JP2009209231A - 重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法 - Google Patents

重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法、該製造方法によって得られる多硫化物薬剤、及び該薬剤を使用する重金属を含む処理対象物の重金属固定化方法を提供する
【解決手段】水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、硫黄及び水を含む混合物を120〜200℃で加熱することを特徴とする重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法、該製造方法によって得られる多硫化物薬剤、及び重金属を含む処理対象物を該薬剤で処理する重金属固定化方法
【選択図】なし

Description

本発明は、重金属固定化用の多硫化物薬剤に関する。
従来、ゴミ焼却炉等の焼却灰から溶出する、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、水銀及びクロム等の重金属を固定化する手段としては、ジチオカルバミン酸塩等のキレート剤が多用されてきた(特許文献1)。しかし、キレート剤は有機物なので、微生物等によって分解され、重金属を再放出する懸念があった。また、キレート剤が有機硫黄系の物質である場合には、微生物分解によって二硫化炭素(CS2)が発生するなどの問題があった。さらに、キレート剤は、高価なので非経済的である。
キレート剤以外の重金属固定化方法としては、例えば、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム等の硫化水素イオン(HS-)を生成する化合物の使用が挙げられるが、これらの化合物は、硫化水素ガス(H2S)を発生するので、作業環境上の問題があった(特許文献2)。また、硫化ナトリウムは、比較的強い毒性を有し、潮解性を有するので、使用条件が制限されるとう問題点も有する。
また、焼却灰からの重金属の溶出は、一瞬で終了するわけではなく、ゆっくりと溶出するものである。キレート剤や水硫化ナトリウム等は、反応が量論的に速やかに終了するので、薬剤処理後に、徐々に溶出する重金属類を捕捉することができなかった。
また、空気中のCO2による金属イオンの安定化(カーボネーション法)は魅力ある方法であるが、キレート剤を使用する場合には、空気と接触させることによって、キレート剤の微生物分解によるCS2の発生が促進され、重金属の再溶出にもつながってしまう。また、硫化ナトリウム等を使用する場合には、空気と接触させることによって、残留した硫化ナトリウム等からH2Sが発生する等の問題点があり、十分に空気と接触させることが困難であった。
一方、焼却灰をセメント固化処理する場合は、焼却灰が新しいアルカリと出会うことになり、このことによって、焼却灰だけのままであれは溶出しなかった鉛(Pb)などの半金属類(両性金属 メタロイド)が、セメント固化処理によって溶出するという皮肉な結果になる。そのため、硫化水素ガスの発生が少なく、かつ、中性・弱アルカリ域または強アルカリ域でも鉛等の重金属の溶出を長期にわたって抑制できる薬剤が必要とされていた。
特開平10−118612号公報 特開2007−83183号公報
本発明は、重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法、該製造方法によって得られる多硫化物薬剤、及び該薬剤を使用する重金属を含む処理対象物の重金属固定化方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で多硫化物薬剤を製造することにより、重金属の溶出を長期間に渡って抑制できる多硫化物薬剤が得られることを見出した。本発明は、この様な知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものである。
本発明は、下記項1〜5に記載の重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法、該製造方法によって得られる多硫化物薬剤、及び該薬剤を使用する重金属を含む処理対象物の重金属固定化方法を提供する。
項1. 水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、硫黄及び水を含む混合物を120〜200℃で加熱することを特徴とする重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法。
項2. 加熱温度が140〜180℃、加熱時間が10分間〜10時間である項1に記載の製造方法。
項3. 請求項1又は2の製造方法によって得られる重金属固定化用の多硫化物薬剤。
項4. 重金属を含む処理対象物を、項1又は2の製造方法によって得られる多硫化物薬剤で処理することを特徴とする重金属固定化方法。
項5. 重金属が、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、水銀及び六価クロムからなる群から選ばれる少なくとも1種である項4に記載の重金属固定化方法。
製造方法
本発明の多硫化物薬剤の製造方法は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、硫黄、及び水を含む混合物を加熱することを特徴とする。
本発明の製造方法に使用される水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種は、市販品を使用すればよい。水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の使用量は、多硫化物薬剤100重量部当たり、通常、10〜50重量部程度、好ましくは15〜40重量部程度、より好ましくは20〜30重量部程度である。
本発明の多硫化物薬剤の製造方法に使用される硫黄は、市販の硫黄、特に硫黄の粉末を使用すればよい。硫黄の使用量は、多硫化物薬剤100重量部当たり、通常5〜50重量部程度、好ましくは5〜30重量部程度、より好ましくは10〜15重量部程度である。
本発明の製造方法に使用される水の使用量は、多硫化物薬剤100重量部当たり、通常、20〜85重量部程度、好ましくは40〜85重量部程度、より好ましくは60〜80重量部程度である。
本発明の製造方法においては、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を加えても良い。他の成分を使用する場合、他の成分の使用量は、多硫化物薬剤100重量部当たり、通常0.01〜5重量部程度である。
本発明の製造法における加熱温度は、通常120〜200℃程度、好ましくは140〜180℃程度である。また、加熱時間は、通常10分間〜10時間程度、好ましくは30分間〜8時間程度、さらに好ましくは1時間〜2時間程度である。本発明の製造方法において、加熱条件は、特に、140〜180℃、かつ、1〜2時間程度とするのが好ましい。また、本発明の製造方法において、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、硫黄及び水を含む混合物を加熱する際には、密閉容器内で加熱することが好ましい。上記加熱温度で加熱した場合、密閉容器内の圧力は、3〜10気圧程度である。特に、本発明の製造方法においては、上記加熱温度において、加熱時間を上記のように短時間にすることで、得られる多硫化物薬剤から発生するHSガスの量を少なくすることができる。
多硫化物薬剤
本発明の多硫化物薬剤は、本発明の製造方法によって得られる。
本発明の多硫化物薬剤は、主成分が多硫化物イオンSx2−(x=2〜6)である。多硫化物イオンSx2−は、時間の経過とともに安定化し、SxとS2−とに分かれる(不均化反応)。この反応は、強アルカリ域では徐々に起こり、弱アルカリ・中性域では比較的早い。Sxは単体硫黄、S2−は硫化物イオンである。Sxは沈殿物として析出する際に、水中のイオン等を吸着する。S2−は、処理対象物中の重金属イオンの沈殿に寄与する。
本発明の多硫化物薬剤は、pH12〜14程度の強アルカリ域、pH5〜12の弱アルカリ・中性域のいずれで使用しても、長期間にわたって処理対象物からの重金属イオンの溶出を長期間にわたって抑制できる。
本発明の多硫化物薬剤が処理対象とする重金属を含む処理対象物としては、都市ごみ焼却灰(飛灰)、汚染土壌、汚泥、しゅんせつ土砂、鉱さい、粉じんおよび特定粉じん(労働安全衛生法、大気汚染防止法)等が挙げられる。
重金属固定化方法
本発明の重金属固定化方法は、重金属を含む上記処理対象物を本発明の製造方法によって得られる多硫化物薬剤で処理することを特徴とする。
本発明の重金属固定化方法によれば、都市ごみ焼却灰(飛灰)、汚染土壌、汚泥、しゅんせつ土砂、鉱さい、粉じんおよび特定粉じん等の処理対象物に含まれる重金属の固定化による封じ込めが可能である。
本発明の重金属固定化方法によって溶出が抑制できる重金属としては、例えば、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、水銀及び六価クロム等が挙げられる。
本発明の重金属固定化方法によれば、pH12〜14程度の強アルカリ域、pH5〜12の弱アルカリ・中性域のいずれの条件下であっても、長期間にわたって処理対象物からの重金属イオンの溶出を抑制できる。
本発明の重金属固定化方法においては、処理対象物を多硫化物薬剤単独で処理してもよく、多硫化物薬剤とセメント等の固化材とを併用して処理してもよい。
処理対象物を本発明の多硫化物薬剤単独で処理する場合、多硫化物薬剤の使用量は、処理対象物によって異なるが、処理対象物100重量部当たり、通常、0.1〜40重量部程度である。処理対象物が都市ごみ焼却灰(特に、飛灰)である場合には、多硫化物薬剤の使用量は、処理対象物によって異なるが、処理対象物100重量部当たり、通常1〜40重量部程度、好ましくは5〜20重量部程度である。
処理対象物を本発明の多硫化物薬剤で処理する方法は、対象処理対象物によって異なるが、例えば、処理対象物に多硫化物薬剤を散布する方法、散布した後にさらに処理対象物を攪拌、混練等する方法が挙げられる。
処理対象物が都市ごみ焼却灰(飛灰)である場合には、焼却灰を水で加湿後、塩酸等の酸、水酸化ナトリウム等のアルカリでpH11〜13程度のアルカリ域に調整し、これに本発明の多硫化物薬剤と適当量の酸とを混合すればよい。また、処理対象物が汚染土壌、鉱さい、粉じんおよび特定粉じんである場合は、乾燥状態であれば、汚染土壌を水で加湿後、塩酸等の酸、水酸化ナトリウム等のアルカリでアルカリ域に調製し、これに本発明の多硫化物薬剤と適当量の酸とを混合すればよい。処理対象物が汚泥、しゅんせつ土砂である場合、スラリー状になっていれば、アルカリ域であることを確認した上で、本発明の多硫化物薬剤と適当量の酸とを混合すればよい。
本発明の多硫化物とともに使用する上記適当量の酸としては、例えば、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。また、酸の量は、適宜選択すればよいが、通常、処理対象物100重量部当たり、0.01〜1重量部程度である。
本発明の重金属固定化方法において、多硫化物薬剤とセメント等の固化剤とを併用して使用する場合、セメントとしては、例えば、各種ポルトランドセメント、混合セメント( 高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、シリカフュームセメント等)が使用できる。その他の固化材としては、セメント系(一般軟弱土用、高含水土用、高有機質土用、六価クロム対策用、発塵抑制型等)、石灰系(生石灰系、消石灰系)、マグネシア系(マグネシア、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム)、せっこう系(半水、無水、二水)、高炉スラグ系の固化剤等が使用できる。また、セメント等の固化材は1種単独で本発明の多硫化物薬剤と併用しても良いし、二種以上混合して併用してもよい。
セメント等の固化材と併用して使用する場合、セメント、他の固化材等中の多硫化物薬剤の含有量は、処理対象とする処理対象物によって異なるが、固化剤100重量部当たり、通常、0.01〜20重量部程度とすればよい。処理対象が都市ごみ焼却灰(特に、飛灰)である場合には、固化材100重量部当たり、通常、0.1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部程度とすればよい。
本発明の重金属固定化方法は、カーボネーション法と併用してもよい。カーボネーション法と併用する場合は、処理対象物が大気中の二酸化炭素を吸収するに従い、強アルカリ域からpHが10程度にまで低下する性状を有する処理対象物に適用する。カーボネーション法と併用することにより、本発明の多硫化物薬剤を処理対象物に適用した後、重金属が大気中のCOと反応して不溶性の炭酸塩を生成するので、本発明の多硫化物薬剤と大気中のCOとの相乗効果により、より効率的に重金属の溶出を抑制できる。また、カーボネーション法と併用すれば、多硫化物薬剤の使用量を抑えることも可能になる。
また、処理対象物のpHが12以上であって、十分なアルカリを含んでいるために、大気中の二酸化炭素を吸収しても、pHの変動が僅かである場合には、本発明の多硫化物薬剤を処理対象物に加え、pH調製を行わずにそのまま強アルカリ状態に保つことにより、多硫化物イオンの緩慢な不均化反応によって徐々に放出されるS2−と重金属の陽イオンとが反応して重金属の沈殿させることができる(アルカリ緩速固定化法)。また、この方法では、処理対象物がアルカリ性に保たれているので、カドミウムイオン(Cd2+)、ニッケルイオン(Ni2+)等の陽イオン重金属は、多硫化物イオンと反応することなく溶出が抑制される。
本発明の製造方法によって得られる多硫化物薬剤は、強アルカリ域、中性・弱アルカリ域のいずれでも長期間に渡って処理対象物からの重金属の溶出を抑制できる。特に、多硫化物薬剤の製造過程で、反応温度及び反応時間が特定の範囲であると、薬剤からのHSの発生が極めて少ない。
以下に、本発明の多硫化物薬剤の製造例及び試験例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1
耐圧試験管に水25 ml、硫黄粉末(和光純薬社製)3 g及び水酸化カルシウム(和光純薬)7.5 gを入れて密栓し、下表1の所定温度(140℃、160℃及び180℃)に調節した乾燥機(オーブン)に入れ、下表1の所定の時間加熱した後、室温で除冷して実施例1〜12の多硫化物薬剤を得た。
Figure 2009209231
試験例1(薬剤中の硫黄量の分析)
実施例1〜12で得られた多硫化物薬剤、比較例1として水硫化ナトリウム水溶液、比較例2としてNDロック剤(商品名 株式会社環境アネトス社製)及び比較例3としてキング石灰硫黄合剤(商品名 キング化学株式会社製)をそれぞれ約30 mgとり、20mgのろ紙にしみこませ、石英管内で酸素気流中(150 ml/min)燃焼させた(環状炉温度 800 ℃)。燃焼ガス中の硫黄分を3%過酸化水素水でSO4 として捕集し、これにBaCl2を加えて、BaSO4の沈殿を生成させた。グラスファイバーろ紙GA100を用いた重量法により、得られた沈殿から薬剤中の硫黄量を定量した。結果を表1に示す。
試験例2(薬剤からのH Sガス発生量の測定)
フリット付きガスバブラー(柴田科学株式会社製)にpH 7、pH 9の緩衝液(pH電極校正用 和光純薬社製)をそれぞれ 10 ml入れ、ここに実施例1〜12で得られた多硫化物薬剤及び比較例1〜3の薬剤2μl、20μlをそれぞれ添加した。次に、フリット付きガスバブラーに100 ml/minのHeガスを通じ、放出されるガスを検知管(硫化水素 4H型 ガステック)に導入した。検知管の読み値(ppm)から、H2S発生量(μg)が計算できる。あらかじめ測定した薬剤中の硫黄量と比較し、薬剤中の硫黄量の何%がH2Sガスとして放出されたのかを計算した。HSガス発生量の測定結果を表1に示す。また、薬剤からのHSガス発生量測定の概念図を図1に示す。
試験例3(Pb濃度変化の測定)
実施例13:PP製遠沈管に精製水40 mlを入れ、さらにPb標準液(和光純薬社製 1000 mg/l)100μl及び実施例1で得られた多硫化物薬剤100μlを添加した。Pbの初期濃度は10 mgPb/lになる。得られた混合液をよく振り混ぜてから遠心分離を行い、直接噴霧原子吸光光度法(Flame AAS)によりPbの濃度変化を測定した(0日後)。その後、フタを締めて室温で保存し、1日後、3日後及び7日後に、同様にしてPbの濃度変化を測定した。なお、分析の直前には混合液を振り混ぜ、遠心分離を行った後にFlame AAS分析を行った。
実施例14:実施例13の混合液に1M NaOH水溶液 (NaOH 2gを50mlの水に溶かして調製) 5mlを加えた以外は、実施例13と同様にして、0日後、1日後、3日後及び7日後のPb濃度変化を計測した(Pbの初期濃度は9 mgPb/lになる)。
比較例3:実施例1で得られた多硫化物薬剤100μlの代わりに比較例1で使用した水硫化ナトリウム(NaHS)水溶液100μlを薬剤とした以外は、実施例13と同様にしてPbの濃度変化を測定した。
比較例4:実施例1で得られた多硫化物薬剤100μlの代わりに比較例1で使用した水硫化ナトリウム(NaHS)水溶液を薬剤100μlとした以外は、実施例14と同様にしてPbの濃度変化を測定した。
試験例2の結果(実施例13、実施例14、比較例4及び比較例5)を表2に示す。
Figure 2009209231
比較例4の結果から明らかなように、水硫化ナトリウム(NaHS)は、アルカリを加えない状態(今回の試験では、pH8.1)であれば、HS-およびH2Sとして存在するのが優勢であり、Pbの沈殿を作ることができない。一方、比較例5の結果から、アルカリ存在下(今回の試験では、pH 13.4)では、S2−ができるので溶液中のPbイオンと反応してPbSの沈殿を作ることが分かる。
本発明の多硫化物薬剤は、アルカリを加えない場合、多硫化物薬剤が不均化反応をおこして白沈を生じPbイオンも白沈中に取り込まれた。これは、多硫化物薬剤の急激な不均化反応により、ネバネバした単体硫黄が生じるという現象によるものと考えられる。

試験例4(焼却灰(飛灰)からのPb溶出実験)
都市ごみ焼却施設(泉佐野市田尻町共同処理施設)のバグフィルターで捕集した飛灰0.8 gを、50 ml容の遠沈管にとり、水35 mlを加えた。得られた混合液に、1 M HCl又は1M NaOHをそれぞれ下表3に記載の量加えて全量を40 mlとした。得られた混合液を1分間振り混ぜ、pHを測定した後(0日後)、遠心分離を行い、上澄み液中のPb濃度(mg/l)を原子吸光光度計で測定した(0日後)。分析後、遠沈管のふたを閉めて、試料を室温・暗所に保管し、1日後、3日後及び7日後に、振り混ぜ・pH測定・遠心分離・Pb濃度測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2009209231
鉛は、酸性側ではPb2+として溶液中に溶解し、アルカリ性側ではPb(OH)3 として溶解する。表3に記載のpHとPb濃度をプロットした結果を図2に示す。図2から、pH8〜9付近で、Pbの溶解度が極小に到達することがわかる。
試験例4及び図2の結果から、Pb溶出試験初期には、高めのPb溶出濃度であったが、5日後〜11日後には、pH−Pb溶出濃度の曲線が低濃度側にシフトすることがわかる。
この現象を解釈するために、溶存状態のPb濃度の熱力学的理論値の計算を、熱力学データベースthermo.com.v8.r6+.datのデータを用いて、下記3つの条件について行った。
(1)水中にPbOの沈殿が生じている場合(Calc[PbO(s)]=1)
(2)水中にPbO・PbCO3の沈殿が生じ、大気中のCO2(400 ppm (v/v))と平衡に達している場合(Calc[PbO・PbCO3(s)]=1)
(3)水中にPbCO3の沈殿が生じ、大気中のCO2(400 ppm (v/v))と平衡に達している場合(Calc[PbCO3(s)]=1)。
Pb濃度の熱力学的理論値の計算結果を図2に示す。図2のグラフから、溶出初期の沈殿物中のPbは、PbOとPbO・PbCO3の混合物として存在し、時間の経過と共に空気中のCOと反応してPbO・PbCO3に変化していくと考えられる。さらに長期的には、PbCO3に変化すると期待され、これが、いわゆるカーボネーションによるPbの安定化の論拠である。すなわち、沈殿物中のPbが完全にPbCO3 (即ち、[PbCO3(s)]=1)になれば、水中のPb濃度は非常に低くなり、Pbを効果的に固定化できる。
試験例5(焼却灰(飛灰)からの鉛の溶出抑制実験)
都市ごみ焼却施設(泉佐野市田尻町共同処理施設)のバグフィルターで捕集した飛灰0.8 gを、50 ml容の遠沈管にとり、水40mlを加えた。ここに、実施例1で得られた多硫化物薬剤を、それぞれ20μl、100μl、200μl加え、1分間振り混ぜた後、遠心分離を行い、上澄み液中のPb濃度(mg/l)を原子吸光光度計で測定した(0日後)。また、あわせて、pHも測定した。Pb濃度及びpHの測定後、遠沈管のふたを閉めて、試料を室温・暗所に保管し、1日後、3日後、7日後に、振り混ぜ・遠心分離・Pb濃度測定を行った。また、7日後には、pHも測定した。結果を下表4に示す(実施例15〜17)
一方、実施例1で得られた多硫化物薬剤20μl、100μl及び200μlの代わりに比較例1で使用した水硫化ナトリウム水溶液(硫黄量 0.099 g/ml)を薬剤として使用した以外は、実施例15〜17と同様にして、Pb濃度測定及びpH測定を行った(比較例6〜8)。
Figure 2009209231
実施例15〜17の多硫化物薬剤は、7日間経過後も飛灰からのPb溶出が効果的に抑制できており、NaHSと同等以上のPb溶出抑制効果を有することが分かる。
薬剤からのHSガス発生量測定の概念図 表3に記載のpHとPb濃度をプロットした結果及び溶存状態のPb濃度の熱力学的理論値の計算結果を示すグラフ

Claims (5)

  1. 水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、硫黄及び水を含む混合物を120〜200℃で加熱することを特徴とする重金属固定化用の多硫化物薬剤の製造方法。
  2. 加熱温度が140〜180℃、加熱時間が10分間〜10時間である請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1又は2の製造方法によって得られる重金属固定化用の多硫化物薬剤。
  4. 重金属を含む処理対象物を、請求項1又は2の製造方法によって得られる多硫化物薬剤で処理することを特徴とする重金属固定化方法。
  5. 重金属が、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケル、水銀及び六価クロムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の重金属固定化方法。
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