片手で筐体を把持した状態から、その親指で操作を行うことを特徴とする情報入力装置として、携帯電話の入力装置が一般的である。従来の携帯電話の入力装置は、把持部の上部に方向キー(日本における携帯電話端末の場合、一般に上下左右の4方向キー)と補助的なキー、下部に4行×3列の数字キーを具備するものである。
近年、携帯電話において電子メールの送受信やWebページの閲覧等のインターネットサービスが利用される機会が多く、今後のサービスの拡大および携帯電話端末の高機能化により、文字入力、カーソル移動操作、スクロール操作、ポインティング等を快適に行い得る入力装置が必要となる。しかし、従来の携帯電話の入力装置は前記各操作を行うに当たり不十分なものである。また、筐体の小型化の要請により、各操作に特化した個々の装置を搭載し難いという問題がある。
携帯電話における文字入力方式は、4行×3列の数字キーを用いたマルチタップ方式が一般的である。マルチタップ方式では、1つの数字キーにかな文字が5文字、英字が3〜4文字割り当てられており、1文字を入力するのに、かな文字で最大5打鍵、英字で最大4打鍵の手間がかかるため非常に入力効率が悪い。12というキー数はかな文字入力、英字入力を行う上で十分な数であるとは言えないが、携帯電話端末はスペースの制約上、キーを増設すると単位面積当たりのキー数が増加してしまい、親指によるキーの押し分けが困難になるため、単純にキーを増設するという解決策は有効でない。
携帯電話におけるカーソル移動方式は、4方向キーを用いて操作を行う方式が一般的である。上下左右いずれかのキーを押圧すると、メニュー選択画面におけるカーソル(以下、メニューカーソルともいう)やテキスト編集画面におけるカーソル(以下、テキストカーソルともいう)が対応する方向に所定量移動し、キー押圧を所定時間保持すると等速度で移動を継続する。任意の速度でカーソルを移動させるにはキーを何回も押圧する必要があり、入力効率が悪く、使用者の負担が大きい。また、キー押圧保持による等速度のカーソル移動については、キーを連打する場合と比較すると入力効率は良好であるが、やはりカーソル移動速度が一定であるため融通が利かず、例えば、より高速にカーソル移動を行うことが好ましい状況等に対応し得ない。特に、近年では携帯電話端末のディスプレイの大画面化、高解像度化が顕著に見られ、それに伴い表示可能なメニュー項目数や1行当たりの文字数が増加しており、4方向キーによるカーソル移動方式では、前記不都合により操作に手間暇がかかりすぎるという事態になり得る。
携帯電話におけるスクロール方式は、4方向キーを用いて操作を行う方式が一般的である。一画面に収まらないテキストデータやWebページ等を閲覧する際、上下左右いずれかのキーを押圧すると画面の表示が対応する方向に所定量スクロールし、キー押圧を所定時間保持すると等速度でスクロールを継続する。このスクロール方式は、前記4方向キーによるカーソル移動方式同様、入力効率が悪い、融通が利かない等の不都合を有し、特に、近年の携帯電話端末に実装されているパソコン向けWebページ閲覧機能(以下、フルブラウザ機能ともいう)を使用する際は満足な操作性を得られるものではない。携帯電話端末のディスプレイはデスクトップパソコンのそれと比較して一画面の表示量が少なく、パソコン向けWebページを表示するとスクロール量が多くなるため、フルブラウザ機能付きの携帯電話端末におけるスクロール方式は、より効率的な入力操作でスクロールすることができ、尚且つ、目的の情報に辿り着くまでのスクロール量が多い場合には高速にスクロールしたり、情報をWebページ内から探索する場合には適宜スクロール速度を調整したりというように、使用者がその目的に応じて自在に操作し得ることが要求される。
携帯電話におけるポインティング方式は、4方向キーを用いて操作を行う方式が一般的である。上下左右いずれかのキーを押圧すると、画面上の現在位置を指示する絵記号(以下、ポインタともいう)が対応する方向に移動し、キー押圧を保持すると等速度で移動を継続する。ポインタの移動方向は、複数方向の同時押圧を含めて上下左右と斜め4方向の計8方向のみであり、さらに移動速度の調整が不可能であるため、使用者の自由度が低い。
ところで、地上デジタル放送対応テレビの普及により、テレビにおけるインターネットサービスの利用者が増加しつつある。このサービスを利用する際の情報入力装置はテレビのリモコンであり、文字入力方式は携帯電話のマルチタップ方式が採用されている。また、近年ではリビング設置向けのリモコン操作可能なパソコンが発売されており、このリモコンにおける文字入力方式もマルチタップ方式である。前記の通りマルチタップ方式は入力効率の悪い文字入力方式であるが、片手入力装置として携帯電話の入力装置が圧倒的に普及している以上、他の片手入力装置においても携帯電話の装置構成や入力方式を踏襲せざるを得ない事情がある。そのため、携帯電話の入力装置や入力方式を改善することは、携帯電話や携帯情報端末のみならず幅広い分野において意義深い発展となり得る。
さて、携帯電話端末の限られた筐体スペースにおいては、それ1つで文字入力、カーソル移動操作、スクロール操作、ポインティング等の多様な入力操作を行い得る汎用的な情報入力装置が適するところである。現状、そのような入力装置としてタッチパネルが該当し、4行×3列の数字キーや方向キー等の代替としてタッチパネルを採用した携帯電話端末が実用化されている。タッチパネルが数字キーや方向キーの代替となり得る理由は、仮想的なキーを表示できる点にある。仮想的なキーとは、キーの画像をタッチパネル上に表示し、その画像に指が接触することで擬似的にキー押圧判定がなされるものである。例えば、メニュー画面では「電話」や「メール」等の機能名のラベルが書かれたキー群を表示し、また、電話番号入力時には数字キーを表示する等、状況に応じて最適なキーを表示可能であり、従来と比較して使用者が理解し易い操作体系を実現している。さらに、タッチパネル上を指でなぞるといった操作をシステム側で検出可能であり、スクロール操作やポインティング等を従来より直感的に行うことが可能となっている。
しかし、タッチパネル上の仮想的なキーは、通常の物理的なキーとは異なり、指で触れた際のキーの外形に対する触覚が存在しないため、物理的なキーではタッチタイピング(キーを視認することなく指先の感覚だけで押圧する操作)が可能であるところ、タッチパネル上の仮想的なキーではタッチタイピングが非常に困難であり、使用者は入力毎に画面上のキー位置の視認を強いられる。これは入力効率を悪化させる要因であり、特に仮想的なキーを用いた文字入力方式(例えば、特許文献1参照)は、物理的なキーを用いる場合と比較してより高い入力速度を期待できるものではない。
以上より、物理的なキーを主体とした上で、文字入力、カーソル移動操作、スクロール操作、ポインティング等を従来より効率的に行うことができ、尚且つ入力操作部が省スペースである入力装置が、携帯電話の片手親指入力環境に最適であると考えられる。そのような入力装置を実現するには、キー操作部において複数パターンの入力を行い得る装置構成が必要となる。
キー操作部において複数パターンの入力を可能とする入力装置として、キートップに接触検出センサを設けたキーを複数具備する入力装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この入力装置は、キートップにおける指の接触位置を検知するため、単なるキー押圧操作に加え、各キートップを連続的になぞることでスクロール操作やポインティング等も行い得る。
しかし、前記入力装置の発明においては文字入力の効率化は想定されていない。また、各キートップに複数の接触検知センサやタッチパッドを搭載することは、コスト面の問題が大きい。
特開2007−87200号公報
特開平11−194882号公報
以下、本発明の一実施形態による情報入力装置について説明する。
図1は、本実施形態による情報入力装置の概要を示すブロック図である。本実施形態による情報入力装置は入力操作部4と入力信号発生部5とで概略構成される。入力信号発生部5は、入力操作部4の各部の状態に応じた入力信号を入力信号処理部6に伝送する。入力信号処理部6は、本実施形態による情報入力装置を実装した端末におけるソフトウェアによって制御される入力モードに応じて入力信号の処理を行い、その結果を表示部3に反映する。本実施形態による情報入力装置は、携帯電話端末や携帯情報端末、パソコン用入力機器、その他情報家電のリモコン等に実装することができる。
図2は、本実施形態による情報入力装置を実装した携帯電話端末の構成図である。携帯電話端末1は、筐体2に液晶ディスプレイ3aと入力操作部4を具備する。液晶ディスプレイ3aは各種情報を表示するものである。
図3は、入力操作部4の拡大図である。中央キー10の周囲に、第1押圧部としてキー11〜18を具備し、さらにその周囲に第2押圧部として感圧部21〜28を具備する。隣接するキー11〜18と感圧部21〜28の各組(例えば、キー11と感圧部21等)は、1本の指で同時押圧可能であるよう配置される。キー11〜18の大きさは、隣接する感圧部21〜28に指が接触することなく押圧するのに十分な程度であることが好ましい。
図4は、キー11と感圧部21の断面の概略図である。キー11はキートップ31とスイッチ32から構成され、感圧部21は突起41と圧力検知手段42から構成される。キートップ31と突起41の間にある溝の感触により、使用者は指が感圧部21に触れているか否かについて触覚で理解し得る。スイッチ32は、一定以上の押圧力をキートップ31から受けると高さが初期位置から下がってON状態になり、押圧力が一定未満になると高さが初期位置に戻ってOFF状態になる、という構造であることが好ましい。圧力検知手段42は、突起41から受ける押圧力の変化を検知可能なセンサ等から構成される。そのようなセンサとしては、押圧力により電気抵抗値が滑らかに変動する感圧導電ゴム、感圧メンブレンスイッチ等が一般に知られている。圧力検知手段42による押圧力の検知精度はより高いほど好ましいが、少なくとも、押圧されていない状態と、軽く押圧されている状態(例えば、1N未満で押圧されている状態)と、押圧されている状態(例えば、1N以上で押圧されている状態)の3状態を判別できる精度であればよい。
このキー11と感圧部21において、指による入力方法は3パターン存在する。第1の入力方法は、図5に示すように、キー11と感圧部21とを、スイッチ32が下がらない程度に軽く押圧することで、スイッチ32はOFF状態を保ち、圧力検知手段42が押圧を検知するというものである。第2の入力方法は、図6に示すように、キー11のみを押圧することで、圧力検知手段42は押圧を検知せず、スイッチ32がON状態になるというものである。ただし、この押圧操作を行う際に、意図することなく指が感圧部21に触れてしまう可能性があるため、スイッチ32がON状態になると同時に、圧力検知手段42が所定値未満の押圧力を検知する場合についても、第2の入力方法に含める。第3の入力方法は、図7に示すように、キー11と感圧部21とを同時押圧することで、スイッチ32がON状態になると同時に、圧力検知手段42が所定値以上の押圧力を検知するというものである。
前記ではキー11と感圧部21の断面構成および入力方法について説明したが、隣接するキー12〜18と感圧部12〜18の各組についても同様である。
携帯電話端末1における入力操作部4は、その周囲にある程度の余白を有するため、感圧部21〜28の面積が小さいにも関わらず、使用者は隣接するキー11〜18と感圧部21〜28の各組の同時押圧を確実に行い得るという特徴を持つ。また、キー11〜18と感圧部21〜28の各々の外形や各間の溝の感触により、使用者は入力操作部4における指の接触位置を、視認することなく触覚で理解し得る。前記に加え、指に対する各押圧箇所の面積が十分に大きい点、キー配列が中央と上下左右、斜め4方向の3×3配列で感覚的に理解し易い点から、使用者は入力操作部4において高速且つ正確なタッチタイピングを行い得る。
以下、携帯電話端末1における、かな文字入力方式、英字入力方式、数字入力方式、カーソル移動操作方式、スクロール操作方式、ポインティング方式について説明する。これらの入力方式の使い分けは、端末のソフトウェアによって入力モードの切り替えを行うことで実現できる。
かな文字入力方式について説明する。入力されるかな文字は、1押圧目に選択される第1記号と、2押圧目に選択される第2記号との組み合わせにより決定される。図8は、入力操作部4における押圧操作と、その押圧操作により選択される第1記号の対応表であり、図9は、図8の対応を視覚化して示したものである。図10は、入力操作部4における押圧操作と、その押圧操作により選択される第2記号の対応表であり、図11は、図10の対応を視覚化して示したものである。図12は、第1、第2記号の組み合わせにより決定されるかな文字、記号の対応表である。本かな文字入力方式では、全てのかな文字を2押圧操作で入力でき、さらに「きゃ」「きゅ」「きょ」等の開拗音文字も2押圧操作で入力できるため、従来の携帯電話におけるかな文字入力方式と比較してより高い入力速度を達成する。また、図9、10に示すように、入力操作部4における第1記号と第2記号の割り当ては五十音順に準拠しており、学習が容易である。
本かな文字入力方式については、入力実験により入力速度とエラー率の実測値が得られているため、以下に詳細を述べる。
図13は、入力実験用に試作した入力装置の構成図である。入力装置101は、上部筐体102の内部に制御基板を具備し、下部筐体103に入力操作部104を具備し、USB(Universal Serial Bus)ケーブル105を経由して信号を伝送する。破線106は入力操作部104の中心線である。各部の寸法について、上部筐体102は縦80mm、横45mm、厚さ12mmであり、下部筐体103は縦80mm、横45mm、厚さ12mmであり、入力操作部104の直径は34mmであり、破線106から下部筐体103の下端までの距離は55mmである。図14は、入力操作部104の拡大図である。中央キー110の周囲にメインキー111〜118を具備し、さらにその周囲にサブキー121〜128を具備する。入力操作部104と入力操作部4の対応について、中央キー110は中央キー10に、メインキー111〜118はキー11〜18に、サブキー121〜128は感圧部21〜28に対応する。図15は、破線106における下部筐体103の断面図である。中央キー110、メインキー111、115、サブキー121、125は、下部筐体103の上面に対して1mm程度突出し、各々の下部に同種のタッチスイッチ130を具備するものである。なお、メインキー112〜114、116〜118、サブキー122〜124、126〜128についても同様である。本来ならば、図4の断面構成に倣い、サブキー121〜128の下部には圧力検知手段を配置すべきところであったが、機能を本かな文字入力方式に限定する場合にはスイッチを用いても模擬的に実現し得るため、装置製作の簡便化を図りスイッチで代替した次第である。タッチスイッチ130の各々は基板131に固定され、制御基板に配線される。タッチスイッチ130の作動力は1.0N、ストローク(下がり幅)は約0.25mmであり、打鍵感としては一般的な携帯電話端末のキーによるそれに近い。
入力実験は、本かな文字入力方式による600かな文字の文章入力を1試行とし、最低10試行、最高20試行を被験者に対して実施したものである。各試行間は最低3時間の休憩を設け、定期的な学習によるデータを得るため、次回の試行は72時間以内に行うものと定めた。被験者は男性7名で、年齢は21〜23歳、全員右利きで、入力装置101および入力操作部104の操作について未経験であった。入力対象とした文章は、夏目漱石著『坊っちゃん』の冒頭より、漢字をかな文字に変換した上で、記号を含めて約12000文字を抜粋し、分かち書きしたものである。ただし、空白、改行の入力は自動的に行われ、被験者による入力データとしては扱わない。また、各試行前に練習試行として、かな文字、記号が所定の順番に並べられた文章の入力を行ってもらった。実験環境として、パソコンに実験システムを導入し、入力装置101をUSB接続した。被験者には、ディスプレイの手前の椅子に座り、入力装置101の下部筐体103を右手のみで把持し、その親指で入力操作部104を操作するよう指示した。被験者の手前には本かな文字入力方式のガイド表を配置し、方式を覚えるまでは参照してもよいと定めた。
図16は、第10試行と第20試行における、被験者7名の入力速度とエラー率を示した表である。第10試行の平均入力速度は62.9かな文字数/分、平均エラー率は7.6%であった。全20試行を完了した被験者は4名であり、第20試行の平均入力速度は81.8かな文字数/分、平均エラー率は6.3%であった。ここで言う入力速度とは、1かな文字の入力にかかった時間の全データから、誤入力にかかった時間を差し引き、さらに改行直後の入力データおよび外れ値のデータを除外した上で、1分当たりの入力かな文字数を算出した値である。また、エラー率とは、全入力回数に対する誤入力回数の割合である。なお、隣接するメインキー同士(例えば、メインキー111と112等)、もしくはサブキー同士(例えば、サブキー121と122等)を同時押圧した際の正誤判定について、瞬間的により早く押圧したキーが押圧すべき正しいキーであった場合は、他方のキー押圧を無視した上で正入力と判定し、その他の場合は同時押圧をまとめて1誤入力として判定した。さて、前記マルチタップ方式による入力速度とエラー率について、過去の入力実験により、熟練者11名の平均入力速度は59.2かな文字数/分、平均エラー率は7.8%であるという結果が得られている。よって、本かな文字入力方式によれば、1週間程度の短期間の学習を遂行することで、マルチタップ方式と比較してより優れた入力効率を達成するという知見が得られた。また、アンケートを実施した結果より、全被験者がタッチタイピングを行っていたことが判明した。図17は、試行回数毎の平均入力速度の推移を示したグラフであり、図18は、試行回数毎の平均エラー率の推移を示したグラフである。最初の数試行においては平均入力速度は低く、平均エラー率は高いが、第5試行程度からは実用に耐える水準に達していると言える。平均エラー率の推移について、各試行毎に値に若干の分散が見られるものの、20試行完了時点では低下の傾向が継続しており、第21試行以降、5%台まで低下する可能性が高い。ところで、第x試行にかかる時間は、xの冪乗に比例するという練習の冪乗則(Power Law of Practice)が一般に知られている。図19は、図17の各平均入力速度のデータ点を両対数グラフに描き、平均入力速度の推移について最小二乗法により冪乗の回帰式を求め、その回帰直線を描いたグラフである。第20試行までの平均入力速度の実測値は、ほぼ練習の冪乗則に従って推移していると言える。第21試行以降、平均入力速度が練習の冪乗則に従って推移するものと仮定した場合、例えば、第62試行で約120かな文字/分、第100試行で約142かな文字/分まで上昇することが予測できる。よって、1日当たり2試行を毎日継続して行った場合、平均的に約1ヶ月でマルチタップ方式の2倍程度の入力速度を達成すると考えられる。
次に、英字入力方式について説明する。全ての英字は1回または2回の押圧操作で入力される。図20は、入力操作部4における押圧操作と、その押圧操作により入力される英字、記号の対応表であり、図21は、図20の対応を視覚化して示したものである。「A」〜「Z」の英字は、1つの押圧操作当たりに2文字が割り当てられており、ある押圧操作を1回行うと「Q」「E」「A」「D」等の1つ目の英字が仮入力され、再度同じ押圧操作を行うと「W」「R」「S」「F」等の2つ目の英字が入力され、確定する。仮入力された1つ目の英字は、直後に異なる押圧操作や、後述のカーソル移動方式による操作が行われた場合に確定する。「,(コンマ)」「.(ピリオド)」「?」「Space(空白)」は1回の押圧操作で確定する。本英字入力方式では、全ての英字を1回または2回の押圧操作で入力できるため、従来の携帯電話における英字入力方式と比較してより高い入力速度を達成する。また、図21に示すように、入力操作部4における入力文字の割り当てはパソコンのキーボードに広く採用されているQWERTY配列に準拠しており、QWERTYキーボードの経験者であれば学習が容易となっている。
次に、数字入力方式について説明する。図22は、入力操作部4における押圧操作と、その押圧操作により入力される数字、記号の対応表であり、図23は、図22の対応を視覚化して示したものである。図23に示すように、入力操作部4における「0」〜「9」および「*」「#」の割り当て位置は、電話機に広く普及している数字キー配列を踏襲している。
次に、カーソル移動方式について3方式を説明する。第1のカーソル移動方式は、図24に示すように、入力操作部4における感圧部21〜28を指で連続的になぞる操作(以下、ホイール操作ともいう)を行うことで、液晶ディスプレイ3に表示されるメニューカーソルやテキストカーソルが移動するというものである。ホイール操作が継続している間は、感圧部21〜28の各々に対する押圧が開始もしくは終了する度にカーソルが移動し、その移動量はなぞる速度に連動して増減する。カーソルの移動方向について、感圧部21〜28を時計回りになぞると下または右方向に、反時計回りになぞると上または左方向に移動し、特に縦(上下)横(左右)いずれの方向にも移動し得る場合には、感圧部23、27を始点としてなぞると縦方向に、感圧部21、25を始点としてなぞると横方向に移動する。このホイール操作によるカーソル移動方式は、前記4方向キーによるそれと比較して入力効率および使用者の自由度に優れる。第2のカーソル移動方式は、入力操作部4を、キー13が上方向、キー17が下方向、キー11が左方向、キー15が右方向、中央キー10が「決定」であるというように、4方向キーおよび決定キーとして使用し、前記4方向キーによるカーソル移動方式を踏襲するものである。第3のカーソル移動方式は、感圧部23が上方向、感圧部27が下方向、感圧部21が左方向、感圧部25が右方向と対応し、各方向の感圧部をタップ(指で軽く叩く)するとカーソルが対応する方向に所定量移動し、押圧を所定時間保持すると等速度で移動を継続するというものである。前記3方式の使い分けについて、メニューカーソルの移動には第1、第2の方式を用い、テキストカーソルの移動には第1、第3の方式を用いる。
次に、スクロール方式について2方式を説明する。第1のスクロール方式は、ホイール操作を行うことで液晶ディスプレイ3の表示がスクロールするというものである。ホイール操作が継続している間は、感圧部21〜28の各々に対する押圧が開始もしくは終了する度にスクロールし、そのスクロール量はなぞる速度に連動して増減する。スクロール方向について、感圧部21〜28を時計回りになぞると下または右方向に、反時計回りになぞると上または左方向にスクロールし、特に縦横いずれの方向にもスクロールし得る場合には、感圧部23、27を始点としてなぞると縦方向に、感圧部21、25を始点としてなぞると横方向にスクロールする。このホイール操作によるスクロール方式は、前記4方向キーによるそれと比較して入力効率および使用者の自由度に優れ、特にフルブラウザ機能使用時において有用性が高い。第2のスクロール方式は、入力操作部4を、キー13が上方向、キー17が下方向、キー11が左方向、キー15が右方向、中央キー10が「決定」であるというように、4方向キーおよび決定キーとして使用し、前記4方向キーによるスクロール方式を踏襲するものである。
次に、ポインティング方式について説明する。入力操作部4を、キー13が上方向、キー17が下方向、キー11が左方向、キー15が右方向、キー12が左上方向、キー14が右上方向、キー18が左下方向、キー16が右下方向、中央キー10が「選択」であるというように、8方向キーおよび選択キーとして使用し、各方向のキーを押圧することで液晶ディスプレイ3に表示されるポインタが対応する方向に移動し、キー押圧を保持すると移動を継続する。ポインタがある項目に重なった場合、中央キー10を押圧することでそれを選択可能である。隣接する2方向のキーを同時押圧した場合、ポインタはそれらの中間方向に移動し、最大で16方向に移動可能である。ポインタの移動速度について、キー11〜18の各キーを押圧すると同時に、隣接する感圧部21〜28に押圧力を加えることで移動速度を調整可能であり、その押圧力が大きいほど移動速度は上昇する。本ポインティング方式は、前記4方向キーによるポインティング方式と比較して使用者の自由度に優れる。
前記の通り、携帯電話端末1においては入力操作部4のみで、文字入力、カーソル移動操作、スクロール操作、ポインティングという、携帯電話における主要な操作の大半を行うことができるため、入力操作部の省スペース化を実現する。また、従来の携帯電話端末における個々の入力装置(数字キー、方向キー、ポインティングスティック等)を統合する形になるため、多様な入力操作を行い得るにも関わらず、装置製造コストは比較的安価で済む。
また、入力操作部4は上下左右対称の形であるため、携帯電話端末1を横にして使用した場合も、入力操作部4は縦の場合と同じ操作体系を保つ。例えば、端末を横にした状態でフルブラウザ機能を使用中に文字入力を要求されたとして、一般的なストレート型端末やスライド型端末では縦に持ち直す必要があるところ、携帯電話端末1では横にしたまま縦の場合と同様に入力できる。図25は、入力操作部4における前記かな文字入力方式の第1記号の割り当てについて、携帯電話端末1が縦の場合でも横の場合でも、使用者に対する上下左右の向きが変化しないことを視覚化して示したものである。このように、使用者に柔軟な操作体系を提供可能であり、各種機能やサービス、ゲームコンテンツ等への応用が期待される。
以上より、本実施形態の情報入力装置によれば、1つのキー部分において、キーをON状態にすることなく感圧部を押圧する入力、感圧部に所定値未満の押圧力を加えながらキーをON状態にする入力、感圧部に所定値以上の押圧力を加えながらキーをON状態にする入力の3パターンの入力が可能となり、文字入力、カーソル移動操作、スクロール操作、ポインティング等を、従来の携帯電話の入力装置より効率的に行うこと、および携帯電話端末における入力操作部の省スペース化を実現するという効果を奏する。
なお、本実施形態においては、第1押圧部(キー11〜18)と第2押圧部(感圧部21〜28)を別個に設けたが、これらを一体的に構成してもよい。以下、第1押圧部と第2押圧部を一体的に構成する場合の一実施形態について説明する。図26は、非感圧面と感圧面を具備するキー(以下、二押圧面キーともいう)の外観を示す図である。二押圧面キー50は、第1押圧部として非感圧面51を具備し、第2押圧部として感圧面52を具備し、これらの境界に溝53を具備する。非感圧面51の大きさは、感圧面52に指が接触することなく押圧するのに十分な程度であることが好ましい。溝53の感触により、使用者は指が感圧面52に触れているか否かについて触覚で理解し得る。図27は、二押圧面キー50の断面の概略図である。非感圧面51、感圧面52、溝53の各々はキートップ54として一体的に構成され、その下部にスイッチ55を具備する。感圧面52は、その下部に圧力検知手段56を具備する。キートップ54は、溝53の存在により、非感圧面51のみを押圧しても圧力検知手段56にその押圧が伝わらない構造となっている。この二押圧面キー50において、指による入力方法は3パターン存在する。第1の入力方法は、非感圧面51と感圧面52とを、スイッチ55が下がらない程度に軽く押圧することで、スイッチ55はOFF状態を保ち、圧力検知手段56が押圧を検知するというものである。第2の入力方法は、非感圧面51のみを押圧することで、圧力検知手段56は押圧を検知せず、スイッチ55がON状態になるというものである。ただし、この押圧操作を行う際に、意図することなく指が感圧面52に触れてしまう可能性があるため、スイッチ55がON状態になると同時に、感圧面56が所定値未満の押圧力を検知する場合についても、第2の入力方法に含める。第3の入力方法は、非感圧面51と感圧面52とを同時押圧することで、スイッチ55がON状態になると同時に、圧力検知手段56が所定値以上の押圧力を検知するというものである。この二押圧面キー50を用いることで、第1押圧部と第2押圧部の同時押圧を行う際、第2押圧部の高さが第1押圧部と連動して下がるため、よりスムーズな同時押圧感を実現するという効果を奏する。
また、本実施形態においては、1つの第1押圧部に対して隣接する第2押圧部を1つとしたが、複数の第2押圧部が隣接してもよい。このようにすることで、各第2押圧部について第1押圧部との同時押圧が可能となり、1つのキー操作部における入力パターン数が増加するため、より多様な入力が可能となる効果を奏する。
また、本実施形態においては、第1押圧部の下部にON状態、OFF状態の2状態をとるスイッチを配置したが、感圧スイッチ(ON状態、OFF状態の2状態をとり、尚且つON状態において押圧力により電気抵抗値が滑らかに変動するスイッチ)で代替してもよい。また、第1押圧部の下部にスイッチを配置すると共に、その押圧面に指の接触面積を検知可能なセンサやタッチパッド等を配置してもよい。
また、本実施形態においては、第2押圧部の下部に圧力検知手段を配置したが、その代替手段として、第2押圧部の押圧面に指の接触面積を検知可能なセンサやタッチパッド等を配置してもよい。
また、本実施形態においては、入力操作部4の中央部分に中央キー10を配置したが、ポインティングスティック等のポインティングデバイスで代替してもよい。
また、本実施形態においては、入力操作部4の全体が正円形であるような装置構成を示したが、長方形等の他の形になるように構成してもよい。また、入力操作部4のキー配列は3×3配列であったが、キー数を増減したり、キー配列を変更したりしてもよい。
また、本実施形態においては、入力操作部4の周囲は余白であったが、この周囲部分に補助的なキーを配置してもよい。
また、本実施形態においては、ストレート型の携帯電話端末に対する実装例を示したが、折り畳み型端末やスライド型端末等に実装してもよい。特に、折り畳み型端末の下部筐体においては、数字キーや方向キー等の代替として入力操作部4を搭載することで、その筐体スペースに余裕が生じるため、タッチパネル等の他の有用な入力装置を併設し得るという効果を奏する。
また、本実施形態において示した、かな文字入力方式、英字入力方式、数字入力方式、カーソル移動方式、スクロール方式、ポインティング方式の各々は一例に過ぎず、別なる方式を実装してもよい。