JP2009183387A - 潤滑性表面を有する医療用具およびその製造方法 - Google Patents

潤滑性表面を有する医療用具およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
治療用ガイドワイヤーなどの製造においては、これまで、コーティング樹脂層の膜厚をできるだけ薄くするための各種方法が検討されてきたが、潤滑耐久性の確保が困難であった。本発明は親水性化合物を金属基材に対して直接にコーティングする新しい製造方法を開発することで、新しい機能を有する潤滑耐久性に優れた医療用具を実現する。
【解決手段】
医療用具を構成する金属基材の表面に、金属と反応性しうる官能基を有する硫黄含有化合物を反応させて金属表面に官能基を導入し、親水性化合物を金属表面に化学的に固定化して存在させることによって、本発明の目的が達成される。
【選択図】なし

Description

本発明は耐久性に優れた湿潤時潤滑性を有する医療用具およびその製造方法を提供するものであり、ガイドワイヤーなどの金属製医療用具の表面の機能化に有用な発明である。
医療分野において、気管、消化管、尿管、血管、その他の体腔、又は、組織に挿入されるカテーテル、イントロデューサーおよびこれらに挿入されるガイドワイヤーなどの医療用具は、挿入時に目的部位にアクセスするための操作性を向上し、血管内壁や粘膜などへの組織損傷を最小限にするためには、潤滑性を有する表面が必要である。その目的のために、基材表面に親水性化合物をコートして、湿潤時における潤滑性を向上している。
ガイドワイヤーの基材としてはステンレス鋼、ニッケル/チタン系合金などの金属材料が好ましく使用されている。
しかしながら、これらの金属製基材に対して、親水性化合物を直接にコーティングした場合は、親水性化合物が簡単に剥離、脱落するという大きな問題が発生し、実用価値の無いものとなる。最近になって、これらの問題を解決するために、分子内に少なくとも1個の金属に化学吸着しうる官能基と少なくとも1の個の反応性官能基を有する接着性有機化合物をプライマーとして、ガイドワイヤーの金属表面に親水性ポリマーを被膜する方法が開示されているが(特許文献1)、これらの方法においても、手で軽くこするなどごくわずかな応力がかかっても親水性ポリマーが金属表面からから容易に剥離・脱離することから、実用的な性能は全く得られていないのが実情である。
特開2007−267757
本発明の目的は、ガイドワイヤーなどの金属製基材に対して、特定の親水性化合物を化学的に固定化することで、耐久性に優れた潤滑性を有する各種医療用具を提供することにある。さらに、治療用ガイドワイヤーの場合、基材として用いられる金属芯材の直径は検査用ガイドワイヤーのそれに比べて細いことから、基材に対するコーティング樹脂層の膜厚をできるだけ薄くする必要があり、本発明はこれらの課題に対する技術もあわせて解決することを目的とする。
本発明者は鋭意検討した結果、上記目的は、下記(1)から(8)の本発明により達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具であって、該医療用具を構成する金属表面を硫黄含有化合物で処理した後、さらに、その表面に親水性化合物と架橋剤を反応させて固定化していることを特徴とする医療用具
(2)該医療用具を構成する金属の表面を塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などから選ばれる還元性の酸で処理した後、該硫黄含有化合物で処理することを特徴とする(1)に記載の医療用具
(3)該硫黄含有化合物が金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以上有する化合物であることを特徴とする(1)ないし(2)に記載の医療用具
(4)該硫黄含有化合物が金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以上有し、かつ該親水性化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有する化合物であることを特徴とする(1)ないし(3)に記載の医療用具
(5) 該親水性化合物が分子内に該硫黄含有化合物と反応しうる官能基を有することを特徴とする(1)ないし(4)に記載の医療用具
(6)該親水性化合物が分子内に該硫黄含有化合物と反応しうる官能基および架橋剤と反応して架橋構造を形成しうる官能基を有することを特徴とする(1)ないし(5)に記載の医療用具
(7)親水性化合物は架橋構造を有する無水マレイン酸共重合体あるいはその変性物であることを特徴とする(1)ないし(6)に記載の医療用具
(8)該医療用具を構成する金属基材の表面を、
1)塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などから選ばれる還元性酸の溶液で処理した後、
2)分子内に、金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以上有し、かつ、親水性化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有する硫黄含有化合物で処理し、洗浄・乾燥した後、
3)分子内に、硫黄含有化合物と反応しうる官能基および架橋構造を形成しうる官能基を有する親水性化合物と架橋剤の混合溶液をコートし、乾燥・加熱した後、
4)アルカリ処理することによる
潤滑性表面を有する医療用具の製造方法
本発明の目的は、金属基材への親水性化合物の直接コーティングによって高度な潤滑耐久性を付与しうる技術を開発すると共に、新しい機能を有するガイドワイヤーなどの医療用具を提供することにある。この目的は、ガイドワイヤーなどの金属基材の表面を塩酸、硫酸、リン酸などの還元性の酸で処理し、さらに硫黄含有化合物を反応させた後、その表面に親水性化合物を化学的に固定化することによって達成されることを見出した。本発明に係るガイドワイヤーなどの医療用具は湿潤時において、摩擦係数が低く優れた潤滑性を有することから、実使用時における操作性に優れ、長期にわたり製品性能が変化することの無い潤滑耐久性に優れた医療用具が実現できる。
さらに、従来のガイドワイヤーのようにポリウレタン樹脂あるいはポリアミド樹脂などの押出しチューブ(数十μ〜数百μの膜厚)に金属を挿入して中間コート層を形成すること無く、金属基材に対して親水性化合物を直接コーティングすることで、コーティング層の薄膜化が可能となり、ガイドワイヤーなど医療用具の機能化・高性能化とともに広範な用途への展開が期待でき、特に、潤滑性と潤滑耐久性に優れた治療用ガイドワイヤーなどの製造も可能となった。
本発明は医療用具を構成する金属基材の表面に、親水性化合物と反応性を有する官能基を含有し、かつ金属とも反応性を有する硫黄含有化合物を反応させ、金属と硫黄原子の結合を形成した後、さらにその表面に導入された反応性官能基に親水性化合物を化学的に固定化することによって、湿潤時に高度な潤滑性を有し、かつ潤滑耐久性に優れた医療用具を実現したものである。
本発明の医療用具を構成する金属基材としてはステンレス鋼、ニッケル/チタン系合金などの金属材料が好適に用いられる。
本発明において、金属基材の表面に親水性化合物を化学的に固定するために用いられる硫黄含有化合物としては、金属と硫黄原子の結合を形成しうる官能基を有し、かつ、該親水性化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有する化合物が好ましく用いられる。
本発明の硫黄化合物は、一般式(X)n−R−(Y)mで表される化合物であって、式中、Xは金属と反応性を有する硫黄原子を含有する官能基であり、Yは親水性化合物と反応性を有する官能基である。nおよびmはそれぞれ1〜10までの整数であり、Rは有機残基である。Xとしては、チオール基、スルフィド基、ポリスルフィド基、スルホキシド基、チオケトン基、チオアルデヒド基、チオアセタール基、チオカルボキシル基、チオリン酸基、チオ炭酸基、チイラン基およびチオラン基などの群から選ばれる硫黄含有官能基を少なくとも1つ以上含むものである。また、Yとしては、チオール基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、アルコキシシラン基、シラノール基、カルボキシル基、アクリル基、エポキシ基、酸無水物基などの群から選ばれる官能基を少なくとも1つ以上含むものであるが、X、Yともにこれらに限定されるものではなく、本発明における金属と硫黄化合物間の化学的な結合の形成、硫黄化合物と親水性化合物間の化学的な結合の形成が達成できる官能基を有する化合物であれば用いることができる。
具体的な化合物としては、まず、各種トリアジンチオール誘導体、各種ピリミジンチオール誘導体が挙げられる。例えば、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノナトリウム塩、2,4−ジメルカプト1,3−ピリミジン基含有誘導体、などが挙げられる。これらの化合物は「チオール型」でも「チオン型」であっても良い。チオール基を有する化合物は保存安定性に問題があるが、これらの化合物は「チオール型」と「チオン型」の互変異性体があるため保存安定性に優れる。他に、テトラメルカプトビフェニル、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネートなどの4個のチオールを有する化合物やシステイン、チオグリセロール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのチオール基およびそれ以外の他の官能基を有する化合物、さらに、4−アミノフエニルジスルフィド、α−リポ酸、シスチン、などのジスルフィド基およびそれ以外の他の官能基を有する化合物などが挙げられる。
また、ステンレス鋼、ニッケル/チタン合金などの金属の表面を硫黄含有化合物で処理する前に、塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などの還元性の酸で処理することによって本発明の効果をさらに向上させることができる。特に、塩酸、硫酸、リン酸などの酸が好ましく用いられる。還元性の酸で金属表面を処理することにより、潤滑耐久性がさらに向上するが、その理由として、金属表面の酸化物が除去されることによって、金属と硫黄含有化合物との反応性が向上したのではないかと考えられる。
また、本発明で用いられる親水性化合物は分子内に該硫黄含有化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有することを特徴とする。該硫黄含有化合物に反応しうる親水性高分子としては酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基などの官能基を有する化合物が採用しうる。
なお、硫黄化合物を金属表面に反応することで金属表面に導入された官能基をさらに他の化合物を反応させることで異なる種類の官能基に変換した後、親水性化合物を反応させても良い。
本発明における親水性化合物としては、各種無水マレイン酸共重合体、特に、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体あるいはその変性物、ヒアルロン酸、および水酸基、カルボキシル基、グリシジル基などの官能基を有するアクリル系モノマーを共重合した各種アクリル系ポリマー、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、などが好適に使用されうるが、なんらこれらに限定されるものではない。
本発明において最も好ましい親水性化合物としては、前記の方法で金属表面に導入された官能基と化学的に結合しうる官能基を分子内に有し、さらに、架橋剤を添加することで、親水性化合物の官能基と反応して架橋構造を生成することができる各種無水マレイン酸共重合体、特に、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体あるいはその変性物が挙げられる。特に、これらの酸無水物環を有する親水性高分子については該硫黄化合物を介して金属表面に対して化学的に固定化するとともに、架橋剤を用いて適量の架橋を導入することが可能なことから、非常に優れた潤滑耐久性を有する各種医療用具の製造が可能となる。また、人体に対する安全性も十分に確認されていることから、特に好ましく用いられる。
また、本発明の架橋剤としては、ジオール、ポリオール、ポリエチレングリコール、ジチオール、チオグリセロール、アミノアルコール、ジアミン、ポリアミン、など酸無水物環と反応性を有し、2つ以上の官能基を有する化合物が好ましく用いられる。
親水性化合物に対する架橋剤の配合割合は重量比で、親水性化合物100部に対して架橋剤0.03〜3.0部の範囲である。特に好ましい範囲は0.05〜1部である。この範囲を外れると、潤滑性および潤滑耐久性が劣る。
これらの親水性化合物と架橋剤を上記の配合組成で混合した溶液を作成し、この溶液に浸漬する方法、溶液を塗布する方法、溶液を噴霧する方法など、従来から一般に採用されている方法を用いることができる。
上記のコーティング溶液に用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、エタノール、メタノールなどのアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、あるいはそれらの混合溶剤、など汎用的な有機溶剤が使用しうる。これらの溶剤に、0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%の濃度に溶解してコーティング溶液を調製する。
上記のコーティング溶液に浸漬した後、乾燥し、引き続き、60〜130℃の温度で10〜300分の加熱処理を行う。この処理によって、親水性化合物に架橋構造が導入され、潤滑耐久性が顕著に向上する。
さらに、アルカリ溶液に浸漬し、親水性化合物のカルボキシル基をアルカリ塩にすることで、潤滑性、および潤滑耐久性の優れた医療用具の製造が可能となる。このアルカリ処理に用いられるアルカリとしては、上記カルボキシル基をアルカリ塩へ変換する目的を達成できるアルカリであれば使用可能であるが、潤滑耐久性の点から、特に、アルカリ金属アルコキサイドのアルコール溶液で処理するのが最も良い結果を与える。
アルカリ処理後、エタノール、水などで十分洗浄を行い、アルカリを完全に除去することが好ましい。
以下に本発明に係る具体的な実施例および比較例について、より詳しく説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(親水性化合物の合成)
メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体<IPS社製GANTREZ−AN169>10 gを200 mlのエチルアルコールに溶解し,1時間エチルアルコール加熱還流下にエステル化反応を行なった。反応溶液を1000mlのヘキサン中へ滴下して,反応性生物を再沈殿させた。反応性生物を濾別して,室温にて24時間減圧乾燥して固体状のメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体の部分エステル化物(以下PHEと称す)を得た。赤外吸収スペクトルの測定から,酸無水物環が残存していることを確認した。
このPHEをアセトン溶液に8重量%濃度に調整し,コーティング溶液<1>とした。
(コーティング溶液の調整)
コーティング溶液<1>に架橋剤としてPEG200をPHEに対して0.15重量%となるように添加し,コーティング溶液<2>とした。
<実施例1>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄し、乾燥した。さらに、70℃の10%塩酸水溶液に5分間浸漬した後、水で十分に洗浄した。引き続き、窒素気流下、トリアジンチオールモノナトリウム塩の0.2 %水溶液で10分間処理した後、アセトンで十分に洗浄を行い、室温で数時間放置して乾燥した。このようにして得られた金属の表面をXPSで分析した結果、硫黄、窒素の存在が認められ、トリアジンチオールが金属表面に反応固定されていることを確認した。この基材を上記に調製したコーティング溶液<2>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<2>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と金属基材表面に導入されたチオール基および架橋剤との反応を行ない,潤滑剤を基材表面に化学的に固定化した。その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。上記方法にて得られたワイヤーは水の中において優れた潤滑性を示した。また,このワイヤーを水の中において手で扱くことにより,潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが350回まで潤滑性を維持し,潤滑耐久性に優れることが確認された。
<実施例2>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄し、乾燥した。さらに、70℃の10%塩酸水溶液に5分間浸漬した後、水で十分に洗浄した。引き続き、窒素気流下、トリアジンチオール(チオシアヌル酸)の0.4%デカリン溶液(分散液)中で、170℃で10分間処理した後、アセトンで十分に洗浄を行い、室温で数時間放置して乾燥した。このようにして得られた金属の表面をXPSで分析した結果、硫黄、窒素の存在が認められ、トリアジンチオールが金属表面に反応固定されていることを確認した。この基材を上記に調製したコーティング溶液<2>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<2>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と金属基材表面に導入されたチオール基および架橋剤との反応を行ない,潤滑剤を基材表面に化学的に固定化した。その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。上記方法にて得られたワイヤーは水の中において優れた潤滑性を示した。また,このワイヤーを水の中において手で扱くことにより,潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが250回まで潤滑性を維持し,潤滑耐久性に優れることが確認された。
<比較例1>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄後、この金属基材をそのまま上記に調製したコーティング溶液<2>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<2>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と架橋剤との反応を行ない,その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。このワイヤーを水の中において手で扱くことにより,潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが30回で潤滑性を消失し,潤滑耐久性が著しく劣っていた。
<比較例2>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄し、乾燥した。さらに、70℃の10%塩酸水溶液に5分間浸漬した後、水で十分に洗浄し、乾燥した。この金属基材をそのまま上記に調製したコーティング溶液<2>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<2>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と架橋剤との反応を行ない,その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。このワイヤーを水の中において手で扱くことにより,潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが40回で潤滑性を消失し,潤滑耐久性が著しく劣っていた。
<比較例3>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄し、乾燥した。塩酸で処理することなく、引き続き、窒素気流下、トリアジンチオール(チオシアヌル酸)の0.4%デカリン溶液(分散液)中で、170℃で10分間処理した後、アセトンで十分に洗浄を行い、70℃で2時間乾燥した。この基材を上記に調製したコーティング溶液<2>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<2>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と金属基材表面に導入されたチオール基および架橋剤との反応を行ない,潤滑剤を化学結合により基材表面に化学的に固定化した。その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。このワイヤーを水の中において手で扱くことにより、潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが80回で潤滑性を消失し、潤滑性耐久性が劣るものであった。
<比較例4>
直径0.4 mmのSUS316製ワイヤーをアセトン中において超音波洗浄し、乾燥した。さらに、70℃の10%塩酸水溶液に5分間浸漬した後、水で十分に洗浄した。引き続き、窒素気流下、トリアジンチオール(チオシアヌル酸)の0.4%デカリン溶液(分散液)中で、170℃で10分間処理した後、アセトンで十分に洗浄を行い、室温で数時間放置して乾燥した。この基材を上記に調製したコーティング溶液<1>に浸漬することによって基材表面にコーティング溶液<1>を塗布し,風乾後,80℃で2時間間乾燥を行なった。さらに,125℃2時間の熱処理によって,PHE分子中の酸無水物基と金属基材表面に導入されたチオール基との反応を行ない,潤滑剤を基材表面に化学的に固定化した。その後,5重量%のナトリウムエトキシドのエチルアルコール溶液中に浸漬し,室温で3分間処理した。さらに,水洗を十分に行い,70℃30分乾燥した。このワイヤーを水の中において手で扱くことにより,潤滑性が消失するまでの手扱きの回数を測定したが10回で潤滑性を消失し滑耐久性が著しく劣るものであった。
本発明により得られる技術によって、耐久性に優れた潤滑性を有するガイドワイヤーなど医療用具を提供することが可能になった。特に、これまで金属への親水性化合物の直接コーティングでは潤滑耐久性の確保が困難であったが、本発明に係る薄膜コーティング技術によって、新しい機能を有する医療用具などへの展開を含めた幅広い応用が期待できる。

Claims (8)

  1. 湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具であって、該医療用具を構成する金属表面を硫黄含有化合物で処理した後、さらに、その表面に親水性化合物と架橋剤を反応させて固定化していることを特徴とする医療用具
  2. 該医療用具を構成する金属の表面を塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などから選ばれる還元性の酸で処理した後、該硫黄含有化合物で処理することを特徴とする請求項1に記載の医療用具
  3. 該硫黄含有化合物が金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以 上有する化合物であることを特徴とする請求項1ないし2に記載の医療用具
  4. 該硫黄含有化合物が金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以上有し、かつ該親水性化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有する化合物であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の医療用具
  5. 該親水性化合物が分子内に該硫黄含有化合物と反応しうる官能基を有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の医療用具
  6. 該親水性化合物が分子内に該硫黄含有化合物と反応しうる官能基および架橋剤と反応しうる官能基を有することを特徴とする請求項1ないし5に記載の医療用具
  7. 該親水性化合物が架橋構造を有する無水マレイン酸共重合体あるいはその変性物であることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の医療用具
  8. 該医療用具を構成する金属基材の表面を、
    (1)塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などから選ばれる還元性酸の溶液で処理した後、
    (2)分子内に、金属と硫黄原子との結合を形成しうる官能基を少なくとも1つ以上有し、かつ、親水性化合物と反応しうる官能基を少なくとも1つ以上有する硫黄含有化合物で処理し、洗浄・乾燥した後、
    (3)分子内に、硫黄含有化合物と反応しうる官能基および架橋構造を形成しうる官能基を有する親水性化合物と架橋剤の混合溶液をコートし、乾燥・加熱した後、
    (4)アルカリ処理することによる
    潤滑性表面を有する医療用具の製造方法
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JP2017113506A (ja) * 2015-12-25 2017-06-29 株式会社 ティーアールエス 潤滑性表面を有する医療用具の製造方法

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