JP2009209402A - めっき被覆部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】銅を主成分とする部材の被覆表面の組成を工夫してウィスカの発生を防止できるようにすると共に、高信頼度のフレキシブル配線接続用の端子部品等を構成できるようにする。
【解決手段】銅を主成分とする端子母材1と、端子母材1に電解めっきされたAg組成濃度3乃至7wt%、Cu組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残Sn組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3とを備え、めっき皮膜3は、所定の熱処理によって当該めっき皮膜3の表面に析出されたAg又は当該Agを主成分とする化合物を有するものである。この構成によって、FPCコネクタ端子10の表面に析出されるAg又はAgを主成分とする化合物が、例えば、当該FPCコネクタ端子10の全面積の2%以上を占有するものである。従って、Ag又は当該Agを主成分とする化合物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。
【選択図】 図1
【解決手段】銅を主成分とする端子母材1と、端子母材1に電解めっきされたAg組成濃度3乃至7wt%、Cu組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残Sn組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3とを備え、めっき皮膜3は、所定の熱処理によって当該めっき皮膜3の表面に析出されたAg又は当該Agを主成分とする化合物を有するものである。この構成によって、FPCコネクタ端子10の表面に析出されるAg又はAgを主成分とする化合物が、例えば、当該FPCコネクタ端子10の全面積の2%以上を占有するものである。従って、Ag又は当該Agを主成分とする化合物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鉛(Pb)フリーのフレキシブル配線接続用の端子部品等に適用可能なめっき被覆部品及びその製造方法に関するものである。詳しくは、銅を主成分とする部材に電解めっきされた銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金の皮膜を備え、所定の熱処理によって当該皮膜の表面に析出された銀又は当該銀を主成分とする化合物をバリアにしてウィスカの発生を防止できるようにすると共に、高信頼度のフレキシブル配線用のコネクタ端子等を構成できるようにした。
携帯電話機や、液晶テレビ、オーディオ機器、ビデオカメラ、ホームビデオ機器等の電子機器のコネクタ端子には、ハンダ付け性が良いSn(錫)−Pb(鉛)合金めっきを施されためっき被膜部品が使用される場合が多い。しかし、近年、環境問題からPbを用いないSnめっきが求められている。
Snめっきでは、コネクタ嵌合時などの外部応力がかかる部分ではウィスカと呼ばれるひげ状のSn単結晶が発生する。Snのウィスカの成長機構は、完全には解明されていないが、Snめっき層に応力が加わると、これが駆動力となってSn原子の拡散が誘発されることによりウィスカが成長すると考えられている。このようなウィスカの対策めっき処理として、SnにCu(銅)やBi(ビスマス)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)といった第2元素を添加する合金めっき処理や、めっき処理後に再溶融することで、めっき片寄りを起こさせる方法がある。また、SnにAg、Cuを添加した3元合金めっきによるウィスカを抑制する方法も報告されている。
この種のウィスカの発生防止を取り入れためっき方法に関連して、特許文献1にはウィスカ発生抑制に優れたSnめっき又はSn合金めっきが開示されている。このSnめっき又はSn合金めっきによれば、CuまたはCu合金基板上にSnめっきまたはSn合金めっきを行い、その後、100℃〜180℃の温度で熱処理を行うようにした。このようなめっき方法を採ると、SnめっきまたはSn合金めっきの結晶粒界にSn−Cu合金相を形成できるようになるので、曲げ加工等の外部応力が加わった場合においても、ウィスカーが発生することの無い優れたSnめっきまたはSn合金メッキ構造等を提供できるというものである。
また、特許文献2には、めっき被膜部材およびめっき処理方法が開示されている。このめっき処理方法によれば、銅を主成分とする基材上に、錫を主成分とする第1のめっき薄膜を形成し、このめっき薄膜から、銅よりも密度の大きい錫−銅化合物バリア層を形成し、更に錫−銅化合物バリア層上に、錫を主成分とする第2のめっき厚膜を形成するようにした。このようなめっき方法を採ると、簡単な膜構成でめっき皮膜のウィスカ発生を防止できるとともに、はんだ濡れ性を良好に維持することができるというものである。
ところで、従来例に係るウィスカの発生防止を取り入れためっき方法によれば、次のような問題がある。
i.特許文献1及び2のSnめっき処理によれば、銅よりも密度の大きい錫−銅化合物から成るバリア層によりウィスカの発生を防止するようにしているが、コネクタ嵌合時などの外部応力がかかる部分で、Snの単結晶が発生するおそれがある。従って、ウィスカが端子間短絡の原因となる。
ii.ウィスカの対策めっき方法としてめっき片寄りを起こさせる方法があるが、SnにCuやBi、Ag、Znといった第2元素を添加した合金めっき処理を施し、めっき処理後の再溶融する際の最適な熱処理条件が見出されていない。
iii.また、SnにAg、Cuを添加した3元合金めっきによるウィスカ抑制法も報告されているが、最適な熱処理条件が見出されていないので、どれも完全にウィスカの発生を防止できていないのが現状である。
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、銅を主成分とする部材の被覆表面の組成を工夫してウィスカの発生を防止できるようにすると共に、高信頼度のフレキシブル配線接続用の端子部品等を構成できるようにしためっき被覆部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題は、銅を主成分とする部材と、前記部材に電解めっきされた銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金の皮膜とを備え、前記皮膜は、所定の熱処理によって当該皮膜の表面に析出された銀又は当該銀を主成分とする化合物を有することを特徴とするめっき被覆部品によって解決する。
本発明に係るめっき被覆部品によれば、部材上の皮膜表面に析出される銀又は銀を主成分とする化合物が、例えば、当該部材上の皮膜表面の全面積の2%以上を占有するものである。従って、銀又は当該銀を主成分とする化合物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。
本発明に係るめっき被覆部品の製造方法は、銅を主成分とする部材にめっき下地用の金属膜を電解めっきする工程と、前記部材のめっき下地用の金属膜上に銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金を電解めっきする工程と、前記電解めっきが施された部材を熱処理して前記部材上の皮膜表面に銀又は銀を主成分とする化合物を析出する工程とを有することを特徴とするものである。
本発明に係るめっき被覆部品の製造方法によれば、部材上の皮膜表面に析出される銀又は銀を主成分とする化合物が当該部材上の皮膜表面の全面積の2%以上を占有するように、例えば、当該部材の予熱温度を160±5℃及び予熱時間を100±20秒に設定し、当該部材の加熱温度を230℃以上及び加熱時間を30乃至40秒に設定するようになされる。従って、銀又は当該銀を主成分とする化合物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。これにより、外部応力によるウィスカ発生を抑制するPbフリーのSn系めっき処理方法を提供できるようになる。
本発明に係るめっき被覆部品及びその製造方法によれば、銅を主成分とする部材に電解めっきされた銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金の皮膜を備え、皮膜は、所定の熱処理によって当該皮膜の表面に析出された銀又は当該銀を主成分とする化合物を有するものである。
この構成によって、銀又は当該銀を主成分とする化合物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。これにより、フレキシブル配線用のコネクタ端子等に適用可能な高信頼度のめっき被覆部品を提供できるようになった。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態としてのめっき被覆部品及びその製造方法について、その実施例を説明する。図1は、本発明に係る実施の形態としてのFPCコネクタ端子10の構成例を示す正面図である。図1に示すFPCコネクタ端子10は、めっき被覆部品の一例を構成すると共に、部材の一例を構成する端子母材1を備えている。端子母材1は所定の厚みを有して横向きU形状を成し、銅を主成分とする、例えば、りん青銅から構成される。端子母材1は上部ピン11、下部ピン12及び支点部13から構成され、上部ピン11と下部ピン12との間にフレキシブルプリント配線(以下FPC配線14という)が挿入され、電気的に回路が接続される。
上部ピン11と下部ピン12とは相互に対峙され、当該上部ピン11と下部ピン12の端部は共通する支点部13から延在されて構成されている。FPCコネクタ端子10は内側から外側へ開放する力に対し、当該上部ピン11と下部ピン12を押し戻そうする付勢力として作用するバネ性を有している。
上部ピン11の先端は内側に向かって傾斜しており、FPC配線14を迎え入れ易くなされている。下部ピン12の先端は、内側に突き出た突起部及び当該突起部から外側に向かってなだらかに傾斜する部位を有しており、FPC配線14の先端部を迎え入れ易くなされている。端子母材1は所定の厚みを有したりん青銅板を切り抜き加工や、エッチング処理して横向きU形状を成すように形成される。
この端子母材1の表面には、電解めっきされた銀(Ag)組成濃度3乃至7wt%、銅(Cu)組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫(Sn)組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3が施されている。めっき皮膜3は、所定の熱処理によってその表面に析出されたAg又は当該Agを主成分とする化合物(以下で析出物という)を有するものである(請求項1)。この例で、端子母材1上のめっき皮膜3の表面に析出されるAg又はAgを主成分とする析出物は、当該端子母材1上のめっき皮膜3の表面の全面積の2%以上を占有する。
この例で、端子母材1上のめっき皮膜3の表面近傍に析出されるAg又はAgを主成分とする析出物は、板状を有し、かつ、当該板状の構成物の長辺が3μm以上を有するものである。このAg又はAgを主成分とする析出物は、走査電子型顕微鏡による断面観察また表面観察によって確認されている(図7〜図9参照)。
上述の端子母材1上のめっき皮膜3の表面に析出されるAg又はAgを主成分とする析出物は、板状の構成物に限られることはなく、当該析出物が粒子状を有し、かつ、粒子径が500nm以上を有しているものも確認されている。ウィスカの発生の防止対策としては、長辺が3μm以上の板状の構成物又は粒子径が500nm以上の粒子状の構成物を含むAg又はAgを主成分とする析出物が端子母材1上のめっき皮膜3の表面に析出されていればよい。
続いて、本発明に係るめっき被覆部品の製造方法に関して、FPCコネクタ端子10の形成例について説明する。図2A〜Cは、第1の実施例としてのFPCコネクタ端子10のめっき処理例を示す工程図である。この例では、図1に示したFPCコネクタ端子10を形成する場合を前提とし、端子母材1の表面に、Ag組成濃度が5wt%で、Cu組成濃度が0.5wt%、残Sn組成のSn−Ag−Cu合金を電解めっきにより被着する場合を例にとる。
これを製造条件にして、図2Aにおいて、まず、りん青銅製の端子母材1にめっき下地用の金属膜2を電解めっきする。めっき下地用の金属膜2には、例えば、ニッケル(Ni)が使用される。次に、Ag組成濃度5wt%、Cu組成濃度0.5wt%及び残Sn組成のめっき液を使用して、図2Bに示す端子母材1のめっき下地用の金属膜2(Ni)上に、同組成の膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3(Sn−Ag−Cu)を電解めっきにより形成する。電解めっき時の電流密度は、いずれも、2乃至3A/dm2程度である。処理温度は60乃至80℃である。めっき処理時間は数十秒程度である。
その後、図2Cにおいて、めっき皮膜3(Sn−Ag−Cu)が施された端子母材1を熱処理して端子母材1上のめっき皮膜3の表面にAg又はAgを主成分とする析出物を析出する。この際に、めっき皮膜3の表面に析出されるAg又はAgを主成分とする析出物が、当該端子母材1上のめっき皮膜3の表面の全面積の2%以上を占有するように端子母材1の熱処理条件を設定する。例えば、端子母材1の熱処理条件に関して、当該端子母材1の予熱温度を160±5℃及び予熱時間を100±20秒に設定し、当該端子母材1の加熱温度を230℃以上及び加熱時間を30乃至40秒に設定する。このような熱処理をSn−Ag−Cu合金めっき付きの端子母材1に施すと、図1に示したようなFPCコネクタ端子10が完成する。
図3は、Sn−Ag−Cu合金めっき付きの端子母材1の熱処理例を示す加熱プロファイルである。図3において、縦軸は端子母材1を熱処理する温度[℃]である。横軸は端子母材1を熱処理する時間[秒]である。
図中、aはプリヒート温度であり、端子母材1を予熱する温度(予熱温度)である。この例で、プリヒート温度aは、160±5℃に設定される。bはリフロー温度であり、端子母材1を加熱する温度(加熱温度)である。リフロー温度bは230℃以上に設定される。cはピーク温度であり、端子母材1の加熱処理時の最大温度である。ピーク温度cは、250±20℃に設定される。
また、図中、Taはプリヒート時間であり、端子母材1を予熱する時間(予熱時間)である。プリヒート時間Taは、100±20秒に設定される。Tbはリフロー時間であり、端子母材1を加熱する時間(加熱時間)である。リフロー時間Tbは、30乃至40秒に設定される。このような熱処理条件を設定すると、長辺が3μm以上の板状の構成物又は粒子径が500nm以上の粒子状の構成物を含むAg又はAgを主成分とする析出物を、端子母材1上のめっき皮膜3の表面に析出できるようになる。この析出物がウィスカの発生の防止対策となる。
続いて、熱処理を施していないFPCコネクタ端子10と熱処理を施したFPCコネクタ端子10とにおけるウィスカの発生有無について説明する。図4A及びBは、熱処理無し及び熱処理有りのFPCコネクタ端子10のアクリル板挟持試験の結果例を示す図である。ここにアクリル板挟持試験とは、所定時間だけ2枚のアクリル板でFPCコネクタ端子10を挟んで加圧し、その後、当該FPCコネクタ端子10の表面にウィスカが発生しているか否かを確認する試験をいう。アクリル板でFPCコネクタ端子10を挟んで保持固定する挟持時間は、例えば、250時間乃至1000時間である。
この例では、熱処理を施していないFPCコネクタ端子10と、5種類のリフロー温度b(230,240,250,260,270℃)で熱処理を施したFPCコネクタ端子10とについてアクリル板挟持試験を行い、当該FPCコネクタ端子10の表面にウィスカが発生しているか否かを確認したところ、図4Aに示すように熱処理無しのFPCコネクタ端子10にウィスカが発生していることが確認された。図4Aに示すアクリル板挟持試験の結果例によれば、図中、ひげのように突出しているのがSn原子によるウィスカである。
これに対して、図4Bに示すピーク温度c=250℃で熱処理を施したFPCコネクタ端子10については、全く、ウィスカが発生していないことが確認された。図には示さないが、他のピーク温度c=230,240,260,270℃で端子母材1を熱処理したFPCコネクタ端子10についても、全く、ウィスカが発生していないことが確認された。
図5は、ウィスカが発生していないFPCコネクタ端子10のSEM像を示す図である。図6A〜Cは、図5に示したFPCコネクタ端子10の端子母材1のSEM像に対応する各金属相のEDXマッピング像を示す図である。図5に示すSEM像は、走査電子型顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を使用してFPCコネクタ端子10の表面を撮影して得たものである。
ここにSEM像とは、1mm以下に絞った電子線で試料表面を走査すると、試料から二次電子が飛び出す。この現象を利用した走査型電子顕微鏡では、電子線の照射位置をブラウン管(CRT)上の点に、発生した二次電子の量をその点の輝度に対応させて表示する。このとき得られる画像をいい、二次電子像とも呼ばれている。試料表面を走査する走差面の大きさは、CRT画面よりずっと小さいから最終画像は試料表面の拡大像となる。
この例では、端子母材1(試料)上のめっき皮膜3の表面の深さ方向を元素レベルで撮影したSEM像が得られている。図中、破線で囲んだ部分Iが端子母材1上のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3の被着部分である。また、この被着部分の析出物を解明するために、端子母材1(試料)を走査電子型顕微鏡に付属しているエネルギー分散型X線分析機能(以下でEDX機能という)を利用して元素マッピング処理を実施した。
図6Aは、図5に示した端子母材1のSEM像と、その表面のAg相のEDXマッピング像を示す図である。EDXマッピング像によれば、Sn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3の被着部分の元素分布(マップ)情報から材質別に相分離し、複数元素の組成比情報を提示することができる(相分析機能)。
上述の相分析機能によってめっき皮膜3の構造を観察したところ、熱処理を行なった端子母材1(試料)は、Sn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3の表面近傍にAg組成濃度の高い析出物が析出されているのが確認された。
図6Bは端子母材1の表面のSn相のEDXマッピング像を示す図である。図6Bに示すSn相は端子母材1の表面のAg相の下方に分布しているのが確認された。図6Cは端子母材1の表面のCu相のEDXマッピング像を示す図である。図6Cに示すCu相は、端子母材1の表面のAg相の下方のSn相よりも更に下方に分布している。Cu相は端子母材1を成すりん青銅上に分布している。Cu相はりん青銅上にめっきしたNiを核に被着されている。
このように熱処理後のAg組成濃度5wt%、Cu組成濃度0.5wt%及び残Sn組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3の表面近傍には、Ag組成濃度の高い析出物が析出されていることが明確になった。しかも、Ag相とCu相とでSn相を挟み込む形態を確認することができた。
図7〜図9は、熱処理無し及び熱処理有りのFPCコネクタ端子10のAgマッピング像の構成例を示す図である。この例では、Agマッピング像に関して、熱処理無しのFPCコネクタ端子10と、熱処理(ピーク温度c=250±20℃)有りのFPCコネクタ端子10とを比較する。Agマッピング像とは、走査電子型顕微鏡により試料表面を元素レベルで観察した際に取得される平面画像であって、めっき皮膜3の最上層面のAg相のマッピング像をいう。
図7Aに示す熱処理無しのFPCコネクタ端子10によれば、Ag等の析出が全く見られず、Sn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3が全体的に均一に分布していることが分かる。図7Bに示す熱処理有りのFPCコネクタ端子10のAg相のマッピング像によれば、Ag等の析出が確認される。熱処理条件はリフロー温度bが230℃の場合である。図7Bに示す板状及び粒径状はAg又は当該Agを主成分とする析出物を成すものである。
Ag又は当該Agを主成分とする析出物は、粒径状のAgが熱処理によって集合し、粒径状のAgが核となって板状又は棒状に成長するものと考えられる。板状の析出物は、長辺が5μm以上の形状を有しているのが分かった。この析出物は、めっき皮膜3の表面積の約2%以上を占めていることも分かった。めっき皮膜3の表面近傍に析出する析出物は、板状に限られることはなく、析出物を球状(粒子状)と見た場合、その直径が500nm以上の大きさであることが分かった。
図8Aに示す熱処理有り(リフロー温度b=240℃)のAg相のマッピング像によれば、Ag等の析出が確認される。図8Aに示す板状及び粒径状はAg又は当該Agを主成分とする析出物を成すものである。この例でも、めっき皮膜3の表面近傍に析出する析出物が全表面積の2%以上を占めている構造となっていることが分かる。図8Bに示す熱処理有り(リフロー温度b=250℃)のAg相のマッピング像によれば、Ag等の析出が確認される。図8Bに示す板状及び粒径状はAg又は当該Agを主成分とする析出物を成すものである。この例でも、めっき皮膜3の表面近傍に析出する析出物が全表面積の2%以上を占めている構造となっていることが分かる。
図9Aに示す熱処理有り(リフロー温度b=260℃)のAg相のマッピング像によれば、Ag等の析出が確認される。図9Aに示す板状及び粒径状はAg又は当該Agを主成分とする析出物を成すものである。この例でも、めっき皮膜3の表面近傍に析出する析出物が全表面積の2%以上を占めている構造となっていることが分かる。図9Bに示す熱処理有り(リフロー温度b=270℃)のAg相のマッピング像によれば、Ag等の析出が確認される。図9Aに示す板状及び粒径状はAg又は当該Agを主成分とする析出物を成すものである。この例でも、めっき皮膜3の表面近傍に析出する析出物が全表面積の2%以上を占めている構造となっていることが分かる。
このように本発明に係る第1の実施例としてのFPCコネクタ端子10によれば、りん青銅銅の端子母材1に電解めっきされたAg組成濃度3乃至7wt%、Cu組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残Sn組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3を備え、所定の熱処理条件(250±20℃等)によって、めっき皮膜3の表面に析出されたAg又は当該Agを主成分とする析出物がSnを被覆するようになされる。従って、Ag又は当該Agを主成分とする析出物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになった。これにより、高信頼度のフレキシブル配線用のコネクタ端子10を提供できるようになった。
また、FPCコネクタ端子10の製造方法によれば、めっき皮膜3の中の金属相の構造を熱処理によって制御しているので、ウィスカの発生原因となるSn相をAg相の下方に追いやり、当該Sn相上にAg相を移相させることができる(金属移相制御)。この金属移相制御によって、Ag又は当該Agを主成分とする析出物がSn相をAg相下に封じ込めるようになるので、析出物がバリアとなってウィスカの発生を防止できるようになる。これにより、フレキシブル配線接続用のコネクタ端子10等に適用可能な高信頼度のめっき被覆部品を製造できるようになった。これにより、外部応力によるウィスカ発生を抑制するPbフリーのSn系めっき処理方法を提供できるようになった。
表1は、第2の実施例としての端子−配線間の嵌合試験の結果例を示すものである。この実施例では、Ag組成濃度が異なる3種類のFPCターミナル端子(以下FPC#A、FPC#B及びFPC#Cという)について、ウィスカの発生の有無を検証した。
表1において、縦方向の項目は、試料の比較例としてのFPC#A、FPC#B及びFPC#Cである。横方向の項目には、3種類のAg組成濃度=3wt%、5wt%、7wt%を示している。表中、250h,500h、1000hは放置時間を示している。また、図中の「0/72」は、72本のFPCコネクタ端子中でウィスカ発生数が「0本」であることを示している。
各々のFPC#A、FPC#B及びFPC#Cの製造方法については、第1の実施例で説明したように、まず、FPC#Aを構成するFPCコネクタ端子10の端子母材1(りん青銅製)に、膜厚1〜2μm程度のNiを電解めっきによりめっきする。そして、3種類のAg組成濃度=3wt%、5wt%、7wt%、Cu組成濃度=0.5wt%及び残Sn組成を有するメッキ液を準備する。例えば、Ag組成濃度3wt%、Cu組成濃度=0.5wt%及び残Sn組成を有するメッキ液を使用して、FPCコネクタ端子10の端子母材1に膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金を電解めっきによりめっきする。
同様にして、Ag組成濃度5wt%、Cu組成濃度=0.5wt%及び残Sn組成を有するメッキ液を使用して、FPCコネクタ端子10の端子母材1に膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金を電解めっきによりめっきする。電解めっき時の電流密度は、いずれも、2乃至3A/dm2程度である。処理温度は60乃至80℃である。めっき処理時間は数十秒程度である。
更にAg組成濃度7wt%、Cu組成濃度=0.5wt%及び残Sn組成を有するメッキ液を使用して、FPCコネクタ端子10の端子母材1に膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金を電解めっきによりめっきする。このめっき処理を他のFPC#B及びFPC#Cについても同様に実行する。
その後、FPC#A、FPC#B及びFPC#Cの各々のめっき皮膜3の表面近傍にAg組成濃度の高い析出物を析出させるために、第1の実施例で説明した熱処理条件でFPC#A、FPC#B及びFPC#Cの各々のAg組成濃度を有するSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜付きの端子母材1を熱処理する。その際の熱処理時のピーク温度cは250℃である。
この例では、FPCコネクタ端子10が24本で1組を構成するもとすれば、3組のFPCコネクタ端子10を1つのターミナル端子(3×24=72本)状態とし、フレキシブルプリント配線(FPC)とターミナル端子と嵌合させ、室温にて250時間、500時間及び1000時間と分けて放置した。その後、ターミナル端子からフレキシブルプリント配線を取り外し、端子−配線の嵌合状態を開放してウィスカ発生の有無を調べた(嵌合試験)。ウィスカ発生の観察は、SEM装置にて500倍以上に画像を拡大して行なった。
この嵌合試験の結果例によれば、表1に示すように全てのFPC#A、FPC#B及びFPC#C(試料)でウィスカの発生は確認されなかった。因みに、Ag組成濃度が0wt%の端子母材1(試料)をピーク温度250℃で熱処理した後に、アクリル板挟持試験を実行して、試料に外部応力を負荷し、500時間だけ加圧したところ、30μm以上のウィスカが複数本発生したことが確認されている。
この例では、めっき下地用の金属膜2(Ni)の有無及びその膜厚とウィスカの発生の関連性について検証した。この検証では、りん青銅製の端子母材1上に3種類のめっき下地用の金属膜2を各々膜厚1〜2μm程度を電解めっきする場合を例に挙げている。めっき下地用の金属膜2には、Ni、Cu及びSnを使用した。めっき下地用のNiや、Cu、Sn等の金属は電解めっきにより形成され、めっき膜厚は1μm以上である。
このような3種類のめっき下地用の金属膜2(Ni、Cu及びSn)を電解めっきしたFPCコネクタ端子10の端子母材1(りん青銅)に、Ag組成濃度、例えば、5wt%,Cu組成濃度0.5wt%、残Sn組成のめっき液を使用し、膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金を電解めっきによりめっきした。もちろん、めっき下地用の金属膜無しのFPCコネクタ端子10の端子母材1に、同じ組成濃度のめっき液を使用し、膜厚2μm程度のSn−Ag−Cu合金を電解めっきによりめっきした。
電解めっき時の電流密度は、いずれも、2乃至3A/dm2程度である。処理温度は60乃至80℃である。めっき処理時間は数十秒程度である。このような下地用の金属無しのFPCコネクタ端子10を含めて計4種類について熱処理後のウィスカの発生の有無を確認した。
上述の4種類のFPCコネクタ端子10は、ピーク温度c=250℃で熱処理後、当該FPCコネクタ端子10(試料)を各々アクリル板に挟んで、外部応力を負荷し、その後、500時間だけ放置した(アクリル板挟持試験)。そして、光学顕微鏡にてウィスカ発生の有無を調べた。ウィスカの発生の観察は50倍以上に画像を拡大して行なった。この検証結果で、下地用の金属Niや、Cu、Sn等が有る場合及び、全く下地用の金属が無いすべての試料でウィスカの発生は確認されなかった。
このことから、ウィスカの発生に関しては、下地用の金属やその膜厚等にほとんど関係がないことがわかった。従って、めっきの前提条件として、めっき下地用の金属膜2の種類及びその有無は問わないことがわかった。
この例では、めっき皮膜3の膜厚と、ウィスカの発生の関連性について検証した。この検証では、りん青銅製の端子母材1のめっき下地用のNi上に、Ag組成濃度、例えば、5wt%,Cu組成濃度0.5wt%、残Sn組成のめっき液を使用し、各々膜厚1μm、2μm、3μm、5μmの4種類のめっき皮膜3を電解めっきする場合を例に挙げている。電解めっき時の電流密度は、いずれも、2乃至3A/dm2程度である。処理温度は60乃至80℃である。めっき処理時間は数十秒程度である。
このような4種類のめっき皮膜3を電解めっきしたFPCコネクタ端子10は、例えば、ピーク温度c=250℃で熱処理後、当該FPCコネクタ端子10(試料)を各々アクリル板に挟んで、外部応力を負荷し、その後、500時間だけ放置した(アクリル板挟持試験)。そして、光学顕微鏡にてウィスカ発生の有無を調べた。ウィスカの発生の観察は50倍以上に画像を拡大して行なった。
この検証結果で、各々膜厚1μm、2μm、3μm及び5μmの4種類のAg組成濃度5wt%,Cu組成濃度0.5wt%、残Sn組成のSn−Ag−Cu合金のめっき皮膜3の全ての試料でウィスカの発生は確認されなかった。このように、FPCコネクタ端子10における外部応力によるウィスカ抑制が達成でき、FPCコネクタ端子10の実用化が図れるようになった。なお、図4〜図9はいずれも写真を複写したものである。
本発明は、Pbフリーのフレキシブル配線用のコネクタ端子等に適用して極めて好適である。
1・・・端子母材、2・・・めっき下地用の金属膜、3・・・めっき皮膜、10・・・FPCコネクタ端子、11・・・上部ピン、12・・・下部ピン、13・・・支点部
Claims (9)
- 銅を主成分とする部材と、
前記部材に電解めっきされた銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金の皮膜とを備え、
前記皮膜は、所定の熱処理によって当該皮膜の表面に析出された銀又は当該銀を主成分とする化合物を有することを特徴とするめっき被覆部品。 - 前記部材表面に析出される銀又は銀を主成分とする化合物は、
当該部材上の皮膜表面の全面積の2%以上を占有することを特徴とする請求項1に記載のめっき被覆部品。 - 前記部材上の皮膜表面に析出される銀又は銀を主成分とする化合物は、
板状を有し、かつ、長辺が3μm以上を有することを特徴とする請求項2に記載のめっき被覆部品。 - 前記部材上の皮膜表面に析出される銀又は銀を主成分とする化合物は、
粒子状を有し、かつ、粒子径が500nm以上を有することを特徴とする請求項2に記載のめっき被覆部品。 - 銅を主成分とする部材にめっき下地用の金属膜を電解めっきする工程と、
前記部材のめっき下地用の金属膜上に銀組成濃度3乃至7wt%、銅組成濃度0.3乃至0.7wt%及び残錫組成の錫−銀−銅合金を電解めっきする工程と、
前記電解めっきが施された部材を熱処理して前記部材上の皮膜表面に銀又は銀を主成分とする化合物を析出する工程とを有することを特徴とするめっき被覆部品の製造方法。 - 前記部材上の皮膜表面に析出される前記銀又は銀を主成分とする化合物が当該部材上の皮膜表面の全面積の2%以上を占有するように前記部材の熱処理条件を設定することを特徴とする請求項5に記載のめっき被覆部品の製造方法。
- 前記部材の熱処理条件に関して、当該部材の予熱温度を160±5℃及び予熱時間を100±20秒に設定し、当該部材の加熱温度を230℃以上及び加熱時間を30乃至40秒に設定することを特徴とする請求項6に記載のめっき被覆部品の製造方法。
- 前記部材の熱処理条件において、当該部材の加熱温度を250±20℃に設定することを特徴とする請求項7に記載のめっき被覆部品の製造方法。
- 前記めっき下地用の金属膜を前記銅を主成分とする部材上に1μm以上を電解めっきすることを特徴とする請求項5に記載のめっき被覆部品の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014065003A1 (ja) * | 2012-10-22 | 2014-05-01 | 株式会社鷺宮製作所 | 外部応力型錫ウィスカの発生を抑制する方法、およびこれを用いて得られた圧力スイッチ |
US11757137B2 (en) | 2018-01-10 | 2023-09-12 | Samsung Sdi Co., Ltd. | Battery pack |
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2008
- 2008-03-03 JP JP2008052507A patent/JP2009209402A/ja active Pending
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