JP6388497B2 - リポソーム集団の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機溶媒層を含まないリポソームの集団の製造方法に関する。
生物を構成する細胞や、細胞内に存在するミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体等の各種オルガネラ、細胞核等は、外側が生体膜で覆われており、この生体膜は、基本的に脂質二重膜から構成されている。生理活性を有する様々なタンパク質、すなわち、レセプターや酵素等がこの脂質二重膜を貫通する形で脂質二重膜上に保持されている。これらの膜貫通タンパク質は、生体内で重要な役割を果たしている。特に、細胞膜上に存在する各種レセプターは、生体内に存在するリガンドと結合することにより、様々な生理学的反応を引き起こす引き金になることがわかっている。このため、レセプターの機能を亢進する各種リガンドや、レセプターの機能を阻害する阻害剤等が医薬品として用いられており、また、新たな医薬品として利用可能な天然又は人工のリガンドや阻害剤が研究されている。
これらの膜貫通タンパク質や、そのリガンド、阻害剤等を開発するためには、生体内と同じ状態、すなわち、膜貫通タンパク質が生体膜に保持された状態で各種測定を行うことが望まれる。リポソームの外縁は、脂質二重膜から成るので、このような研究に用いられている。また、リポソームの内部には種々の物質を含めることが可能であり、かつ、リポソーム外殻も細胞膜も脂質二重膜から成るので、リポソームは細胞のエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれやすい性質を有しており、薬物送達システム(DDS)としても広く用いられている。
古くから、リポソームの製造方法としては、静置水和法が広く用いられている。この方法は、リン脂質溶液を容器に入れて乾燥後、水を入れて放置する方法であり、水を入れる前に有機溶媒は蒸発させるので、この方法であれば有機溶媒を含まないリポソームを得ることができる。しかしながら、静置水和法は時間がかかり、生成するリポソームのサイズが不均一であり、リポソームの中にリポソームが含まれたり、脂質二重膜が部分的に重複したりする場合がある等の不都合がある。
一方、本願発明者らは、貫通孔を介して連通する2つのチャンバーに脂質溶液を入れ、次いで水溶液を入れて前記貫通孔を塞ぐ平面脂質二重膜を形成させ、これにジェット水流を当ててリポソームを形成する方法を開発した(特許文献1、非特許文献1〜4)。しかしながら、これらの方法により得られるリポソームは、リン脂質溶液を作製する際に用いる有機溶媒の層を、二層のリン脂質膜の間に含んでいる。リポソームが有機溶媒層を含んでいると、リポソームが不安定であり、壊れやすいという問題がある。また、生体膜は、有機溶媒層を含まないので、有機溶媒層を含むリポソームの脂質二重膜は、生体膜とは物性が異なることとなり、創薬スクリーニングにおける障害となる。また、有機溶媒は、生体に有害であるので、リポソームをDDSに用いる場合にも障害となる。
さらに、本願発明者らは、ジェット水流を平面脂質二重膜に当てる方法により、有機溶媒層を含まないリポソームも形成される場合があることを見出した(非特許文献5)。しかしながら、非特許文献5に記載された方法であっても有機溶媒層を含むリポソームも形成されており、得られるリポソーム集団は、有機溶媒層を含むリポソームと含まないリポソームの混合物である。有機溶媒層を含むリポソームの直径は、有機溶媒層を含まないリポソームの20倍程度ある(下記実施例参照)ので、顕微鏡下で有機溶媒層を含まないリポソームのみを回収する等により有機溶媒層を含まないリポソームの集団を得ることは可能ではあるが、有機溶媒層を含むリポソームやその断片が混入することなく、簡便に有機溶媒層を含まないリポソームの集団を得ることを可能にする方法が望まれる。
特開2007-152267 特開2012-81405
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 25;105(12):4697-702. 「Unilamellar vesicle formation and encapsulation by microfluidic jetting.」 J. Am. Chem. Soc. (2007) 129: 12608-12609. 「Formation of giant vesicle like compartments from a planar lipid membrane by a pulsed jet flow」 ACS Appl Mater Interfaces. 2011 May;3(5):1434-40. 「Microfluidic fabrication of asymmetric giant lipid vesicles.」 J Am Chem Soc. 2011 Mar 9;133(9):2798-800.「Stepwise synthesis of giant unilamellar vesicles on a microfluidic assembly line.」 社団法人日本化学会生体機能関連化学部会 NEWS LETTER Vol.28, No.1 (2013.6.21) pp.3-6
有機溶媒層を含まないリポソームの集団を簡便に効率よく製造できる方法であって、有機溶媒層を含むリポソームやその断片が混入することがない方法を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、貫通孔を介して連通する2つのチャンバーにそれぞれ入れる水溶液に、それぞれ分子量の異なる比重増加剤を含ませることによりこれらの水溶液の比重を適切に異ならせ、比重の大きい水溶液が入った側から、この水溶液と同じ水溶液をジェット噴射して平面脂質二重膜に当てることにより、有機溶媒層を含まないリポソームのみを沈降させることが可能であることを見出し、この現象を利用して有機溶媒層を含まないリポソームのみを簡便に回収できることに想到し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、直径が10μm〜1000μmである貫通孔を介して互いに連通する第1及び第2のチャンバーを具備するリポソーム作製器具を準備する工程と、
前記第1のチャンバーに第1の脂質溶液を入れ、前記第2のチャンバーに第2の脂質溶液を入れる工程と、
前記第1のチャンバーに、第1の比重増加剤を含む第1の水溶液を入れ、前記第2のチャンバーに、第2の比重増加剤を含む第2の水溶液を入れて前記貫通孔を塞ぐ平面脂質二重膜を形成する工程と、
前記第1のチャンバー内において、先端部の内径が10μm〜100μmのキャピラリーから、150kPa〜600kPaの圧力で、2ミリ秒〜20ミリ秒の時間、前記第1の水溶液をジェット水流として噴射し、該ジェット水流を前記平面脂質二重膜に当てて前記第2のチャンバー内にリポソームを生成させる工程と、
生成されたリポソームのうち、有機溶媒層を含まないリポソームを選択的に回収する工程とを含み、
前記第1の比重増加剤の分子量が前記第2の比重増加剤の分子量よりも大きく、
前記第1の水溶液中の前記第1の比重増加剤のモル濃度と、前記第2の水溶液中の前記第2の比重増加剤のモル濃度が実質的に同じであり、前記第1の水溶液の比重が前記第2の水溶液の比重よりも大きく、
前記第2の水溶液の比重は、有機溶媒層を含むリポソームが浮遊し有機溶媒層を含まないリポソームが沈降する比重であり、有機溶媒層を含まないリポソームを選択的に回収する前記工程は、第2のチャンバー内に沈降したリポソーム集団を回収することにより行う、有機溶媒層を含まないリポソーム集団の製造方法を提供する。
本発明により、有機溶媒層を含まないリポソームの集団を簡便に効率よく製造できる方法が初めて提供された。本発明の方法によれば、有機溶媒層を含まないリポソームのみを選択的に回収することができ、有機溶媒層を含むリポソームやその断片が混入することがない。また、平面脂質二重膜を形成する貫通孔の直径や、ジェット水流の圧力や噴射時間、ジェット水流を噴射するキャピラリーの先端部の内径といった種々の製造条件を最適化したことにより、サイズが均一で、リポソーム中にリポソームが含まれたり、脂質二重膜が部分的に重複したりすることがないリポソームの集団を効率よく形成することができる。
本発明の方法に用いることができる、リポソーム作製器具の1具体例であるダブルウェルチャンバーを模式的に示す図である。 本発明の方法における水溶液添加工程を説明するための模式図である。 本発明の方法において、平面脂質二重膜にジェット水流を当てた後、平面脂質二重膜からリポソームが生成する過程を模式的に示す図である。 本発明の実施例において、平面脂質二重膜にジェット水流を当てた後の変化を高速度カメラで撮影した結果を示す図である。 本発明の実施例において作製したリポソーム及び公知の方法により作製したリポソームの共焦点ラマン顕微鏡を用いた評価結果を示す図である。 下記実施例において作成した、縦軸にI1430/I1650比を横軸にデカン/DOPC濃度を取った検量線を示す。
本発明の方法では、直径が10μm〜1000μm、好ましくは100μm〜500μmである貫通孔を介して互いに連通する第1及び第2のチャンバーを具備するリポソーム作製器具を用いる。貫通孔の孔径は、好ましくは120μm〜200μm程度である。貫通孔の孔径が100μmよりも小さいと、リポソームが形成されにくくなり、500μmを超えると形成された脂質二重膜の安定性が低下し、ひいては、リポソームが形成されにくくなる。また、貫通孔の形状は、脂質二重膜を再現性良く形成し、かつ、安定に維持する観点及び貫通孔の形成の容易さの観点から円形が最も好ましいが、脂質二重膜が形成可能であれば、他の形状、例えば楕円形や正多角形等の多角形を採用することも可能である。楕円形の場合、孔径は長径を意味し、多角形の場合にはそれに外接する円の直径を孔径とする。
このような器具を用いて、上記貫通孔を塞ぐ平面脂質二重膜を形成することは本願発明者らが発明して特許出願しており(特許文献2)、公知である。この器具は、例えば、図1に模式的に示されるようなものである。以下、説明する。
このような器具としては、1個又は複数の貫通孔を有する隔壁を介して隔てられた2つのウェル状のチャンバー(特許文献2)を用いることが好ましい。上記隔壁で隔てられた2つのウェル状のチャンバーを「ダブルウェルチャンバー」(DWC)と呼ぶことがある。本発明で用いることができるDWCの好ましい1例を図1に模式的に示す。図1の(a)は平面図であり、(b)は(a)中のb-b'線切断部端面図である。なお、図1は、発明の理解のためにDWCを模式的に示すものであり、各構成要素の寸法比率は実物とは大きく異なる。
図1に模式的に示す具体例では、基板10中に、2つのウェル14(第1のチャンバー)及び16(第2のチャンバー)が形成され、それらの境界が隔壁12により隔てられている。2つのウェル間で液が混じらないように、隔壁12の底部と各ウェルの底面を接着剤で接着してもよい。隔壁12には、貫通孔18(図1の(b)参照)が設けられている。図1に示す例では、ウェルの平面形状が基本的に円形であり、2つの円が接する境界部分のみが直線状になっているが、ウェルの形状は限定されるものではなく、上記範囲の孔径の貫通孔を有する隔壁によって隔てられていれば、他の形状でも問題はない。ウェルのサイズは、特に限定されないが、後述のように水溶液の液滴を脂質溶液中に形成した際に脂質溶液が液滴によって圧迫されやすくなるように孔径が2mm〜8mm程度、さらに好ましくは3mm〜5mm程度、深さは孔径の50%〜200%、さらに好ましくは50%〜100%程度が好ましいが、この範囲よりも大きくても小さくても本発明の方法を実施することが可能である。隔壁に設けられた貫通孔の数は1個でも複数個でもよいが通常1個である。
なお、上記DWCは、ウェル14を透孔として設けた基板部材と、ウェル16を透孔として設けた基板部材と、貫通孔を形成した自己支持性のポリマーフィルム等から構成される隔壁12と、各ウェルの底部を構成する底板とを接着剤で接着することにより容易に作製可能である。
本発明の方法では、上記した2つのウェル14及び16のそれぞれに、リン脂質溶液を添加して各ウェルに該脂質溶液を充填する。ここで、リン脂質としては、リポソームの作製に用いられている周知のリン脂質でよく、生体膜における反応を模するためには、生体膜と同じか類似したものが好ましく、この分野において従来から広く用いられているグリセロリン脂質、例えば、ジフィタノイルフォスファチジルコリン(diphytanoyl phosphatidylcholine, DPhPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(dipalmytoyl phosphatidylcholine)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(1-Palmitoyl 2-Oleoyl phosphatidylcholine, POPC)、ジオレオイルフォスファチジルコリン(Dioleoyl phosphatidylcholine, DOPC)、ジオレオイルフォスファチジルセリン(Dioleoyl phosphatidylserine, DOPS)、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン (Dioleoyl phosphatidylserine, DOPE)等を好ましい例として挙げることができる。また、生体膜に存在するスフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン; sphingomyelin)スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド;Ganglioside)やコレステロール(cholesterol)も混入可能である。これらの多くは市販されているので、市販品を好ましく用いることができる。また2つのウェルに異なる種類の脂質を導入することにより、簡便に非対称膜を形成可能なことも本発明の特徴である。
脂質二重膜の形成に用いられる溶液中のリン脂質の濃度は、脂質二重膜が形成可能な濃度であれば特に限定されないが、通常、5g/L〜30g/L程度、好ましくは10g/L〜20g/L程度である。また、リン脂質溶液の溶媒は、特に限定されないが、有機溶媒が好ましく、n-デカンやn-ヘキサデカンのような脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。
次に、各ウェルに水溶液を添加して前記脂質溶液中に水溶液の液滴を形成させる。この様子を図2に模式的に示す。図2は、各ウェルに充填された脂質溶液20内にマイクロピペット22を挿入して水溶液の液滴24を形成する様子を示す。図2は、一方のウェル中に液滴24が形成され、もう一方のウェルに液滴24を形成しつつある状態を模式的に示すものである。この工程で液滴を形成する液は、後述する比重増加剤を含む水溶液である。各ウェルに添加する水溶液の量は、特に限定されないが、脂質二重膜を効率良く形成する観点から、各ウェルに充填されている脂質溶液の体積の1倍〜5倍程度が好ましく、さらに好ましくは1.5倍〜3倍程度である。この状態で30分〜2時間程度放置すると、貫通孔18を塞ぐように平面脂質二重膜が形成される。
上記の説明において、比重増加剤を用いる点を除き、平面脂質二重膜の形成方法自体は、公知であり、特許文献2に記載されている方法である。しかしながら、本発明の方法では、2つのチャンバー(第1のチャンバーと第2のチャンバー)に入れる水溶液が異なる。すなわち、本発明の方法では、第1のチャンバーに、第1の比重増加剤を含む第1の水溶液を入れ、前記第2のチャンバーに、第2の比重増加剤を含む第2の水溶液を入れる。ここで、「比重増加剤」は、各水溶液の比重を純水の比重よりも大きくする化合物であり、リポソームの形成や安定性、及びリポソームを用いた研究やDDSに悪影響を与えない物質であれば特に限定されない。また、第1の比重増加剤の分子量は、第2の比重増加剤の分子量よりも大きい。第1の比重増加剤の分子量は、特に限定されないが、好ましくは第2の比重増加剤の分子量の1.5倍〜3倍程度、さらに好ましくは、1.8倍から2倍程度である。これらの要件を満たす観点から、第1の比重増加剤及び前記第2の比重増加剤は、互いに重合度が異なる糖であることが好ましく、特に第1の比重増加剤がスクロースのような二糖類であり、第2の比重増加剤がグルコースのような単糖類であることが好ましい。スクロースのような二糖類やグルコースのような単糖類は、リポソームの形成や安定性に悪影響を与えず、生体に無害であり、さらに、水に対する溶解度が大きいので十分な比重増加効果を与えることができ、入手が容易で安価であるので特に好ましい。第1の比重増加剤を二糖類とし、第1の比重増加剤を単糖類とすれば、二糖類の分子量は、単糖類の分子量の約2倍であるので、分子量の差は十分あり、必要な比重の差を容易に与えることができる。
第1の水溶液中の第1の比重増加剤のモル濃度と、第2の水溶液中の第2の比重増加剤のモル濃度は実質的に同じである。第1の比重増加剤のモル濃度と第2の比重増加剤のモル濃度が異なると平面脂質二重膜を挟んで浸透圧が生じ、脂質二重膜やリポソームの形成や安定性に悪影響を与える可能性があるので、両者のモル濃度は実質的に同じである。ここで、「実質的に同じ」とは、同じか又は異なってはいるが、その差は脂質二重膜やリポソームの形成や安定性に悪影響を与えない程度に小さいことを意味し、好ましくは、第2の比重増加剤のモル濃度は、第1の比重増加剤のモル濃度の90%〜110%、さらに好ましくは95%〜105%、最も好ましくは100%(モル濃度が同じ)である。上記の通り、第1の比重増加剤の分子量は、第2の比重増加剤の分子量よりも大きく、両者のモル濃度は実質的に同じであるので、第1の水溶液の比重は、前記第2の水溶液の比重よりも大きい。さらに、第2の水溶液の比重は、有機溶媒層を含むリポソームが浮遊し、有機溶媒層を含まないリポソームが沈降する比重である。好ましくは、第2の水溶液の比重は、1.01〜1.0程度であり、さらに好ましくは1.02〜1.08程度である。第2の水溶液の比重がこの範囲に入るように第2の比重増加剤のモル濃度を設定することが好ましい。ちなみに、第1の水溶液の比重は、好ましくは1.02〜1.15程度であり、さらに好ましくは1.05〜1.1程度である。なお、第1及び第2の比重増加剤が、互いに重合度の異なる糖類である場合、好ましくは、上記のようにスクロースのような二糖類とグルコースのような単糖類である場合、第1の水溶液中の第1の比重増加剤の濃度は250mM〜1Mが好ましく、400mM〜600mM程度がさらに好ましい。なお、第1の水溶液は、緩衝剤を含むことが好ましい。また、リポソーム中に所望の物質を封入したい場合には、第1の水溶液中にその所望の物質を溶解する。
上記のように貫通孔に平面脂質二重膜を形成した後、第1のチャンバー内から、第1の水溶液をジェット水流として噴射し、該ジェット水流を前記平面脂質二重膜に当てて第2のチャンバー内にリポソームを生成させる。ジェット水流は、キャピラリーに接続した市販の電磁バルブ等により容易に噴射することができる。
ジェット水流を平面脂質二重膜に当てることによりリポソームが生成する様子を図3に模式的に示す。先ず、図3の(a)に示すように、キャピラリー先端のノズル部26から噴射されるジェット水流28により平面脂質二重膜が引き延ばされて脂質二重膜のチューブ30が形成される。次いで、レーリー・プラトーの破断則に従い、リン脂質チューブ30がやがて波打ち、有機溶媒32の分布が局在化し(図3の(b))、有機溶媒層34を持ったリポソーム36と有機溶媒層を持たないリポソーム38が生成される(図(c))。
図3に模式的に示す現象が起きるためには、ジェット水流の条件が重要である。ジェット水流を噴射するキャピラリー先端部の内径は10μm〜100μm、好ましくは20μm〜60μm、さらに好ましくは30μm〜50μmである。ジェット水流の圧力(キャピラリー先端部における圧力)は、150kPa〜600kPa、好ましくは250kPa〜400kPaである。ジェット水流を噴射する時間は、2ミリ秒〜20ミリ秒、好ましくは2ミリ秒〜6ミリ秒、さらに好ましくは3ミリ秒〜5ミリ秒である。また、キャピラリーは、第1のチャンバーの上部から第1の水溶液内部に先端を浸漬することにより配置することができる。あるいは、チャンバーの側壁にキャピラリーを挿入する孔を設け、ここにキャピラリーを貫通させてもよい。ジェット水流噴射時の、キャピラリー先端部と平面脂質二重膜との距離は、好ましくは0.01mm〜0.1mm、さらに好ましくは0.02mm〜0.05mmである。
上記した各条件を上記した範囲内で変動させることにより、直径の異なる有機溶媒層不含有リポソームを形成することができるが、形成される有機溶媒層不含有リポソームの直径は2〜15μmの範囲であり、単一の条件下ではサイズの揃ったリポソームが形成される。一方、有機溶媒層を含むリポソームの直径は、約200μmと大きい。
上記方法により形成されるリポソームは、有機溶媒層を含むものも含まないものも内部には第1の水溶液が封入されており、第1の水溶液の比重は、第2の水溶液の比重よりも大きい。有機溶媒層を含むリポソームも内部に第1の水溶液を含むが、比重の小さな有機溶媒の層も含んでいるので、その分、有機溶媒層を含まないリポソームよりも比重が小さくなる。そして、上記の通り、第2の水溶液の比重は、有機溶媒層を含むリポソームが浮遊し、有機溶媒層を含まないリポソームが沈降する比重である。このため、有機溶媒層を含むリポソームは第2の水溶液上に浮遊し、有機溶媒層を含まないリポソームは第2のチャンバー内で沈降する。この沈降したリポソームをピペット等で回収することにより、有機溶媒層を含まないリポソームの集団を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1. リポソーム集団の製造
図1に模式的に示すDWCを用いた。隔壁として、厚さ75μmのアクリルフィルムに直径150μmの貫通孔を開けたものを用いた。各ウェルの直径は2mm、深さは3mmであった。なお、隔壁の底部とウェルの底面を接着剤で接着した。DOPCをn-デカンに60mMの濃度に溶解した溶液を脂質溶液として用いた。脂質溶液を6μLずつ各ウェル(第1及び第2のチャンバー)に加えた。第1のチャンバーに500mMスクロースを含むリン酸緩衝液(PBS)(比重:1.07)23μLを加え、第2のチャンバーに500mMグルコースを含むリン酸緩衝液(PBS)(比重:1.04)23μLを加え、5-10分間室温で放置して平面脂質二重膜を形成させた。
次に、ノズル部の先端部の内径が40μmのキャピラリーに500mMスクロース含有PBS溶液を含ませ、これを電磁バルブ(E. STAR, サンエイテック株式会社製)に接続し、ウェル上部からキャピラリーの先端のノズル部をウェル内の水溶液に浸漬し、300kPaの圧力で4ミリ秒間ジェット水流を噴出し、平面脂質二重膜にジェット水流を当てた。この際、キャピラリーのノズル部の先端と平面脂質二重膜との距離は 0.02-0.04mmであった。その後、第2のチャンバーの底部に沈降したリポソームの集団を定量ピペット(商品名:ピペットマン)で回収した。
2. リポソームの生成過程
リポソームの生成過程を高速度カメラを用いて観察した。結果を図4に示す。平面脂質二重膜にジェット水流を当てると、平面脂質二重膜がチューブ状に変形した。そして、レーリー・プラトーの不安定性によりリン脂質チューブは周期的にくびれた。その際、n-デカンも不均一に分布すると考えられる。くびれが大きくなり、分裂した。そして、直径約200μmのリポソームと直径約10μmのリポソームの、2種類の大きさのリポソームが形成された。リポソーム内液にはスクロースが、外液にはグルコースが存在するため、比重の違いによりn-デカンが含まれていないリポソームは沈降し、一方、n-デカン層を含む直径約200μmのリポソームは、n-デカン層の存在により比重が比較的小さいので、第2のチャンバー内の液の上部に浮遊していた。このため、定量ピペットにより第2のチャンバーの底部に沈降したリポソームの集団を回収すると、n-デカン層を含む直径約200μmのリポソームは混入していなかった。
2. リポソームの解析
得られたリポソームは、直径が約10μmであり、顕微鏡観察によると、リポソームのサイズはほぼ均一であった。このリポソームの脂質二重膜に、脂質溶液の有機溶媒として用いたn-デカン層が存在するか否かを、共焦点ラマン顕微鏡を用い評価した (図5)。本実施例でリポソームに使用したリン脂質DOPC分子は、C=Cを有している。しかし、n-デカンはC=Cを有していない。そこで、1650 cm-1のC=Cのピークと1430 cm-1のCH2のピークの比(I1430/I1650)を取ることにより、リポソーム膜内のn-デカン層の有無を評価した。デカンのような有機溶媒を使用しないリポソーム作製法(静置水和法)で作製したリポソームのI1430/I1650比は、1.15±0.11であった。本実施例で作製したリポソームのI1430/I1650比は、1.21±0.09であった。一方、n-デカンをリポソーム膜内に含んでいるリポソーム作製法(ジェット水流を用いる特許文献1記載の方法及び界面通過法(文献:Proc Natl Acad Sci U S A. 2003Sep16;100(19):10718-10721. 「Engineering asymmetric vesicles」)のリポソームではI1430/I1650比は、それぞれ2.19±0.73及び1.74±0.28であった。よって、本発明の方法で作製したリポソームは静置水和法のI1430/I1650比に近い値を示していたので、リポソーム膜内のn-デカンがきわめて少ないことが分かった。さらに、縦軸にI1430/I1650比を横軸にデカン/DOPC濃度を取った検量線(図6)から、直径10 μmのリポソーム膜内のn-デカン量を算出したところ、最大で25 fgのn-デカンが含有されていることが分かった。この量ではn-デカン層を形成が不可能であるので、リポソーム中にn-デカン層が含まれないことが定量的に明らかになった。
本発明の方法によれば、有機溶媒を含まない、サイズが均一なリポソーム集団を容易に製造することができる。得られたリポソーム集団は、生体膜と同様、有機溶媒層を含まないので、これを用いて創薬スクリーニング等を的確に行うことができる。また、本発明の方法により得られるリポソーム集団をDDSに用いる場合にも、生体に有害な有機溶媒層が存在しないので安全である。
10 基板
12 隔壁
14 ウェル(第1のチャンバー)
16 ウェル(第2のチャンバー)
18 貫通孔
20 脂質溶液
22 マイクロピペット
24 水溶液の液滴
26 キャピラリー先端のノズル部
28 ジェット水流
30 脂質二重膜のチューブ
32 有機溶媒
34 有機溶媒層
36 有機溶媒層を持ったリポソーム
38 有機溶媒層を持たないリポソーム

Claims (5)

  1. 直径が10μm〜1000μmである貫通孔を介して互いに連通する第1及び第2のチャンバーを具備するリポソーム作製器具を準備する工程と、
    前記第1のチャンバーに第1の脂質溶液を入れ、前記第2のチャンバーに第2の脂質溶液を入れる工程と、
    前記第1のチャンバーに、第1の比重増加剤を含む第1の水溶液を入れ、前記第2のチャンバーに、第2の比重増加剤を含む第2の水溶液を入れて前記貫通孔を塞ぐ平面脂質二重膜を形成する工程と、
    前記第1のチャンバー内において、先端部の内径が10μm〜100μmのキャピラリーから、150kPa〜600kPaの圧力で、2ミリ秒〜20ミリ秒の時間、前記第1の水溶液をジェット水流として噴射し、該ジェット水流を前記平面脂質二重膜に当てて前記第2のチャンバー内にリポソームを生成させる工程と、
    生成されたリポソームのうち、有機溶媒層を含まないリポソームを選択的に回収する工程とを含み、
    前記第1の比重増加剤の分子量が前記第2の比重増加剤の分子量よりも大きく、
    前記第1の水溶液中の前記第1の比重増加剤のモル濃度と、前記第2の水溶液中の前記第2の比重増加剤のモル濃度が実質的に同じであり、前記第1の水溶液の比重が前記第2の水溶液の比重よりも大きく、
    前記第2の水溶液の比重は、有機溶媒層を含むリポソームが浮遊し有機溶媒層を含まないリポソームが沈降する比重であり、有機溶媒層を含まないリポソームを選択的に回収する前記工程は、第2のチャンバー内に沈降したリポソーム集団を回収することにより行う、有機溶媒層を含まないリポソーム集団の製造方法。
  2. 前記第1の比重増加剤及び前記第2の比重増加剤は、互いに重合度が異なる糖である請求項1記載の方法。
  3. 前記第1の比重増加剤が二糖類であり、前記第2の比重増加剤が単糖類である請求項2記載の方法。
  4. 前記第1の比重増加剤がスクロースであり、前記第2の比重増加剤がグルコースである請求項3記載の方法。
  5. 前記第1の水溶液中の前記第1の比重増加剤の濃度が250mM〜1Mである請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
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