔が主要なパラメータである。主磁路31は第一磁性体突極21と磁性体歯14間,磁性体歯14と第二磁性体突極22間に空隙がある。それら空隙に於ける対向面積は第一バイパス磁極24と第二磁性体突極延長部2b間の対向面積より大であるが,第一バイパス磁極24,第二磁性体突極延長部2b間の間隙を微小として主磁路31の磁気抵抗とバイパス磁路32の磁気抵抗とをほぼ等しく出来る。さらに第一バイパス磁極24は,飽和磁束密度が大きい軟鉄のブロックで構成したので第一バイパス磁極24を小さくしても磁気的に飽和し難い。主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯との相対位置により変動するが,本発明で主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯間の各相対位置に関して平均化された値を示している。
界磁磁石26からの磁束は層流状に第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24に流入し,第一磁性体突極延長部2aを流れる磁束量は界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する面積に比例する。図4は図1に示した界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24とが対向する部分の拡大図であり,バイパス磁路の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗より大きい場合に於ける界磁磁石26近傍の磁束分布をモデル的に示している。図に於いて,矢印の向きは界磁磁石26のN極から磁束が流れ出るとして磁束の流れる方向を示している。界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2a及び第一バイパス磁極24間の微小空隙41では磁束が界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2a及び第一バイパス磁極24それぞれの境界面とほぼ直交して層流状に流れ,番号42は第一磁性体突極延長部2aに流入して主磁路に流れる磁束を,番号43は第一バイパス磁極24に流入してバイパス磁路を流れる磁束をそれぞれ代表して示している。番号44は界磁磁石26から第一バイパス磁極24に流入した磁束が第一バイパス磁極24と第一磁性体突極延長部2a間の空隙部23を通って第一磁性体突極延長部2aに流入して主磁路を流れる磁束を代表して示している。このように主磁路とバイパス磁路それぞれの磁気抵抗間の差が大であると,バイパス磁路から主磁路に漏洩する磁束が存在して主磁路を流れる磁束量は必ずしも界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する面積に比例しない。
本実施例では主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が平均的な運転条件に於ける主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗間の差より大となるよう構成されている。主磁路とバイパス磁路間の距離が最も小さいのは第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24間であるので第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24間の形状寸法の設定により主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗を設定する。図2,図3,図4に示したように界磁磁石26から離れた位置では空隙長が大きくなるよう空隙部23の形状を設定し,第一磁性体突極延長部2aと第一バイパス磁極24間の磁気抵抗を平均的な運転条件に於ける主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗間の差より大となるよう寸法を設定している。これにより番号44で示す第一磁性体突極延長部2aと第一バイパス磁極24との間で短絡的に漏洩する磁束は減少し,主磁路を流れる磁束量が界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する面積に精確に比例する。
図5は図2,図3,図4を用いて説明した主磁路及びバイパス磁路と界磁磁石26とを含む磁気回路をモデル的に示した図である。界磁磁石26は多数の電流源が並列接続された集合体として示されて第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24と対向し,界磁磁石26から第一磁性体突極延長部2aに流入した磁束が磁気抵抗51を流れて円筒状磁気コア29を介して環流する主磁路,第一バイパス磁極24に流入した磁束が磁気抵抗52を流れて円筒状磁気コア29を介して環流するバイパス磁路とが示されている。界磁磁石26の磁路中には界磁磁石27も含まれるが,磁束が分流される仕組み,構成は同じであるので界磁磁石26のみを示している。番号53は磁路間の磁気抵抗を,番号54は界磁磁石26の偏倚する方向をそれぞれ示している。主磁路の磁気抵抗51,バイパス磁路の磁気抵抗52はそれぞれ界磁磁石26から離れた部分が支配的となる構成であり,両磁路間の距離が最も小さくなるのは第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24間であるので磁路間の磁気抵抗53は第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24間に配置されている。図4では磁気抵抗52より磁気抵抗51が小である場合の磁束漏洩の状態を示したが,図5のモデル的な磁気回路より判明するように磁路間の磁気抵抗53を磁気抵抗51と磁気抵抗52との差より大に設定すれば,磁気抵抗53を流れる磁束を減少させる事が出来る。
本実施例では主磁路及びバイパス磁路それぞれの磁気抵抗の差より両磁路間の磁気抵抗を大に構成して磁路間を短絡的に漏洩する磁束量を抑制する構成としているが,電機子コイル16を流れる電流により主磁路の磁気抵抗は実効的に変動する。回転電機装置をモータとして用いた場合には磁性体突極21,22と磁性体歯14の位置に応じて電機子コイル16に供給する電流,或いは発電機として用いた場合に磁性体突極21,22と磁性体歯14の位置に応じて電機子コイル16に切り替わる電流に応答して高い周波数帯の交流磁束が流れ,実効的に主磁路の磁気抵抗が変動する。前記磁気抵抗変動は主磁路及びバイパス磁路間の脈動的な磁束漏洩を誘発して望ましい事ではない。本実施例では図2,3,4に示すように磁性体突極の延長部2a,2bを軟鉄のブロックで構成している。軟鉄製のブロックはケイ素鋼板の積層体で構成された磁性体突極より導電率が大で交流磁束が通り難い。
一般に磁石を含む磁気回路の一部に可動部分が有る場合には磁束量を大にする方向(磁気回路の磁気抵抗を小にする方向と同じ意味である)に可動部分を動かそうとする磁気力が現れる。本発明に先行して界磁磁束を制御する目的で磁気回路の一部を偏倚させて界磁磁石を短絡し或いは磁路の磁気抵抗を変えようとする提案は多い。しかし,界磁磁石はその回転電機に於いて,磁石トルク或いは電力を発生させる源泉であり,前記偏倚を妨げる磁気的な力は大きく,精密な磁束量制御を困難にしていた。上記に説明した本発明の構成により磁気力は小さく抑制され,精密な磁束量制御が可能となる。
本実施例では界磁磁石26が微小間隙を介して第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24に対向する構成である。主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を厳密に等しく構成するのは困難であり,両者の磁気抵抗に差があるとして界磁磁石26から磁性体を介して第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24に対向させると,界磁磁石26からの磁束はそれぞれの磁路の磁気抵抗に応じて前記磁性体内で分流して主磁路を流れる磁束は界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2a間の対向面積には比例しない事になり,磁束量の制御は困難となる。構造上の制約から界磁磁石26から磁性体を介して第一磁性体突極延長部2a,第一バイパス磁極24に対向させる場合には,磁性体として異方性の強い磁性体或いは厚みの薄い磁性体として磁性体内で磁束が分流し難い構成とする。この構成は実質的に界磁磁石26の端面で磁束を分流させる点で本発明の趣旨に含まれる。
表面磁極部17と励磁部18間の相対偏倚量の最大値は第一磁性体突極延長部2aの周方向角度長であり,図3(b)に示す場合である。それ以上の偏倚量でも界磁制御は可能であるが,主磁路31を流れる界磁磁束量と表面磁極部17と励磁部18間の相対偏倚量の比例関係とが不定と成って界磁制御を複雑にする。本実施例では図1に示したように回転子支持体19に設けた凹部1m,表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nとにより表面磁極部17と励磁部18間の偏倚を界磁磁石26に対向している第一磁性体突極延長部2aの周方向角度長以下となるよう規制している。
図7は回転子支持体19の端面に設けられた凹部1m,表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nを拡大して示す斜視図である。同図に於いて,凹部1mには偏倚規制突部1nが配置され,表面磁極部17と励磁部18間の偏倚量を規制している。偏倚規制突部1nが凹部1m内の右側壁面に当接した場合が図3(a)に,偏倚規制突部1nが凹部1m内の左側壁面に当接した場合が図3(b)にそれぞれ対応している。本実施例では図3(a),(b)に示すように,主磁路31の界磁磁束量を増加させるには表面磁極部17を時計回り方向に相対偏倚させて界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aと対向する周方向角度長を増加させ,主磁路31の界磁磁束量を減少させるには表面磁極部17を反時計回り方向に相対偏倚させて界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aと対向する周方向角度長を減少させる。主磁路31の界磁磁束の増減方向と表面磁極部17の偏倚方向の関係が常に定まって界磁制御をシンプルに出来る。
表面磁極部17を励磁部18に対して相対的に回転偏倚させる事で磁性体突極21,磁性体歯14間に流れる界磁磁束を制御出来,その際に回転偏倚を妨げる磁気力は理論的に発生しない事は説明された。本実施例に於いて,表面磁極部17の偏倚制御は図1及び図6に示す機構を用いて行う。以下には図1及び図6を用いて偏倚制御の動作を説明する。図6(a)はスリーブ1cの斜視図を,図6(b)は回転軸11の斜視図をそれぞれ示す。
図1及び図6に示す偏倚制御機構は,回転軸11外周に摺動自在に配置された円筒状のスリーブ1c,スプリング1k,回転軸11に設けられた斜交溝1j,プッシュロッド1e,摺動棒1h,ハウジング12に固定されたアクチュエータ1fとから構成されている。斜交溝1jは回転軸11の軸方向に斜めに延び中空部1dに貫通する構造で,スリーブ1cに固定されたピン61が斜交溝1cに貫通係合している。さらにスリーブ1cの外周には凹状溝62を持ち,表面磁極部支持体1aが摺動可能に係合して回転軸11と表面磁極部支持体1a間に回転力を伝達している。スプリング1kは同図の右方向にスリーブ1cを押すよう付勢され,プッシュロッド1e及び摺動棒1hはピン61に接触してスリーブ1cを同図に於いて左方向にアクチュエータ1fにより付勢し,両者の力がバランスする軸方向位置に止まっている。アクチュエータ1fがスリーブ1cを左方向に付勢する力を制御してスリーブ1cを左右に駆動し,ピン61が貫通係合する斜交溝1jにより周方向に偏倚させ,表面磁極部支持体1a及び表面磁極部17を周方向に偏倚させる。アクチュエータ1fはステップモータとネジ機構をも用いてステップモータを駆動しない場合でもプッシュロッド1eの軸方向位置を保持出来る構成としている。
以上,図1から図7に示した回転電機に於いて,外部のアクチュエータ1f及び回転子の偏倚制御により表面磁極部17を励磁部18に対して偏倚制御できることを示した。以下には主磁路を流れる磁束量を制御して出力を最適に制御する第一実施例の回転電機システムを,図8のブロック図を用いて説明する。図8は磁束量制御を行う回転電機システムのブロック図を示している。回転電機81は入力82,出力83を有するとし,制御装置85は回転電機81の出力83及び表面磁極部17の位置を含む状態信号84を入力として制御信号86を介して磁束量を制御する。番号87は電機子コイル16の駆動制御回路を示す。回転電機81が発電機として用いられるのであれば,入力82は回転力であり,出力83は発電電力となる。回転電機81が電動機として用いられるのであれば,入力82は駆動制御回路87から電機子コイル16に供給される駆動電流であり,出力83は回転トルク,回転速度となる。
回転電機を電動機とし,弱め界磁制御を行って回転力を最適に制御する電動機システムを説明する。制御装置85は出力83である回転速度が所定の値より大となり主磁路に於ける界磁磁束量を小とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を反時計回り方向(図2に於いて,矢印2dと逆方向)に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を小とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。回転速度が所定の値より小となり主磁路に於ける界磁磁束量を大とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動して表面磁極部17を時計回り方向(図2に於いて,矢印2d)に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を大とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
回転電機を発電機とし,弱め界磁制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電機システムを説明する。制御装置85は出力83である発電電圧が所定の値より大となり主磁路に於ける磁束量を小とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を反時計回り方向に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を小とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。発電電圧が所定の値より小となり主磁路に於ける界磁磁束を大とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を時計回り方向に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を大にする。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
本発明による回転電機システムの第二実施例を図9から図11までを用いて説明する。第二実施例は,ラジアルギャップ構造の回転電機システムであり,励磁部を周方向と直交する面内に偏倚制御して電機子を流れる磁束量を制御する。また,バイパス磁路内の空隙長を調整してバイパス磁路の磁気抵抗を調整する手段を有する。図9は回転電機の縦断面図,図10は電機子と回転子との構成を示す断面図,図11は励磁部の偏倚手段を示す縦断面図を示す。
図9はラジアルギャップ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示し,回転軸11がベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,磁性体歯14と,電機子コイル16とから構成されている。回転子は表面磁極部91と表面磁極部91内に配置された励磁部は界磁磁石92及び支持部93を有し,励磁部は可動磁極部として周方向と直交する面内に偏倚するよう構成されている。バイパス磁極延長部94は円環状磁気コア95に微小間隙を介して対向し,円環状磁気コア95はハウジング12に固定された磁気コア支持体96にネジ機構で支持され,円環状磁気コア95を回転させる事により軸方向に偏倚する構造である。円環状磁気コア95外周にはネジが配置され,ウオームギア97が噛み合うよう配置されている。励磁部を偏倚制御する手段は,番号98,99で示す回転アーム,スライドプレート9a,連結棒9b,スプリング9c,回転軸11に設けられたスリット9d,プッシュロッド1e,摺動棒1h,ハウジング12に固定されたアクチュエータ1fとから構成されている。番号9eはロードセルを示している。
図10は図9のB−B’に沿う電機子及び回転子の断面を示し,相互の関係を説明する為に構成部分の一部に番号を付して示している。電機子の構成は図2に示した第一の実施例と同じであり,説明は省略する。
図10に於いて,表面磁極部91は一様な磁性体を周方向に等間隔に配置された永久磁石103によって区分された磁性体突極101,102及び永久磁石103とから構成されている。さらに隣接する磁性体突極101,102は互いに異なる方向に磁化されるよう隣接する永久磁石103の略周方向磁化方向は互いに反転して構成されている。永久磁石103内に記載した矢印は磁化方向を示す。磁性体突極101,102は内周方向への延長部104,105をそれぞれ持ち,それぞれの延長上にバイパス磁極106,107が配置されている。周方向の磁化を有する界磁磁石92は隣接する磁性体突極延長部104,105間,及び隣接するバイパス磁極106,107間に摺動可能に配置されている。さらに界磁磁石92が偏倚する径方向の範囲は周囲の寸法により界磁磁石92が磁性体突極延長部104及びバイパス磁極106それぞれと常に対向するよう規制されている。本実施例では界磁磁石92及びその支持部93が励磁部を構成し,磁性体突極101,102それぞれを永久磁石103及び励磁部が同じ磁化方向に励磁するよう表面磁極部91と励磁部の配置が設定されている。これが逆の場合には永久磁石103と界磁磁石92とが閉磁気回路を構成し,励磁部の偏倚制御に際して妨げとなる大きな磁気力を発生させ,精密な制御を困難にする。
界磁磁石92の一方の磁極から磁性体突極延長部104に流入した磁束は磁性体突極101,磁性体歯14,隣接する磁性体突極102,磁性体突極延長部105を介して界磁磁石92の他方の磁極に環流して主磁路を形成する。また界磁磁石92の一方の磁極からからバイパス磁極106に流入した磁束は回転子の端部に於いて円環状磁気コア95を介して隣接するバイパス磁極107を通って界磁磁石92の他方の磁極に環流してバイパス磁路を形成している。円環状磁気コア95とバイパス磁極106,107(図9ではバイパス磁極延長部94と総称して示している)との間の間隙はバイパス磁路内に設けられた間隙であり,この間隙長を調整してバイパス磁路の磁気抵抗が調整され,回転電機の組み立て直後には主磁路の平均的な磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗がほぼ等しくなるように初期設定される。
界磁磁石92を径方向(図10に於いては上下方向)に偏倚させた場合,界磁磁石92の磁極と磁性体突極延長部104及びバイパス磁極106それぞれとの対向する面積の和は一定に保たれながらそれぞれの対向面積は変わる。主磁路に流れる磁束量は界磁磁石92と磁性体突極延長部104の対向面積に比例して制御される。磁性体突極延長部104及びバイパス磁極106それぞれと接続している主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は最小磁気力条件に調整されると界磁磁石92からの磁束総量は一定となり,界磁磁石92の偏倚を妨げる磁気力は小さく抑えられる。
さらに本実施例ではケイ素鋼板の積層体で構成される磁性体突極101,102より比抵抗が小さい軟鉄のブロックで磁性体突極延長部104,105及びバイパス磁極106,107は構成し,交流磁束を通り難くしている。したがって,磁性体突極101,102と磁性体歯14間の相対関係に対応して磁性体突極101,102を流れる交流磁束は界磁磁石92近傍には流れないので磁性体突極延長部104,バイパス磁極106間での脈動的な磁束の短絡漏洩は生じ難く,主磁路を流れる界磁磁束量は界磁磁石92と磁性体突極延長部104と対向する面積に精密に比例する。
永久磁石103による界磁磁束への寄与分は励磁部による磁束量の制御範囲を狭くするとの意味に於いては好ましい存在ではない。しかし,磁性体突極先端部の空隙間に永久磁石を配置して空隙部に於ける漏洩磁束を低減する構造,またリラクタンストルクを利用する回転電機に於いて一様な磁性体を周方向に磁化を持つ永久磁石で区分して磁性体突極を形成すると共に磁束バリアとする構造が存在する。本実施例はこのような従来の回転電機に於いて磁束量制御を容易にする実施例として意味がある。
励磁部を偏倚制御する構成及び動作は図9,11を用いて説明する。図9及び図11に示されるように界磁磁石92及び支持部93で構成された励磁部は回転子支持体19に回転アーム98,99により支持されている。回転アーム98,99はピン111により回転子支持体19に,ピン112により励磁部に回動可能に支持され,励磁部は周方向と直交する面内で回転軸11と平行に偏倚可能に構成されている。更に励磁部は連結棒9bによりスライドプレート9aに連結されている。連結棒9bはピン113により励磁部に,ピン114によりスライドプレート9aに回動可能に結合され,スライドプレート9aの軸方向への偏倚により励磁部が周方向と直交する面内で偏倚させられる構成である。
スライドプレート9aの3つの突部は回転軸11に設けた3個のスリット9dを介して摺動棒1hに接し,摺動棒1hは回転軸11の中空部内を軸方向に摺動可能に構成されてアクチュエータ1fのプッシュロッド1eと接している。スプリング9cは回転子支持体19とスライドプレート9aとの間に配置されてスライドプレート9aを右方向に付勢し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを軸方向左右に駆動させる構成であるのでスライドプレート9a及び界磁磁石92はアクチュエータ1fにより軸方向に偏倚させられる。アクチュエータ1fはステップモータとネジ機構で構成してステップモータを回転駆動する事でプッシュロッド1eを軸方向左右に駆動させ,ステップモータを駆動させない場合はプッシュロッド1eの軸方向位置を保持する構成としている。
図11(a),11(b)は励磁部を含む回転子の一部の縦断面を拡大して示した図であり,図11(a)は励磁部が径方向外側に偏倚して界磁磁石92が隣接する磁性体突極延長部104と磁性体突極延長部105に最大に面積で対向し,主磁路に流れる磁束量が最大となる状態を示している。この場合,アクチュエータ1fはスライドプレート9aを軸と平行に左方向に偏倚させ,界磁磁石92を含む励磁部は軸と平行に左方向に偏倚されると共に径方向外方に偏倚させられている。図11(b)は励磁部が径方向内方に偏倚して界磁磁石92が隣接するバイパス磁極106,107に最大に面積で対向し,主磁路に流れる磁束量が最小となる状態を示している。この場合,アクチュエータ1fはスライドプレート9aを軸と平行に右方向に偏倚させ,界磁磁石92を含む励磁部は軸と平行に右方向に偏倚されると共に径方向内方に偏倚させられている。
励磁部を支持する回転アーム98,99及びピン111,112が配置され,励磁部の偏倚に従って回転アーム98,99及びピン112も偏倚する。回転アーム98,99及びピン111,112が占有するスペースはバイパス磁極106,107間に割り当てられている。
主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する事で両磁路間の磁束漏洩を小さく抑制し,前記偏倚を妨げる磁気力を小さく抑制する事が出来るが,磁路の磁気抵抗を変動させる要因は多い。すなわち,量産段階で部品寸法は設定公差内でばらついて各磁路の磁気抵抗を変動させ,磁路間の磁束漏洩が無視できない場合は可動磁極部の偏倚位置が各磁路の磁気抵抗に影響し,磁性体の透磁率は温度の影響を受けやすいので各磁路の磁気抵抗は変化する。更にまた電機子コイルに電流が流れると主磁路の磁気抵抗は実効的に変動する。本実施例ではバイパス磁路内の間隙の大きさを調整する事により主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を互いに等しくさせ,種々の原因による磁路の磁気抵抗変化に適応させて両磁路間の磁束漏洩を小さく抑制し,前記偏倚を妨げる磁気力を小さく抑制している。
本実施例ではバイパス磁路の磁気抵抗を制御して各運転状態に於いて常に主磁路,バイパス磁路間の磁気抵抗を主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗の差より大としている。図9に示したウオームギア97を図示していないステップモータで駆動して円環状磁気コア95を回転させて磁気コア支持体96との間のネジ機構により円環状磁気コア95を軸方向に偏倚させ,円環状磁気コア95とバイパス磁極延長部94間の間隙長を変える。
図9に於いて,番号9eはロードセルを示している。アクチュエータ1fは磁束量を変更する為にスライドプレート9aを軸方向に偏倚させた後は軸方向位置を保持する。主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れると,界磁磁石92は磁気抵抗の小さい側の磁極(磁性体突極延長部104或いはバイパス磁極106)と界磁磁石92との対向面積を増す方向に偏倚させる磁気力を受ける。アクチュエータ1fは軸方向位置を保持しようとするのでプッシュロッド1e内の圧力は変化し,ロードセル9eにより前記磁気力を検出する事が出来る。磁気力は主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗の差に比例するので磁気力を予め定めた範囲内に収まるよう図示していないステップモータでウオームギア97を駆動して円環状磁気コア95を回転させて磁気コア支持体96との間のネジ機構により円環状磁気コア95を軸方向に偏倚させ,円環状磁気コア95とバイパス磁極延長部94間の間隙長を変える。常に両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に近く維持できるので両磁路間の磁束漏洩を小さく抑制し,精密な磁束量制御が可能である。
図9に於いて,円環状磁気コア95内を磁束は周方向に流れるので渦電流損を減少させる為に円環状磁気コア95はケイ素鋼板帯をスパイラル状に巻いて径方向に積層して構成している。他に比抵抗の大きい磁性体で構成しても良い。
磁束量を制御して出力を最適に制御する第二の実施例の回転電機システムを,図8のブロック図を用いて説明する。回転電機を電動機とし,弱め界磁制御を行って回転力を最適に制御する電動機システムを説明する。制御装置85は出力83である回転速度が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には制御信号86によりアクチュエータ1fを駆動してプッシュロッド1eを軸に沿って右方向(励磁部を右及び内径方向)に偏倚させて界磁磁石92と磁性体突極延長部104とが対向する面積を小にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて励磁部の位置を保持する。回転速度が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には制御信号86によりアクチュエータ1fを駆動してプッシュロッド1eを軸に沿って左方向(励磁部を左及び外径方向)に偏倚させて界磁磁石92と磁性体突極延長部104とが対向する面積を大にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて励磁部の位置を保持する。
回転電機を発電機とし,弱め界磁制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電機システムを説明する。制御装置85は出力83である発電電圧が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には制御信号86によりアクチュエータ1fを駆動してプッシュロッド1eを軸に沿って右方向(励磁部を右及び内径方向)に偏倚させて界磁磁石92と磁性体突極延長部104とが対向する面積を小にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて励磁部の位置を保持する。発電電圧が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には制御信号86によりアクチュエータ1fを駆動してプッシュロッド1eを軸に沿って左方向(励磁部を左及び外径方向)に偏倚させて界磁磁石92と磁性体突極延長部104とが対向する面積を大にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて励磁部の位置を保持する。
本発明による回転電機システムの第三実施例を図12,図13を用いて説明する。第三実施例は,ラジアルギャップ構造の回転電機システムであり,励磁部を周方向に偏倚制御させて電機子を流れる磁束量を制御する。また,バイパス磁路に巻回するよう配置された磁気抵抗調整用コイルに電流を供給してバイパス磁路の磁気抵抗を調整する手段を有する。図12は回転電機の縦断面図,図13は電機子と回転子との構成を示す断面図を示す。
図12はラジアルギャップ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示し,回転軸11がベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,磁性体歯14と,電機子コイル16とから構成されている。回転子の界磁部は磁性体歯14と径方向に対向する表面磁極部121,表面磁極部121と微小間隙を介して対向する励磁部122とから成り,励磁部122は回転子支持体19及び表面磁極部121と微小間隙を介して回動可能に支持されている。バイパス磁極延長部123は円環状磁気コア124に結合された後,C字状磁気コア126の外周側端面に空隙を介して対向し,励磁部の円筒状磁気コアの延長部125が空隙を介して磁気コア126の内周側端面に対向している。C字状磁気コア126は断面がC字状で回転軸11を周回するC字状磁気コアであり,ハウジング12に固定されている。C字状磁気コア126にはさらに磁気抵抗調整用コイル127が回転軸11を周回するよう巻回されている。励磁部122を周方向に偏倚させる偏倚制御手段は,第一実施例に於いて表面磁極部を偏倚させる機構と同じである。
図13は図12のC−C’に沿う電機子及び回転子の断面を示し,相互の関係を説明する為に構成部分の一部に番号を付して示している。電機子の構成は図2に示した第一の実施例と同じであり,説明は省略する。
図13に於いて,回転子の界磁部は表面磁極部121と励磁部122に区分され,微小間隙を介して配置されている。表面磁極部121の磁性体歯14との対向面には第一磁性体突極131,磁気空隙部133,第二磁性体突極132,磁気空隙部133が周方向に順次配置されている。表面磁極部121の励磁部122との対向面には第一磁性体突極131の延長部134,バイパス磁極10a,第二磁性体突極132の延長部がこの順で繰り返して配置されている。励磁部122は励磁部支持体128に固定された円筒状磁気コア29及び円筒状磁気コア29に配置された界磁磁石26とより構成されている。界磁磁石26は第一磁性体突極延長部134及び第一バイパス磁極10aに対向し,磁化方向は径方向である。界磁磁石26に図示された矢印は磁化方向を示す。
励磁部122及び励磁部122に対向している表面磁極部121の側の構成は第一実施例に類似するが,若干異なっている。すなわち,界磁磁石27は除去され,第二磁性体突極132が内径方向に延長されて円筒状磁気コア29に微小間隙を介して対向する構成である。第二磁性体突極132に隣接するバイパス磁極は配置されていない。さらにバイパス磁極10aは軸方向に延長されて図12に示されたバイパス磁極延長部123とされ,円環状磁気コア124に結合された後,C字状磁気コア126の外周側端面に空隙を介して対向している。バイパス磁極延長部123からの磁束は円環状磁気コア124内で周方向に分散された後にC字状磁気コア126の外周側端面に磁気的に結合されているので渦電流損発生の懸念はない。さらに円筒状磁気コア29は軸方向に延長されて図12に示された延長部125としてC字状磁気コア126の内周側端面に空隙を介して磁気的に結合されている。したがって,界磁磁石26の一方の磁極から第一磁性体突極延長部134に流入する磁束は第一磁性体突極131,磁性体歯14,第二磁性体突極132,円筒状磁気コア29を介して界磁磁石26の他方の磁極に環流する主磁路を形成すると共に隣接する磁性体突極131,132を互いに異極に磁化している。界磁磁石26の一方の磁極からバイパス磁極10aに流入する磁束はバイパス磁極延長部123,円環状磁気コア124,C字状磁気コア126,延長部125,円筒状磁気コア29を介して界磁磁石26の他方の磁極に環流するバイパス磁路を形成している。
本実施例ではバイパス磁路の磁気抵抗をC字状磁気コア126と円環状磁気コア124,円筒状磁気コア延長部125間の微小間隙長を調整して平均的な運転条件に於いて主磁路の磁気抵抗とほぼ等しく設定している。界磁磁石26からの磁束はバイパス磁極10a中を軸方向に流れるのでバイパス磁極10aは磁束密度が大きく,等方性である軟鉄のブロックで構成している。励磁部122内の界磁磁石26と対向する第一磁性体突極延長部134,バイパス磁極10aは一様な軟鉄のブロックで構成され,さらに円筒状磁気コア29は一様な軟鉄で構成され,ケイ素鋼板の積層体で構成される磁性体突極131,132より平均的な導電率を高く設定してある。この構成により磁性体突極延長部134,円筒状磁気コア29には交流磁束が通り難く設定されている。
界磁磁石26が常に第一磁性体突極延長部134,バイパス磁極10aと対向するよう励磁部122の偏倚量が規制されるとして第一実施例で説明したように界磁磁石26からの磁束は界磁磁石26と第一磁性体突極延長部134との対向面積に比例して主磁路に分流される。
種々の要因による各磁路の磁気抵抗は変動し,主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗の差が大になると,磁路間の磁束短絡量は増え,励磁部122の偏倚を妨げる磁気力が大になる。本実施例ではバイパス磁路に巻回した磁気抵抗調整用コイル127に流す電流を制御して常に両磁路間の磁気抵抗が主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗の差より大にしている。磁気抵抗調整用コイル127は図12に示されるようにC字状磁気コア126に回転軸11を周回するよう巻回されているが,バイパス磁路はC字状磁気コア126の外周側端面と内周側端面間をその一部に有するので磁気抵抗調整用コイル127はバイパス磁路を巻回する事になる。回転電機の運転中に主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を変動させるパラメータは主に電機子コイルに流れる電流,回転速度,温度,可動磁極部の偏倚位置等である。これら動作条件を示すパラメータと最適な電流の初期設定条件からの変動量との関係は同一設計の回転電機では統計データに基づいて推定出来る。回転電機の組み立て後に最適な電流と動作条件を示すパラメータとの間のマップデータを作成して設定し,回転電機の運転条件に応じて最適な電流をマップデータから得て磁気抵抗調整コイル127に供給してバイパス磁路の磁気抵抗を実効的に調整している。
以上,図12,13に示した回転電機に於いて,アクチュエータ1fを駆動制御する事により励磁部122を表面磁極部121に対して偏倚させ,主磁路を流れる界磁磁束量を制御できることを示した。以下には主磁路を流れる界磁磁束量を制御して出力を最適に制御する第三実施例の回転電機システムを,図8のブロック図を用いて説明する。
回転電機を電動機とし,弱め界磁制御を行って回転力を最適に制御する電動機システムを説明する。制御装置85は出力83である回転速度が所定の値より大となり主磁路に於ける界磁磁束量を小とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び励磁部122を時計回り方向(図13)に回転偏倚させ,界磁磁石26と磁性体突極延長部134とが対向する周方向角度長を小とさせる。励磁部122の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。回転速度が所定の値より小となり主磁路に於ける界磁磁束量を大とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動して励磁部122を反時計回り方向(図13)に回転偏倚させ,界磁磁石26と磁性体突極延長部134とが対向する周方向角度長を大とさせる。励磁部122の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
回転電機を発電機とし,弱め界磁制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電機システムを説明する。制御装置85は出力83である発電電圧が所定の値より大となり主磁路に於ける磁束量を小とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び励磁部122を時計回り方向(図13)に回転偏倚させ,界磁磁石26と磁性体突極延長部134とが対向する周方向角度長を小とさせる。励磁部122の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。発電電圧が所定の値より小となり主磁路に於ける界磁磁束を大とする時には制御信号86がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,スリーブ1c及び励磁部122を反時計回り方向(図13)に回転偏倚させ,界磁磁石26と磁性体突極延長部134とが対向する周方向角度長を大にする。励磁部122の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
本発明の第四実施例による回転電機システムを図14を用いて説明する。第四実施例は第一実施例の回転電機システムをハイブリッドカーの発電機兼電動機システムとして用いた回転電機システムである。同図に於いて,番号141は第一実施例で示した回転電機を示し,回転電機141はハイブリッドカーのエンジン142とベルトで回転力を伝達するよう結合された回転軸149を持ち,回転軸149の回転力はトランスミッション143を介して駆動軸14aに伝えられる。制御装置144は上位制御装置からの指令14bを受け,電動機駆動回路145を介して回転電機141を電動機として駆動し,界磁制御回路146を介して回転電機141の界磁強度を制御する。更に制御装置144は上位制御装置からの指令14bを受け,電機子コイル16の引き出し線14cに現れる発電電力を整流回路147を介して整流し,バッテリー148を充電する構成としている。
制御装置144は指令14bの指示により電動機駆動回路145を介して回転電機141を電動機として駆動し,エンジン142の回転をアシスト或いは単独で回転軸149を回転駆動させ,トランスミッション143,駆動軸14aを介してハイブリッドカーの駆動力に寄与する。起動直後の低回転速度域で磁石トルクを強化する必要がある場合は制御装置144がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を時計回り方向(図2に於いて,矢印2d)に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を大とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。高回転速度域で弱め界磁とする場合には制御装置144がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を反時計回り方向(図2に於いて,矢印2dと逆方向)に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を小とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
エンジン142の回転力のみでハイブリッドカーを駆動できる時は,指令14bにより電機子コイル16の引き出し線14cに現れる発電電力を整流回路147を介して直流に変え,バッテリー148を充電させる。その場合に発電電圧が所定の値より大となり主磁路に於ける界磁磁束量を小とする時には制御装置144がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を反時計回り方向に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を小とさせる。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。発電電圧が所定の値より小となり主磁路に於ける界磁磁束を大とする時には制御装置144がアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を時計回り方向に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を大にする。表面磁極部17の偏倚量が目標に達したら,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを偏倚した位置に保持する。
本実施例はまたハイブリッドカーの制動時に於けるエネルギー回収システムとしても有効に機能する。指令14bを通じて回生制動の指示を受けると,制御装置144はアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動し,スリーブ1c及び表面磁極部17を時計回り方向(図2に於いて,矢印2d)に回転偏倚させ,界磁磁石26と第一磁性体突極延長部2aとが対向する周方向角度長を大とし,発電電力でバッテリー148に充電させる。複数のバッテリー148を有する場合には最も充電余力のあるバッテリー148の充電電圧に合わせた発電電圧が得られるよう界磁制御回路146を介してアクチュエータ1fを制御して電機子の磁性体歯14を流れる界磁磁束量を制御する。回転電機141は駆動用電動機として用いられる体格であるので回生制動用の発電機として十分な制動力を発生できる。
本実施例は本発明をハイブリッドカーの発電機兼電動機として用いた回転電機システムであるが,電気自動車に於ける回転電機システムとする事も当然に可能である。その場合には上記実施例に於いてハイブリッドカーのエンジン142を取り除き,本発明による回転電機システムのみで駆動及び制動時に於けるエネルギー回収システムを構成する。
以上,本発明の回転電機システムについて,実施例を挙げて説明した。これらの実施例は本発明の趣旨,目的を実現する例を示したのであって本発明の範囲を限定するわけでは無い。例えば,上記の実施例に於いて電機子は磁性体歯を有する構造が示されたが,従来のアキシャルギャップ構成の回転電機では磁性体歯を配置しない構造例も存在する。また,ラジアルギャップ構成に於いても電機子構成を円筒状磁気ヨーク上に印刷配線された電機子コイルを配置して磁性体歯を持たない例も存在する。本発明は磁性体歯の有無に拘わらず適用可能であり,回転電機の仕様に沿って最適の電気子構成を採用する事が出来る。上記実施例を組み合わせる,或いは実施例の一部を組み合わせて本発明の趣旨,目的を実現するシステムを完成させる等が可能な事は勿論である。
本発明による回転電機システムは従来の磁石トルク,リラクタンストルクを利用する回転電機の磁石励磁近傍の構成を変えて回転子と電機子間の界磁強度を容易に制御可能とした。同回転電機システムは従来の回転電機と同様に高出力の電動機として利用できる事に加えて実用出来る回転速度範囲を拡大し,更に発電機能を改善し,またその発電機能を制御できる。移動体の発電機兼電動機システムに用いて,駆動用電動機としては従来以上の回転速度範囲での使用が期待できる他に制動時のエネルギー回収を可能として総合的なエネルギー消費量を改善できる。更に定電圧発電機システムとして広い回転速度範囲で発電電圧を一定に制御できるので定電圧制御回路を不要とし,更に電圧の異なる複数種のバッテリー充電にもコンバータを不要に出来,全体のシステムコストを低減出来る。
第一の実施例による回転電機の縦断面図である。 図1に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 図1に示された回転電機に於いて,3(a),3(b)は表面磁極部及び励磁部間の相対位置が異なる場合の断面図である。 図1に示された回転電機の界磁磁石近傍の拡大された縦断面図である。 図1に示された回転電機の界磁磁石を含む磁気回路である。 図1に示された回転電機に於いて,6(a)はスリーブの斜視図,6(b)は回転軸の斜視図である。 図1に示された回転電機の偏倚規制の為の係合部を示す斜視図である。 弱め界磁制御を行う回転電機システムのブロック図である。 第二の実施例による回転電機の縦断面図である。 図9に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 図9に示された回転電機の回転子の一部を示す縦断面図である。 第三の実施例による回転電機の縦断面図である。 図12に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 第四の実施例による回転電機システムのブロック図である。
符号の説明
11・・・回転軸, 12・・・ハウジング,
13・・・ベアリング, 14・・・磁性体歯,
15・・・円筒状磁気ヨーク, 16・・・電機子コイル,
17・・・表面磁極部, 18・・・励磁部,
19・・・回転子支持体, 1a・・・表面磁極部支持体,
1b・・・ベアリング, 1c・・・スリーブ,
1d・・・中空部, 1e・・・プッシュロッド,
1f・・・アクチュエータ, 1g・・・冷却ファン,
1h・・・摺動棒, 1j・・・斜交溝,
1k・・・スプリング, 1m・・・凹部,
1n・・・偏倚規制突部
21・・・第一磁性体突極, 22・・・第二磁性体突極,
23・・・磁気空隙部, 24・・・第一バイパス磁極,
25・・・第二バイパス磁極, 26,27・・界磁磁石,
28・・・可飽和磁性体結合部, 29・・・円筒状磁気コア,
2a・・・第一磁性体突極延長部, 2b・・・第二磁性体突極延長部,
2c・・・磁気空隙部, 2d・・・回転方向
31・・・主磁路, 32・・・バイパス磁路
41・・・微小空隙, 42・・・主磁路に流れる磁束,
43・・・バイパス磁路を流れる磁束, 44・・・空隙部23を通る磁束
51・・・主磁路の磁気抵抗, 52・・・バイパス磁路の磁気抵抗,
53・・・磁路間の磁気抵抗, 54・・・偏倚方向
61・・・ピン, 62・・・凹状溝
81・・・回転電機装置, 82・・・入力,
83・・・出力, 84・・・状態信号,
85・・・制御装置, 86・・・制御信号,
87・・・駆動制御回路
91・・・表面磁極部, 92・・・界磁磁石,
93・・・支持部, 94・・・バイパス磁極延長部,
95・・・円環状磁気コア, 96・・・磁気コア支持体,
97・・・ウオームギア, 98,99・・回転アーム,
9a・・・スライドプレート, 9b・・・連結棒,
9c・・・スプリング, 9d・・・スリット,
9e・・・ロードセル
101・・・第一磁性体突極, 102・・・第二磁性体突極,
103・・・永久磁石, 104,105・・磁性体突極の延長部,
106,107・・バイパス磁極
111,112,113,114・・ピン
121・・・表面磁極部, 122・・・励磁部,
123・・・バイパス磁極延長部, 124・・・円環状磁気コア,
125・・・円筒状磁気コア延長部, 126・・・C字状磁気コア,
127・・・磁気抵抗調整用コイル, 128・・・励磁部支持体
131,152・・磁性体突極, 133・・・磁気空隙部,
134・・・磁性体突極延長部
141・・・第一の実施例で示した回転電機装置,
142・・・ハイブリッドカーのエンジン,
143・・・トランスミッション, 144・・・制御装置,
145・・・電動機駆動回路, 146・・・界磁制御回路,
147・・・整流回路, 148・・・バッテリー,
149・・・回転軸, 14a・・・駆動軸,
14b・・・上位制御装置からの指令, 14c・・・電機子コイルの引き出し線

Claims (15)

  1. 電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する界磁部とを有する回転電機であって,界磁部には表面磁極部と励磁部とが配置され,表面磁極部は電機子との対向面に複数の磁性体突極が周方向に配置されると共に励磁部との対向面には磁性体突極延長部及びバイパス磁極が配置され,励磁部は界磁磁石を有して界磁磁石のN極或いはS極の何れか一方の磁極は磁性体突極延長部及びバイパス磁極に対向し,隣接する磁性体突極を互いに異極に磁化するよう配置され,界磁磁石の一方の磁極から磁性体突極延長部に流入した磁束が電機子,隣接磁性体突極を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路及び界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とが界磁磁石に並列に接続され,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう構成され,表面磁極部或いは励磁部の何れかが可動磁極部として界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変える事が出来るよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成され,回転電機システムの出力が最適化されるように前記出力に応じて可動磁極部が偏倚して電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする回転電機システム
  2. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,バイパス磁路の磁気抵抗及び主磁路の磁気抵抗が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定される事を特徴とする回転電機システム
  3. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗が調整される事を特徴とする回転電機システム
  4. 請求項3記載の回転電機システムに於いて,磁気抵抗調整手段としてバイパス磁路内の空隙に於ける空隙長調整手段を有する事を特徴とする回転電機システム
  5. 請求項3記載の回転電機システムに於いて,磁気抵抗調整手段としてバイパス磁路に巻回した磁気抵抗調整コイルを有する事を特徴とする回転電機システム
  6. 請求項3記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,前記磁気力が予め定められた範囲内になるよう磁気抵抗調整手段により主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大とする事を特徴とする回転電機システム
  7. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石から磁性体突極に至る磁路の一部が磁性体突極の平均的な導電率より大きい磁性体で構成される事を特徴とする回転電機システム
  8. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに可動磁極部の偏倚規制手段を有し,界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和を一定に保たれながら前記それぞれの面積が変わる範囲内に可動磁極部の相対偏倚量が規制される事を特徴とする回転電機システム
  9. 請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,回転力を入力とし,発電電力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より大の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を小とされ,発電電圧が所定の値より小の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を大とされ,発電電圧が所定の値に制御される事を特徴とする回転電機システム
  10. 請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により回転速度が所定の値より大で電機子を流れる磁束量を減少させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を小とされ,回転速度が所定の値より小で電機子を流れる磁束量を増大させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積を大として回転力が最適に制御される事を特徴とする回転電機システム
  11. 請求項1から請求項8記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度を減少させる場合には制御装置により電機子を流れる磁束量を大とされるよう可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と磁性体突極延長部とが対向する面積が大とされて回転エネルギーが発電電力として取り出される事を特徴とする回転電機システム
  12. 電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する表面磁極部と,表面磁極部に対向し,隣接する磁性体突極を互いに逆極性に磁化するよう配置された界磁磁石を含む励磁部とを有する回転電機の電機子を流れる磁束量を制御する磁束量制御方法であって,励磁部と対向する表面磁極部の側に配置された磁性体突極延長部及びバイパス磁極に界磁磁石の一方の磁極を対向するよう配置し,界磁磁石の一方の磁極から磁性体突極延長部に流入する磁束が電機子及び隣接する磁性体突極を介して他方の磁極に環流する主磁路及び界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入する磁束が主として界磁部内で他方の磁極に環流するバイパス磁路を界磁磁石に並列に接続し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大にし,表面磁極部或いは励磁部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が磁性体突極延長部と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和を一定に保ちながら前記それぞれの面積を変えるよう可動磁極部を残余に対して相対的に偏倚可能に構成し,可動磁極部を偏倚させて電機子を流れる磁束量を制御する。
  13. 請求項12記載の界磁制御方法に於いて以下のステップを含んで,バイパス磁路の磁気抵抗及び主磁路の磁気抵抗が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する。
  14. 請求項12記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含んで,さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大になるよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する。
  15. 請求項14記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含んで,さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,前記磁気力が予め定められた範囲内になるよう磁気抵抗調整手段により主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して主磁路とバイパス磁路間の磁気抵抗が主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗との間の差より大とする。
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