JP2009209946A - 緩み止めナット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ナット本体11と、このナット本体11の座面15と反対側の開放端面16に設けられた弾性部材21とを備える。弾性部材21は、ナット本体11とボルトとの螺合によって弾性変形する可動部22と、この可動部22の基端側に設けられた固定部23とを備える。可動部22は、ナット本体11のネジ孔の略周方向に沿って1周未満の周方向長さに渡って配位され、且つ、基端から先端に向かってネジの巻き方向nに対して逆方向に伸びるものであると共に、先端側が基端側より径内方向に位置している。
【選択図】 図1
Description
前者(特許文献1)にあっては、弾性部とナット本体とが一体であり、ナットの機能を満足する上での素材の制約を受けるため、弾性部の素材にバネ弾性の大きなものを使用することができず、また、弾性部の加工が困難であるという課題を有する。
この別体に形成するものとしては、特許文献2〜4に示されるように、弾性部に板バネを用いたものが知られている。より詳しくは、板バネを径方向に配位し、その先端をナット本体のネジ孔に突出させ、この板バネをボルトのねじ山に係合させることによって、板バネを略軸方向に変形させ、その反力をボルトに作用させて、ネジの緩み止めをなすものである。
本願の請求項2の発明は、固定部と可動部とが1つの線材により形成されたものであり、固定部は、ネジ孔の外側に周方向に伸びると共に、ナット本体の開放端面に対してスポット溶接にて固定されたものであり、当該溶接部分が弾性部材の固定部又はナット本体の開放端面に形成された凸部であり、この凸部以外では弾性部材とナット本体とが接触していないものであることを特徴とする請求項1記載の緩み止めナット。
本願の請求項3に係る発明は、可動部は、ナット本体のネジ孔の略周方向に沿って1周未満の周方向長さに渡って配位されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み止めナットを提供する。
本願の請求項4に係る発明は、可動部は、ネジ孔の10分の2〜10分の9周の周方向長さを有し、基端から先端に向かうに従って開放端面から座面方向に傾斜しているものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の緩み止めナットを提供する。
本願の請求項5の発明は、可動部は、ネジ孔の10分の2〜10分の9周の周方向長さを有し、基端側から先端側に向かうに従ってナット本体の径内方向に徐々に偏向しており、且つ、ナットの軸方向に対して実質的に直行する平面に沿って配位されているものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の緩み止めナットを提供する。
図1は本願発明の実施の形態に係る緩み止めナットを示すもので、(A)は正面図、(B)は(A)の矢印Bから見た側面図、(C)は同ナットにボルトを螺合した状態の平面図、(D)は同ナットに螺合したボルトを締め付け方向に回転させた状態の平面図、(E)は同ナットに螺合したボルトを緩み方向に回転させた状態の平面図である。図2は同緩み止めナットの展開図である。
図1(A)へ示す通り、この実施の形態において、弾性部材21は、その全体が一本の線材にて構成されている。この線材は、弾性を備え、全体を曲げ加工により、円弧状に成形されている。そして、この線材は、当該線材の一端から後述する所定範囲を固定部23として、ナット本体11(開放端面)に固定され、当該線材の他方の端部を自由端25とすることにて、弾性変形により、ナット本体11の開放端面16に対し移動可能に形成されている。より詳細には、上記の固定部23(固定部23を含まず)から自由端25までの区間である可動部22は、ナット本体11の半径方向に対して変位可能である。また同時に、同区間は、ナット本体11の開放端面16に対し、ナットの軸方向に変位できるものとして実施し得る。以下、弾性部材21の各部の構成について更に詳しく説明する。
このスポット溶接は2部材(ナット本体11と弾性部材21)の間に通された電気の抵抗発熱によって溶接を行うものであり、可動部22が溶接されてしまわないように、可動部22とナット本体11との間には間隔を設けておくことが望ましい。そのために、この例では、ナット本体11の開放端面に2箇所の凸部17を設け、この2箇所の凸部17と固定部23とを接触させた状態で、他の部分は接触させずに、通電させ発熱させることにより、2箇所でスポット溶接するものである。なお、この溶接箇所は、2箇所に限らず、1箇所でも、3箇所でもよいが、複数箇所であることが望ましい。
この固定部23の断面形状は、円形、矩形など適宜変更して実施することができるが、ナット本体の開放端面16との接触面積を増やすために、開放端面16と接触する部分を平面状としておくことが固定の確実性を高める点で望ましい。
ここで重要なことは、可動部22は、基端24から先端の自由端25に向かってのネジの巻き方向(右ネジの場合は右回転方向)に対して、逆方向(右ネジの場合には左回転方向。ただし、ナットの座面側から開放端面側を見た場合)に伸びるものである。図では、開放端面側から座面側を見た平面図であるため、ねじの回転方向(矢印n)は左回転方向であり、可動部22の伸びる方向(矢印k)は右回転方向となっている(図1(C)参照)。この実施の形態にあっては、可動部22がねじの回転方向と逆方向に伸びるものであっても、可動部22の長さが一周未満であるため、特許文献7のような、ねじ山乗り越え部を設ける必要がなく、比較的単純な構造で有効な緩み止めをなすことができる。
なお、可動部22の自由端25は、雌ねじ14の延長上に配置することが、ボルト31の雄ねじ32の係合を円滑に行うことができる点で望ましいが、その位置はボルト31の雄ねじ32の係合ができる範囲で適宜変更し得る。
可動部22は、その自由端25がボルト31の雄ねじ32の谷にうまく入った場合には、可動部22は、ボルトが回転しても持ち上げられることがないが、雄ねじ23にひっかった場合には、可動部22はボルトの回転に伴って持ち上げられてしまう。そして、ある程度持ち上げられると、雄ねじの山を乗り越えて次の谷に入ることになる。この際、可動部22を先端に向かって下方に(開放端16に近づくように)傾斜させておくことによって、たとえ持ち上がっても、水平あるいは若干の情報の傾斜になった状態で次の谷に入ることができる。もちろんこのような現象が生じないばあいには、生じてもすぐに解消する場合には、可動部22を実質的に水平にしてもよく、あるいは上方に傾斜させるものであってもよい。
図3(B)と図3(C)とは、前述の凸部17の代わりに、弾性部材21側に凸部23aを設けたものである。このように、弾性部材21側に凸部23aを設けることによって、ナット本体11側には凸部が必要とされず、標準のナットに対しても、弾性部材21を取り付けることで、高性能な緩み止めナットとなるものである。なお、図3(B)は可動部22が水平なものの例、図3(C)は可動部22が途中から下方に傾斜した例を示すものである。 図4及び図5の例は、可動部22の傾斜に応じて(略平行に)、ナット本体の開放端16にも傾斜を設けた例である。これにより、可動部22とナット本体11との接触の可能性がより小さくなり、スポット溶接を確実に行うことができるものである。
通常のナットと同様、このナット10もボルト31に螺合される。ボルト31は、右回転されることによって、ナット10の座面15側から開放端面16に向けて前進する。ボルト31の先端が開放端面16から出る際に、弾性部材21の可動部22の自由端25の内周面がボルトのねじ山に係合し、可動部22はナットの径外方向に弾性変形する(図1(C))。この弾性変形の反力は、ボルトの径内方向に作用し、この弾性力によってナットの緩み止めがなされる。
よって本願にあっては、ねじを締め付け方向に回転させるに要するトルクに比して、他方、緩み方向に回転させるに要するトルクの方が大きくなる。すなわち、小さな力で締め付けることができ、大きな緩み止め作用を果たし得るナットを提供し得たものである。
この構成によって、軸方向と直行する方向の付勢力(図7の横方向矢印)が、進み側フランク33のフランク角に応じて軸方向(図7の縦方向矢印)に分配され、ねじの締結力となる軸力として作用するものであり、より大きな緩み止め効果を発揮する。なお、第1当接部26と進み側フランク33とは、面で接触するもののほか、線で接触するものであってもよく、点で接触するものであってよい。
また、上記のように、ナット本体と別体の部材として、線材にて、弾性部材21の主要部即ち可動部22を、構成することにより、図3(B)にて破線で示す通り、製造時、断面積のより大きい可動部22を備えた弾性部材21を選択することが簡単に行える。このように、線材の伸びる方向を横断する方向の断面積について、大きなものを採用することにより、可動部22の弾性の強いもの(腰の強いもの)への変更が容易に行え、必要に応じてより大きな緩み止めの効果を期すことができる。
実施例は、本願の図1及び図2に示す形態を備えたナットで、ナット本体の規格はJIS B1181 1種タイプに準拠するM16ナットとし、弾性部材をばね用ステンレス線材で作成し、幅(半径方向長さ)3.5mm、厚み(軸方向長さ)1.6mm、第1当接部26の水平面に対する角度30度、第2部の水平面に対する角度25度として実施し、2箇所でスポット溶接により固定し完成させた。このナットにボルトを螺合し、プリベリングトルクねじ込み最大値と、プリベリングトルクねじ戻し最大値とを測定したところ、ねじ込み最大値は約10kgf・cmであったのに対して、ねじ戻し最大値は約50kgf・cmであり、小さな力でねじ込みが可能であり、且つ、十分な緩み止め効果を得ることができたことが確認された。この値は、現在多数市販されている緩み止めナットのカタログ上の数値がプリベリングトルクねじ込み最大値は約30kgf・cm、プリベリングトルクねじ戻し最大値は約15kgf・cmであることに比しても、十分に有意差のある値であると言える。
11 ナット本体
12 工具係合部
13 ネジ孔
14 雌ねじ
15 座面
16 開放端面
21 弾性部材
22 可動部
23 固定部
24 基端
25 自由端
31 ボルト
32 雄ねじ
33 進み側フランク
34 追い側フランク
s スポット溶接位置
Claims (5)
- ネジ孔を備えたナット本体と、このナット本体の座面と反対側の開放端面に設けられた弾性部材とを備え、
この弾性部材がナット本体に螺合するボルトを付勢することによって、緩み止めをなす緩み止めナットにおいて、
弾性部材は、ナット本体とボルトとの螺合によって弾性変形する可動部と、この可動部の基端側に設けられた固定部とを備え、
弾性部材のうち少なくとも可動部が弾性を有する線材によって構成され、固定部が開放端面に固定され、且つ、可動部が開放端面に対して弾性変形により変位でき、
可動部は、ナット本体のネジ孔の略周方向に沿って1周未満の周方向長さに渡って配位され、且つ、基端から先端に向かってネジの巻き方向に対して逆方向に伸びるものであると共に、先端側が基端側より径内方向に位置しており、
ボルトが螺合された際、可動部がボルト軸部と当接して、可動部が径外方向に弾性変形することによって、ボルトの緩み止めをなすことを特徴とする緩み止めナット。 - 可動部は、内周面にボルトに対する当接部を備え、この当接部がボルトのねじ山の進み側フランクと当接するようにナットの軸方向において非対称に形成されたものであり、ボルトのねじ山の追い側フランクには実質的に当接しないものであることを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナット。
- 固定部と可動部とが1つの線材により形成されたものであり、
固定部は、ネジ孔の外側に周方向に伸びると共に、ナット本体の開放端面に対してスポット溶接にて固定されたものであり、当該溶接部分が弾性部材の固定部又はナット本体の開放端面に形成された凸部であり、この凸部以外では弾性部材とナット本体とが接触していないものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み止めナット。 - 可動部は、ネジ孔の4分の1〜4分の3周の周方向長さを有し、基端側から先端側に向かうに従ってナット本体の径内方向に徐々に偏向しており、且つ、基端から先端に向かうに従って開放端面から座面方向に傾斜しているものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の緩み止めナット。
- 可動部は、ネジ孔の10分の2〜10分の9周の周方向長さを有し、基端側から先端側に向かうに従ってナット本体の径内方向に徐々に偏向しており、且つ、ナットの軸方向に対して実質的に直行する平面に沿って配位されているものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の緩み止めナット。
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