JP2009224561A - 金属酸化物粒子含有分極性電極およびそれを用いた電気二重層キャパシタ - Google Patents

金属酸化物粒子含有分極性電極およびそれを用いた電気二重層キャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】電気二重層キャパシタの長寿命化を達成し得る分極性電極、およびこれを用いた電気二重層キャパシタを提供すること。
【解決手段】炭素材料とバインダーポリマーとを含んで構成される炭素材料多孔体と、平均粒子径1〜40nmの、例えば、四三酸化マンガンなどのような低価数の遷移金属酸化物粒子とを接触させてなり、金属酸化物粒子が、炭素材料多孔体に担持されている金属酸化物粒子含有分極性電極。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属酸化物粒子含有分極性電極およびそれを用いた電気二重層キャパシタに関する。
従来、四三酸化マンガンなどの遷移金属酸化物微粒子が知られている。
例えば、特許文献1(特開2001−122627号公報)には、電解反応と酸素含有ガスによる酸化反応とを組み合わせて製造される、一次粒子径が約90nmの四三酸化マンガン超微粒子が開示されている。
特許文献2(特開2001−261343号公報)には、特定濃度のマンガン溶液とアルカリ液とを反応させるとともに酸素含有ガスを吹き込む方法により製造される、平均粒子径が数十〜100nmの四三酸化マンガン微粒子が開示されている。
特許文献3(国際公開第2007/049549号パンフレット)には、特許文献2の方法を改良して製造された、平均粒子径が約10nmで変動係数が55%の四三酸化マンガン超微粒子が開示されている。
これらの微粒子は、電池材料に適用され得るものである。
また、充放電原理がイオンの吸脱着であり、理想的には化学反応を伴わない電気二重層キャパシタに対しても、四三酸化マンガンなどの遷移金属酸化物の適用が検討されている。
例えば、特許文献4(特開平9−63905号公報)には、表面を遷移金属酸化物で被覆した活性炭を分極性電極材料に用いた電気二重層キャパシタが開示されている。この技術は、酸化アルミニウム、酸化チタン、五酸化二タンタル、酸化ニオブなどの遷移金属酸化物で活性炭表面を被覆することにより、活性炭の活性点が引き金となる電解液の分解が抑制され、キャパシタの耐電圧を向上させることができるというものである。
また、特許文献5(特開2004−228148号公報)には、マンガン硝酸塩およびアセチレンブラックを熱分解することにより製造される、マンガン酸化物と炭素材との、100nm程度の複合化合物が開示されている。反応場の酸素圧力を調整して、Mn23、Mn34とアセチレンブラックとの複合体とすることもできるこれらの複合化合物は、リチウム二次電池や遷移金属酸化物を電極材料とする電気化学キャパシタの電極材料に適用され得るものであることが記載されている。
しかしながら、特許文献4の電極は、電極材料である活性炭の活性点を皮膜状の金属酸化物で塞ぐという構成により対電圧向上という効果を達成したもので、遷移金属酸化物が持つ性質を十分に利用したものとはいえない。
また、特許文献5の技術は、カーボン粒子と遷移金属酸化物粒子とバインダーとが均等に分散して形成された電極内の、カーボン粒子表面に位置する遷移金属酸化物粒子の擬似容量を利用して、キャパシタの電気容量を向上させたものである。
これらの電気二重層キャパシタでは、正負極の充放電電位が使用しているうちに化学反応がおこる電位へシフトしてしまい、電極が劣化し、寿命が短くなるという問題を有しており、キャパシタに求められる長寿命化を根本的に図ったものとは言えない。特に3Vを超える電圧で充放電した場合では、寿命がさらに短くなるという大きな問題があった。
特開2001−122627号公報 特開2001−261343号公報 国際公開第2007/049549号パンフレット 特開平9−63905号公報 特開2004−228148号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電気二重層キャパシタの長寿命化を達成し得る分極性電極、およびこれを用いた電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、炭素材料およびバインダーポリマーを含んで構成される炭素材料多孔体(従来の分極性電極)に対し、ナノレベルの粒子径を有する低価数の遷移金属酸化物を担持させてなる分極性電極を電気二重層キャパシタに適用した場合に、キャパシタ寿命が著しく長くなることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 炭素材料とバインダーポリマーとを含んで構成される炭素材料多孔体と、平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物粒子とを接触させてなり、前記遷移金属酸化物粒子が、前記炭素材料多孔体に担持されていることを特徴とする金属酸化物粒子含有分極性電極、
2. 前記遷移金属酸化物粒子が、前記炭素材多孔体の空隙内部に担持されている1の金属酸化物粒子含有分極性電極、
3. 前記炭素材料の平均粒子径が、1〜20μmである1または2の金属酸化物粒子含有分極性電極、
4. 前記遷移金属酸化物が、前記炭素材料に対して1〜30質量%含まれる1〜3のいずれかの金属酸化物粒子含有分極性電極、
5. 前記遷移金属酸化物が、マンガン酸化物または鉄酸化物である1〜4のいずれかの金属酸化物粒子含有分極性電極、
6. 前記マンガン酸化物が、四三酸化マンガンである5の金属酸化物粒子含有分極性電極、
7. 前記鉄酸化物が、四三酸化鉄である5の金属酸化物粒子含有分極性電極、
8. 炭素材料とバインダーポリマーとを含む組成物を成形して得られた炭素材料多孔体を、平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物粒子の分散液中に浸漬することを特徴とする金属酸化物粒子含有分極性電極の製造方法、
9. 1〜7のいずれかの金属酸化物粒子含有分極性電極を正の分極性電極として備えることを特徴とする電気二重層キャパシタ、
10. 少なくとも正負一対の分極性電極と、これら分極性電極間に挟持されたセパレータと、前記分極性電極およびセパレータ内に含浸された有機系電解液とを備える電気二重層キャパシタであって、少なくとも前記正の分極性電極が、1〜7のいずれかの金属酸化物粒子含有分極性電極であることを特徴とする電気二重層キャパシタ
を提供する。
本発明の金属酸化物粒子含有分極性電極は、炭素材料多孔体に平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物微粒子が担持されているから、この分極性電極を備えた電気二重層キャパシタの寿命性能が著しく向上し得るのみならず、寿命に到達するまでの内部抵抗の上昇を抑制し得る。
また、本発明の分極性電極に用いられる遷移金属酸化物粒子はナノ粒子であるから、バルク粒子よりも少量で効果が得られるため、電極部材を軽量化することができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る金属酸化物粒子含有分極性電極は、炭素材料とバインダーポリマーとを含んで構成される炭素材料多孔体と、平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物粒子とを接触させてなり、遷移金属酸化物粒子が、炭素材料多孔体に担持されているものである。
ここで、遷移金属酸化物粒子の炭素材料多孔体への「担持」とは、炭素材料多孔体(担体)を構成する炭素材料およびバインダーポリマーの表面に金属酸化物粒子が付着していることを意味し、その付着態様としては、物理的吸着、静電力による結合、孔内に取り込まることによる構造的な固定化等任意である。孔内とは、少なくとも、バインダーポリマーにより結着した炭素材料間に形成される炭素材料多孔体内部の空隙を意味し、場合によっては炭素材料自体が有する微細孔も含むものである。
また、「低価数の遷移金属酸化物」とは、酸化によって価数の高い酸化物に転化する遷移金属酸化物を意味する。
本発明において、遷移金属酸化物粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は1〜40nmであるが、比表面積を大きくするという観点から、1〜20nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。
また、その変動係数は60%以下が好ましく、BET比表面積は60〜300m2/gが好ましい。上記平均粒子径および変動係数は、走査型または透過型電子顕微鏡を用いて遷移金属酸化物粒子を撮影し、その画像から任意の数の粒子をランダム抽出して求めた数値である。
なお、平均粒子径1〜40nmというナノサイズの遷移金属酸化物粒子は、上記特許文献3(国際公開第2007/049549号パンフレット)に記載の方法で製造することができる。
遷移金属酸化物としては、上述した低価数のものであれば特に限定されるものではなく、金属種として例示すると、マンガン酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、銅酸化物、クロム酸化物等が挙げられ、中でも埋蔵量および原料価格の観点から、マンガン酸化物、鉄酸化物が好ましい。また、低価数のもののうち、最低価数かそれに近いものであることが好ましい。価数によっては単体で安定でないものであっても、他の価数のもの合わさることにより安定して存在するものであればかまわない。
本発明においては、特に、高度に酸化され得る四三酸化マンガン(Mn34)、四三酸化鉄(Fe34)が好適である。なお、これらの酸化物は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
一方、炭素材料多孔体は、炭素材料とバインダーポリマーとを含んで構成される。
ここで、炭素材料としては、特に限定されるものではなく、分極性電極に一般的に用いられる各種炭素材料が挙げられ、例えば、植物系の木材、のこくず、やし殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、もしくはこれらを熱分解した石炭、石油系ピッチもしくはタールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物および/または廃タイヤ等を原料とし、これらを炭化したもの、またはこれらをさらに賦活化して製造した活性炭等が挙げられる。
炭素材料の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
バインダーポリマーとしても特に限定されるものではなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー等のフッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、スチレンブタジエン共重合体等のラテックス、ポリイミド、ポリアミドイミド、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
バインダーポリマーの添加量は、例えば、炭素材料100質量部に対して0.5〜20質量部とすることができ、好ましくは1〜10質量部である。
また、上記炭素材料多孔体には、必要に応じて導電材を添加することもできる。この導電材としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、(酸化)チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム,ニッケル等の金属ファイバなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
導電材の添加量は、例えば、炭素材料100質量部に対して0.1〜20質量部とすることができ、好ましくは0.5〜10質量部である。
上記炭素材料多孔体は、例えば、上述した炭素材料、バインダーポリマー、必要に応じて導電材、および必要に応じて溶媒を混合して調製した組成物を、基材上に塗布して乾燥することで、または押出し成形やフィルム成形することで製造できる。基材上に塗布する場合、電極部材を構成する集電体上に直接塗布してもよい。
塗布の方法は、特に限定されず、ドクターブレード、エアナイフ等の公知の塗布法を適宜採用すればよい。
集電体を用いる場合、正極集電体としては、アルミニウムまたは酸化アルミニウムを用いることが好ましく、一方、負極集電体としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、ニッケルまたは表面が銅めっき膜もしくはニッケルめっき膜にて形成された金属等を用いることが好ましい。
上記各集電体を構成する金属等の形状としては、薄い箔状、シート状、孔が形成されたスタンパブルシート状等を採用できる。また、その厚さとしては、通常、1〜200μm程度である。
本発明の金属酸化物粒子含有分極性電極は、以上のようにして予め成形された炭素材料多孔体と、上記遷移金属酸化物粒子とを接触させて得ることができる。
接触手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、遷移金属酸化物粒子の分散液を調製し、この分散液中に炭素材料多孔体を浸漬したり、分散液を炭素材料多孔体に塗布やスプレーしたりする手法が挙げられる。
このような手法で接触させることで、遷移金属酸化物粒子は、炭素材料多孔体の表面に付着したり、空隙(孔)の内部に侵入したりして、炭素材料多孔体に担持される。
特に、炭素材料多孔体の空隙内部に侵入する遷移金属酸化物粒子量を増大させることを考慮すると、上記各接触法の中でも遷移金属酸化物粒子の分散液中に炭素材料多孔体を浸漬させる手法が最適である。
なお、接触時の温度は任意であるが、室温(25℃程度)で行うことができる。
上記分散液の調製法としては、分散媒体中に遷移金属酸化物粒子を添加し、撹拌して調製しても、その逆でもよい。なお、調製時の温度は任意であるが、室温(25℃程度)で行うことができる。
分散媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、オキシレングリコール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、炭素材料多孔体に含浸した後の乾燥等の作業性や遷移金属酸化物粒子の分散能を考慮するとメタノールおよび水が好適である。
分散液中の遷移金属酸化物粒子の濃度は、特に限定されるものではないが、粒子を媒体中に均一に分散させることを考慮すると、1〜10質量%程度が好ましい。
炭素材料多孔体に対する遷移金属酸化物粒子の担持量は、特に限定されるものではないが、得られるキャパシタの寿命性能の向上効果や、担体である炭素材料多孔体の空隙率、さらには得られた電極の重量などを考慮すると、炭素材料に対して0.1〜30質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%がより一層好ましい。
なお、この担持量は、上述した接触法に用いる分散液の粒子濃度を変えたり、接触させる回数を変えたりすることで、適宜調節することができる。
上記炭素材料多孔体と遷移金属酸化物粒子とを接触させた後、風乾や加熱乾燥などの適宜な手法で乾燥させることで、本発明の金属酸化物粒子含有分極性電極を得ることができる。
なお、炭素材料多孔体を製造するための組成物(分極性電極用組成物)中に遷移金属酸化物粒子を配合し、これを成形して遷移金属酸化物粒子を含有する分極性電極を製造する手法も考えられる。
しかしながら、後述の比較例に示すように、この手法で得られた分極性電極を用いたキャパシタは(遷移金属酸化物粒子の配合量が同等である場合)寿命性能がほとんど向上しない。
この理由は定かではないが、予め成形した炭素材料多孔体に遷移金属酸化物粒子を担持させる場合、当該粒子がバインダーポリマーに覆われることはなく、担持された粒子が全て(少なくともその一部は)表面に露出した状態で存在すると考えられる。すなわち、担持された遷移金属酸化物粒子は、キャパシタの分極性電極において、炭素材料多孔体と電解液とが接する界面に存在することになる。
一方、分極性電極用組成物中に遷移金属酸化物粒子を配合した場合、電極の成形過程で遷移金属酸化物粒子の少なくとも一部はバインダーポリマーに取り込まれ、その全表面がバインダーポリマーで覆われることになる。すなわち、分極性電極用組成物中に遷移金属酸化物粒子を配合する場合、その有効量が接触法の場合よりも少なくなるため、寿命性能の向上効果が十分に発揮されないものと推測される。
本発明に係る電気二重層キャパシタは、少なくとも正の分極性電極として上述した金属酸化物粒子含有分極性電極を備えるものである。
より具体的には、少なくとも正負一対の分極性電極と、これら分極性電極間に挟持されたセパレータと、分極性電極およびセパレータ内に含浸された電解液とを備え、少なくとも正の分極性電極が上述した金属酸化物粒子含有分極性電極であるものである。
この場合、金属酸化物粒子含有分極性電極以外のその他のキャパシタ構成部材としては、公知の部材から適宜選択して採用すればよい。
セパレータとしては、例えば、セルロース系セパレータ、ポリオレフィン系セパレータなどが挙げられる。
電解質としては、液体、固体のいずれでもよく、また水系、非水系のいずれでもよいが、非水系電解質が好適である。
非水系電解質としては、電解質塩を有機溶媒に溶かしてなる有機系電解液が挙げられる。
電解質塩としては、テトラエチルホスホニウムテトラフルオロボレート等の4級ホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられる。
本発明の金属酸化物粒子含有分極性電極は、少なくとも電気二重層キャパシタの正側の分極性電極に用いることで、キャパシタの寿命性能向上効果および内部抵抗の上昇抑制効果が発揮されるものであるが、もちろん、正負両極に金属酸化物粒子含有分極性電極を用いることもできる。
上記金属酸化物粒子含有分極性電極を用いることで寿命性能向上や内部抵抗上昇抑制効果が得られる理由は定かではない。しかしながら、酸化マンガン(II)と酸化マンガン(III)との混合物とされることもある四三酸化マンガンは、酸化に伴って下記の形態をとることが知られている(かっこ内はマンガンの酸化数)ことから以下のように推測される。
Mn34(2.7)→Mn23(3.0)→MnO2(4.0)
すなわち、低価数の四三酸化マンガンは、電気二重層キャパシタ内の酸素を積極的に消費して高価数の酸化マンガンに変化することで、分極性電極内に存在するその他の電極活物質の酸化を防止する作用を発揮していると推測される。
加えて、本発明の分極性電極に用いられる四三酸化マンガンは、ナノ粒子であって単位質量当たりの表面積が大きいため、バルクの粒子を用いた場合よりも上記酸素消費反応に関与できる分子が多くなり、さらには上述の通り粒子が炭素材料多孔体と電解液とが接する界面に存在しているので、より効果的に分極性電極の劣化を防止し得るものと推測される。
本発明の電気二重層キャパシタの製造方法の一例を挙げると、一対の電極間に、必要に応じてセパレータを介在させてなる電気二重層キャパシタ構造体を積層、折畳、または捲回し、これを電池缶またはラミネートパック等の電池容器に収容した後、電解液を充填し、電池缶であれば封缶することにより、一方、ラミネートパックであればヒートシールすること等により、組み立てる方法があるが、これに限定されるものではなく、キャパシタ構成部材の種類により適宜な手法を用いればよい。
本発明の電気二重層キャパシタは、携帯電話、ノート型パソコンや携帯用端末等のメモリーバックアップ電源用途、携帯電話、携帯用音響機器等の電源、パソコン等の瞬時停電対策用電源、太陽光発電、風力発電等と組み合わせることによるロードレベリング電源等の種々の小電流用蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、大電流で充放電可能な電気二重層キャパシタは、電気自動車、電動工具等の大電流を必要とする大電流蓄電デバイスとして好適に使用することができる。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
[1]炭素材料多孔体の作製
[製造例1]
やし殻由来の炭素材料を賦活処理してなる活性炭(比表面積2000m2/g)90質量部、アセチレンブラック5質量部、ポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部、および塗工溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPという)200質量部を混合してペースト状にし、塗工用組成物を調製した。
得られたペースト状の塗工用組成物を、エッチドアルミ集電箔(30CB、日本蓄電器工業(株)製)の片面にドクターブレードで塗布して80℃で4時間減圧乾燥し、集電箔上に接合した炭素材料多孔体を形成した。
[2]四三酸化マンガン粒子の製造
[製造例2]
国際公開第2007/049549号パンフレットに記載の方法に準じ、以下の手法で製造した。
0.28mol/LのNa2SO4水溶液のA槽、0.5mol/LのNaOH水溶液のB槽、N,N−ジエチルメチル−N−〔2−メトキシエチル〕アンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドの25質量%エタノール溶液のC槽、0.25mol/LのMnSO4水溶液のD槽、および0.28mol/LのNa2SO4水溶液のE槽を連結し、A槽とB槽との連結部、およびC槽とD槽との連結部にそれぞれ陽イオン交換膜(アトムス社製、商品名:CMX−SB)を取り付け、B槽とC槽との連結部、およびD槽とE槽との連結部にそれぞれ陰イオン交換膜(アトムス社製、商品名:AHA)を取り付けた電気透析装置を用意した。
この電気透析装置のC槽の液温を20〜25℃にし、A槽端とE槽端との間に電圧5Vの直流電流を印加した。その後、C槽に生じた茶色沈殿を濾別し、メタノールで洗浄し、乾燥させないようにしながら四三酸化マンガン粒子のケーキを得た。このケーキに純水を加えて懸濁液とし、残存するメタノールを揮発させた後、一部サンプリングして懸濁液中の固形分質量を量り、純水を加えて5質量%の四三酸化マンガン粒子水懸濁液を調製した。
得られた四三酸化マンガンのケーキの一部をエチレングリコールに、固形分質量で0.01質量%〜0.1質量%になるように仕込み、超音波などで分散させたスラリーを調製した。得られたスラリーをカーボン保護したコロジオン膜貼り付けメッシュに採取し、12時間以上常温にて真空乾燥した後、TEM(日立ハイテクノロジー社製透過型電子顕微鏡:HF−2000型、加速電圧200eV)を用いて倍率120万倍にて四三酸化マンガン粒子を撮影して得た画像(図1)から、無作為に20個の粒子を選んでその直径を測定し、平均粒子径および変動係数(標準偏差/平均粒子径×100(%))を算出した。
得られた四三酸化マンガン粒子の平均一次粒子径は7nm、変動係数は43%であった。
また、この四三酸化マンガン粒子のX線回折装置(リガク製、RINT−TTRIII、X線源:CuKa)を用い、X線回折スペクトルを測定した。TEM画像およびX線回折スペクトルを図1および図2に示す。
[3]金属酸化物粒子含有分極性電極の作製
[実施例1]
製造例2で得られた四三酸化マンガン粒子を分散させた5質量%水懸濁液中に、製造例1で得られた炭素材料多孔体を2〜3分間浸した後、これを取り出して80℃で減圧乾燥した。乾燥後の多孔体を集電箔ごとロールプレスで圧延して、集電箔上に接合した四三酸化マンガン粒子含有分極性電極を得た。四三酸化マンガン粒子の担持量は、炭素材料多孔体中の活性炭質量に対して2質量%であった。
[比較例1]
平均粒子径100nmの四三酸化マンガン粒子(東ソー社製、ブラウノックス(登録商標))を用いた以外は、実施例1と同様にして集電箔を接合した四三酸化マンガン含有分極性電極を得た。四三酸化マンガンの担持量は、炭素材料多孔体中の活性炭質量に対して2質量%であった。
[比較例2]
やし殻由来の炭素材料を賦活処理してなる活性炭(比表面積2000m2/g)90質量部、アセチレンブラック5質量部、ポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部、実施例1で得られた四三酸化マンガン2.05質量部、およびNMP200質量部を混合してペースト状にし、塗工用組成物を調製した。
この塗工用組成物を用いた以外は、製造例1と同様にして集電箔を接合した四三酸化マンガン粒子含有分極性電極を得た。
[4]電気二重層キャパシタの作製
[実施例2]
実施例1で得られた集電箔接合分極性電極を正極とし、製造例1で得られた集電箔接合炭素材料多孔体そのものを負極とし、これらをセルロース製セパレータ(TF40−35、日本高度紙工業(株)製)を介して積層して電極集合体を組み立てた。正極および負極に、正電極端子と負電極端子とをそれぞれ付け、アルミラミネート外装容器に収納した。
次いでテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを1.0mol/Lに調製した炭酸プロピレン溶液を外装容器内に注入し、電極集合体に十分に含浸させた後、外装容器を密閉して電気二重層キャパシタを得た。
[比較例3]
比較例1で得られた四三酸化マンガン粒子含有分極性電極を正極として用いた以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。
[比較例4]
製造例1で得られた炭素材料多孔体をそのまま正極として用いた以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。
[比較例5]
比較例2で得られた四三酸化マンガン粒子含有分極性電極を正極として用いた以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。
上記実施例2および比較例3〜5で作製した電気二重層キャパシタについて、70℃で3.2Vのフロート試験を行った。
フロート試験は20時間ずつ電圧を印加した後の静電容量を測定しながら行った。初期容量から80%容量に到達した時間(寿命性能)と、初期抵抗に比べたその時点での抵抗の上昇率を測定した結果を表1に示す。
表1に示されるように、本発明の四三酸化マンガン粒子を含有する分極性電極を備えた実施例2の電気二重層キャパシタは、これを用いない比較例4の電気二重層キャパシタと比べ、寿命性能が2倍に、抵抗上昇率が半分になっていることがわかる。
また、平均粒子径の大きな四三酸化マンガン粒子を含有する分極性電極を備えた比較例3の電気二重層キャパシタに比べ、寿命性能が1.5倍に、抵抗上昇率が0.67倍になっていることがわかる。
さらに、炭素材料多孔体製造用の組成物中に予め四三酸化マンガンを配合して作製した分極性電極を備えた比較例5の電気二重層キャパシタに比べ、寿命性能が2倍に、抵抗上昇率が0.67倍になっていることがわかる。
製造例2で得られた四三酸化マンガン粒子のTEM画像を示す図である。 製造例2で得られた四三酸化マンガン粒子のX線回折スペクトルを示す図である。

Claims (10)

  1. 炭素材料とバインダーポリマーとを含んで構成される炭素材料多孔体と、平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物粒子とを接触させてなり、
    前記金属酸化物粒子が、前記炭素材料多孔体に担持されていることを特徴とする金属酸化物粒子含有分極性電極。
  2. 前記遷移金属酸化物粒子が、前記炭素材多孔体の空隙内部に担持されている請求項1記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  3. 前記炭素材料の平均粒子径が、1〜20μmである請求項1または2記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  4. 前記遷移金属酸化物が、前記炭素材料に対して1〜30質量%含まれる請求項1〜3のいずれか1項記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  5. 前記遷移金属酸化物が、マンガン酸化物または鉄酸化物である請求項1〜4のいずれか1項記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  6. 前記マンガン酸化物が、四三酸化マンガンである請求項5記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  7. 前記鉄酸化物が、四三酸化鉄である請求項5記載の金属酸化物粒子含有分極性電極。
  8. 炭素材料とバインダーポリマーとを含む組成物を成形して得られた炭素材料多孔体を、平均粒子径1〜40nmの低価数の遷移金属酸化物粒子の分散液中に浸漬することを特徴とする金属酸化物粒子含有分極性電極の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項記載の金属酸化物粒子含有分極性電極を正の分極性電極として備えることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
  10. 少なくとも正負一対の分極性電極と、これら分極性電極間に挟持されたセパレータと、前記分極性電極およびセパレータ内に含浸された有機系電解液とを備える電気二重層キャパシタであって、
    少なくとも前記正の分極性電極が、請求項1〜7のいずれか1項記載の金属酸化物粒子含有分極性電極であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
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