JP2009255019A - リポソーム及びその作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生体膜の非対称性を模倣したリポソームを構築し、ドメイン形成を実現する。
【解決手段】 水性溶液相1上に油性溶液相2を配するとともに、油水界面に外層脂質膜となる脂質単分子膜3を形成しておき、油性液体相2中に内層脂質膜6が形成されたW/O液滴5を導入する。液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液に比重差を付与することで、重力によりW/O液滴5を水性溶液相1中に移行させ、内層脂質膜6の外側に外層脂質膜(脂質単分子膜3)を形成する。作製されるリポソーム9は、内層脂質膜6と外層脂質膜(脂質単分子膜3)の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、脂質2分子膜を備えたリポソーム及びその作製方法に関するものであり、前記脂質2分子膜が非対称性を有するとともに、ミクロドメイン構造が形成された新規なリポソーム及びその作製方法に関する。
これまで生体膜の構成成分は膜面内で一様に分布し自由に拡散しているものと考えられてきたが、近年、飽和脂質やコレステロールが豊富な秩序相からなるミクロドメイン構造の存在が報告されている。このミクロドメインは、「ラフト」と称され、シグナル伝達や小胞輸送等の機能発現の場として注目を集めている。
例えば、飽和脂質と不飽和脂質とコレステロールを混合したモデル膜リポソームにおいても、ラフト様のドメインを観察することができ、時間変化に応じたドメイン成長、コレステロール濃度によるドメイン形状の変化等に関する研究が行われている。
しかしながら、ドメインサイズや安定性の面で、実際のラフト構造を再現することには未だ成功していない。この原因として、モデル膜研究では生態環境がほとんど考慮されていなかったことが挙げられる。例えば、生体膜の非対称性については、これまでほとんど考慮されたことがない。生体膜の非対称性の生物学的意義は未だほとんど明らかにされていないが、非対称な疎水基同士の相互作用は、ドメイン構造の不安定化を引き起こすことが予測される。
リポソームの作製方法としては、油水界面を利用する方法が一般的であり、例えば、特許文献1には、内膜リン脂質を含む油性液体中に、微細毛細管により粒径を調整した水滴を導入し、W/Oエマルジョンを形成する工程と、W/Oエマルジョンを捕捉する工程と、油性液体と外膜脂質を介して油水界面を形成する水相に、捕捉されたエマルジョンを移行させ、W/Oエマルジョンの外側に外膜脂質を付加する工程とを有するリポソームの製造方法が開示されている。ただし、特許文献1記載の発明も、内膜リン脂質と外膜リン脂質とが同一であるリポソームを作製対象とするもので、前記非対称性については何ら言及されていない。
脂質2分子膜が非対称性を有するリポソームの作製に関しては、ほとんど研究が進んでおらず、わずかに数例において報告が見られるに過ぎない(例えば非特許文献1や非特許文献2を参照)。この非特許文献1に記載される技術においても、内膜リン脂質を含む油性液体中に水滴を導入することでエマルジョンを形成し、外膜リン脂質の単分子膜が形成された油水界面を通過させることで外膜脂質を付加するという点で特許文献1記載の発明と共通するものであるが、遠心力を利用してエマルジョンを水相に移行させる点に特徴を有する。
すなわち、非特許文献1に記載される発明では、水相の上部に脂質を溶解させた油相を用意する。油相に液滴を導入し、遠心分離による力で液滴を水相に引きずり込む。これにより、液滴が2分子膜小胞(リポソーム)に移行する。この際、油相に予め溶解させる脂質と導入する液滴を覆う脂質の組成を変えることで、非対称2分子膜を備えたリポソームが形成される。非特許文献2記載の発明も、遠心力を利用するという点で非特許文献1記載の発明と同様である。
特開2007−204382号公報 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United Statesof America, September 16, 2003, Vol.100, no.19, 10718-10721 Z. Xiao, M. Xu, M.Li, Z. Lu, Y. Wei Supramolecular Science, Vol.5, No. 5-6 (1998) 619-622
しかしながら、非特許文献1に記載される技術では、遠心分離という厳しい条件下でリポソームの形成を行うため、必ずしも目的とするモデル膜リポソームを得ることができないのが実情である。例えば、遠心分離による力を利用して液滴を水相に移行させると、目的とするリポソームの形成率が低いという問題がある。これは、遠心機による力学的ストレスにより、リポソームが破壊されてしまうためである。また、遠心分離中は溶液の状態を確認することができず、リポソーム形成過程を視認することができないので、条件設定等が難しいという問題もある。さらには、遠心分離ではリポソームのサイズをほとんどコントロールすることができないという問題もある。遠心力を加えた場合、サイズに依存せず、リポソームが破壊されてしまうからである。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、生体膜の非対称性を模倣したリポソームの構築及びドメイン形成を実現することを目的とし、穏やかな条件下でリポソームの形成が可能で、リポソームを破壊することなく高い形成率で形成することが可能なリポソームの作製方法を提供することを目的とする。また、本発明は、リポソームの形成過程を視認することができ、形成されるリポソームのサイズをある程度コントロールすることが可能なリポソームの作製方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明に係るリポソームは、内層脂質膜と外層脂質膜の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されていることを特徴とする。
また、本発明のリポソームの作製方法は、水性溶液相上に油性溶液相を配するとともに、油水界面に外層脂質膜となる脂質単分子膜を形成しておき、油性液体相中に内層脂質膜が形成された液滴を導入し、前記液滴を構成する水性溶液と前記水性溶液相を構成する水性溶液に比重差を付与することで、重力により前記液滴を水性溶液中に移行させ、前記内層脂質膜の外側に外層脂質膜を形成することを特徴とする。
本発明においては、内層脂質膜が形成された液滴を脂質単分子膜が形成された油水界面を通過させることで、外層脂質膜を形成する。この時、内層脂質膜を構成する脂質成分と油水界面に形成される脂質単分子膜を構成する脂質成分の組成を変えることで、非対称性脂質2分子膜が形成される。ここで、内層脂質膜が形成された液滴を外層脂質膜となる脂質単分子膜が形成された油水界面を通過させ、水性溶液中へ移行させるためには、何らかの力を加える必要がある。先の非特許文献1記載の発明では、液滴を水性溶液中へ移行させるために、遠心力を利用している。
本発明では、力学的ストレスの加わる遠心力に代えて、液滴と水性溶液の比重差を利用し、重力により液滴を油水界面を通過させ、水性溶液中へと移行させる。重力による液滴の水性溶液中への移行は、非常に穏やかな条件下で行われ、力学的ストレス等が加わることがないので、形成されたリポソームが破壊されることがない。また、重力による液滴の移行では、例えば透明容器内で操作を行えば、リポソームの形成過程を視認することができる。
さらに、前記重力による液滴の移行では、大きな液滴の方が加わる重力が大きく、小さな液滴に比べて油水界面を通過し易いという特徴がある。例えば、前記比重差を大きくすれば、小さな液滴まで油水界面を通過し、水性溶液中に移行する。その結果、小さな粒径のリポソームが形成される。これに対して、前記比重差が小さい場合には、大きな液滴のみが油水界面を通過し、大きな粒径のリポソームが形成される。したがって、例えば液滴と水性溶液の比重を調整することで、形成されるリポソームのサイズコントロールが可能である。
本発明のリポソームの作製方法によれば、形成されたリポソームを破壊することなく、高い形成率で生体膜の非対称性を模倣したリポソームを作製することが可能である。前記リポソームの作製に際しては、リポソームの形成過程を視認することができ、サイズコントロールも可能である。
作製されるリポソームは、2分子膜が生体膜と同様の非対称性を有し、ラフト様のミクロドメイン構造も観察される。したがって、本発明のリポソームを用いることにより、内層と外層の組成の異なるリポソーム上での相分離実験系を確立することができ、例えば内外層非対称分布がドメイン形成及びその与える影響等を明らかにすることができる。
以下、本発明を適用したリポソーム及びその作製方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明によるリポソームの作製過程を模式的に示すものである。リポソームの作製のためには、油水界面に脂質単分子膜を形成し、内層脂質膜が形成された液滴を油性溶液から水性溶液へと移行する必要がある。そこで、本発明においても、図1(a)に示すように、水性溶液相1上に油性溶液相2を形成し、これら水性溶液相1と油性溶液相2の界面(油水界面)に脂質単分子膜3を形成しておく。脂質単分子膜3は、油性溶液相2中に各種リン脂質等の脂質成分を添加することにより容易に形成することが可能である。油性溶液相2中に添加された脂質成分は、各脂質分子4の疎水基部分4aが油性溶液相2側になり、親水基部分4bが水性溶液相1側になるように油水界面において整列し、全ての脂質分子4が一定方向を向いた脂質単分子膜3が油水界面に形成される。
油水界面に脂質単分子膜3を形成した後、油性溶液相2中に内層脂質膜6を形成したW/O液滴5を導入する。このW/O液滴5は、水性溶液の液滴7の周囲に内層脂質膜6を形成したものであり、内層脂質膜6は、親水基部分8bが水性溶液粒子6側を向き、疎水基部分8aが外側に向くように各脂質分子8が整列した単分子膜として形成されている。
なお、前記W/O液滴5は、別途作製したものを前記油性溶液相2中に導入してもよいし、油性溶液相2中で形成するようにしてもよい。後者の場合、例えば油性溶液相2を下層油性溶液相と上層油性溶液相の2層に分け、上層油性溶液相中に内層脂質膜形成用の脂質成分を添加しておく。そして、上層油性溶液相中に水性溶液の液滴7をマイクロキャピラリ等を用いて導入する。すると、水性溶液の液滴7に脂質成分の親水基部分8bが引き寄せられ、水性溶液の液滴7の周囲に前記内層脂質膜6が単分子膜として形成される。
油性溶液相2中に前記W/O液滴5を導入すると、重力によってW/O液滴5は沈んでいき、図1(b)に示すように、油水界面に到達する。油性溶液相2を構成する油性溶液に比べて液滴7を構成する水性溶液の方が重いからである。
ただし、W/O液滴5と水性溶液相1はいずれも水性溶液により構成されているので、例えばW/O液滴4の液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液が同じである場合、W/O液滴5はそれ以上降下することができず、水性溶液相1中に移行させることができない。そこで、本発明においては、W/O液滴5の液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液に比重差を付与し、重力によってW/O液滴5が水性溶液相1中に移行するにようにしている。
W/O液滴5の液滴7を構成する水性溶液の比重を大とし、水性溶液相1を構成する水性溶液の比重を小とすれば、図1(c)に示すように、重力によってW/O液滴5は油水界面を通過し、水性溶液相1中においても沈んでいく。W/O液滴5が油水界面を通過する際には、周囲に前記脂質単分子膜3を巻き込む形になり、当該脂質単分子膜3が外層脂質膜となって脂質2分子膜を備えたリポソーム9が形成される。
W/O液滴5の液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液に比重差を付与するためには、これら水性溶液にそれぞれ異なる溶質を溶解すればよい。溶質としては、糖類や塩類等を挙げることができ、例えば液滴7を構成する水性溶液にスクロース、水性溶液相1を構成する水性溶液にグルコースを溶解すれば、前記比重差を付与することができる。溶解する溶質の組み合わせとしては、糖類と糖類の組み合わせ、塩類と塩類の組み合わせ等が好適であり、さらには糖類の塩類の組み合わせ等も可能である。
なお、前記溶質の水性溶液への溶解により比重差を付与するに当たり、液滴7を構成する水性溶液における溶質濃度と、水性溶液相1を構成する水性溶液における溶質濃度(体積モル濃度)は、同等に設定することが好ましい。前記溶質濃度に差があり過ぎると、浸透圧によって形成されるリポソーム9が変形したり破裂するおそれが生ずる。
W/O液滴5の液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液に比重差を付与し、重力を利用してW/O液滴5を水性溶液相1に移行する場合、油水界面に形成された脂質単分子膜3が抵抗になり、これを突き破る必要がある。したがって、脂質単分子膜3を突き破るに足る重力が加わるように前記比重差を設定する必要がある。ここで、前記必要な比重差は、W/O液滴5のサイズによって異なる。サイズの大きなW/O液滴5では、前記比重差が比較的小さくても大きな重力が加わり、水性溶液相1に移行し易い。一方、サイズの小さなW/O液滴5では、前記比重差が小さいと加わる重力も小さく、水性溶液相1に移行することができない。
したがって、逆に言えば、W/O液滴5のサイズと比重差を調整することで、形成されるリポソーム9のサイズをコントロールできることになる。すなわち、前記比重差を大きくすれば、小さなW/O液滴5まで油水界面を通過し、水性溶液相1中に移行する。その結果、小さな粒径のリポソーム9が形成される。これに対して、前記比重差を小さくすれば、大きなW/O液滴5のみが油水界面を通過し、大きな粒径のリポソーム9が形成される。これらのことから、例えばW/O液滴5の液滴7を構成する水性溶液と水性溶液相1を構成する水性溶液の比重を調整することで、形成されるリポソーム9のサイズコントロールが可能となる。
以上が本発明におけるリポソームの作製方法の基本概念であるが、前記作製方法において、内層脂質膜6を構成する脂質成分や外層脂質膜となる脂質単分子膜3の脂質成分は、任意に選択することができる。例えば、内層脂質膜6を構成する脂質成分と外層脂質膜となる脂質単分子膜3の脂質成分の組成を変えれば、形成されるリポソーム9の脂質2分子膜において、非対称性が実現される。
前述の作製方法においては、重力を利用した穏やかな条件でリポソームが作製され、形成されたリポソームが力学的ストレスによって破壊されることがない。したがって、高い形成率でリポソームを形成することが可能である。また、前記作製方法においては、例えば遠心分離器等を用いる必要がなく、汎用の容器を用いて一連の工程を行うことができるので、リポソームの形成過程を簡単に視認することが可能である。さらに、前述の通り、本発明の作製方法では、形成されるリポソームのサイズコントロールも可能である。
得られるリポソームは、2分子膜が生体膜と同様の非対称性を有し、ラフト様のミクロドメイン構造が観察されることも確認されている。このように、本発明により、生体膜の非対称性分布を模倣したリポソームの構築やドメイン形成が可能となり、また比較的大きなサイズのリポソームの形成が可能であるので、例えば巨大リポソーム上ラフトドメインの出芽ダイナミクスの研究等において有用なリポソームの提供が可能となる。
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
使用試薬
・DOPC(不飽和リン脂質):dioleoyl L-α phosphatidylcholine(Avanti Polar Lipids社製)
・DPPC(飽和リン脂質):dipalmitoyl L-α phosphatidylcoline(Avanti Polar Lipids社製)
・コレステロール(Avanti Polar Lipids社製)
・ミネラルオイル(Nacalai Tesque社製)
・Rhodamine red-X DHPE(蛍光色素):N-(rhodamine red-X)-1,2-dihexadecanoyl -sn-glycero-3-pjosphoethanolamine triethylammonium salt(λex=560nm、λen=580nm)(Invitroge社製)
・NBD−PE(蛍光色素):1-oleoyl-2-[12-[(7-nitro-2-1,3-benzoxadiazo-4-yl) amino]dodecanoyl]-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(λex=460nm、λen=533nm)(Avanti Polar Lipids社製)
・eggPC:egg yolk phosphatidylcholine (卵黄フォスファチジルコリン)
W/O液滴の作製
DOPC、DPPC、コレステロール、eggPCを、濃度が7mg/mLとなるようにクロロホルム/メタノール混合溶媒(容積比2:1)に溶解した。このリン脂質溶液をガラスの試験管に注いだ。蛍光色素であるRhodamine red-X DHPEとNBD−PEは、それぞれ1/50のモル比率でリン脂質と混合した。窒素ガスによって有機溶媒を蒸発させ、3時間以上真空下で乾燥させることで、試験管の底に乾いたリン脂質のフィルムを作製した。ミネラルオイルを入れ、50℃、60分間超音波処理をした。オイル中の脂質の最終濃度は0.5mMまたは0.1mMにした。W/O液滴は、リン脂質を含むオイルに水溶液を5%加えて、タッピングすることで作製した。
液滴とリポソームの観察
観察チャンバの構成を図2に示す。本実験で使用した観察チャンバは、スライドガラス11上に円筒形状の孔部13を形成したシリコンゴムシート12を載置することにより構成されている。前記孔部13内でリポソーム形成が行われる。前記観察チャンバにおいては、スライドガラス11を通して孔部13内の様子を観察することが可能である。なお、液滴やリポソームの観察は、スライドガラス11下に顕微鏡の対物レンズ14を配置して行った。使用した顕微鏡は、60倍レンズと100倍オイルレンズを装備した倒立型顕微鏡(オリンパス社製)である。
前記シリコンゴムシート12の孔部13の底に薄い水相をのせ、その上に0.1mMのリン脂質を含むオイル相をのせ、2時間静置した。前記リン脂質が外層脂質膜となる。さらに、オイル相に作製したW/O液滴をのせた。W/O液滴が重力によりオイル相から水相まで油水界面を介して自発的に移行することで、脂質2分子膜が形成されたリポソームを作製した。
リポソームの形成効率及び粒径分布
リポソームを効率的に作製するために、液滴の比重を大きくすることを試みた。液滴の比重を大きくするために、本実験では、液滴の中にスクロース溶液、水相の中に同じ濃度のグルコース溶液を入れた。スクロース溶液とグルコース溶液は、浸透圧が加わるのを防ぐために同じ濃度に調製した。また、本実験では、スクロース及びグルコースについて、10mM、100mM、1M溶液を用いてリポソームを作製し、その大きさと個数を測定した。なお、液滴(内層脂質膜)の脂質はeggPC、単分子膜(外層脂質膜)の脂質は0.1mM・DOPCを用いた。
その結果、10mM溶液ではリポソームがほとんどできなかったが、100mMと1M溶液では多数のリポソームが作製できた。そこで、100mMと1M溶液を用いた場合について、リポソームの大きさ(粒径)と個数を比較したところ、図3に示すように、100mM溶液を用いた場合と1M溶液を用いた場合で粒径分布が異なることがわかった。リポソームのサイズ分布は、スクロース・グルコース濃度に依存し、濃度が高い場合にサイズの小さなリポソームが作製され、濃度が低い場合にサイズの大きなリポソームが作製される。
また、1Mのスクロース・グルコース溶液を用いた場合のリポソームの粒径分布と液滴の粒径分布を比較したところ、図4に示すように、ほぼ同様の分布を示した。このことから、スクロース・グルコース溶液の濃度が高く液滴と水相の比重差が大きい場合には、液滴の大部分が水相に移行し、リポソームの形成に寄与することがわかる。
二分子膜内外層の非対称性
液滴から作製されたリポソームが二分子膜内外層非対称であるかを調べた。図5(a)は、単分子膜(外層脂質膜)にのみRhodamine red-X DHPEを入れ、液滴(内層脂質膜)には蛍光色素を入れずに作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真であり、図5(b)は、写真のリポソームの赤道面の白い点線上の蛍光強度を示したものである。図6(a)は、液滴(内層脂質膜)にのみNBD−PEを入れ、単分子膜(外層脂質膜)には蛍光色素を入れずに作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真であり、図6(b)は、写真のリポソームの赤道面の白い点線上の蛍光強度を示したものである。図7(a)は、単分子膜(外層脂質膜)にRhodamine red-X DHPEを入れ、液滴(内層脂質膜)にNBD−PEを入れて作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真(Rhodamine red-X DHPE)、図7(b)は、図7(a)のリポソームの赤道面の白い点線上の蛍光強度を示したもの、図7(c)は、単分子膜(外層脂質膜)にRhodamine red-X DHPEを入れ、液滴(内層脂質膜)にNBD−PEを入れて作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真(NBD−PE)、図7(d)は、図7(c)のリポソームの赤道面の白い点線上の蛍光強度を示したものである。
これらの図面から明らかなように、単分子膜(外層脂質膜)にのみ蛍光色素を入れた場合、液滴(内層脂質膜)にのみ蛍光色素を入れた場合、単分子膜(外層脂質膜)と液滴(内層脂質膜)の双方に蛍光色素を入れた場合のいずれにおいてもリポソームが作製できており、本実験において、二分子膜内外層非対称なリポソームが作製できたことが明らかである。
非対称性ドメインリポソーム
内層に3種類の脂質と蛍光色素、外層にDOPCのみ入ったリポソームにおいて、脂質組成によるドメインの形成の様子を観察した。先ず、図8(a)に示すように、内層脂質膜がDOPCのみでできた液滴から作製したリポソームでは、ドメイン構造が観察されなかった。内層脂質膜がDOPCとDPPCの比率が1対1の組成でコレステロールを10%含む液滴から作製したリポソームでは、図8(b)に示すように、蛍光色素で染まった無秩序相の膜面に、蛍光色素で染まっていない秩序相のドメインが点在する様子が観察された。内層脂質膜がDOPCとDPPCの比率が1対1の組成でコレステロールを60%含む液滴から作製したリポソームでも、図8(c)に示すように、蛍光色素で染まった無秩序相の膜面に、蛍光色素で染まっていない秩序相のドメインが点在する様子が観察された。
本発明を適用したリポソームの作製方法を模式的に示すものであり、(a)は液滴導入状態を示す模式図、(b)は液滴が油水界面に到達した状態を示す模式図、(c)は液滴の水性溶液相への移行状態(リポソームの形成状態)を示す模式図である。 実施例で使用した観察チャンバの模式図である。 100mMと1M溶液を用いた場合におけるリポソームの大きさ(粒径)と個数を比較して示す特性図である。 1Mのスクロース・グルコース溶液を用いた場合のリポソームの粒径分布と液滴の粒径分布を比較して示す特性図である。 (a)は単分子膜(外層脂質膜)にのみ蛍光色素を入れて作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真であり、(b)はリポソームの赤道面上の蛍光強度を示す特性図である。 (a)は液滴(内層脂質膜)にのみ蛍光色素を入れて作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真であり、(b)はリポソームの赤道面上の蛍光強度を示す特性図である。 (a),(c)は単分子膜(外層脂質膜)と液滴(内層脂質膜)の双方に蛍光色素を入れて作製したリポソームの蛍光顕微鏡写真であり、(b),(d)はリポソームの赤道面上の蛍光強度を示す特性図である。 (a)〜(c)は、内層に3種類の脂質と蛍光色素、外層にDOPCのみ入ったリポソームにおいて、脂質組成によるドメインの形成の様子を示す蛍光顕微鏡写真である。
符号の説明
1 水性溶液相、2 油性溶液相、3 脂質単分子膜、4 脂質分子、5 W/O液滴、6 内層脂質膜、7 液滴、8 脂質分子、9 リポソーム、11 スライドガラス、12 シリコンゴムシート、13 孔部、14 対物レンズ

Claims (7)

  1. 内層脂質膜と外層脂質膜の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されていることを特徴とするリポソーム。
  2. 水性溶液相上に油性溶液相を配するとともに、油水界面に外層脂質膜となる脂質単分子膜を形成しておき、
    油性液体相中に内層脂質膜が形成された液滴を導入し、前記液滴を構成する水性溶液と前記水性溶液相を構成する水性溶液に比重差を付与することで、重力により前記液滴を水性溶液相中に移行させ、前記内層脂質膜の外側に外層脂質膜を形成することを特徴とするリポソームの作製方法。
  3. 前記液滴と前記水性溶液相に異なる溶質を溶解することで比重差を付与することを特徴とする請求項2記載のリポソームの作製方法。
  4. 前記液滴と前記水性溶液相における溶質の濃度が略等しいことを特徴とする請求項3記載のリポソームの作製方法。
  5. 前記溶質が糖であることを特徴とする請求項3記載のリポソームの作製方法。
  6. 前記液滴にスクロースを溶解し、前記水性溶液相にグルコースを溶解することを特徴とする請求項5記載のリポソームの作製方法。
  7. 前記油水界面に形成される脂質単分子膜を構成する脂質と、前記内層脂質膜を構成する脂質とは、その組成が異なることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項記載のリポソームの作製方法。
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