JP2009260705A - リンクとリンク容量増設方法、およびそのプログラム - Google Patents

リンクとリンク容量増設方法、およびそのプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】トポロジとリンク容量が与えられたネットワークを対象に、投資コストを抑えながら効果的に信頼性を向上させるよう、適切なリンク設置・リンク容量増設箇所を発見する方法、特にネットワークの故障発生時にサービスを継続する目的で、リンク(通信路)増設を行う際に、過剰増設とならないように、適切な増設箇所を特定する。
【解決手段】最大最短閉路(任意の二つのノードA,Bを含む経路で経路コストが最小のものを最短閉路と定義し、最短閉路の中でホップ長が最大のものを最大最短閉路と定義)のホップ長を効果的に削減し、障害時のホップ長倍率を低減するリンク増設箇所を抽出する。さらに、障害時のフロー数倍率を低減するリンク容量増設箇所を抽出する。
さらに、リンク増設箇所の候補とリンク容量増設箇所の候補を抽出し、前者の障害時フロー長倍率低減効果と後者の障害時フロー数倍率低減効果を比較し、より効果の大きな方を選択することで、リンク増設とリンク容量増設箇所の選定を同時に行う。
【選択図】図2

Description

本発明は、トポロジとリンク容量が与えられたネットワークを対象に、投資コストを抑えながら効果的に信頼性を向上させるよう、適切なリンクとリンク容量増設箇所を発見する方法に関し、特にネットワークの故障発生時にサービスを継続する目的で、リンク(通信路)増設を行う際に、過剰増設とならないように、適切な増設箇所を特定するためのリンクとリンク容量増設箇所の具体的な選定方法に関する。
従来、電子メール、Webアクセス、ファイル交換などの利用が主であったインターネットにおいて、近年、電話サービスのマイグレーションが急速に進みつつある。日常的に利用される機会は今後ますます増加していくことが予想され、社会インフラ化に伴い信頼性に対する要求はますます増大している。特に、バックボーンは大量のトラヒックを中継する役目を担っており、特別に高い信頼性が求められる。ファイバ切断や光伝送装置の故障、ルータの設定ミスやソフトウェアのバグ、処理装置の過剰負荷といった様々な要因で、インターネットでは日常的に様々なリンクやルータで障害が発生している。そのため障害が発生することを前提とし、障害発生時にもノード間の接続性を維持し、サービスを継続する堅牢性が求められる。
インターネットの単一AS(Autonomous System)内では、ルーティングプロトコルとしてOSPF(Open Shortest Path First)が用いられているが、障害発生時、ルータは障害発生箇所を避けるようにフロー(発着ノード間を流れるパケットの集合と定義)の迂回経路を自律的に設定する。そのため、障害発生時にも高い接続性を維持することができる反面、フローの経路が迂回される結果、フローのホップ長が大きく増加する可能性や、迂回フローが特定のリンクに集中し負荷が大きく増加する可能性がある。このことは、パケット転送時間の増大、フローのスループット低下を意味するため、音声や動画といった即時性の高いサービスの品質劣化を招く。そのため、ネットワーク(NW)の信頼性を議論する際には、接続性の維持の観点だけでは不十分であり、フロー長やリンク負荷の安定性の維持の観点からも評価することが重要である。
障害時の接続性と安定性を向上させる最も簡易な方法は、大容量のリンクを数多く敷設することであるが、設備投資コストと管理・運営コストが増大する。ISP(Internet Service Provider)が競争力を保つためには信頼性の高いサービスを低料金でユーザに提供することが重要である。限られた投資コストで効果的に信頼性を向上させる必要がある。そのための一つの方法は、静的な交流トラヒック行列に対して障害発生時の迂回を考慮した上で総コストが最小化するように網トポロジとリンク容量を設計することである。しかし、交流量を精度よく推定することは容易でなく、またトラヒック量は日々変化するため、時間の経過に伴い最適性が低下する。そのため、ISPにとっての現実的な方法は、長期的な交流需要行列の変化に応じて、既に保有するNWに対して部分的にリンクを設置し、リンク容量を増設することである。そのためには、障害発生時に接続性や安定性を低下させる主な要因を分析し、設備増設箇所を効果的に絞り込む必要がある。
発明者は、本出願より前に本願発明の基になる提案(ネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法)を出願した。この方法では、現実の商用ISPのバックボーンNWを対象に、単一リンク障害(SLF:single link failure)時の、接続性、フローホップ長の安定性、リンクのフロー数の安定性、について評価し、これら品質が悪化する要因について分析した。
以下に、その内容をまとめる。
(ネットワークの分類と構造分析)
評価には、CAIDAのWebページでトポロジとリンク容量が公開されている39の商用ISPのバックボーンNWを用いる。ただし、Cable InternetとRISQ(Review of International Social Questions)Networkは、トポロジが単一のSpanning Treeであり、任意のSLF時に障害フローの迂回が全くできないことから、評価には用いない。また、Unilat Inc.は全体が4つと2つのノードの集合に分断されているため、やはり評価には用いない。また、PSINet、Qwest、Telstra Internet、UUNETにおいて、各々、3,2,6,2個のノードが孤立しているため、これらのノードは除外する。
図23は、評価に用いた36のNWについて、名称、ノード数n、(双方向)リンク数m、ノード次数の平均と最大値、リンク容量の最小値と最大値をまとめた図である。
図11は、平均次数と最大次数の散布図である。
この図では、これら36のNWの平均ノード次数と最大ノード次数の散布図を示している。
図11から、36のNWを以下の3つのグループに分類する。
1)Full mesh・・・各ノードが殆んど他の全てのノードと接続しているトポロジで、平均次数と最大次数の差が小さく、平均次数が大きい。平均次数をE(d)、最大次数をMax(d)とすると、ここではE(d)≧Max(d)−1を満たすNWと定義する。2つのNWがこれに該当する。
2)H&S・・・次数の高いノード(ハブノード)が存在し最大次数が大きい。ハブ&スポーク型と呼ばれるトポロジ構造であり、航空路線のトポロジが本形態となることが知られている。ハブノードを経由して多数のノードに到達することができるため、フローのホップ長が短くなる特徴がある反面、ハブノードに多数のフローが経由するため負荷がハブノードに集中し易い。ここでは、Max(d)≧10、E(d)<Max(d)−1を満たすNWと定義する。12のNWがこれに該当する。
3)Ladder・・・高次数ノードが存在せず、ループを組み合わせたトポロジ構造となる。平均次数と最大次数が共に小さい。リンク総延長を抑えられる反面、遠方のノードに到達するためには多数のノードを経由する必要があり、フローのホップ長が長くなる傾向がある。高速道路網が本形態となることが知られている。ここでは、Max(d)<10、E(d)<Max(d)−1を満たすNWと定義する。22のNWがこれに該当する。
図12は、ネットワークトポロジの例を示す図である。
この図には、各々の種別に属するNWを例示している。
これら3つのNWは、全て米国のISPであるが、種別ごとに大きく形状が異なることが確認できる。
H&S型のNWは次数の大きく異なるノードから構成されているため、ノードの接続構造を考察する。
図13は、H&S型ネットワークの特性図である。
図13(a)のように、H&S型の12のNWの各々に対して、次数の大きな順に正規化ノード次数(ノード次数を最大次数で除した値)をプロットする。横軸は順位をノード数nで除した値である。NW16,29を除く他の10のH&S型NWでは、全て全体の5%〜20%程度の少数のノードが高次数である。次に、ハブノードが相互に接続されている度合いを調べるため、図13(b)のように、RCC(rich club connectivity)をプロットする。RCCは、ノードを次数の大きな順に並べたときの上位ρ個のノード間に存在するリンク数を、可能な総数ρ(ρ−1)/2で除した値で定義され、図13ではρをnで正規化した値に対してプロットしている。RCCも正規化ノード次数と同様の傾向を示しており、高次数ノードのRCCは高く、多くの高次数ノード間にはリンクが設置されている。
高次数ノード間に設置されたリンクには多数のフローが経由することから、そのような場所には大容量リンクが設置されることが予想される。リンク容量が均一なNW13を除いた11のNWを対象に、各リンクの正規化リンク容量(リンク容量を最大リンク容量で除した値)を正規化ノード次数積に対して、図13(c)のようにプロットする。
正規化ノード次数積を、各リンクの両端のノードの次数の積を、各NWにおける次数積の最大値で除した値で定義する。次数の高いノード間に設置されたリンクほど、正規化ノード次数積が大きくなるが、予想に反して、リンク容量とノード次数積との間には明確な正の相関は見られない。
(正常時のフローとリンク負荷特性)
障害が発生していない正常時の、フローのホップ長とリンク負荷について考察する。
これらの特性はフローの経路設定法に依存するが、本発明では、OSPFを想定し、リンクコストとして、シスコ社の推奬するリンク容量の逆数に設定する場合(inv.cap)と、全リンクで同一の値を設定する場合(min.hop)の二つを考える。ある発着ノード間に同じコストの経路が複数存在する場合には、全ての最小コスト経路にトラヒックが均一に分散されると仮定する。
各NWに対して平均フロー長hを次式で定義する。
Figure 2009260705
ただし、Vはノード集合、hsdはノードsとdの間のフロー(フローsdと表記)の平均フロー長、σsdはフローsdのパスの本数、Psdはフローsdのパス集合、hsd,pはsd間のパスpのホップ長である。
図14は、正常時のフロー特性を示す図である。
この図では、36の各NWに対して、hをmに対してプロットしている。
min.hopでは最短ホップ経路が設定されるため、inv.capはmin.hopよりhが若干増加している。特に、NW2,4,8,15,26のhが大きいが、これらは全てLadder型である。Ladder型NWにハブノードが存在せず、遠方のノードに到達するためには多数のノードを経由する必要があり、hが大きくなる傾向がある。
次に、正常時に各リンクを経由するフロー数について考察する。
リンクlの平均フロー数νBetweenessと同様、
Figure 2009260705
と定義し、各NWに対して平均フロー数υと最大フロー数υmaxを、m本の全リンクにわたるυの相加平均と最大値により求める。
図15は、正常時のリンク負荷特性を示す図である。
図15(a)には、inv.capとmin.hopにおけるυmaxを平均フロー数υで除した値の散布図を、36のNWに対してプロットする。殆んどのNWは直線y=xの右下の領域に存在inv.capを用いることで大容量リンクにフローが集中し、各リンクを経由するフロー数の格差が拡大することが確認できる。リンク容量の格差が大きく迂回経路を見つけ易いH&S型のNWで、特にこの傾向が強い。
また図15(b)には、リンク容量が不均一な24の各NWに対して、リンク容量cとフロー数υとの間の相関係数を、inv.capとmin.hopの各々の場合について散布図としてプロットする。NWによって、cとυとの間の相関係数のばらつきが大きく、NW種別による明確な傾向は見られない。inv.capを用いることでリンク容量の大きなリンクにフローが集中し、cとυとの間の相関性が向上すること、リンク容量の有効な活用の観点からはinv.capを用いることが望ましいことが確認できる。
また、図15(c)(d)に、inv.capとmin.hopにおける、24のNWの各リンクに対して、正規化リンク容量(cを各NWの最大リンク容量cmaxで除した値)と正規化フロー数(υをυmaxで除した値)間の散布図を示す。inv.capを用いることで、リンク容量の小さいリンクを経由するフロー数が抑えられることが確認できる。
(接続性に関する評価)
SLF時の接続性喪失率Pdcを、一つ以上のSLF発生パタンにおいて接続性が失われるフローの割合と定義する。すなわち、xsd,lをリンクlのSLF時のフローsdの接続性が維持される場合に1、損なわれる場合に0をとる2値変数と定義すると、
Figure 2009260705
である。次数dが1のノードを発着とするフローは、そのノードが接続するリンクの障害時に必ず接続性が失われる。
図16は、次数1のノード数比率を示す図である。
図16(a)には、次数1のノード数のnに対する割合をnに対してプロットする。ただしNW11,18(Full mesh型)とNW7,17(Ladder型)は次数1のノードが存在しないため省いている。次数1のノード割合はNWにより大きく異なり、nやNW種別による明確な傾向は見られない。
また、図16(b)には、NWごとに、次数1ノード数比率に対してPdcをプロットする。これら二つの尺度間には正の相関が見られ、SLF時に接続性が失われるフローの大部分は次数が1のノードを発着とするものであることが予想される。ただし、次数1ノードに接続するリンクのSLF時、影響を受けるフローはそのノードを発着とするフローに限定され、NW全体の信頼性に与える影響は小さい。そこで、Pdcから次数1のノードに起因するものを除いたSLF時の接続性喪失率Pdc’を算出したところ、23のNWでPdc’がゼロとなり、Pdc’が0.05を超えたのはNW2,12,15,20のLadder型の4つのNWのみであった。これら4つのNWのトポロジ形状を調べたところ、NW2は82ノード中17ノードが1本のリンクによって他の部分に接続しており、NW12,15は1本のリンクのSLFによりNW全体が二つに分断される形状であり、NW20は15ノード中3ノードが1本のリンクによって他の部分に接続している。よって、これら4つのNWにおいてはSLFに対して脆弱なアキレス腱となるリンクが存在するが、他の32のNWにはそのようなリンクが存在せず、接続性については堅牢であると言える。
以後、SLF時の安定性に関する性能指標を算出する際には、接続性が喪失したフローについては全て除いて考える。
(フロー長の増加に関する分析)
ホップ数がyのフローがSLF時に影響を受ける障害発生パタン数の全リンク数mに対する割合をR(y)とすると、R(y)=y/mなので、NW全体で各フローが平均的に影響を受ける障害発生パタン数のmに対する比率Rは、
Figure 2009260705
より算出できる。
図17は、各フローやリンクに影響を与える障害パタン数比率を示す図である。
図17(a)には、36のNWに対して、inv.capにおけるRとmin.hopにおけるRの散布図を示している。inv.capを用いると、min.hopと比較してフローの平均ホップ長が増加するため、Rは若干大きくなる。また、Ladder型のNWフローのホップ長が長くなる傾向があるため、Rが大きい。殆んどのNWはRが0.15程度より小さいため、SLF時の平均的なフロー長増加特性を評価するに際し、各フローに対して影響を受けるリンク障害パタンのみを考慮する。すなわち、SLF時のフローsdの平均フロー長h’sdを次式(5)で定義する。
Figure 2009260705
ただし、msdはSLF時にフローsdが影響を受けるリンク数、Esdはそのリンク集合、hsd,lはリンクlのSLF時のノードs,d間のフローの平均ホップ長、σsd,lはリンクlのSLF時にノードs,d間に設けられるパス数、Psd,lはそのパス集合、hsd,l,pはPsd,lに属するパスpのホップ長である。そして、SLF時の平均フロー長倍率ξを、ξ=Σs,d∈Vh'sd/hsd/n/(n−1)で算出する。また、SLF時の最大フロー長倍率ξmaxを次式(6)で定義する。
Figure 2009260705
ただし、hmin,sdは正常時にノードs,d間に設置されるフロー最小ホップ長である。
図18は、SLF時のフロー長増加率を示す図である。
この図では、36のNWを対象にξmaxとξの散布図を、(a)inv.capと(b)min.hopの各々について示している。min.hopとinv.capとで大きな差異は見られない。Ladder型のNWは全体的にフロー長が長いため、SLF時の増加度合いも大きくなる傾向が見られる。特に、5つのNWはξmaxは突出して大きいが、これらは正常時の平均フロー長が大きい5つのNWである(図14参照)。
次に、これらのNWで、ξmaxが大きな要因を考察する。
正常時のトポロジにおいて、任意のノードAから出発して同じリンクを逆方向も含めて2回以上経由することなく、任意の他のノードBを経由し、さらに元のノードAに戻ることのできる経路の中で最小のコストのものをノードAとノードの最短閉路と定義する。
最短閉路の存在しない二つのノード間のフローは、どのように経路を設定しても必ず経由する必要のあるリンクが存在することになり、そのリンクのSLF時には接続性が失われるため、SLF時の安定性の評価の対象外となる。よって、最短閉路が存在するノードペアについてのみ考える。
ノードA,Bの最短閉路上には、リンクを共有しない二つの経路がAとBの間に存在するが、そのうちコストの小さい方がAB間の最小コスト経路となり、もう一方が、次にコストの小さい経路となる。そのため、正常時には、最短閉路上のコストの小さい経路が用いられ、この経路上のリンクのSLF時には最短閉路上のもう一方の経路にフローが迂回される。そのため、最短閉路上の迂回経路のホップ数を正常時経路のホップ数で除したものがAB間のフロー長倍率となる。よって、各NWにおいて、隣接する二つのノードに対して定義される最短閉路の中でホップ数が最大のものを最大最短閉路と定義すると、最大最短閉路を導く二つの隣接ノード間のリンクのSLF時に、これら二つのノード間のフローのフロー長倍率がξmaxを与え、最大最短閉路のホップ数をθとすると、ξmax=θ−1となる。
図19は、AtHome networkのトポロジを示す図である。
この図では、ξmaxが突出して大きかった5つのNWの例として、NW4のトポロジを示している。このNWには、θ=14の最大最短閉路が2つ存在し、隣接ノードペア7,9などの最短閉路(7−9−15−18−21−39−40−41−36−38−14−12−10−8−7)と、隣接ノードペア33,34などの最短閉路(18−20−28−29−30−31−32−33−34−35−37−40−39−21−18)が該当する。例えば、ノード7,9間のリンクのSLF時、これらのノード間のフローのホップ長が1から13に増加し、ξmax=13となる。
ξmaxの大きなNWはξも大きな傾向にあり、ξmaxの突出して出きな5つのNWのうちNW26を除く4つはξが1.8を超えていた。またNW11,17,18,20,21の5つのNWは、ξmaxは小さいもののξが大きい。このうち、NW11と18はFull mesh型であり、正常時は殆んどのノード間のフローが1ホップであるのに対して、SLF時には影響を受けたフローが2ホップとなり、ξが2に近くなる。また、NW17,20,21はループトポロジに近く、θの総リンク数mに対する比率が大きく、多数のフローのフロー長倍率が大きくなる結果、ξが大きい。
(リンク負荷の増加に関する分析)
各リンクを経由するフロー数が正常時のフロー数と比較して増加するSLFのパタン数の全リンクにわたる平均をリンク数で除した値をRと定義する。
図17(b)に、36のNWに対して、inv.capにおけるRとmin.hopにおけるRの散布図を示す。inv.capを用いると、特定のリンクにフローが集中するため、多くのリンクに対しては障害時にフローが迂回されず、min.hopと比較してRが小さい。殆んどのNWはRが0.5程度より小さいため、SLF時の平均的な経由フロ数増加特性を評価するに際し、やはり各リンクの経由フロー数が増加するリンク障害パタンのみを考慮する。SLF時のリンクの平均経由フロー数倍率をn−1で除して正規化した,正規化平均経由フロー数倍率εを次式(7)で定義する。
Figure 2009260705
ただし、εはSLFにおけるリンクlの平均フロー数倍率、υ'l,eはリンクeのSLF時におけるリンクlのフロー数(算出方法は前式(2)に準じる)、mε,lはυ'l,e>υとなるSLFパタン数、Eε,lはそのSLFリンク集合、mεはmε,l>0のリンク数、Eεはそのリンク集合である。また、SLF時の最大フロー数倍率をn−1で正規化した、正規化最大フロー数倍率εmaxを次式(8)で定義する。
Figure 2009260705
ただし、εとεmaxの算出において、υ=0のリンクはυ=1と置き換える。また、これらの評価値をn−1で除した正規化値で考えるのは、一つのノードを発ノードもしくは着ノードとするフローは、n−1本存在するため、nが大きなほど、SLF時のフロー数倍率が大きくなる傾向があり、その効果を除くためである。
図20は、SLF時のフロー数増加率を示す図である。
この図では、36のNWを対象にεとεmaxの散布図を、(a)inv.capと(b)min.hopの各々について示している。min.hopを用いると、リンク間で経由フロー数の格差が大きいため、SLF時のフロー数倍率も高くなる。inv.capの場合、6つのNWで算出において、εmaxの値が大きいが、その要因を考察する。
SLF時のフロー数倍率が高いリンクは正常時に経由するフロー数が少なく、かつSLF時に大量のフローが迂回される障害パタンが存在するリンクである。そのようなリンクは、1)二つ以上のハブノードを含む最短閉路、2)ホップ数の長い最短閉路、のいずれかに存在すると考えられる。そのような最短閉路を構成するリンクの容量の格差が大きく、一部のリンク容量が極端に小さい場合、小容量リンクの両端のノードA,B間のフローはinv.capにおいては、正常時にはそのリンクを用いず、最短閉路上を周回する経由を用いる。このようなリンクは正常時には経由するフロー数がゼロとなるが、最短閉路上に存在する少なくとも一方がA,Bとは異なる2個のノードのうち、やはり同一の最短閉路を構成するものの間の任意のリンクのSLF時には、大量のフローがA,B間を接続するリンクに迂回される結果、フロー数倍率が高くなる。
図21は、above.netのトポロジを示す図である。
この図では、εmaxの大きいNWの例としてNW1のトポロジを示している。ノードペア0,1および1,2の最短閉路は(0−1−2−0)であるが、リンク(0,1)と(0,2)の容量が622Mbpsであるのに対してリンク(1,2)の容量は155Mbpsである。そのため、正常時、ノード1,2間のフローも含めて、リンク(1,2)には全くフローが経由しないが、二つのハブノード0と1の間のリンクのSLF時、大量のフロが(0−2−1)の経路に迂回される結果、リンク(1,2)のフロー数倍率が高くなる。
最短閉路長が短い場合に、単一のリンクを通るコストが最短閉路上を周回するコストより大きくなり易いため、εが大きなリンクは3本のリンクから構成される最短閉路において生じ易い。実際に、εmaxの大きな6つのNWのうち、NW1,3,5は2以上のハブノードを含み、リンク容量格差の大きな3本のリンクから構成される最短閉路においてεが最大となった。また、NW8,23は、各々、6,5ホップの最短閉路上においてεが最大となった。ただし、NW2は17のノードが1本のリンクで接続する特殊な形状となっており、例外的に、接続点からNWの他の部分に接続する容量の異なる2本のリンクでεが最大となった。
このように、容量格差の大きいリンクで最短閉路を構成した場合、SLF時に一部のリンクで経由フロー数が非常に増加する場合がある。特に、リンク容量の小さなリンクでフロー数倍率が高くなる場合、SLF時にリンク輻輳を生じる要因となる。このことを確認するため、各リンクのSLF時の平均迂回フロー数を最大迂回フロー数で正規化した値ψを、正規化リンク容量に対して図22にプロットする。
図22は、SLF時の正規化平均迂回フロー数を示す図である。
ここでは、リンク容量が不均一な24のNWの各リンクに対して、(a)inv.cap、(b)min.hopの場合について示している。ここで、ψは、次式(9)で定義する。
Figure 2009260705
ただし、ψはSLFにおけるリンクlの平均迂回フロー数、ul,eはリンクeのSLF時においてリンクlに迂回されるフロー数(算出方法は前式(2)に準じる)、mψ,lはul,e>0のSLFパタン数、Eψ,lはそのSLFリンク集合、mψはmψ,l>0のリンク数、Eψはそのリンク集合である。最大リンク容量の0.1〜0.01倍を下回る小容量リンクの多くに、最大迂回フロー数に近い大量のフローが迂回されることが確認できる。
(分析のまとめ設計指針)
公開されている36の商用ISPのバックボーンNWを対象に、単一リンク障害(SLF)に対する信頼性を接続性と品質の安定性の観点から評価し、信頼性が劣化する要因について分析した結果、以下のことが明らかとなった。
●SLFによりNWが分断されるリンクを有するNWは4つのみであり、大部分のNWは接続性の観点からは堅牢である。
●SLF時のフロー長の最大増加量は最大最短閉路によって決まり、最大最短閉路長が長いLadder型のNWがSLF時のフロー長の増加度合いが高くなる傾向がある。
●容量格差の大きなリンクから構成される,2個以上のハブノードを含むかホップ長の長い最短閉路上の小容量リンクが、SLF時に経由するフロー数の増加度合いが大きい。ハブノードを多く含むH&S型のNWにおいてSLF時のリンクのフロー数増加度合いが高くなる傾向がある。
以上のことから、容量格差の大きな最短閉路が存在するか否かを調べ、存在する場合には最短閉路上の小容量リンクの容量を増設することが、また、ホップ長が大きな最大最短閉路が存在するか否かを調べ、存在する場合には最大最短閉路のホップ長が小さくなるようバイパスリンクを設置することが、ISPにとって投資コストを抑えながら信頼性を効果的に向上させるために有効である。
先に出願された前述の『ネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法』では、実ネットワークを分析することで、単一リンク障害時のフローホップ長倍率とフロー数倍率を劣化させる要因を分析した。しかし、これら品質を改善するために効果的な選定方法については述べられていない。
(目的)
本発明の目的は、限られた投資コストで、効果的にこれら品質を改善するための,リンクとリンク容量増設方法、およびそのプログラムを提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、トポロジとリンク容量が与えられたネットワークを対象に、投資コストを抑えながら効果的に信頼性を向上させるよう、適切なリンクとリンク容量増設箇所を発見する方法、特にネットワークの故障発生時にサービスを継続する目的で、リンク(通信路)増設を行う際に、過剰増設とならないように、適切な増設箇所を特定するためのリンクとリンク容量増設方法、およびそのプログラムを提供することにある。
本発明のリンク増設およびリンク容量増設方法は、ネットワークトポロジとリンク容量が与えられたときに、投資コストを抑えながら、ネットワークの障害時のホップ長の安定性とリンク負荷の安定性を効率的に向上させるために、適切なリンク増設箇所とリンク容量増設箇所を絞り込むことを特徴としている。
さらに、最大最短閉路(任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものを最短閉路と定義し、最短閉路の中でホップ長が最大のものを最大最短閉路と定義)のホップ長を効果的に削減し、障害時のホップ長倍率を低減するリンク増設箇所を抽出することを特徴としている。
さらに、障害時のフロー数倍率を低減するリンク容量増設箇所を抽出することも特徴としている。
さらに、リンク増設箇所の候補とリンク容量増設箇所の候補を抽出し、前者の障害時フロー長倍率低減効果と後者の障害時フロー数倍率低減効果を比較し、より効果の大きな方を選択することで、リンク増設とリンク容量増設箇所の選定を同時に行うことを特徴としている。
さらに、リンク増設箇所の候補とリンク容量増設箇所の候補を抽出する際に、改善対象でない側の品質尺度に下限許容量を設定し、そのような制約が満たされる範囲で最適な増設箇所を選定し、より効果の大きな方を選択することで、リンク増設とリンク容量増設箇所の選定を同時に行うことを特徴としている。
本発明によれば、ネットワークのトポロジとリンク容量が与えられているときに、単一リンク障害時における,フローのホップ長の増加、リンク負荷の増加、の二つを効果的に抑えるためのリンク増設およびリンク容量の増設箇所を絞り込むことができる、という効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る網トポロジ・リンク容量設計システムの構成図である。
図1において、101はトポロジ情報とリンク容量情報をシステムに入力するNW条件入力装置、102はネットワーク構造の分析装置、103はリンク増設・リンク容量増設箇所を出力する出力装置である。
NW条件入力装置101により、ネットワークのトポロジとリンク容量が入力される。ネットワーク構造分析装置102により、効果的なリンク増設箇所・リンク容量増設箇所が特定される。そして、得られた増設箇所が、リンク増設・リンク容量増設箇所出力装置103によって出力される。
次に、本発明の実施の形態に係るネットワークの効果的な信頼性向上について、詳細を説明する。
1)(リンク増設箇所選択法)
ここでは、既に存在する任意のバックボーンNWに対して、SLF時の最大フロー長倍率εを、少数のリンク増設で可能な限り改善する方法を検討する。これらを改善するためには、最大最短閉路のホップ長が小さくなるようバイパスリンクを設置することが有効である。ここでは、まず最大最短閉路をより厳密に定義し、効果的なリンク増設箇所選定アルゴリズムを提案する。
1−1)(最大最短閉路の定義)
パスpを任意の二つの部分パスp,pに分割できるとき、パスpをp=p+pと表記する。三つ以上の部分パスに分割できる場合にも同様に表記する。また、パスpのコストをw(p)とし、フローsd間の最小コストパスのコストをwsd (min,1)、その次にコストの小さいsd間のパスのコストをwsd (min,2)とする。
図2は、本発明における最短閉路の例を示す図である。
ここでは、ノードA・B間のフローを示している。w(p)=w(p),w(p)=w(p)と仮定すると、フローABには、p+p+p,p+p+p,p+p+p,p+p+pの4本の最小コストパスが存在し(パスコストはwAB (min,1))、これら4本のパスが正常時に利用される。コストがwsd (min,1)の全てのパスが経由する部分パスの集合を、フローsdのクリティカルパスセットΩsdと定義する。
図2の例では、パスpがフローABのクリティカルパスとなる。クリティカルパスが存在しない対地ペアも存在する。
クリティカルパスに障害が発生すると、正常時の全てのパスが利用できなくなる。元のトポロジTからΩsdに含まれる全てのリンクを除いたトポロジ(T(−Ωsd)と表記)上の最小コストパス(パスコストはwAB (min,2))が、フローsdが正常時のパスを利用することができないときの迂回パスとなる。
図2の例では、pとpの2本のパスがこれに該当する。
フローsdにクリティカルパスが存在しない場合、任意のSLFにおいてパスコストが
sd (min,2)の経路が利用されることはなく、ノードペアsとdの最短閉路はパスコストwAB (min,1)のフローの中で辺独立な任意の2本のパスを組み合わせたものとなり、SLF時のフロー長倍率は1となる。一方、フローsdにクリティカルパスが存在する場合、ノードペアsとdの最短閉路は、パスコストがwsd (min,1)の任意のフローと、パスコストがwsd (min,2)の任意のフローを組み合わせたものとなり、SLF時のフロー長倍率はmax h(p)/min h(p)となる。ただし、h(p)はパスpのホップ数で、pとpは各々、p∈Psd,p∈Psd(−Ωsd)である。Psd(−Ωsd)はトポロジT(−Ωsd)上のフローsdの最小コストパス集合である。よって、この値が最大となる最短閉路が最大最短閉路となる。
1−2)(リンク増設箇所選定アルゴリズム)
可能な限り少ない数のリンク増設により、可能な限り最大フロー長倍率ξmaxと平均フロー長倍率ξを低減するためには、最大最短閉路を抽出し、そのホップ長を低減するようリンクを増設すればよい。ここでは、そのためのリンク増設箇所選定アルゴリズムを提案する。
1−3)(AlgorithmA:リンク増設箇所選定)
A−1・・・各sdペアに対して、正常時のパス集合Psdと、クリティカルパスに含まれるリンクの障害時のパス集合Psd(−Ωsd)を算出する。
A−2・・・max h(p)/min h(p)の値が最大となるsdペアをランダムに選択(選択したsdペアをs*、d*と表記)、
A−3・・・Ps*d*(−Ωs*d*)に含まれるパスの中でホップ数が最大のパスp上の隣接しない任意の2つのノードa,bを選択し、Tに対してab間に容量cのリンクを設置したトポロジ(T(+eab,c)と表記)におけるξmaxとξを計算する。ただし、cは既設リンクの容量の集合Cから選択する。可能な全てのa,b,cの組の中で、ξmaxが最小となるものを選択する(選択した組をa*b*c*と表記)。ただし、ξmaxが等しいものが複数存在する場合には、その中でξが最小のものを選択する。
A−4・・・ξmaxとξが悪化せず、かつ少なくとも一方が改善する場合には、ノードab間に容量cのリンクを増設し、A−1に戻る。そのようなリンク増設箇所が存在しない場合には、アルゴリズムを終了する。
ただし、min.hopの場合、リンク容量がルーティングに影響しないため、設置リンクの容量はCのメディアンとする。次に、上記アルゴリズムの計算量について考える。
A−1においては、各sdペアに対してダイクストラ法を用いてPsd(−Ωsd)上の最小コストパスを算出する必要があるが、ダイクストラ法の計算量はノード数nに対してO(n)となるため、A−1の計算量はO(n)となる。A−2は、O(1)でよい。
最後にA−3であるが、一つのa,b,cの組に対してξmaxとξを算出するのにO(mn)の計算量を要する。よって、hmaxをPs*d*(−Ωs*d*)に含まれるパスの最大ホップ長、nをリンク容量の異なり数とすると、A−3の計算量はO(h2. maxmn)となる。nとmの相関性は小さく、nはmと比較して遥かに小さい。また、hmaxは、nと比較して遥かに小さいが、nと正の相関性がある。よって、A−3の計算量はO(mn)で上限を抑えることができ、この計算量が全体の計算量となる。
図3は、上述のリンク増設箇所選定アルゴリズムをコンピュータに実行させるための動作フローチャートである。
図1のNW条件入力装置101がネットワークのトポロジとリンク容量とが入力されると、ネットワーク構造分析装置102は、コンピュータの制御によりリンク増設箇所選定用プログラムを実行することで、上述のリンク増設箇所選定が実現される。
まず、各sdペアに対して、正常時のパス集合Psdと、クリティカルパスに含まれるリンクの障害時のパス集合Psd(−Ωsd)を算出する(ステップA−1)。
次に、max h(p)/min h(p)の値が最大となるsdペアをランダムに選択する(ステップA−2)。なお、選択されたsdペアを、s*,d*とする。
選択されたパス集合Ps*d*(−Ωs*d*)に含まれるパスの中でホップ数が最大のパスp上の隣接しない任意の2つのノードa,bを選択し(ステップA−3−1)、トポロジTに対してab間に容量cのリンクを設置したトポロジ(T(+eab,c))における最大フロー長倍率ξmaxと平均フロー長倍率ξを計算する(ステップA−3−2)。
可能な全てのa,b,cの組の中で、最大フロー長倍率ξmaxが等しいものが複数存在する場合には(ステップA−3−3)、その中で平均フロー長倍率ξが最小のものを選択する(ステップA−3−4)。
最大フロー長倍率ξmaxと平均フロー長倍率ξが悪化せず、かつ少なくとも一方が改善する場合には(ステップA−4−1)、ノードa*,b*間に容量c*のリンクを増設する(ステップA−4−2)。そして、ステップA−1に戻る。
そのようなリンク増設箇所が存在しない場合には、処理を終了する。
2)(リンク容量増設箇所選択法)
次に、既に存在する任意のバックボーンNWに対して、SLF時の正規化最大フロー数倍率εmaxと正規化平均フロー数倍率εを、少数のリンクの容量増設で可能な限り改善するリンク容量増設箇所選定アルゴリズムを提案する。
各リンクlに対して、最大フロー数倍率εmax,lを、次式(10)で定義する。
Figure 2009260705
inv.capにおいて、この値が大きなリンクの容量を増設すれば正常時の経由フロー数SLF時の経由フロー数の格差を低減できることから、εmaxとεの改善が期待できる。そこで、εmax,lの大きなリンクから順に容量増設を試る。以下に、アルゴリズムを示す。
2−1)(AlgorithmB:リンク容量増設箇所選定)
B−1・・・各リンクlに対してεmax,lを算出する。
B−2・・・εmax,lの値が大きな順にリンクlを選択し、以下の処理を反復。
B−2−1・・・リンクlの容量を、リンク容量セットCに含まれる値で現在の容量より大きな値cに増設した場合のεmaxを計算。
B−2−2・・・εmaxが最小となるリンクl*の容量をc*(εmaxが同一のものが複数存在する場合には、その中でεが最小のものとする。また、そのような容量が複数存在する場合には、最小の容量とする)に増設した場合に、εmaxとεの両方が悪化しないで、かつ少なくとも一方が改善する場合には、B−3に進む。そのような容量cが存在しない場合には、次の容量増設候補リンクlを対象に、B−2−1に進む。全てのリンクを対象に調べても、そのようなリングが存在しない場合には、アルゴリズムを終了。
B−3・・・リンクl*の容量をc*に増設し、B−1に戻る。
次に、上記アルゴリズムの計算量について考察する。B−1において、各リンクlを正常時にフローが経由するsdペアの集合を管理することにより、一つのリンクをフローが経由する発ノードsの数をnとすると、O(mn)の計算量となる。nはnで上限が抑えられることから、O(mn)で計算量の上限が抑えられる。一方、B−2はO(nmnO(mn)の計算量を必要とすることから、O(mn)で計算量の上限が抑えられる。一方、B−2はO(nmnO(mn)の計算量を必要とすることから、やはり全体ではO(mn)の計算量となる。リンク増設箇所の選定の場合と比較して、計算量は大幅に小さい。
図4は、上述のリンク容量増設箇所選定アルゴリズムをコンピュータに実行させるための動作フローチャートである。
まず、各リンクlに対して最大フロー数倍率εmax,lを算出する(ステップB−1)。
最大フロー数倍率εmax,lの値が大きな順にリンクlを選択する(ステップB−2)。
次に、リンクlの容量を、リンク容量セットCに含まれる値で現在の容量より大きな値cに増設した場合の最大フロー数倍率εmaxと平均フロー数倍率εを計算する(ステップB−2−1)。
最大フロー数倍率εmaxが同一のものが複数存在する場合には(ステップB−2−2−1)、その中で平均フロー数倍率εが最小のものを選択する(ステップB−2−2−2)。
最大フロー数倍率εmaxが最小となるリンクl*の容量をc*に増設した場合に、最大フロー数倍率εmaxと平均フロー数倍率εの両方が悪化しないで、かつ少なくとも一方が改善する場合には(ステップB−2−2−3)、εmaxが最小となるリンクl*の容量をc*に増設する(ステップB−3)。そして、B−1に進んで、処理を反復する。
3)(リンク・リンク容量増設箇所選択法)
リンク増設アルゴリズムもしくはリンク容量増設アルゴリズムを個別に適用した場合、考慮しない品質(前者の場合はフロー数倍率特性、後者の場合はフロー長倍率特性)が悪化することが懸念される。そこで、ξmax、ξ、εmax、εの4つを同時に考慮し、リンク増設とリンク容量増設を同時に行う方法を検討する。
各々のアルゴリズムを用いて、リンク増設箇所の候補と、リンク容量増設可能の候補を選定し、リンク増設を行った場合の効果をζlink,1およびζlink,2として、リンク容量増設を行った場合の効果をζcap,1とζcap,2として算出する。ただし、
Figure 2009260705
であり、ξmax,ξ,εmax,εは、各々増設を行う前の評価値、ξ’max,ξ’,ε’max,ε’は、各々増設を行った後の評価値である。
そして、ζlink,1>ζcap,1、もしくはζlink,1=ζcap,1、かつζlink,2>ζcap,2の場合にはリンク増設を、もしくはζlink,1=ζcap,1、かつζlink,2<ζcap,2、の場合にはリンク容量の増設を行う。以下に、アルゴリズムをまとめる。
(Algorithm C:リンク増設・リンク容量増設箇所選定)
C−1・・・アルゴリズムAのA−1、A−2、A−3を実行し、リンク増設の候補箇所を選定する。
C−2・・・アルゴリズムBのB−1、B−2を実行し、リンク容量増設の候補箇所を選定する。
C−3・・・以下の条件で、処理項目を選択
(a)−1)ζlink,1とζlink,2の両方がゼロ以上で、かつ少なくとも一方がゼロより大きい、−2)ζlink,1>ζcap,1もしくはζlink,1=ζcap,1かつζlin2>ζcap,2、という二つの条件が共に満たされる場合、C−1で選定した箇所にリンクを増設し、C−1に進む。
(b)−1)ζcap,1とζcap,1の両方がゼロ以上で、かつ少なくとも一方がゼロより大きい、−2)ζlink,1<ζcap,1,もしくはζlink,1=ζcap,1かつζlink,2<ζcap,2という二つの条件が共に満たされる場合、C−2で選定した箇所のリンク容量を増設し、C−1に進む。
(c)それ以外の場合、アルゴリズムを終了する。
図5は、上述のリンク増設・リンク容量増設箇所選定アルゴリズムをコンピュータに実行させるための動作フローチャートである。
まず、図3に示すステップA−1〜A−4を実行して、リンク増設の候補箇所を選定する(ステップC−1)。
次に、図4に示すステップB−1〜B−3を実行して、リンク容量増設の候補箇所を選定する(ステップC−2)。
リンク増設を行った場合の2つの効果ζlink,1,ζlink,2の両方がゼロ以上、かつ少なくとも一方がゼロより大きいか否かを判定する(ステップC−3−a(1))。また、リンク増設の効果ζlink,1>ζcap,1,もしくはζlink,1=ζcap,1かつζlink,2>ζcap,2、という二つの条件が共に満たされるか否かを判定して(ステップC−3−a(2))、C−1で選定した候補箇所にリンクを増設する(ステップC−3−a(3))。
また、増設を行う前の効果ζcap,1とζcap,2の両方がゼロ以上、かつ少なくとも一方がゼロより大きいか否かを判定する(ステップC−3−b(1)。また、ζcap,1<ζcap,2,もしくはζlink,1=ζcap,1、かつζlink,2<ζcap,2、という二つの条件が共に満たされるか否かを判定する(ステップC−3−b(2))。それらが満たされれば、C−2の候補箇所にリンク容量を増設する(ステップC−3−b(3))。そして、C−1に進む。
また、それ以外の場合(条件が満足しない場合)には、処理を終了する。
ただし、上記アルゴリズムにおいては、リンク増設箇所の選定時にはεmaxとεを、リンク容量増設箇所の選定時にはξmaxとξを考慮せず、これら特性が悪化する結果、これら4つの特性がリンク増設やリンク容量増設に伴い、安定して改善しないで振動する可能性がある。そこで、アルゴリズムCを改良した以下のアルゴリズムを提案する。ただし、αはα≧1の値をとる実数パラメタで、アルゴリズムの開始時に与える。
(Algorithm D:リンク増設・リンク容量増設箇所選定)
D−1・・・アルゴリズムAのA−1,A−2,A−3を実行し、リンク増設の候補箇所を選定する。ただし、A−3において、ε’max<αεmaxとε’<αεが満たされる条件の範囲で改善効果が最大のa,b,cを選択する。
D−2・・・アルゴリズムBのB−1,B−2を実行し、リンク容量増設の候補箇所を選定する。ただし、B−2において、ξ’max<αξmaxとξ’<αξが満たされる条件の範囲で、改善効果が最大のlとcを選択する。
D−3・・・C−3と同じ。
図6は、上述のリンク増設・リンク容量増設箇所選定アルゴリズムをコンピュータに実行させるための動作フローチャートである。
まず、図3に示したステップA−1〜A−4を実行して、リンク増設の候補箇所を選定する(ステップD−1−1)。
次に、最大フロー長倍率ε’max<αεmaxであること、平均フロー長倍率ε’<αεであること、の両方が満足しているか否かを判定し(ステップD−1−2)、満たしているならば、改善効果が最大のa,b,cを選択する(ステップD−1−3)。
次に、図4に示したステップB−1〜B−3を実行して、リンク容量を増設する候補箇所を選定する(ステップD−2−1)。
この場合、最大フロー数倍率、ξ’max<αξmaxであること、および、平均フロー数倍率ξ’<αξであること、の両方が満たされるか否かを判定する(ステップD−2−2)。
満たされているならば、改善効果が最大のlとcを選択する(ステップD−2−3)。
次に、図5に示すステップC−3−a(1)〜C−3−b(3)を実行し(ステップD−3−1)、ステップD−1−1で選定した候補箇所にリンク増設を行うとともに、ステップD−1−2で選定した候補箇所にリンク容量増設を行う(ステップD−3−2)。
そして、ステップD−1−1に進む。
なお、D−1−2およびD−2−2で満足していない場合には、処理を終了する。
(数値評価)
ここでは、Web上で公開されている36の商用ISPのバックボーンNWを対象に、提案アルゴリズムを適用した結果について述べる。評価を行うに際し、リンク重みの設定には全てinv.capを用いた。
a)(リンク増設のみの場合)
まず、リンク増設箇所選定アルゴリズムのみを適用した場合(アルゴリズムA)について評価する。
図7は、本発明のアルゴリズムAの適用結果を示す図である。
図7では、i本のリンクを増設した時点における,ξmax(a)、ξ(b)、εmax(c)、ε(d)の値を、各々、全リンク数mに対する増設リンク数比率(i/n)に対して示している。ただし、ξmaxが突出して大きい5つのNWに対する結果のみを示している。リンクの増設に伴って、ξmaxとξが改善することが確認できる。全リンク数mの10%程度の数のリンクを増設するだけで、ξmaxを50%〜75%程度、ξを30%〜40%程度、低減することが可能である。しかし、一方で、リンク増設の結果、εmaxとεが悪化している。これは、リンク増設箇所を選定する際に、SLF時のフロー数倍率を考慮しないためである。
b)(リンク容量のみの場合)
次に、リンク容量増設箇所選定アルゴリズムのみを適用した場合(アルゴリズムB)について評価する。
図8は、本発明のアルゴリズムBの適用結果を示す図である。
図8では、i本のリンクを増設した時点における,εmax(a)、ε(b)、ξmax(c)、ξ(d)、の値を各々、全リンク数mに対する容量増設リンク数比率(i/n)に対して示す。ただし、εmaxが大きい6つのNWに対する結果のみを示している。リンク容量の増設に伴って、εmaxとεが改善することが確認できる。全リンク数mの5%程度の数のリンクの容量を増設するだけで、εmaxを90%、εを70%程度、低減することが可能である。また、リンク容量増設の結果、ξmaxとξは殆んど変化しない。リンク増設箇所を選定する際に、SLF時のフロー長倍率は考慮していないため、これらを改善することはできない。
c)(リンク増設とリンク容量増設を両方行う場合)
図9は、本発明のアルゴリズムCの適用結果を示す図である。
図9では、アルゴリズムCを適用し、i本のリンクを増設もしくは容量増設した時点における,ξmax(a)、ξ(b)、εmax(c)、ε(d)、の値を各々、増設もしくは容量増設したリンクの本数のmに対する比率(i/n)に対して示す。ただし、ξmaxかεmaxが大きい9つのNWに対する結果のみを示している。各反復において、単に解の改善効果の大きなアクションをとった場合、考慮されなかった尺度が悪化する結果、特にεmaxとεが激しく振動することが確認できる。
図10は、本発明のアルゴリズムDの適用結果を示す図である。
図10では、考慮しない側の尺度に制約値を設けた場合(アルゴリズムD)を適用した結果を示している。ただし、α=1.1とした。4つの評価尺度の全てが、リンクやリンク容量の増設に伴って、安定して改善していく様子が確認できる。
図3〜図6に示すフローチャートの各ステップをプログラム化したものをCD−ROMなどの記録媒体に格納して、図1に示すネットワーク構造分析装置102が内蔵するコンピュータに装着し、プログラムをインストールしてこれを実行させることにより、本発明を容易に実現することができる。また、例えば、本発明の装置からインターネットを経由して他の端末に本プログラムをダウンロードすることで、本プログラムの汎用化が可能となる。
本発明の実施形態に係るリンク増設・リンク容量増設のためのシステム構成図である。 最短閉路の例を示す図である。 本発明の一実施形態に係るアルゴリズムAの動作フローチャートである。 同じくアルゴリズムBの動作フローチャートである。 同じくアルゴリズムCの動作フローチャートである。 同じくアルゴリズムDの動作フローチャートである。 本発明におけるアルゴリズムAの適用結果を示す図である。 同じくアルゴリズムBの適用結果を示す図である。 同じくアルゴリズムCの適用結果を示す図である。 同じくアルゴリズムDの適用結果を示す図である。 平均次数と最大次数の散布図である。 ネットワークトポロジの例を示す図である。 H&S型ネットワークの特性を示す図である。 正常時のフロー特性を示す図である。 正常時のリンク負荷特性を示す図である。 次数1のノード数比率を示す図である。 各フローやリンクに影響を与える障害パタン数比率を示す図である。 SLF時のフロー長増加率を示す図である。 At Home networkのトポロジを示す図である。 SLF時のフロー数増加率を示す図である。 above.netのトポロジを示す図である。 SLF時の正規化平均迂回フロー数を示す図である。 評価に用いた36のNWについて、名称、ノード数、リンク数、リンク容量の最小値と最大値をまとめた図である。
符号の説明
101 NW条件入力装置
102 ネットワーク構造分析装置
103 リンク増設・リンク容量増設箇所出力装置
A,B,C,D ノード
,p,p,p,p,p,p パス

Claims (8)

  1. ネットワークのトポロジとリンク容量の各情報をコンピュータに入力し、該コンピュータの制御により、投資コストを抑えながら、ネットワークの障害時のホップ長の安定性とリンク負荷の安定性を効率的に向上させるために、リンク増設箇所またはリンク容量増設箇所またはその両方を同時に絞り込むリンクとリンク容量増設方法であって、
    該コンピュータは、隣接しない任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものを最短閉路と定義し、該最短閉路の中でホップ長が最大である最大最短閉路のホップ長を算出し、
    算出された最大最短閉路のホップ長を効率的に削減するための、障害時のホップ長倍率を低減するリンク増設箇所を抽出し、抽出された増設箇所の情報を出力することを特徴とするリンクとリンク容量増設方法。
  2. 前記コンピュータは、障害時のフロー数倍率を低減するため、各リンクに対して最大フロー数倍率を算出し、
    該最大フロー数倍率の値が大きな順にリンクを選択し、
    該リンクの容量をリンク容量セットに含まれる値で現在の容量より大きな値に増設した場合の最大フロー数倍率と平均フロー数倍率を算出し、
    算出された最大フロー数倍率が最小のものを選択して、選択された最大フロー数倍率と平均フロー数倍率が悪化せず、かつ少なくとも一方が改善している場合に、選択された値が最も大きな最大フロー数倍率であるリンクの容量セットに含まれる値に増設することを特徴とする請求項1に記載のリンクとリンク容量増設方法。
  3. 前記コンピュータは、リンク増設箇所の候補とリンク容量増設箇所の候補を抽出し、
    該リンク増設箇所の候補による障害時フロー長倍率低減効果と該リンク容量増設箇所の候補による障害時フロー数倍率低減効果を比較し、
    より効果の大きな方を選択することにより、リンク増設とリンク容量増設箇所の選択を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のリンクとリンク容量増設方法。
  4. 前記コンピュータは、リンク増設箇所の候補とリンク容量増設箇所の候補を抽出する際に、改善対象でない側の品質尺度に下限許容量を設定し、そのような制約が満たされる範囲で最適な増設箇所を選定し、
    より効果の大きな方を選択することにより、リンク増設とリンク容量増設箇所の選択を同時に行うことを特徴とする請求項3に記載のリンクとリンク容量増設方法。
  5. 障害時のホップ長倍率を低減するリンク増設箇所抽出用プログラムであって、
    コンピュータに、各ノードペアsdに対して、正常時のパス集合Psdと、クリティカルパスに含まれるリンクの障害時のパス集合Psd(−Ωsd)を算出する手順、max h(p)/min h(p)の値が最大となるsdペアをランダムに選択する手順、選択されたパス集合Ps*d*(−Ωs*d*)(s*、d*は選択されたsdペア)に含まれるパスの中でホップ数が最大のパスp上の隣接しない任意の2つのノードa,bを選択する手順、トポロジTに対してab間に容量cのリンクを設置したトポロジ(T(+eab,c))における最大フロー長倍率ξmaxと平均フロー長倍率ξを計算する手順、可能な全てのa,b,cの組の中で、最大フロー長倍率ξmaxが等しいものが複数存在する場合には、その中で平均フロー長倍率ξが最小のものを選択する手順、最大フロー長倍率ξmaxと平均フロー長倍率ξが悪化せず、かつ少なくとも一方が改善する場合には、ノードa*,b*間に容量c*のリンクを増設する手順を、それぞれ実行させるためのリンク増設箇所抽出用プログラム。
  6. 障害時のフロー数倍率を低減するリンク容量増設箇所抽出用プログラムであって、
    コンピュータに、各リンクlに対して最大フロー数倍率εmax,lを算出する手順、最大フロー数倍率εmax,lの値が大きな順にリンクlを選択する手順、リンクlの容量を、リンク容量セットCに含まれる値で現在の容量より大きな値cに増設した場合の最大フロー数倍率εmaxと平均フロー数倍率εを計算する手順、最大フロー数倍率εmaxが同一のものが複数存在する場合には、その中で平均フロー数倍率εが最小のものを選択する手順、最大フロー数倍率εmaxが最小となるリンクl*の容量をc*に増設した場合に、最大フロー数倍率εmaxと平均フロー数倍率εの両方が悪化しないで、かつ少なくとも一方が改善する場合には、εmaxが最小となるリンクl*の容量をc*に増設する手順を、それぞれ実行させるためのリンク容量増設箇所抽出用プログラム。
  7. ネットワークの障害時のホップ長の安定性とリンク負荷の安定性を向上させるためのリンクとリンク容量増設箇所抽出用プログラムであって、
    コンピュータに、請求項5に記載の手順を実行して、リンク増設の候補箇所を選定する手順、請求項6に記載の手順を実行して、リンク容量増設の候補箇所を選定する手順、リンク増設を行った場合の2つの効果ζlink,1,ζlink,2の両方がゼロ以上、かつ少なくとも一方がゼロより大きいか否かを判定する手順、リンク増設の効果ζlink,1>ζcap,1,もしくはζlink,1=ζcap,1かつζlink,2>ζcap,2、という二つの条件が共に満たされるか否かを判定する手順、満たされる場合には、選定した候補箇所にリンクを増設する手順、増設を行う前の効果ζcap,1とζcap,2の両方がゼロ以上、かつ少なくとも一方がゼロより大きいか否かを判定する手順、ζcap,1<ζcap,2,もしくはζlink,1=ζcap,1、かつζlink,2<ζcap,2、という二つの条件が共に満たされるか否かを判定する手順、これらの判定の結果、いずれも満たされれば、候補箇所にリンク容量を増設する手順を、それぞれ実行させるための請求項5または請求項6に記載のリンクとリンク容量増設箇所抽出用プログラム。
  8. ネットワークの障害時のホップ長の安定性とリンク負荷の安定性を向上させるためのリンクとリンク容量増設箇所抽出用プログラムであって、
    コンピュータに、請求項5に記載の手順を実行して、リンク増設の候補箇所を選定する手順、最大フロー長倍率ε’max<αεmaxであること、平均フロー長倍率ε’<αεであること、の両方が満足しているか否かを判定する手順、満たしているならば、改善効果が最大のa,b,cを選択する手順、次に、請求項6に記載の手順を実行して、リンク容量を増設する候補箇所を選定する手順、最大フロー数倍率、ξ’max<αξmaxであること、および、平均フロー数倍率ξ’<αξであること、の両方が満たされるか否かを判定する手順、満たされているならば、改善効果が最大のlとcを選択する手順、次に、請求項7に記載の手順を実行する手順、選定した候補箇所にリンク増設を行うとともに、選定した候補箇所にリンク容量増設を行う手順を、それぞれ実行させるための請求項5,6または7のいずれかに記載のリンクとリンク容量増設箇所抽出用プログラム。
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