JP2009219376A - 医療用細胞の保護用液 - Google Patents

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Abstract

【課題】移植手術の日程変更や交通障害による輸送遅延等に対して十分に対応できる長期安定性を有する細胞保護用液を提供する。
【解決手段】本発明の細胞保護用液は、非必須アミノ酸としてL−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジンを含み、必須アミノ酸と非必須アミノ酸との濃度比を1.3〜1.7と設定し、ナトリウムイオン濃度を40〜50mEq/Lとし、浸透圧を生理食塩水比1.2〜1.4の高張とする構成をとる。これにより、ヒト又はヒトを除く動物の培養細胞を、非凍結の低温下で、長期間、安定に保持できる細胞保護用液が提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞を保存・輸送するために用いる細胞保護用液に関し、特に細胞移植用のヒト又はヒトを除く動物の細胞の保護用液に関する。
狭心症及び心筋梗塞を含む虚血性心疾患では、心筋組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、この状態が長時間続くと心筋組織が壊死してしまう。成人の心筋細胞は終末分化を呈し自己複製能に乏しいため、心筋組織は一度壊死すると再生することはない。そのため、心筋梗塞及びその後の心室リモデリング並びに圧負荷肥大心及びその代償機転の破綻により、心不全に陥ってしまう。
心不全の治療方法としては、左心補助人工心臓を装着するか、最終的には心臓移植を受けるという方法しかないのが現状である。しかし、補助人工心臓は単に心臓移植への橋渡しにしか過ぎず、心臓移植はドナー不足、拒絶反応及び合併症がある等の問題がある。
このような中で新たな治療法として研究が進められているのが、心筋組織への骨格筋芽細胞移植である。この治療法は、患者の大腿部から採取した筋肉に含まれる骨格筋芽細胞を体外で培養、増殖し、患者本人の心筋壊死部に注入し、心機能の低下を抑制しようとするものである。
骨格筋芽細胞は、患者自身から採取するので拒絶反応及び免疫を抑制することによる感染症のおそれがなく、筋肉細胞以外には分化しない、体外での培養が可能である等の好ましい特長を有している。
骨格筋芽細胞の移植により心機能の低下が抑制されるメカニズムはまだ明らかでないが、概要としては、移植された骨格筋芽細胞が心筋内で筋線維を形成し、その弾力性により周囲の正常な心筋の動きを機械的に助けて心機能の更なる低下を防ぐこと、または移植された骨格筋芽細胞がVEGF(血管内皮増殖因子)などのサイトカインを分泌し、その効果によるものなどが考えられている。
移植に用いる骨格筋芽細胞は、患者本人の大腿部骨格筋からバイオプシーによって数gの筋肉組織を採取し、酵素処理後、分離した骨格筋芽細胞を数週間かけて培養することにより必要な細胞数が得られる。目標細胞数に達した後、直ちに移植するのでなければ、培養細胞は手術日まで凍結保存されることとなる。
このとき使用する凍結保存液には、細胞が受ける凍害ストレスを回避する目的で、凍害保護剤が成分として含有される。そして、この凍結保護剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)が一般的に用いられている。
DMSOは、細胞膜を通過し細胞内氷晶形成に伴う障害を防止する働きがある。具体的には、細胞外の水成分が凍り、それに伴い細胞外NaCl濃度と浸透圧が上昇し、細胞の脱水化が起こる過程において、この細胞内脱水に伴う凍害を防ぐ働きがある。
ところが、DMSOは、「医薬品の残留溶媒ガイドラインについて」(平成10年3月30日 医薬審第307号)でクラス3の溶媒に指定されており、医療用として使用する場合は、凍結された細胞を解凍し、更に洗浄を行って、凍結保護剤成分を除去しなければならない。
しかし、凍結解凍プロセスを経た細胞は不安定な状態であり、そのような細胞に対して洗浄を行うと破損しやすく、解凍後の細胞生存性の問題もあって、移植に必要な細胞数を確保できない場合がある。
そのような問題を解決することを目的として、特許文献1に記載の細胞保護用液が発明された。
特許文献1に記載された“Formula I”は、骨格筋芽細胞の移植を目的とする、凍結化を伴わない保存・輸送に用いるための細胞保護用液であって、4.5g/L ブドウ糖、5g/L ヒト血清アルブミン、3.7g/L 重炭酸ナトリウム、400g/L 塩化カリウム、200g/L 塩化カルシウム、0.195g/L 硫酸マグネシウム、0.0209gリン/L リン酸水素ナトリウム/リン酸二水素ナトリウム、0.000014g/L 鉄、1.11g/L アミノ酸、0.24g/L 総合ビタミン剤から組成され、浸透圧358mOsm/kgに調製したものである。
しかし、特許文献1に記載された発明に係る細胞保護用液“Formula I”は、輸送中の交通機関の乱れ、移植日の延期などに十分対応できる充分な保存性を有しないおそれがある。
米国特許第5543316号明細書
そこで、本発明は、ヒト及びヒトを除く動物の細胞を、傷病の治療を目的とする細胞移植手術に供するために、目標の細胞数まで培養、増殖させた後、凍結することなく低温下で保存することができ、保存施設から手術を行う医療機関まで低温状態で高い細胞生存性を維持しながら輸送することができ、そして、細胞移植手術の際には、凍結保存された細胞では不可避である解凍及び凍害保護剤の洗浄除去に係る操作を必要とせず、移植部位にそのまま注入することができる、細胞保護用液を提供することを目的とするものである。
そこで、本発明は、上記目的を達成するために、細胞保護用液の組成を鋭利検討した結果、以下のいずれかの条件で上記目的が達成されることを知見し、発明を完成した。好ましくは、細胞保護用液のナトリウムイオン濃度を40〜50mEq/Lに抑え、浸透圧を生理食塩液比1.2〜1.4に調節することによって、低温下での細胞膨化を防ぐ。特許文献1に記載の細胞保護用液には含まれていない3種類のアミノ酸(L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジン)を加え、好ましくは、アミノ酸の終濃度をアミノ酸全体として0.5〜1.5g/L、必須アミノ酸と非必須アミノ酸との濃度比(細胞保護用液中1L中の必須アミノ酸の総グラム数/細胞保護用液1L中の非必須アミノ酸の総グラム数をいう。以下同じ。)=1.3〜1.7とするとともに、ビタミン類を終濃度0.02〜0.3g/L、ヒト血清アルブミンを終濃度0.1〜10g/L等とするように含む。なお、本明細書においては、質量、重量、濃度、温度及び比を表す数値は有効数字で示されるものとし、最下位の一桁下を四捨五入して記載してある。従って、例えば、0.02g/Lは、0.015〜0.024g/Lの範囲を含む。また、本明細書において、低温とは1〜10℃、好ましくは2〜8℃をいう。さらに、別に定めのないかぎり、動物はヒトを含む。
本発明の細胞保護用液は、細胞の凍結によって生じる細胞融解時の損失に対する心配がなく、また、凍結保護剤の洗浄除去などの操作が不要である。
本発明は以下のように説明される。
本発明の細胞保護用液は、糖、血清アルブミン、鉄、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、「炭酸水素イオン及び炭酸イオンからなる群から選ばれる1又は2のイオン」、「リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸イオンからなる群から選ばれる1乃至3のイオン」、必須アミノ酸を本質的に含む少なくとも1種類のアミノ酸、少なくとも1種類のビタミン並びに浸透圧調整剤を含む水溶液から構成され、ナトリウムイオン濃度が135mEq/L未満、浸透圧が365〜435mOsm/kgであって、増殖因子を本質的に含まないことを特徴とする。
糖は細胞が解糖系に回収して代謝しうる任意の糖を使用することができる。好ましくは単糖類であり、より好ましくはD−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトース及びD−マンノースからなる群から選ばれる1又は2以上の六炭糖であり、さらに好ましくはD−グルコースである。
D−グルコースは、好ましくは2.0〜8.0g/L、より好ましくは4.1g/Lの終濃度で、細胞保護用液中に含まれる。
D−グルコースは、好ましくは日本薬局方 ブドウ糖又はブドウ糖注射液(一般名)を用る。より好ましくは、テルモ糖注50%(テルモ(株))を用いる。
血清アルブミンは細胞培養に適した血清アルブミンを使用することができる。好ましくは細胞が由来する動物と同種の動物に由来する血清アルブミンである。例えば、好ましくは、哺乳動物に由来する細胞の場合は同種の哺乳動物に由来する血清アルブミンであり、ヒトに由来する細胞の場合はヒト血清アルブミンである。
ヒト血清アルブミンは、好ましくは人血清アルブミン(一般名)である。より好ましくは、献血アルブミン25“化血研”((財)化学及血清療法研究所)又は献血アルブミン−Wf((株)ベネシス)である。
ヒト血清アルブミンは、好ましくは0.1〜10g/L、より好ましくは5g/Lの終濃度で、細胞保護用液中に含まれる。
血清アルブミンは、浮遊させた細胞の凝集を回避する懸濁化剤の役割を意図するものであるが、この意図に限定されて解釈されるものではない。
鉄は細胞が利用可能な含鉄化合物を使用することができる。好ましくは、酸化鉄(III)、水酸化鉄(III)及びこれらの錯体若しくは包接体からなる群から選ばれる1又は2以上の含鉄化合物である。より好ましくは、含糖酸化鉄(一般名)、シデフェロン(一般名)及びコンドロイチン硫酸・鉄コロイド(一般名)からなる群から選ばれる1又は2以上のものを含む製剤である。さらに好ましくは、含糖酸化鉄注射液(製剤名)であるフェジン(登録商標)静注40mg(日医工(株))である。
さらには、含鉄化合物は、細胞保護用液中に、鉄に換算して、好ましくは5〜20μg/L、より好ましくは14μg/Lの終濃度で含まれる。従って、例えば、前記フェジン静注40mgは、2mL中に鉄として40mgに相当する酸化鉄を含むから、終濃度(鉄として)を14μg/Lとするためには0.7μLを使用する。
ナトリウムイオンは、好ましくは、ナトリウム塩により提供される。好ましいナトリウム塩は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)である。
炭酸水素ナトリウムは、好ましくは、日本薬局方 炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム注射液(一般名)が用いられる。より好ましくは、メイロン(登録商標)84((株)大塚製薬工場)が用いられる。
ナトリウムイオンは、好ましくは、135mEq/L未満、より好ましくは、90mEq/L以下、さらに好ましくは、40〜50mEq/L、いっそう好ましくは、45mEq/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。
よって、炭酸水素ナトリウムは、好ましくは、11.1g/L未満、より好ましくは、7.4g/L以下、さらに好ましくは、3.3〜4.2g/L、いっそう好ましくは3.7g/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。従って、例えば、8.4%(1M)水溶液であるメイロン84を使用して終濃度を3.7g/Lとする場合には44.05mLを使用する。
ヒトの場合、血清ナトリウムイオン濃度は135〜145mEq/Lが正常範囲である。ナトリウムイオン濃度を低くする意図は、細胞外からのナトリウムイオンの流入とそれによる細胞内浸透圧の上昇を抑制することにあるが、この意図に限定されて解釈されるものではない。
カリウムイオンは、好ましくはカリウム塩によって提供される。好ましいカリウム塩は塩化カリウム(KCl)である。
塩化カリウムは、好ましくは、日本薬局方 塩化カリウム、塩化カリウム注射液(一般名)又は塩化カリウム注射液キット(一般名)である。より好ましくは、塩化カリウム注射液キット(一般名)である、KCL注10mEqキット[テルモ]又はKCL注20mEqキット[テルモ](テルモ(株))である。
塩化カリウムは、好ましくは、200〜600mg/L、より好ましくは、302mg/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。従って、例えば、1M水溶液であるKCL注10mEqキット[テルモ]又はKCL注20mEqキット[テルモ]を使用して終濃度を302mg/Lとするためには、4.05mLを使用する。
カルシウムイオンは、好ましくはカルシウム塩によって供給される。好ましいカルシウム塩は塩化カルシウム(CaCl)である。
塩化カルシウムは、好ましくは、日本薬局方 塩化カルシウム水和物、塩化カルシウム注射液(一般名)又は塩化カルシウムキット(一般名)であり、塩化カルシウム注20mEqシリンジ[テルモ](テルモ(株))が特に好ましい。
塩化カルシウムは、好ましくは、50〜800mg/L、より好ましくは、151mg/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。従って、例えば、0.5M水溶液である塩化カルシウム注20mEqシリンジ[テルモ]を使用して終濃度を151mg/Lとするためには、2.72mLを使用する。
マグネシウムイオンは、好ましくはマグネシウム塩によって供給される。好ましいマグネシウム塩は硫酸マグネシウム(MgSO)である。
硫酸マグネシウムは、好ましくは、硫酸マグネシウム水和物(局方名)、硫酸マグネシウム注射液(局方名)又は硫酸マグネシウムキット(一般名)であり、より好ましくは、硫酸マグネシウム注20mEqシリンジ[テルモ](テルモ(株))である。
硫酸マグネシウム(MgSO)は、好ましくは、0.1〜0.5g/L、より好ましくは0.2g/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。従って、例えば、0.5M水溶液である硫酸マグネシウム注20mEqシリンジ[テルモ]を使用して終濃度を0.2g/Lとするためには、3.32mLを使用する。
「炭酸水素イオン及び炭酸イオンからなる群から選ばれる1又は2のイオン」は、好ましくは、炭酸水素塩によって提供される。好ましい炭酸水素塩は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)である。
炭酸水素イオン又は炭酸イオンを加える意図は、炭酸緩衝系を構成することにあるが、この意図に限定されて解釈されるものではない。
「リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸イオンからなる群から選ばれる1乃至3のイオン」は、好ましくはリン酸水素塩によって提供される。好ましいリン酸水素塩はリン酸二カリウムである。リン酸二カリウムは、好ましくは、リン酸二カリウム(一般名)、リン酸二カリウム注射液(一般名)又はリン酸二カリウム注射液キット(一般名)であり、より好ましくは、リン酸2カリウム注20mEqキット[テルモ](テルモ(株))である。
リン酸二カリウム(KHPO)は、好ましくは、0.085〜0.14g/L、より好ましくは、0.11g/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。従って、例えば、0.5M水溶液であるリン酸2カリウム注20mEqキット[テルモ]を使用して終濃度を0.11g/Lとするためには、4.05mLを使用する。
アミノ酸は、細胞保護用液を用いる細胞の由来する動物に対応する必須アミノ酸を本質的に含む。好ましくは、少なくとも3種類の非必須アミノ酸をさらに含む。好ましくは、必須アミノ酸は、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−チロジン及び/又はそれらの塩である。好ましくは、非必須アミノ酸は、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジン及び/又はそれらの塩を含む。より好ましくは、非必須アミノ酸は、L−アラニン、L−アルギニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−システイン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジン及び/又はそれらの塩である。
アミノ酸は、全体として、好ましくは0.5〜1.5g/L、より好ましくは1.03g/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。必須アミノ酸と非必須アミノ酸の濃度比は、好ましくは濃度比=1.3〜1.7、より好ましくは濃度比=1.4である。
アミノ酸は、少なくとも1種類のアミノ酸を含む水溶液として用いるのが好ましい。混合アミノ酸製剤(一般名)を使用するのが好ましい。高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤注射液(一般名)を使用するのがより好ましく、高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤(5−2)注射液(一般名)を使用するのがさらに好ましい。バリアミン(登録商標)F注(メルク製薬(株))及び/又はモリプロン(登録商標)F(味の素ファルマ(株))を使用するのがいっそう好ましい。
アミノ酸は、細胞への栄養付与を目的とした安定化剤を意図して細胞保護用液に添加されるが、この意図に限定されるものではない。
ビタミンは、少なくとも1種類を含む。好ましくは、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB12、葉酸、ビオチン及び/又はこれらの塩若しくは誘導体からなる群から選ばれる。より好ましくは、アスコルビン酸(ビタミンC)、レチノール(ビタミンA)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)、チアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、ピリドキシン(ビタミンB)、ニコチン酸アミド(ナイアシン)、パンテノール(パントテン酸)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体からなる群から選ばれる。
ビタミンは、総量として、好ましくは0.02〜0.3g/L、より好ましくは0.24g/Lの終濃度で細胞保護用液中に含まれる。
ビタミンは、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB12、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体のそれぞれを単独で添加することができるが、2以上を混合して用いてもよい。さらに、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、パントテン酸及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む総合ビタミン剤(A)と、ビタミンB12、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む総合ビタミン剤(B)とに分けて用いてもよいし、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB12、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む総合ビタミン剤(C)を用いてもよい。
前記総合ビタミン剤(A)は、好ましくは、アスコルビン酸、レチノール、エルゴカルシフェロール、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、トコフェロール及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む水溶液であり、前記総合ビタミン剤(B)は、好ましくは、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む水溶液である。
前記総合ビタミン剤(A)は、より好ましくは、アスコルビン酸を20g/L、レチノイドをレチノールとして0.2g/L、エルゴカルシフェロールを0.001g/L、塩酸チアミンをチアミンとして0.6g/L、リン酸リボフラビンナトリウムをリボフラビンとして0.72g/L、塩酸ピリドキシンを0.8g/L、ニコチン酸アミドを8g/L、パンテノールをパントテン酸として3g/L及び酢酸トコフェロールを2g/Lの終濃度でそれぞれ含む水溶液であり、前記総合ビタミン剤(B)は、より好ましくは、ビオチンを0.012g/L、葉酸を0.08g/L及びシアノコバラミンを0.001g/Lの終濃度でそれぞれ含む水溶液である。
前記総合ビタミン剤(A)は、高カロリー輸液用総合ビタミン剤(1−2)注射液(一般名)がよりいっそう好ましく、ネオM.V.I.−9注(アイロム製薬(株))がさらに好ましい。また、前記総合ビタミン剤(B)は、高カロリー輸液用総合ビタミン剤(1−3)注射液(一般名)がよりいっそう好ましく、特に、M.V.I.−3注(アイロム製薬(株))がさらに好ましい。
前記ビタミン剤(C)は、好ましくは、アスコルビン酸、レチノール、エルゴカルシフェロール、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、トコフェロール、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン及び/又はそれらの塩若しくは誘導体を含む水溶液である。
前記ビタミン剤(C)は、より好ましくは、アスコルビン酸を20g/L、レチノイドをレチノールとして0.2g/L、エルゴカルシフェロールを0.001g/L、塩酸チアミンをチアミンとして0.6g/L、リン酸リボフラビンナトリウムをリボフラビンとして0.72g/L、塩酸ピリドキシンを0.8g/L、ニコチン酸アミドを8g/L、パンテノールをパントテン酸として3g/L、酢酸トコフェロールを2g/L、ビオチンを0.012g/L、葉酸を0.08g/L及びシアノコバラミンを0.001g/Lの終濃度で含む水溶液である。
前記総合ビタミン剤(C)は、高カロリー輸液用総合ビタミン剤(1−4)キット(一般名)が好ましく、特に、M.V.I.−12キット(アイロム製薬(株))が好ましい。
ビタミンは、細胞への栄養付与を目的とした安定化剤を意図するものであるが、この意図に限定されるものではない。
浸透圧調整剤は、好ましくは、多価アルコール又は糖アルコールから選ばれる。好ましい多価アルコールはプロピレングリコールであり、好ましい糖アルコールはD−ソルビトールである。より好ましくは、プロピレングリコールである。
浸透圧調整剤は、好ましくは、細胞保護用液の浸透圧を生理食塩液比1.2〜1.4とする量添加される。
プロピレングリコール又はD−ソルビトールは、単独で細胞保護用液に添加することができるが、前記総合ビタミン剤(A)、(B)及び/又は(C)に含まれて添加されてもよい。
プロピレングリコールは、好ましくは前記総合ビタミン剤(A)、(B)及び/又は(C)中に、300g/Lの濃度で含まれる。
浸透圧調整剤は、細胞保護用液の浸透圧を高張とすることで、ナトリウムポンプの機能が低下することによる低温下での細胞の膨化を防ぎ、細胞生存性の維持を図ることを意図して細胞保護用液に添加されるが、この意図に限定されるものではない。
さらに、細胞保護用液を調製するために使用する水は、注射用水(一般名)又は注射用蒸留水(一般名)が好ましい。
さらに、細胞保護用液は、無菌であり、かつ、エンドトキシン・フリーであることが好ましい。
ここで、特許文献1に記載の細胞保護用液と本発明の細胞保護用液の一態様について、アミノ酸、ビタミン及び電解質等についての比較を行なう。
アミノ酸の種類について、特許文献1に記載の細胞保護用液は、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン(L−リジン及び酢酸L−リジンとして)、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−アルギニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−システイン(L−システイン及び塩酸L−システイン1水和物として)を含むのに対し、本発明の細胞保護用液は、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジンをさらに含有することが顕著な特徴である(表1)。
Figure 2009219376
また、アミノ酸の各濃度並びに必須アミノ酸及び非必須アミノ酸の濃度比について、特許文献1に記載の細胞保護用液と本発明の細胞保護用液の一態様とを比較すれば、表2及び表3に示される通りである。
特に、特許文献1に記載の細胞保護用液(表2)では濃度比=1.2であるのに対して、本発明の細胞保護用液の一態様(表3)では濃度比=1.4であることが特徴である。
Figure 2009219376
Figure 2009219376
ビタミンについて、表4に、特許文献1に記載の細胞保護用液を調製するために使用されるビタミン混合液であるソリューション(I)と本発明の細胞保護用液の一態様を調製するために使用されるビタミン混合液である総合ビタミン剤(A)との比較を示す。
Figure 2009219376
さらに、ビタミンについて、表5に、特許文献1に記載の細胞保護用液を調製するために使用されるビタミン混合液であるソリューション(II)と本発明の細胞保護用液の一態様を調製するために使用されるビタミン混合液である総合ビタミン剤(B)との比較を示す。
Figure 2009219376
ビタミンに関して、特許文献1に記載の細胞保護用液と本発明の細胞保護用液の一態様とは、実質的に同一のビタミン組成である。
ヒト血清アルブミン、ブドウ糖、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸塩及び鉄について、表6及び表7に成分とその細胞保護用液中の終濃度を示す。
Figure 2009219376
Figure 2009219376
これまでに開示された本発明の細胞保護用液の一態様では、ナトリウムイオン濃度が45mEq/Lであり、浸透圧は生理食塩液比1.2〜1.4である。ただし、0.9w/v%濃度の生理食塩液の浸透圧は、308mOsm/kgである。
本発明の細胞保護用液の一態様では、総合ビタミン剤(A)及び(B)は、それぞれ、6.6mL/L、50mL/Lの濃度で含まれるから、細胞保護用液中のプロピレングリコール濃度は223mMである。これによって、浸透圧を生理食塩液比1.2〜1.4とする。
上述したように本発明の細胞保護用液は、ヒトの骨格筋芽細胞の培養細胞を、2〜8℃の低温下で、該培養細胞を懸濁した状態で、少なくとも5日間にわたり、90%以上の細胞生存率を維持することができる。
そのため、培養細胞を保存・輸送する際に、培養細胞を凍結する必要がなくなり、凍結−解凍プロセスにおける細胞の損失が無くなるとともに、解凍後の凍害保護剤の除去等の操作が不要となった。
本発明の細胞保護用液は、細胞保護用液1Lについて下記の(a)〜(j)をそれぞれの量で含む、注射可能な水溶液である:
(a)炭酸水素ナトリウム・・3.7g;8.4w/v%水溶液を44.05mL(44.05mM);
(b)塩化カリウム・・・・・302mg;1M水溶液を4.05mL(4.05mM);
(c)塩化カルシウム・・・・151mg;0.5M水溶液を2.72mL(1.36mM);
(d)リン酸二カリウム・・・0.11g;0.5M水溶液を1.26mL(0.63mM);
(e)硫酸マグネシウム・・・0.2g;0.5M水溶液を3.32mL(1.66mM);
(f)鉄・・・・・・・・・・0.000014g;鉄として40mgを2mLコロイド溶液中に含有する含糖酸化鉄を0.7μL;
(g)ブドウ糖・・・・・・・4.1g;50w/v水溶液を8.2mL(22.8mM);
(h)アミノ酸・・・・・・・下記アミノ酸を含む総合アミノ酸(10w/v%アミノ酸水溶液)を10.3mL:
L−ヒスチジン 6.0g/L
L−イソロイシン 5.6g/L
L−ロイシン 12.5g/L
酢酸L−リジン 12.4g/L
L−メチオニン 3.5g/L
L−フェニルアラニン 9.35g/L
L−トレオニン 6.5g/L
L−トリプトファン 1.3g/L
L−バリン 4.5g/L
L−アラニン 6.2g/L
L−アルギニン 7.9g/L
L−アスパラギン酸 3.8g/L
L−システイン 1.0g/L
L−グルタミン酸 6.5g/L
L−プロリン 3.3g/L
L−セリン 2.2g/L
L−チロジン 0.35g/L
グリシン 10.7g/L
亜硫酸水素ナトリウム 0.15〜0.5g/L;
(i)ビタミン類・・・・・・下記ビタミン類及びプロピレングリコールを含む総合ビタミン剤(A)を6.6mL、総合ビタミン剤(B)を50mL:
総合ビタミン剤(A)
アスコルビン酸 20g/L
ビタミンA
(レチノールとして) 0.2g/L
エルゴカルシフェロール 0.001g/L
塩酸チアミン
(チアミンとして) 600mg/L
リン酸リボフラビンナトリウム
(リボフラビンとして) 0.72g/L
塩酸ピリドキシン 0.8g/L
ニコチン酸アミド 8g/L
パンテノール 3g/L
プロピレングリコール 300g/L
総合ビタミン剤(B)
ビオチン 0.012g/L
シアノコバラミン 0.08g/L
葉酸 0.001g/L
プロピレングリコール 300g/L;
及び、
(j)ヒト血清アルブミン・・・終濃度5g/Lとなるように、25%水溶液を20mL。
上記において、炭酸水素ナトリウム(終濃度3.7g/L)は、メイロン(登録商標)84((株)大塚製薬工場)を44.05mL使用することが好ましく、塩化カリウム(終濃度302mg/L)は、KCL注10mEqキット[テルモ]又はKCL注20mEqキット[テルモ](テルモ(株))を4.05mL使用することが好ましく、塩化カルシウム(終濃度151mg/L)は、塩化カルシウム注20mEqシリンジ[テルモ](テルモ(株))を2.72mL使用することが好ましく、リン酸二カリウム(終濃度0.11g/L)は、リン酸2カリウム注20mEqキット[テルモ](テルモ(株))を1.26mL使用することが好ましく、硫酸マグネシウム(終濃度0.2g/L)は、硫酸マグネシウム注20mEqシリンジ[テルモ](テルモ(株))を3.32mL使用することが好ましく、鉄は(終濃度0.000014g/L)は、フェジン(登録商標)静注40mg(日医工(株))を0.7μL使用することが特に好ましく、そして、ブドウ糖(終濃度4.1g/L)は、テルモ糖注50%(テルモ(株))を8.2mL使用することが好ましい。
また、上記において、(a)〜(g)を、好ましくは順次、混合することによって、「総合電解質」を調製することができる。
上記において、「総合アミノ酸」は、バリアミン(登録商標)F注(メルク製薬(株))及び/又はモリプロン(登録商標)F(味の素ファルマ(株))を使用することができる。
また、上記において、「総合ビタミン剤(A)」及び「総合ビタミン剤(B)」は、ネオM.V.I.−9注(アイロム製薬(株))及びM.V.I.−3注(アイロム製薬(株))を、それぞれ、使用することができる。
細胞保護用液の全量を所定量とするために、日本薬局方 注射用水を用いることが好ましく、注射用水(一般名)又は注射用蒸留水(一般名)を好ましく使用することができる。
上記の方法により調製される細胞保護用液は、注射用水及び上記(a)〜(j)の注射可能な溶液を、液温1〜10℃に保ちながら順次混合することによって調製することができ、そのようにして調整される細胞保護用液は、浸透圧が生理食塩液比1.2〜1.4、ナトリウムイオン濃度が約45mEq/Lである。
上記の細胞保護用液は、細胞移植に用いる骨格筋芽細胞を、低温下で、該細胞保護用液に懸濁した状態で、培養する細胞の細胞生存性と細胞安定性を比較的長期にわたって高く維持するために用いることができる。
具体的には、細胞保護用液にヒトの骨格筋芽細胞を、懸濁した状態で、低温下で、少なくとも5日間、90%以上の細胞生存性を維持しながら、保持することができる。
以下に実施例を示すが、本発明の技術的範囲は実施例のみに限定されて解釈されるものではない。
1.細胞保護用液の調製
(1)総合電解質液の調製
液温を1〜10℃に保ちながら、
a)炭酸水素ナトリウム注射液(8.4%)(メイロン(登録商標)84、(株)大塚製薬工場)を44.05mL(終濃度 3.7g/L);
b)補正用1モル塩化カリウム液(KCL注10mEqキット[テルモ]、テルモ(株))を4.05mL(終濃度 302mg/L);
c)補正用0.5モル塩化カルシウム液(塩化カルシウム注20mEqシリンジ[テルモ]、テルモ(株))を2.72mL(終濃度 151mg/L);
d)補正用0.5モルリン酸二カリウム液(リン酸2カリウム注20mEqキット[テルモ]、テルモ(株))を1.26mL(終濃度 0.11g/L);
e)補正用0.5モル硫酸マグネシウム液(硫酸マグネシウム注20mEqシリンジ[テルモ]、テルモ(株))を3.32mL(終濃度 0.2g/L);
f)含糖酸化鉄注射液(フェジン(登録商標)静注40mg、日医工(株))を0.000014g/L(終濃度 0.000014g/L);及び、
g)ブドウ糖注射液(50w/v%)(テルモ糖注50%、テルモ(株))を、800mLの日本薬局方 注射用水に加え、混合液1とした。
(2)総合アミノ酸の添加
液温を1〜10℃に保ちながら、混合液1に、10%総合アミノ酸注射液(バリアミン(登録商標)F注、メルク製薬(株))を10.3mL加え、混合液2とした(アミノ酸終濃度 1.03g/L)。
(3)総合ビタミン剤の添加
液温を1〜10℃に保ちながら、混合液2に、高カロリー輸液用混合ビタミン剤(ネオM.V.I.−9注、アイロム製薬(株))を6.6mL、及び、高カロリー輸液用混合ビタミン剤(M.V.I.−3注、アイロム製薬(株))を50mL加え、混合液3とした。
(4)人血清アルブミンの添加
液温を1〜10℃に保ちながら、混合液3に、25%人血清アルブミン(献血アルブミン25“化血研”、(財)化学及血清療法研究所)を加え、混合液4とした(人血清アルブミン終濃度 5g/L)。
(5)細胞保護用液の完成
液温を1〜10℃に保ちながら、混合液4に、日本薬局方注射用水を加え、全量を1Lとして、細胞保護用液の調製が完了した。
上記の調製方法により作られた細胞保護用液は、浸透圧が生理食塩液比約1.3、ナトリウムイオン濃度が約45mEq/Lであった。
この調製過程における液の浸透圧の変化を表8に示す。
Figure 2009219376
培養増殖を経た細胞は浸透圧が等張(生理食塩液比 約1)であることから、細胞を本調製液に懸濁する際は、細胞へ与えるストレスを極力回避するため、低温下(1〜10℃)でゆっくりと撹拌しながら混和懸濁を行った。
2.細胞安定性の確認
1)細胞生存性の確認
細胞保護用液調製後、直ちに細胞を懸濁した細胞懸濁液と、同様に細胞を懸濁した後、低温下(2〜8℃)で1日間経時、同3日間経時、同4日間経時、同5日間経時させた細胞懸濁液に対し、同量のTrypan Blue Stain 0.4%液(Invitrogen製)を加え混和した。
混和後、細胞浮遊液を細胞が沈まないうちに10μLずつ採取し、血球計算盤(エルマ製)に注入した。注入後、直ちに倒立型光学顕微鏡(オリンパス製)にて、血球計算盤の2つのチャンバーに9mm2枠全体に観察される細胞数の測定を行った。
測定後、2つのチャンバーから計測した生死細胞数の平均を求め、染色された細胞を含む全細胞数に対する無染色細胞数の割合を算出した。
2)細胞純度の確認
調製直後の細胞懸濁液、低温下(2〜8℃)で1日間経時、同3日間経時、同4日間経時、同5日間経時させた細胞懸濁液について遠心処理後上清を廃棄した。
これに0.5% BSA含PBS液を加え細胞をリンスした後、0.5% BSA含PBS液で10倍希釈した抗ヒトCD56抗体(ベクトン・ディッキンソン製)を添加し混和させた。対照として0.5% BSA含PBS液で10倍希釈した陰性コントロール用抗体(ベクトン・ディッキンソン製)を添加混和したものを用意した。
各抗体を混和した後、直ちに冷暗所で約1時間反応させ0.5% BSA含PBS液を加え細胞をリンスした後、0.5% BSA含PBS液を加え解析に供した。
解析はフローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン製)を用い、各抗体を混和した細胞に含まれる抗体陽性細胞の割合を計測した。計測にあたっては、陰性コントロールの陽性率の補正を行い、細胞数5,000〜10,000個を解析した。
解析後、各抗体を混和した細胞の陽性細胞率の割合の差から純度を求めた。
3.結果及び考察
1)本発明の細胞安定性(細胞生存率の経時変化確認による評価)
表9に示すように、特許文献1に記載された細胞保護用液を用いた細胞生存率は、調製直後には97%であったものが、2日間の経時によって89%にまで低下していた。これに対し、本発明に係る細胞保護用液に3検体の細胞を懸濁させ、細胞生存率の経時的推移を求めた結果、調製直後94±1.1%(平均±標準偏差)、低温下(2〜8℃)で1日間経過後96±1.3%(同)、同3日間経過後95±2.0%(同)、同4日間経過後95±1.9%(同)、同5日間経過後94±2.1%(同)と推移し、安定であった。
Figure 2009219376
以上の結果、本発明の細胞生存性がより安定していることが示唆された。
本結果について、図1に、本発明の細胞保護用液を用いた場合の細胞生存率の推移(平均値)と、比較対照として特許文献1に記載された細胞保護用液を用いた場合の細胞生存率(文献記載値)の推移を示す。
2)本発明の細胞安定性(細胞純度の経時変化確認による裏付け)
前述で得た細胞生存性の結果が、骨格筋芽細胞の生存性を確実に反映したものであることの裏付けとして、本発明の細胞懸濁液に含まれる骨格筋芽細胞の純度を経時的に確認することにより行った。
確認は、調製した3検体の細胞懸濁液を対象として細胞純度の経時的推移を求めた。
その結果、細胞純度は、調製直後95±2.3%(平均±標準偏差)、低温下(2〜8℃)で1日間経時94±1.9%(同)、同3日間経時94±1.9%(同)、同4日間経時94±1.9%(同)、同5日間経時93±2.4%(同)と推移し、安定であることが判った。
以上の結果、経時的に安定した生存性を示した細胞は、確実に骨格筋芽細胞であったことが明らかとなり、細胞生存性における、特許文献1に記載の細胞保護用液に対する本発明の細胞保護用液の優位性が確認された。
図2に細胞純度の経時的推移(平均値。エラーバーは最高値と最低値。)を示す。
本発明は、細胞の保存・輸送を低温で凍結せず行うことが目的である。そこで、特許文献1に記載の細胞保護用液組成に対し、より長期間にわたり細胞の生存性を安定的に維持させる条件について鋭利検討を行った。
検討の結果、下記条件において、細胞懸濁後低温(2〜8℃)環境で経時的に5日間、細胞が膨化することなく、細胞生存性は安定的に維持されることが知得された:
a)細胞保護用液を構成する総合アミノ酸について、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−チロジンを含んだ;
b)細胞保護用液を構成する総合ビタミン剤について、低温下における細胞膨化の抑制を意図した液の高張化のため、プロピレングリコールを含んだ;及び、
c)細胞保護用液を構成する総合電解質液について、低温高張液下での細胞生存性をより安定させるため、ナトリウムイオン濃度を45mEq/Lとした。
従って、細胞の保存・輸送において通常行われる凍結化によって生じる細胞融解時の損失に対する心配がなく、また凍害保護剤の洗浄除去などの操作を不要とした細胞の保存・輸送が、安定且つ長期にわたって行えることが確認された。
医療機関でバイオプシーされた骨格筋から分離された骨格筋芽細胞を培養し、増殖させた後、細胞を活性を保った状態でパッケージ化して、医療機関に提供することができる。
本発明の細胞保護用液を用いた場合の細胞生存率(平均値)(■)と特許文献1に記載の細胞保護用液を用いた場合の細胞生存率(文献記載値)(◆)を示す。 本願発明に係る細胞保護用液を用いた場合の細胞純度の経時的推移(平均値)を示す。

Claims (19)

  1. アミノ酸、ビタミン剤、電解質、鉄、糖及び血清アルブミンを含み、該アミノ酸は終濃度が0.5〜1.5g/Lであり、かつ、必須アミノ酸と非必須アミノ酸の濃度比が1.3〜1.7である、動物の細胞を凍結することなく低温下で長期にわたり安定に保持する細胞保護用液。
  2. 前記アミノ酸は、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジンを含む、請求項1に記載の細胞保護用液。
  3. 前記ビタミン剤は、前記細胞保護用液中のビタミン類全体の終濃度が0.02〜0.3g/Lである、請求項1又は2に記載の細胞保護用液。
  4. 前記電解質は、前記細胞保護用液中のナトリウムイオンの終濃度を40〜50mEq/Lとする、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞保護用液。
  5. 前記アミノ酸が、L−イソロイシン、L−ロイシン、酢酸L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−グリシン、L−システイン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸及びL−チロジンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞保護用液。
  6. 前記アミノ酸が、L−イソロイシンを5.6g/L、L−ロイシンを12.5g/L、酢酸L−リジンを12.4g/L、L−メチオニンを3.5g/L、L−フェニルアラニンを9.35g/L、L−トレオニンを6.5g/L、L−トリプトファンを1.3g/L、L−バリンを4.5g/L、L−アラニンを6.2g/L、L−アルギニンを7.9g/L、L−ヒスチジンを6.0g/L、L−プロリンを3.3g/L、L−セリンを2.2g/L、グリシンを10.7g/L、L−システインを1.0g/L、L−グルタミン酸を6.5g/L、L−アスパラギン酸を3.8g/L及びL−チロジンを0.35g/Lの濃度でそれぞれ含む水溶液である、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞保護用液。
  7. 前記ビタミン剤が、アスコルビン酸、ビタミンA、エルゴカルシフェロール、塩酸チアミン、リン酸リボフラビンナトリウム、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パンテノール、酢酸トコフェロール、ビオチン、葉酸及びシアノコバラミンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞保護用液。
  8. 前記ビタミン剤が、さらにプロピレングリコールを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞保護用液。
  9. 前記ビタミン剤が、アスコルビン酸を20g/L、ビタミンAをレチノールとして0.2g/L、エルゴカルシフェロールを0.001g/L、塩酸チアミンをチアミンとして600mg/L、リン酸リボフラビンナトリウムをリボフラビンとして0.72g/L、塩酸ピリドキシンを0.8g/L、ニコチン酸アミド8g/L、パンテノールを3g/L、酢酸トコフェロールを2g/L、ビオチンを0.012g/L、葉酸を0.08g/L、シアノコバラミンを0.001g/L及びプロピレングリコールを300g/Lの濃度でそれぞれ含む水溶液である、請求項1〜8のいずれかに記載の細胞保護用液。
  10. 前記電解質が、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、及びリン酸二カリウムを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の細胞保護用液。
  11. 前記電解質は、細胞保護用液中に、炭酸水素ナトリウムが3.7g/L、塩化カリウムが302mg/L、硫酸マグネシウムが0.2g/L及びリン酸二カリウムが0.11g/Lのそれぞれの終濃度で含まれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の細胞保護用液。
  12. 前記鉄が含糖酸化鉄によって提供される、請求項1〜11のいずれかに記載の細胞保護用液。
  13. 前記鉄が、細胞保護用液中に0.000014g/Lの終濃度で含まれる、請求項1〜12のいずれかに記載の細胞保護用液。
  14. 前記糖がブドウ糖である、請求項1〜13のいずれかに記載の細胞保護用液。
  15. 前記糖が、細胞保護用液中に4.1g/Lの終濃度で含まれる、請求項1〜14のいずれかに記載の細胞保護用液。
  16. 前記血清アルブミンが、細胞保護用液中に0.1〜10g/Lの終濃度で含まれる、請求項1〜15のいずれかに記載の細胞保護用液。
  17. 前記血清アルブミンが、細胞保護用液中に5g/Lの終濃度で含まれる、請求項1〜16のいずれかに記載の細胞保護用液。
  18. 浸透圧が生理食塩液の1.2〜1.4倍である、請求項1〜17のいずれかに記載の細胞保護用液。
  19. 総合電解質液、総合アミノ酸、総合ビタミン剤(A)及び(B)並びにヒト血清アルブミンを水と混合して細胞保護用液を製造する方法であって、各要素は下記(1)〜(5)の組成及び分量であることを特徴とする細胞保護用液の製造方法:
    (1)総合電解質液:細胞保護用液1Lに対して、8.4w/v%炭酸水素ナトリウム水溶液を44.05mL、;1M塩化カリウム水溶液を4.05mL、0.5M塩化カルシウム水溶液を2.72mL、0.5Mリン酸二カリウム水溶液を1.26mL、0.5M硫酸マグネシウム水溶液を3.32mL、鉄として40mgを2mLコロイド溶液中に含有する含糖酸化鉄を0.7μL、50w/vブドウ糖水溶液を8.2mL;
    (2)総合アミノ酸:L−ヒスチジンを6.0g/L、L−イソロイシンを5.6g/L、L−ロイシンを12.5g/L、酢酸L−リジンを12.4g/L、L−メチオニンを3.5g/L、L−フェニルアラニンを9.35g/L、L−トレオニンを6.5g/L、L−トリプトファンを1.3g/L、L−バリンを4.5g/L、L−アラニンを6.2g/L、L−アルギニンを7.9g/L、L−アスパラギン酸を3.8g/L、L−システインを1.0g/L、L−グルタミン酸を6.5g/L、L−プロリンを3.3g/L、L−セリンを2.2g/L、L−チロジンを0.35g/L及びグリシンを10.7g/Lの濃度でそれぞれ含む水溶液を、細胞保護用液1Lに対して、10.3mL;
    (3)総合ビタミン剤(A):アスコルビン酸を20g/L、ビタミンAをレチノールとして0.2g/L、エルゴカルシフェロールを0.001g/L、塩酸チアミンをチアミンとして600mg/L、リン酸リボフラビンナトリウムをリボフラビンとして0.72g/L、塩酸ピリドキシンを0.8g/L、ニコチン酸アミドを8g/L、パンテノールを3g/L及びプロピレングリコールを300g/Lの濃度でそれぞれ含む水溶液を、細胞保護用液1Lに対して、6.6mL;
    (4)総合ビタミン剤(B):ビオチンを0.012g/L、シアノコバラミンを0.08g/L、葉酸を0.001g/L及びプロピレングリコールを300g/Lの濃度でそれぞれ含む水溶液を、細胞保護用液1Lに対して、50mL;及び、
    (5)ヒト血清アルブミン:細胞保護用液1Lに対して、25%ヒト血清アルブミン水溶液を20mL。
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