JP2009228361A - 建築用合成材及びその製造方法 - Google Patents

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安宏 藤元
Shigeaki Rokugo
恵哲 六郷
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Abstract

【課題】軽量で、運搬や施工性に優れ、且つ、高い保温性、靭性、耐荷重性を有するばかりでなく、経済性に優れた建築用合成材を提供する。
【解決手段】複数の木材1同士を縦方向あるいは横方向に、接合材(複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料:HPFRCC:High Performance Fiber Reinforced Cementitious Composhites)2を交互に挟んで積層接合して建築用合成材を構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築物の梁、桁、柱、壁及び床等に使用され、木材と繊維補強セメント複合材料からなる接合材とを集成した建築用合成材に関するものである。
近年、橋梁等の補強、建築物の内外装材として繊維補強セメント複合材料(FRCC)が多く使用されている。この繊維補強セメント複合体(FRCC)は高い曲げ強度を有して靱性に富み、またひび割れ抵抗が大きく、耐衝撃性にも優れているといった特徴を有するので、土木・建築材料として好適に使用されている。
従来、例えば、FRCCで形成したパネル壁(特許文献1参照)や多数の単材を集成し、その外層を繊維補強セメントで成形した構造材(特許文献2参照)が提案されている。また、木製ラミナと繊維強化樹脂(FRP)で成形された曲げ補強板からなる集成材が提案されている(特許文献3参照。)。
特許第358082号公報 特開2005−36456号 特許第2662622号公報
しかしながら、従来、木材の接合材として繊維補強セメント複合材料を使用し、耐久的で高耐荷重能力を有する大断面構造部材を形成するという発想は無かった、本発明は、軽量で、運搬や施工性に優れ、且つ、高い保温性、靭性、耐荷重性を有するばかりでなく、経済的な建築用合成材を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の建築用合成材は、建築物の内外装材として用いられる合成材であって、複数の木材、コンクリート材、あるいは鋼材を、繊維補強セメント複合体を接合材として集成接合してなることを第1の特徴とする。また、木材が中断面集成材や間伐材であることを第2の特徴とする。また、引張材を接合面と直交方向に配置すると共に、該引張材の端部を雄ネジ加工し、座金及びナットにより締結し挟持固定したことを第3の特徴とする。さらに、繊維補強セメント複合体に膨張剤を混合したことを第4の特徴とする。またさらに、接合面に、高摩擦層を形成したことを第5の特徴とする。加えて、その製造方法として、繊維補強セメント複合体の硬化後、プレストレスを作用させ、接合面に圧縮応力を与え、ズレせん断抵抗力を付与することを第6の特徴とし、繊維補強セメント複合材料の内部に接合面と平行に補強材を配置したことを第7の特徴とする。
本発明によれば、以下の優れた効果がある。
(1)軽量で、運搬及び施工上のハンドリングが容易である。
(2)保温性が高いので、住空間に使用して好適である
(3)靭性が向上するので、柔軟な構造となる。
(4)高い耐荷重能力を有し、耐震壁として使用可能であり、経済性に富む。
(5)床構造として使用可能であり、経済性に富む。
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の建築用合成部材に係る梁部材(縦重ね構造部材)の積層構造を示す説明図、図2は本発明の建築用合成材に係る版部材(横重ね構造部材)の積層構造を示す説明図、図3は集成材と接合材(HPFRCC)との鉄筋接合を示す斜視図、図4はコンクリート部材の高摩擦表面層を示す斜視図、図5は合成梁の曲げ試験体を示す(a)は正面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は、(b)のA−A線断面図、(d)は(b)のB−B線断面図、図6は図5の合成梁の載荷試験結果を示すグラフである。
図1乃至図2に示すように、本発明の建築用合成材は、建築物の内外装材として用いられるものであって、複数の木材1同士を縦方向あるいは横方向に、接合材(複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料:HPFRCC:High Performance Fiber Reinforced Cementitious Composhites、以下、単にHPFRCCと記す。)2を交互に挟んで集成接合、すなわち、木材+HPFRCC+木材・・をサンドイッチ状に積層接合して構成する。
図1(a)は、複数の木材(角材)1同士を接合材2で縦に接合した梁状合成材Tを示す縦重ね構造を示すものであり、図1(b)は上下端にコンクリート部材3を加えた構造、図1(c)は、図(b)の下端のコンクリート部材3を鋼板4に置換した構造を示す。とくに、上縁部及び下縁部に鉄筋コンクリート部材3を配置した梁状合成材Tは、圧縮部の耐荷力が高まる。また、同様に引張部の鉄筋コンクリート部材3は、耐引張強度が高める。尚、これらの梁状合成材Tにおいては、後述するように、必要に応じて、引張材として鉛直に鉄筋5を挿通し、鉄筋5の端部を雄ネジ加工し、座金6及びナット7により締結し挟持固定すると良い。その際は、鉄筋5の挿通孔内にも、HPFRCCあるいはセメントグラウトを充填することが望ましい。
図2及び図3に、壁や床への適用を目的にした版状合成材Pを得るために木材1と接合材2を交互に横重ねした構造を示す。この版状合成材Pにおいても、水平方向に鉄筋5を挿通させ、両端の支柱10に凹所10aを設け、そこから突出する鉄筋5の端部を雄ネジ加工し、座金6及びナット7により締結し挟持固定すると良い。また、梁状合成材T又は板状合成材Pのいずれにおいても、接合材2として使用するHPFRCCと角材5との接合面を、荒仕上げ面加工したり、図4に示すように、ホゾ溝9等を設け、高摩擦表面層8とする。これにより、ズレせん断に対し、高い抵抗力が付与される。高摩擦表面層8としては、梨地面、凹凸面なども考えられるが、本実施例では、幅3〜5mm、深さ1〜2mm程度の半円弧状の溝9を、30〜60mm間隔に切削加工して高摩擦表面層8とした。尚、高摩擦表面層8は、木材1側又は接合材2側のどちらか一方、あるいは双方に設けるもので良く、コンクリート部材3側の接合面に設けるものでも良い。
また、接合材(HPFRCC)2には膨張剤、例えば、デンカパワーCSA(商品名)を混合する。これにより、鉄筋5により接合材2の膨張を拘束し、木材1との付着性を高めることができる。さらに、鉄筋5の他にPC鋼材を配置し、プレストレス(pre stress)を作用させて、角材1とHPFRCC2の接合面に圧縮応力を与え、ズレせん断抵抗力を付与する。すなわち、引張力が掛かる部分に予め圧縮力を加えておくことにより、HPFRCCによるクリープ・乾燥収縮による肌別れ現象を防止することができる。鉄筋を木材と直交方向に配置し、鉄筋5の端部を雄ネジ加工し、座金6及びナット7により締結し挟持固定する。HPFRCCモルタル硬化後、部材端部においてナット締めにより0.3〜0.5N/mm程度のプレストレスを作用させる。これによりHPFRCCモルタルのクリープ・乾燥収縮による付着力の低減を防止することができる。また、HPFRCCモルタル部の内部に接合面と平行に補強材(例えば鉄筋)を配置することにより、耐荷力を増加させることができ、耐震壁等に使用して有効である。
尚、接合材としては、繊維補強セメント複合体(FRCC)、ガラス繊維補強セメント(GRC)、炭素繊維補強コンクリート(CFRC)、ビニロン繊維補強コンクリート(VFRC)、ポリプロピレン繊維補強コンクリート(PFRC)、アラミド繊維補強コンクリート(AFRC)等も本発明の範疇に含まれるものとし、本実施例で使用したHPFRCCに限定されるもので無いことは言うまでもない。さらに、木材内部に鋼材を付着させ、突出した鋼材に鉄筋を接合し、周囲にHPFRCCを塗布することで完全な合成構造をつくることは、現在の技術で十分可能である。
[試験例]
木材1とHPFRCC2が高摩擦表面層8との付着により、一体化するか否かの基礎試験を行った。
先ず、木材1+接合材(HPFRCC)2+木材1のサンドイッチ構造で、木材1にズレ止めボルトを植え込んだ試験体と、ボルト無しの試験体を作製した。木材は100×12×600mmの板目の角材を使用した。当初、両試験体とも完全に密着した。しかし、湿潤養生状態から乾燥状態に移した後、縁部が剥がれる現象が生じ、版幅約10cmの中央部3.5cm程度のみが密着した状態になった。使用した木材が板目板であったことが影響したとも考えられる。
次に、接合面に高摩擦表面層8を設けた場合について説明する。木材1は45×45×600mmの正目の角材を使用した。高摩擦表面層8としては角材軸直角方向に、幅3mm、深さ1〜2mm程度の半円弧状の溝9を、30又は60mm間隔に設けた。この試験体は、約3ヶ月経過しても完全な密着状態が維持された。
図5に示す材齢約1ヶ月の合成梁Tを試験体として、13.5トンの荷重を載荷し単純曲げ試験を実施した、この曲げ試験体は、図1(c)に示す、上端にコンクリート部材3を、中間に集成材1、下端に鋼板4配置し、接合材(HPFRCC)2で接合したことを基本構造とし、複数個所を引張部材(鉄筋)5と座金6及びナット7により締結して挟持固定し、各部材の接合面に複数個所のズレ止めピン11を設けた構成とされている。また集成材1は2箇所をフンガージョイントより接合してある。結果を図6に示す。図6のグラフから明らかなように、建築用構造部材として十分適用可能であることが分かる。
次に、中断面集成材150×200mmの角材の間に150×200mmの接合材2を挟持固定した。集成材間に連続して複数に鉄筋を挿通配置し、鉄筋の端部を雄ネジ加工して、座金及びナットにより締結して固定し試験体とした。4日経過後に1トン程度の仮締めを施し、僅かなプレストレスが作用した状態とした。約2ヶ月経過後、2、3箇所にヘアークラックが観察できる程度で、全体的には殆ど変状していなかった。したがって、短期的使用には合成構造として十分成立することが確認された。
以上、試験体にプレストレスを作用させ、鉄筋によるズレ止め効果を付加した場合、建築用部材としての中期的使用が十分可能であると考察する。加えて接合面に高摩擦表面層を設けることにより、さらに長期的使用に耐える合成材を得ることができることが分かった。
尚、本発明は上記実施例に限定されず、種々の応用変形が可能である。例えば、本実施例では木材と接合材を交互に積層しているが、必要に応じて同じ部材同士を積層する構成としても本発明の要旨を逸脱するものではない。また、経済性については、木材が鉄筋の役割を果たし、鉄筋の使用量が少なくて済むので、同サイズのPC部材と比較すると、間伐材を使用した場合、概算で約半値程度になる。また、中断面集成材を使用しても15〜25%程度のコスト削減を図ることができる。
本発明の建築用合成部材に係る梁部材(縦重ね構造部材)の積層構造を模式的に示す断面図である。 本発明の建築用合成材に係る版部材(横重ね構造部材)の積層構造を模式的に示す断面図である。 集成材と接合材(HPFRCC)との鉄筋接合を示す斜視図である。 コンクリート部材の高摩擦表面層を示す斜視図である。 合成梁の曲げ試験体を示す(a)は正面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は、(b)のA−A線断面図、(d)は(b)のB−B線断面図、 図5の合成梁の載荷試験結果を示すグラフである。
符号の説明
1 木材(角材・中断面集成材)
2 接合材(HPFRCC)
3 鉄筋コンクリート部材
4 鋼板
5 引張材(鉄筋)
6 座金
7 ナット
8 高摩擦表面層
9 ホゾ溝
10 支柱
10a凹所
11 ズレ止めピン
T 梁状合成材
P 版上合成材

Claims (7)

  1. 建物の内外装材として用いられる合成材であって、複数の木材、コンクリート材あるいは鋼材を、繊維補強セメント複合材料を接合材として集成接合してなることを特徴とする建築用合成材。
  2. 木材が中断面集成材や間伐材であることを特徴とする請求項1記載の建築用合成材。
  3. 引張材を接合面の直交方向に配置すると共に、該引張材の端部を雄ネジ加工し、座金及びナットにより締結し挟持固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の建築用合成材。
  4. 繊維補強セメント複合材料に膨張剤を混合したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建築用合成材。
  5. 接合面に、高摩擦層を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の建築用合成材。
  6. 繊維補強セメント複合材料の硬化後、プレストレスを作用させ、接合面に圧縮応力を与え、ズレせん断抵抗力を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建築用合成材の製造方法。
  7. 繊維補強セメント複合材料の内部に接合面と平行に補強材を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建築用合成材の製造方法。
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