JP2009213393A - 亜硫酸無添加ワインにおけるオフフレーバーの制御 - Google Patents

亜硫酸無添加ワインにおけるオフフレーバーの制御 Download PDF

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Abstract

【課題】オフフレーバーが抑制された亜硫酸無添加ワインを提供すること。
【解決手段】亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を以下の通りとする:A+B+<6.0ppm(w/v)。
【選択図】 なし

Description

本発明は、亜硫酸無添加ワインにおいてオフフレーバーを抑制する方法、及びオフフレーバーを抑制した亜硫酸無添加ワインに関する。
消費者における自然志向、健康志向の高まりから、農産物に由来する残留農薬も含めて、保存料や着色料など、食品に含まれる食品添加物に対する注目が、近年ますます高まってきている。様々な食品では、これらの添加物を減量ないしは廃止する試みも行われているが、製造後消費者の手もとに届くまで一定期間流通経路に滞留することを避け得ない食品においては、種々の効能を有する食品添加物の力を借りずに消費者の要求品質水準を満足することは容易ではない。しかしながら、農産物生産者やメーカーは、食品に対するこの厳しい二律背反する要求を満たすため、従来より更に高度な品質維持・管理技術に精力的に取り組んでいるのである。
さて、ワインに添加される代表的な食品添加物に亜硫酸がある。
亜硫酸は、二酸化イオウあるいは無水亜硫酸または亜硫酸ガスともいう。その水溶液は酸性を示し、他の物質から酸素を奪う還元力を有する。そのため、亜硫酸は微生物増殖抑制剤、食品の酸化防止剤などとして使用されている。
ワインの原料となるぶどうには、果皮に多くの野生酵母や各種腐敗菌が付着しており、そのままぶどう果実を破砕して果汁を得ると、これらの微生物は果汁中に移行してくる。果汁は、多くの糖質や窒素源を含み、これらの微生物の増殖にきわめて好適であるため、ワインの製造過程で増殖し、ワインの香味に悪影響を与え、最悪の場合にはワインを腐敗させるにいたる。したがって、このような微生物による変敗を防止するために、ぶどう果実が破砕されるとすぐに亜硫酸が添加される場合が多い。
また、製造したワインは、常に酸化による品質劣化の危険にさらされている。特に、発酵終了後のワインは、周囲に存在する空気中の酸素が溶解することで容易に酸化されやすい。ワイン中には、ワイン独特の品質を表現する各種香気成分が存在しているが、酸化によって芳香を失い、かえってワインにおいて好ましくない香気(オフフレーバー)と認識されるように変化する香気成分が存在する。そのため、ワインの酸化防止のために、発酵終了後にも亜硫酸が添加される。(本明細書において、「オフフレーバー」とは、ワイン中の特定の香気成分が、一定濃度を超えて存在する場合に感じられる、ワイン全体の品質にとって好ましくない香気あるいは香味を指す。)
さらに上記の効果の他に、亜硫酸は、果皮からの赤色色素の溶出を助け、果汁の清澄化にも効果を有する。
以上のように、亜硫酸は、ワインの製造に必要不可欠な食品添加物であり、その製造工程全体にわたって一定濃度維持されるよう随時添加されるものである。
このように、ワイン製造にとって必要欠くべからざる効果を有する亜硫酸であるが、前記のような社会情勢を鑑みて、亜硫酸の添加を廃止した、いわゆる亜硫酸無添加ワインの製造が試みられるようになってきた。しかし、亜硫酸の絶大なる効用に依存せずに高品質のワインを製造することは、技術的にきわめて困難である。実際、現在市場で販売されている亜硫酸無添加ワインは、フルーティさ・フレッシュ感に欠け、特に香気成分の酸化によって生じるオフフレーバーの課題が解決されておらず、品質的に満足のいくものではない。これは、亜硫酸無添加ワイン製造の試みが近年に始まったばかりで、製造に関わる管理指標・製造方法の研究が端緒についたばかりであるためであると考えられる。
また、亜硫酸無添加ワイン製造に関して、特許文献1には、プロアントシアニジンを500ppm以上含有させることで、品質の良い亜硫酸無添加ワインを得る技術が開示されている。しかし、所定濃度のプロアントシアニジンを果醪に含有せしめるために、果醪が固形物を高濃度含有するよう、果汁を抜き取るか、または新鮮なぶどう搾汁粕を混和すること、例えば発酵中の果醪に任意の時点においてぶどう種子またはその処理物を添加することなどの、製造時に別途用意した固形分を混和する工程を必要としており、これら工程は、通常のワイン製造方法から見れば煩雑な操作を伴う。また、亜硫酸無添加の状態での外部から果醪への固形分の投入は、汚染菌が混入してワイン中で増殖することによるオフフレーバーの増大の危険性を潜在的に含んでおり、依然として亜硫酸無添加ワインの品質向上の課題を解決する手段としては、満足できるものではない。
(以下、単に「従来のワイン」あるいは「通常のワイン」と表記する場合は亜硫酸を添加したワインを指すものとする。)
特許第3401127号公報
亜硫酸無添加ワインに関する研究は、現在未解決の課題を有している。特にワインにおいて好ましくない香気、すなわちオフフレーバーが強く感じられることが問題である。
一方、従来のワインの香気成分及びオフフレーバーに関する研究は長い歴史を持ち、現在に至るまで多くの知見が蓄積されている。たとえば、「醸造物の成分」、平成11年12月10日、財団法人日本醸造協会編集・発行、第318〜342頁には、ワインの種々の香気成分の、物性、前駆体と生成メカニズム、閾値、香味特徴等が詳述されている。
これによれば、ワイン中の香気成分の含有量を用いてワインのオフフレーバーを管理する指標を設定し、オフフレーバーの発生のメカニズムを考慮した上でその発生を未然に防ぐ製造工程を確立することが可能である。
しかしながら、亜硫酸無添加ワインの各製造工程におけるオフフレーバーの挙動は明らかになっていない上に、官能評価により知覚されるオフフレーバーは、種々の香気成分の組み合わせに依存するため、その挙動は極めて複雑であり、香気成分の含有量とオフフレーバーとの関係は従来の知見から容易に推定しうるものではない。
例えば、ワインの代表的な香気成分として、アセトアルデヒドが挙げられるが、従来のワインにおいては、アセトアルデヒドは亜硫酸イオンと結合してアルファ−ヒドロキシスルホン酸塩を形成するので、ワイン中での含有量がある程度多くなっても、ワイン全体としてはオフフレーバーとして認識されないことが知られている。しかしながら、亜硫酸含有量が少ない亜硫酸無添加ワインでは、このような効果は期待できない。
したがって、従来の亜硫酸を添加したワインとは異なる、亜硫酸無添加ワインに特有の品質指標−特に、香気成分の含有量を用いた、オフフレーバーを管理するための指標−およびそれに基づく製造方法の確立が急務である。
よって、本発明は、亜硫酸無添加ワインにおいて、特定の香気成分の含有量により規定される、オフフレーバーのための管理指標を提供し、オフフレーバーが抑制された亜硫酸無添加ワインの製造を可能とする管理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、ワインにおいてオフフレーバーの原因となりうる種々の香気成分について、その閾値と香味に与える影響について鋭意検討した結果、驚くべき事にワインにおける香気成分の中でも、ダイアセチル及びアセトインの含有量が一定の値未満となると、亜硫酸無添加ワイン全体の品質が良好となることを見いだした。即ち、亜硫酸無添加ワイン中のダイアセチル及びアセトインの総含有量が6ppm(w/v)未満である場合には、該ワインにダイアセチル及びアセトインに由来するムレ臭・腐敗臭などのオフフレーバーが感じられないのみならず、他の香気成分に由来するオフフレーバーも殆ど認められない、フレッシュ感とフルーティな果実香が楽しめる優れた品質の亜硫酸無添加ワインが得られることを見出し、本発明を完成させた。本発明の効果のメカニズムの詳細は不明であるが、亜硫酸無添加ワインにおいては、ダイアセチルとアセトインの閾値が、他のオフフレーバーの原因となる香気成分の閾値より低かったためか、あるいはダイアセチルとアセトインの生成を低減する製造上の改善点が、他のオフフレーバーの原因となる香気成分の発生を抑制したためであろうと推測される。
従って、本発明は、以下のものに関する。
1.香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量が、式:A+B<6.0ppm(w/v)で表される要件を満たし、かつ総亜硫酸量が50ppm(w/v)未満である、亜硫酸無添加ワイン。
2.香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量が、式:A+B<3.5ppm(w/v)で表される要件を満たす、1に記載の亜硫酸無添加ワイン。
3.香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量が、式:A+B<3.2ppm(w/v)で表される要件を満たす、1に記載の亜硫酸無添加ワイン。
4.亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を、式:A+B<6.0ppm(w/v)により表される要件を満たすよう、発酵終了後から瓶詰めまでの工程での該ワインの溶存酸素濃度を500ppb(v/v)以下に抑制することを特徴とする、亜硫酸無添加ワイン製造における管理方法。
5.亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を、式:A+B<6.0ppm(w/v)により表される要件を満たすよう、発酵終了後から瓶詰めまでの工程での該ワインの溶存酸素濃度を500ppb(v/v)以下に管理することを特徴とする、亜硫酸無添加ワイン製造における管理方法。
6.亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を、式:A+B<3.5ppm(w/v)により表される要件を満たすように製造管理する、4又は5に記載の方法。
7.亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:アセトアルデヒド、B:ダイアセチル、C:アセトインの合計含有量を6.0ppm(w/v)に抑制することにより、亜硫酸無添加ワインにおけるオフフレーバーを抑制する方法。
本発明は、オフフレーバーが抑制された、優れた香味を有する亜硫酸無添加ワインの製造を可能とする。
発明を実施するための形態
本発明は、亜硫酸無添加ワインにおいて、香気成分である、ダイアセチル、アセトインの総含有量を一定量未満とすることを特徴とする。
亜硫酸無添加ワイン
本発明において製造されるワインは、ぶどう果実の圧搾・搾汁から瓶詰めにいたるまで、原料果汁及びワインに亜硫酸を添加せずに製造される。しかしながら、亜硫酸は発酵中に酵母によって10〜30ppm、場合によっては100ppm以上が生成され、一方、通常のワイン中には50〜200ppmの亜硫酸が含まれていることが知られている(「醸造物の成分」、平成11年12月10日、財団法人日本醸造協会編集・発行、第VII章 「含流化合物」(第323頁))。従って、本明細書における「亜硫酸無添加ワイン」は、総亜硫酸含量が50mg/L(ppm)未満のワインを意味するものと定義する。
亜硫酸は、ワイン中で、重亜硫酸イオン(HSO )、亜硫酸イオン(SO 2−)及び亜硫酸(HSO)を包含する遊離型として、又はアセトアルデヒドなどのカルボニル化合物と結合した結合型として存在することが知られている。本明細書においては、これら遊離型及び結合型の亜硫酸の合計値を総亜硫酸量と定義し、その量をppm(w/v)で表す(この単位は、mg/Lに相当する)。総亜硫酸量の測定方法としては、ランキン法(aeration−oxidation法)、ヨード滴定法のリッパー法、及び酵素法が知られているが、本明細書では、ランキン法によって分析するものとする。
香気成分とオフフレーバー
ワインの香気成分に関する研究の歴史は長く、実に多くの香気成分とワインに与える影響について研究がなされているが、その中でも、本発明においてオフフレーバーの管理のための指標となる香気成分は、ダイアセチル及びアセトインである。ダイアセチルはバタースコッチ、ホエーのような香りがあり、アセトインはバターのような香りを有する。これらの物質は、閾値を超えると腐敗臭と感じられることがある。
本発明においては、これら成分の含有量は、HPLC法によって測定される。具体的には、試料中のダイアセチル及びアセトインを、2、4−ジニトロフェニルヒドラジンにより誘導体化し、得られた誘導体をHPLCによって検出・定量するものである。カラムは、TSKgel ODS−80TM(4.6mmID×250mm)を用い、カラム温度を50℃に保持して、移動相としてアセトニトリル:水=50:50(v/v)を流量1.0ml/minで流し、測定波長365nmにて検出した。
後述する実施例において示されているように、亜硫酸無添加ワインにおいてオフフレーバーを抑制するためには、ワインの製造管理をして、上記2成分の該ワインにおける総含有量を、6.0ppm(w/v)未満、より好ましくは3.5ppm(w/v)未満とする必要がある。製造管理されるべき製造工程は、特に、アルコール発酵後の工程、例えば、オリ引き工程、貯酒工程、最終製品の容器詰工程、及びそれらに伴う液体の移動等である。この点に関しては、ワインの品質管理に関して後述する。
ワインの製造
本発明のワインは、通常のワイン製造方法を利用する以下の方法により製造される。
果醪としては、収穫したぶどうから常法に従って破砕及び/又は搾汁を行って得られる果汁を用いることができる。この果汁は、アルコール発酵前に濃縮して濃縮果汁としてもよい。濃縮果汁の製造方法としては、加熱減圧濃縮法、冷凍濃縮法及び膜濃縮法のような公知の一般的な方法を用いることができる。例えば、加熱減圧濃縮法によれば、糖度が80度の高濃度になるまで濃縮することができ、冷凍濃縮法または膜濃縮法によれば、果汁の品質(風味)の低下を防ぐことができるが、濃縮度を十分に高めることが困難であり、通常、2〜3倍程度の濃縮が限度である(「最新果汁・果実飲料事典」1997年10月1日初版第1刷、社団法人日本果汁協会監修、朝倉書店株式会社発行)。濃縮果汁は、商業的に入手可能なものを購入して使用してもよい。
次に、果醪に酵母を加えて常法によりアルコール発酵を行う。酵母は、目的とする香味や発酵条件などを考慮して自由に選択できる。サッカロミセス セレヴィシエのような、ワイン製造に用いられ得るいずれのものを用いてもよい。酵母を果醪に添加(通常は酒母液の形態で添加される)した後、アルコール発酵させる。アルコール発酵は、通常15〜20℃で7〜21日間程度行なわれる。
アルコール発酵を終了した後、発酵液を常法によるオリ引き、例えば珪藻土、セルロースパウダー等を用いるろ過や、遠心分離等を行って、酵母菌体を含む固形分を除いた後、貯酒用の容器に移す。
貯酒工程においては、発酵液を一定期間、一定温度で保存する。貯酒期間・貯酒温度は目的に応じて異なっている。例えば、品質安定化のためであれば、ほとんど時間をおかずに瓶詰めされるものもあれば、数ヶ月間にわたって貯酒するものもある。また、酒石安定化のためであれば、−2〜−5℃にて貯酒した後、ろ過等の手段により、生成した酒石を除去する。混濁安定化のためであれば、加熱・冷却工程並びにベントナイト処理、珪藻土ろ過など行なった後、最終清澄ろ過実施する。このような工程を経て得られたワインは、瓶やペットボトルなどの容器に詰めて消費者に提供される。
ワインの品質管理方法
オフフレーバーの原因となる香気成分は、主に微生物増殖や酸化によって生成あるいは増大する。従って、オフフレーバー制御のための、香気成分含有量に関する本発明の要件を満たすためには、製造工程において、原料果汁、発酵液又はワインについての微生物管理、それらの溶存酸素の除去、及び製造工程における酸素の除去を徹底的に行なうことが重要である。また、通常のワイン製造では亜硫酸の殺菌効果・酸化防止効果に依存しているため、厳しい酸化・微生物管理が行われていないのが実情である。したがって本発明品の優れた品質を有する亜硫酸無添加ワインを製造するには、これらの2点の管理の徹底が極めて重要である。
まず、微生物汚染が発生しないよう配管・容器を徹底的に洗浄・殺菌する必要がある。ワインのアルコール度数、残糖などの炭素源量及びアミノ酸などの窒素源量などから、殺菌すべき対象微生物は野生酵母と乳酸菌である。野生酵母とは、ワイン発酵のために添加された酵母ではなく、もともとの果実に付着していたり装置に常在している発酵に関与しない酵母のことである。また、アルコール度数がゼロまたは低い発酵前/初期には、これに好酸性バクテリアも含まれる。これらの好ましからざる微生物を殺滅するために、次亜塩素酸などの薬剤を散布する。あるいは、熱水を所定時間通液あるいは浸水して殺菌実施する。選択する薬剤の種類及び散布量、また熱水の温度・通液/浸水時間は、対象となる微生物の耐熱性に依存するので、事前に果汁や装置中に存在する対象微生物の種類と量を把握し、適切な選択をする必要がある。
次に、ワインの酸化を防ぐため、原料果汁、発酵液又はワインから溶存酸素を排除し、配管やタンクなどの容器中の空気を窒素などの不活性ガスで置換することが重要である。
まず、配管・容器など装置中の空気を事前に窒素や炭酸ガスのような不活性ガスによって置換する必要がある。例えば、ワインの移動時には、配管及び移動先の空タンクに窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込んで事前に酸素を追い出し、ワイン移動後には、ワイン中に窒素ガスを所定の時間、例えば1〜2分間吹き込んで、ワイン中に溶け込んでいる溶存酸素を追い出す。さらに、炭酸ガスを使用して液面空気を置換することも有効である。また、貯酒時には、ワインを炭酸ガスによる加圧状態で保管して、ヘッドスペースの空気中の酸素がワインへ溶解することを防ぐことができる。
これらの操作を組み合わせて徹底的に行なうことにより、製造工程を通じて、発酵液又はワインの溶存酸素量を500ppb(v/v)以下に抑制し、また、タンク内におけるワイン液面直上のヘッドスペースの酸素濃度を1%(v/v)以下に抑制することが好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
実施例1 亜硫酸無添加の赤ワイン及び白ワインの製造
亜硫酸無添加の冷凍濃縮ぶどう果汁を解凍し、ワイン製造用の果汁とした。(以下この亜硫酸無添加濃縮ぶどう果汁を、単に「濃縮ぶどう果汁」と記載する。)
(酒母)
まず、酒母用果汁を2kL調製した。清潔な蓋付きステンレスタンクに、濃縮ぶどう果汁を採取し、糖度約5%になるよう汲水を添加して容量比で4倍に希釈した後、液温が34±1℃になるよう温度調節し、酒母用果汁とした。
復元された乾燥酵母を含む乾燥酵母復元液を、ただちに酒母用果汁へ添加した。
この後、45NL/minの通気量で空気での通気を開始した。復元酵母添加の5時間後に通気を停止し、復元酵母添加の20時間後に同じ通気量で通気を再開し、復元酵母添加の21時間後に通気量を90NL/minに上昇させた。この時の酒母の培養温度は23〜26℃、総培養時間は約24〜30時間であった。最終目標酵母数が2.0〜2.5×10cells/ml以上(死菌率10%未満)となってから酒母発酵を終了した。
(本発酵)
次に、50kLスケールの本発酵を行なった。
目標糖度約22%になるよう濃縮ぶどう果汁を汲水にて希釈し、50kLの本発酵用果汁とする。これに、酒母を、上記で製造した酒母添加前の本発酵用果汁の容量に対して4〜7%になるよう添加し、本発酵を開始した。醗酵温度が17〜21℃となるよう温度管理を行い、糖分が0.40 g/100ml以下の量まで減少した時点で発酵終了とした。発酵は順調に進み、亜硫酸無添加ワインを得ることができた。
(遠心分離)
上記により製造されたワインを遠心分離してオリ・酵母を除去した。
(貯酒)
次に、得られた液を貯酒タンクに移動させて、0〜5℃で貯酒を実施した。遠心分離により得られた液を貯酒タンクに移動させる前には、貯酒タンク及び輸送用の配管に窒素ガスを吹き込んで事前に酸素を追い出した。ワイン移動後には、ワイン中に窒素ガスを1〜2分間吹き込んで、ワイン中に溶け込んでいる溶存酸素を追い出した。さらに、炭酸ガスを使用して液面空気を置換し、液面直上の酸素濃度を1%(v/v)以下とした。また、貯酒時には、ワインを炭酸ガスによる加圧状態で保管した。タンクヘッドスペースの酸素濃度は1%(v/v)以下に維持され、貯酒の溶存酸素濃度は500ppb(v/v)以下に維持された。
以上により、本発明の亜硫酸無添加の赤ワイン及び白ワインが製造された。
実施例2 亜硫酸無添加ワインのオフフレーバー成分分析結果と官能評価
実施例1により得られた亜硫酸無添加ワイン2点(赤ワインと白ワイン各1点ずつ)と、比較例として、現在市販されている通常の亜硫酸添加ワイン2点(赤ワインと白ワイン各1点ずつ)及び亜硫酸無添加ワイン5点(赤ワイン3点と白ワイン2点)について、前記のダイアセチル及びアセトイン分析方法を用いて分析し、前記2成分のワイン中の総含有量を比較した。その結果を表1に示す。また、これらのワイン9点について、ワイン専門パネラー10名で官能評価試験を実施した。評価は、5点満点とし、平均的ワイン(亜硫酸添加)品質と比較して2点以下を不合格とした。パネラーの平均点が4点以上のものを◎、2点以下のものを×、3、4点を○として表現した。以上の官能評価結果も、表1中に併記した。本発明の亜硫酸無添加ワインにおける当該2成分の総含有量は6.0ppmを下回ってたが、その他の比較例1〜7のワインの含有量は6.0ppmを上回っていた。また、本発明の亜硫酸無添加ワイン2点と比較例1及び2の亜硫酸添加ワインは、官能評価の結果が良好であったが、比較例3〜7の、市販の亜硫酸無添加ワインはいずれも官能評価結果が低く、パネラー全員が不合格と判断した。パネラーのフリーコメントとして、本発明品には、フレッシュ感、フルーティな果実香などの良好な香味が感じられ、従来の亜硫酸添加ワインと比較して遜色の無い品質であったが、比較例3〜7については、品質劣化臭としてムレ臭、イモ臭、ワキガ臭が感じられるとのコメントが寄せられた。以上の結果から、ワイン中のダイアセチル及びアセトイン総含有量が6.0ppmを下回る場合、オフフレーバーが知覚されず、かつ従来の亜硫酸添加ワインと比較して遜色のない、優れた品質の亜硫酸無添加ワインが得られることを見出した。赤ワインと白ワインを比較すると、白ワインのほうが軽快な酒質を有するためか、ダイアセチル及びアセトインの含有量に対する許容量は、赤ワインより狭い傾向が認められた。
Figure 2009213393

Claims (4)

  1. 香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量が、式:A+B<6.0ppm(w/v)で表される要件を満たし、かつ総亜硫酸量が50ppm(w/v)未満である、亜硫酸無添加ワイン。
  2. 香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量が、式:A+B<3.5ppm(w/v)で表される要件を満たす、請求項1に記載の亜硫酸無添加ワイン。
  3. 亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を、式:A+B<6.0ppm(w/v)により表される要件を満たすよう、発酵終了後から瓶詰めまでの工程での該ワインの溶存酸素濃度を500ppb(v/v)以下に抑制することを特徴とする、亜硫酸無添加ワイン製造における管理方法。
  4. 亜硫酸無添加ワインにおける香気成分A:ダイアセチル、B:アセトインの含有量を、式:A+B<3.5ppm(w/v)により表される要件を満たすように製造管理する、請求項3に記載の方法。
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