本発明について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂と赤外線吸収剤とを含有するポジ型画像記録層、及び、側鎖にエポキシ基とエチレングリコール基とを有するポリマーを含有するオーバーコート層を、この順に有することを特徴とする。
以下、本発明の構成要素について詳述する。
(オーバーコート層)
本発明におけるオーバーコート層は、側鎖にエポキシ基とエチレングリコール基とを有するポリマーを含有する層である。
オーバーコート層は、支持体上に存在する層のうち支持体から最も遠くに位置する層であり、本発明においては、オーバーコート層と支持体との間にポジ型画像記録層が存在する。オーバーコート層とポジ型画像記録層との間には、更に中間層が存在してもよいが、オーバーコート層とポジ型画像記録層とが隣接する態様がより好ましい。
オーバーコート層は、赤外線吸収能を有する化合物を実質的に含有しないことが好ましい。また、オーバーコート層は、エポキシ基の硬化剤として作用する化合物を含有しないことが好ましい。
<側鎖にエポキシ基とエチレングリコール基とを有するポリマー>
側鎖にエポキシ基とエチレングリコール基とを有するポリマー(以下、適宜「特定ポリマー」と称する。)について説明する。
特定ポリマーとしては、側鎖にエポキシ基とエチレングリコール基と有する、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、縮合ポリマー、などが含まれる。
特定ポリマーにおけるエポキシ当量は、感度の安定性及び製造適性の観点から、150〜1500であることが好ましく、250〜1200であることがより好ましい。ここで、「エポキシ当量」とは、ポリマーの質量(g)を、ポリマー中におけるエポキシ基の当量(モル数)で除した値を意味する。
特定ポリマーへのエポキシ基の導入態様としては、例えば、a1)特定ポリマーを合成するためのモノマーとして、エポキシ基を有するモノマーを用いる態様、a2)特定ポリマーの合成時に、エポキシ基を有する反応性化合物を用いる態様、a3)特定ポリマーの合成後に、公知の方法によりエポキシ基を導入する態様、などが挙げられる。
特定ポリマーへのエチレングリコール基の導入態様としては、b1)特定ポリマーを合成するためのモノマーとして、エチレングリコール基を有するモノマーを用いる態様などが挙げられる。
特定ポリマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマーに由来するアクリル樹脂であることが好ましい。該アクリル樹脂としては、エポキシ基及びエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、エチレングリコール基及びエチレン性不飽和結合を有するモノマーとを、それぞれ少なくとも1種用いて合成されたものが好ましい。
特定ポリマーとしては、下記一般式(I)で表されポリマーが好ましい。
一般式(I)中、R1は、水素原子、炭素数1〜6の置換若しくは非置換のアルキル基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、等)を表す。R2は、エポキシ基を有する置換若しくは非置換の脂肪族基、又はエポキシ基を有する置換若しくは非置換の芳香族基を表す。L1は、単結合又は2価の連結基を表す。lは5〜90質量%を表す。R3は、水素原子、炭素数1〜3の置換若しくは非置換のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。R4は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。L2は、2価の連結基を表す。mは3〜80質量%を表す。nは1〜20の整数を表す。
一般式(I)中、R1で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、クロロメチル基、イソプロピル基、ベンジル基、等が挙げられる。R1で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、等が挙げられる。
R1としては、水素原子、置換若しくは非置換のメチル基、及び塩素原子が好ましく、水素原子及び非置換のメチル基が更に好ましい。
一般式(I)中、R2で表される脂肪族基又は芳香族基としては、例えば、置換若しくは非置換のグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、3,4−エポキシフェニル基等が挙げられる。
R2としては、グリシジル基、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基が好ましい。
一般式(I)中、L1で表される2価の連結基は、置換若しくは非置換の、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、又は芳香族若しくは非芳香族の2価のヘテロ環基を1以上含んでなり、これらの基は互いに連結するか、或いは、カルボニル基、オキソ基、スルホ基、又はアミド基を介して、ポリマー主鎖を構成する炭素原子に結合する。
置換若しくは非置換のアルキレン基としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、t−ブチレン基、n−ブチレン基、n−へキシレン基、等が挙げられる。
置換若しくは非置換のアリーレン基としては、炭素数6〜10の芳香族環を有するアリーレン基が好ましく、具体的には、1,4−フェニレン基、ナフチレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、及び4−クロロ−1,3−フェニレン基、等が挙げられる。
置換若しくは非置換のシクロアルキレン基としては、炭素数5〜7の環構造を有するシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロペンチレン基、及び1,4−シクロヘキシレン基、等が挙げられる。
置換若しくは非置換の、芳香族若しくは非芳香族の2価のヘテロ環基としては、環構造中に、5〜10の炭素原子と、1以上のヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子)と、を含む2価のヘテロ環基が好ましく、具体的には、ピリジデン基、ピラジレン基、ピリミジレン基、及びチアゾリレン基、等が挙げられる。
L1で表される2価の連結基は、上記したアルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、及びヘテロ環基から選択される2以上を組み合わせたものであってもよい。
L1としては、カルボン酸エステル基であることがより好ましい。該カルボン酸エステル基としては、−C(O)O−アルキレン基、−C(O)O−アルキレン−フェニレン基、及び−C(O)O−フェニレン基が挙げられ、ここで、アルキレン基の炭素数は1〜4である。Xとしては、炭素数1〜2のアルキレン基を有する、−C(O)O−アルキレン基であることが特に好ましい。
特定ポリマーの合成に用いうる、エポキシ基及びエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
一般式(I)中、lは5〜90質量%を表し、7〜75質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
一般式(I)におけるR3としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
一般式(I)におけるR4としては、水素原子及びメチル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
一般式(I)中、L2で表される2価の連結基としては、−C(O)O−、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、及びヘテロ環基から選択される1種又は2以上を組み合わせたものであってよく、カルボン酸エステル基であることがより好ましい。該カルボン酸エステル基としては、−C(O)O−、−C(O)O−アルキレン基、−C(O)O−アルキレン−フェニレン基、及び−C(O)O−フェニレン基が挙げられ、ここで、アルキレン基の炭素数は1〜4であることが好ましく、−C(O)O−、又は炭素数1〜2のアルキレン基を有する−C(O)O−アルキレン基であることが特に好ましい。
一般式(I)におけるnは1〜20の整数を表し、1〜10がより好ましく、2〜8が更に好ましい。
一般式(I)中、mは3〜80質量%を表し、7〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
また、一般式(I)におけるl及びmの比率としては、95:5〜5:95が好ましく、90:10〜10:90がより好ましく、85:15〜20:80が更に好ましい。
一般式(I)で表されるポリマーは、上記した、エポキシ基を有する繰り返し単位及びエチレングリコール基を有する繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有してもよい。
一般式(I)中に導入しうる他の繰り返し単位を形成しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、オレフィン類、不飽和イミド類(例えば、マレイミド等)、N−ビニルピロリドン類、N−ビニルカルバゾール類、ビニルピリジン類、(メタ)アクリロニトリル類、及びスチレン類が挙げられるが、これらに限定されない。これらのモノマーの中でも、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びスチレン類が好ましく、スチレン類が特に好ましい。
一般式(I)中に導入しうる他の繰り返し単位は、2以上のモノマーを用いて形成されてもよい。そのようなモノマーの組み合わせとしては、例えば、スチレン系モノマーと、メタクリルアミド、アクリロニトリル、マレイミド、又はN−ビニルピロリドンとの組み合わせなどが挙げられる。
一般式(I)中に導入しうる他の繰り返し単位の含有比率としては、0〜75質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、15〜55質量%が更に好ましい。
特定ポリマーの好適な態様の1つは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレートから選択される1種又は2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位と、エチレングリコール基を有するモノマー(例えば、後述する実施例におけるモノマーA及びモノマーB等)から選択される1種又は2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位と、1種又は2種以上のスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む態様である。
特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、5,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
特定ポリマーの具体例としては、後述する実施例に記載するポリマーB−1〜B−4の他、以下に示す各ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、以下に挙げるポリマーは、いずれも重量平均分子量(Mw)が、5,000〜200,000の範囲のものである。
特定ポリマーは、従来公知の縮重合法又は付加重合法を、ポリマーの態様に応じて適宜選択することにより合成することができる。原料物質及び反応条件についても、ポリマーの態様に応じて適宜設定できる。代表的な合成例については後述する。
オーバーコート層における特定ポリマーの含有量は、オーバーコート層全体の乾燥質量中、20〜99.9質量%が好ましく、45〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%が更に好ましい。
<その他の成分>
オーバーコート層は、単量体又は特定ポリマー以外の重合体を、1種又は2種以上含有してもよい。そのような単量体又は重合体としては、米国特許第5,705,308号明細書、同5,705,322号明細書に記載されるフェノール性樹脂のような、ベンゾキノンジアジド及び/又はナフトキノンジアジドを含む化合物が挙げられる。このような化合物としては、商品名:P−3000として市販されるピロガロールアセトン樹脂(PCAS社製)等が挙げられる。他の例としては、米国特許第6,294,311号明細書、同5,143,186号明細書に記載されるジアジドを含む化合物が挙げられる。
オーバーコート層は、所望により、着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、例えば、米国特許第6,294,311号明細書に記載されるトリアリルメタン染料等が挙げられ、具体的には、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルー B、ビクトリアブルー R、ビクトリアピュアブルー RO等が挙げられる。これらの化合物は、現像後において、画像部から非画像部を識別するための画像着色剤として作用しうる。
オーバーコート層が着色剤を含有する場合、その含有量は限定されないが、オーバーコート層の乾燥質量中に、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
オーバーコート層は、所望により、画像着色剤、焼き出し剤、塗布用界面活性剤、分散助剤、湿潤剤、殺菌剤、粘度調整剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、等を含有してもよい。塗布用界面活性剤の使用は特に好ましい。
オーバーコート層の好適な組成は、例えば、99質量%の1種又は2種以上の特定ポリマー、0.3質量%の着色剤、0.7質量%の塗布用界面活性剤を、オーバーコート層の全乾燥質量中に含む。
オーバーコート層は、少なくとも特定ポリマーを含むオーバーコート層の構成成分を溶媒に溶かして調製したオーバーコート層塗布液を、ポジ型画像記録層上に、塗布、乾燥することにより形成することができる。塗布溶媒としては、後述するポジ型画像記録層の説明において挙げる溶媒を適宜選択して用いることができる。
オーバーコート層塗布液を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
オーバーコート層の塗布量(固形分)は、乾燥後の塗膜量が、0.05g/m2〜1.0g/m2の範囲が好ましく、0.1g/m2〜0.5g/m2の範囲がより好ましく、0.15g/m2〜0.3g/m2の範囲が更に好ましい。
(ポジ型画像記録層)
本発明の平版印刷版原版は、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂と赤外線吸収剤とを含有する。
<水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂>
ポジ型画像記録層は、不溶性且つアルカリ可溶性樹脂(以下、単に、「アルカリ可溶性樹脂」とも称する。)を含有する。
ポジ型画像記録層は、少なくとも2種の水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂を含有し、該少なくとも2種の水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂による相分離構造を有することが好ましい。
ポジ型画像記録層中に、相分離構造、好ましくは、分散相とマトリックス相とからなる海島構造が形成されるためには、分散相及び分散媒(マトリックス相)となるアルカリ可溶性樹脂が互いに相溶しないことが条件である。本発明の好適な態様においては、この条件を満たすように、少なくとも2種のアルカリ可溶性樹脂が選択される。
以下に、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の好ましい例を記載するが、本発明における好適なアルカリ可溶性樹脂は、上記条件を満たす樹脂であれば特に限定されない。
本発明に用いられる好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、下記一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
前記一般式(II)中、Xは二価の連結基を表し、R31はアルキル基又はアリール基を表す。xは0又は1を表す。
ここで、Xは、アルキレン基、アクリル酸に由来する連結基、メタアクリル酸に由来する連結基、下記一般式(II−2)で表される連結基、又は一般式(II−3)で表される連結基を表すことが好ましい。
一般式(II−2)又は一般式(II−3)において、xはそれぞれ独立に0又は1を表す。一般式(II−3)において、R32、R33は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。
Xがアルキレン基を表すとき、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、さらに炭素数1〜6であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、最も好ましくは−CHR34−CH2−(ここでR34−は、水素原子又は以下にアルキレン基に導入可能な置換基として挙げるものと同様の置換基を表す)である。
このアルキレン基は、置換基を有するものであってもよいが、アルキレン基の2以上の置換基が互いに連結して環構造を形成することはなく、また、このアルキレン基はその構造内に脂肪族環状炭化水素構造を有しない。アルキレン基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基などが挙げられ、これらの置換基はさらに同様の置換基を有するものであってもよい。
R31はアルキル基又はアリール基を表す。
R31がアルキル基を表す場合、アルキル基は、直鎖構造のもの、分岐鎖を有するもの、環構造を有するもののいずれであってもよい。より具体的には、R31がアルキル基を表す場合、アルキル基としては炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜16、最も好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
アルキル基、アリール基は、それぞれ置換基を有しするものであってもよく、また、これらが環構造を有する場合、ヘテロ原子をもつ複素環構造であってもよい、好ましくは、脂環構造又は芳香環構造を有するものが挙げられる。脂環構造を有するものとしては、好ましくは、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はシクロアルキニル基から選択されるものが挙げられる。好ましい脂環式基としては、環を構成する原子数は5又は6が好ましく、特に6員環が好ましい。具体的には、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基から選択されることができ、好ましくはシクロアルキル基であり、シクロペンチル及びシクロヘキシルが好ましい。それらのなかでは、シクロヘキシルが特に好ましい。
R31がアリール基を表す場合、好ましいものはフェニル基である。
R31が置換基を有する場合、導入可能な置換基としては、ヒドロキシ基、さらに置換基を有してもよいアルコキシ基、ヒドロキシアルキルオキシ基及び−SO2NR35R36基(ここでR35及びR36は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子である)などが挙げられる。
また、一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーに他の機能を付加するための置換基を導入する場合、このR31の置換基の部分に導入することができる。そのような官能基としては、放射感受性の原子又は基を含む官能基、ポリマー化合物の熱感受性を増大させる官能基、色素含有基、アクリレート等のエチレン性不飽和二重結合を含む基、支持体へのポリマー化合物の付着性を向上させる基が挙げられる。
一般的には、R31に導入される好ましい置換基は、上述のように、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基及び−SO2NR37R38基であり、特に好ましい置換基はヒドロキシ基及び−SO2NR37R38基である。ここで、R37、R38はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基を表す。
なお、R31がフェニル基を表す場合、導入される置換基は好ましくは4位の位置に置換される。
R31は前記のように1以上の任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、無置換であるか、又は、導入される置換基が一つの場合である。
一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーは、前記構造単位のみで構成されていてもよいが、好ましくは複数の構造単位を有するコポリマーである。複数の構造単位は、一般式(1)で表される互いに異なる構造単位であってもよく、一般式(II)で表される構造単位と他の構造単位との組み合わせであってもよい。
全ポリマー中。一般式(II)で表される構造単位が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーの具体例としては、特開2006−208950号公報の段落番号[0059]に記載される各ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーの重量平均分子量は1,000以上500,000未満であることが好ましく、分子量は好ましくは2,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは100,000以上である。また、分子量は、好ましくは400,000未満、さらに好ましくは300,000未満、より好ましくは200,000未満である。本発明に係るポリマーは前記範囲において分子量は目的に応じて任意に選択することができ、例えば、1,000〜2,500の範囲の分子量のポリマーも、100,000〜500,000の範囲の分子量のポリマーも好適に用いることができる。
このようなポリマーは例えば、特表2002−517786公報に記載の方法で得ることができ、ここに記載のポリマー及びその変性物もまた本発明に係る感光層に好適に用いることができる。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、一般式(II)で表される構造単位を含まない樹脂を用いることができる。そのような樹脂の例としては、フェノール性樹脂が好適に挙げられる。フェノール性樹脂として好ましくは、ノボラック樹脂、キシレノール樹脂、レゾール樹脂等が挙げられ、中でも、ノボラック樹脂、キシレノール樹脂がより好ましく、特に好ましくは、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合及びo−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂、1、2−キシレノール、1、3−キシレノール、1、4−キシレノール、1、5−キシレノール、2、3−キシレノール、2、4−キシレノール樹脂、キシレノール/フェノール混合樹脂、キシレノール/ノボラック混合樹脂、キシレノール/ノボラック/フェノール混合樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述したようなフェノール性樹脂としては、画像形成性の観点から、重量平均分子量が1,500以上、数平均分子量が300以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が3,000〜300,000で、数平均分子量が500〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
また、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、上述したフェノール性樹脂以外にも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有する樹脂についても好適に用いることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(i)〜(v)中、X1、X2は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明に用いうるアルカリ可溶性樹脂としては、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(m1)〜(m12)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体が好ましく、特にm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等の、スルホンアミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体のものが好ましい。また重量平均分子量は2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。また、本発明においてアルカリ可溶性樹脂がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。。
ポジ型画像記録層中には、少なくとも2種の相分離構造を形成しうる樹脂を含有することが好ましい。これらアルカリ可溶性樹脂の総添加量としては、画像記録層の耐久性、後述する光熱変換剤の添加量に起因する感度などを考慮すれば、画像記録層全固形分中、30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がさらに好ましく、特に好ましくは50〜90質量%の範囲である。
−相構成−
本発明におけるポジ型画像記録層は、既述したように、複数種含有されるアルカリ可溶性樹脂の中の少なくとも1種が分散相を形成する構成、即ち、アルカリ溶解性の高い樹脂(海部)とアルカリ溶解性の低い樹脂(島部)とが海島構造を成すような、所謂、相分離構造を形成することが好ましい。このような相分離構造の詳細は、例えば、特開平11−44956号公報に記載されている通りである。
相分離構造(海島構造)は、上記したアルカリ可溶性樹脂の中から、互いに相溶しない樹脂を少なくとも2種類選択しこれらを組合せて使用することにより形成することができ、この場合において、分散相を構成するアルカリ可溶性樹脂と、分散媒を構成するアルカリ可溶性樹脂との好ましいブレンド比は、海島構造の形成性の観点から、1:99〜99:1であり、より好ましいブレンド比は5:95〜95:5である。
前記のアルカリ可溶性樹脂のうち、海島構造を形成しうる2種のアルカリ可溶性樹脂の代表的な組み合わせとしては、例えば、ノボラック樹脂とアセタールポリマー、ノボラック樹脂とマレイミドポリマー、ノボラック樹脂とアクリルポリマーなどを挙げることができる。
<赤外線吸収剤>
ポジ型画像記録層が含有する赤外線吸収剤は、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域を有し、この範囲の波長域の光により、光/熱変換能を発現する物質を指す。具体的には、上記波長域の光を吸収し熱を発生する種々の染料または顔料を用いることができる。
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレ−ト錯体、オキソノ−ル染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリ−ルベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノ−ル染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレ−ト錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の画像形成材料で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
上記式中、Xa-は、後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリ−ル基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、但し、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェ−トイオン、及びアリ−ルスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Na+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリ−ル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリ−ル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za-は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリ−ル基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成してもよく、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリ−ル基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc-は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリ−ル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
本発明において、好適に用いることのできる、一般式(b)〜(e)で示される染料の具体例としては、例えば、特開2006−208950号公報の段落番号[0099]〜[0114]に例示されるもの等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
前記顔料としては、市販の顔料またはカラ−インデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、ポリマ−結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレ−キ顔料、縮合アゾ顔料、キレ−トアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレ−キ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カ−ボンブラックを用いることができる。
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コ−トする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネ−ト)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は、分散物の塗布液中での安定性、及び、画像記録層の均一性の観点から、0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナ−製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライタ−、パ−ルミル、ス−パ−ミル、ボ−ルミル、インペラ−、デスパ−ザ−、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロ−ルミル、加圧ニ−ダ−等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
赤外線吸収剤は、感度と、画像記録層の均一性や耐久性とのバランスの観点から、画像記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%含有されることが好ましい。染料の場合、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合である。
<その他の成分>
ポジ型画像記録層中には、前記成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。
そのような添加剤としては、例えば、画像記録層の溶解性を調節するために、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することが好ましく、中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩及び4級アンモニウム塩が特に好ましい。特に、ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。また4級アンモニウム塩としては、特開2002−229186号公報に記載[化23][化24]中の(1)〜(10)に示される4級アンモニウム塩が好ましい。
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくは記録層の全固形分に対し1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
また、本発明における画像記録層に使用される添加剤としては、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および可塑剤も、本発明におけるポジ型画像記録層に使用することができる。
環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4',4"−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4',3",4"−テトラヒドロキシ−3,5,3',5'−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類、及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、画像記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
更に、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられてもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
また、ポジ型画像記録層には、必要に応じ、特開2006−208950号公報の段落番号[0011]〜[0027]に記載される特定のアミノ化合物を添加することもできる。
(塗布溶剤及び塗布方法)
ポジ型画像記録層は、画像記録層塗布液を構成する各成分を溶媒に溶かし、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。また、目的に応じて、後述する、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
ポジ画像記録層の塗布量(固形分)は、乾燥後の塗膜量が、0.2g/m2〜3.0g/m2の範囲であることが好ましく、0.5g/m2〜2.5g/m2の範囲がより好ましく、0.7g/m〜1.8g/mの範囲が更に好ましい。
画像記録層塗布液を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフイルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフイルム等が挙げられる。
本発明に適用し得る支持体としては、ポリエステルフイルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組合せた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
(下塗層)
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、ポジ型画像記録層とオーバーコート層とこの順に有するものであるが、必要に応じて支持体とポジ型画像記録層との間に下塗層を設けることができる。この下塗層を設けることで、支持体と記録層との間の下塗層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この下塗層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が下塗層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの下塗層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この下塗層は有用であると考えられる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
さらに、下記式で示される構造単位を有する有機高分子化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む下塗層も好ましい。
R11は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、−OR14、−COOR15、−CONHR16、−COR17若しくは−CNを表すか、又はR12及びR13が結合して環を形成してもよく、R14〜R17はそれぞれ独立してアルキル基又はアリール基を表し、Xは水素原子、金属原子、NR18R19R20R21を表し、R18〜R21はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基若しくは置換アリール基を表すか、又はR18及びR19が結合して環を形成してもよく、mは1〜3の整数を表す。
また、本発明における好適な下塗層成分として、特開2000−241962号公報に記載の酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を挙げることができる。具体的には、酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。酸基として好ましいのは酸解離指数(pKa)が7以上の酸基であり、より好ましくは−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO3H2、―OPO3H2、―CONHSO2―、またはーSO2NHSO2−であり、特に好ましくは−COOHである。酸基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、上記酸基を有するスチレンなどが挙げられる。オニウム塩として好ましいのは、周期表V族あるいは第VI族の原子からなるオニウム基であり、より好ましくは窒素原子、リン原子あるいは硫黄原子から成るオニウム塩であり、特に好ましくは窒素原子から成るオニウム塩である。オニウム塩を有するモノマーの具体例としては、側鎖にアンモニウム基を有するメタクリレート、メタクリルアミド、第4級アンモニウム基などのオニウム基を含む置換基などのオニウム基を含む置換基を有するスチレン等が挙げられる。
さらに、特開2000−108538号公報、特願2002−257484号公報、特願2003−78699号公報、等に記載されているような化合物についても、必要に応じて用いることができる。
これらの下塗層は、次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像形成材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと充分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
本発明の平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。以下、本発明の平版印刷版原版に適用しうる画像記録方法について説明する。
本発明の平版印刷版原版は、熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましく、記録材料に照射されるエネルギーは10〜500mJ/cm2であることが好ましい。
本発明に適用することのできる現像液は、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像液である。現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記のアルカリ水溶液の内、本発明による効果が発揮される現像液は、一つは塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、所謂「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液で、もう一つのより好ましい現像液は、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」である。
前者においては、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能であり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4質量%であり、かつ該現像液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有している、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液が好適に用いられる。
また、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」が、本発明の平版印刷版材料の現像に適用するのには一層好ましい。この現像液を用いて、平版印刷版原版の現像処理を行うと、記録層の表面を劣化させることがなく、かつ記録層の着肉性を良好な状態に維持することができる。また、平版印刷版原版は、一般には現像ラチチュードが狭く、現像液pHによる画線幅等の変化が大きいが、ノンシリケート現像液にはpHの変動を抑える緩衝性を有する非還元糖が含まれているため、シリケートを含む現像処理液を用いた場合に比べて有利である。更に、非還元糖は、シリケートに比べて液活性度を制御するための電導度センサーやpHセンサー等を汚染し難いため、この点でも、ノンシリケート現像液は有利である。また、ディスクリミネーション向上効果が顕著である。これは、本発明において重要な現像液との接触(浸透)がマイルドとなり、露光部及び未露光部の差が出やすくなっているためと推定される。
前記非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明において好適に用いることができる。なお、本発明においては、特開平8−305039号公報に記載された非還元糖を好適に使用することができる。
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。更に、二糖類のマルトースに水素添加したマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等が好適に挙げられる。これらの非還元糖の中でも、トレハロース型少糖類、糖アルコールが好ましく、その中でも、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめ、等が適度なpH領域に緩衝作用があり、低価格である点で好ましい。
これらの非還元糖は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。前記非還元糖の前記ノンシリケート現像液中における含有量としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると十分な緩衝作用が得られなくなる傾向があり、30質量%を越えると高濃縮化し難く、また原価も高くなる傾向がある。
また、前記非還元糖と組み合わせて用いられる塩基としては、従来より公知のアルカリ剤、例えば、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤等が挙げられる。無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等が挙げられる。
有機アルカリ剤としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
前記塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの塩基の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。また、本発明においては、前記ノンシリケート現像液として、非還元糖と塩基との併用に代えて、非還元糖のアルカリ金属塩を主成分としたものを用いることもできる。
また、前記ノンシリケート現像液に、前記非還元糖以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を併用することができる。前記弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましく、例えば、Pergmon Press 社発行のIonization Constants of Organic Acidsin Aqueous Solution 等に記載されているものから選択できる。
具体的には、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノ−ル−1、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール等のアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(、ピリジン−4−アルデヒド(等のアルデヒド類、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、カテコール、没食子酸、スルホサリチル酸、3,4−ジヒドロキシスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール、o−、m−,p−クレゾール、レゾルソノール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトキシム、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム、ジメチルグリオキシム、エタンジアミドジオキシム、アセトフェノンオキシム等のオキシム類、アデノシン、イノシン、グアニン、シトシン、ヒポキサンチン、キサンチン等の核酸関連物質、その他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸、ベンズイミダゾール、バルビツル酸等が好適に挙げられる。
現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散または、印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。前記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が好ましい。更に、前記現像液及び補充液には、必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤等を加えることができる。
現像処理後の平版印刷版原版における表面(画像記録面)は、ブラシ等を用いて擦過処理をしてもよい。
現像液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版原版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。
平版印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
この場合に用いうる好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明のに係る印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フイルムのフイルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。