JP2009242943A - マグネシウム基複合材料 - Google Patents

マグネシウム基複合材料 Download PDF

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Takanori Igarashi
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Abstract

【課題】 常温のみならず高温でも強度特性に優れるなどの優れた性能を有するマグネシウム基複合材料を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるマグネシウム基複合材料は、マグネシウム合金と添加材との固相反応により得られたマグネシウム基複合材料であって、前記添加材は希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上であり、前記固相反応により生成した金属間化合物を含むことを特徴とする。該マグネシウム基複合材料中には、金属間化合物とともに添加材が分散していることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は固相反応により生成された微細な金属間化合物が分散したマグネシウム基複合材料に関し、特に常温のみならず高温でも高い引張強さを有するマグネシウム基複合材料に関する。
マグネシウムは、比重が1.74と非常に軽く、また、比強度や比剛性がアルミや鋼よりも優れていることから、自動車、家電製品等の構造用部品として利用が拡大している。しかしながら、強度特性や耐熱性などにおいて十分とは言えず、マグネシウム合金をエンジン部品などの加熱を受ける構造部材に用いようとする場合には改善が望まれていた。
例えば、特許文献1には、重量基準で1〜8%の希土類元素及び1〜6%のカルシウムを含み、素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が30μm以下である高強靭性マグネシウム基合金が記載されている。このマグネシウム基合金は、次のようにして製造される。
(1)重量基準で1〜8%の希土類元素及び1〜6%のカルシウムを含むマグネシウム基合金インゴットを鋳造法で作製し、これを切削加工などにより原料粉体を得る。
(2)原料粉体に対して100〜300℃で塑性加工を繰返し行う(例えば、金型に粉体を充填した状態で圧縮と押し込みとを交互に繰返し行う)ことにより強加工歪を付与して、原料粉体を機械的に粉砕し、かつ素地を構成するマグネシウム結晶粒を微細化する。同時に、鋳造によりインゴット中に形成されていた針状の金属間化合物も微細に粉砕され、マグネシウム結晶粒内部に分散される。
(3)上記のように塑性加工を施して微細化処理した後、圧縮成形して粉末固化体を作製する。
(4)粉末固化体を300〜520℃に加熱後、直ちに押出し加工して目的とするマグネシウム基合金の棒状素材を得る。
しかしながら、このような方法では、目的とする合金組成のインゴットを鋳造し、これを粉末化して原料粉体とするため、手間やコストがかかる。また、合金組成が均一で良好なインゴットを作製するための鋳造方法が難しく、且つ合金組成を均一にできる元素組成範囲が制限されるという問題があった。
また、特許文献1には、鋳造中にCaや希土類元素(RE)がAlやMgとの間で熱安定性に優れる金属間化合物(例えば、AlCaやMg−RE化合物、Al−RE化合物など)を形成し、これが上記のように微細化されて素地中に分散されることでマグネシウム合金の耐熱性が向上することが記載されている。例えば、特許文献1には150℃における引張強さが記載されている。
しかしながら、特許文献1において、150℃における引張強さは150MPaに満たず、また、より高温での引張強さも満足できるものではない。さらに、特許文献1には、希土類元素やカルシウムが上記適性範囲を超えると靭性や引張強さが低下することが記載されており、希土類元素やカルシウムの増量による効果の向上には限界がある。
このように、鋳造などの溶融法により形成された金属間化合物を含むマグネシウム合金を微細化した後に押出しする特許文献1においても、十分満足のいくものは得られていない。
一方、特許文献2には、SiOを添加材として用い、機械的に固相反応させて金属間化合物MgSiを形成し、耐熱性を向上させることが記載されている。具体的には、マグネシウム合金チップに添加材としてSiO粉末を混合し、これを固相状態で微細分散化後、さらに押出し加工することにより、微細化されたマグネシウム合金の結晶粒界上に金属間化合物であるMgSiが微細に分散されたマグネシウム基複合材料が得られる。本方法では、溶融法で製造したものとは異なり、マグネシウム合金の粒界内に分散化合物は存在せず、結晶粒界に存在している。
しかしながら、SiO粉末を用いても、高温強度に関してまだ十分満足のいくものではなかった。
特開2006−2184号公報 特開2007−51305号公報
本発明は、前記背景技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、常温のみならず高温でも高い引張強さを有するなど優れた性能を発揮し得るマグネシウム基複合材料を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討を行った結果、マグネシウム合金にLaを添加材として混合し、この混合体を固相状態で機械的に微細化処理した後に、所定の温度範囲に加熱すると、固相反応を生じ、その結果、結晶粒が微細化されたマグネシウム合金の組織中に反応生成物である金属間化合物の粒子が微細に分散されたマグネシウム基複合材料が得られ、このマグネシウム基複合材料は常温強度のみならず高温強度においても非常に優れることを見出した。さらに所定の温度範囲に加熱中又は加熱後に押出しなどの塑性加工を行うことにより、より品質的に安定して常温強度及び高温強度が得られることも見出した。
特許文献2のように、SiOを添加材として用いる固相反応によりMgSiを形成できるのは、Siに対するMgの還元作用による。すなわち、酸化物の標準生成自由エネルギー△Gと温度との関係を示すエリンガム線図では、常温〜2500℃の広い温度領域において、SiOの線図がMgOの線図よりも上側にあり、SiOの標準生成自由エネルギーはMgOの標準生成自由エネルギーよりも大きい(日本金属学会編、改訂2版金属データブック、p.90、1984年参照)。よって、MgによるSiOの還元は発熱反応であり、これは自発的に進行して金属間化合物であるMgSiが形成される。
一方、MgOよりも標準生成自由エネルギーの小さな酸化物(例えばLa)を添加材として用いた場合には、Mgによる該酸化物の還元は吸熱反応であるため、金属間化合物の形成は理論上は困難である。
しかしながら、驚くべきことに、本発明者らが検討を行った結果、マグネシウム合金にLaを添加材とした場合には、Laが還元されて金属間化合物(Mg17Laなど)が形成されることが判明したのである。
また、本発明者らは、Laの代わりに他の希土類金属の酸化物や、他の特定の金属化合物を用いた場合にも同様に固相反応可能であることも見出した。
AlCaなどが熱安定性に優れることは知られているが、前記特許文献2には、希土類金属化合物やMg以外のアルカリ土類金属化合物を添加材として用い、固相法によりマグネシウム合金中に金属間化合物を生成すること、これにより常温のみならず250℃という高温においても高い強度を有するマグネシウム基複合材料が得られることは記載されていない。これは、本発明者らにより初めて見出された新規な知見であり、このような新規な知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マグネシウム合金と添加材との固相反応により得られたマグネシウム基複合材料であって、
前記添加材は希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上であり、
前記固相反応により生成した金属間化合物を含むことを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、マグネシウム基複合材料中に前記金属間化合物とともに添加材が分散していることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、マグネシウム合金がAlを含有するマグネシウム合金であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、前記金属間化合物が、希土類金属、Sr、Ba又はCaと、Al又はMgとの金属間化合物であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、
マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化し、
この微細化混合体又はその圧粉体を融点未満の温度で熱化学反応させることにより得られたことを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記複合材料において、前記微細化混合体又はその圧粉体を350〜550℃に加熱して熱化学反応させることにより金属間化合物を生成したことを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、熱化学反応後及び/又は熱化学反応中に塑性加工することを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、前記複合材料において、
マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化し、
この微細化混合体又はその圧粉体を融点未満の温度で塑性加工することにより得られたことを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記複合材料において、塑性加工が押出しであることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記複合材料において、押出し温度が350〜550℃であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、固相反応させるマグネシウム合金と添加材との混合体中、添加材が1〜20vol%となるように用いることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、金属間化合物分散粒子の最大粒径が5μm以下であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、添加材分散粒子の最大粒径が5μm以下であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、マグネシウム合金の最大結晶粒が20μm以下であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、Al12Mg17を含まないことを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の複合材料において、20℃における引張強さが400MPa以上で、且つ250℃における引張強さが100MPa以上であることを特徴とするマグネシウム基複合材料を提供する。
また、本発明は、マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化した微細化混合体又はその圧粉体であって、
前記添加材は希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上であり、
融点未満での加熱により金属間化合物を生成することを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料を提供する。
また、本発明は前記材料において、加熱温度が350〜550℃であることを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の材料において、微細化処理されるマグネシウム合金と添加材との混合体中、添加材が1〜20vol%となるように用いたことを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料を提供する。
また、本発明は前記何れかに記載の材料において、焼結用である熱化学反応用材料を提供する。
本発明は前記何れかに記載の材料において、押出し用である塑性加工用材料を提供する。
なお、本願特許請求の範囲及び明細書中では「マグネシウム合金」という用語を純マグネシウム金属も含めた意味で用いる。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料は、結晶粒が微細化されたマグネシウム合金の組織中に、固相反応により生成した微細な金属間化合物粒子が分散し、このような分散粒子によって、常温のみならず高温でも強度特性が顕著に改善される。そして、金属間化合物粒子とともに微細な添加材粒子が分散することによりさらに強度特性が向上する。また、酸化物である添加材粒子の存在は耐磨耗性にも寄与する。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料は、比較的安価な原料から溶融せずに固相反応により製造できるので、鋳造などの溶融法で得られるマグネシウム基複合材料に比して簡便で経済的であり、また組成の自由度が高い。
また、マグネシウム合金と添加材との混合体を微細化処理した微細化混合体又はその圧粉体は、例えば、熱化学反応用材料や、押出しなどの塑性加工用材料として、高強度マグネシウム基複合材料の製造に利用できる。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料の製造において用いられる微細化装置の一例を示す概略構成図である。 本発明にかかるマグネシウム基複合材料の製造における微細化工程の一例を示す説明図である。 本発明にかかるマグネシウム基複合材料の製造における微細化工程の一例を示す説明図である。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料の製造工程の一例を示す説明図である。 15vol%Y添加AM60B合金から得られた押出し材のX線回折図である。 10vol%La添加AZ31B合金から得られた押出し材のX線回折図である。
10vol%La添加AZ31B合金から得られた押出し材のAESイメージ(20000倍)である。 10vol%La添加AZ31B合金から得られた押出し材(微細化処理回数0回)のX線回折図である。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料は、結晶粒が微細なマグネシウム合金の組織中に微細な金属間化合物粒子が分散されたマグネシウム基複合材料であり、これはマグネシウム合金と、添加材との固相反応により得られるものである。
代表的には、Al含有マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化し、その後、融点未満、好ましくは350〜550℃の温度で熱化学的に反応させるという固相反応法により得ることができる。また、強度などの点から、熱化学反応中及び/又は熱化学反応後に塑性加工を行うことが好ましい。塑性加工としては、押出し、鍛造、圧延、引抜き、プレスなど公知の加工の1種以上が挙げられるが、好適な例としては押出しが挙げられる。
<マグネシウム合金>
本発明において出発原料として用いるマグネシウム合金としては、純Mgの他、主成分であるマグネシウムと、その他元素とを含む合金が挙げられる。
マグネシウム合金の好適な例として、Al含有マグネシウム合金が挙げられる。このようなAl含有マグネシウム合金としては、主成分であるマグネシウムにAlが合金化されたマグネシウム合金(Mg−Al系合金)が挙げられる。一般によく知られているものとしては、Mg−Al−Mn系合金(AM系)、Mg−Al−Zn系合金(AZ系)などがある。
なお、Alはマグネシウム合金中に合金化されずに単に混合されていてもよい。例えば、Alが合金化されていないマグネシウム合金(純マグネシウムでもよい)及びAlが合金化されたマグネシウム合金から選ばれる一種以上と、Alとの単純混合物をAl含有マグネシウム合金として用いることもできる。また、Alを混合して用いる場合、純アルミニウムの他、特に問題のない限り、アルミニウムを主成分とする合金(アルミニウム合金)などをAl源として用いてもよい。
Alの含有量は、目的に応じて適宜調節されるが、通常、Al含有マグネシウム合金中1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
また、マグネシウム合金には、Zn、Mn、Zr、Li、Ag、RE(RE:希土類元素)などMgやAl以外の元素が含まれていてよい。マグネシウム合金中におけるMgやAl以外の元素の総和は、通常10質量%以下であり、典型的には0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
マグネシウム合金の形状、サイズは特に限定されず、粉末状、粒状、塊状、チップ状などが挙げられるが、例えば、平均粒子径0.5mm〜5mm程度のチップまたは粒状体が簡便に用いられる。
<添加材>
本発明で用いる添加材としては、希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上を用いることができる。希土類金属としては、例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Yb、Lu、あるいはこれら元素を含むミッシュメタルが挙げられる。
添加材の形状、サイズは特に限定されず、例えば、平均粒子径5μm〜100μm、さらには10μm〜50μmの粉末が簡便に用いられる。
添加材量は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されるものではない。通常は、微細化処理される混合体全成分中に占める添加材の割合として1vol%以上で効果が発揮されるが、好ましくは5vol%以上、さらに好ましくは7vol%以上である。添加材量が少なすぎるとその効果が低くなる。一方、過剰に配合しても増量に見合った効果の増大は期待できず、また、その他の特性に悪影響を及ぼすことがあるので、20vol%以下、さらには15vol%以下とすることが好ましい。
なお、添加材量は、微細化される混合体をその全成分からなる空隙のない一固体であると見なしたときの混合体中の添加材の割合(vol%)を意味し、マグネシウム合金及び添加材の真密度とその配合質量とから、下記式により算出されるものである。
Figure 2009242943
例えば、AM60B合金(真密度1.79g/cm)90質量部、及びLa(真密度6.5g/cm)10質量部(Laとして約8.5質量部)の混合体において、この混合体中のLaは約3.0vol%である。
また、マグネシウム合金中の金属成分Aと添加材中の金属成分Bとが固相反応により金属間化合物AaBbを生成する場合、反応性などの点から、マグネシウム合金と添加材との混合体中におけるB/Aのモル比がb/a以上となるように、添加材を用いることが好ましい。
なお、本発明においては、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、その他の化合物を補助的に添加することもできる。このような補助的添加材として、例えば酸化カルシウムが挙げられる。
本発明の添加材にCaOを併用し、その少なくとも一部をマグネシウム合金の金属成分と固相反応させ、熱安定性に優れる金属間化合物(例えばAlCa)を生成させれば、マグネシウム基複合材料の強度特性や耐熱性をさらに改善することが可能である。
このような補助的添加材の添加量としては、微細化処理される混合体に必要とされる材料特性に応じて設定すればよいが、過剰に配合しても増量に見合った効果の増大は期待できず、また、その他の特性に悪影響を及ぼすことがあるので、20vol%以下、さらには15vol%以下とすることが好ましい。
その他にも、マグネシウム合金に対する公知の強化材を添加することもできる。
<製造方法>
本発明にかかるマグネシウム基複合材料の好適な製造方法について、以下に代表例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明にかかるマグネシウム基複合材料は、図4の概略図に示されるように、
(a)微細化工程と、
(b)熱化学反応工程と、
(c)塑性加工工程と、
を備えた製造方法で製造することが好適である。
(a)微細化工程:
マグネシウム合金と添加材との混合体の微細化工程では、混合体が機械的に粉砕されるとともに、Mg合金結晶粒が微細化される。このような微細化方法としては、混合体成分に強歪み加工を与えてMg合金結晶粒ならびに添加材粒子を微細化できる方法であれば特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、後の金属間化合物の形成を促進し、結晶粒の粗大化を抑制し、室温〜高温の広い範囲において高強度とするためには、Mg合金結晶粒及び添加材が十分且つ均一に微細化されることが望ましい。
好適な微細化方法としては、押し固め及び押し崩しによる方法、特に剪断力及び/又は摩擦力を伴う押し固め及び押し崩しによる方法が採用できる。
また、微細化工程においては、取り扱い性や反応性などの点から、最後に圧縮成形を行って圧粉体とすることが好ましい。
例えば、マグネシウム合金チップまたは粒状体と添加材粉末との混合体を、互いに交差して連なる複数の直線状の成形穴を有する型内に収容した状態で、上記成形穴内に挿入された押圧部材の前進、後退に伴い、上記混合原料を一の成形穴で押し固め、更にこの押し固めた混合原料を押し崩しながら他の成形穴へと送り込み、この押し固め、押し崩しを繰り返して微細化し、最後に押し固めることにより、圧粉体を作製する、という方法が好適である。
このような微細化工程は、特に加熱せずに環境温度下でも十分可能である。
以下、好適な実施形態についてさらに説明する。
本実施形態にかかる微細化工程では、図1に示したような装置を用いてマグネシウム合金チップと添加材粉末との混合体を微細化し、最後に圧縮成形して圧粉体を得ることが好適である。図1の装置によれば、混合体が交差部を通過する際にほぼ全面領域で大きな剪断力、摩擦力を受けるので、Mg合金結晶粒及び添加材の微細化・分散化が均一に効率よく行われる。
図1に示した装置10は、直方体形状の型12を備えており、型12には直線状の4つの成形穴14a,14b,14c,14dが形成されている。各成形穴14a〜14dは同一の断面形状(好ましくは同一径の断面円形)をなしており、型12の中心の交差部15にて放射状に連結されている。また、各成形穴14a〜14dは、この順序で周方向に90°の角度間隔をなして同一平面上(垂直面または水平面上)に配置されている。
成形穴14a〜14dには、それぞれ各成形穴14a〜14dとほぼ等しい断面形状の押圧部材16a〜16d(第1〜第4の押圧部材)がスライド可能に挿入されており、各成形穴に沿って前進、後退するようになっている。これらの押圧部材16a〜16dの前進、後退は駆動手段18a〜18dによって行われる。駆動手段は油圧シリンダ等で構成される。また、制御手段20では各該駆動手段18a〜18dの圧力情報、位置センサからの情報等を基に、各駆動手段の制御を行う。
まず、図2(a)に示すように、押圧部材16aを抜いた状態で混合体を成形穴14aに装填する。この際、押圧部材16b、16c、16dの前進方向側(型の内部へ向う方向)側の端部は、交差部15に隣接する成形穴14b、14c、14dの奥端と一致する位置にある(以下、この位置を前進位置と呼ぶ)。各押圧部材16b、16c、16dは、駆動手段18b、18c、18dによって後退(型の外部へ向う方向)不能な状態で拘束され、実質的に固定された状態にある。そして、押圧部材16aを成形穴14aに挿入した後、以下のシーケンス制御を開始する。
最初に押圧部材16aについて押し固め工程を実行する。押圧部材16aを駆動手段18aにより成形穴14a内部へ押し込む。すると他の押圧部材16b〜16dは固定されているので混合体は成形穴14b〜14dに向わずに成形穴14aにおいて押し固められ、円柱形状の塊になる。この塊は所定の強度を持っているが、比較的脆いものである。この押し固め状態は所定の加圧状態で短時間、例えば2秒程度維持される。
次に押圧部材16aについて押し崩し工程を実行する。駆動手段18aにより押圧部材16aを更に高い圧力で押し込むと同時に、駆動手段18bにより押圧部材16bを後退可能にする。すると、図2(b)、(c)に示すように押圧部材16aは前進位置まで押し込まれ、混合体は成形穴14aから交差部15を経て成形穴14bへと流動し、この過程で押し崩される。また、押圧部材16bは流れ込んだ混合体に押されて後退する。そして、押圧部材16aの前端が成形穴14a奥端に達したときに押し崩し工程が完了する。
次に押圧部材16bについて上記同様の押し固め工程を実行する。つまり、図2(d)に示すように、押圧部材16a、16c、16dを前進位置で固定し、押圧部材16bを駆動手段18bにより内部へ押し込むことで、混合体を押し固める。
次に押圧部材16bについて上記同様の押し崩し工程を実行する。つまり、押圧部材16cを後退可能な状態(フリーな状態)にし、押圧部材16bを押し込む。すると、図2(e)、(f)に示すように押圧部材16bは前進位置まで押し込まれ、混合体は成形穴14bから交差部15を経て成形穴14cへと流動し、この過程で押し崩される。また、押圧部材16cは流れ込んだ混合体に押されて後退する。
同様に押圧部材16cについて押し固め工程を実行する。つまり、図2(g)に示すように押圧部材16a、16b、16dを前進位置で固定し、押圧部材16cを駆動手段18cにより型12内部へ押し込むことで、混合体を押し固める。
次に押圧部材16cについて上記同様の押し崩し工程を実行する。つまり、押圧部材16dを後退可能な状態(自由な状態)にし、押圧部材16cを押し込む。すると、図2(h)、(i)に示すように押圧部材16cは前進位置まで押し込まれ、混合体は成形穴14cから交差部15を経て成形穴14dへと流動し、この過程で押し崩される。また、押圧部材16dは流れ込んだ混合体に押されて後退する。
同様に押圧部材16dについて押し固め工程を実行する。つまり、図2(j)に示すように押圧部材16a、16b、16cを前進位置で固定し、押圧部材16dを駆動手段18dにより型12内部へ押し込むことで、混合体を押し固める。
次に押圧部材16dについて上記同様の押し崩し工程を実行する。つまり、押圧部材16aを後退可能な状態(自由な状態)にし、押圧部材16dを押し込む。すると、図2(k)、(l)に示すように押圧部材16dは前進位置まで押し込まれ、混合体は成形穴14dから交差部15を経て成形穴14aへと流動し、この過程で押し崩される。また、押圧部材16aは流れ込んだ混合体に押されて後退する。
図2(a)〜(l)に示された工程を任意回数繰り返し行って、均一且つ十分に微細化・分散化した後、最後に押し固め工程を行うことで圧粉体を得る。
圧粉体形成のために加える圧力は、特に制限されるものではないが、例えば、250kg/cm〜400kg/cmとすることができる。
このように、出発原料である混合体は、押し固め工程により一旦押し固められた後で、押し崩し工程で交差部を通過する際にほぼ全断面領域で大きなせん断力、摩擦力を受けて押し崩されるため、Mg合金結晶粒及び添加材の微細化・分散化が均一に効率よく行われる。
また、より均一な微細化、分散化を行うために、上記押し固め及び押し崩し工程の間に図3に示すような攪拌工程を行うことが好適である。
まず、図3(a)に示すように、押圧部材16cを前進位置で固定状態にし、押圧部材16b、dは後進可能なフリーの状態にする。この状態で押圧部材16aを押し込むと、図3(b)、(c)に示すように、混合体は成形穴14aから交差部15を経て成形穴14b、14dへ流れ込む。すると、押圧部材16bと16dは混合体に押されて後退する。
押圧部材16aを前進位置にまで押し込んだ後、図3(d)に示すように押圧部材16aを固定状態、押圧部材16cをフリーな状態にし、押圧部材16bと16dを押し込む。すると、図3(e)、(f)に示すように成形穴14b、14dに存在した混合体は、成形穴14cに流れ込む。ここで、押圧部材14cは混合体に押されて後退する。
押圧部材14b、14dを図3(f)に示すようにその前進位置にまで押し込んだのち、図3(g)に示すように押圧部材16b、16dを固定状態、押圧部材16aをフリーの状態にする。そして、図3(h)、(i)に示すように押圧部材16cをその前進位置にまで押し込むと、混合体は成形穴14cから交差部15を経て成形穴14aに至り、押圧部材14aは混合体に押されて後退する。
このような攪拌工程を上記押し固め及び押し崩し工程の間に設けることで、より効率よく微細化、分散化することができる。
上記実施形態では、型に成形穴を4つ設けた構成の装置における例を示したが、これに限定されず、成形穴を複数、例えば2〜6つ設けた構成の装置を用いてもよい。また、型を固定して押圧部材毎に駆動手段を設ける装置構成の場合を説明したが、駆動手段を一つにして型を回転させる構成の装置を用いてもよい。
このような微細化工程の例として、例えば特開2005−248325号公報や前記特許文献2などを参照することができる。
(b)熱化学反応工程:
マグネシウム合金と添加材とを上記のように微細化処理した後に、融点未満の適当な温度で加熱することで熱化学反応を生じさせて、金属間化合物を生成することができる。このような熱化学反応を生じる加熱温度としては、原料の種類などにもよるが、通常350℃〜550℃、好ましくは400〜500℃であった。
従って、微細化混合体又はその圧粉体を、上記温度範囲に加熱して熱化学反応させることにより金属間化合物を生成することが好適である。
以上のように微細化工程及び熱化学反応工程を経て得られたマグネシウム基複合材料では、結晶粒が微細化されたマグネシウム合金の組織中に、金属間化合物の微粒子が分散されている。後述の実施例でも示すように、金属間化合物は微細化工程ではなく、その後の熱化学反応工程で生成される。しかし、微細化工程を行わなかった場合には、熱化学反応工程を行っても金属間化合物を形成することはできない。
よって、微細化工程と熱化学反応工程との複合作用によって固相反応を生じ、理論的には困難な金属間化合物の形成が進行するものと考えられる。
(c)塑性加工工程:
次に、上記で得られたマグネシウム基複合材料をより高強度にするため、公知の装置を用いて塑性加工を行う。前述した熱化学反応工程における加熱によって金属間化合物粒子が生成され、さらに塑性加工を行うことで粒子同士が強固に密着・接合固化し、微細なマグネシウム合金組織中に微細な金属間化合物粒子が分散した高強度のマグネシウム基複合材料が得られる。
また、塑性加工工程においては、温度を加えながら塑性加工を行うことで、上記した熱化学反応工程と塑性加工工程を同時に行うことができる。
塑性加工としては、例えば、押出し加工が好適である。この場合、押出し条件は、粒子同士の密着・接合固化が充分行われるように、適宜設定可能である。
例えば、押出し比は、通常2以上、さらには5以上、好ましくは10以上である。
また、上記したように、塑性加工としての押出し加工と熱化学反応工程とを同時に行う場合には、押出し温度は、融点未満で設定可能であるが、金属間化合物生成の点、さらには押出し性などの点から、350〜550℃、さらには400〜500℃の範囲とすることが好ましい。
また、微細化混合体又はその圧粉体は、金属間化合物が生成可能な温度で押出しなどの塑性加工することにより、結晶粒が微細化されたマグネシウム合金中に微細な金属間化合物粒子が分散した高強度マグネシウム基複合材料とすることができるので、塑性加工用材料として好適に利用可能である。
また、上記微細化混合体又はその圧粉体を金属間化合物が生成可能な温度で加熱して少なくとも一部の添加材を固相で熱化学反応させて金属間化合物を生成させた後、塑性加工することもできる。
また、微細化混合体又はその圧粉体は、固相で熱化学反応させて金属間化合物を含有するマグネシウム基複合材料を製造するための熱化学反応用材料として利用することもできる。例えば、複雑な形状の最終製品を直接製造する場合や、微細化混合体の圧粉体が押出し性などの塑性加工性、あるいは二次加工性が不十分であるような場合、焼結は有効な手段の一つであるが、本発明の微細化混合体又はその圧粉体は、焼結用材料としても利用可能である。焼結法としては、例えば、雰囲気焼結法、ホットプレス、HIP(熱間等方加圧式焼結法)、PCS(パルス通電焼結法)、SPS(放電プラズマ焼結法)などが挙げられる。焼結は、加圧下又は非加圧下で行うことができる。
焼結用材料として圧粉体を使用するか粉末を粉末冶金用に用いるかは用途に応じて設計できる。焼結用粉体は微細化混合体又はその圧粉体をボールミルなど公知の粉砕器、方法により100μm以下に粉砕し、更に必要であれば篩分けして利用することができる。
<マグネシウム基複合材料>
本発明のマグネシウム基複合材料において、常温強度の点からは、マグネシウム合金の結晶粒は微細化されていることが好ましい。具体的には、例えば、金属組織の顕微鏡写真から求めたマグネシウム合金の最大結晶粒径が20μm以下、さらには10μm以下であることが好適である。
マグネシウム合金の結晶粒が微細化していると高温では粒界すべりを生じやすくなり強度が低下するが、本発明においては、微細な金属間化合物粒子が結晶粒界に分散しているので、高温においても高い強度を発揮することができる。
マグネシウム基複合材料中において、金属組織の顕微鏡写真から求めた金属間化合物粒子の最大粒径は通常5μm以下、典型的には2μm以下、さらには1μm以下である。
本発明のマグネシウム基複合材料では、強度などの点から、未反応の添加材の微粒子も分散していることが好ましい。また、添加材が酸化物微粒子として分散している場合には、添加磨耗性を向上することができる。なお、添加材として炭酸塩を用いた場合も、固相反応中に酸化物に変換されて分散している可能性がある。
一般的に、金属酸化物は当該金属に比して耐熱性が高い。よって、酸化物の微粒子がマグネシウム基複合材料中に分散することにより、粒界すべりに対する抵抗となって強度が向上するとともに、耐熱性、例えば高温における引張強さが向上する。また、ヤング率や0.2%耐力、硬度の向上にも寄与する。一方、平均線膨張係数に対しては低下効果がある。
また、酸化物粒子が存在することにより、加熱によるマグネシウム合金結晶粒の粗大化による機械的性質の低下も抑制される。
マグネシウム基複合材料中において、金属組織の顕微鏡写真から求めた添加材粒子の最大粒径は通常5μm以下、典型的には2μm以下、さらには1μm以下である。
本発明においては、例えば、比重が1.9〜2.0で、しかも引張強さが20℃で400MPa以上、150℃で280Mpa以上、250℃で100MPa以上という高強度マグネシウム基複合材料を得ることができる。
また、従来のマグネシウム合金では、20℃でのヤング率が通常約45GPaであるのに対し、本発明によれば、48GPa以上、さらには50GPa以上、特に55GPa以上の性能を得ることができる。
また、20℃での0.2%耐力では、350MPa以上、さらには400MPa以上の性能を得ることができる。
また、20℃におけるビッカーズ硬さも85以上とすることができ、さらには100以上、特に120以上とすることもできる。
一方、20℃〜200℃の線膨張係数は約2×10−5/K〜2.6×10−5/Kと、従来のマグネシウム合金に比して低下させることができる。
本発明のマグネシウム基複合材料は、市販されているマグネシウム合金と添加材とを用いて鋳造法などの溶融法ではなく固相法で製造でき、目的とする合金組成のインゴット化や粉末化が不要で、添加材量の制限が少ない。また、Ca化合物の場合は安価且つ軽量であることから、これを利用できることは、コストや軽量性など、工業的メリットが非常に大きい。
本発明のマグネシウム基複合材料は強度特性、特に高温強度に優れているので、これらの特性が要求される各種用途に好適に利用できる。例えば、これに限定されるものではないが、自動車のエンジン周り部品(ピストン、バルブリテーナー、バルブリフターなど)などに適用できる。
本発明のマグネシウム基複合材料は、耐熱性が高いので、目的とする部品形状にさらに塑性加工された場合などにおいても、その特性を十分発揮できる。
以下、具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明で用いた試験方法及び材料と試薬は次の通りである。
(0.2%耐力、引張強さ)
JIS Z 2201「金属材料引張試験片」に基づき試験片として、平行部直径5mm、標点間距離25mmの形状(JIS 14A号試験片形状に準拠)に切り出したものを用いた。JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に基づき室温(約20℃)ならびに250℃で引張試験を行った。引張試験機は加熱炉付きオートグラフ万能試験機((株)島津製作所製、引張最大荷重100kN)を用い、試験機ストローク速度8.4mm/min(変位制御)で行った。なお、250℃での引張試験は、試験片をオートグラフ万能試験機にチャッキングしてから加熱炉で試験片を包み込み、試験片平行部近傍に、耐熱テープで熱電対を貼り、試験片が250℃になった後行った。
なお、0.2%耐力は上記引張試験方法に規定するオフセット法によって測定した。
(X線回折図)
X線回析図は、RAD−3Bシステム(理学電機(株))で角度 30°〜80°、サンプリング幅 0.020°、スキャン速度1°/min、線源CuKα、電圧40KV、電流値30mA で採取した。
(SEM写真)
SEM写真は、走査型電子顕微鏡 ABT−60(株式会社トプコン製)により観察、撮影した。
(AESイメージ)
AESイメージは、走査型オージェ分光分析装置PHI700(アルバック・ファイ 株式会社製)により観察、撮影した。
(硬さ)
マイクロビッカース硬さ試験機((株)島津製作所製、HMV−2000)を用いて、圧入荷重100gにて6秒間圧入し、圧痕の大きさを測定し、室温(約20℃)で硬さを測定した。
(線膨張係数)
圧縮加重法による。試験片形状φ5×15mmに切り出したものを用い、熱機械分析装置((株)リガク製 TMA8310)により、昇温速度5℃/min、室温(約20℃)〜355℃の温度範囲で圧縮荷重98mNをかけて、温度変化による伸びを測定し、25℃での線膨張係数を計算した。
(ヤング率)
JIS Z2280「金属材料の高温ヤング率試験方法」に準じて、超音波パルス法により20℃のヤング率を測定した。試験機は、バースト波音速測定装置(RITEC社製、RAM−5000型)を用いた。
(材料及び試薬)
マグネシウム合金チップはいずれの種類も、日鉱商事株式会社製 粒度<2.5mmを使用した。添加材は、以下を使用した。但し、4Nは、99.99%、2Nは99% を表す。
酸化カルシウムCaO:和光純薬株式会社製、型番:036-19655、純度98%
酸化ランタンLa2O3は、高純度化学研究所製 コード番号LAO02PB、純度4N
酸化ストロンチウムSrOは、高純度化学研究所製 コード番号SRO02PB、純度98%
酸化イットリウムY2O3 高純度化学研究所製 純度4N
酸化セリウムCeO2は、 高純度化学研究所製 純度4N
珪化カルシウムCaSi2は、 高純度化学研究所製 純度2N
炭酸カルシウムCaCO3は、 高純度化学研究所製 純度4N
製造例1 マグネシウム基複合材料の製造
マグネシウム合金チップと添加材粉末とを混合し、混合体を得た。該混合体を上記図1に示した装置によって微細化処理し圧粉体(ビレット)とした。微細化処理回数は、図2(a)〜(l)で示した微細化工程および図3(a)〜(i)の攪拌工程を合わせたものを4回と数えた。
得られた圧粉体を400〜470℃で予備加熱し、コンテナ及びダイス加熱温度400〜470℃、押出し径7mm、押出し比28で押出し成形し、マグネシウム基複合材料からなる押出し材(丸棒)を得た。
上記製造例1に準じて各種マグネシウム基複合材料を製造し、試験を行った。
試験例1 添加材の効果
製造例1において、マグネシウム合金として、ASTM規格のAM60Bを使用し、マグネシウム基複合材料の押出し材(丸棒)を製造した。
Figure 2009242943
表1からわかるように、添加材を用いることによって引張強さが改善され、添加材量の増大に伴って引張強さが向上した。特に、高温(250℃)での引張強さは顕著に向上し、添加材10vol%で無添加の場合の約3〜4倍にも達した。
また、添加材は酸化物のみでなく、珪化物や炭酸塩でも同様な効果が得られた。
Figure 2009242943
表2は、マグネシウム合金としてAZ31B又はAZ61Bを用いて得られた押出し材の結果である。表2からわかるように、種々のマグネシウム合金に対して添加材の効果が認められた。
また、下記表3〜4のように、その他の機械的特性においても添加材を用いることによる改良が可能であった。
Figure 2009242943
Figure 2009242943
以上のことから、添加材量としては、混合体中1vol%程度から添加効果が認められるが、強度などの点から、5vol%以上、さらには7vol%以上とすることが好ましい。
一方、添加材を過剰に添加しても添加量に見合った効果が得られないことがある。また、添加材量が多いほどマグネシウム基複合材料の比重も高くなるので、マグネシウム合金の軽量性という観点からも過剰な添加は望ましくない。従って、添加材量は混合体中20vol%以下、さらには15vol%以下とすることが好ましい。
また、表1〜4に例示したデータから添加材としては、Y,La,Ceなどの希土類、Ca,Srなどのアルカリ土類で同様な添加効果が得られることがわかる。
試験例2 金属間化合物の生成
図5は、試験例1−5の押出し材(AM60B+15vol%Y)のX線回折結果である。図5において、Yのピークとともに金属間化合物であるAlYのピークが認められた。また、MgOのピークも認められた。
また、図6は、試験例2−4の押出し材(AZ31B+10vol%La)のX線回折結果である。図6において、Laのピークは極わずかであり、金属間化合物であるMg17Laのピークが顕著に認められた。また、MgOのピークも認められた。
このように、添加材を用いて得られた押出し材のX線回折図において、出発原料であるマグネシウム合金及び添加材の何れとも異なるピークの出現によって、固相反応を生じて金属間化合物が生成したことが確認された。そして、金属間化合物のピークパターンが既知であれば、それと照合することにより同定できる。
また、電子顕微鏡観察においては微細化されたMg合金の結晶粒界に分散微粒子の存在が認められた。
代表例として、図7に試験例2−4の押出し材のオージェ電子分光分析(AES:Auger Electron Spectroscopy)の結果を示す。図7から、Mg合金の結晶粒は5μm以下に微細化されており、その粒界には2μm以下の微粒子が分散し、この分散粒子はMg17La、ならびにLaであることが確認された。
図8は、試験例2−4(AZ31B+10vol%La)において、微細化処理回数を0回(単純圧縮のみ)とした場合に得られた押出し材のX線回折結果である。図8では、Laのピークが観察されたものの、図6で見られたような金属間化合物Mg17LaやMgOのピークは認められなかった。
また、何れの場合でも、添加材の有無ならびに微細化処理の有無に関わらず、何れの試験例においても、ビレットの状態では金属間化合物やMgOのピークは認められなかった。
このようなことから、金属間化合物の生成が引張強さ、特に高温での引張強さに寄与しており、金属間化合物生成のためには、微細化処理によりマグネシウム合金と添加材とを十分に微細化して活性化しておくことが重要であり、このような混合体が熱化学的に反応して金属間化合物が生成するのではないかと推察された。
また、出発原料として用いたAM60B、AZ31B、AZ61BなどのAl含有マグネシウム合金と添加材とから得られたビレットでは、何れもβ相(Al12Mg17)のピークが認められたが、このようなビレットを押出しして得られた押出し材ではβ相のピークは消失した。β相は高温強度特性の向上を阻害することが報告されており(特開2007−197796号公報)、このようなβ相の消失も本発明のマグネシウム基複合材料の高温強度特性に寄与していることが考えられる。
以上のように、本発明のマグネシウム基複合材料においては、結晶粒が微細化されたマグネシウム合金に固相反応で生じた金属間化合物、さらには添加材が非常に微細に分散されることにより、強度特性や耐熱性などが顕著に改善される。このようなマグネシウム基複合材料は、典型的には、マグネシウム合金と特定の添加材との混合体を固相状態において微細化し、この微細化された混合体を融点未満の温度で熱化学反応すること、更に望ましくは熱化学反応中又は熱化学反応後に塑性加工させることにより得ることができる。また、本発明によればβ相を含まないマグネシウム基複合材料を得ることができる。

Claims (21)

  1. マグネシウム合金と添加材との固相反応により得られたマグネシウム基複合材料であって、
    前記添加材は希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上であり、
    前記固相反応により生成した金属間化合物を含むことを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  2. 請求項1記載の複合材料において、マグネシウム基複合材料中に前記金属間化合物とともに添加材が分散していることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  3. 請求項1又は2記載の複合材料において、マグネシウム合金がAlを含有するマグネシウム合金であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の複合材料において、前記金属間化合物が、希土類金属、Sr、Ba又はCaと、Al又はMgとの金属間化合物であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の複合材料において、
    マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化し、
    この微細化混合体又はその圧粉体を融点未満の温度で熱化学反応させることにより得られたことを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  6. 請求項5記載の複合材料において、前記微細化混合体又はその圧粉体を350〜550℃に加熱して熱化学反応させることにより金属間化合物を生成したことを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  7. 請求項5又は6記載の複合材料において、熱化学反応後に塑性加工することを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  8. 請求項5又は6記載の複合材料において、熱化学反応中に塑性加工することを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  9. 請求項8記載の複合材料において、
    マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化し、
    この微細化混合体又はその圧粉体を融点未満の温度で塑性加工することにより得られたことを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  10. 請求項9記載の複合材料において、塑性加工が押出しであることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  11. 請求項10記載の複合材料において、押出し温度が350〜550℃であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  12. 請求項5〜11の何れかに記載の複合材料において、微細化処理されるマグネシウム合金と添加材との混合体中、添加材が1〜20vol%となるように用いることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  13. 請求項5〜12の何れかに記載の複合材料において、金属間化合物分散粒子の最大粒径が5μm以下であり、添加材分散粒子が存在する場合には添加材分散粒子の最大粒径が5μm以下であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  14. 請求項1〜15の何れかに記載の複合材料において、マグネシウム合金の最大結晶粒が20μm以下であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  15. 請求項4〜14の何れかに記載の複合材料において、Al12Mg17を含まないことを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  16. 請求項1〜15の何れかに記載の複合材料において、20℃における引張強さが400MPa以上で、且つ250℃における引張強さが100MPa以上であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
  17. マグネシウム合金と添加材との混合体を固相状態で機械的に微細化した微細化混合体又はその圧粉体であって、
    前記添加材は希土類金属、Sr又はBaの酸化物、炭化物、珪化物及び炭酸塩、Caの炭化物、珪化物及び炭酸塩から選択される1種以上であり、
    融点未満での加熱により金属間化合物を生成することを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料。
  18. 請求項17記載の材料において、加熱温度が350〜550℃であることを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料。
  19. 請求項17又は18記載の材料において、微細化処理されるマグネシウム合金と添加材との混合体中、添加材が1〜20vol%となるように用いたことを特徴とする熱化学反応用又は塑性加工用材料。
  20. 請求項17〜19の何れかに記載の材料において、焼結用である熱化学反応用材料。
  21. 請求項17〜19の何れかに記載の材料において、押出し用である塑性加工用材料。
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