JP2009213402A - 微生物濃縮方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
高効率で対象微生物を分離し、作業の自動化及び省力化を図る。
【解決手段】
本発明では、(a)微生物濃縮装置のろ過器に設置した膜を用いて検査対象水をろ過するステップ(301)と、(b)洗浄水を前記膜のろ過側からろ過面側に向かって逆流するステップ(305)と、(c)撹拌手段を用いて、前記洗浄水を撹拌するステップ(307)と、(d)前記膜を用いて前記洗浄水をろ過するステップ(308)と、(e)前記ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと、(f)前記膜表面の検出対象微生物を回収するステップ(310)とを含む、微生物濃縮装置を用いた微生物濃縮方法を提供する。
【選択図】 図3
高効率で対象微生物を分離し、作業の自動化及び省力化を図る。
【解決手段】
本発明では、(a)微生物濃縮装置のろ過器に設置した膜を用いて検査対象水をろ過するステップ(301)と、(b)洗浄水を前記膜のろ過側からろ過面側に向かって逆流するステップ(305)と、(c)撹拌手段を用いて、前記洗浄水を撹拌するステップ(307)と、(d)前記膜を用いて前記洗浄水をろ過するステップ(308)と、(e)前記ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと、(f)前記膜表面の検出対象微生物を回収するステップ(310)とを含む、微生物濃縮装置を用いた微生物濃縮方法を提供する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、微生物を濃縮する方法に関し、特に、河川及び湖沼などの環境水や上下水道の各処理プロセスの処理水などに存在する原虫、細菌、ウイルスといった水系感染性微生物を濃縮する方法に関する。
環境中には多種多様な化学物質が存在するため、水道原水となる河川や湖沼などの環境水も様々な化学物質で汚染されていると考えられる。しかし、このような水環境の水質問題のほかにクリプトスポリジウムなどの原虫類、腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌などの細菌、ウイルスなどによる水系感染症の発生が大きな社会問題となっている。
これらの水系感染症の集団発生を防ぐためには水処理プロセスにおける原因微生物を高頻度にモニタリングすることが必要不可欠である。しかし、試料中から微生物を効率よく分離して濃縮する技術が確立されておらず、環境中にわずかにしか含まれていない病原微生物を濃縮するために高度な熟練と時間が必要とされている。
特に、新興の水系感染症の原因となっているクリプトスポリジウムやジアルジアなどの原虫の検査方法(例えば、厚生労働省から示された「クリプトスポリジウム暫定対策指針」1998年に指針の改正)では、クリプトスポリジウムの検査手順は大きく分けて、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察からなる。
試料採取ステップでは、容量10〜20Lのポリエチレン容器に河川水など水道原水は10L、浄水や水道水は40Lを採取する。次に、ろ過濃縮ステップでは、直径47mm又は90mm、ポアサイズ5μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスク膜を加圧又は吸引式の膜ホルダーに取付け、採取した試料を全量ろ過する。クリプトスポリジウムのオーシストは直径4〜5μm程度であるので、このステップにより試料中の微粒子とともに混入しているクリプトスポリジウムを分離することができる。剥離懸濁ステップでは、試料をろ過したディスク膜を50mLの遠心管に入れ0.02%ピロリン酸ナトリウム、0.03%EDTA−3Na、0.01%Tween80からなる誘出液(1%PET)を添加し、激しく撹拌する。これにより試料中の微粒子とともに膜に捕捉されたクリプトスポリジウムをディスク膜から剥離させる。次に遠心分離を行い、クリプトスポリジウムを含む微粒子と誘出液を分離し、誘出液を取り除き減容化する。続いて、分離精製ステップでは、上述の試料中の微粒子を含む懸濁液からクリプトスポリジウムを分離する。クリプトスポリジウムを特異的に認識する抗体が結合した免疫磁気ビーズを懸濁液に添加し、一定時間撹拌後、免疫磁気ビーズを磁石により容器に固定し、懸濁液を取り除く。免疫磁気ビーズにはクリプトスポリジウムが結合しており、pH変化により免疫磁気ビーズからクリプトスポリジウムを脱離させ、クリプトスポリジウムを回収する。免疫蛍光染色、顕微鏡観察ステップでは、回収したクリプトスポリジウムに蛍光標識した抗クリプトスポリジウム抗体を添加し、クリプトスポリジウムを標識し、蛍光顕微鏡で観察する。
しかしながら、上記のクリプトスポリジウム検査方法では、クリプトスポリジウムの存在は確認できるが、クリプトスポリジウムが生存しているかあるいは死滅しているか、ヒトに対して感染性を有しているかあるいは有していないかを判定することはできない。
そこで、より詳細な検査結果を得るため上記のクリプトスポリジウム検査のほかに生育活性試験や感染性試験が行われることがある。クリプトスポリジウムの生育活性試験には、クリプトスポリジウムのオーシスト(嚢)からスポロゾイト(生命体)の放出の有無から生死を判定する脱嚢試験、DAPI(4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)とPI(プロピジウムインドール)の2重染色から生死を判定する生体染色試験などがある。クリプトスポリジウムの感染性試験では、マウスなどの実験動物に対する感染性で評価する方法やヒト小腸由来の培養細胞に対する感染性で評価する方法などがある。
また、クリプトスポリジウムなどの病原性原虫類、腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌などの細菌、ウイルスの検査方法、特にクリプトスポリジウムの検査方法は、クリプトスポリジウムを捕捉し回収するとき、試料の濁質によりディスクフィルターが目詰まりをおこし、短時間でろ過速度が低下するため全試験工程にかかる時間が長くなり迅速な測定ができず、大量の試料を効率よく処理できないという問題もある。さらに、上述のろ過濃縮および剥離懸濁にけるクリプトスポリジウムの回収率は数十%、最大でも80%前後と低く、検出誤差も陰性と判断される可能性があり改善すべき問題点が多い。
さらに、蛍光顕微鏡観察では他の微生物との識別に高度な熟練を要するため、1時間に1回あるいは1日に1回程度の高頻度な測定が望まれている。測定の高頻度化、自動化、省力化においては検出対象微生物に選択的に蛍光標識し、試料をフローサイトメータに連続的に送液し、粒子の蛍光強度から検出対象微生物を検出する方法が用いられる。
検出対象微生物を蛍光標識する手段には、検出対象微生物に選択的に結合し、かつ蛍光物質が結合した抗体が用いられる。フローサイトメータは粒子の蛍光強度および粒子の粒径を示す前方散乱光強度、粒子の内部構造を示す側方散乱光強度を測定する分析装置である。蛍光標識した検出対象微生物を検出するときには、検出対象微生物が含まれる、検出対象微生物の蛍光強度および粒径を示す前方散乱光強度の領域をあらかじめ設定しておき、測定した粒子がこの領域に含まれるときには検出対象微生物としてカウントすることで測定できる。さらに、検出精度を高めるには前述の領域に加え、夾雑物特有の蛍光強度よりも小さいという判定基準を設定することが有効である。
しかしながら、環境水中にはウイルス、細菌、線虫などの微生物や藻類、フミン酸などの土壌有機物、砂などの無機物といった夾雑物が大量に存在するため、検出対象微生物に選択的に結合する標識抗体がこれらの夾雑物に非選択的に吸着する可能性がある。標識抗体が吸着した夾雑物が、検出対象微生物を同等の粒径を有する場合、この粒子を検出対象微生物として検出する可能性があり、これが測定精度低下の原因となる。また、標識抗体が上述の夾雑物に吸着することにより、検出対象微生物に結合する標識抗体が少なくなり、蛍光標識した検出対象微生物の蛍光強度が小さくなり、検出精度が低減する恐れもある。
したがって、環境水中から検出対象微生物を検出するときには、高回収率で環境水中に含まれる夾雑物をできるだけ排除する必要がある。
上記問題点に対して、例えば、特許文献1及び2が開示されている。特許文献1には、水源病原性微生物の計測方法が開示されている。特に、試料をろ過し、フィルターに捕捉された微生物及び夾雑物を超音波により剥離することが記載されている。また、特許文献1には、濃縮洗浄工程として、遠心分離を行い、上澄みを吸引除去することが記載されており、2回以上この操作を繰り返すことも記載されている。さらに、特許文献1では、生きたクリプトスポリジウム パルブムを用いたろ過法においてほぼ100%の捕捉が可能であることが記載されている。
また、特許文献2には、微生物測定装置が記載されており、特に、段落0082には、フィルターを逆洗浄することが記載されている。
また、特許文献2には、微生物測定装置が記載されており、特に、段落0082には、フィルターを逆洗浄することが記載されている。
本発明は、上述の問題点を鑑み、クリプトスポリジウムなど水系感染微生物を試料水中から短時間で高効率で検出対象微生物を分離し、検出対象微生物の検出において妨害となる環境水中由来の夾雑物の濃度を低減し、作業の自動化・省力化、検出の高精度化を図ることができる、微生物濃縮方法を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明は、微生物濃縮装置を用いた微生物濃縮方法を提供する。この微生物濃縮方法は、(a)微生物濃縮装置のろ過器に設置した膜を用いて検査対象水をろ過するステップと、(b)洗浄水を膜のろ過側からろ過面側に向かって逆流するステップと、(c)撹拌手段を用いて、洗浄水を撹拌するステップと、(d)膜を用いて洗浄水をろ過するステップと、(e)ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと、(f)膜表面の検出対象微生物を回収するステップとを含むものである。また、膜は、検出対象微生物の粒径よりも小さい孔径を有し、親水性かつ表面が平滑な平膜であることが好適である。または、膜は、傾斜角30〜60°に固定されることが好適である。原水は、河川や湖沼等から採水されたものであることが好適である。なお、本発明の微生物濃縮方法は、上記手順で行うことが好ましいが、上記手順に限定されるものではない。
本発明では、微生物濃縮装置として、多孔平膜を境に上空間、下空間を形成するフローセルと、上空間を電磁弁を介して検査対象水タンク内の検査対象水に連通させ、さらに上空間をポンプあるいはコンプレッサの吸引口、吐出口のいずれか一方を電磁弁の切り替えによって連通させ、さらに上空間を電磁弁を介して濃縮試料回収タンクに連通させてなり、下空間を電磁弁を介して廃液タンクに連通させ、さらに下空間を電磁弁を介して洗浄液タンク内の洗浄液に連通させ、ポンプあるいはコンプレッサの吸引口を、電磁弁を介して廃液タンクに連通し、多孔平膜上に物理的撹拌手段が置かれた構成を備えたものを用いることが好適である。
ここで、このような微生物濃縮装置を用いた微生物濃縮方法では、多孔平膜の上空間を検査対象水タンク内の検査対象水に連通させ、多孔平膜の下空間を廃液タンクに連通させ、当該廃液タンク内をポンプあるいはコンプレッサで吸引にすることによって、検査対象水の吸引ろ過を行うステップAと、多孔平膜の上空間をポンプあるいはコンプレッサの吸引側に連通させ、多孔平膜の下空間を洗浄液タンク内の洗浄液に連通させ、ポンプあるいはコンプレッサを運転して洗浄液を吸い上げて多孔平膜を洗浄液で逆洗するステップBと、物理的撹拌手段を動作させるステップCと、多孔平膜の上空間をポンプあるいはコンプレッサの吐出側に連通させ、多孔平膜の下空間を廃液タンク内に連通させ、ポンプあるいはコンプレッサを運転して多孔平膜の上空間を加圧することによって洗浄液を廃液タンクに排出するステップDと、ステップB〜Dを繰り返すステップEと、多孔平膜の上空間を濃縮試料回収タンクとポンプあるいはコンプレッサの吐出側に連通させ、ポンプあるいはコンプレッサを運転して多孔平膜の上空間を加圧することによって、多孔平膜の上空間に残った液を濃縮試料回収タンクに回収するステップFとを含むことが好適である。ここで、微生物濃縮方法は、上記ステップB〜Dを2回以上実行することが好適である。
ステップA〜Fは、それぞれステップ(a)〜(f)に相当する。また、このステップA〜Fは、後述の図3に示すステップ301、305、307、308、310に相当する。但し、ステップFだけは、図示が省略されている。
多孔平膜が、樹脂の粒子を溶結着してなる板状フィルターにて支持されることが好適である。また、多孔平膜が、検出対象微生物の粒径よりも小さい孔径を有し、親水性かつ表面が平滑な平膜であることが好適である。
本発明の微生物濃縮方法により、クリプトスポリジウムなど水系感染微生物を試料水中から短時間で高効率で検出対象微生物を分離し、検出対象微生物の検出において妨害となる環境水中由来の夾雑物の濃度を低減し、作業の自動化・省力化、検出の高精度化を図ることができる。
以下、本発明に係る微生物計測方法及び装置の実施の形態について説明する。
図1に、本発明に係る微生物計測方法を実施する微生物濃縮装置に用いるろ過器100についてその一実施の形態を示す。なお、本発明に係る微生物濃縮方法では、様々な微生物を濃縮することができる。本実施の形態では、その一例として、クリプトスポリジウムを計測する。
図1に、本発明に係る微生物計測方法を実施する微生物濃縮装置に用いるろ過器100についてその一実施の形態を示す。なお、本発明に係る微生物濃縮方法では、様々な微生物を濃縮することができる。本実施の形態では、その一例として、クリプトスポリジウムを計測する。
図1に示すように、本実施の形態に係るろ過器100は、その本来の機能を果たすトラックエッチ膜101(以下、膜101)を備えている。膜101は、メッシュクロス102を支持体とし、膜固定パッキン103で固定されている。この全体をフローセル上部104とフォローセル下部105とで挟み込んでいる。これによって、膜101を介して試料水とろ液が分離できる構造となる。膜は、試料中のクリプトスポリジウムを捕捉するための親水性でかつ表面が平滑な平膜として孔径2あるいは3μmのトラックエッチフィルター(ワットマン社、商品名ニュークレポアフィルターあるいはミリポア社、アイソポアメンブレンフィルター)を用いた。クリプトスポリジウムオーシストの粒径は4〜6μmであり、またトラックエッチフィルターの孔径はプラス0%、マイナス10%の精度を有するため、ほぼ100%でクリプトスポリジウムを平膜上に捕捉することができる。
ろ過器100内の圧力変化により、膜101が変形して伸びることがある。これによって、膜101の孔径が広がることがある。したがって、本実施の形態では、試料水の供給圧による膜101の変形を防ぐため、ろ液が流下でき、膜101の形状を保持できる支持体の上に膜101を固定した。支持体としてはメッシュクロス102を用いることができる。例えば、ポリプロピレン製の目開き30メッシュクロス(NBC社)を用いることができる。
フローセル上部104には、試料水供給口111と、試料回収口112、試料水から分離された微生物を含む懸濁液を空気圧により回収するための加圧/吸気口113とが設けられている。フローセル下部105には、ろ液排出口114と、洗浄水供給口115とが設けられている。試料水から分離された微生物を回収するため、試料回収口112は、下側に傾けた構造であることが望ましい。これにより、クリプトスポリジウムを含む液を試料回収口112に流下させ、効率よく回収することができる。
さらに、本実施の形態では、磁石入りの撹拌子106が、膜101上に設けられる構造とする。撹拌子106は、フローセルの下部105に設置されたマグネティックススターラーによって回転する。マグネティックススターラーは、フローセル上部104に設置されてもよい(図示せず)。
次に、図2及び図3を用いて、本発明に係る微生物計測方法の実施形態について説明する。図2は、本発明に係る微生物計測方法を実施する装置の実施の形態を示す。図3は、本発明に係る微生物計測方法を実施する装置の実施の形態についてその流れを示す。
本実施の形態の装置は、上記図1について説明したろ過器100と、試料タンク211と、洗浄液タンク212と、廃液タンク213、試料回収タンク214と、ポンプ208、負圧圧力計221と、正圧圧力計222と、バルブ(231〜238)とを備える。ろ過器100は、ラインL21によって試料タンク211、洗浄液タンク212と、ラインL22によって洗浄液タンク212と、ラインL23によって廃液タンク213と、ラインL24によって試料回収タンク214とそれぞれ接続されている。
図3に従って、本発明に係る微生物濃縮方法の一実施の形態を説明する。
まず、バルブ231、234を開き試料供給流路を形成し、バルブ221を開きエアポンプ208を作動する(ステップ301)。廃液タンク213内は減圧され、ろ過器100内も減圧されるため試料水はろ過器100内に吸引される。ろ液は膜101を透過し、ろ液排出口114から廃液タンク213内に排出される。ここで、廃液タンク213は耐圧性のものを使用することが望ましい。このとき、エアポンプ208による吸引圧力は負圧圧力計PS1で測定される。膜の破断圧力は、69kPaである。したがって、安全をみて、吸引圧力が45〜50kPaになるようにエアポンプの運転を制御する。これにより試料水は一定圧力でろ過される。また、例えば、試料中の鋭利な粒子が膜を傷つけて膜が破断した場合、45〜50kPaに制御されていた吸引圧力が正圧側に急激に変化するため、この圧力変動をモニタすることで試料調整の運転中止を判断することができる。
まず、バルブ231、234を開き試料供給流路を形成し、バルブ221を開きエアポンプ208を作動する(ステップ301)。廃液タンク213内は減圧され、ろ過器100内も減圧されるため試料水はろ過器100内に吸引される。ろ液は膜101を透過し、ろ液排出口114から廃液タンク213内に排出される。ここで、廃液タンク213は耐圧性のものを使用することが望ましい。このとき、エアポンプ208による吸引圧力は負圧圧力計PS1で測定される。膜の破断圧力は、69kPaである。したがって、安全をみて、吸引圧力が45〜50kPaになるようにエアポンプの運転を制御する。これにより試料水は一定圧力でろ過される。また、例えば、試料中の鋭利な粒子が膜を傷つけて膜が破断した場合、45〜50kPaに制御されていた吸引圧力が正圧側に急激に変化するため、この圧力変動をモニタすることで試料調整の運転中止を判断することができる。
試料水のろ過が終了したら、エアポンプ208を停止し、バルブ221、231、234を閉じ、バルブ235を開き、配管内を大気開放として残圧を除く(ステップ302)。大気に開放した後、バルブを初期の状態に戻す。
次に、pHが中性付近の洗浄液をろ過器100内に通水し、ろ過器100及び膜101上に捕捉された夾雑物を洗い流す。バルブ232、234を開き洗浄水供給流路を形成し、バルブ221を開きエアポンプ208を作動させる(ステップ303)。廃液タンク213内は減圧され、ろ過器内も減圧されるため洗浄水タンク212の洗浄水はろ過器100内に吸収される。洗浄水は膜101を透過し、ろ液排出口114から廃液タンク213内に排出される。同様に、エアポンプ208による吸引圧力は負圧圧力計PS1で測定される。膜の破断圧力は69kPaであるので安全をみて、吸引圧力が45〜50kPaになるようにエアポンプ208の運転を制御する。
一定の洗浄時間が経過した後、エアポンプ208を停止し、バルブ221、232、234を閉じ、バルブ235を開き、配管内を大気開放とし残圧を除く(ステップ304)。大気に開放した後、バルブを初期の状態に戻す。一定の洗浄時間は、廃液のpHが中性付近になるまでの時間を予め測定することによって決定される。
洗浄液には、例えば、誘出液100パーセントPETを希釈した1%PET溶液を用いる。この誘出液は「クリプトスポリジウム、解説と試験方法」(日本水道協会)に記載されている誘出液であり、クリプトスポリジウムの試験方法で用いられている。これは粒子の分散剤として用いられている。洗浄液は1%PETに限らず、pHは中性付近の緩衝液も使用することができ、界面活性剤を含んでいるものが好ましい。
次に、バルブ233、236、237を開き洗浄水逆流流路を形成し、バルブ221を開きエアポンプ208を作動させる(ステップ305)。これにより、膜101上に捕捉されていた検出対象微生物及び夾雑物を、洗浄液中に分散させる。その後、エアポンプ208を停止し、バルブ221、233、236、237を閉じ、バルブ238を開き、配管内を大気開放とし残圧を除く(ステップ306)。大気に開放した後、バルブを初期の状態に戻す。
洗浄液を一定量注入後、撹拌子を用いて洗浄液を撹拌する(ステップ307)。これによって、以前として膜表面上に捕捉された検出対象微生物及び夾雑物を膜表面から剥離させると伴に、洗浄液を撹拌させることによって洗浄液中における、検出対象微生物と夾雑物とからなるコンプレックスを分解することができる。これによって、本発明の微生物濃縮方法は、検出対象微生物の検出において妨害となる夾雑物の濃度を低減することができる。
次に、バルブ234、238を開き再ろ過流路を形成し、バルブ222を開きエアポンプ208を作動する(ステップ307)。これにより、ろ過器の加圧/吸気口からエアが供給され、ろ過器100は加圧され、ろ過器内に溜まったクリプトスポリジウムを含む溶液は、廃液タンク213に圧送される。ろ液は膜101を透過し、ろ液排出口114から廃液タンク213内に排出される。
さらに、膜101上の夾雑物を減少させるため、ステップ305〜309を繰り返す。よって、本発明に係る微生物濃縮方法によれば、夾雑物を極力排除することができる。
続いて、バルブ236、238を開き試料回収流路を形成し、バルブ222を開きエアポンプ208を作動させる(ステップ310)。これにより、ろ過器の加圧/吸気口からエアが供給され、ろ過器100は加圧され、ろ過器内に溜まったクリプトスポリジウムを含む溶液は、試料回収タンク214に圧送される。このとき試料回収口のチューブは膜101上の直上まで接近し、ろ過器100も試料回収口側に傾いており、溶液が試料回収口に溜まっていることが望ましい。
クリプトスポリジウムを含む溶液を回収したら、エアポンプ208を停止し、バルブ222、236、238を閉じ、バルブ235を開き、配管内を大気開放とし残圧を除く(311)。大気開放した後、バルブを初期の状態に戻す。
回収したクリプトスポリジウムを含む試料に、蛍光物質により標識され、クリプトスポリジウムと特異的に結合する標識抗体を添加する。蛍光標識されたクリプトスポリジウムを蛍光顕微鏡やフローサイトメータで検出する。
本発明者らは、本発明に係る微生物濃縮方法の上記効果を検証するため、ろ過性能の比較を行った。試料は多摩川河川原水を用いた。ろ過器は、図1と同様のものを用い、かつ装置の全体構成を図2と同様とした。トラックエッチフィルターは直径142mmのもとを用い、フィルターをポリプロピレンメッシュクロス及びフローセルに固定することによって、有効ろ過面積は直径124mmの121cm2とした。
図3について説明した工程と同様のステップを実行した。図4には、305〜309の実行回数と、回収した試料の個数濃度との関係を示すグラフを示す。本出願者らは、本発明に係る微生物濃縮方法を用い、ステップ305〜309の実行回数を繰り返すことによって、試料中の夾雑物を減少させることができた。
図3について説明した工程と同様のステップを実行した。図4には、305〜309の実行回数と、回収した試料の個数濃度との関係を示すグラフを示す。本出願者らは、本発明に係る微生物濃縮方法を用い、ステップ305〜309の実行回数を繰り返すことによって、試料中の夾雑物を減少させることができた。
100 ろ過器
101 膜
102 メッシュクロス
103 膜固定パッキン
104 フローセル上部
105 フローセル下部
106 磁石入り撹拌子
208 エアポンプ
211 試料タンク
212 洗浄水タンク
213 廃液タンク
214 試料回収タンク
231〜239 バルブ
101 膜
102 メッシュクロス
103 膜固定パッキン
104 フローセル上部
105 フローセル下部
106 磁石入り撹拌子
208 エアポンプ
211 試料タンク
212 洗浄水タンク
213 廃液タンク
214 試料回収タンク
231〜239 バルブ
Claims (3)
- 微生物濃縮装置を用いた微生物濃縮方法であって、
(a)前記微生物濃縮装置のろ過器に設置した膜を用いて検査対象水をろ過するステップと、
(b)洗浄水を前記膜のろ過側からろ過面側に向かって逆流するステップと、
(c)撹拌手段を用いて、前記洗浄水を撹拌するステップと、
(d)前記膜を用いて前記洗浄水をろ過するステップと、
(e)前記ステップ(b)〜(d)を繰り返すステップと、
(f)前記膜表面の検出対象微生物を回収するステップと
を含む、方法。 - 前記膜が、前記検出対象微生物の粒径よりも小さい孔径を有することを特徴とする請求項1に記載の微生物濃縮方法。
- 前記膜が、親水性かつ表面が平滑な平膜であることを特徴とする請求項1に記載の微生物濃縮方法。
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