JP5001878B2 - ネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法 - Google Patents
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Description
特に、バックボーンは大量のトラヒックを中継する役目を担っており、特に高い信頼性が求められる。ファイバ切断や光伝送装置の故障、ルータの設定ミスやソフトウェアのバグ、処理装置の過剰負荷といった様々な要因で、インターネットでは日常的に様々なリンクやルータで障害が発生することを前提とし、障害発生時にもノード間の接続性を維持し、サービスを継続する堅牢性が求められている。
このことは、パケット転送時間の増大、フローのスループット低下を意味するため、音声や動画といった即時性の高いサービスの品質劣化を招く。そのため、ネットワーク(NW)の信頼性を議論する際には、接続性の維持の観点だけでは不十分であり、フロー長やリンク負荷の安定性の維持の観点からも評価することが重要である。
一つの方法は、静的な交流トラヒック行列に対して障害発生時の迂回を考慮した上で総コストが最小化するように網トポロジとリンク容量を設計することである。しかし、交流量を精度よく推定することは容易でなく、またトラヒック量は日々変化するため、時間の経過に伴って最適性が低下する。そのため、ISPにとっての現実的な方法は、長期的な交流需要行列の変化に応じて、既に保有するNWに対し部分的にリンクを設置し、リンク容量を増設することである。そのためには、障害発生時に接続性や安定性を低下させる主な要因を分析し、設備増設箇所を効果的に絞り込む必要がある。
以上の技術については、上山憲昭,吉野秀明“リンク障害時の迂回トラヒックを考慮した網トポロジ設計”信学技報,IN2007−89.(非特許文献1)を参照されたい。
本発明の目的は、このような従来の課題を解決し、単一リンク障害時の迂回トラヒックを考慮し、品質の安定性の観点から、適切なリンク増設・リンク容量増設箇所を求めることが可能なネットワークの増設箇所特定方法を提供することにある。
また、単一リンク障害時にフローのホップ長が最も増加する場所は最大最短閉路(任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものを最短閉路と定義し、最短閉路の中でホップ長が最大のものを最大最短閉路と定義)であることから、最大最短閉路のホップ長が小さくなるようにバイパスリンクを設置する方法である。
さらに、単一リンク障害時にボトルネックリンク容量が大きく悪化するフローは、容量格差の大きい最短閉路上の小容量リンクを経由するフローであることから、やはり容量格差の大きな最短閉路上の小容量リンクの容量を増設する方法である。
図1において、101はトポロジ情報とリンク容量情報(ネットワーク条件)を入力するNW条件入力装置、102は入力装置101から情報を受取り、ネットワーク構造の分析を実行するネットワーク構造分析装置、103はネットワーク構造分析装置102から情報を受取り、リンク増設・リンク容量増設箇所を特定して、それを出力するリンク増設・リンク容量増設箇所出力装置である。
本発明における評価には、CAIDAのWebページでトポロジとリンク容量が公開されている39の商用ISPのバックボーンNWを用いる。ただし、Cable InternetとRISQ(Review of International Social Questions)Networkはトポロジが単一のSpanning Treeであり、任意のSLF時に障害フローの迂回が全くできないことから、評価には用いない。
また、Unilat Inc.は全体が4つと2つのノードの集合に分断されているため、やはり評価には用いない。また、PSINet,Qwest,Telstra Internet,UUNETにおいて、各々、3,2,6,2個のノードが孤立しているため、これらのノードは除外する。
これは、36のNWについて、名称(Name)、ノード数(n)、(双方向)リンク数(m)、ノード次数の平均と最大値(Av,Max)、リンク容量の最小値と最大値(Min,Max)をまとめたものである。
図2により、NWを下記1)〜3)の3つのグループに分類する。
1)Full mesh・・・各ノードがほとんど他の全てのノードと接続しているトポロジで、平均次数と最大次数の差が小さく、平均次数が大きい。平均次数をE(d),最大次数をMax(d)とすると、ここではE(d)≧Max(d)−1を満たすNWと定義する。2つのNW(ノード次数6および8)が該当する。
これら3つのNWは、全て米国のISPであるが、種別ごとに大きく形態が異なることが確認される。図3(a)のFull meshは、各ノード毎に網目のように接続されている。横軸は順位をノード数nで除した値である。図3(b)のH&Sは、リンク数は多くはないが、次数の高いノードであるハブノードが多く存在している。図3(c)のLadderは、高次数ノードが少なく、リンク数もそれほど多くない。
H&S型のNWは、次数の大きく異なるノードから構成されているため、ノードの接続構造を考察する。図4(a)には、H&S型の12のNWの各々に対して、次数の大きな順に正規化ノード次数(ノード次数を最大次数で除した値)をプロットする。横軸は、順位をノード数nで除した値である。NW16,29を除く他の10のH&S型NWでは、全て全体の5%〜20%程度の少数のノードが高次数である。
障害が発生していない正常時の、フローホップ長、フローのボトルネット(BN)容量、リンク負荷について考察する。これら特性は、フローの経路設定法に依存するが、本発明においては、OSPF(Open Shortest Path First)を想定し、リンクコストとして、シスコ社の推将するリンク容量の逆数に設定する場合(inv.cap)と、全リンクで同一の値を設定する場合(min.hop)の二つを考える。ある発着ノード間に同じコストの経路が複数存在する場合には、全ての最小コスト経路にトラヒックが均一に分散されると仮定する。
図5(a)には、36の各NWに対して、inv.capにおけるhをmin.hopにおけるhに対してプロットする。min.hopでは最短ホップ経路が設定されるため、inv.capはmin.hopよりhが増加し、全てのNWは直線y=x上か右下の領域に存在する。特に、NW2,4,8,15,26のhが大きいが、これらは全てLadder型である。Ladder型NWにはハブノードが存在せず、遠方のノードに到達するためには多数のノードを経由する必要があり、hが大きくなる傾向がある。
そこで、図5(b)に、24のNWに対して、inv.capにおける平均正規化BN容量ζをmin.hopにおけるζに対してプロットする。ただし、NWごとに、フローのBN容量の平均値zを平均リンク容量cで除したものをζと定義し、
図6(a)に、inv.capとmin.hopにおけるυmaxをυで除した値の散布図を36のNWに対してプロットする。殆んどのNWは直線y=xの右下の領域に存在し、inv.capを用いることで大容量リンクにフローが集中し、各リンクを経由するフロー数の格差が拡大することが確認できる。リンク容量の格差が大きく迂回経路を見つけ易いH&S型のNWで、特にこの傾向が強い。
inv.capを用いることでリンク容量の大きなリンクにフローが集中し、clとυlとの間の相関性が向上すること、リンク容量の有効な活用の観点からはinv.capを用いることが望ましいこと、がそれぞれ確認できる。
SLF時の接続性喪失率Pdcを、一つ以上のSLF発生パタンにおいて接続性が失われるフローの割合と定義する。すなわち、xsd,lをリンクlのSLF時にフローsdの接続性が維持される場合に1、損なわれる場合に0をとる2値変数と定義すると、
図7(a)に、次数1のノード数のnに対する割合をnに対してプロットする。ただし、NW11,18(Full mesh型)とNW7,17(Ladder型)は、次数1のノードが存在しないため、省いている。次数1のノード割合はNWによって大きく異なり、nやNW種別による明確な傾向は見られない。
これら二つの尺度間には正の相関が見られ、SLF時に接続性が失われるフローの大部分は次数1のノードを発着とするものであることが予想される。ただし、次数1ノードに接続するリンクのSLF時、影響を受けるフローはそのノードを発着とするフローに限定され、NW全体の信頼性に与える影響は小さい。そこで、Pdcから次数1ノードに起因するものを除いたSLF時の接続性喪失率Pdc’を算出したところ、23のNWでPdc’が0.05を超えたのはNW2,12,15,20のLadder型の4つのNWのみであった。これら4つのNWのトポロジ形状を調べたところ、NW2は82ノード中17ノードが1本のリンクによって他の部分に接続しており、NW12,15は1本のリンクのSLFにより、NW全体が二つに分断される形状であり、NW20は15ノード中3ノードが1本のリンクによって他の部分に接続している。
よって、これら4つのNWにおいては、SLFに対して脆弱なアキレス腱となるリンクが存在するが、他の32のNWにはそのようなリンクは存在せず、接続性については堅牢であると言える。以後、SLF時の安定性に関する性能指標を算出する際には、接続性が喪失したフローについては全て除いて考える。
図8は、各フローやリンクに影響を与える障害パタン数比率を示す図である。
ホップ数がyのフローがSLF時に影響を受ける障害発生パタン数の全リンク数mに対する割合をRf(y)とすると、Rf(y)=y/mであるので、NW全体で各フローが平均的に影響を受ける障害発生パタン数のmに対する比率Rfは、
図8(a)には、36のNWに対して、inv.capにおけるRfとmin.hop
におけるRfの散布図を示す。inv.capを用いると、min.hopと比較してフローの平均ホップ長が増加するため、Rfは若干大きくなる。また、Ladder型のNWはフローのホップ長が長くなる傾向があるため、Rfが大きい。殆んどのNWはRfが0.15程度より小さいため、SLF時の平均的なフロー長増加特性を評価するに際し、各フローに対して影響を受けるリンク障害パタンのみを考慮する。すなわち、SLF時のフローsdの平均フロー長h’sdを、
図9では、36のNWを対象にξmaxとξの散布図を、(a)inv.capと(b)min.hopの各々について示している。min.hopとinv.capとでは大きな差異は見られない。Ladder型NWは全体的にフロー長が長いため、SLF時の増加の度合いも大きくなる傾向が見られる。特に、5つのNWはξmaxが突出して大きいが、これらは正常時の平均フロー長が大きい5つのNWである(図5(a)参照)。
次に、これらのNWで、ξmaxが大きな要因を考察する。
図10では、ξmaxが突出して大きかった5つのNWの例として、NW4のトポロジを示している。このNWには、θ=14の最大最短閉路が2つ存在し、隣接ノードペア7,9などの最短閉路(7−9−15−18−21−39−40−41−36−38−14−12−10−8−7)と、隣接ノードペア33,34などの最短閉路(18−20−28−29−30−31−32−33−34−35−37−40−39−21−18)が該当する。例えば、ノード7,9間のリンクのSLF時、これらのノード間のフローのホップ長が1から13に増加し、ξmax=13となる。
各リンクを経由するフロー数が正常時のフロー数と比較して、増加するSLFのパタン数の全リンクにわたる平均を、リンク数mで除した値をRlと定義する。図8(b)に36のNWに対して、inv.capにおけるRlの散布図を示す。inv.capを用いると、特定のリンクにフローが集中するため、多くのリンクに対しては障害時にフローが迂回されず、min.hopと比較してRfが小さい。
図11では、36のNWを対象にεmaxとεの散布図を、(a)inv.capと(b)min.hopの各々について示している。min.hopを用いると、リンク間で経由フロ−数の格差が大きいため、SLF時のフロー数倍率も高くなる。
リンクごとにSLF時のフロー数倍率の格差が大きく、εlの大きなリンクが存在するNWはεも大きい。inv.capの場合、8つのNWで特にこれらの値が大きいが、その要因を考察する。
図12では、εの大きいNWの例として、NW1のトポロジを示している。
ノードペア0,1および1,2の最短閉路は(0−1−2−0)であるが、リンク(0,1)と(0,2)の容量が622Mbpsであるのに対して、リンク(1,2)の容量155Mbpsである。そのため、正常時、ノード1,2間のフローも含め、リンク(1,2)には全くフローが経由しないが、二つのハブノード0と1の間のリンクのSLF時、大量のフローが(0−2−1)の経路に迂回される結果、リンク(1,2)のフロー数倍率が高くなる。
上記段落〔0059〕に記載したことを確認するため、各リンクのSLF時の平均迂回フロー数を最大迂回フロー数で正規化した値ψを、正規化リンク容量に対して図13にプロットする。ただし、リンク容量が不均一な24のNWの各リンクに対して、(a)inv.cap、(b)min.hopの場合について示している。
ψは、次式で定義する。
SLF時のフローのBN容量最大低下倍率ηを、次式で定義する。
inv.capにおいて、リンク容量の不均一な24のNWを対象にBN容量最大低下倍率ηを算出したところ、8つのNWでη=1であり、7つのNWで0.25〜0.4であり、5つのNWで0.05〜0.1であり、NW5,26,31,33の4つのNWで0.02未満となった。η<0.02の4つのNWについてBN容量低下倍率が最大となったフローを調べたところ、NW5,26,33では平均フロー数倍率εlが最大となったリンクを経由するフローであった。
公開されている36の商用ISPのバックボーンNWを対象に、単一リンク障害(SLF)に対する信頼性を接続性と品質の安定性の観点から評価し、信頼性が劣化する要因について分析した結果、以下のことが明らかとなった。
イ)SLFによりNWが分断されるリンクを有するNWは4つのみであり、大部分のNWは接続性の観点からは堅牢である。
ロ)SLF時のフロー長の最大増加量は、最大最短閉路によって決まり、最大最短閉路長が長いLadder型のNWがSLF時のフロー長の増加度合いが高くなる傾向がある。
ハ)容量格差の大きなリンクから構成される,2個以上のハブノードを含むか、ホップ長の長い最短閉路上の小容量リンクが、SLF時に経由するフロー数の増加度合いが大きい。ハブノードを多く含むH&S型のNWにおいて、SLF時のリンクのフロー数増加度合いが高くなる傾向がある。
ニ)容量格差の大きい最短閉路上の小容量リンクを経由するフローのBN容量がSLF時に大きく低下する傾向にある。
本発明では、ネットワーク構造分析装置102のコンピュータにおけるプログラムの動作により、リンク増設またはリンク容量増設の箇所が絞られ、バイパスリンクの設置またはリンクの容量の増設の指示を出力装置から出力される。
コンピュータは、ステップ202〜204の3つの手順のうちの1つないし3つを実施して、リンク増設またはリンク容量増設の箇所を絞る。1つ目は、フローのホップ長が最も増加する場所は最大最短閉路(任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中で、ホップ長が最大のもの)であることから、最大最短閉路が存在するか否かを判別する(ステップ202)。存在すると判別されれば、その経路のホップ長を小さくするためバイパスリンクを設置するか、または、その経路上の小容量リンクの容量を増設する指示情報を出力する(ステップ206)。
3つ目は、容量格差の大きなリンクからなる複数のハブノード、または、ホップ長の長い経路上の小容量リンクを含むか否かを判別する(ステップ204)。含むと判別されれば、それら複数のハブノード間のリンクの増設、または、その経路上の小容量リンクの容量リンクの容量を増設する指示情報を出力する(ステップ208)。
102 ネットワーク構造分析装置
103 リンク増設・リンク容量増設箇所出力装置
Claims (5)
- ネットワークのトポロジとリンク容量の各情報をコンピュータに入力し、該コンピュータの制御により、投資コストを抑えながら、ネットワークの障害時の接続性と安定性を効率性に向上させるために、リンク増設箇所またはリンク容量増設箇所を絞り込む特定方法であって、
該コンピュータは、単一リンクの障害時にフローのホップ長が最も増加する場所として、任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中から、ホップ長が最大の経路を算出することで検出し、
該コンピュータは、検出された経路のホップ長が小さくなるように該当ノード間にバイパスリンクを設置する指示情報を出力することを特徴とするネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法。 - 前記コンピュータは、単一リンク障害時に、リンクの負荷が最も増加する場所として、任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中から、容量格差の大きなリンクから構成される複数のハブノードを含むか、あるいは、ホップ長の長い経路上の小容量リンクを含むかを、それぞれ算出することにより、判別し、
該コンピュータは、判別の結果、容量格差の大きなリンクからなるハブノード、あるいは、前記小容量リンクを含むことが判別された場合には、容量格差の大きなリンクからなる複数のハブノード間のリンク、あるいは、前記小容量リンクの容量を増設する指示情報を出力することを特徴とする請求項1に記載のネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法。 - 前記コンピュータは、単一リンク障害時にボトルネックリンク容量が大きく悪化するフローとして、任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中から、ホップ長が最大の経路の中で、容量格差の大きい経路上の小容量リンクを経由するフローを算出することにより検出し、
該コンピュータは、検出された容量格差の大きな経路上の小容量リンクの容量を増設することを特徴とする請求項1に記載のネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法。 - 前記コンピュータは、H&S型のネットワークに対して、任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中から、ホップ長が最大の経路の中で、容量格差の大きな経路が存在するかを、算出することにより判別し、判別の結果、存在する場合には、小容量リンクの容量を増設する指示情報を出力することを特徴とする請求項1に記載のネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法。
- 前記コンピュータは、Ladder型のネットワークに対して、任意の二つのノードを含む経路で経路コストが最小のものの中から、ホップ長が最大の経路が存在するかを、算出することにより判別し、判別の結果、存在する場合には、該ホップ長が最大の経路のホップ長が小さくなるように、該当ノード間にバイパスリンクを設置する指示情報を出力することを特徴とする請求項1記載のネットワークのリンク増設箇所またはリンク容量増設箇所特定方法。
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