JP2009219947A - フロー反応装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体を含む流体を用いるフロー反応において閉塞を回避して連続的に反応を実施させる。
【解決手段】本フロー反応装置は、固体を含む液体の流路となり、上記液体中で反応を行わせるためのチューブと、上記チューブに、上記液体を連続的に供給する手段と、上記チューブに対して振動を与える振動手段又は/及びチューブに上記液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を間欠的に注入して、上記チューブ内上記液体の進行方向に、上記気体と上記液体の交互層を形成する手段とを有する。このように、振動を与えたり、液体内の固体を気体により押し出すことによって、固体が流れやすくなり、チューブ内における液体の進行と共に押し出されるようになる。
【選択図】図3

Description

本発明は、反応の開始時又は途中で、固体を含む液体を用いたフロー反応技術に関する。
バッチ式での光反応は、例えば図1に示すように、容器101内に反応溶液104及び光源ユニット102(容器中にランプ1022を入れてその回りで冷却液1021を循環させるユニット)を入れて当該光源ユニット102から光を照射して反応溶液104に光反応を起こさせるものである。なお、図1の例では、管103から窒素ガスを吹き込んで、反応溶液104を攪拌している。このようなバッチ式での光反応には、(a)不必要な光照射による副生成物(不純物)の生成、(b)光源からの距離の違いによる不均一な光照射、(c)反応系中に固体が生ずる場合には、当該固体による遮光など、様々な問題がある。
そこで、例えば図2に示すように、透明なチューブ111を光源ユニット102又は当該光源ユニット102の外側の容器に螺旋状に巻き付けて、矢印方向に反応液を流すようなフロー式の反応に置き換えることで、(A)滞留時間の適切な制御による副反応の抑制、(B)均一な光路長による反応時間の短縮、(C)連続的な排出による光透過性の確保といった効果が期待される。
ここで、フロー式の光反応を用いた技術には、以下のようなものがある。例えば、Benjamin D. A. Hook, Wolfgang Dohle, Paul R. Hirst, Mark Pickworth, Malcolm B. Berry, and Kevin I. Booker-Milburn, "A Practical Flow Reactor for Continuous Organic Photochemistry", J. Org. Chem. 2005, 70, 7558-7564(非特許文献1)には、螺旋状に巻き付けられたチューブを用いる溶液中でのフロー式光反応装置についての開示がある。
また、特開2007−75682号公報(特許文献1)には、反応効率、エネルギー効率、メンテナンス性に優れ、かつ、所望の光化学反応を生じさせるうえで最適となる反応環境を容易に設定できるフロー式光化学反応装置が開示されている。具体的には、フロー式光化学反応装置は、光透過性流路により形成される反応部と、反応部へ被反応物質を送液する送液部と、反応部を照射し光透過性流路内の被反応物質に光化学反応を生じせしめる少なくとも1つの光源を備える光源部と、光化学反応が生じた光化学反応生成物質を回収する回収部とを備え、反応部は1つのユニットとしてユニット化され、光源部と一体をなすように光源部に対して着脱可能に装着される。しかし、光を照射することによって固体の生成物が析出するような反応については考慮されていない。
さらに、特開2002−166270号公報(特許文献2)には、小型で効率の高いオゾン水供給装置が開示されている。具体的には、紫外線透過可能な螺旋管と、螺旋管の中央に配置された紫外線発生源としてのキセノンランプとを有し、外側を反射筒で覆う。液体および気体を螺旋管の一端からそれぞれ別個に導入する供給口を設け、螺旋管の他端には気体および液体をそれぞれ分離して排出する排出口を設ける。螺旋管内に液体および気体が交互に配された層が形成されるよう、螺旋管の管体の内径や液体および気体の供給量を設定する。キセノンランプによる紫外線の照射を受け、気体中の酸素からオゾンが生成される。このオゾンを含む空気は常に新鮮な液体に接触して効率良く液体中にオゾンを溶解させる。オゾンが溶解された水は螺旋管内を移動し、排出口から排出される。この公報でも、オゾンを液体中に溶解させるために、液体及び気体が交互に配された層を形成させているが、光反応により固体が析出するような状態を想定していない。
Benjamin D. A. Hook, Wolfgang Dohle, Paul R. Hirst, Mark Pickworth, Malcolm B. Berry, and Kevin I. Booker-Milburn, "A Practical Flow Reactor for Continuous Organic Photochemistry", J. Org. Chem. 2005, 70, 7558-7564 特開2007−75682号公報 特開2002−166270号公報
上で述べた従来技術では、フロー式の反応装置において、例えば反応の開始時や反応途中などのいわゆる反応時において固体を含む液体を用いるようなことは想定されていない。光反応や熱反応などを含む、フロー式の各種反応において、反応前の液体に触媒などの固体が含まれるような場合や、反応によって固体が析出するような場合が想定される。このような場合、これらの固体が流路の内部に沈降して、チューブが閉塞してしまう可能性があるが、従来技術には、このような問題を解決するための構成は開示されていない。特に、反応に時間が掛かるため、送液速度に制限がある場合などは閉塞の問題は非常に大きくなる。
従って、本発明の目的は、反応の開始時又は途中で、固体を含む液体を用いるフロー反応において閉塞を回避して連続的に反応を実施させるための技術を提供することである。
本発明の第1の態様に係るフロー反応装置は、固体を含む液体の流路となり、液体中で反応を行わせるためのチューブと、チューブに、液体を連続的に供給する手段と、チューブに対して振動を与える振動手段又は/及びチューブに液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を間欠的に注入して、チューブ内上記液体の進行方向に、気体と液体の交互層を形成する手段とを有する。
また、上で述べた振動手段は、超音波振動手段である場合もある。
さらに、上で述べた振動手段が、液体を内包する容器と、当該容器に接合される超音波振動子とを有するようにしてもよい。その場合、上で述べたチューブが、上記容器内の液体中を通過するようにしてもよい。
また、上で述べたチューブが、光反応に要求される波長の光を透過可能な材料からなるチューブであってもよい。また、上記チューブは螺旋状に巻かれており、当該螺旋の中央部に、上記反応に必要な光照射を行うための光源を設けるようにしてもよい。
本発明の第2の態様に係るフロー反応方法は、固体を含む液体の流路となり、液体中で反応を行わせるためのチューブに、液体を連続的に供給する工程と、チューブに対して振動を与える振動工程又は/及びチューブに液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を間欠的に注入して、チューブ内液体の進行方向に、気体と液体の交互層を形成する工程と、液体中において反応を行わせる工程とを含む。
また、上で述べた振動工程が、超音波振動工程である場合もある。
さらに、上で述べた振動工程において、液体を内包する容器に接合される超音波振動子から、液体を介して超音波振動が与えられるようにしてもよい。その場合、上で述べたチューブが、上記容器内の液体中を通過する。
さらに、上で述べたチューブが、光反応に要求される波長の光を透過可能な材料からなるチューブであってもよい。また、上記チューブは螺旋状に巻かれており、当該螺旋の中央部に設置された光源から上記反応に必要な光照射を行う工程をさらに含むようにしてもよい。
本発明によれば、反応の開始時又は途中で、固体を含む液体を用いるフロー反応において、反応場ともなるチューブの閉塞を回避して連続的に反応を実施させることができるようになる。
本発明に係る固体を含む液体とは、例えば(1)反応前は液体であるが、反応後に生ずる反応生成物が上記液体に不溶であるものを含む液体、(2)触媒(不溶性担体に担持されたものも含む)のような、反応の前後にかかわらず固体であるものを含む液体、(3)反応前は固体状の化合物(原料)であるが、反応後に生ずる反応生成物は上記液体に溶解するようなものを含む液体等が挙げられる。
本発明に用いられるチューブとしては、例えばパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂等の合成樹脂からなるチューブ、強化ガラス、石英ガラス等からなるガラス管、ステンレス、銅(又はその合金)、チタン(又はその合金)等からなる金属製の管などが挙げられ、透明、不透明、半透明のいずれであってもよい。また、チューブの内径は、上記液体中で反応を行わせることができるような、通常0.1〜10mmの範囲の大きさから適宜選択すればよいが、上記気体と上記液体の交互層を形成する手段を実施する場合には、上記交互層を形成し得る大きさである、0.1〜5mmの範囲の大きさから選択するのが好ましく、その中でも、0.5〜2mmの範囲の大きさから選択するのがより好ましい。さらに、チューブの長さは、目的とする反応が終了する時間や液体の流速等を考慮して設定されるが、例えば通常0.1〜25mの範囲からその長さを適宜選択すればよい。なお、チューブ全体が反応場である場合もあるし、チューブの一部が反応場である場合もあるが、チューブの一部が反応場である場合には、上記チューブの長さは、反応場となるチューブの長さを意味し、反応場に液体を供給するためのチューブの長さは上記長さに含まれない。また、チューブは、直線状でも螺旋状に巻かれていてもよい。
本発明に係る液体を連続的に供給する手段としては、通常この分野で用いられる供給手段であれば、特に限定されず、具体的には、例えばプランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ、ギヤポンプ等の通常この分野で用いられる反応溶液を供給するためのポンプ等が挙げられる。また、これらのポンプから液体を連続的に供給する際の液体の流速としては、反応場のチューブの長さ、チューブの内径等によって左右されるので一概には言えないが、例えば通常0.1〜10ml/min、好ましくは0.5〜5ml/minであり、液体の種類、上記流速、チューブ内の液体中の固体量等によってポンプ内圧力が決定される。
本発明に係る振動手段としては、通常この分野で用いられる振動手段であれば、いずれも実施することができ、具体的には、例えばボルテックスミキサーなどの機械的振動を与えるような機構を採用した振動手段、電気的コイルの励起振動機構を採用した振動手段、超音波振動手段等が挙げられ、中でも超音波振動手段が好ましい。超音波振動手段を用いれば、チューブ内の固体の沈降や付着が効果的に抑制される。
上で述べた超音波振動手段が、液体を内包する容器と、容器に接合される超音波振動子とを有するようにしてもよい。この場合、チューブが、上記容器内の液体中を通過するようにする。容器内の液体を伝わる超音波にてチューブに振動が加えられ、チューブ内の固体が沈降や付着することなく、揺り動かされるようになる。
また、本発明の交互層を形成する手段としては、上記液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体と、当該気体を上記チューブに間欠的に注入し、当該上記気体と上記液体との交互層を反応溶液の送液方向に形成することが可能な、例えばマスフローコントローラ、微小流量バルブ、電磁弁等の通常この分野で用いられる流量制御機構を採用した手段等が挙げられ、中でもマスフローコントローラが好ましい。また、上記気体の流量は、上で述べたポンプの流速に影響を受ける場合があるので一概には言えないが、例えば通常0.5〜10sccm、好ましくは1〜5sccmである。さらに、上記気体と上記液体の交互層におけるそれぞれの長さとして、気体部分の長さが通常0.5〜15cm、好ましくは1〜10cm、液体部分の長さが通常0.5〜15cm、好ましくは1〜10cmとなるように、上記気体の注入間隔及び注入時間を設定すればよい。上記したような条件で交互層を形成する手段を実施すれば、より効果的にチューブ内の固体の沈降や付着を抑制することができる。
また、上記交互層を形成する手段に係る液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体としては、具体的には、例えば窒素ガス、酸素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、空気などの気体から、液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を選択すればよく、中でも窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましく、その中でも窒素ガスがより好ましい。
なお、上で述べたチューブが、光反応に要求される波長の光を透過可能な材料からなるチューブである場合には、本発明を光反応に好ましく適用することができる。本発明を光反応に用いる場合、チューブを螺旋状に巻き、当該螺旋の中央部に、反応に必要な光照射を行うための光源が設けられているようにしてもよい。このようにすれば、光反応を実施できるようになるし、チューブの長さや上で述べたポンプの流速を適宜調節すれば、光の照射時間を適切に制御することができるようになる。
[本発明の主たる実施の形態]
以下、本発明の一実施の形態について説明するが、本実施の形態においては、以下のような光反応を例にとって説明する。
すなわち、無水マレイン酸の光二量化によって、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBTA)を生成する反応である。
Figure 2009219947
CBTAは、耐熱性ポリマーや液晶配向膜の原料として用いられ、一般的な有機溶媒に不溶であり、反応中にその結晶が析出するものである。従って、析出した結晶が、チューブ内に留まって、チューブを閉塞させてしまう主な要因となる。
本発明の一実施の形態に係るフロー反応装置の構成を図3に示す。本実施の形態に係るフロー反応装置は、反応溶液となる無水マレイン酸の酢酸エチル溶液(例えば濃度10w/w%)の反応溶液容器1と、反応溶液容器1から反応溶液を吸い出すプランジャーポンプ5と、プランジャーポンプ5から供給される反応溶液を反応場に供給し、反応場ともなる透明なチューブ3と、窒素(N2)ボンベ7と、窒素ボンベ7から供給される窒素ガスをチューブ3に出力して窒素ガスと反応溶液との交互層を反応溶液の送液方向に形成するマスフローコントローラ9と、内部に例えば水を内包し、超音波振動子19が接合されている超音波槽11と、チューブが下から上に螺旋状に巻き付けられている透明で円筒状の内部容器13と、内部容器13に接触しないように配置されるランプ17とランプ17の冷却管15を含む光源ユニットと、チューブ3から排出された、反応後の反応溶液及び析出したCBTAを貯める生成物容器21とを有する。
本実施の形態では、チューブ3には、例えばテフロン(登録商標)(PFA)チューブで、例えば外径1.6mm、内径1.0mmのものが用いられている。但し、超音波による振動等に耐えられることができ、ランプ17から照射される光のうち、当該光反応に要求される波長の光を透過可能な材料であれば、このような材料に限定されず、例えばポリアミド系樹脂等の合成樹脂からなるチューブ、強化ガラス、石英ガラス等からなるガラス管などの透明若しくは半透明の材料のものであってもよい。また、内径なども、反応溶液と窒素ガスとの交互層を形成することができれば、他のサイズであってもよいが、例えば本実施の形態の場合には、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜2mmである。
また、チューブ3は、図3の例では、下から上に内部容器13に螺旋状に巻き付けられているが、上から下に巻き付けるようにしても良い。なお、光反応の場合には、ランプ17からの光が均一に当たるように、チューブ3を重ねずに巻くのが望ましい。
さらに、マスフローコントローラ9の代わりに、窒素ガスの流量を反応溶液と窒素ガスとの交互層を形成するために窒素ガスの流量を適切に制御するための微少流量バルブなどであってもよい。なお、窒素ガスではなく、例えばヘリウムガス、アルゴンガスなどの液体中での反応や反応生成物に影響を与えない他の気体(不活性ガス)であってもよい。
ランプ17は、例えば高圧水銀ランプであるが、光反応に必要な波長の光を所定の強度で出力する他の光源(例えばLED(Light-Emitting Diode))であってもよい。
さらに、本実施の形態では、超音波振動子19が接合されている超音波槽11が用いられる例を示しているが、例えばボルテックスミキサーなどの機械的振動を与えるような機構を採用した装置、電気的コイルの励起振動機構を採用した装置など、超音波ではなく他の振動を与えるような機構を採用した装置でチューブ3に振動を伝え、反応溶液中の固体を揺り動かすようにしても良い。なお、超音波振動子19は、周波数20〜200kHz、50〜2000Wの出力を有する通常の超音波振動子でよい。
内部容器13についても、高圧水銀ランプなどから照射される光のうち、光反応に要求される波長の光が透過可能であって、超音波などの振動に耐えられるような材料であれば、どのような材料で作成されたものであっても良い。
次に、図3に示したフロー反応装置の動作を説明する。まず、プランジャーポンプ5は、反応溶液容器1から反応溶液を吸い上げ、所定圧でチューブ3に供給する。また、マスフローコントローラ9は、窒素ボンベ7から出力される窒素ガスを、チューブ3内において、送液方向において反応溶液と窒素ガスとの交互層を形成するように間欠的に注入する。そうすると、図4に示すように、図3のAの部分では、気泡部分31と反応溶液部分32とが交互に発生するようになる。なお、反応溶液部分32の長さは通常0.5〜15cm程度、好ましくは1〜10cm程度であり、その際の気泡部分31の長さは通常0.5〜15cm程度、好ましくは1〜10cm程度であり、また、反応溶液部分32の長さと気泡部分31の長さの好ましい相対関係は、溶液部分32:気泡部分31=1:5〜5:1である。反応溶液部分32の長さがあまりに長いと、光反応によって析出するCBTAの結晶の量が多くなりすぎ、チューブ3の閉塞に繋がってしまう。また、反応溶液のチューブ3への供給は、反応時間を一定にするために、常に一定の圧力で行われることが好ましい。
図4に示すように、窒素ガスの気泡部分31と反応溶液部分32とが交互に形成された流体は、超音波槽11中のチューブ3に送り込まれ、当該流体には、内部容器13に螺旋状に巻かれた、チューブ3の部分(例えば約7.4m)でランプ17からの光がほぼ均一に照射され、光反応が行われる。反応溶液部分32では、無水マレイン酸の光二量化によってCBTAの結晶が析出する。この際、析出したCBTAの結晶は、超音波振動によってチューブ3内において揺り動かされ、チューブ3内に沈降したままではなく、窒素ガスの気泡部分31によって押し出されるようになる。なお、CBTAの結晶は超音波振動によって溶解するわけではない。すなわち、図3のBの部分では、図5に示すように、反応溶液部分32の中には、CBTAの結晶33が析出し、反応溶液部分32と窒素ガスの気泡部分31との境界部で、窒素ガスの気泡部分31によって、送液方向に押し出されるようになる。そして、反応後の反応溶液及びCBTAの結晶は、チューブ3から生成物容器21に排出される。
このような動作によって、チューブ3が閉塞することなく、目的生成物のCBTAが生成され、生成物容器21にチューブ3から連続的に排出されるようになる。
なお、図3では図示していないが、超音波槽11内の水は、超音波の影響を受けて発熱し、また、ランプ17も発熱するので、当該水は、冷却されている。冷却の方法は、通常この分野で用いられるものであれば、どのようなものであっても良い。
[実験例]
チューブ3内における反応溶液の線速度を変化させた場合の収率等についての実験結果を図6に示す。図6に示すように、内部容器13に螺旋状に巻かれた、チューブ3の部分が約7.4mの場合、反応溶液の線速度を1.1cm/sec.程度まで下げて、ランプ17から光が照射されている時間である滞留時間が10分を超えると、収率が60%程度となって、好ましい状態となる。なお、窒素ガスの流量(N2(sccm))についても、反応溶液の線速度が下がるにつれて、反応溶液部分と窒素ガスの気泡部分の比率を一定にするため下がっている。
濃度については、酢酸エチル中の無水マレイン酸の濃度が10w/w%の例のみ示しているが、異なる濃度であってもよい。但し、10w/w%以上にしても、収率の上昇は大きくなく、効果は小さい。
[他の実施の形態]
上で述べた主たる実施の形態では、チューブ3内において反応溶液と窒素ガスとの交互層を形成し、超音波による振動をチューブ3に与えることによって、析出したCBTAの結晶が、チューブ3内に沈降や付着して留まることを防止していた。
これに対して、反応溶液と窒素ガスの気泡との交互層を形成するだけの場合、超音波による振動を与えるだけの場合についても考察する。
図7に、単純に反応溶液をチューブ3に流すだけの場合(「なし」と表示)、超音波による振動のみの場合(「超音波振動のみ」と表示)、反応溶液と窒素ガスの気泡との交互層を形成するだけの場合(「窒素のみ」と表示)、主たる実施の形態の場合(「超音波+窒素」と表示)に、閉塞するまでの時間の測定結果を示す。図7の結果を見ると、超音波振動のみの場合は、単純に反応溶液を流すだけの場合に比して一定の効果が見られる。また、反応溶液と窒素ガスの気泡との交互層を形成するだけの場合は、単純に反応溶液を流すだけの場合に比して、多少効果が認められる場合もあることが分かる。
当然ながら、主たる実施の形態の場合には、閉塞無しで連続運転が可能である。10時間閉塞無しで運転できたケースでは、例えば、ポンプ流速が0.8ml(ポンプ内圧力6kgf/cm2)で、窒素ガスの流量は1.55sccmである。
なお、反応溶液と窒素ガスの気泡との交互層を形成するだけの場合、超音波槽11は不要であり、チューブ3にも普通ガラスなどの振動に弱い素材を用いることも可能である。さらに、内部容器13についても、振動を光源ユニットに伝えないために用いられているので、チューブ3を光源ユニットに直接巻き付けるようにしても良い。
また、超音波振動を与えるだけの場合、窒素ボンベ7及びマスフローコントローラ9が不要となる。
[他の反応への応用等]
主たる実施の形態では、光反応の場合を説明したが、光反応ではなく、熱反応(熱源を必要とする反応)や、本発明の構成にさらに別の化合物(原料)を含む液体を供給する手段を設けて異なる化合物間で反応を行わせる場合、すなわち、二量化のような同一化合物同士の反応ではなく、2種以上の異なる化合物間の反応などの場合にも、これらの反応等によって固体が析出する場合(上記(1)の場合)、反応溶液に触媒などの固体が反応開始時に含まれる場合(上記(2)の場合)、反応溶液に固体状の化合物(原料)が含まれる場合(上記(3)の場合)等には、チューブの閉塞を防止するための上で述べた2つの手段は有効である。例えば、熱反応の場合には、オイルバス等にチューブを沈めることになるし、異なる化合物間の反応の場合には、オイルバス等にチューブを沈めることになる場合もあれば、ドライアイスバス、氷浴等にチューブを沈めることになる場合もあるし、加熱又は冷却のいずれも不要になる場合もあるが、その際チューブは透明である必要はない。なお、チューブは合成樹脂からなるチューブでなくとも上で述べたようなガラス管や金属製の管であっても良い。また、螺旋状に巻き付ける必要はない。巻き付けない場合には、内部容器13自体が不要の場合もある。但し、チューブ3をあまりに複雑に曲げたりすると、閉塞の原因になるので、あまり曲率を大きくしない方がよい。また、巻き付ける場合においても、光反応を行う場合には、光を均一に照射するため1重巻であったが、熱反応や異なる化合物間の反応の場合には2重巻以上であってもよい。また、反応によっては、液体中での反応や反応生成物に影響を与えない気体として、酸素ガスや空気を使用できる場合もある。
光反応は、無水マレイン酸からCBTAを生成するような反応ではなく、上で述べたように反応の開始時又は途中で、固体が含まれる液体を取り扱うような光反応であればよい。
バッチ式の反応を説明するための模式図である。 フロー式の反応を説明するための模式図である。 本発明の主たる実施の形態におけるフロー反応装置の構成例を示す図である。 反応前のチューブ内の状態を表す模式図である。 反応後のチューブ内の状態を表す模式図である。 本発明の主たる実施の形態についての実験例を示す図である。 本発明の他の実施の形態の効果を説明するための図である。
符号の説明
1 反応溶液容器 3 チューブ
5 プランジャーポンプ 7 窒素ボンベ
9 マスフローコントローラ 11 超音波槽
13 内部容器 15 冷却管
17 ランプ 19 超音波振動子
21 生成物容器

Claims (10)

  1. 固体を含む液体の流路となり、前記液体中で反応を行わせるためのチューブと、
    前記チューブに、前記液体を連続的に供給する手段と、
    前記チューブに対して振動を与える振動手段又は/及び前記チューブに前記液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を間欠的に注入して、前記チューブ内前記液体の進行方向に、前記気体と前記液体の交互層を形成する手段と、
    を有するフロー反応装置。
  2. 前記振動手段が、
    超音波振動手段である
    請求項1記載のフロー反応装置。
  3. 前記振動手段が、
    液体を内包する容器と、
    前記容器に接合される超音波振動子と、
    を有し、
    前記チューブが、前記容器内の液体中を通過する
    請求項1記載のフロー反応装置。
  4. 前記振動手段及び
    前記交互層を形成する手段と、
    を有する請求項1記載のフロー反応装置。
  5. 前記チューブが、光反応に要求される波長の光を透過可能な材料からなるチューブであり、
    前記チューブは螺旋状に巻かれており、当該螺旋の中央部に、前記反応に必要な光照射を行うための光源が設けられている
    請求項1乃至4のいずれか1項記載のフロー反応装置。
  6. 固体を含む液体の流路となり、前記液体中で反応を行わせるためのチューブに、前記液体を連続的に供給する工程と、
    前記チューブに対して振動を与える振動工程又は/及び前記チューブに前記液体中での反応及び反応生成物に影響を与えない気体を間欠的に注入して、前記チューブ内前記液体の進行方向に、前記気体と前記液体の交互層を形成する工程と、
    前記液体中において反応を行わせる工程と、
    を含むフロー反応方法。
  7. 前記振動工程が、
    超音波振動工程である
    請求項6記載のフロー反応方法。
  8. 前記振動工程において、
    液体を内包する容器に接合される超音波振動子から、前記液体を介して超音波振動が与えられ、
    前記チューブが、前記容器内の液体中を通過する
    請求項6記載のフロー反応方法。
  9. 前記振動工程及び
    前記交互層を形成する工程と、
    を含む請求項6記載のフロー反応方法。
  10. 前記チューブが、光反応に要求される波長の光を透過可能な材料からなるチューブであり、
    前記チューブは螺旋状に巻かれており、
    前記螺旋の中央部に設置された光源から前記反応に必要な光照射を行う工程
    をさらに含む請求項6乃至9のいずれか1項記載のフロー反応方法。
JP2008064075A 2008-03-13 2008-03-13 フロー反応装置及び方法 Pending JP2009219947A (ja)

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