JP2009222090A - 流体封入式筒形防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】オリフィス通路の反共振作用に起因する著しい高動ばね化が効果的に回避されて、防振性能が向上され得る、新規な構造の流体封入式筒形防振装置を提供する。
【解決手段】一対の流体室54a,54bにおける周方向端部間を相互に連通せしめるリリーフ通路60を形成すると共に、両流体室54a,54bの周方向端部間をインナ軸部材12と中間筒部材22の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36においてリリーフ通路60の流体室54への連通を遮断する弾性仕切片62,64を設けて、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時に弾性仕切片62,64の弾性変形に基づきリリーフ通路60が連通状態とされるようにした。
【選択図】図1
【解決手段】一対の流体室54a,54bにおける周方向端部間を相互に連通せしめるリリーフ通路60を形成すると共に、両流体室54a,54bの周方向端部間をインナ軸部材12と中間筒部材22の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36においてリリーフ通路60の流体室54への連通を遮断する弾性仕切片62,64を設けて、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時に弾性仕切片62,64の弾性変形に基づきリリーフ通路60が連通状態とされるようにした。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、自動車のサスペンションブッシュやエンジンマウント、ボデーマウント、サスペンションメンバマウント等に採用され得る流体封入式筒形防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、流体封入式筒形防振装置が知られている。かかる流体封入式筒形防振装置では、インナ軸部材とその外周側に配設されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された一対の流体室が設けられている。これら流体室はオリフィス通路を通じて相互に連通せしめられており、一対の流体室の圧力差によるオリフィス通路を通じての流体の共振作用等の流動作用に基づき、防振効果が得られる。
ところで、このような流体封入式の筒形防振装置では、異なる複数の周波数域の振動に対してそれぞれ防振効果が要求されることが多い。具体的に例示すると、流体封入式筒形防振装置が自動車のサスペンションブッシュに適用される場合には、車輪の質量アンバランス等に起因して生ぜしめられるフラッタ等に相当する比較的に低周波数域の振動に対する防振性能や、路面の継ぎ目や亀裂、段差等の凹凸の大きな路面を走行した際に発生するハーシュネス等に相当する比較的に高周波数域の振動に対する防振性能が要求される。
ところが、フラッタ等に相当する低周波数域の振動にチューニングされた低周波オリフィス通路による防振特性を充分に確保しつつ、かかる低周波オリフィス通路のチューニング周波数よりも高い周波数域のハーシュネス等に相当する振動に対する防振特性を得ようとしても、この高周波側の防振特性が低周波オリフィス通路の反共振的な作用によって大幅に低下してしまうことが問題となる。
そこで、かかる問題に対処するために、例えば、オリフィス通路と並列的に短絡路を設けると共に、短絡路を遮断するように弾性片を設けて、弾性片の弾性変形に基づき短絡路を連通状態と遮断状態に切り換えるリリーフ機構を設けた構造が提案されている。例えば、特許文献1(特表2000−500217号公報)の図3に記載された密封リップ(12,12’)や特許文献2(特開平01ー255736号公報)の図3に記載されたゴム唇片9等が、上述の弾性片に相当する。
しかしながら、これら従来構造のリリーフ機構は、何れも、二つの液室の圧力差に基づいて弾性片が弾性変形せしめられて、短絡路が連通状態となることを期待したものである。そのために、現実には、作動が不安定で、目的とする防振性能を安定して得ることが困難であった。特にゴム弾性体からなる弾性片では、成形収縮等によって成形時の寸法精度の確保が難しく、更に、本体ゴム弾性体の外周面に加硫接着されるアウタスリーブの縮径加工の影響で弾性片の短絡路の壁面に対する当接力が変化し易いことから、目的とする圧力の作用時に確実に作動するリリーフ機構の実現が困難であった。
なお、目的とする圧力の作用時に短絡路が確実に連通状態となるように、予め弾性片と短絡路の壁面との当接状態(遮断状態)が解消され易くすることも考えられるが、そうすると、反対に、僅かな圧力で短絡路が連通状態となってしまって、低周波オリフィス通路の流体流動量が確保され難くなり、低周波オリフィス通路による低周波振動に対する防振性能が低下してしまうおそれがあったのである。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、二つの流体室間でのオリフィス通路を通じての流体流動作用による防振性能が充分に確保されつつ、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時には、二つの流体室を連通するリリーフ通路が確実に連通状態と為されて、オリフィス通路の反共振作用に起因する著しい高動ばね化が回避されて防振性能が向上され得る、新規な構造の流体封入式筒形防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、インナ軸部材の外周側に中間筒部材を配設せしめて、それらインナ軸部材と中間筒部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、インナ軸部材を挟んだ径方向両側において本体ゴム弾性体に設けた一対のポケット部をそれぞれ中間筒部材に設けた窓部を通じて外周面に開口させる一方、中間筒部材にアウタ筒部材を外嵌固定して一対のポケット部を覆蓋せしめることにより非圧縮性流体が封入された一対の流体室を形成し、更に、一対のポケット部の少なくとも一方の開口部に対してポケット部の開口部を周方向に跨いで延びる半円筒状のオリフィス部材を組み付けてアウタ筒部材の内周面に沿って配設し、オリフィス部材とアウタ筒部材の間を周方向に延びるオリフィス通路を形成した流体封入式筒形防振装置において、一対の流体室における周方向端部間を相互に連通せしめるリリーフ通路を形成すると共に、本体ゴム弾性体によって形成されて一対の流体室における周方向端部間をインナ軸部材と中間筒部材の間に跨って径方向に延びる弾性隔壁部において、リリーフ通路の流体室への開口部よりもインナ軸部材側に位置して一対の流体室の少なくとも一方の側に向かって突出し、その突出先端面がオリフィス部材に当接せしめられることにより、リリーフ通路の流体室への連通を遮断する弾性仕切片を設けて、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時において一対の流体室間に惹起される圧力差に基づく弾性仕切片の弾性変形によってリリーフ通路が連通状態とされるようにした流体封入式筒形防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置においては、オリフィス金具に当接せしめられてリリーフ通路を遮断せしめている弾性仕切片が、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力に際して、一対の流体室間の圧力差に基づき弾性変形せしめられることで、リリーフ通路が連通状態とされるようになっている。換言すると、オリフィス通路のチューニング周波数の振動入力時には、リリーフ通路の遮断状態が解除されるような弾性仕切片の変形が惹起されないようになっており、その結果、リリーフ通路が遮断状態とされている。これにより、リリーフ通路を通じての流体室の圧力漏れが抑えられて、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の量が効率良く確保されることから、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が安定して得られる。
また、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力に対しては、オリフィス通路が反共振的な作用によって実質的に閉塞状態となっても、弾性仕切片の弾性変形によりリリーフ通路が連通状態とされて、リリーフ通路を通じての一対の流体室間の流体流動が許容される。その結果、低動ばね効果に基づき、かかるオリフィス通路の反共振的な作用に起因する高動ばね化が回避され得る。
ここにおいて、弾性仕切片が、一対の流体室における周方向端部間をインナ軸部材と中間筒部材の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体の弾性隔壁部に突出形成されていることから、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力時における本体ゴム弾性体の弾性変形を利用して、弾性仕切片の突出方向の変形変位が生ぜしめられ易くなる。これにより、弾性仕切片の突出高さ等の寸法に多少のばらつきがあっても、当該振動入力時におけるリリーフ通路の連通状態が発現され易くなるのであり、その結果、従来構造の中間筒部材とアウタ筒部材との間に単に弾性突片を設けたものに比して、目的とするオリフィス通路よりも高周波数域の振動に対する低動ばね効果が高い信頼性で発揮され得る。
また、弾性仕切片がオリフィス部材と本体ゴム弾性体の間に設けられていることから、従来構造の中間筒部材とアウタ筒部材との間に弾性突片を設けたものに比して、弾性仕切片の有効自由長(突出高さ)が充分に大きく設定され得る。これにより、寸法誤差による弾性仕切片の特性ばらつきが効果的に抑えられると共に、耐久性の向上が図られ得る。更に、弾性仕切片を本体ゴム弾性体と一体形成することが容易であり、且つ弾性仕切片の基端部分を本体ゴム弾性体の径方向中間部分等に一体的に連結することが可能であることから、中間筒部材で拘束変形される従来構造の弾性突片に比して、基端部分への応力集中が軽減されて、耐久性の更なる向上が図られ得る。
それ故、本発明の流体封入式筒形防振装置によれば、二つの流体室間でのオリフィス通路を通じての流体流動作用によるオリフィス効果が充分に確保されつつ、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時には、リリーフ通路の確実な連通状態により所期の低動ばね効果が安定して得られて、防振性能の向上が図られ得るのである。
また、本発明に係る流体封入式筒形防振装置では、弾性仕切片が、その基端部分において本体ゴム弾性体に設けられたポケット部の底面に対して一体的に連結されていると共に、その両側端縁部において本体ゴム弾性体に設けられたポケット部の両側壁面に対して一体的に連結されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、弾性仕切片における基端部分と両側端縁部の少なくとも3辺が本体ゴム弾性体と一体形成されることとなり、弾性仕切片の応力集中が軽減されて、耐久性の更なる向上が図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式筒形防振装置では、オリフィス部材の内周面には、弾性仕切片の突出先端部分に対して、リリーフ通路側で対向位置して弾性仕切片のリリーフ通路側への弾性変形を制限する拘束用当接部が設けられている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、例えば、弾性仕切片の突出先端部分がリリーフ通路側に巻き込まれるように弾性変形した状態でオリフィス部材に当接されることが抑えられ、かかる当接状態に起因して弾性仕切片が初期の形状に戻り難くなるような問題が解消されることから、リリーフ通路における所期の遮断状態と連通状態が一層安定して実現され得る。
ここにおいて、上述の如き拘束用当接部に対して弾性仕切片が当接してリリーフ通路側への変形が制限された構造を採用する場合において、好適には、リリーフ通路を複数形成し、その少なくとも一つのリリーフ通路には一方の流体室への開口部において弾性仕切片を形成すると共に、別の少なくとも一つのリリーフ通路には他方の流体室への開口部において弾性仕切片を形成した態様が採用される。
これら各弾性仕切片は、後述する実施形態に記載しているように、リリーフ通路と反対側にだけ弾性変形することで一方向弁のように作用することから、少なくとも二つのリリーフ通路を形成し、一方のリリーフ通路には一方の流体室側への開口部において他方の流体室から該一方の流体室に流入する方向の流体流動だけを許容する態様で弾性仕切片を形成すると共に、他方のリリーフ通路には他方の流体室側への開口部において一方の流体室から該他方の流体室に流入する方向の流体流動だけを許容する態様で弾性仕切片を形成することにより、二つの流体室間の相互間で両方向の流体流動を許容するリリーフ通路が実現されるのである。
なお、何れのリリーフ通路も、弾性仕切片が突出形成された側の反対側の開口端部においては、流体室に対して常時開放状態とされていて良い。また、後述する実施形態に示すように、リリーフ通路が、インナ軸部材と中間筒部材の間に跨がって径方向に延びる弾性隔壁部に対して形成される場合には、リリーフ通路における流体室への開口部に対してインナ軸部材側に位置して弾性隔壁部が突出形成されることが望ましい。これにより、一対の流体室の圧力変動に基づくリリーフ通路を通じての流体流動がより効率的に生ぜしめられることとなる。
また、本発明に係る流体封入式筒形防振装置では、一対のポケット部の各開口部における周方向端部間を繋ぐようにして、中間筒部材の軸方向中間部分を周方向に延びる短絡用凹溝が形成されており、短絡用凹溝がアウタ筒部材で覆蓋されることによってリリーフ通路が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、リリーフ通路の形状や大きさ等が、本体ゴム弾性体の弾性変形による変化の影響を受けることなく、安定して確保され得る。
また、本発明に係る流体封入式筒形防振装置では、本体ゴム弾性体の弾性隔壁部において、一対の流体室の対向方向に貫通する短絡用孔が形成されており、短絡用孔によってリリーフ通路が構成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、インナ軸部材と中間筒部材の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体の弾性隔壁部を利用して、リリーフ通路の形状や大きさ等の設計自由度が大きく確保され得ることに加え、リリーフ通路が中間筒部材とアウタ筒部材の間に形成されないことに基づき、それら中間筒部材とアウタ筒部材の間におけるオリフィス通路の形成スペースが一層大きく確保されて、オリフィス通路の設計自由度が一層大きく確保され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。先ず、図1,2には、本発明に従う構造とされた流体封入式筒形防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用サスペンションブッシュ10が示されている。自動車用サスペンションブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。内筒金具12が図示しない車両ボデーに取り付けられると共に、外筒金具14が車輪側の部材である図示しないサスペンションアームに取り付けられることによって、車両ボデーとサスペンションアームの間に介装されており、それら車両ボデーとサスペンションアームを相互に防振連結せしめるようになっている。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、サスペンションブッシュ10の一軸直角方向(径方向一方向)となる図1中の上下方向をいい、また、左右方向は、該一軸直角方向に直交するサスペンションブッシュ10の一軸直角方向となる図1中の左右方向をいう。また、サスペンションブッシュ10の軸方向は、図1中の紙面方向乃至は図2中の左右方向をいう。
より詳細には、内筒金具12は、小径の略円筒形状を有しており、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された剛性部材とされている。また、内筒金具12の軸方向中間部分が両端部分に比して大径の拡径部18とされていると共に、内筒金具12の軸方向一方(図2中、左)の端部には外フランジ状部20が形成されている。
また、内筒金具12の外周側には、中間筒部材としての中間スリーブ22が配設されている。中間スリーブ22は、内筒金具12に比して大径の略円筒形状を有しており、内筒金具12と同様の金属材等からなる高剛性の部材とされている。更に、中間スリーブ22の軸方向中間部分には、径方向一方向(図1中、上下)で対向するように一対の窓部24a,24bが形成されている。この窓部24は、中間スリーブ22の周方向にそれぞれ半周弱の長さで延びるように形成されて、中間スリーブ22を径方向に貫通している。更にまた、中間スリーブ22における一対の窓部24a,24bの周方向間には、一対の溝状部26a,26bが形成されている。溝状部26は、中間スリーブ22の径方向外方に略矩形凹状に開口する略一定の断面で周方向に延びる溝形状とされており、各溝状部26の周方向両端部が窓部24aと窓部24bにそれぞれ連通されている。即ち、一対の溝状部26a,26bは、一対の窓部24a,24bが対向位置する径方向一方向に直交する方向(図1中、左右)で対向位置せしめられている。
これら内筒金具12と中間スリーブ22は、略同心状に配置されて、全周に亘って径方向に所定距離を隔てて位置せしめられており、内筒金具12と中間スリーブ22の間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を有するゴム弾性体からなる。また、本体ゴム弾性体16の軸方向両端面が、径方向中間側に行くに従って軸方向の深さ寸法が大きくなる凹状を呈している。本体ゴム弾性体16の内周面が内筒金具12の外周面に加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の外周面が中間スリーブ22の内周面に加硫接着されている。要するに、本体ゴム弾性体16は、図3〜9に示される如き内筒金具12と中間スリーブ22を備えた一体加硫成形品28として形成されて、内筒金具12と中間スリーブ22が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体16の加硫成形後に、中間スリーブ22に対して八方絞り等の縮径加工が施されて、本体ゴム弾性体16に対して径方向での予圧縮が及ぼされることにより、本体ゴム弾性体16に作用する引張応力が低減されている。また、中間スリーブ22における各溝状部26の底面や側面、窓部24の縁面が、本体ゴム弾性体16と一体形成された比較的に薄肉のゴム層30で被覆されていると共に、特に、溝状部26の底面や側面等に被着されたゴム層30には、ゴム層30から外方に先細り状に突出する断面で軸方向や径方向等に延びる複数条のシールリップ32が一体形成されている。
また、本体ゴム弾性体16には、径方向一方向で内筒金具12を挟んだ両側に、一対のポケット部34a,34bが形成されている。ポケット部34は、本体ゴム弾性体16の軸方向中間部分において外周面に開口する凹状とされており、中間スリーブ22に形成された窓部24に対応する半周弱の長さで周方向に延びていると共に、ポケット部34の開口部が窓部24を通じて中間スリーブ22の外周面に開口せしめられている。
特に、ポケット部34の底面が、内筒金具12を挟んで中間スリーブ22の一対の溝状部26a,26bが対向する方向に略一定の幅寸法で長手状に広がっている。かかるポケット部34の底面の長手方向(図1中、左右)の中央部分が、内筒金具12における拡径部18の径方向一方向(図1中、上下)で対向せしめられた半周弱の長さの部位に沿って該長手方向で湾曲するように広がっていると共に、ポケット部34の底面の長手方向両側部分が、内筒金具12と中間スリーブ22における各溝状部26の底部の対向方向に沿って略平坦形状に広がっており、該ポケット部34の底面の長手方向端縁部が、中間スリーブ22の窓部24の周方向端縁部上に位置せしめられている。
すなわち、内筒金具12と中間スリーブ22の間に配される筒状の本体ゴム弾性体16に対して、このような一対のポケット部34a,34bが内筒金具12を挟んだ径方向一方向(図1中、上下)で対向位置するように形成されていることによって、本体ゴム弾性体16には、一対のポケット部34a,34bの周方向端部間を内筒金具12と中間スリーブ22の各溝状部26の間に跨って一対のポケット部34a,34bの対向方向に直交する径方向一方向(図1中、左右)に延びる略矩形ブロック状の一対の弾性隔壁部36,36が構成されている。
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28には、オリフィス部材としての第一のオリフィス金具38aおよび第二のオリフィス金具38bが組み付けられている。即ち、本実施形態では、一対のオリフィス部材が採用されている。
第一のオリフィス金具38aと第二のオリフィス金具38b(以下、第一及び第二のオリフィス金具38a,38bまたはオリフィス金具38とも言う。)においては、その形状や大きさ、構造等が互いに同一とされており、本実施形態では、図10〜15にも示されているように、厚肉の略半円筒形状を有していると共に、鉄やアルミニウム合金等の金属材を用いたダイキャスト品とされている。なお、要求される製造コストや質量等に応じて、例えば、第一のオリフィス金具38aや第二のオリフィス金具38bを構成する一対のオリフィス部材の一方または両方が、プレス鋼板等からなるプレス成形品の他、ポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)等の合成樹脂材を用いた射出成形品とされても良い。
また、オリフィス金具38には、外周面に開口して周方向に延びる凹溝としての第一周溝40と第二周溝42が軸方向に所定距離を隔てて形成されている。第一周溝40は、オリフィス金具38の周方向全長よりも僅かに短い長さで延びており、一方の端部がオリフィス金具38の周方向一方(図11,12中、左)の端部付近において貫通形成された連通孔44を通じてオリフィス金具38の径方向内周側に連通されていると共に、他方の端部がオリフィス金具38の周方向他方(図11,12中、右)の端面に開口している。また、第二周溝42は、オリフィス金具38の周方向全長に亘って延びており、両端部がそれぞれオリフィス金具38の周方向端面に開口せしめられている。特に、第二周溝42の一方の端部にはスロープ部46が形成されていることによって、かかる第二周溝42の一方の端部が、周方向外側に行くに従って第一周溝40が形成された軸方向一方の側(図14中、右)に次第に近づくように傾斜している。
さらに、オリフィス金具38の周方向中央部分には、ストッパ部48が一体形成されている。ストッパ部48は、オリフィス金具38の内周面から径方向内側に突出しており、その突出先端面がオリフィス金具38の周方向端縁部に達しない突出寸法でオリフィス金具38の径方向内側に位置せしめられている。このストッパ部48の突出先端面がオリフィス金具38の周方向両端部が対向する方向(図10中、左右)に長手状に広がる略平坦形状とされていると共に、該突出先端面の長手方向中央部分が、内筒金具12の拡径部18の外周面を構成する円周と略同じ曲率で長手方向に湾曲していることによって、本体ゴム弾性体16のポケット部34の底面に対応した形状とされている。
この第一のオリフィス金具38aの周方向中央部分が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28の一方のポケット部34aに差し入れられて、第一のオリフィス金具38aにおける第一及び第二周溝40,42の端部が開口する周方向一方(図1中、左または図16中、紙面手前側)の端部が、中間スリーブ22の一方の溝状部26aにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれていると共に、第一のオリフィス金具38aにおけるスロープ部46が形成された側の周方向他方(図1中、右または図17中、紙面手前側)の端部が、中間スリーブ22の他方の溝状部26bにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれている。
また、第二のオリフィス金具38bの周方向中央部分が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28の他方のポケット部34bに差し入れられて、第二のオリフィス金具38bにおける第一及び第二周溝40,42の端部が開口する周方向一方(図1中、左または図16中、紙面手前側)の端部が、中間スリーブ22の一方の溝状部26aにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれている。かかる溝状部26a上において、第一のオリフィス金具38aの周方向一方の端部と第二のオリフィス金具38bの周方向一方の端部が周方向で互いに突き合わされるようにして対向位置せしめられており、第二のオリフィス金具38bにおける第一周溝40の開口端部が第一のオリフィス金具38aの第二周溝42の開口端部と周方向で対向位置せしめられていると共に、第二のオリフィス金具38bにおける第二周溝42の開口端部が第一のオリフィス金具38aの第一周溝40の開口端部と周方向で対向位置せしめられている。
さらに、第二のオリフィス金具38bにおけるスロープ部46が形成された側の周方向他方(図1中、右または図17中、紙面手前側)の端部が、中間スリーブ22の他方の溝状部26bにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれている。かかる溝状部26b上において、第一のオリフィス金具38aの周方向他方の端部と第二のオリフィス金具38bの周方向他方の端部が周方向で互いに突き合わされるようにして対向位置せしめられており、第二のオリフィス金具38bにおけるスロープ部46の開口端部が第一のオリフィス金具38aのスロープ部46の開口端部と周方向で対向位置せしめられている。
これにより、第一のオリフィス金具38aと第二のオリフィス金具38bが、本体ゴム弾性体16の各ポケット部34a,34bの開口部を周方向に跨いで延びて、中間スリーブ22の外周面、延いては後述する本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に外嵌固定される外筒金具14の内周面に沿って配設されている。即ち、図16,17に示される如き本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に第一及び第二のオリフィス金具38a,38bが組み付けられてなる組付体50が構成されている。また、これら第一及び第二のオリフィス金具38a,38bにおいては、第一のオリフィス金具38aの第一周溝40および第二のオリフィス金具38bの第二周溝42と、第一のオリフィス金具38aの第二周溝42および第二のオリフィス金具38bの第一周溝40が、それぞれ直列に接続されていることによって、これら4つの周溝40,40,42,42が協働してなる一つの溝部が、組付体50の外周側を周方向に連続した螺旋状をもって二周弱の長さで延びている。また、第一及び第二のオリフィス金具38a,38bにおける各ストッパ部48が、本体ゴム弾性体16の各ポケット部34a,34b内に位置せしめられていて、各ストッパ部48の突出先端面が各ポケット部34a,34bの底面と径方向一方向(図1,16,17中、上下)に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
組付体50には、外筒金具14が外嵌固定されている。外筒金具14は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成された剛性材とされている。外筒金具14の内周面には、薄肉のゴム弾性体からなるシールゴム層52が略全体に亘って被着形成されている。かかる外筒金具14が組付体50の中間スリーブ22に外挿されて、外筒金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることによって、外筒金具14が、その内周面をシールゴム層52を介して中間スリーブ22の外周面に密接せしめた状態で中間スリーブ22に固定されている。
その結果、中間スリーブ22に形成された一対の窓部24a,24bの開口部が外筒金具14によって覆蓋されて、窓部24a,24bを通じて開口せしめられている本体ゴム弾性体のポケット部34a,34bの開口部が外筒金具14で流体密に閉塞されており、ポケット部34a,34bと外筒金具14が協働して一対の流体室54a,54bが形成されている。これら流体室54には非圧縮性流体が封入されている。かかる非圧縮性流体には、例えば、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油,或いはそれらの混合液等が採用され得、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、0.1Pa・s以下の低粘性流体が採用されることが望ましい。また、非圧縮性流体の各流体室54への封入は、例えば、組付体50と外筒金具14の組付けを、非圧縮性流体中で行うことによって実現され得る。
また、オリフィス金具38の周方向両端部が、中間スリーブ22の各溝状部26a,26bに嵌め込まれて、外筒金具14で本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に固定されている。ここで、外筒金具14の内周面がシールゴム層52を介して第一及び第二のオリフィス金具38a,38bの外周面に流体密に重ね合わされていることに基づき、各オリフィス金具38における第一及び第二周溝40,42の開口部が外筒金具14によって流体密に覆蓋されている。即ち、第一及び第二のオリフィス金具38a,38bにおける4つの周溝40,40,42,42が協働してなる周方向に二周弱の長さで螺旋状に延びる溝部の開口部が、外筒金具14で覆蓋せしめられていることによって、オリフィス通路56が形成されている。オリフィス通路56は、自動車用サスペンションブッシュ10の外周側を周方向に二周弱の長さで螺旋状に延びるトンネル状の流路であって、その一方の端部が第一のオリフィス金具38aの連通孔44を通じて一方の流体室54aに接続されていると共に、他方の端部が第二のオリフィス金具38bの連通孔44を通じて他方の流体室54bに接続されている。
それによって、一対の流体室54a,54bがオリフィス通路56を通じて相互に連通せしめられて、それら両室54a,54b間で、本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴う両室54a,54bの圧力差に基づいて、オリフィス通路56を通じての流体流動が許容されている。かかる流体の共振作用等の流動作用に基づき目的とする防振効果が得られるのである。本実施形態では、フラッタ等の比較的に低周波数域の振動に対して防振効果が有効に発揮されるように、オリフィス通路56を通じての流体の共振周波数がチューニングされている。かかるチューニングは、例えば流体室54a,54bの壁ばね剛性を考慮しつつ、オリフィス通路56の通路長さや通路断面積を設計変更することで実現され得る。
ここにおいて、内筒金具12と中間スリーブ22の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体16の各弾性隔壁部36の径方向中間部分には、短絡用孔58が形成されている。本実施形態の短絡用孔58は、弾性隔壁部36の径方向略中央における軸方向略中央の位置を、一対の流体室54a,54bの対向方向(図1中、上下)に略一定の小径の円形断面で延びており、短絡用孔58の両端部が、弾性隔壁部36の各流体室54a,54bに面する端面を構成する各ポケット部34a,34bの底面に開口している。即ち、各弾性隔壁部36には、短絡用孔58が一対の流体室54a,54bの対向方向に貫通形成されており、各短絡用孔58によって一対の流体室54a,54bを相互に連通せしめるリリーフ通路60が一対形成されている。
リリーフ通路60a,60bの形状や大きさ、弾性隔壁部36における形成位置等は、要求されるリリーフ通路60を通じての流体流動量や本体ゴム弾性体16のばね特性に応じて適宜に設定変更されるものであって、例示の如きものに限定されない。ここで、各リリーフ通路60における長さ方向(一対の流体室54a,54bの対向方向)に直交する方向の通路断面積が、オリフィス通路56の通路断面積と略同じかそれよりも若干小さくされていると共に、各リリーフ通路60の通路長さがオリフィス通路56の通路長さに比して充分に短くされていることによって、通路を通じて流動せしめられる流体の流通抵抗に関して、リリーフ通路60がオリフィス通路56よりも充分に小さくされている。本実施形態では、リリーフ通路60を通じての流体の共振周波数が、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高周波数域のハーシュネス等に相当する高周波振動に対して有効な防振効果が発揮されるようにチューニングされている。
また、本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36において、一方のリリーフ通路60aの他方の流体室54bに開口する開口部の周りと他方のリリーフ通路60bの位一方の流体室54aに開口する開口部の周りには、弾性仕切片としての第一シールリップ62および第二シールリップ64が突設されている。これら第一及び第二シールリップ62,64は、本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36と一体形成されて、一方のリリーフ通路60a側に形成される第一及び第二シールリップ62a,64aが、第二のオリフィス金具38bに向かって流体室54b内に突出していると共に、他方のリリーフ通路60b側に形成される第一及び第二シールリップ62b,64bが、第一のオリフィス金具38aに向かって流体室54a内に突出している。
特に本実施形態では、第一及び第二シールリップ62,64が、各基端部分において本体ゴム弾性体16の各ポケット部34a,34bの底部(面)と一体的に連結されて、弾性隔壁部36の軸方向に略一定の断面で延びる薄肉の板状とされていると共に、その軸方向両端縁部が各ポケット部34a,34bの両側壁部(面)と一体的に連結されている。これら第一シールリップ62と第二シールリップ64は、リリーフ通路60の開口部を挟んだ弾性隔壁部36の径方向一方向(図1中、左右)で対向せしめられており、各第一シールリップ62a,62bが、各第二シールリップ64a,64bよりも内筒金具12寄りの径方向内側に位置せしめられている。また、ハーシュネス等に相当する高周波数域の振動入力時にシールリップ62,64が積極的に弾性変形せしめられるように、シールリップ62,64の共振周波数が当該高周波数域にチューニングされている。
そして、第一シールリップ62と第二シールリップ64の各突出先端面が、第一又は第二のオリフィス金具38a,38bにおけるストッパ部48の径方向両側端縁部付近の突出先端面に当接されている。また、必要に応じて、第二シールリップ64の径方向外側面が、ストッパ部48の周方向外方におけるオリフィス金具38の内周面に当接されている。かかる当接状態下、各シールリップ62,64は、一対の流体室54a,54bが対向せしめられる径方向一方向(図1中、上下)に対して径方向内方に向かうように傾斜せしめられている。ここで、オリフィス金具38の内周面において、オリフィス通路56を各流体室54a,54bに接続せしめる連通孔44の開口部が、第一シールリップ62の突出先端面の当接位置から径方向内方に所定距離を隔てた位置に設けられている。これにより、シールリップ62,64と連通孔44の縁部との接触が抑えられて、シールリップ62,64のオリフィス金具38に対する当接状態と、一対の流体室54a,54bにおけるオリフィス通路56を通じての連通状態が、両方とも安定して確保される。
本実施形態では、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28にオリフィス金具38が組み付けられる前のシールリップ62,64の突出寸法が、オリフィス金具38と弾性隔壁部36においてシールリップ62,64が介装される部分の対向面間距離に比して大きくされていることにより、一体加硫成形品28とオリフィス金具38の組み付け状態下、シールリップ62,64には、オリフィス金具38と弾性隔壁部36の対向方向に予圧縮が及ぼされている。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、本体ゴム弾性体の一体加硫成形品にオリフィス金具が組み付けられる前のシールリップの突出寸法が、オリフィス金具と弾性隔壁部においてシールリップが介装される部分の対向面間距離と同じとされることにより、一体加硫成形品とオリフィス金具の組み付け状態下、シールリップに予圧縮を及ぼさずに、シールリップの突出先端面がオリフィス金具に当接されるようにしても良い。
これら第一及び第二シールリップ62,64の突出先端面が第一又は第二のオリフィス金具38a,38bに当接せしめられていることで、各リリーフ通路60a,60bの一方の開口部が閉塞せしめられて、各リリーフ通路60a,60bを通じての一対の流体室54a,54bの連通が遮断せしめられている。そして、シールリップ62,64におけるばね特性や共振周波数等の設定に基づいて、オリフィス通路56のチューニング周波数の振動入力時には、シールリップ62,64がオリフィス金具38に当接して、リリーフ通路60を通じての一対の流体室54a,54bの遮断状態が維持されるようになっている。一方、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力に際しては、図1に一点鎖線で示されているようにシールリップ62´,64´が積極的に弾性変形せしめられて、シールリップ62,64の突出先端面がオリフィス金具38から離隔することにより、かかる突出先端面とオリフィス金具38の間の隙間を通じて、一対の流体室54a,54bにおけるリリーフ通路60を通じての連通が許容されるようになっている。
上述の如き構造とされた自動車用サスペンションブッシュ10が自動車に装着された状態下、内筒金具12と外筒金具14の間に振動が入力されて、本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられることに基づき、一対の流体室54a,54bの間で相対的な圧力変動が生ぜしめられる。
ここで、問題となるフラッタ等の低周波数域の振動が入力された場合には、一対の流体室54a,54bの圧力差に基づいて、オリフィス通路56を通じてそれら両室54a,54b間での流体流動が生ぜしめられるようになっている。特に、かかる低周波数域の振動入力に際して、第一及び第二シールリップ62,64とオリフィス金具38との当接状態が維持されるようにシールリップ62,64のばね特性等が設定されていることで、リリーフ通路60が遮断状態に保持されている。加えて、オリフィス通路56のチューニング周波数域の振動が入力されると、オリフィス通路56を通じての流体が共振状態となって、オリフィス通路56における見かけ上の流体流動抵抗が大幅に低減せしめられる。これにより、オリフィス通路56を通じて流体室54a,54bの間を流動せしめられる流体の量が効率的に確保され得て、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づき優れた防振効果(高減衰効果)が発揮され得る。
また、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高い周波数域におけるハーシュネス等の振動が入力された場合には、オリフィス通路56自体の反共振的な作用に起因して、オリフィス通路56を通じての一対の流体室54a,54bの連通が実質的に遮断される。ここで、当該高周波振動の入力に際して、一対の流体室54a,54bの圧力差に基づき第一及び第二シールリップ62,64が弾性変形せしめられて、シールリップ62,64とオリフィス金具38の当接状態が解除される。特に、シールリップ62,64のチューニング周波数域の振動入力時に、シールリップ62,64が共振作用でより積極的に弾性変形せしめられることで、シールリップ62,64とオリフィス金具38の離隔状態が発現され易くなる。また、リリーフ通路60のチューニング周波数域の振動入力時には、リリーフ通路60を通じての流体の共振作用を利用して、各流体室54a,54bの圧力をより効率良くシールリップ62,64に及ぼすことが可能となり、それによって、シールリップ62,64がより積極的に弾性変形せしめられて、シールリップ62,64とオリフィス金具38の離隔状態が一層発現され易くなる。
そこにおいて、上述の如きオリフィス通路56の実質的な閉塞状態下における一対の流体室54a,54bの圧力差等の目的とする圧力差に応じて両流体室54a,54bを短絡せしめるリリーフ機構が、シールリップ62,64やシールリップ62,64が当接されるオリフィス金具38、リリーフ通路60を含んで構成されている。特に、シールリップ62,64が一対の流体室54a,54bにおける周方向端部間を内筒金具12と中間スリーブ22の間に跨って径方向に延びる本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36に形成されて、弾性隔壁部36とオリフィス金具38の間に介装されている。
従って、例えばオリフィス金具38と本体ゴム弾性体16の間においてシールリップ62,64に及ぼされる予圧縮力やシールリップ62,64の突出方向や厚さ方向の寸法等に多少のばらつきが生じて、シールリップ62,64における所期の弾性変形作用がそれ程高く望めないような場合においても、オリフィス通路56よりも高周波数域の振動入力時における本体ゴム弾性体16の弾性変形を利用して、シールリップ62,64の突出方向の変形変位が生ぜしめられ易くなることから、当該振動入力時におけるリリーフ通路60の連通状態が発現され易くなる。
しかも、シールリップ62,64が、本体ゴム弾性体16の有効自由長が大きな弾性隔壁部36の径方向中間部分に一体形成されて、且つ弾性隔壁部36とオリフィス金具38の間に設けられていることから、例えば、特許文献1(特表2000−500217号公報)に示される如き中間スリーブに突設されて、中間スリーブと外筒金具の間に配される弾性突片に比して、シールリップ62,64の有効自由長が充分に大きく設定され得て、寸法誤差によるシールリップ62,64の特性ばらつきが効果的に抑えられることに加え、シールリップ62,64の基端部分の応力集中が軽減されて、耐久性が向上され得る。
さらに、リリーフ通路60の遮断に際して、シールリップ62,64の突出先端部分が、オリフィス金具38に当接されるようになっている。即ち、前述の特許文献1に示されるような弾性突片の外筒金具への当接によりリリーフ通路を遮断せしめる従来構造を採用する必要がなく、従って、外筒金具の縮径加工に伴う変形変位に起因して弾性突片の当接力が変化し易くなることが回避され得ることから、目的とする圧力の作用時にリリーフ機構が確実に作動され得る。加えて、シールリップ62,64の当接面がオリフィス金具38に形成されることによって、当接面を外筒金具に形成する場合に比して、当接面の寸法や形状等の設計自由度が大きく確保され得て、シールリップ62,64の変形の許容または制限に関する設計自由度が大きく確保され得る。その結果、リリーフ通路60における所期の遮断状態と連通状態が得られ易くなる。
それ故、本実施形態の自動車用サスペンションブッシュ10によれば、フラッタ等の低周波数域の振動入力時に、二つの流体室54a,54b間でのオリフィス通路56を通じての流体流動作用によるオリフィス効果である防振効果(高減衰効果)が充分に確保されつつ、オリフィス通路56のチューニング周波数よりも高周波側のハーシュネス等の振動入力時には、二つの流体室54a,54b間でリリーフ通路60が確実に連通状態と為されて、目的とする低動ばね効果が高い信頼性で発揮され得るのである。
ところで、一般に、自動車に装着されるサスペンションブッシュにおいては、自動車が段差乗り越えをしたり凹凸の大きな路面等を走行して、内筒金具12と外筒金具14の間に衝撃的な荷重が入力されると、本体ゴム弾性体16が急激に乃至は過大に弾性変形することに伴い一対の流体室の圧力差が過大となり、何れか一方の流体室において問題となる異音の発生要因のキャビテーション気泡を生ぜしめる程に過大な負圧が発生する場合がある。
そこにおいて、本実施形態では、このキャビテーション気泡が発生する前の大きな負圧の段階で、一対の流体室54a,54bの圧力差によるシールリップ62,64の弾性変形によりシールリップ62,64とオリフィス金具38の当接状態を解除せしめて、一対の流体室54a,54bをリリーフ通路60を通じて短絡せしめる短絡機構を採用することも可能とされている。その結果、一対の流体室54a,54bの圧力が平衡状態に向かい、一方の流体室54の過負圧状態が解消されることで、キャビテーション気泡の発生が抑えられて、問題となる異音や振動等が防止され得る。
次に、図18,19には、本発明の流体封入式筒形防振装置に係る第二の実施形態としての自動車用サスペンションブッシュ70が示されている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の構造とされた部材及び部位については、同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態の自動車用サスペンションブッシュ70では、一対のオリフィス部材として、第一のオリフィス金具72aおよび第二のオリフィス金具72b(以下、第一及び第二のオリフィス金具72a,72bまたはオリフィス金具72ともいう。)が採用されている。図20〜22には、一方のオリフィス部材である第一のオリフィス金具72aが示されている。第一及び第二のオリフィス金具72a,72bは、互いに同じ大きさの半円筒形状を有しており、周方向中央部分には、内周側に向かってストッパ部48が一体的に突設されていると共に、周方向中央部分における軸方向(図20,21中、上下)の両側縁部には、縁部に沿って周方向に延びる円弧状突部74,74が軸方向外方に突出して一体形成されている。
また、オリフィス金具72の周方向両端部が、周方向中央部分よりも小さな軸方向幅寸法で周方向に延びる右腕部76aおよび左腕部76bとされている。オリフィス金具72の左右の腕部76a,76bが軸方向一方(図20中、下または図21中、上)の側に偏倚して設けられていることで、オリフィス金具72の周方向両側における腕部76と反対側の軸方向他方には空間が形成されている。
さらに、オリフィス金具72における周方向中央部分および一対の腕部76a,76bには、外周面に開口して周方向に延びる凹溝としての第一周溝78と第二周溝80が軸方向に所定距離を隔てて形成されている。第一周溝78と第二周溝80は、オリフィス金具72の周方向全長よりも僅かに短い長さで延びており、第一のオリフィス金具72aにおける第一周溝78aと第二周溝80aの各周方向一方(図20〜22中、右)の端部が、右腕部76aの周方向端面に開口していると共に、それら第一及び第二周溝78a,80aの各周方向他方(図20〜22中、左)の端部が、左腕部76bの端部付近において軸方向に延びる軸方向溝82を介して相互に接続されている。一方、第二のオリフィス金具72bでは、第一のオリフィス金具72aと反対に、第一周溝78bと第二周溝80bの各周方向一方の端部が、左腕部76bの周方向端面に開口していると共に、右端部76a側に軸方向溝82が形成されて、第一及び第二周溝78b,80bの各周方向他方の端部が、右腕部76a上で軸方向溝82を介して相互に接続されている。
また、オリフィス金具72の周方向中央部分の内面に突設されるストッパ部48が、オリフィス金具72の径方向内方に向かって軸方向断面が次第に小さくなる略台形ブロック状とされて、オリフィス金具72の内面に沿って周方向に湾曲している。このストッパ部48の周方向両側には、収容凹所84,84が形成されている。収容凹所84は、ストッパ部48の突出先端面に開口する浅底の凹状断面で軸方向に延びており、その軸方向両端部がストッパ部48の軸方向両端面に開口している。特に、収容凹所84がストッパ部48の周方向両端面よりも周方向内側に形成されていると共に、収容凹所84の周方向外側の壁部が、オリフィス金具72の周方向中央部分の接線方向に直交する方向(図22中、上下)と平行に延びており、後述するシールリップ96の弾性変形を拘束する拘束用当接部86として構成されている。また、収容凹所84の周方向内側の壁部が、オリフィス金具72の周方向中央部分の接線方向に直交する方向に対して周方向中央に向かうように傾斜せしめられている。
また、オリフィス金具72の第一周溝78の底部には、腕部76の周方向端面に開口せしめられる端部側に偏倚して、連通孔88が貫通形成されており、その径方向内側の端部が該腕部76に近い側の収容凹所84の周方向内側の壁面に開口している。これにより、連通孔88が、ストッパ部48の突出先端面と拘束用突部86の周方向間に開口している。
また、図23,24にも示されているように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28における各溝状部26a,26bには、本体ゴム弾性体16やゴム層30と一体形成された仕切ゴム90a,90bが加硫接着されている。仕切ゴム90は、溝状部26よりも小さな軸方向寸法と周方向寸法を備えた略円弧状のブロック体であって、各溝状部26の軸方向一方の側(図23中、左または図24中、右)に偏倚して配されて、仕切ゴム90の軸方向一方の端面が、溝状部26の軸方向一方の壁面に固着されていると共に、仕切ゴム90の径方向内周面が溝状部26の底面に固着されている。また、仕切ゴム90の径方向外周面が、中間スリーブ22の外周面と径方向で略同じ位置に位置せしめられている。また、仕切ゴム90が溝状部26の周方向略中央部分に設けられていることによって、仕切ゴム90の周方向両端面が溝状部26の周方向両端面よりも周方向内方に位置せしめられている。
このような仕切ゴム90が溝状部26に設けられることで、溝状部26における仕切ゴム90と反対の軸方向他方(図23中、右または図24中、左)には、仕切ゴム90の軸方向他方の端面と溝状部26の底面および軸方向他方の壁面が協働して、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28の外周面に矩形凹状に開口する断面で周方向に延びる短絡用凹溝92が形成されている。即ち、短絡用凹溝92が、一体加硫成形品28の一対のポケット部34a,34bの各開口部における周方向端部間を繋ぐようにして周方向に延びている。
特に本実施形態では、一方の溝状部26aに設けられる仕切ゴム90aの外周面に連絡用溝94が形成されている。連絡用溝94は、オリフィス金具72の第一周溝78や第二周溝80と略同じ大きさの断面で周方向に延びており、仕切ゴム90aの周方向中間部分において周方向に対して傾斜するスロープ状部を介して、連絡用溝94の周方向一方の端部が、軸方向一方の側に偏倚して仕切ゴム90aの周方向一方の端面に開口していると共に、連絡用溝94の周方向他方の端部が、軸方向他方の側に偏倚して仕切ゴム90aの周方向他方の端面に開口している。
また、本実施形態における弾性仕切片としてのシールリップ96が、内筒金具12と中間スリーブ22の間を径方向一方向に延びる本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36と一体形成されて、各弾性隔壁部36の径方向中間部分において該径方向一方向に略直交する方向(図18,23,24中、上下)に突出している。即ち、本実施形態では、各弾性隔壁部36における一対のポケット部34a,34bの対向方向の両端部に突設される形態で、4つのシールリップ96,96,96,96が設けられている。特に、シールリップ96は、一対のポケット部34a,34bの対向方向にストレートに延びる矩形板状とされており、且つブッシュ70の軸方向(図19中、左右)に長手状に延びて、軸方向両端縁部が各ポケット部34a,34bの軸方向両側の壁面に一体的に連結されている。また、シールリップ96は、弾性隔壁部36の径方向中間部分で中間スリーブ22よりも内筒金具12側に偏倚した位置に設けられている。また、各ポケット部34a,34bの底面において、一対の弾性隔壁部36,36の対向方向(図18中、左右)で対向せしめられる各一対のシールリップ96,96の間には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層98が設けられている。それによって、一対の流体室54a,54b間に振動が入力されて、内筒金具12と外筒金具14がオリフィス金具72のストッパ部48と緩衝ゴム層98を介して打ち当たることによって、両金具12,14の変位が緩衝的に制限されるようになっている。
かくの如き第一のオリフィス金具72aの周方向中央部分が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28の一方のポケット部34aに差し入れられて、第一のオリフィス金具72aにおける第一及び第二周溝78a,80aの端部が開口する右腕部76aが、中間スリーブ22の一方の溝状部26aにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれていると共に、第一のオリフィス金具72aにおける軸方向溝82が形成された左腕部76bが、中間スリーブ22の他方の溝状部26bにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれている。また、第二のオリフィス金具72bの周方向中央部分が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28の他方のポケット部34bに差し入れられて、第二のオリフィス金具72bにおける軸方向溝82が形成された右腕部76aが、中間スリーブ22の他方の溝状部26bにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれていると共に、第二のオリフィス金具72bにおける第一及び第二周溝78b,80aの端部が開口する左腕部76bが、中間スリーブ22の一方の溝状部26aにゴム層30やシールリップ32を介して嵌め込まれている。
特に本実施形態では、オリフィス金具72の周方向中央部分で軸方向両側に突設された円弧状突部74,74がポケット部34の軸方向両側壁部を介して中間スリーブ22の窓部24の縁部に嵌め込まれていることで、オリフィス金具72が一体加硫成形品28に対して軸方向に位置決めされている。また、オリフィス金具72における右腕部76aおよび左腕部76bの各周方向端部が仕切ゴム90a,90bの各周方向端部に重ね合わされていることによって、オリフィス金具72が一体加硫成形品28に対して周方向に位置決めされている。
これにより、第一のオリフィス金具72aと第二のオリフィス金具72bが、本体ゴム弾性体16の各ポケット部34a,34bの開口部を周方向に跨いで延びて、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に外嵌固定される外筒金具14の内周面に沿って配設されおり、図23,24に示される如き本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に第一及び第二のオリフィス金具72a,72bが組み付けられてなる組付体100が構成されている。
かかる組付体100においては、第一のオリフィス金具72aの右腕部76aの周方向端部と第二のオリフィス金具72bの左腕部76bの周方向端部が、周方向両側から仕切ゴム90aの各周方向端部に重ね合わされて、第一のオリフィス金具72aの第一周溝78aの開口端面と第二のオリフィス金具72bの第二周溝80bの開口端面が仕切ゴム90aにより流体密に閉塞されている。また、第一のオリフィス金具72aの第二周溝80aと第二のオリフィス金具72bの第一周溝78bが、仕切ゴム90aに形成された連絡用溝94を通じて相互に接続せしめられている。それによって、第一及び第二のオリフィス金具72a,72bにおける各一対の第一周溝78a,78b、第二周溝80a,80bおよび軸方向溝82,82や連絡用溝94が協働して、組付体100の外周側を周方向にスロープ状部(連絡用溝94)や折り返し部(軸方向溝82)等を介して二周弱の長さで延びる一つの溝部を構成している。また、各溝状部26a,26bの短絡用凹溝92の周方向両端部が、各オリフィス金具72a,72bにおける周方向中央部分と腕部76の間に形成される各隙間に接続せしめられている。
また、組付体100の構成に伴い、各オリフィス金具72のストッパ部48の突出先端面が、緩衝ゴム層98が設けられた各ポケット部34の底面と径方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。ここで、本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36に突設された各シールリップ96の突出先端部分が、オリフィス金具72の収容凹所84に収容配置されており、かかる突出先端部分の径方向外側の面がオリフィス金具72の拘束用当接部86と径方向で所定の予圧縮力をもって当接せしめられている。なお、本実施形態では、シールリップ96の突出先端面と収容凹所84の底面がシールリップ96の突出方向に所定距離を隔てて配されているが、シールリップ96の突出先端面と収容凹所84の底面が互いに当接していても良い。
このような組付体100に対して、第一の実施形態と同様に、外筒金具14が外嵌固定されることによって、ポケット部34a,34bが流体密に覆蓋せしめられて、一対の流体室54a,54bが形成されていると共に、オリフィス金具72の各腕部76a,76bが、中間スリーブ22の各溝状部26a,26bに嵌め込まれて、外筒金具14で本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に固定されている。また、第一及び第二のオリフィス金具72a,72bの外周面に外筒金具14が重ね合わされて、それらオリフィス金具72における各一対の第一周溝78a,78b、第二周溝80a,80bおよび軸方向溝82,82や仕切ゴム90aの連絡用溝94が協働してなる一つの溝部の径方向外方への開口部が、外筒金具14で流体密に覆蓋せしめられることによって、オリフィス通路102が構成されている。オリフィス通路102が、第一及び第二のオリフィス金具72a,72bに形成された各連通孔88,88を通じて一方の流体室54aと他方の流体室54bに接続されていることで、一対の流体室54a,54b間におけるオリフィス通路102を通じての流体流動が許容されている。
ここで、本実施形態の各流体室54においては、内筒金具12を挟んで一対の弾性隔壁部36,36の対向方向(図18中、左右)で対向せしめられる各一対のシールリップ96,96が、オリフィス金具72の各拘束用当接部86に当接せしめられた状態で収容配置されており、一対のシールリップ96,96の対向面間の領域とシールリップ96の外方の領域とに仕切られている。シールリップ96がオリフィス金具72に当接された状態では、一対のシールリップ96,96の対向面間領域とシールリップ96の外方領域の間で、目的とする防振効果に有効な流体流動が生ぜしめられない程度に、両領域がシールリップ96で実質的に遮断されている。また、オリフィス通路102を各流体室54に接続せしめる連通孔88が、一対のシールリップ96,96の対向面間領域に開口している。その結果、本実施形態の各流体室54は、実質的に、一対の弾性隔壁部36,36の対向方向で対向せしめられる一対のシールリップ96,96の対向面間で構成されている。
また、外筒金具14が組付体100に外嵌固定されて、中間スリーブ22の外周面および仕切ゴム90a,90bの径方向外周面が外筒金具14の内周面に流体密に重ね合わされることにより、組付体100における一対の短絡用凹溝92,92が外筒金具14で覆蓋せしめられている。これら一対の短絡用凹溝92,92と外筒金具14が協働して、一対のポケット部34a,34bの周方向端部間を周方向にトンネル状に延びるリリーフ通路104,104が形成されている。
このようなリリーフ通路104の周方向両端部は各シールリップ96の周方向外方に位置せしめられており、シールリップ96がオリフィス金具72の拘束用当接部86に当接されていることで、一対の流体室54a,54bにおけるリリーフ通路104を通じての連通が遮断されている。ここで、シールリップ96におけるばね特性や共振周波数、オリフィス金具72との離隔距離等の設定に基づいて、オリフィス通路102のチューニング周波数の振動入力時には、シールリップ96がオリフィス金具72に当接して、リリーフ通路104を通じての一対の流体室54a,54bの遮断状態が維持されるようになっている。一方、オリフィス通路102のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力に際しては、図18に一点鎖線で示されているように各シールリップ96´が積極的に弾性変形せしめられて、シールリップ96がオリフィス金具72から離隔することにより、かかるシールリップ96とオリフィス金具72の間に形成される隙間を通じて、一対の流体室54a,54bにおけるリリーフ通路104を通じての連通が許容されるようになっている。
本実施形態の自動車用サスペンションブッシュ70においては、目的とする圧力差に応じて両流体室54a,54bを短絡せしめるリリーフ機構が、一対のリリーフ通路104,104や各リリーフ通路104の周方向両端部に配される一対のシールリップ96,96、シールリップ96が当接されるオリフィス金具72を含んで構成されている。そして、これらシールリップ96が、第一の実施形態と同様に、本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36の径方向中間部分に形成されて、弾性隔壁部36とオリフィス金具72の間に介装されている。その結果、オリフィス通路102のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力時に、本体ゴム弾性体16の弾性変形を利用して、シールリップ96の積極的な変形変位によりリリーフ通路104の連通状態が発現され易くなる。しかも、シールリップ96の有効自由長が充分に大きく設定され得て、寸法誤差によるシールリップ96の特性ばらつきが効果的に抑えられることに加え、シールリップ96の基端部分の応力集中が軽減されて、耐久性が向上され得る。
それ故、本実施形態の自動車用サスペンションブッシュ70によれば、第一の実施形態と同様に、二つの流体室54a,54b間でのオリフィス通路102を通じての流体流動作用による防振性能が充分に確保されつつ、オリフィス通路102のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時には、二つの流体室54a,54b間でリリーフ通路104が確実に連通状態と為されて、目的とする低動ばね効果が高い信頼性で発揮され得るのである。
特に本実施形態では、シールリップ96の弾性変形を制限するオリフィス金具72の拘束用突部86が、シールリップ96の突出先端部分に対してリリーフ通路104側で対向位置して設けられていることから、シールリップ96の突出先端部分がリリーフ通路104側に巻き込まれるように弾性変形した状態でオリフィス金具72に当接されることに起因してシールリップ96が初期の形状に戻り難くなるような不具合が解消される。それ故、リリーフ通路104における所期の遮断状態と連通状態が一層安定して実現され得る。
また、本実施形態では、リリーフ通路104が、中間スリーブ22と外筒金具14の径方向対向面間において、一対のポケット部34a,34bの各開口部における周方向端部間を繋ぐようにして周方向に延びる形態とされていることから、リリーフ通路104の形状や大きさ等が、本体ゴム弾性体16の弾性変形による変化の影響を受けることなく、安定して確保され得る。それによって、一対の流体室54a,54b間でリリーフ通路104を通じて流動せしめられる流体の流動作用に基づく低動ばね効果が一層安定して得られる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、単一のオリフィス通路が構成されていたが、異なる周波数域にチューニングされた複数のオリフィス通路を形成すると共に、高周波側のオリフィス通路に可動板や弾性ゴム膜等の流量制限部材を設けて低周波側のオリフィス通路のチューニング周波数の振動入力時に高周波側のオリフィス通路の流体流動量を制限するようにし、以て、複数の異なる周波数域の振動に対する防振効果が得られるようにしても良い。
また、前記実施形態では、一対のポケット部34a,34bをそれぞれ周方向に跨ぐようにして、一対のオリフィス金具(第一実施形態における第一及び第二のオリフィス金具38a,38bや第二実施形態における第一及び第二のオリフィス金具72a,72b)が組み付けられていたが、何れか一方のポケット部にのみ組み付けられることによって、オリフィス金具を一つだけ採用することも可能である。
また、前記第一の実施形態では、弾性仕切片が、弾性隔壁部36におけるリリーフ通路60の開口部を挟んだ径方向一方向で対向せしめられる板状の一対のシールリップ62,64により構成されていたが、例えば弾性隔壁部におけるリリーフ通路の開口部の周りからオリフィス金具に向かって突出する筒状のゴム弾性体によって構成しても良い。
また、前記第二の実施形態では、リリーフ通路104を遮断せしめるに際して、シールリップ96の突出先端部分の径方向外方の面(部)とオリフィス金具72の拘束用突部86が当接されていたが、例えば、シールリップと拘束用突部が当接せしめられることに加えて、或いはシールリップと拘束用突部が離隔せしめられる代わりに、シールリップの突出先端面とオリフィス金具の収容凹所の底面等が当接されるようにしても良い。要するに、シールリップと拘束用突部は予め当接している必要はなく、シールリップの弾性変形に際してシールリップが拘束用当接部に当接されることで、シールリップのリリーフ通路側への変形が制限されるようにしても良い。
また、シールリップ62,64,96は、例示の如く本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36と一体形成されている必要はなく、弾性隔壁部と別体形成されて弾性隔壁部に直接に又は他部材を介して間接に固定されるようにしても良い。
また、前記実施形態では、リリーフ通路60,104が一対設けられていたが、例えば一方の弾性隔壁部に短絡用孔を形成しなかったり、中間スリーブの一方の溝状部に短絡用凹溝を形成しないことによって、リリーフ通路を1つ採用したり、或いは少なくとも一方の弾性隔壁部や中間スリーブの溝状部に短絡用孔や短絡用凹溝を複数形成することによって、リリーフ通路を3つ以上設けることも可能である。更に、自動車用サスペンションブッシュにおいて、第一の実施形態における本体ゴム弾性体16の弾性隔壁部36に形成されたリリーフ通路60と、第二の実施形態における外筒金具14と中間スリーブ22の対向面間に形成されたリリーフ通路104を組み合わせて採用することも可能である。
その他、要求される製作性や防振効果等に応じて、弾性隔壁部やシールリップ、オリフィス金具、リリーフ通路等における形状や大きさ、構造、数、配置等の形態が適宜に設定変更され得ることは言うまでもない。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用サスペンションブッシュに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用エンジンマウントやボデーマウント、デフマウント、サスペンションメンバマウント、その他自動車または自動車以外の防振対象に装着される各種の流体封入式筒形防振装置に対して適用可能であることは勿論である。
10:自動車用サスペンションブッシュ、12:内筒金具、14:外筒金具、16:本体ゴム弾性体、24a,24b:窓部、34a,34b:ポケット部、36:弾性隔壁部、38a:第一のオリフィス金具、38b:第二のオリフィス金具、54a,54b:流体室、56:オリフィス通路、60:リリーフ通路、62:第一のシールリップ、64:第二のシールリップ
Claims (6)
- インナ軸部材の外周側に中間筒部材を配設せしめて、それらインナ軸部材と中間筒部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材を挟んだ径方向両側において該本体ゴム弾性体に設けた一対のポケット部をそれぞれ該中間筒部材に設けた窓部を通じて外周面に開口させる一方、該中間筒部材にアウタ筒部材を外嵌固定して該一対のポケット部を覆蓋せしめることにより非圧縮性流体が封入された一対の流体室を形成し、更に、該一対のポケット部の少なくとも一方の開口部に対して該ポケット部の開口部を周方向に跨いで延びる半円筒状のオリフィス部材を組み付けて該アウタ筒部材の内周面に沿って配設し、該オリフィス部材と該アウタ筒部材の間を周方向に延びるオリフィス通路を形成した流体封入式筒形防振装置において、
前記一対の流体室における周方向端部間を相互に連通せしめるリリーフ通路を形成すると共に、前記本体ゴム弾性体によって形成されて該一対の流体室における周方向端部間を前記インナ軸部材と前記中間筒部材の間に跨って径方向に延びる弾性隔壁部において、該リリーフ通路の該流体室への開口部よりも該インナ軸部材側に位置して該一対の流体室の少なくとも一方の側に向かって突出し、その突出先端面が前記オリフィス部材に当接せしめられることにより、該リリーフ通路の該流体室への連通を遮断する弾性仕切片を設けて、前記オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波側の振動入力時において該一対の流体室間に惹起される圧力差に基づく該弾性仕切片の弾性変形によって該リリーフ通路が連通状態とされるようにしたことを特徴とする流体封入式筒形防振装置。 - 前記弾性仕切片が、その基端部分において前記本体ゴム弾性体に設けられた前記ポケット部の底面に対して一体的に連結されていると共に、その両側端縁部において該本体ゴム弾性体に設けられた該ポケット部の両側壁面に対して一体的に連結されている請求項1に記載の流体封入式筒形防振装置。
- 前記オリフィス部材の内周面には、前記弾性仕切片の突出先端部分に対して、前記リリーフ通路側で対向位置して該弾性仕切片の該リリーフ通路側への弾性変形を制限する拘束用当接部が設けられている請求項1又は2に記載の流体封入式筒形防振装置。
- 前記リリーフ通路が複数形成されており、その少なくとも一つの該リリーフ通路には一方の前記流体室への開口部において前記弾性仕切片が形成されていると共に、別の少なくとも一つの該リリーフ通路には他方の前記流体室への開口部において前記弾性仕切片が形成されている請求項3に記載の流体封入式筒形防振装置。
- 前記一対のポケット部の各開口部における周方向端部間を繋ぐようにして、前記中間筒部材の軸方向中間部分を周方向に延びる短絡用凹溝が形成されており、該短絡用凹溝が前記アウタ筒部材で覆蓋されることによって前記リリーフ通路が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
- 前記本体ゴム弾性体の前記弾性隔壁部において、前記一対の流体室の対向方向に貫通する短絡用孔が形成されており、該短絡用孔によって前記リリーフ通路が構成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体封入式筒形防振装置。
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JP2015224651A (ja) * | 2014-05-26 | 2015-12-14 | 東洋ゴム工業株式会社 | 液封入式防振装置 |
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- 2008-03-13 JP JP2008064784A patent/JP2009222090A/ja active Pending
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