本発明の実施例を実行するに際して、基礎とするのに好適な市場分析の基本的な考え方を以下に説明する。商品が多種多様化し、また消費者の嗜好も多種多様化した時代になっているが、同種の商品の中からどの商品の付加価値を評価して当該商品を選択するか、また、どの商品群に対して付加価値を認めて消費行動を起こすかは、その時点での消費者の価値観によって左右され、各世代毎に各世代の共通の価値観をマクロ的に掌握するのが市場分析では先ず重要なことである。
消費者の価値観に関し、成長期(例えば経済的に親から自立する前)に形成される各世代毎の共通の基本価値観というものが存在していると考えられる。そして、この基本価値観は世代間で異なると共に、その後の例えば大型倒産や景気の良し悪しなどの事象によって変化し、同じ事象であっても価値観の変化に与える影響は各世代によって異なると考えられる。以下の説明において、基本価値観が形成される時期を「基本価値観形成期」といい、その後の時期つまり価値観が変化する時期を「基本価値観変化期」という。
基本価値観変化期において、社会の安全性を脅かすような例えばテロが起こった場合、基本価値観形成期にそのような経験をしていない世代は、「世の中は安全である」という基本価値観が形成されていると考えることができるから、基本価値観変化期においてテロの脅威を実感した時には「世の中は安全ではない」という価値観に変化するであろう。このことから、例えば、A、B、C、Dの同種の商品が存在し、商品Dが安全に配慮した商品であったとすると、テロが起こる前であれば選択していないと思われる商品Dがテロ後には購入対象になるであろう。つまり、価値観が変化するような出来事が発生したときには、商品の持つ付加価値に対する評価も変化すると考えることができる。これに対して、例えば基本価値観形成期に戦争を経験した世代にあっては、「世の中は安全ではない」という基本価値観を有していることから、基本価値観変化期においてテロが発生したとしても、この世代が有している安全に対する価値観はそれほど影響を受けないと考えられ、テロが起こる前であっても後であっても、安全に配慮した商品Dが購入対象になる、と考えることができる。
図1を参照して、人間は成長期(例えば、経済的に自立する前)に基本価値観が形成され、その後、価値観に影響を及ぼす経済動向や出来事の他に、結婚などのライフステージの変化によって基本価値観が変化すると考え、商品を購入するときの商品の持つ付加価値に対する評価は、その時点の価値観によって左右されると考えられる。そして、成長期に形成された各世代毎の共通の基本価値観は、その後の結婚などのライフステージの変化や経済動向、出来事などによって変化するものの消失するものではなく、基本価値観の一部又は全てが潜在化又は変化しているだけであり、例えば子供が独立した後や定年退職した後には、成長期に形成された各世代毎の共通の本来の基本価値観が顕在化して、この基本価値観によって商品の付加価値を評価する場合も考えられる。
すなわち、人間の価値観は、成長期に各世代毎の共通の基本価値観が形成され、そして、この基本価値観がその後もベースとして存在し続けると考えられる。そして、このベースになる各世代毎の共通の基本価値観は、結婚や育児、子供の成長期、子供の自立、大型倒産や年金制度の崩壊、景気の動向などの影響によって変化するものの消失するものではない、と考えられる。
如上のとおり、基本価値観形成期に作られた価値観を「基本価値観」と呼び、その後の様々なファクタの影響によって変化した価値観を「変動価値観」と呼ぶと、価値観変化期においては、ある事象やライフステージの変化によって基本価値観が変化した変動価値観が生成されて顕在化し、この変動価値観によって商品の付加価値を評価して商品を購入している、と見ることができる。なお、例えば同じ出来事でも、これによる影響の度合いや受け方が各世代によって異なる。
各世代毎の共通した基本価値観は、基本価値観形成期における次のファクタの影響を受けて形成されると考えられ、その代表例を列挙すれば以下のとおりである。
(1)親の価値観の影響;
(2)教育制度(過度な受験競争、ゆとり教育、優劣を付けない評価など);
(3)経済(景気の動向、バブル、恐慌、大型倒産)や社会の出来事(犯罪、テロ、戦争など);
(4)技術(TVの普及、携帯電話の普及、自動車の普及、セダンからワンボックスカーなど)。
例えば同じ出来事であっても、これが発生した年齢は世代によって異なるし、また、影響の受け方も各世代によって異なる。例えば、親の価値観の影響は、成長期が戦中の世代であれば、親の価値観を否定する価値観が形成されるかも知れない。親子関係は兄弟の延長線であると捉えている親の世代であれば、子供は親の価値観を肯定的に受け止めて親の価値観を受け入れながら基本価値観を形成するかも知れない。したがって、親の価値観や成長期の出来事や教育制度による影響を受けながら各世代の基本価値観が形成されるものの、この各世代毎の共通の基本価値観は、影響の度合いや受け方が各世代によって異なることを前提に検証される。
前述したように、各世代毎の共通の基本価値観は、その後の基本価値観変化期において変化する。人間の価値観が変化するようなファクタの代表例を列挙すれば次のとおりである。
(1)経済(景気の動向、バブル、恐慌、大型倒産)や社会の出来事(犯罪、テロ、戦争、年金制度の崩壊、環境破壊など);
(2)技術(TVの普及、携帯電話の普及、);
(3)社会構造(年功序列から実力主義)の変化;
(4)独身、結婚、育児、子供の自立、シニアなどのライフステージの変化。
以下の説明において、価値観に影響を及ぼす出来事や大型倒産などを総括して「事象」と呼ぶことにするが、この事象という用語にはライフステージは含まれない。つまり、「事象」という用語は、各世代毎のマクロ的な共通の価値観に影響を及ぼすファクタのうちライフステージを除く全てのファクタを含むと理解されたい。また、成長期に形成された基本価値観が、その後の基本価値観変化期における事象やライフステージの変化によって変化して変動価値観が形成されるが、例えば同じ事象であっても、その影響の受け方は各世代によって異なると考えられることから、事象やライフステージの変化による影響の受け方や影響の度合いは各世代によって異なることを前提に変動価値観を検証すればよい。この検証を行うに当たってアンケート調査を行うのがよい。
各世代の基本価値観は、基本価値観形成期の事象や親の価値観(子供の成長期の時の変動価値観)、事象及び親の価値観による影響の度合いや影響の受け方と共にデータベースされる(「基本価値観データベース」という)。基本価値観データベースに含まれる各世代の基本価値観データの一例を図2に示す。また、その後、人間の価値観に影響を及ぼしたであろう事象及び当該事象が各世代に及ぼした影響の度合いや影響の受け方が事象毎に単数又は複数のキーワードでタグ付けされてデータベース化される(「事象データベース」)。事象による影響の度合いやどのような影響を受けたかは、各世代にアンケート調査することにより検証することができる。
また、各世代毎の共通の基本価値観が事象によって変化した変動価値観がデータベース化される(「変動価値観データベース」)。この変動価値観の検証のために各世代にアンケート調査するのがよい。変動価値観データベースに含まれる各世代の各変動価値観データの一例を図3に示す。
また、人間の価値観は、独身、結婚、育児、子供の自立、シニアなどのライフステージの変化によって変化するが、この変化の方向は世代間によって大きく異なることはない。例えば、結婚して子供ができればファミリーを大事にするという価値観が発生する。しかし、この価値観がどの程度基本価値観に影響を及ぼすかは世代によって異なる。したがって、ライフステージに関するデータベース(「ライフステージデータベース」)には、独身、結婚、育児などライフステージの変化に伴う一般的な価値観の変化と共に、ライフステージの変化による基本価値観に影響の受け方や影響の度合いは各世代事に検証してデータが作成される。この検証のために紙やWebによるアンケート調査や面接調査するのがよい。
好ましくは、過去のヒットした商品や注目すべき商品の付加価値と、これを購入した各世代の価値観との関連性を分析して、その関連性を含めて商品データとしてデータベース化される(「商品データベース」)。この商品データベースを集積及びその分析精度を高めることにより、人間の価値観と商品の付加価値との因果関係の分析精度を高めることできる。
図4は、本発明に関連する価値観ベルト表について説明するための図である。この図4は、縦軸に年齢(加齢)、横軸に時代をとり、斜め右下に延びるベルトは各世代毎の共通の価値観の変遷を示す。以下の説明では、この斜め右下に延びるベルトを「価値観ベルト」と呼び、図4の表を「価値観ベルト表」と呼ぶことにする。図4では、世代A〜世代Eの価値観ベルトを示してある。世代の区分は、基本価値観を共通するのであれば、例えば10年毎というように一定の範囲で世代を区分する必要はない。すなわち、価値観ベルトの幅はたとえば10年間というように一定の幅で規定してもよいが、基本価値観が共通するのであれば、ある世代は5年間の出生年度で規定し、別の世代は8年間の出生年度で規定し、また、さらに別の世代は12年間の出生年度で規定してもよく、この場合には、価値観ベルトの幅は世代によって異なる状態で価値観ベルト表が作成されることになる。
基本価値観形成期に作られた各世代毎の共通の基本価値観が、その後ライフステージが変わることによって変化する。上述した基本価値観との差別化するために、変化した価値観を「変動価値観」と呼ぶと、価値観ベルト表の各世代の価値観ベルトは、事象によって変化した変動価値観の変遷つまり変動価値観の群を視覚的に表示するものであると言うことができる。つまり、価値観ベルトは、基本価値観と、その後の各世代の変動価値観の群によって構成され、したがって価値観ベルトは基本価値観の変化の履歴であると言うことができると共に、後の説明から分かるように、推測される将来の変動価値観を含めることができる。なお、図4では、年齢によって独身、ファミリー、シニアを区分してあるが、これは一般的な例を説明しているに過ぎない。
図5は、価値観ベルト表の生成、表示を含む市場分析支援システム1を例示するものである。参照符号2はサーバであり、このサーバ2には、単数又は複数のパーソナルコンピュータ3が接続され、また、プリンタ4が接続されている。また、サーバ2には複数のデータベースが構築されており、データベースとしては、世代別の共通の基本価値観に関するデータベース(基本価値観DB)5、世代別の変動価値観に関するデータベース(変動価値観DB)6を含む。変動価値観データベース6には、各世代の変動価値観の履歴及びこれに関連した各種のデータ及び情報、現在の変動価値観及びこれに関連した各種のデータ及び情報、将来の変動価値観及びこれを予測する基になった各種のデータ及び情報が記憶されている。
また、データベースとして、過去の事象に関するデータベース(事象DB)7を含む。この事象データベース7には、人間の価値観に影響を及ぼした事象及び関連したデータや情報がタグ付けされて記憶されていると共に、各世代に関して世代別に、その影響度合いや影響の受け方を分析した結果が例えば重み付けという形でデータベース化されている。
また、データベースとして、ライフステージに関するデータベース(ライフステージDB)8を含む。ライフステージデータベース8には、例えば独身に関しては、「自分が大事」、「異性に好かれたい」、「仲間が欲しい」というような独身であれば一般的に持つであろう価値観、「ファミリー」であれば、「子供が大事(子供の将来を心配)」、「家族円満でありたい」というような子持ちの家庭であれば一般的に持つであろう価値観が記憶されていると共に、各世代A〜Eに関して、その影響度合いや影響の受け方を分析した結果が例えば重み付けという形でデータベース化されている。また「シニア」であれば、「健康が大事」、「生き甲斐が欲しい」、「仲間が欲しい」というような定年退職後の年齢の方達が一般的に持つであろう価値観と共に、各世代A〜Eに関して、その影響度合いや影響の受け方を分析した結果が例えば重み付けという形でデータベース化されている。
なお、例えば図4に示す世代C〜世代Eについては、今現在はシニアではないが、将来予測で「シニア」になったとき、価値観に対する影響度合いや影響の受け方を考慮に入れてライフステージの変化による変動価値観を想定することができる。このために、各世代のライフステージの変化による価値観の変化に関して、ライフステージの変化の影響度合いや影響の受け方を分析した結果をデータベース化しておくのがよい。また、ライフステージの分類としては、図4では、独身(ヤング)、ファミリー、シニアを例示的に示してあるが、これを細分化して、独身、結婚、育児、子供の進学期などで分類してもよいし、各ライフステージに関して、男性、女性、男女共通、年収、子供の数などに細分化したなかで価値観及びライフステージの変化による影響度合いや影響の受け方を分析した結果を例えば重み付けという形でデータベース化し、階層化したメニューから各ライフステージに関する様々な情報をモニタに表示するようにしてもよい。これにより、分析者は、様々な角度から且つ興味のある深度でモニタ3a(図5)を通じて各世代A〜Eに関する各ライフステージの情報を入手することができる。
更なるデータベースとして、過去にヒットした商品や注目すべき商品に関するデータベース(商品DB)9を含んでいる。商品データベース9には、過去の注目すべき商品の顧客の価値観を分析したデータ及び情報や、過去のヒット品と顧客の価値観とを分析してヒット品のどの付加価値がどのような価値観によって受け入れられたのかを分析したデータ及び情報が記憶されている。また、この商品データベース9に含まれる各商品のデータ及び情報に、当該商品の販売時期、その当時の経済指標(例えば有効求人倍率、GDP)、その当時の時代性(例えば旺盛な消費欲求、女性の社会進出度合い、これらを裏付ける指標など)を含めておき、階層化したメニューから商品に関する様々な情報をパーソナルコンピュータ3のモニタ3a(図5)に表示するようにしてもよい。他のデータベースとして、これ以外にも人間の価値観に影響を及ぼすファクタ(男女の性別を含む)や消費に関連した情報に関して個々にデータベース化したデータベース群10を含んでいてもよい。すなわち、データベース群10の一つとして、例えばライフステージのファミリー層にあっては「子供への投資は年収に依存する」というような消費に繋がる環境因子を消費関連因子データベースとして用意してもよい。更に、データベース群10の一つとして、価値観と消費との関連性(例えば、子供への投資は将来子供の役に立つ)を消費関連裏付けデータベースとして用意してもよい。
図6は、市場分析支援システム1(図5)の活用例として価値観ベルト表の利用の仕方の一例を示す説明図である。例えば1997年頃に大型倒産があり、この大型倒産がその当時の経済のシンボル的な出来事であったとすると、この大型倒産の出来事によって各世代のマクロ的な価値観が影響を受けて価値観が変化する。例えば、ヤング層の価値観の変化を見たときに、1993年当時のヤングの価値観は、ステイタス志向であり、ヤングエグゼクティブ・キャリアを演出する傾向にあり、背伸びした消費を行っており、自分や彼女彼氏を大事すると定義されたとする。これに対して、大型倒産があった後の2000年のヤングの価値観は、等身大志向であり、自分らしさを演出し、無理しないバランス感覚の消費を行っており、自分や仲間や家族を大事にすると定義されたとすると、このヤングの価値観の変化は、世代及び大型倒産による変化をみることができる。
また、1993年当時のヤングだった世代が時間の経過によってライフステージがファミリーに変化して、2000年ごろには、こだわりやうんちく志向であり、幸せ家族を演出し、不安不便を解消するための消費を行っており、子供や奥さんや自分、親を大事にすると定義されたとすると、この価値観の変化は、ライフステージの変化と大型倒産の影響による変化とみることができる。したがって、価値観ベルト表をパーソナルコンピュータ3のモニタ3aに表示すると共に、例えばポインタを所望の世代の所望の時代に置くと、その当時の価値観が例えばポップアップ形式で文字表示されるようにするのがよく、ポインタを移動させて次の所望の世代の所望の時代に置いて当該時代を指定すると、当該世代のその当時の価値観が文字表示されるようにするのがよい。勿論、指定した所望の世代の所望の時代が単数又は複数ある時に、これらの価値観をモニタの例えば右スペースに上下に並んで文字表示してもよい。
また、これに加えて、表示する価値観が生成されるきっかけとなった事象、例えば大型倒産などのキーワードを列挙してもよいし、所望の世代の所望の時代を指定したときに、この時の価値観がどのような事象によって形成されたのか、その分析データを簡単な操作で表示するようにしてもよい。また、その当時、ヒットした商品に関する分析データを簡単な操作によって表示するようにしてもよい。これらは、事象データベース7、商品データベース9の各データと価値観ベルトの変動価値観とを事前に関連付けて体系化しておくことで実現することができる。
図7〜図9は、市場分析支援システム1(図5)の活用例として商品企画に関する価値観ベルト表の活用例を説明するための図である。図7、図8を参照して、過去の事例として、某ヒット品(特にヒット品に限定するものではない)と、これを購入した世代との関係において、当該世代の当時の価値観とヒット品の付加価値との関係を分析してこれをデータベース化して、種々の商品のデータを蓄積しておくことにより(商品データベース9)、商品企画の段階で、新商品を市場投入するときの仮説としての事象に基づいて将来の顧客(ターゲットとする顧客)の価値観Aを予測し、そして、想定した価値観Aによって消費行動に結び付く可能性の付加価値を分析することにより、新商品に付加すべき新付加価値を推定することができる。例えば、商品データベース9に含まれる各商品のデータに価値観に関するキーワードを含めておき、予測した価値観Aのキーワードを手がかりに関連する商品データを商品データベース9から抽出してモニタ3aに表示するのがよい。
商品企画の段階又は商品開発している最中に、種々様々な将来の仮説に基づいて将来の顧客の価値観Aを予測し、各種のデータベース5〜10のデータをパーソナルコンピュータ3のモニタ3aに表示しながら市場に投入する新商品が備えるべき新付加価値aを予測するのに価値観ベルト表を使うと都合が良く、また、各種のデータベース5〜10のデータや情報をモニタ3aに表示しながら、将来の仮説を設定して、将来の顧客の価値観Aと、消費行動に結びつく可能性のある新付加価値aとの関係を分析することができる。
より具体的に図9を参照して説明すると、過去の数多くの商品に関して個々の商品の付加価値と当該商品を購入した世代の価値観との関係を分析したデータが商品データベース9に蓄積される。そして、新商品を市場に投入する将来の時点における価値観に影響を与えそうな事象を仮想的に設定し、当該事象に関連する過去の事象のデータ及び情報を、キーワードを使って事象データベース7から抽出し、抽出した過去の単数又は複数のデータを、価値観ベルト表を表示しているモニタ3aに表示し、また、過去の事象データに含まれる、当該事象によって各世代がどのような影響を受けるかの情報を、価値観ベルト表を表示しているモニタ3aに表示する。また、新商品を市場に投入する時点で各世代にライフステージの変化があるのであれば、ライフステージデータベース8から必要な情報を、価値観ベルト表を表示しているモニタ3aに表示する。
ターゲットとする世代の将来のマクロ的な価値観やこれに結びつく付加価値の予測において、必要であれば、テキストマイニングの手法を利用し、サーバ1またはパーソナルコンピュータ3にテキストマイニングを実行するプログラムをインストールしておくのがよい。テキストマイニングを利用することにより、例えばアンケート調査で収集した膨大な文章群から数学的、統計学的な手法を使って有益なキーワードを導き出すことができ、このキーワードを手がかりに各種のデータベース7〜10から必要な情報をモニタ3aに表示するようにしてもよく、特に、仮説を設定するときに将来の事象のキーワードを探索するときに、テキストマイニングを使うのがよい。
分析者は、パーソナルコンピュータ3のモニタ3aに表示されるこれらの情報やデータから、各世代毎に又はターゲットとする特定の世代に関して、新商品を市場に投入する時点での価値観を推測し、推測した価値観によって過去どのような付加価値が求められたかを、当該推測した価値観又はこれに近似した価値観を手がかりに商品データベース9から参考になりそうな商品データを抽出してモニタ3aに表示し、これらを参照して、推測した価値観の世代に消費行動を促すことのできる付加価値を推測する。もし、全ての世代に対して分析するのであれば、各世代毎に将来の想定できる価値観を推測して、推測した価値観に結びつく付加価値を分析すればよい。また、将来の事象が複数存在するのであれば、事象毎に且つ世代毎に将来の想定できる価値観を推測して、推測した価値観に結びつく付加価値を分析すればよい。
上述した将来の市場分析において、また、過去の市場分析において、各世代の過去の履歴を知ることは重要である。図10は、価値観ベルト表を使って様々な情報を表示する例を説明するための図である。なお、図10は特定の世代の価値観ベルトだけを抽出して描いてあるが、これは説明のためであり、価値観ベルト表には各世代の価値観ベルトが同様に表示されていると理解されたい。各価値観ベルトは、基本価値観、その後変化した現在に至る各変動価値観(1)〜(5)の領域を色分けや模様分けにより識別可能であるのがよい。
分析者がモニタ3aに表示の所望の価値観ベルトにおいて例えば基本価値観をポインタで指定したときには、ポップアップや価値観ベルト表の例えば右脇に、男性、女性、男女共通を選択する表示がモニタ3aに出現し、いずれかを指定すると、次に、親の価値観、価値観、影響を受けた事象などを選択する表示に切り替わる。例えば親の価値観を選択すると、当該世代の親の価値観が文字表示され、また、価値観を選択すると当該基本価値観が文字表示される。また、影響を受けた事象を選択すると当該基本価値観を形成する上で当該世代が影響を受けた事象(教育制度を含む)の一覧が表示され、リストされた事象群の中から所望の事象を選択すると、当該事象の詳細が文字やグラフや画像などによって表示される。
また、分析者が、例えば変動価値観(4)を指定したときには、価値観ベルト表の例えば右脇に、独身、ファミリーというようにライフステージを選択する表示に切り替わり、そのいずれかを指定すると、男性、女性、男女共通を選択する表示がモニタ3aに出現する。そして、そのいずれか、例えば男性を指定すると、次に、影響を受けた事象、当該変動価値観、過去の事例などを選択する表示に切り替わる。例えば影響を受けた事象を指定すると、当該世代の男性の場合に、当該世代の男性が変動価値観(4)に変化するのに影響を及ぼした事象のリストが表示され、リストされた事象群の中から所望の事象を選択すると、当該事象の詳細が文字やグラフや画像などによって表示される。また、当該変動価値観を指定すると、当該世代の男性の変動価値観(4)の詳細が表示される。また、過去の事例を指定すると、当該世代の男性が消費行動を起こした商品のリストが表示され、所望の商品を指定すると、当該商品の付加価値や世代の男性が消費行動に至った価値観や当該価値観と商品の付加価値との関係が表示される。
また、当該世代の将来の変動価値観が推測済みであれば、これを変動価値観データベース6に記憶させておくことで、推測変動価値観を指定したときに、推測の根拠となった各種の情報をパーソナルコンピュータ3のモニタ3a(図5)に表示できるようにするのがよい。
各世代のマクロ的な基本価値観のデータは、既にマスコミなどを通じて広く認識されている基本価値観を流用してもよいが、この一般的に知られている各世代の基本価値観の精度を高めるために検証を行うのがよい。図11を参照して、その具体的な手法を説明すると、先ず、当該世代の基本価値観形成期において影響を受けたと思われる事象を事象データベース7から読み込んでモニタ3aに表示する(S100、S101)。また、親のその当時の価値観を変動価値観データベース6から読み込んでモニタ3aに表示する(S102、S103)。更に、抽出した各事象及び親の影響の度合いや影響の受け方を事象データベース7及び変動価値観データベース6から読み込んでモニタ3aに表示する(S104、S105)。分析者は、これらの表示を見て、場合によっては一般的に言われている当該世代の基本価値観の情報をモニタ3aに表示またはこれを記載した文献などを参照して、当該世代の基本価値観に定義を与え(S105)、これを基本価値観データベース5に格納する。この作業を各世代に対して行うことにより、一連の世代の基本価値観に定義を与えることができ、また、既に定義が与えられている基本価値観の定義を検証することができる。
各世代の変動価値観のデータは、既にマスコミなどを通じて広く認識されている価値観の定義を流用してもよいが、その定義の精度を高めるために検証を行うのがよい。図12を参照して、その具体的な手法を説明すると、先ず、当該世代の基本価値観を基本価値観データベース5から読み込んでモニタ3aに表示する(S200、S201)。また、価値観に影響を及ぼしたと思われる事象を事象データベース7から読み込んでモニタ3aに表示する(S202、S203)。更に、ライフステージ、独身(ヤング)、ファミリーなどの一般的な価値観や性別による一般的な価値観をライフステージデータベース8及びデータベース10から読み込んでモニタ3aに表示する(S204、S205)。更に、抽出した各事象及びライフステージなどの影響の度合いや影響の受け方を事象データベース7及びライフステージデータベース8などから読み込んでモニタ3aに表示する(S206、S207)。分析者は、これらの表示を見て、場合によっては一般的に言われている当該世代のその当時の価値観の情報をモニタ3aに表示またはこれを記載した文献などを参照して、当該世代の変動価値観に定義を与え(S208)、これを変動価値観データベース6に格納する。各世代の価値観が変化したと思われる時点で行う、また、既に定義を与えている各世代のその当時の価値観を検証することができる。
図5の市場分析支援システム1は、また、各世代の将来の価値観の予測や未成年の世代又はこれから誕生する世代の基本価値観やその後の価値観の変化を予測し、想定した価値観に基づいて商品企画のための市場分析(想定した価値観と商品の新付加価値との関係の分析や商品に付加すべき付加価値は何かの探求)するのに用いることができる。図13は、未成年の子供の世代の基本価値観の予測及び当該子供の世代の変動価値観の予測を説明するための図である。前述したように、子供の基本価値観は親の価値観の影響を受けるというのが本願発明者らの考え方である。これから誕生する世代がどのような基本価値観を持つかを予測するには、先ず、これから誕生する子供の仮想としての基本価値観形成期における親の価値観を想定する必要がある。
図14は、市場分析支援システム1によって親の世代の将来の変動価値観を推測する方法の一例を説明するためのフローチャートである。先ず、親の世代の基本価値観を基本価値観データベース5から読み込んでこれをモニタ3aに表示する。モニタ3aに表示されている価値観ベルト表において、親の世代の価値観ベルトの基本価値観のエリアにポインタを置いてクリックすることで、当該基本価値観を基本価値観データベース5から読み込んでモニタ3aに表示させることができる(S300)。
次に、子供が基本価値観形成期を迎える頃にどのような時代になっているか仮説を立てる。この仮説から導き出されるキーワードを探求するのにテキストマイニングソフトを使ってもよい。子供の基本価値観形成期のキーワードを見つけることができたら、当該キーワードを入力して事象データベース7から関連する過去の事象を抽出する(S301、S302)。事象データベース7から読み込んだ過去の事象は、そのリスト及び各事象の概要がモニタ3aに表示される(S303)。分析者は、モニタ3aに表示されたリストから自分が思い描く将来の事象に適合しそうな過去の事象を選択することで、その詳細をモニタ3aに表示させることができる(S304)。これにより子の基本価値観形成期に発生するであろう事象及びこれによる親の世代の影響の受け方、影響度合いなどのイメージを作り上げることができる。また、子供が基本価値観形成期に親の世代にライフステージの変化が有るか否かを想定し、ライフステージに変化があると想定できるときには「YES」ということでステップS306に進んで、ライフステージデータベース8から、変化後の該当するライフステージでの一般的な価値観及びこれによる親の世代の影響度合いなどの情報を取り出してモニタ3aに表示させる。そして、分析者は、モニタ3aに表示された種々の情報を参照して、上記の仮説に基づく親の世代の将来の変動価値観のイメージを作り上げ、このイメージを定義できる幾つかのキーワードをパーソナルコンピュータ3に入力する(S307)。そして、この定義は変動価値観データベース6に記録される(S308)。この図14のフローチャートは、各世代の将来の変動価値観に基づいて当該世代が求める付加価値を分析するのに適用することができる。
次に、将来の子供の基本価値観を推測する。図15は、将来の子供の基本価値観を想定する方法の一例を説明するためのフローチャートである。図15のステップS400〜S403は子供の基本価値観形成期の時代にどのような事象が発生し、また、教育制度や社会構造などがどのようになっているかの仮説に基づいて、関連する過去の事象を事象データベース7に保存されている情報や基本価値観データベース5に保存されている各世代の基本価値観などの情報をモニタ3aに表示させて分析者の参考にする工程であり、その概要は上述した図14のステップS301〜304と実質的に同じである。
次に、図14のステップS307で想定した親の変動価値観を変動価値観データベース7から読み込んでモニタ3aに表示させる(S404)。また、基本価値観データベース5などの関連しそうな情報をモニタ3aに表示させて(S405)、子供が親の価値観の影響をどのように受けるか又は影響度合いを想定して、子の世代の基本価値観上記の仮説に基づく親の世代の将来の変動価値観のイメージを作り上げ、このイメージを定義できる幾つかのキーワードをパーソナルコンピュータ3に入力する(S406)。そして、この定義は基本価値観データベース5に保存される(S407)。
如上のようにして、様々な仮説に基づいて、各仮説に沿った将来の世代のマクロ的な基本価値観の想定が容易になるだけでなく且つデータベース5〜10に含まれるデータ及び情報の検証を繰り返してその精度を高めることで将来の世代の基本価値観を精度良く予測することができる。また、子の将来のライフステーの変化による価値観の変化も予測することが可能となる。
子の将来のライフステージの変化による変動価値観を予測する方法の一例を図16のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS500で、基本価値観データベース5から子の世代の基本価値観を読み込んでモニタ3aに表示する。次に、将来の求めたい時点でどのような事象が発生しているかの仮説を立て、この事象に類似する過去の事象の情報を事象データベース7から抽出して子の世代がどのような影響を受けるか等の想定を行う(S501〜S504)。この作業の概要は前述した図14のステップS301〜S304、図15のステップS400〜S403と実質的に同じである。
次にステップS505においてライフステージデータベース8から該当するライフステージの情報を取り込んでこれをモニタ3aに表示し、分析者は、モニタ3aに表示されている過去の事象の情報やライフステージによる価値観などを参照して変動価値観を想定して、これを定義するキーワードなどを入力し(S406)、そしてこの変動価値観の定義は、想定した事象など共に変動価値観データベース6に保存される(S407)。
このようにして各種のデータベース5〜10のデータを蓄積し且つデータの精度を高めることにより、将来の世代の基本価値観や将来の変動価値観の推測精度を高めることができ、また、様々な仮説の下で推測した変動価値観は、商品データベース9に記憶されている過去の事例をモニタ3aに表示させて、これを参照することで、推測した変動価値観が反応する新商品の付加価値を推測することができる。
勿論、変動価値観データベース6、事象データベース7、商品データベース9などのデータは、種々なアンケート調査などを行うことで検証することができる。そして、モニタ3aに表示した価値観ベルト表を見ながら精緻化したデータを蓄積した種々のデータベース5〜10に含まれる互いに体系化されたデータ群をモニタ3aに表示させながら、ターゲットとする世代に共通した価値観をマクロ的に推測し、そして、これに関連する付加価値を推測して、商品開発に活用することができる。
上述した手法は、各世代毎のマクロ的な価値観を予測する上で効果的であり、時代に即応した質問を含むアップデートしたアンケート調査の結果をデータベース化することができる点で、コーホート表を見ながら市場分析する従来のコーホート分析よりも分析精度を高めることができ、また、多角的な市場分析が可能となる。勿論、データベース5〜10に含まれる各種のデータ及び情報は、分析者の操作に従ってモニタ3aに表示可能であることは言うまでもない。
この各世代毎の共通した価値観の変化の予測に加えて、個人的価値観及び制約条件の要素を加味することでターゲットとする世代を細分化して消費動向の変化を予測してもよい。この点について以下に説明する。
前述したように、RV車は、当初は堅牢性や四輪駆動の悪路走破性から登山家や釣り人などの特殊事情に基づいて購入される車種であったが、アウトドア志向の若者がRV車に注目し初め、そして、これに対応するように自動車メーカーが乗降性やデザイン性を改善したRV車の開発を進めたことでRVブームが発生し、そしてRV車が広く世の中に認知されると、自動車にそれほど興味を持たない消費者までもがRV車を購入するという現象が現れた。このような現象を予測するには、個人的価値観という要素を含めて市場分析の際に仮説(シナリオ)を設定する必要がある。
すなわち、消費者の立場に立脚し、各世代の共通した価値観というマクロ的な価値観だけに依存した市場分析では説明できない消費の動向を、(1)消費者の個人的価値観及び(2)制約条件という個人的な要素を加えることで、ターゲットとする世代を細分化し、そしてこの細分化した消費者の消費動向を探るのが望ましいし、多種多様化した今日の消費行動に合致した市場分析が可能となる。
個人的価値観について説明する前に制約条件について説明する。「制約条件」とは、上述したライフステージ、家族構成、年収、家族人員なども含まれるが、商品(自動車)の購入に関する付随的な条件、例えば運転経験や環境つまり駐車場の有無や駐車場が狭い、近隣の道路事情などが含まれる。例えば、比較的大型の車を購入したいが、道路事情は駐車場の関係でコンパクトカーしか購入できない等の個人的な制約である。この制約条件は、例えば駐車場の寸法であれば、例えば行政単位で分類して各世代毎にデータベース化され、そして、各種データベース群10の一つとして各世代毎や細分化した消費者の区分に分けて「制約条件データベース」が構築される。
次に、個人的価値観について説明すると、個人の特性の一つとして人間の性格は、図17に示すように幾つかの観点から分類することができる。この種の分類は心理学で、内向的、外向的、神経質、タフ、虚構性などという言葉で特性を分類する手法や、思考的、感情的、感覚的、直感的などという言葉で特性を分類する手法が知られている。したがって図17の分類は例示に過ぎず、他に人間の性格と商品の消費動向との関係を明らかにするのに適した分類に従ってもよいことは言うまでもない。
ちなみに、図17では、人間の性格を4つに分類し、区分「アグレッシブ」は新しさやユニックさを求める性格を意味し、この種の性格は例えば先進的な車を好むと考えることができる。区分「コンサバティブ」は、普段の生活行動の範囲内での無難さを求める性格を意味し、この種の性格は今まで乗ってきた車や自分が知っている範囲内の車を好むと考えることができる。区分「フォーマル」は例えば流行をいち早く取り入れる、よりよいライフスタイルを志向し自己向上を周囲にアピールしてこれを評価されることに満足感を覚える性格を意味し、この種の性格は、周囲が注目する例えばブームに乗った車を好むと考えることができる。区分「カジュアル」は肩肘を張らずに実質を重んじる性格を意味し、この種の性格は実用的な車を好むと考えることができる。アンケート調査において、この区分に従って類別することのできる質問を幾つか用意することで、回答者の性格を分類することができ、また、各世代毎又は各世代に共通して性格分けした個人的価値観をデータベース化し、そして、各種データベース群10の一つとして「個人的価値観データベース」が構築される。
図18は、消費の動向つまり商品浸透循環を説明するための図である。上記RV車の例を使って図18を説明すると、(1)の「イノベータ」とは、RV車の堅牢性や四輪駆動の悪路走破性に注目した登山家や釣り人が該当する。すなわち、RV車の開発当初のターゲット層の消費者がイノベータに該当する。次の段階で発生する上記(2)の「アーリーアダプターNo1」とは、アウトドア志向の若者が該当する。すなわち、RV車の持つ機能や価値に注目して自分の生活環境に取り入れたときの利便性や格好良さのためにRV車を購入しようと考える消費者が該当する。次の段階で発生する上記(3)の「アーリーアダプターNo2」とは、アウトドア志向ではないが、RV車の変化つまり堅牢性や悪路走破性よりも乗降性やデザインに力点を置いたRV車に惹かれて購入する消費者が該当する。最後に発生する上記(4)の「フォロアー」とは、RV車が流行っているし、皆がRV車に注目するからRV車を購入しようと考える消費者が該当する。
言うまでもなく、このような消費に関する特性は個人的な要素つまり個人的な価値観に左右されるものであり、したがって、先行して商品を購入する先行消費から、周りの消費動向に追従して商品を購入する追従消費に至る複数に区分した分類分けが可能な、すなわち、上記の例で言えば上記(1)から(4)の分類分けが可能な質問を幾つか用意することで、回答者毎の特性の一つとして、その個人的価値観を分類することができ、そして、回答から各世代毎又は各世代に共通して商品浸透循環の分類分けした個人的価値観をデータベース化し、そして、各種データベース群10の一つとしての上記「個人的価値観データベース」に含められる。
上記(1)の「イノベータ」から(4)の「フォロアー」に至る消費の循環は、この消費の質的変化を伴って商品であるRV車そのものも変化しているのであり、逆の見方をすれば、RV車が変化したが故に消費の循環つまり消費者の層が(1)「イノベータ」から(2)「アーリーアダプターNo1」、(2)「アーリーアダプターNo1」から(3)「アーリーアダプターNo2」、(3)「アーリーアダプターNo2」から(4)「フォロアー」へと順次移行して消費が拡大したとも言える。すなわち、(1)の「イノベータ」や(2)の「アーリーアダプターNo1」の消費先行層が求めるRV車と、次に現れる(3)の「アーリーアダプターNo2」や(4)の「フォロアー」の消費追従層が求めるRV車とは、RVというジャンルに分類されるものの、そのRV車の実質は相当に変化していると見ることができる。
したがって、図1〜図16を参照して説明した各世代の共通したマクロ的な価値観に対して、図17及び/又は図18を参照して説明した個人的価値観を加え、更に上述した制約条件を複合的に加味して仮説を立てることにより各世代を更に細分化したターゲットが求めであろう付加価値を明確に予測することができる。
図19は、市場分析支援システム1(図5)の活用例として、個人的価値観、制約条件を加味した商品企画に関する価値観ベルト表の活用例を説明するための図である。図9を参照して前述したように、価値観ベルト表に基づいて、ターゲットとする世代の将来の価値観を予測し、これに図17、図18を参照して説明した個人的価値観や制約条件や過去の事例として、某ヒット品(特にヒット品に限定するものではない)と、これを購入した世代及び個人的価値観や制約条件との関係において、当該世代の当時の価値観とヒット品の付加価値との関係を分析してこれをデータベース化して、種々の商品のデータを蓄積しておくことにより(商品データベース9)、商品企画の段階で、新商品を市場投入するときの仮説としての事象及びターゲットする将来の顧客の個人的価値観(例えば図17で仮想線で示す顧客の性格及び/又は図18で仮想線で示す消費先行層)の価値観に基づく車消費の仮説を設定し、そして、消費行動に結び付く可能性の付加価値を分析することにより、車種や新商品に付加すべき新付加価値を推定することができる。勿論、この仮説を設定する段階で、図17の互いに交差する2本の評価軸によって区分された四象限の領域を備えた表や、図18の四象限の領域を備えた表を価値観ベルト表と共に又は価値観ベルト表とは別にモニタ3aに表示すると共に、「制約条件データベース」、「個人的価値観データベース」を含むデータベース5〜10(図5)に含まれる各種の情報をモニタ3aに表示可能にするのは、前述した通り勿論である。
モニタ3aに表示される表示内容を見て分析者が仮説(シナリオ)を創出し、各世代において細分化したターゲットの車消費(車型、クラス、車名)を推測する。図20を参照して、その一例を説明すると、コンピュータ3のデータベース5〜10を使ってモニタ3aに価値観ベルト表を表示させ、例えばターゲットとする世代Dの価値観ベルトにおいてターゲットとする時代例えば2015年をクリックすると、当該世代Dに共通の価値観として「個人志向」「友達夫婦」「ブランド志向」というキーワードが表示される。また、当該世代Dの個人価値観をモニタ3aに呼び出し、ターゲットとして例えばフォーマル且つコンサバティブな消費者を対象とするときには、個人価値観表の該当する部分をクリックすると「みすぼらしくないこと」「周りの人に見聞きされても恥ずかしくない商品」「安心できる店で買いたい」というキーワードがモニタ3aに表示される。これに加えて、当該消費者の制約条件の一覧をモニタ3aに表示させることで分析者が仮説を創設する便宜を図ることができる。すなわち、モニタ3aの表示を見て分析者は、商品の付加価値が、これを購入する特定の世代の共通価値観に合致したのか、それとも個人的価値観に合致したのか、それとも付随的条件に合致したのかという様々な角度から消費活動を把握することができる。例えば、上記例で言えば、制約条件として例えば「デパートの立体駐車場に入ること」「妻が運転する」に注目して車型や車種を決めたと推察できるときには、この制約条件を加味して、世代Dを細分化したターゲットの消費者が車に対して何を求めたのか、また、何を求めるのかシナリオを創出することができる。
具体的には、「ブランド意識と世間体を気にする個人価値観から日常生活に絡んだ車であってもフォーマル性を求める」「妻が運転するという制約条件のなかで、みすぼらしくない車という個人価値観に基づいて手頃なサイズでありながら車格を感じられる車を求める」「何時も行く店(例えば銀座のデパート)に買い物に行って立体駐車場に駐車させても恥ずかしくない車を求める」という具体的なイメージを創出することができ、これに基づくことで現在市販されている車型やクラス、車名などを具体的に挙げることで、一層具体的にターゲットとする消費者が求める付加価値を知ることができる。
上述した個人的価値観を含めて消費の動向を探る手法を採用して分析することで、同一の車種が複数の世代間に亘って選択される、と予測される場合について図21を参照して説明する。例えば、図20のC世代、D世代、E世代毎の共通価値観に関し、C世代の共通価値観が「家族志向、上昇志向」であり、D世代の共通価値観が「レジャー志向、友達夫婦志向」であり、E世代の共通価値観が「子供が大事、ステイタス志向」であったとする。
他方、個人価値観として、C世代に含まれる消費者のうちコンサバティブの性格つまり「皆が買っている物やブランドが安心」という性格の消費者、D世代に含まれる消費者のうちフォーマル且つコンサバティブの性格つまり「豊かさを演出したい。周囲に認められたい。」という性格の消費者、E世代に含まれる消費者のうちアグレッシブ且つフォーマルの性格つまり「ライフスタイルを格好良く演出したい。」という性格の消費者に関して、各消費者の制約条件が、C世代の消費者では「同居している両親を含めて家族全員で一緒に移動でき、且つ個人年収が比較的高額」であり、D世代の消費者では「子供が一人以上いるファミリー」であり、E世代では「友人夫婦や仲間と移動できる室内空間が必要。アウトドアのレジャーグッズを積載できること。」であったとする。
モニタ3aのこれらの表示を見て、分析者は、C、D、E世代毎に個人価値観に基づいて細分化した上記消費者に関して仮説を立てたところ、次の仮説を設定することができたとする。すなわち、C世代の上記区分に属する消費者は「車格が感じられる車であり、年老いた両親を含めて家族の全員が楽に移動できる車」を求め、D世代の上記区分に属する消費者は「豊かな生活レベルを演出でき、周囲に認められる高級感のある車であり、子供が一人であっても幸せ家族を演出できる車」を求め、E世代の上記区分に属する消費者は、「レジャーグッズと人を満載してアクティブライフを楽しむ自分を演出できる車であり、子離れしても友達夫婦や仲間と一緒に出かけられる車」を求めているとの仮説が設定できたとする。この仮説に従う車型、クラス、車名をイメージしたときに、過去又は現在において市販のXXX車、△△△車を挙げることができれば、このリストした車型や車名などによって開発すべき車のイメージを開発部隊全員に誤解無く伝達することができる。
モニタ3aには、図22に例示するように、個人価値観に関し、個人の性格ではなくて、商品浸透循環に関する表を表示するようにしてもよい。図22の例を説明すると、世代Cの共通価値観と世代Dの共通価値観に関するキーワードを価値ベルト表を使って表示させると共に、商品浸透循環に関する表のうち、世代C及びDの区分イノベータ及びアーリーアダプターNo1の価値観を表示させ、また、この区分イノベータ及びアーリーアダプターNo1に属する消費者の制約条件をモニタ3aに表示させることで、分析者が仮説を創設するのを支援することができる。
図23乃至図25は、各世代毎に、性格分けした各区分に属する市場規模の大小及び/又は各世代の商品浸透循環に関する各区分に属する市場規模の大小を例えば直径の異なる円で表示するようにしてもよい。図23の例では、価値観ベルトの所望の部分(世代C、世代Dの2015年頃)をクリックすることで、各世代C、Dの性格分けした各区分に対応してその市場規模がモニタ3aに表示される。モニタ3aに表示する市場規模は、例えば国勢調査から得た人口を各世代毎に分類して各世代の人口を予めデータベース化しておき、この各世代の人口に対する上記各区分の人口割合を円の直径の大小で表現するようにしてもよい。
市場規模を図形の大小で示す場合、例えば、市場規模を表す図形と同心に又はこれに隣接して、相似形の基準となる図形をモニタ3aに表示してもよい。上記の例でいえば、市場規模を表す円と同心に又はこれに隣接して基準となる大きさの円をモニタ3aに表示してもよい。そして、基準円が例えば人口1万人を表すとすれば、この基準円との対比で市場規模を表す円を大きさを見るだけで、市場規模がどの程度の人口を意味しているかを直感的に認識することができる。そして、このように一瞬に且つ直感的に情報を認識できるようにすることで、分析者は、仮説の創設、創設した仮説の裏付けの確認などに必要な且つ十分な情報をモニタ3aに表示される情報から手早く且つ正確に入手することができる。
図24の例では、価値観ベルトの所望の部分(世代C、世代Dの2015年頃)をクリックすることで、各世代C、Dの商品浸透循環に関する各区分つまりイノベータ、アーリーアダプターNo1、アーリーアダプターNo2、フォロアーの夫々の市場規模が四象限の各領域毎にモニタ3aに表示される。
図25の例では、価値観ベルトの所望の部分(世代C、世代Dの2015年頃)をクリックすることで、世代Dに関して性格分けした各区分つまりカジュアル、アグレッシブ、フォーマル、コンサバティブの夫々の市場規模が各区分に対応してモニタ3aに表示されると共に、世代Cの商品浸透循環に関する各区分つまりイノベータ、アーリーアダプターNo1、アーリーアダプターNo2、フォロアーの夫々の市場規模が各区分に対応してモニタ3aに表示される。図23乃至図25に例示した市場規模の表示は、図22などで説明した表示モードに対して適用してもよいことは言うまでもない。
図26は、各世代に関して性格分けした各区分の市場規模を直径の異なる円で表示した一覧表であり、これをモニタ3aに表示してもよい。この一覧表(図26)は、複数の夫々の世代の価値観と複数の個人価値観とを両軸にとったマトリックスであって、これをモニタ表示することによって、これだけの異なる価値観を有する消費者又は顧客が存在することを分析者、特に初心者の分析者に認識させることができ、同時に、その市場規模を視覚的に表示することにより、商品企画中の商品にどのような付加価値を持たせるかの検討において、重視すべき消費者又は顧客、逆に見逃しても良い消費者又は顧客を分瀬者が一意に把握できる、という本分析方法における特徴的な表示態様と言うことができる。この一覧表は、端的に言えば、市場に存在する消費者の価値観と市場規模のボリュームとを同時に且つ網羅的に表示したものである。なお、図26から分かるように、一覧表の任意の部分に、円の大きさと市場規模の数値との関係を表示するのがよい。分析者は、この一覧表を見ながら、例えば、市場規模のボリュームの大きい一つの、あるいは複数の区分の消費者に嫌われないような無難な付加価値(又は複数の区分の消費者間の近似する価値観の最大公約数的な付加価値)を新商品に設定することで、購入比率つまり単位人口当たりの売れ行きは少ないものの絶対的なボリュームがあるため、結果的に大きな販売数を見込める、という思考の商品企画を行ったり、ボリュームは小さいが特徴的な価値観を持つ消費者又は顧客に対して、当該消費者又は顧客が是非とも欲しがるような明確な付加価値を新商品に付加することで、例えばニッチ市場で高い購入比率を狙う商品企画を行うのに寄与することができる。勿論、図26は、商品浸透循環に関して分類した各区分の市場規模を表示するものであってもよい。いずれにせよ、このような一覧表をモニタ3aの全領域を使って表示してもよいし、価値ベルト表と一緒に表示してもよい。
図26の一覧表のモニタ表示に関し、左欄の各世代A、B、C、・・・のコラムをクリックすることで、指定したコラムの世代の俗称、例えば「新人類」などの文言を重畳的に表示してもよく、また、指定したコラムの世代の特徴を言い表すキーワードや説明文を重畳的に表示するようにしてもよい。同様に、各世代毎に性格分けしたコラムをクリックすることで、指定したコラムで規定される性格の特徴を言い表すキーワードを重畳的に表示するようにしてもよく、また、指定したコラムの性格を備えた消費者の制限条件の一覧を重畳的に表示するようにしてもよい。典型的には、図26の一覧表の変形例として、この一覧表で消費の動向つまり前述した消費の循環に関する各区分に属する消費者の市場規模を表示する場合には、各コラムに属する消費者の制限条件の一覧のうち、任意の制限条件を選択することで、当該制限条件を備えた消費者の割合やクリックした制限条件を加味したときの各区分の市場規模の変化に従って一覧表に表示の市場規模の大きさを更新した表示に切り替わるようにしてもよい。
上述した市場分析支援方法は、Webなどを使ったアンケート調査及び実際に商品を購入した消費者に対するアンケート調査によってデータベースを精緻化する努力を積み重ねることによって一層効果的になるのは従前と同様である。アンケート調査により得られた回答は、これをデータベース化した「アンケートデータベース」をデータベース群10(図5)の一つに加えるのがよい。また、実際に商品を購入した消費者を対象にしたアンケート調査は、これをデータベース化した「消費者データベース」をデータベース群10(図5)の一つに加えるのがよい。
「消費者データベース」や「アンケートデータベース」には、車の大きさに関連して所定の車種を購入するとしたときに、この購入に対する制約となる条件(例えば、駐車場の寸法)が、好ましくは世代の分類(例えば年齢、性別、職業など)と組にして情報化され、データベースに蓄積される。分析者の操作に従って、分析者が選択した世代のマクロ的な価値観と一緒に制約条件がモニタ3aに表示可能である。なお、「消費者データベース」には、購入した商品(車の詳細)、年齢、性別、職業、住所などが記録される。
また、Webなどを使ったアンケート調査及び実際に商品を購入した消費者に対するアンケート調査の回答から得た個人価値観に関するデータは、上述した四象限の区分に従って分類されると共にアンケート実施時期の年月日や商品購入時期と一緒に情報化される。
データベース化されたアンケート調査の結果は、分析者の操作に従ってモニタ3aに表示可能である。例えば、図18に図示の商品浸透循環に関する個人価値観表を使ってアンケート調査結果を表示するのであれば、時系列に従って調査時期や商品購入時期を所定の間隔毎に区切って、所定の単位時期に分けて、各区分毎にプロットした状態で表示するのが好ましく、また、世代毎に表示するのが好ましい。すなわち、例えば(2)の「アーリーアダプターNo1」に属する回答者や消費者の数が多ければ、この数に応じて当該第2象限の領域のプロット数が増加した状態で表示される。これにより、時期的な区分毎に、どの区分の回答者や消費者が増減したか、また、どの世代がそのような現象が現れたのかを分析者が目視で直感的に知ることができる。
以上、本発明の実施例に関して、各世代の基本価値観に基づいて、これが種々の事象によって変化することで具体的な消費に結びつく価値観が生じる、という理論をベースに説明したが、これに代えて、従来から知られているコーホート分析をベースに各世代の共通価値観を把握する分析手法に対して実施例を適用してもよい。