JP2009234016A - ノズルプレートの製造方法、および液体噴射ヘッド - Google Patents

ノズルプレートの製造方法、および液体噴射ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】金属板の材質が柔らかであっても打ち込んだパンチの周りに隆起部が生じてノズル開口の形状が変形することのないノズルプレートの製造方法を提供する。
【解決手段】金属板31の一方の面に酸化膜37を形成する酸化膜形成工程と、酸化膜側から金属板側にパンチ36の挿入突部36´を打ち込んで、パンチの打ち込みに伴って挿入突部により酸化膜を金属板の板厚の内部まで引き込みながら凹部40を形成する凹部形成工程と、凹部形成工程でパンチを打ち込んだ面とは反対側の面を研削して底部を除去することで、前記凹部を一連の貫通孔に貫通させてノズル開口とする貫通孔形成工程と、
を含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に設けられるノズルプレートの製造方法、およびこのノズルプレートを装着した液体噴射ヘッドに関する。
液体噴射装置、例えば、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液体として吐出させるインクジェット式記録装置などの液体噴射ヘッドのノズルプレートは、ステンレス鋼板などの金属板に微細径の貫通孔を複数開設して構成されている。金属板に貫通孔を開設する方法としては、金型を用いたプレス加工(塑性加工)方法がある。
プレス加工の場合、一般的には、ノズルプレートとなる薄い金属板の一方の面からパンチを押し込み、反対側に隆出した隆出部をその後の研磨工程で除去し、これによりノズル開口となる貫通孔を開設する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2007−137039号公報
金属板に一度のプレス加工でノズル開口の下孔となる凹部を開設することはできるが、金属板の材質が柔らかい場合、図5に示すように、パンチを打ち込んだ際にパンチの周りに隆起部50ができ、この隆起部50が後のステージで上から金型のストリッパプレートに押圧されて凹部の開口形状が変形してしまい、最終的にはノズル開口の形状精度が低下して噴射特性に問題が生じることがある。
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、その目的は、金属板の材質が柔らかであっても打ち込んだパンチの周りに隆起部が生じてノズル開口の形状が変形することのないノズルプレートの製造方法を提供しようとするものである。
前記した目的を達成するために、本発明に係るノズルプレートの製造方法は、金属板の一方の面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜側から金属板側にパンチの挿入突部を打ち込んで凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部形成工程でパンチを打ち込んだ面とは反対側の面を除去することで、前記凹部を一連の貫通孔に貫通させてノズル開口とする貫通孔形成工程と、
を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、金属板の一方の面に酸化膜を形成し、酸化膜側から金属板側にパンチを打ち込むと、パンチの挿入突部の挿入によって酸化膜がパンチの進入に伴って引き込まれて金属板の表面を被覆しているので、パンチが挿入される金属板の表面に隆起部が生じることを抑制することができる。したがって、金属板が比較的柔らかい材質であっても、隆起部を研磨除去する手間を省くことができ、作業効率を高めることができる。また、隆起部が生じないことから製造途中で隆起部が潰されることもなく、ノズル開口としての貫通孔の形状の精度を高く維持することができる。
上記構成において、前記凹部形成工程が終了したならば、酸化膜を金属板から取り去ることが望ましい。この様にすると、金属板の特性を活かすことができるからである。
また、前記金属板が、インバー型合金製であることが望ましい。
このように、ノズルプレートとなる金属板をインバー型合金製にすると、接合する他の部品と熱膨張率が同じようになるので、接合面での膨張差が生じ難くなり、剥離等のトラブルを未然に防止できる。
上記構成において、前記酸化膜が、前記金属板よりも硬いことが望ましい。
このように酸化膜が金属板よりも硬いことにより、金属板の表面に隆起部が生じることをより確実に抑制することができる。
なお、酸化膜としては、Ni酸化膜、Fe酸化膜、又はFe−Ni合金の酸化膜の何れかを採用することができる。
前記した製造方法により製造したノズルプレートを装着した液体噴射ヘッドは、凹部を貫通した孔、すなわちノズル開口が製造途中で潰されることもなく開口形状の精度が高く維持されるので、液体の噴射特性を高めることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)のノズル基板の形成に本発明を適用した例を説明する。
図1は、本実施形態における記録ヘッド1の要部断面図である。例示した記録ヘッド1は、ケース2、流路ユニット3、及び、アクチュエータユニット5等を主な構成要素としている。ケース2は、合成樹脂製の中空箱体状部材であり、先端面(下面)には流路ユニット3を接合し、内部に形成された収容空部4内にはアクチュエータユニット5を収容し、流路ユニット3側とは反対側の基端面(上面)には、プリンタ本体側からの駆動信号をアクチュエータユニット5に供給するための回路基板(図示せず)を取り付けるようになっている。
上記アクチュエータユニット5は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子7と、この圧電振動子7が接合される固定板8と、回路基板からの駆動信号を圧電振動子7に供給するためのTCP(テープキャリアパッケージ)等の配線部材9等から構成される。各圧電振動子7は、固定端部側が固定板8上に接合され、自由端部側が固定板8の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で固定板8上に取り付けられている。そして、アクチュエータユニット5は、固定板8の背面を、収容空部4を区画するケース内壁面に接着することで収容空部4内に収納・固定されている。
流路ユニット3は、振動板11、流路形成基板12、及びノズル基板(ノズルプレート)13からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接着剤で接合して一体化することにより作製されており、リザーバ15(液室)からインク供給口16及び圧力発生室17を通りノズル開口18に至るまでの一連のインク流路(液体流路の一種)を形成する部材である。圧力発生室17は、ノズル開口18の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、リザーバ15は、インクカートリッジやサブタンク等のインク供給源からのインクが導入される室である。そして、このリザーバ15に導入されたインクは、インク供給口16を通じて各圧力発生室17に分配供給される。
流路ユニット3の底部に配置されるノズルプレート13は、図2に示すように、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル開口18を、記録紙等の記録媒体送り方向に列状に開設した金属製の薄手の板材である。本実施形態のノズルプレート13は、例えば、ステンレス鋼、42アロイなどの金属板材(金属板31)から作製し、パンチ36(図3等参照)を用いたプレス加工によってノズル開口18の列、即ち、ノズル列(ノズル群の一種)を、記録ヘッド1の走査方向に複数並べて開設している。そして、1つのノズル列は、例えば180個のノズル開口18によって構成される。本実施形態の記録ヘッド1は、合計8種類のインクを吐出可能に構成されており、各インクに対応させて合計8列のノズル列がノズルプレート13に形成されている。
流路ユニット構成部材の1つである流路形成基板12は、インク流路となる流路基部、具体的には、リザーバ15となる空部、インク供給口16となる溝部、及び、圧力発生室17となる開口部が区画形成された板状の部材である。本実施形態において、流路形成基板12は、結晶性を有する基材であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。
ノズルプレート13とは反対側の流路形成基板12の上面に配置される振動板11は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板11の圧力発生室17に対応する部分には、圧電振動子7の自由端部の先端を接合するための島部20が形成されている。この島部20の周囲は、エッチングなどによって支持板を環状に除去して弾性フィルムのみとなっている。そして、この部分はダイヤフラム部として機能し、圧電振動子7が伸縮するのに伴い、弾性フィルムを弾性変形させながら島部20が変位するように構成されている。また、振動板11は、流路形成基板12の空部の一方の開口面を封止してリザーバ15の一部を区画し、インク流路内の圧力変動を緩和するコンプライアンス部21としても機能する。このコンプライアンス部21に相当する部分については、ダイヤフラム部と同様にエッチングなどによって支持板を除去して弾性フィルムだけにしている。
そして、上記構成の記録ヘッド1において、配線部材9を通じて圧電振動子7に駆動信号が供給されると、この圧電振動子7が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部20が圧力発生室17に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力発生室17の容積が変化し、圧力発生室17内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル開口18からインク(液体の一種)が噴射される。
次に、プレス金型を使用してノズルプレート13を製造する方法を、図3に基づいて説明する。図3はプレス金型の構成を説明する断面図である。
このプレス金型は、ノズルプレート13の材料である金属板31を載せるダイ32と、プレス機のラム(図示せず)の下面に取り付けるパンチホルダ33と、このパンチホルダ33の下にスプリングやエラストマ等の弾性材34を介してパンチホルダ33に対して上下動可能な状態で設けた押圧盤(ストリッパプレート)35と、パンチホルダ33に基端部分を固定して下向きに設けられたパンチ36と、から概略構成されている。
金属板31は、例えば、厚みが30〜100μm程度で、42アロイ(Fe−42%Ni合金)等の、前述した流路形成基板12と線膨張係数のほぼ等しいインバー型合金からなり、線膨張係数が流路形成基板12に近づくように設定されている。これにより、流路形成基板12と金属板31とを、熱硬化性樹脂等を用いて200℃〜300℃で加熱して接合した後に室温に戻るときに、ノズルプレート13が反ることが防止され、これによりノズルプレート13が流路形成基板12から剥離することを抑制される。
ここで、本実施形態においては、42アロイ製板材を金属板31として使用し、この42アロイという比較的柔らな材質の加工性を補うために、金属板31の一方の表面に酸化膜37を形成し、この酸化膜37側からプレス加工を行うようにしている。この点の詳細については後述する。
ダイ32は、鋼鉄製の平坦な板材であり、後述するパンチ36で加工するステージ、すなわち、パンチ36の直下に対応する位置に、下孔となる凹部よりも少し大きな貫通開口部39が開設されている。
パンチ36は、外径が20〜30μmの円柱形に形成されており、その先端部分には挿入突部36´が形成されている。また、パンチ36の基端部分は、パンチホルダ33に強固に固定され、軸方向の途中の部分は押圧盤35に開設された貫通ガイド孔38内に挿通されている。そして、このパンチ36は、貫通ガイド孔38に案内されながら下降して先端の挿入突部36´が金属板31の表面に対して直交する状態で打ち込まれるように構成されている。そして、図面に示す挿入突部36´は、先端に向かって次第に縮径するテーパー部36aを形成すると共に、該テーパー部36aの先端に他の部分よりも細い円柱部36bを形成し、該円柱部36bの先端を円形平面としている。
次に、前記した構成からなるプレス金型を使用してノズル開口18の下穴となる凹部を形成する凹部形成工程を行う場合について説明する。なお、ダイ32はプレス機の図示しないボルスタ等の支持盤上に固定され、パンチホルダ33はラムの下面に固定され、ダイ32とパンチホルダ33(パンチ36)との相対位置やパンチ36の下死点調整などの型調整はすべて終了していることとする。
まず、金属板31の一方の面に、酸化膜37を形成する酸化膜形成工程を行う。この酸化膜形成工程では、CVDやスパッタリング等の成膜法を用いて、金属又は合金の酸化膜37を形成する。本実施形態においては、図4(a)に示すように、FeとNiの合金からなる酸化膜37を金属板31の一方の面に形成する。この酸化膜37は、金属板31よりも硬いことが望ましい。酸化膜37を形成したならば、この酸化膜37が形成された側の面を上方(パンチ36側)に向けた姿勢で金属板31をダイ32の上にセットし、この状態で酸化膜37側から金属板31側にパンチ36の挿入突部36´を打ち込んで、挿入突部36´により酸化膜37を金属板31の板厚の内部まで引き込みながら凹部40を形成する凹部形成工程を行う。
具体的には、図4(b)に示すように、酸化膜37側から金属板31側(42アロイ板側)に向けて、つまり、上から下に向けてパンチ36の挿入突部36´を打ち込む。すると、パンチ36の挿入突部36´の先端が上層に位置する酸化膜37に当接し、さらにパンチ36を下降すると、挿入突部36´の先端の面が酸化膜37と金属板31を共に窪ませ、さらに下降すると酸化膜37を破断する。この下降において、酸化膜37がパンチ36の挿入突部36´との強い摩擦力で金属板31の板厚の内部まで引き込まれながら下降する。そして、パンチ36が下死点まで下降すると、未貫通部である底部41を有する凹部40が形成されると共に、金属板31の下面に膨出部42が形成される。このパンチ36の打ち込みにおいて、パンチ36の挿入突部36´の挿入によって42アロイの肉(素材)が塑性変形で移動したとしても、酸化膜37がパンチ36の進入に伴って引き込まれて金属板31の表面を被覆しているので、パンチ36が挿入される金属板31の表面に隆起部が生じることを防止することができる。
図4(c)に示すように、パンチ36が下死点まで下降して金属板31に凹部40を形成すると、その後は上昇に転じる。そして、ラムの上昇に伴ってパンチ36ホルダ33が上昇すると、弾性材34の復元力により押圧盤35がパンチホルダ33よりも少し遅れて上昇を開始し、金属板31の表面から離隔して上死点まで上昇する。これで凹部形成工程が終了する。
そして、凹部形成工程が終了すると次の凹部40形成のために金属板31をフィーダーにより所定のピッチだけ移動する。この移動が終了したならば、前記した操作を再度繰り返すことにより金属板31に次の凹部40を所定のピッチで開設することができ、これらの操作を繰り返すと、金属板31に凹部40を所定のピッチで順次開設することができる。そして、凹部40を開設した部分が順次送られて各ステージで押圧盤35の平坦面により押圧されても、凹部40の開口の周りには隆起部がないので、凹部40の開口形状が変形するおそれはない。
この様にして凹部形成工程が終了したならば、金属板31をプレス金型から外して、次の貫通孔形成工程を行う研磨装置(図示せず)に搬送する。この貫通孔形成工程では凹部形成工程で残った凹部40の膨出部42を研磨除去することで、孔を貫通させてノズル開口18にすると共に、金属板31の厚さを所定の厚さになるように研磨する。この様にして、貫通孔としてノズル開口18が開設されたノズルプレート13が作製される(図4(d))。なお、膨出部42が形成されない場合であっても、金属板31の他方の面を研磨することにより凹部40の底部を除去して一連の貫通孔に貫通させてノズル開口18とすることができる。
以上の製造方法により製造したノズルプレート13を装着した記録ヘッド1は、凹部40を貫通した孔、すなわちノズル開口18が製造途中で潰されることもなく形状の精度が高く維持されるので、インクの噴射特性を高めることができる。
なお、金属板31(42アロイ板)を被覆する酸化膜37は、貫通口形成工程における研磨によって取り去っても良い。なお、この酸化膜37は必ずしも取り去る必要はなく、そのまま残しても良い。
なお、前記した実施形態においては、金属板31の全面に酸化膜37を形成したが、この酸化膜37は、パンチ36を打ち込む部分よりも余裕をもって含む大きさであれば全面でなくても、部分的に形成してもよい。また、この酸化膜37としては、上記したFeとNiの合金からなる酸化膜に限らず、例えば、Fe酸化膜やNi酸化膜等、金属板31よりも硬いものであれば、他の金属の酸化膜或いは合金の酸化膜を採用してもよい。このような酸化膜を採用することにより、パンチ36が挿入される金属板31の表面に隆起部が生じることをより確実に防止することができる。
記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。 ノズルプレートの平面図である。 本発明で使用するプレス金型を説明する要部断面図である。 (a)〜(d)はノズル開口を形成する工程を説明する図である。 従来の構成において金属板に発生した隆起部を説明する要部断面図である。
符号の説明
1…記録ヘッド、13…ノズルプレート、18…ノズル開口、31…金属板、32…ダイ、33…パンチホルダ、34…弾性材、35…押圧盤、36…パンチ、37…酸化膜、40…凹部、41…底部、42…膨出部

Claims (6)

  1. 金属板の一方の面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
    前記酸化膜側から金属板側にパンチの挿入突部を打ち込んで凹部を形成する凹部形成工程と、
    前記凹部形成工程でパンチを打ち込んだ面とは反対側の面を除去することで、前記凹部を一連の貫通孔に貫通させてノズル開口とする貫通孔形成工程と、
    を含むことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
  2. 前記凹部形成工程が終了した後に酸化膜を金属板から取り去ることを特徴とする請求項1に記載のノズルプレートの製造方法。
  3. 前記金属板が、インバー型合金製であることをことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノズルプレートの製造方法。
  4. 前記酸化膜が、前記金属板よりも硬いことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のノズルプレートの製造方法。
  5. 前記酸化膜が、Ni酸化膜、Fe酸化膜、又はFe−Ni合金の酸化膜の何れかであることを特徴とする請求項4に記載のノズルプレートの製造方法。
  6. 請求項1から請求項5の何れか一項により製造したノズルプレートを装着し、ノズル開口としての前記貫通孔から液体を噴射するようにしたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
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