JP2009225713A - インフリキシマブの有効性判定方法 - Google Patents

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尚之 土屋
Takayuki Sumita
孝之 住田
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Abstract

【課題】関節リウマチの治療において、患者個人に沿った治療方法を提案するための、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性判定方法の提供。
【解決手段】IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性の判定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、関節リウマチのインフリキシマブ療法にインフリキシマブの有効性を判定する方法、及び当該方法を実施するためのキットに関する。
抗リウマチ薬であるインフリキシマブやエタネルセプトなどの生物学的製剤は、病態に関与する重要な分子であるTNF−αを標的とするため、疾患活動性を特異的に制御して、高い有効性を示すことが明らかとなっている(非特許文献1〜2)。特に活動性関節リウマチ患者における関節破壊の進行抑制、及び身体機能とQOLの改善効果は、抗TNF薬の特筆すべき特徴であり、従来の抗リウマチ薬(DMARD)では達成しえなかったものである(非特許文献3)。
インフリキシマブは、キメラ型の抗TNF-αモノクローナル抗体製剤であり、2003年に日本でも関節リウマチへの使用が承認され、画期的な疾患制御効果・強力な骨破壊抑制効果など既存の抗リウマチ薬では達成できない有用性が明らかとなっている。特に早期関節リウマチでの投与は滑膜炎制御、骨破壊抑制において重要であることが提唱されている(非特許文献4〜6)。このように生物学的製剤による早期介入の有用性がさかんに提唱され、今後寛解・治癒を目指した早期介入に拍車がかかることが予想される。
一方、生物学的製剤は費用が高く、そして、ある割合で重篤な有害事象が起きる可能性があるので、生物学的製剤の有効性と安全性の予測は患者と医師の双方にとって非常に有益である。しかし、患者ごとの有効性を事前に知ることは困難であった。
近年、関節リウマチ患者の重症度と関連する免疫系機能遺伝子多型の研究により、HLA-DRB1遺伝子、TNF−α遺伝子、TNFRSF1B(TNFR2)遺伝子、IL−1遺伝子、IL−10遺伝子などの遺伝子多型が研究されてきたが、日本人におけるインフリキシマブの有効性に関連する遺伝子多型は確立されていない。従って、関節リウマチの治療において、患者ごとのインフリキシマブの有効性を事前に把握し、患者ごとの治療計画を立てるような、精度の高いインフリキシマブ療法はこれまでに存在していない。
Kalden, J. R. (2002) J.Rheumatol.Suppl. (66) 27-37 Weaver, A. L. (2004) Mod. Rheumatol. (14) 101-112 Ostor, A. J. (2005) Clin.Med. (5) 222-226 非特許文献4:Maini, R. N., et al. (2004) Arthritis Rheum. (50) 1051-1065 Breedveld, F. C., et al. (2004) Ann.Rheum.Dis. (63) 149-155 St Clair, E. W., et al. (2004) Arthritis Rheum. (50) 3432-3443
本発明は、関節リウマチの治療において、患者個人に沿った治療方法を提案するための、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性を判定する方法を提供することに関する。
本発明者らは、IL10RB遺伝子及び/又はIRF5遺伝子の多型がリウマチ患者にインフリキシマブを投与した時の有効性と有意に関連し、これらの遺伝子多型を検出することにより、インフリキシマブ療法における患者ごとのインフリキシマブ投与の有効性を判定でき、より的確な投与方法や投与量の設定が可能になることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)〜4)に係るものである。
1)IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性の判定方法。
2)IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性を判定するためのキット。
3)IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出するためのポリヌクレオチドを含む上記2)のキット 。
4)前記ポリヌクレオチドが、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714から選ばれる1以上の遺伝子多型の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー又は、当該遺伝子多型部位を含む領域に結合するプローブである上記3)のキット。
本発明の判断方法を臨床検査等に利用することにより、治療における投与開始時点において薬剤の有効性を患者ごとに決めることができる。この方法によれば、インフリキシマブの過剰な投与を防止し、患者の身体への負担や治療費の削減が可能となる。また、関節リウマチ患者を、患者ごとにより早く有効な薬剤での治療へ導くことが出来、関節リウマチの進展を防止できる。
インフリキシマブは、関節リウマチ治療薬として、非ステロイド性抗炎症剤及び抗リウマチ薬(メトトレキサート製剤を含む)等の既存治療で効果不十分な患者に適用される。現在、日本においては、添付文書及び厚生労働省のインフリキシマブ研究班のガイドラインにより、インフリキシマブ3mg/kgを生理食塩水に溶解し、緩徐に(2時間以上かけて)点滴静注すること、初回投与の後、2週後、6週後に追加投与を行い、以後8週間毎に投与を継続することが決められている。
本発明におけるインフリキシマブの有効性の判定は、IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することにより行われる。
判定は、これらの遺伝子多型それぞれを単独で検出して行うことが可能であるが、複数を組み合わせて判定するのが判定精度を上げる点で好ましい。少なくとも、IL10RB遺伝子多型rs2834167を含めることがより好ましい。
IL10RB遺伝子多型rs2834167は、IL10RB遺伝子(インターロイキン−10レセプターB(interleukin-10 receptor B:IL10RB))のエクソン2に位置するIL10RBの47番目のアミノ酸をコードする塩基に関する多型であり、頻度が多い方のアレル(メジャーアレル)が「G」であり、メジャーアレル以外のアレル(マイナーアレル)が「A」である。メジャーアレル(「G」)の時の47番目のアミノ酸はグルタミン酸であるが、マイナーアレル(「A」)の時のアミノ酸はリジンである。
従って、IL10RB遺伝子多型rs2834167には、ホモ接合体A/A及びG/Gと、ヘテロ接合体A/Gの3つの型が存在する。
実施例2に示すとおり、54週間投与(3mg/kg×8回)のインフリキシマブ療法で、ACR(American College of Rheumatology)コアセット(Felson, D.T. et al. American College of Rheumatology preliminary definition of improvement in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum., 38: 727-735, 1995)がACR20以上の改善群と、改善がみられなかった無効群を比較した結果、G/G遺伝子型の場合にはインフリキシマブの有効性が高い(インフリキシマブ感受性)、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブの有効性が低い(インフリキシマブ非感受性)、A/G遺伝子型の場合にはその患者のインフリキシマブ感受性とインフリキシマブ非感受性である確率が中間であるとインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
IRF5遺伝子多型rs729302は、IRF5遺伝子(インターフェロン調節因子−5(interferon regulatory factor 5:IRF5))の5’−フランキング領域に位置する多型であり、メジャーアレルが「A」であり、マイナーアレルが「C」である。
従って、IRF5遺伝子多型rs729302には、ホモ接合体A/A及びC/Cと、ヘテロ接合体A/Cの3つの型が存在する。
実施例3に示すとおり、54週間投与(3mg/kg×8回)のインフリキシマブ療法で、ACR50以上の改善群と、ACR20以下の改善群を比較した結果、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブ感受性でありかつ高い改善効果が得られる可能性が高く(インフリキシマブ高感受性)、それ以外の遺伝子型の場合には、インフリキシマブ感受性であっても高い改善効果を得る可能性は低い(インフリキシマブ低感受性)とインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
IRF5遺伝子多型rs2280714は、IRF5遺伝子の5kb下流に位置する多型であり、メジャーアレルが「A」であり、マイナーアレルが「G」である。
従って、IRF5遺伝子多型rs2280714には、ホモ接合体A/A及びG/Gと、ヘテロ接合体A/Gの3つの型が存在する。
実施例4に示すとおり、54週間投与(3mg/kg×8回)のインフリキシマブ療法で、ACR50以上の改善群と、ACR20以下の改善群を比較した結果、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブ低感受性、G/G遺伝子型の場合にはインフリキシマブ高感受性、A/G遺伝子型の場合にはその患者のインフリキシマブ高感受性とインフリキシマブ低感受性である確率が中間であるとインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
従って、インフリキシマブ感受性の被験者には、投与回数の減少や投与量を低下することにより、副作用の軽減を図ることができ、一方、インフリキシマブ非感受性或いはインフリキシマブ低感受性の被験者には、インフリキシマブの投与量の増加や投与間隔の短縮あるいは代替薬物への変更を検討することが可能となる。
かように、上記の遺伝子多型の検出は、関節リウマチ患者にとって、治療方法・治療薬を選定する上で重要な情報となる。
上記多型を核酸レベルで検出する方法は、特に制限はなく、当業者にとって公知の方法の中から選択することができる。
例えば、TaqMan PCR法、MALDI−TOF/MS法、ASO(allele-specific oligonucleotide)法、直接シークエンス法、RFLP法、インベーダー法、TGGE、DGGE法、MutY酵素法、マイクロアレイ、Protein truncation test(PTT)法、Snipper法等が挙げられ、目的等に応じて選択することができる。
TaqMan PCR法は、アレル特異的なTaqman プローブとTaq ポリメラーゼを用い、遺伝子多型の検出と該遺伝子多型を含む領域の増幅とを同時並行で行う方法である。Taqman プローブは、5’末端が蛍光物質で標識され、3’末端がクエンチャーで標識されている約20塩基前後のオリゴヌクレオチドであり、目的の遺伝子多型部位にハイブリダイズするよう設計されている。Taqポリメラーゼは、5’−3’ヌクレアーゼ活性を有する。これらのTaqmanプローブ及びTaqポリメラーゼ存在下において、目的の遺伝子多型を含む領域を増幅するよう設計されたPCRプライマーを用いて該遺伝子多型領域を増幅すると、増幅と並行して、Taqmanプローブが鋳型DNAの目的遺伝子多型部位にハイブリダイズする。フォワードプライマー(Forward primer)側からの伸長反応が、鋳型にハイブリダイズしたTaqman プローブに到達すると、Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により、Taqmanプローブの5’末端に結合していた蛍光物質が切断される。その結果、遊離した蛍光物質はクエンチャーの影響を受けなくなり、蛍光を発生する。蛍光強度の測定により、遺伝子多型の検出が可能となる。
核酸を複製又は増幅する公知の方法は、PCR法を応用した方法が多いが、PCR法によらない方法もある。例えば、Snipper法、UCAN法やLAMP法を利用した遺伝子多型タイピング方法が挙げられる。
本発明のインフリキシマブの有効性を判定するためのキットは、IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出するものであり、具体的には、当該遺伝子多型を検出するためのポリヌクレオチドを含むものである
当該ポリヌクレオチドは、各遺伝子多型部位を含む領域を含むものであればよく、一般にオリゴヌクレオチドと言われる長さのものが包含されるが、好ましくは10塩基長以上、より好ましくは10〜50塩基長のポリヌクレオチドがより好ましい。
当該ポリヌクレオチドは、DNAでもRNAでもよく、DNAとRNAのキメラであってもよい。また当該ポリヌクレオチドは、蛍光物質や、ビオチン又はジゴキシンのような結合親和性物質で標識されていてもよい。
上記ポリヌクレオチドは、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型のいずれかを含む領域を増幅するためのプライマー、上記遺伝子多型部位のいずれかを含む領域に結合するためのプローブとして使用される。
そのため上記IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型のいずれかを検出する検出用ポリヌクレオチドは、当該ゲノム遺伝子の一部と相補的な配列を含むものであるが、当該遺伝子とは無関係な任意の配列が含まれていてもよい。
上記ポリヌクレオチドをプライマーとする場合、増幅する領域及びタイピング方法に即したプライマーとなるように設計する。増幅する領域の長さは、遺伝子多型タイピングに支障がない限り制限はない。一般には15−1000塩基長、より好ましくは50−500塩基長程度を増幅するが、検出方法に従って適宜増減できる。また、増幅される領域の一部には遺伝子多型部位が含まれるが、増幅される領域内における遺伝子多型部位の位置に制限はなく、検出方法(タイピング方法)にしたがって適切な位置に配置することができる。そのためプライマーの設計にあたり、プライマーと遺伝子多型部位との位置関係は、検出方法にあわせて変更することができ、検出しようとする遺伝子多型を含むIL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型の一部領域(例えば、連続した50塩基長以上500塩基長以下)にハイブリダイズする限り、タイピング方法の特性を考慮しながら、プライマーを設計することができる。IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型検出用プライマーの長さは、通常15−50塩基長、好ましくは15−30塩基長であるが、タイピング方法によってはこれより長くてもよい。
また上記ポリヌクレオチドをプローブとする場合は、プローブが遺伝子多型部位を認識するように設計する。プローブ設計において、遺伝子多型部位は、タイピング方法にあわせ、プローブ内のいずれかの場所で認識されればよく、タイピング方法によっては、プローブの末端で遺伝子多型部位が認識されてもよい。この場合、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型ゲノムDNAに相補的な塩基配列の長さは、15−200塩基長であれば良く、より好ましくは15−100塩基長、さらに好ましくは15−50塩基長であるが、タイピング方法によってはこれより長くても短くてもよい。
各遺伝子多型を検出するための上記ポリヌクレオチドは、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型の塩基配列をもとに、プライマー又はプローブの別及び適応する検出方法に合わせて、任意の方法によって合成することができる。すなわち、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714の各遺伝子多型のゲノムDNA、及び公知遺伝子多型の位置情報に基づいて、公知手段により、当該塩基配列を有するポリヌクレオチドを合成することができる。更に、公知の手法に基づき、オリゴヌクレオチドの合成において、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用して、ポリヌクレオチドに任意の修飾を導入する方法や、合成されたポリヌクレオチドに、蛍光色素などを結合することも可能である。
本発明のインフリキシマブの有効性を判定するためのキットには、上記の各遺伝子多型を検出するためのポリヌクレオチドの他に、遺伝子多型タイピングに際して通常用いられる試薬類(例えば、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)やDNAポリメラーゼ、緩衝液等)や陽性コントロール等を含むことができる。
本発明のインフリキシマブの有効性判定方法において、各遺伝子の遺伝子多型を検出するために供する試料は、被験者から採取した生物学的試料をもとに、当業者に周知の方法で調製したDNA試料を用いることができる。
被験者から採取する生物学的試料に特に制限はなく、例えば、血液、毛髪、便、尿、唾液、細胞などを用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 被験者及び方法
インフリキシマブ治療を受けた33例の関節リウマチ患者(以下、RAとする)について、採血を行い、末梢血を原料とし、Quick Gene kit(Fuji Film社)を使用して、染色体DNAを抽出した。
そして、同患者の30週、54週におけるACR改善度(ACRコアセット)<参考文献:Felson, D.T. et al. American College of Rheumatology preliminary definition of improvement in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum., 38: 727-735, 1995)>と、HLA-DRB1遺伝子、IRF5遺伝子、IL10遺伝子、及びIL10RB遺伝子の多型との関連を解析した。解析は、χ2検定、フィッシャーの正確確率検定(Fisher's exact test)又はアーミテージの傾向検定(Armitage's trend test)を用いて行った。
実施例2 IL10RB遺伝子多型rs2834167
(1)IL10RB遺伝子多型rs2834167の増幅反応
抽出した染色体DNA40ngを鋳型として、200μM dNTP、2.5mM MgCl2、10pmol各プライマー及び1unit TaKaRa rTaqポリメラーゼ(TaKaRa製)を加え、25μLの反応液を調製した。PCR反応装置はGene Amp System 9700(アプライドシステムズ社製)を用い、93℃、3分の前処理の後、熱変性93℃、30秒、アニーリング60℃、30秒及び伸長反応72℃、30秒を1サイクルとし、40サイクル行った。
IL10RB遺伝子多型rs2834167を含む遺伝子断片を増幅するプライマーを以下に示す。
Forward primer CACGTGGCCTTTGAAGACATGG(配列番号1)
Reverse primer GCCACGAGAATTTCCCAGACAG(配列番号2)
(2)IL10RB遺伝子多型rs2834167の遺伝子型の検出
5μLのPCR増幅産物とアルカリ変性用溶液(湧永製薬製)5μLとを混合し、室温で5分間、放置した。ハイブリダイゼーション用溶液(ハイブリダイゼーション溶液、フィコエリスリン標識ストレプトアビジン、Aアリル検出用プローブ固相化Luminexビーズ及びGアリル検出用プローブ固相化Luminexビーズ(湧永製薬製))25μLを加え、55℃で30分間、ハイブリダイゼーションを行った。75μLの洗浄液(湧永製薬製)を加え、3,000rpmで1分間遠心分離を行い、スナッピングにより上清を除いた。75μLの洗浄液(湧永製薬製)を加え、Luminex−100システム(Luminex製)を用いて、各Luminexビーズにおける蛍光値の測定を行った。各検出用プローブの蛍光値が500以上である場合を陽性と判定し遺伝子型の決定をした。
IL10RB遺伝子多型rs2834167を検出するためのプローブを以下に示す。
Aアレル検出用 CTTTTGCCAAAGGGAACC(配列番号3)
Gアレル検出用 CTTTTGCCGAAGGGAACC(配列番号4)
(3)IL10RB遺伝子多型rs2834167とインフリキシマブの有効性
IL10RB遺伝子多型rs2834167の遺伝子型頻度をACR20以上の達成群と改善が見られなかった無効群とで比較を行ったところ、無効群においてA/A遺伝子型の有意な増加が認められた。54週における遺伝子型と改善度の結果は、表1に示される通りであった。
Figure 2009225713
表1に示されるように、インフリキシマブ治療を受けACR20以上の改善が見られなかった患者群においてはIL10RB遺伝子多型rs2834167のA/A遺伝子型の頻度が高くなっているのに対し、改善群にはA/A遺伝子型が存在しなかったことから、本遺伝子型がインフリキシマブ有効性に有意に関連していることが明らかとなった。
これより、G/G遺伝子型の場合にはインフリキシマブの有効性が高い(インフリキシマブ感受性)、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブの有効性が低い(インフリキシマブ非感受性)、A/G遺伝子型の場合にはその患者のインフリキシマブ感受性とインフリキシマブ非感受性である確率が中間であるとインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
実施例3 IRF5遺伝子多型rs729302
(1)IRF5遺伝子多型rs729302の遺伝子型の検出
アプライドバイオシステムズ社製のTaqMan試薬を用いて遺伝子型の決定を行った。
(2)IRF5遺伝子多型rs729302とインフリキシマブの有効性
IRF5遺伝子多型rs729302の遺伝子型頻度をACR50以上を達成した有効群とACR20あるいはそれ未満の無効群とで比較を行ったところ、遺伝子型頻度に有意差が認められた。54週における遺伝子型と改善度の結果は、表2に示される通りであった。
Figure 2009225713
インフリキシマブ治療を受けACR20及びACR50を達成した患者群においては、IRF5遺伝子多型rs729302のA/A遺伝子型が増加していた。
これにより、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブ感受性でありかつ高い改善効果が得られる可能性が高く(インフリキシマブ高感受性)、それ以外の遺伝子型の場合にはインフリキシマブ感受性であっても高い改善効果を得る可能性は低い(インフリキシマブ低感受性)とインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
実施例4 IRF5遺伝子多型rs2280714
(1)IRF5遺伝子多型rs2280714の増幅反応
抽出した染色体DNA20ngを鋳型として、200μM dNTP、2.5mM MgCl2、2pmol各プライマー及び0.25unit AmpliTaq Gold(アプライドバイオシステムズ)を加え、10μLの反応液を調製した。PCR反応装置はGene Amp System 9700(アプライドシステムズ社製)を用い、96℃、10分の前処理の後、熱変性96℃、30秒、アニーリング60℃、30秒及び伸長反応72℃、30秒を1サイクルとし、40サイクル行った。
IRF5遺伝子多型rs2280714を含む遺伝子断片を増幅するプライマーを以下に示す。
Forward primer GCTGCAATTGGAAGAAGAGGG(配列番号5)
Reverse primer TGATGTGGATTGGAAGTGGA(配列番号6)
(2)IRF5遺伝子多型rs2280714の遺伝子型の検出
増幅産物をテンプレートとしたダイレクトシークエンシング法によって塩基配列の確認を行い、遺伝子型を決定した。
(3)IRF5遺伝子多型rs2280714とインフリキシマブの有効性
IRF5遺伝子多型rs2280714の遺伝子型頻度をACR50以上を達成した有効群とACR20あるいはそれ未満の無効群とで比較したところ、遺伝子型頻度に有意差が認められた。54週における遺伝子型と改善度の結果は、表3に示される通りであった。
Figure 2009225713
IRF5遺伝子多型rs2280714のA/A遺伝子型は、ACR20及びそれ未満のインフリキシマブ抵抗群に増加していた。
これより、A/A遺伝子型の場合にはインフリキシマブ低感受性、G/G遺伝子型の場合にはインフリキシマブ高感受性、A/G遺伝子型の場合にはその患者のインフリキシマブ高感受性とインフリキシマブ低感受性である確率が中間であるとインフリキシマブ療法の可能性を予測できることが示された。
本発明の判定方法を用いることにより、治療における投与開始時点での有効性を患者ごとに決めることができる。この方法により、インフリキシマブの過剰な投与を防止し、患者の身体への負担や治療費の削減が可能となる。

Claims (4)

  1. IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性の判定方法。
  2. IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする関節リウマチ患者におけるインフリキシマブの有効性を判定するためのキット。
  3. IL10RB遺伝子のrs2834167多型、IRF5遺伝子のrs729302多型、及びIRF5遺伝子のrs2280714多型から選ばれる1以上の遺伝子多型を検出するためのポリヌクレオチドを含む請求項2記載のキット 。
  4. 前記ポリヌクレオチドが、IL10RB遺伝子多型rs2834167、IRF5遺伝子多型rs729302、及びIRF5遺伝子多型rs2280714から選ばれる1以上の遺伝子多型の多型部位を含む領域を増幅するためのプライマー又は当該多型部位を含む領域に結合するプローブである請求項3記載のキット。
JP2008074288A 2008-03-21 2008-03-21 インフリキシマブの有効性判定方法 Pending JP2009225713A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015083765A1 (ja) 2013-12-04 2015-06-11 国立大学法人大阪大学 生物学的製剤による関節リウマチの治療効果を予測判定する方法

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