JP2009265028A - 破断予測方法及び装置、並びにプログラム及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】破断限界強度を材料固有の破断限界せん断応力τcr及び材料固有の破断限界応力σcr 11として推定した後、シミュレーションにより得られるせん断応力τが破断限界せん断応力τcrに達したときに、重ね面の溶接金属でせん断破断すると判定し、引張応力σ11が破断限界応力σcr 11に達したときに、材料のネッキングにより破断を判定する。
【選択図】図8
Description
例えば、(1)スポット溶接部に作用するせん断荷重と剥離荷重が楕円則で与えられるクライテリアに達すると破断と判定する方法(非特許文献4を参照)、(2)楕円則を拡張し、ナゲット周りの曲げモーメントを破断判定に考慮する方法(特許文献1を参照)、(3)ナゲット周辺における応力集中を破断の支配因子と考える方法(特許文献2を参照)が提案されている。
本発明の破断予測方法は、レーザ溶接で接合された製品又は最終製品の衝突強度を予測評価する破断予測方法であって、前記製品又は最終製品のレーザ溶接部の破断限界強度を推定する第1のステップと、前記レーザ溶接部に作用する応力の前記破断限界強度との関係に基づいて、前記レーザ溶接部の破断の危険性を判定する第2のステップとを含む。
本発明の破断予測装置は、レーザ溶接で接合された製品又は最終製品の衝突強度を予測評価する破断予測装置であって、前記製品又は最終製品のレーザ溶接部の破断限界強度を推定する第1の手段と、前記レーザ溶接部に作用する応力の前記破断限界強度との関係に基づいて、前記レーザ溶接部の破断の危険性を判定する第2の手段とを含む。
本発明のプログラムは、上記の破断予測方法の第1のステップ及び第2のステップを実行させるものである。
本発明の記録媒体は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能なものである。
高強度鋼板のレーザ重ね継手の引張せん断試験に関しては、溶接ビードが鋼板間の溶接金属で裁断されるせん断破断を起こし易いことが報告されている。例えば、宮崎らは各種高強度鋼板のレーザ重ね継手に関して溶接長や溶接速度を変化させ、これら溶接条件が継手強度や破断形態に及ぼす影響を調査している(非特許文献5を参照)。更に、宮崎らは、溶接金属の硬さと軸芯のオフセットによる溶接部の回転角から継手強度の推定式を提案し、良好な精度で予測可能なことを報告している(非特許文献5を参照)。
そこで本発明者らは、高強度鋼板のレーザ重ね引張せん断試験に関して、レーザ溶接長の変化に伴う継手強度や破断形態の変化を実験的に明らかにし、3次元弾塑性有限要素法によるシミュレーションを基に破断のメカニズムを検討した。続いて、この破断メカニズムを基に衝突シミュレーションでレーザ溶接部の破断を判定する方法を見出した。
熱影響部: σeq=1436(0.0002+εeq)0.179
溶接金属: σeq=1606(0.0001+εeq)0.099
図3に、溶接ビードに作用する試験片幅方向の応力分布を示す。ここでは、引張試験で観測した最大荷重に一致するまで増分を加えることで引張解析を行ったものであり、溶接長48mmの継手では引張方向端部が3mm変位したとき、全幅継手では40mm変位したときのものである。このうち、接合界面でせん断破断した溶接長48mmの継手は、ビード始終端にせん断応力τの応力集中が観測されたが、全幅継手の場合には、幅方向に均一にせん断応力τが作用しており応力集中は認められない。このことから、溶接長48mmの継手ではビード始終端部近傍のせん断応力τの応力集中により、溶接金属でせん断破断が生じたと推察される。
更に、ビード長が変化しても、せん断応力τの最大値はビード外縁の平行部端で観測されることから(図5)、この部位が起点となって破断が生じると推定される。
τcr=α{(HνWM/3)×9.8}/31/2
HνWM=884C(1−0.3C2)+294
以下に要旨を述べる。
(1)母材のネッキングよりも先に、ビードに作用するせん断応力τが破断クライテリアに達したときには溶接金属でせん断破断が生じ、母材が先に塑性不安定条件を満足したときにはネッキングが生じてプラグ破断する。
(2)溶接金属でせん断破断が生じる支配因子はせん断応力である。即ち、ビード始終端に作用するせん断応力の最大値が材料固有の臨界値を越えたときに重ね面の溶融金属でせん断破断する。
以下、上述した本発明の基本骨子を踏まえ、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
この破断予測装置は、レーザ溶接で接合された製品又は最終製品、ここでは自動車車体の鋼板の衝突強度を予測評価するものであり、鋼板のレーザ溶接部の破断限界強度を推定する破断限界強度推定部1と、鋼板のレーザ溶接部に作用する応力の破断限界強度との関係に基づいて、レーザ溶接部の破断の危険性を判定する破断判定部2とを備えて構成されている。
破断限界強度推定部1及び破断判定部2は、例えばコンピュータの中央処理装置(CPU)の各機能として実現される。
τcr=α{(HνWM/3)×9.8}/31/2 ・・・(1)
により算出する。
溶接金属のビッカース硬さHνWMを推定する際には、鋼材のC量(質量%)を用いて、
HνWM=884C(1−0.3C2)+294 ・・・(2)
により算出する。
また破断判定部2は、引張応力σ11が破断限界応力σcr 11に達したとき(σcr 11以上となったとき:σ11≧σcr 11)に、材料のネッキングにより破断を判定する。
τ=fs/(2rd)
σ11=f/(2rd)
として算出する。これは、単位面積当りに作用する荷重、即ち応力を示す。
レーザ溶接で接合された鋼板の衝突強度を予測評価するには、先ず、破断限界強度推定部1は、破断限界強度を材料固有の破断限界せん断応力τcr及び材料固有の破断限界応力σcr 11として、例えば上記した式(1),(2)に基づいて推定する(ステップS1)。
続いて、破断判定部2は、シミュレーションにより得られるせん断応力τが破断限界せん断応力τcrに達したときに、重ね面の溶接金属でせん断破断すると判定し、引張応力σ11が破断限界応力σcr 11に達したときに、材料のネッキングにより破断を判定する(ステップS2)。
上記の破断予測装置(方法)を用い、汎用衝突解析FEMコードにサブルーチンプログラムとして、部材の衝突変形の解析中にレーザ溶接部の破断を自動判定するシステムを構築した。本実施例として用いたコードは、動的陽解法FEM(ESI社製PAM-CRASH)であり、シェル要素でモデル化した試験片についてMulti-PLINKを用いてレーザ溶接部をモデル化している。なお、供試材は1.2mm厚の590MPa級GA鋼板であり、前述の実験に倣った。
上述した実施形態による破断予測装置を構成する各構成要素(図7の破断限界強度推定部1及び破断判定部2)等の機能は、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。同様に、破断予測方法の各ステップ(図8のステップS1,S2等)は、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
2 破断判定部
Claims (14)
- レーザ溶接で接合された製品又は最終製品の衝突強度を予測評価する破断予測方法であって、
前記製品又は最終製品のレーザ溶接部の破断限界強度を推定する第1のステップと、
前記レーザ溶接部に作用する応力の前記破断限界強度との関係に基づいて、前記レーザ溶接部の破断の危険性を判定する第2のステップと
を含むことを特徴とする破断予測方法。 - 前記第1のステップでは、前記破断限界強度を材料固有の破断限界せん断応力τcr及び材料固有の破断限界応力σcr 11として推定し、
前記第2のステップでは、前記応力をせん断応力τ及び引張応力σ11として、シミュレーションにより得られる前記せん断応力τが前記破断限界せん断応力τcr以上となったときに、重ね面の溶接金属でせん断破断すると判定し、前記引張応力σ11が前記破断限界応力σcr 11以上となったときに、材料のネッキングにより破断を判定することを特徴とする請求項1に記載の破断予測方法。 - 前記第2のステップでは、評価対象となる連続した前記レーザ溶接部を多数の有限個のビーム要素に離散化(半径rの前記ビーム要素を間隔dで配置)することによりモデル化し、前記ビーム要素にせん断力fs、剥離力fn及び前記せん断力fsと前記剥離力fnとの合力fが作用するときに、前記せん断応力τ及び前記引張応力σ11を、
τ=fs/(2rd)
σ11=f/(2rd)
により算出することを特徴とする請求項2に記載の破断予測方法。 - 前記第1のステップでは、前記破断限界せん断応力τcrを推定する際に、前記溶接金属のビッカース硬さHνWMと溶接条件による係数α(≦1)を用いて、
τcr=α{(HνWM/3)×9.8}/31/2
により算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の破断予測方法。 - 前記溶接金属のビッカース硬さHνWMを推定する際に、鋼材のC量(質量%)を用いて、
HνWM=884C(1−0.3C2)+294
により算出することを特徴とする請求項4に記載の破断予測方法。 - 前記破断限界応力σcr 11を、単軸引張試験から得られる引張強さとすることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の破断予測方法。
- レーザ溶接で接合された製品又は最終製品の衝突強度を予測評価する破断予測装置であって、
前記製品又は最終製品のレーザ溶接部の破断限界強度を推定する第1の手段と、
前記レーザ溶接部に作用する応力の前記破断限界強度との関係に基づいて、前記レーザ溶接部の破断の危険性を判定する第2の手段と
を含むことを特徴とする破断予測装置。 - 前記第1の手段は、前記破断限界強度を材料固有の破断限界せん断応力τcr及び材料固有の破断限界応力σcr 11として推定し、
前記第2の手段は、前記応力をせん断応力τ及び引張応力σ11として、シミュレーションにより得られる前記せん断応力τが前記破断限界せん断応力τcr以上となったときに、重ね面の溶接金属でせん断破断すると判定し、前記引張応力σ11が前記破断限界応力σcr 11以上となったときに、材料のネッキングにより破断を判定することを特徴とする請求項7に記載の破断予測装置。 - 前記第2の手段は、評価対象となる連続した前記レーザ溶接部を多数の有限個のビーム要素に離散化(半径rの前記ビーム要素を間隔dで配置)することによりモデル化し、前記ビーム要素にせん断力fs、剥離力fn及び前記せん断力fsと前記剥離力fnとの合力fが作用するときに、前記せん断応力τ及び前記引張応力σ11を、
τ=fs/(2rd)
σ11=f/(2rd)
により算出することを特徴とする請求項8に記載の破断予測装置。 - 前記第1の手段は、前記破断限界せん断応力τcrを推定する際に、前記溶接金属のビッカース硬さHνWMと溶接条件による係数α(≦1)を用いて、
τcr=α{(HνWM/3)×9.8}/31/2
により算出することを特徴とする請求項8又は9に記載の破断予測装置。 - 前記溶接金属のビッカース硬さHνWMを推定する際に、鋼材のC量(質量%)を用いて、
HνWM=884C(1−0.3C2)+294
により算出することを特徴とする請求項10に記載の破断予測装置。 - 前記破断限界応力σcr 11を、単軸引張試験から得られる引張強さとすることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の破断予測装置。
- コンピュータに、請求項1〜6のいずれか1項に記載の破断予測方法の第1のステップ及び第2のステップを実行させるプログラム。
- 請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
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