JP2009182311A - 積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents

積層型圧電素子及びその製造方法 Download PDF

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Shigeru Kadotani
成 門谷
Akio Iwase
昭夫 岩瀬
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章 藤井
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Abstract

【課題】耐久性及び信頼性に優れた構造を有する積層型圧電素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】積層型圧電素子1は、圧電セラミック層11と内部電極層20とを交互に積層してなるセラミック積層体10と、セラミック積層体10の側面101、102に設けられた一対の外部電極33とを有する。セラミック積層体10は、積層方向に透視した場合に、すべての内部電極層20が重合する領域である駆動部108と、少なくとも一部の内部電極層20しか重合しない領域である非駆動部109とを有する。内部電極層20は、駆動部108に存在する駆動内部電極部21と、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22とを有する。非駆動内部電極部22は、その内部に空隙よりなるスリット部29を有し、スリット部29を介した二重構造を呈しており、かつ、スリット部29は、セラミック積層体10の外周面103に露出するように形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、圧電アクチュエータ等に適用される積層型圧電素子及びその製造方法に関する。
近年、自動車の燃費、排気ガス等の対策の面から、積層型圧電素子を用いた自動車の燃料噴射用インジェクタの開発が進められている。
積層型圧電素子は、例えば、圧電材料よりなる圧電セラミック層と導電性を有する内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と、該セラミック積層体の側面に設けられ、内部電極層に順次交互に導通される一対の外部電極とを有するものがある。そして、内部電極層間に電圧を印加することにより、圧電セラミック層に変位(圧電変位)が生じて駆動するように構成されている。
上記積層型圧電素子には、セラミック積層体の外周面における電気的な絶縁性を高めるために、内部電極層の外周端部の一部をセラミック積層体の内方に控えた電極控え構造(部分電極構造)を有するものがある。
電極控え構造を有する積層型圧電素子には、セラミック積層体の積層方向に透視した場合に、すべての内部電極層が重合する領域である駆動部と、少なくとも一部の内部電極層しか重合しない、あるいは全く重合しない領域である非駆動部とが存在する。つまり、圧電変位が生じて駆動する駆動部と、圧電変位が生じず駆動しない非駆動部とが存在する。そのため、非駆動部には、圧電変位に応じて応力(歪み)が集中的に生じ、セラミック積層体内部にクラック等が発生するおそれがある。また、これによって絶縁破壊等の不具合が生じるおそれがある。
上記問題を解決するために、特許文献1では、非駆動部において空隙よりなる応力緩和部を内部電極層に沿って設けた積層型圧電素子が開示されている。
また、特許文献2では、電極層内又は電極層とピエゾセラミック層(圧電セラミック層)との界面に亀裂を形成することによって応力を緩和する圧電素子が開示されている。
特開2005−223013号公報 特表2006−517729号公報
しかしながら、上記特許文献1に示される積層型圧電素子では、駆動させることによって応力緩和部に静電気が溜まり、充放電が繰り返される。そのため、長期間使用すると圧電セラミック層に静電破壊が生じ、圧電素子としての性能が低下してしまう。
また、上記特許文献2に示される圧電素子では、亀裂が内部に進行し、繰り返しの駆動によって電極層が押し潰されたり、ピエゾエレメント(セラミック積層体)が座屈したりする。そのため、耐久性及び信頼性が低下するという問題が生じる。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性及び信頼性に優れた構造を有する積層型圧電素子及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、圧電材料よりなる圧電セラミック層と導電性を有する内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と、該セラミック積層体の外周面に形成した一対の側面にそれぞれ設けられ、上記内部電極層に順次交互に導通される一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において、
上記セラミック積層体は、積層方向に透視した場合に、すべての上記内部電極層が重合する領域である駆動部と、少なくとも一部の上記内部電極層しか重合しない、あるいは全く重合しない領域である非駆動部とを有しており、
上記内部電極層は、上記駆動部に存在する駆動内部電極部と、上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部とを有しており、
該非駆動内部電極部は、その内部に空隙よりなるスリット部を有し、該スリット部を介した二重構造を呈しており、かつ、上記スリット部は、上記セラミック積層体の外周面に露出するように形成されていることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項1)。
本発明の積層型圧電素子において、上記セラミック積層体は、上記駆動部と上記非駆動部とを有する。そして、上記内部電極層のうち、上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部は、その内部に空隙よりなるスリット部を有する。
すなわち、本発明では、上記内部電極層間に電圧を印加した際に圧電変位が起こらず駆動しない部分である上記非駆動部に、空隙よりなる上記スリット部が設けられている。そのため、圧電変位に応じて上記非駆動部に集中的に作用する応力を上記スリット部によって緩和することができる。これにより、上記圧電セラミック層におけるクラックの発生等の不具合を抑制することができる。
また、上記スリット部は、上記非駆動部に存在する上記非駆動内部電極部に設けられている。そのため、圧電変位によって駆動する上記駆動部には、上記スリット部を設けたことによる影響がほとんど及ばない。これにより、長期間の使用においても、圧電素子としての性能を維持することができる。
また、上記スリット部は、上記非駆動内部電極部の内部に設けられている。そのため、上記スリット部への静電気の帯電及び放電を防止することができる。これにより、上記圧電セラミック層の静電破壊を抑制することができる。
よって、本発明の積層型圧電素子は、上記スリット部を上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の内部に設けたことにより、長期間の使用においても性能を維持することができる、優れた耐久性及び信頼性を有するものとなる。
第2の発明は、圧電材料よりなる圧電セラミック層と導電性を有する内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と、該セラミック積層体の外周面に形成した一対の側面にそれぞれ設けられ、上記内部電極層に順次交互に導通される一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において、
上記セラミック積層体は、積層方向に透視した場合に、すべての上記内部電極層が重合する領域である駆動部と、少なくとも一部の上記内部電極層しか重合しない、あるいは全く重合しない領域である非駆動部とを有しており、
上記内部電極層は、上記駆動部に存在する駆動内部電極部と上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部とを有しており、
該非駆動内部電極部は、その少なくとも一部に上記駆動内部電極部を構成する材料よりも外部応力によってクラックが入り易い材料からなるクラック形成部を有し、上記積層型圧電素子の駆動によって上記クラック形成部の内部に平面方向にクラックが形成されるよう構成されていることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項5)。
本発明の積層型圧電素子において、上記セラミック積層体は、上記駆動部と上記非駆動部とを有する。そして、上記内部電極層のうち、上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部は、その少なくとも一部に上記駆動内部電極部を構成する材料よりも外部応力によってクラックが入り易い材料からなるクラック形成部を有する。また、上記非駆動内部電極部は、上記積層型圧電素子の駆動によって上記クラック形成部の内部に平面方向にクラックが形成されるよう構成されている。
すなわち、本発明では、上記内部電極層間に電圧を印加した際に圧電変位が起こらず駆動しない部分である上記非駆動部に、クラックが形成されるようにしている。そのため、圧電変位に応じて上記非駆動部に集中的に作用する応力を上記クラックの存在によって剥離した面と面との間の空隙によって緩和することができる。これにより、上記圧電セラミック層におけるクラックの発生等の不具合を抑制することができる。
また、上記クラック形成部は、上記内部電極層のうち、上記非駆動部に存在する上記非駆動内部電極部のみに設けられており、上記駆動部に存在する上記駆動内部電極部を構成する材料よりもクラックが入り易い材料からなる。そのため、上記非駆動内部電極部のみにクラックを形成させ、そのクラックが上記駆動内部電極部に進行することを抑制することができる。これにより、上記駆動内部駆動部へクラックが進行し、圧電変位による繰り返しの駆動によって上記内部電極層が押し潰されたり、それに伴って上記セラミック積層体が座屈したりする等の不具合を抑制することができる。
また、上記クラックは、上記非駆動内部電極部の上記クラック形成部の内部に形成される。そのため、上記クラックに存在する微小空間への静電気の帯電及び放電を防止することができる。これにより、上記圧電セラミック層の静電破壊を抑制することができる。
よって、本発明の積層型圧電素子は、上記クラック形成部を上記内部電極層の上記非駆動内部電極部に設け、上記クラック形成部の内部にクラックを形成させることにより、長期間の使用においても性能を維持することができる、優れた耐久性及び信頼性を有するものとなる。
第3の発明は、上記第1の発明の積層型圧電素子を製造する方法において、
上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記圧電セラミック層となるグリーンシートを作製するシート作製工程と、
上記グリーンシートに対して、上記内部電極層となる部分に内部電極材料を配設すると共に、上記スリット部を形成する部分に焼成により焼失する焼失材料からなるスリット形成用材料を配設する材料配設工程と、
上記内部電極材料及び上記スリット形成用材料を配設した上記グリーンシートを積層して中間積層体を作製する積層体作製工程と、
上記中間積層体を焼成し、上記スリット形成用材料を焼失させることによって上記スリット部を形成した上記セラミック積層体を作製する焼成工程とを有することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項9)。
本発明の積層型圧電素子の製造方法において、上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記のごとく、シート作製工程、材料配設工程、積層体作製工程及び焼成工程を行う。そして、上記材料配設工程においては、上記スリット部を形成する部分に上記スリット形成用材料を配設し、上記焼成工程においては、上記中間積層体を焼成し、上記スリット形成用材料を焼失させ、該スリット形成用材料が焼失した場所に空隙よりなる上記スリット部を形成する。
これにより、上記セラミック積層体の所望の位置に上記スリット部を精度良く設けることができる。すなわち、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の内部に上記スリット部を精度良く設けることができる。
よって、本発明の製造方法によれば、上記スリット部を設けた、耐久性及び信頼性に優れた構造を有する上記第1の発明の積層型圧電素子を容易に得ることができる。
第4の発明は、上記第2の発明の積層型圧電素子を製造する方法において、
上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記圧電セラミック層となるグリーンシートを作製するシート作製工程と、
上記グリーンシートに対して、上記内部電極層となる部分に内部電極材料を配設する材料配設工程と、
上記内部電極材料を配設した上記グリーンシートを積層して中間積層体を作製する積層体作製工程と、
上記中間積層体を焼成して上記セラミック積層体を作製する焼成工程とを有し、
上記材料配設工程では、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の上記クラック形成部となる部分に、上記駆動内部電極部となる部分に配設する上記内部電極材料よりも外部応力によってクラックが入り易い上記内部電極材料であるクラック形成用材料を配設することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項11)。
本発明の積層型圧電素子の製造方法において、上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記のごとく、シート作製工程、材料配設工程、積層体作製工程及び焼成工程を行う。上記材料配設工程においては、上記グリーンシートに対して、上記内部電極層となる部分に内部電極材料を配設する。そして、上記内部電極層における上記非駆動内部電極部の上記クラック形成部となる部分に、上記駆動内部電極部となる部分に配設する上記内部電極材料よりも外部応力によってクラックが入り易い上記内部電極材料であるクラック形成用材料を配設する。
これにより、上記セラミック積層体の所望の位置に上記クラック形成用材料よりなる上記クラック形成部を精度良く設けることができる。すなわち、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の少なくとも一部に、駆動によって内部に平面方向にクラックが形成される上記クラック形成部を精度良く設けることができる。
よって、本発明の製造方法によれば、上記クラック形成部を設けた、耐久性及び信頼性に優れた構造を有する上記第3の発明の積層型圧電素子を容易に得ることができる。
上記第1の発明において、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の厚みは、上記駆動内部電極部の厚みよりも大きいことが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記非駆動内部電極部の内部に上記スリット部を設けても、上記非駆動内部電極部の導電性を充分に確保することができる。
また、上記スリット部の厚みは、1〜8μmであることが好ましい(請求項3)。
上記スリット部の厚みが1μm未満の場合には、上記非駆動部に生じる応力を上記スリット部によって充分に緩和することができないおそれがある。一方、8μmを超える場合には、上記スリット部を上記非駆動内部電極部の内部に設けることが困難となるおそれがある。
上記第2の発明において、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部は、上記駆動内部電極部と同一平面上に連続して設けられており、そのすべてが上記クラック形成部により構成されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記非駆動内部電極部のみにクラックを形成させ、そのクラックが上記駆動内部電極部に進行することを充分に抑制することができる。
また、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部は、上記駆動内部電極部と同一平面上に連続して設けられ、該駆動内部電極部を構成する材料と同じ材料からなる通常部と、該通常部上に設けられた上記クラック形成部とにより構成することが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記クラック形成部と上記駆動内部電極部とが同一平面上にない。そのため、上記非駆動内部電極部の上記クラック形成部のみにクラックを形成させ、そのクラックが上記駆動内部電極部に進行することをより一層抑制することができる。また、上記駆動内部電極部と上記非駆動内部電極部の上記通常部とによって、上記内部電極層の導電性を充分に確保することができる。
上記第1及び第2の発明において、上記積層型圧電素子は、インジェクタの駆動源として用いられるインジェクタ用圧電アクチュエータであることが好ましい(請求項4、8)。
上記インジェクタは、高温高湿という過酷な条件下で使用される。そのため、上記の優れた構造を有する積層型圧電素子をアクチュエータとして用いることにより、耐久性及び信頼性を向上させることができ、インジェクタ全体の性能向上を図ることができる。
上記第3の発明において、上記スリット形成用材料は、カーボン粒子、樹脂粒子又は炭化有機物粒子の少なくともいずれかを含有する焼失材料よりなることが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記焼成工程における焼成により、上記スリット形成用材料を確実に焼失させることができる。これにより、上記スリット部を容易に精度良く形成することができる。
特に、上記スリット形成用材料としてカーボン粒子を用いる場合には、熱による形状変化が少ないため、上記スリット部を形状精度良く形成することができる。
また、上記スリット形成用材料として炭化有機物粒子を用いる場合には、上記スリット部を形成するのに要するコストを抑制することができる。なお、炭化有機物粒子とは、有機物粒子等を炭化させてなるものであり、有機物粒子が含有する水分の一部を除去することにより、ある程度炭化させて、流動性及び分散性が良好な微粒子の状態となった粒子をいう。有機物粒子としては、例えば大豆やとうもろこしを粉砕してなる粒子や、樹脂材料を粉砕してなる粒子等を用いることができる。
上記第4の発明において、上記クラック形成用材料は、導電材料と上記圧電セラミック層を構成する圧電材料とを含有することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記クラック形成用材料よりなる上記クラック形成部と上記圧電セラミック層との密着性を高めることができる。そのため、クラックの発生場所が上記クラック形成部と上記圧電セラミック層との境界部ではなく、上記クラック形成部の内部となり易くすることができる。
ここで、上記導電材料とは、上記内部電極層の導電性を確保するために該内部電極層に含有されている材料のことである。
また、上記クラック形成用材料は、上記導電材料の含有量を100重量部とした場合に、上記圧電材料の含有量が10〜60重量部であることが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記クラック形成部の内部にクラックを容易かつ確実に形成することができる。
また、上記クラック形成用材料は、さらに焼成により焼失する焼失材料を含有しており、上記導電材料の含有量を100重量部とした場合に、上記焼失材料の含有量が6重量部以下であることが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記クラック形成部をある程度ポーラスな状態とすることができ、クラックの形成がさらに容易になる。
上記の効果を充分に得るためには、上記焼失材料の含有量が1重量部以上であることが好ましい。一方、上記焼失材料の含有量が6重量部を超える場合には、上記クラック形成部の強度が低下するおそれがある。
また、上記焼失材料は、カーボン粒子、樹脂粒子又は炭化有機物粒子の少なくともいずれかを含有することが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記焼成工程における焼成により、上記焼失材料を確実に焼失させることができる。これにより、上記クラック形成部をある程度ポーラスな状態とすることができる。
また、上記クラック形成用材料は、導電材料と上記圧電セラミック層を構成する圧電材料よりも焼成後の強度が低いセラミック材料とを含有することが好ましい(請求項16)。
この場合には、上記クラック形成部の焼結度合いが低くなり、結合強度が低下するため、クラックの形成が容易になる。
(実施例1)
第1及び第3の発明の積層型圧電素子及びその製造方法について、図1〜図9を用いて説明する。
本例の積層型圧電素子1は、図1に示すごとく、圧電材料よりなる圧電セラミック層11と導電性を有する内部電極層20とを交互に積層してなるセラミック積層体10と、セラミック積層体10の外周面103に形成した一対の側面101、102にそれぞれ設けられ、内部電極層20に順次交互に導通される一対の外部電極33とを有している。
図2に示すごとく、セラミック積層体10は、その外周面103に相互に対面する一対の側面101、102を形成してなる断面八角形状を呈している。
なお、セラミック積層体10の断面形状としては、本例の形状に限定されるものではなく、用途、使用状況等に合わせて樽形、円形、四角形等の様々な形状を採用することができる。
また、同図に示すごとく、セラミック積層体10は、内部電極層20と同一平面上において、内部電極層20の外周端部がセラミック積層体10の外周面103に対して内方に控えた控え部12を有している。
内部電極層20は、その外周端部の一部を側面101、102に交互に露出している。一方で、内部電極層20は、その外周端部の一部を側面101、102に交互に露出せず、控え部12によってセラミック積層体10の内方に控えている。
すなわち、本例のセラミック積層体10は、いわゆる電極控え構造(部分電極構造)を有しており、このような構造を採用することにより、セラミック積層体10の外周面103における電気的な絶縁性を確保している。
また、図1に示すごとく、セラミック積層体10は、積層方向に透視した場合に、すべての内部電極層20が重合する領域である駆動部108と、少なくとも一部の内部電極層20しか重合しない領域である非駆動部109とを有している。
言い換えれば、セラミック積層体10には、内部電極層20間に電圧を印加した際に圧電セラミック層11に変位が起こり駆動する部分である駆動部108と、内部電極層20間に電圧を印加した際に圧電セラミック層11に変位が起こらず駆動しない部分である非駆動部109とが存在する。
また、図1、図2に示すごとく、セラミック積層体10において、内部電極層20は、駆動部108に存在する駆動内部電極部21と、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22とを有している。
非駆動内部電極部22は、その内部に空隙よりなるスリット部29を有し、スリット部29を介した二重構造を呈している。また、スリット部29は、セラミック積層体10の外周面103に露出するように形成されている。
本例のスリット部29は、すべての内部電極層20における非駆動内部電極部22の内部に設けられている。また、スリット部29は、セラミック積層体10の側面101及び側面102に交互に露出している。
また、非駆動内部電極部22の厚みは、駆動内部電極部21の厚みよりも大きい。本例では、駆動内部電極部21の厚みaは4μmであり、非駆動内部電極部22の厚みbはスリット部29を含めて10μmである。また、スリット部29の厚みcは3μmである。
また、図1に示すごとく、セラミック積層体10の側面101、102には、それぞれ側面電極31が設けられている。側面電極31上には、導電性接着剤32を介して外部電極33が設けられている。外部電極33は、側面電極31及び導電性接着剤32を介して内部電極層20に順次交互に導通されている。
また、図示を省略したが、セラミック積層体10の外周面103には、絶縁樹脂よりなるモールド材が全体を覆うように設けられている。
次に、本例の積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
まず、セラミック積層体10を作製するに当たっては、図3〜図9に示すごとく、圧電セラミック層11となるグリーンシート110を作製するシート作製工程と、グリーンシート110に対して、内部電極層20となる部分に内部電極材料(電極材料200)を配設すると共に、スリット部29を形成する部分に焼成により焼失する焼失材料よりなるスリット形成用材料290を配設する材料配設工程と、内部電極材料(電極材料200)及びスリット形成用材料290を配設したグリーンシート110を積層して中間積層体100を作製する積層体作製工程と、中間積層体100を焼成し、スリット形成用材料290を焼失させてスリット部29を形成したセラミック積層体10を作製する焼成工程とを行う。
以下、これを説明する。
<シート作製工程>
圧電材料となるジルコン酸チタン酸鉛(PZT)よりなるセラミックス原料粉末を準備し、800〜950℃で仮焼した。そして、仮焼粉に純水、分散剤等を加えてスラリー状とし、パールミルにより湿式粉砕した。この粉砕物を乾燥、粉脱脂した後、溶剤、バインダー、可塑剤、分散剤等を加えてスラリー状とし、ボールミルにより混合した。得られたスラリーを真空装置内で撹拌機により撹拌しながら真空脱泡、粘度調整を行った。
次いで、上記スラリーをドクターブレード法によりキャリアフィルム上に塗布し、一定厚みの長尺のグリーンシートを成形した。このグリーンシートを所定の大きさに切断して、図3、図4に示すごとく、幅広のグリーンシート110を作製した。
なお、グリーンシート110の成形方法としては、本例で用いたドクターブレード法以外にも、押出成形法やその他種々の方法を用いることができる。
<材料配設工程>
次いで、図3、図4に示すごとく、成形したグリーンシート110上の印刷領域40に対して、内部電極層20となる部分に電極材料200を、スリット部29を形成する部分にスリット形成用材料290をスクリーン印刷により塗布し、第1印刷シート41及び第2印刷シート42を作製した。
本例では、図5(a)に示すごとく、第1層目の電極材料200を塗布した後、第2層目のスリット形成用材料290を第1層目の電極材料200上に塗布した。そして、第3層目の電極材料200を第2層目のスリット形成用材料290上に、スリット形成用材料290の内側端部を覆うように塗布した。
このようにして、図5(b)に示すごとく、電極材料200間にスリット形成用材料290が配置されるように塗布した。
また、上記以外の塗布方法を採用することもできる。例えば、図6(a)に示すごとく、第1層目の電極材料200を塗布した後、スリット形成用材料290を第1層目の電極材料200上に塗布する。そして、第2層目の電極材料200を第1層目の電極材料200及びスリット形成用材料290上に塗布する。
このようにして、図6(b)に示すごとく、電極材料200間にスリット形成用材料290が配置されるように塗布することもできる。
また、材料配設工程では、図3、図4に示すごとく、後に切断される部分を避けるように間隙を空けて、電極材料200及びスリット形成用材料290の印刷を行った。すなわち、グリーンシート110上の隣接する印刷領域40の間に間隙を設けて印刷を行った。
また、印刷領域40とは、後に切断されずに残存し、後述の中間積層体100の一部を構成する領域のことである。
また、本例では、電極材料200としては、ペースト状のAg/Pd合金(Ag:70重量%、Pd:30重量%)を用いた。これ以外にもAg、Pd、Cu、Ni等の単体、Cu/Ni等の合金を用いることもできる。
また、スリット形成用材料290としては、熱による形状変化が小さく、スリット部4を形状精度よく形成することができる焼失材料であるカーボン粒子を用いた。これ以外にも、樹脂粒子や有機物粒子等を炭化させてなる炭化有機物粒子を用いることもできる。炭化有機物粒子は、パウダー状の有機物粒子を炭化して得ることができるほか、炭化させた有機物を粉砕して得ることもできる。さらに、有機物としては、コーン、大豆、小麦粉等の穀物を用いることができる。この場合には、製造コストを抑制することができる。
<積層体作製工程>
次いで、図7、図8に示すごとく、圧着用治具(図示略)内に第1印刷シート41及び第2印刷シート42を交互に積層した。そして、圧着用治具を圧着装置に装着し、温度100℃で加熱すると共に積層方向に50MPaで加圧し、積層した第1印刷シート41及び第2印刷シート42を熱圧着した。その後、所定の位置において積層方向に切断し、図9に示すごとく、中間積層体100を作製した。
<焼成工程>
次いで、作製した中間積層体100を脱脂した。加熱条件は、80時間かけて徐々に500℃まで加熱し、5時間保持した。これにより、中間積層体100に含まれているバインダー等の有機成分を除去した。そして、脱脂後の中間積層体100を最高温度1065℃で2時間焼成した。このとき、スリット形成用材料290を焼成により焼失させて、その焼失した部分に空隙よりなるスリット部29を形成した。その後、外周面及び上下端面を砥石により研削加工し、洗浄した。
これにより、図2のセラミック積層体10を作製した。
焼成工程後においては、図1を参照のごとく、セラミック積層体10の側面101、102に、ガラス成分を含むAgペーストを焼き付けて側面電極31を形成した。そして、側面電極31上に導電性接着剤32を塗布し、その導電性接着剤32に一対の外部電極33を配置した。その後、導電性接着剤32を加熱硬化させ、外部電極33を接合した。最後に、セラミック積層体10の外周面103全体を絶縁樹脂よりなるモールド材によってモールドした。
これにより、図1の積層型圧電素子1を完成させた。
なお、本例では、導電性接着剤32としては、絶縁樹脂としてのエポキシ樹脂中に導電性フィラーとしてのAgを分散させたものを用いた。上記絶縁樹脂としては、上記以外にもシリコーン、ウレタン、ポリイミド等の各種樹脂を用いることができる。また、上記導電性フィラーとしては、上記以外にもPt、Cu、Ni等を用いることができる。
また、外部電極33としては、メッシュ状のエキスパンダメタルを用いた。これ以外にもパンチングメタル等を用いることができる。
また、モールド材としては、シリコーン樹脂を用いた。これ以外にもポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
次に、本例の積層型圧電素子1における作用効果について説明する。
本例の積層型圧電素子1において、セラミック積層体10は、駆動部108と非駆動部109とを有する。そして、内部電極層20のうち、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22は、その内部に空隙よりなるスリット部29を有する。
すなわち、本例では、内部電極層20間に電圧を印加した際に圧電変位が起こらず駆動しない部分である非駆動部109に、空隙よりなるスリット部29が設けられている。そのため、圧電変位に応じて非駆動部109に集中的に作用する応力をスリット部29によって緩和することができる。これにより、圧電セラミック層11におけるクラックの発生等の不具合を抑制することができる。
また、スリット部29は、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22に設けられている。そのため、圧電変位によって駆動する駆動部108には、スリット部29を設けたことによる影響がほとんど及ばない。これにより、長期間の使用においても、圧電素子としての性能を維持することができる。
また、スリット部29は、非駆動内部電極部22の内部に設けられている。そのため、スリット部29への静電気の帯電及び放電を防止することができる。これにより、圧電セラミック層11の静電破壊を抑制することができる。
よって、本例の積層型圧電素子1は、スリット部29を内部電極層20の非駆動内部電極部22の内部に設けたことにより、長期間の使用においても性能を維持することができる、優れた耐久性及び信頼性を有するものとなる。
なお、本例では、すべての内部電極層20の非駆動内部電極部22の内部にスリット部29を設けた構成とした。これ以外にも、例えば、図10に示すごとく、3層毎の内部電極層20にスリット部29を設ける構成とすることもできる。また、図11に示すごとく、セラミック積層体10の側面101に露出する内部電極層20において2層毎にスリット部29を設けると共に、側面102に露出する内部電極層20において2層毎にスリット部29を設ける構成とすることもできる。
(実施例2)
本例は、実施例1の積層型圧電素子1において、その製造方法を変更した例である。実施例1の製造方法と異なる点は、材料配設工程及び積層体作製工程である。
材料配設工程では、図12に示すごとく、キャリアフィルム(図示略)上に成形したグリーンシート110上の打ち抜き領域50に対して、内部電極層20となる部分に電極材料200を、スリット部29を形成する部分にスリット形成用材料290をスクリーン印刷により塗布した。
本例では、図13(a)、(b)に示すごとく、第1層目の電極材料200を塗布した後、第1層目の電極材料200を塗布した部分と他の部分との高さを略一致させるため、第1層目の電極材料200が塗布されていない部分に、同じ厚みで第1スペーサ層111をスクリーン印刷により塗布した。この第1スペーサ層111を塗布した部分は、焼成後に控え部12となる部分である。
次いで、同図に示すごとく、第2層目のスリット形成材料290を第1層目の電極材料200上に塗布し、第3層目の電極材料200を第2層目のスリット形成用材料290上に、スリット形成用材料290の内側端部を覆うように塗布した。その後、第2層目のスリット形成用材料290及び第3層目の電極材料200を塗布した部分と他の部分との高さを略一致させるため、第2層目のスリット形成用材料290及び第3層目の電極材料200が塗布されていない部分に、同じ厚みで第2スペーサ層112をスクリーン印刷により塗布した。
次いで、同図に示すごとく、後の積層体作製工程においてグリーンシート110を積層する際の接着効果を高めるため、接着層113を第3層目の電極材料200及び第2スペーサ層112上にスクリーン印刷により塗布した。
なお、第1スペーサ層111、第2スペーサ層112及び接着層113としては、グリーンシート110を構成する材料と同材料のスラリーを用いた。
また、材料配設工程では、図12に示すごとく、後述する打抜積層装置によってグリーンシート110の打ち抜き領域50を効率よく打ち抜きながら積層できるように、長尺のグリーンシート110の長手方向に、積層する順に印刷を施した。
また、打ち抜き領域50とは、打抜積層装置によって所望の形状に打ち抜かれ、後述の中間積層体100の一部を構成する領域のことである。
積層体作製工程では、グリーンシート110の打ち抜きと積層とを同時に進行できるよう構成されている打抜積層装置(図示略)を用いて、グリーンシート110の打ち抜きと積層とを並行して行った。
なお、上記打抜積層装置としては、例えば、グリーンシート110を打ち抜くためのトムソン刃等を備えた打ち抜き手段と、打ち抜いたグリーンシート110を積層して積層体を形成し、それを保持する積層体保持手段とを有するものを用いることができる。
グリーンシート110の打ち抜き及び積層を具体的に説明すると、まず、各材料が塗布されたグリーンシート110をキャリアフィルムごと上記打抜積層装置にセットした。そして、グリーンシート110の打ち抜き領域50を長手方向に順に打ち抜いてシート片を作製し、そのシート片を側面に露出する電極材料200の外周端部の向きが交互になるようにして積層した。これにより、図14に示すごとく、中間積層体100を作製した。
その他の工程は、実施例1と同様である。
本例の場合には、積層体作製工程において、グリーンシート110を打ち抜いて作製したシート片を迅速に連続的に積層することができる。
また、シート片に第1スペーサ層111及び第2スペーサ層112が印刷されていることにより、シート片を積層しても段差が生まれない。また、シート片に接着層113が印刷されていることにより、シート片を積層するだけで各シート片を接着することができる。これによって、実施例1と異なり、積層したシートの段差を埋め、シート同士を接着するための熱圧着を行う必要がなくなる。そのため、生産性の向上を図ることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
(実施例3)
第2及び第4の発明の積層型圧電素子及びその製造方法について、図15〜図17を用いて説明する。
本例の積層型圧電素子1において、セラミック積層体10は、図15、図16に示すごとく、積層方向に透視した場合に、すべての内部電極層20が重合する領域である駆動部108と、少なくとも一部の内部電極層20しか重合しない領域である非駆動部109とを有している。
また、セラミック積層体10において、内部電極層20は、駆動部108に存在する駆動内部電極部21と非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22とを有している。
また、同図に示すごとく、非駆動内部電極部22は、その少なくとも一部に駆動内部電極部21を構成する材料よりも外部応力によってクラックが入り易い材料からなるクラック形成部24を有している。本例では、非駆動内部電極部22は、駆動内部電極部21と同一平面上に連続して設けられており、そのすべてがクラック形成部24により構成されている。また、非駆動内部電極部22は、積層型圧電素子1の駆動によってクラック形成部24の内部に平面方向にクラック241が形成されるよう構成されている。
その他は、実施例1と同様の構成である。
次に、本例の積層型圧電素子1の製造方法について簡単に説明する。
本例の積層型圧電素子1の製造方法において、セラミック積層体10を作製するに当たっては、実施例1と同様に、シート作製工程、材料配設工程、積層体作製工程及び焼成工程を行う。実施例1と大きく異なる点は、材料配設工程である。
材料配設工程では、図17(a)、(b)に示すごとく、成形したグリーンシート110上の印刷領域40(図3、図4参照)に対して、内部電極層20の駆動内部電極部21となる部分に電極材料210をスクリーン印刷により塗布した。また、非駆動内部電極部22(クラック形成部24)となる部分に、駆動内部電極部21となる部分に配設する内部電極材料(電極材料210)よりも外部応力によってクラックが入り易い内部電極材料であるクラック形成用材料240をスクリーン印刷により塗布した。これにより、第1印刷シート41及び第2印刷シート42(図3、図4参照)を作製した。
本例では、同図に示すごとく、電極材料210を塗布した後、クラック形成用材料240を電極材料210と同一平面上に同じ厚みで塗布した。
また、電極材料210としては、ペースト状のAg/Pd合金(Ag:70重量%、Pd:30重量%)を用いた。
また、クラック形成用材料240としては、電極材料210と同じ導電材料(Ag/Pd合金)と、圧電セラミック層11を構成する圧電材料(PZT)と、焼成により焼失する焼失材料とを含有するものを用いた。なお、焼失材料としては、実施例1のスリット形成用材料290と同様の材料を用いることができる。本例のクラック形成用材料240は、上記導電材料の含有量を100重量部とした場合に、上記圧電材料の含有量が20重量部、上記焼失材料としてのカーボン粒子の含有量が2重量部である。
その他の工程は、実施例1と同様である。
なお、実施例2と同様の製造方法を用いることもできる。
本例の積層型圧電素子1における作用効果について説明する。
本例の積層型圧電素子1において、セラミック積層体10は、駆動部108と非駆動部109とを有する。そして、内部電極層20のうち、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22は、その少なくとも一部に駆動内部電極部21よりも外部応力によってクラックが入り易い材料からなるクラック形成部24を有する。また、非駆動内部電極部22は、積層型圧電素子1の駆動によってクラック形成部24の内部に平面方向にクラック241が形成されるよう構成されている。
すなわち、本例では、内部電極層20間に電圧を印加した際に圧電変位が起こらず駆動しない部分である非駆動部109に、クラック241が形成されるようにしている。そのため、圧電変位に応じて非駆動部109に集中的に作用する応力をクラック241の存在によって剥離した面と面との間の空隙によって緩和することができる。これにより、圧電セラミック層11におけるクラックの発生等の不具合を抑制することができる。
また、クラック形成部24は、内部電極層20のうち、非駆動部109に存在する非駆動内部電極部22のみに設けられており、駆動部108に存在する駆動内部電極部21を構成する材料よりもクラックが入り易い材料からなる。そのため、非駆動内部電極部22のみにクラック241を形成させ、そのクラック241が駆動内部電極部21に進行することを抑制することができる。これにより、駆動内部駆動部21へクラック241が進行し、圧電変位による繰り返しの駆動によって内部電極層20が押し潰されたり、それに伴ってセラミック積層体10が座屈したりする等の不具合を抑制することができる。
また、クラック241は、非駆動内部電極部22のクラック形成部24の内部に形成される。そのため、クラック241に存在する微小空間への静電気の帯電及び放電を防止することができる。これにより、圧電セラミック層11の静電破壊を抑制することができる。
よって、本例の積層型圧電素子1は、クラック形成部24を内部電極層20の非駆動内部電極部22に設け、クラック形成部24の内部にクラック241を形成させることにより、長期間の使用においても性能を維持することができる、優れた耐久性及び信頼性を有するものとなる。
また、本例では、内部電極層20の非駆動内部電極部22は、駆動内部電極部21と同一平面上に連続して設けられており、そのすべてがクラック形成部24により構成されている。そのため、非駆動内部電極部22のみにクラック241を形成させ、そのクラック241が駆動内部電極部21に進行することを充分に抑制することができる。
また、クラック形成用材料240としては、導電材料、圧電材料及び焼失材料を含有する上記構成の材料を用いた。この焼成により焼失する焼失材料を少量添加することにより、クラック形成部24をある程度ポーラスな状態にでき、クラック241を形成させ易くすることができる。
(実施例4)
本例は、実施例3の積層型圧電素子1において、非駆動内部電極部22の構成を変更した例である。
本例では、非駆動内部電極部22は、図18、図19に示すごとく、駆動内部電極部21と同一平面上に連続して設けられ、駆動内部電極部21を構成する材料と同じ材料からなる通常部23と、通常部23上に設けられたクラック形成部24とにより構成されている。
その他は、実施例3の構成と同様である。
次に、本例の積層型圧電素子1の製造方法について簡単に説明する。
本例の積層型圧電素子1の製造方法において、セラミック積層体10を作製するに当たっては、実施例3と同様に、シート作製工程、材料配設工程、積層体作製工程及び焼成工程を行う。実施例3と異なる点は、材料配設工程である。
材料配設工程では、図20(a)、(b)に示すごとく、成形したグリーンシート110上の印刷領域40(図3、図4参照)に対して、内部電極層20の駆動内部電極部21となる部分及び非駆動内部電極部22の通常部23となる部分に電極材料210を、クラック形成部24となる部分にクラック形成用材料240をスクリーン印刷により塗布し、第1印刷シート41及び第2印刷シート42(図3、図4参照)を作製した。
本例では、同図に示すごとく、第1層目の電極材料210を塗布した後、第2層目のクラック形成用材料240を第1層目の内部電極材料210上に塗布した。
その他の工程は、実施例3と同様である。
なお、実施例2と同様の製造方法を用いることもできる。
本例の場合には、内部電極層20の非駆動内部電極部22は、駆動内部電極部21を構成する材料と同じ材料からなる通常部23とクラック形成部24とにより構成されている。そのため、クラック形成部24と駆動内部電極部21とが同一平面上にない。これにより、非駆動内部電極部22のクラック形成部24のみにクラック241を形成させ、そのクラック241を駆動内部電極部21により一層進行させないようにすることができる。また、駆動内部電極部21と非駆動内部電極部22の通常部23とによって、内部電極層20の導電性を充分に確保することができる。
その他は、実施例3と同様の作用効果を有する。
(実施例5)
本例は、実施例1の積層型圧電素子1をインジェクタ6の圧電アクチュエータとして用いた例である。
本例のインジェクタ6は、図21に示すごとく、ディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用したものである。
このインジェクタ6は、同図に示すごとく、駆動部としての積層型圧電素子1が収容される上部ハウジング62と、その下端に固定され、内部に噴射ノズル部64が形成される下部ハウジング63を有している。
上部ハウジング62は略円柱状で、中心軸に対し偏心する縦穴621内に、積層型圧電素子1が挿通固定されている。
縦穴621の側方には、高圧燃料通路622が平行に設けられ、その上端部は、上部ハウジング62上側部に突出する燃料導入管623内を経て外部のコモンレール(図示略)に連通している。
上部ハウジング62上側部には、また、ドレーン通路624に連通する燃料導出管625が突設し、燃料導出管625から流出する燃料は、燃料タンク(図示略)へ戻される。
ドレーン通路624は、縦穴621と駆動部(積層型圧電素子)1との間の隙間60を経由し、さらに、この隙間60から上下ハウジング62、63内を下方に延びる図示しない通路によって後述する3方弁651に連通してしる。
噴射ノズル部64は、ピストンボデー631内を上下方向に摺動するノズルニードル641と、ノズルニードル641によって開閉されて燃料溜まり642から供給される高圧燃料をエンジンの各気筒に噴射する噴孔643を備えている。燃料溜まり642は、ノズルニードル641の中間部周りに設けられ、上記高圧燃料通路622の下端部がここに開口している。ノズルニードル641は、燃料溜まり642から開弁方向の燃料圧を受けるとともに、上端面に面して設けた背圧室644から閉弁方向の燃料圧を受けており、背圧室644の圧力が降下すると、ノズルニードル641がリフトして、噴孔643が開放され、燃料噴射がなされる。
背圧室644の圧力は3方弁651によって増減される。3方弁651は、背圧室644と高圧燃料通路622、またはドレーン通路624と選択的に連通させる構成である。ここでは、高圧燃料通路622またはドレーン通路624へ連通するポートを開閉するボール状の弁体を有している。この弁体は、上記駆動部1により、その下方に配設される大径ピストン652、油圧室653、小径ピストン654を介して、駆動される。
そして、本例においては、上記構成のインジェクタ6における駆動源として、実施例1〜4の積層型圧電素子1を用いている。この積層型圧電素子1は、上記のごとく、優れた耐久性及び信頼性を有するものである。そのため、インジェクタ6全体の性能向上を図ることができる。
実施例1における、積層型圧電素子の構造を示す説明図。 実施例1における、セラミック積層体の構造を示す説明図。 実施例1における、グリーンシートに各材料を塗布する様子を示す説明図。 実施例1における、グリーンシートに各材料を塗布する様子を示す説明図。 実施例1における、(a)印刷領域に各材料を塗布する様子を示す説明図、(b)印刷領域に各材料を塗布した状態を示す説明図。 実施例1における、(a)別方法によって印刷領域に各材料を塗布する様子を示す説明図、(b)別方法によって印刷領域に各材料を塗布した状態を示す説明図。 実施例1における、第1印刷シート及び第2印刷シートを積層する様子を示す説明図。 実施例1における、第1印刷シート及び第2印刷シートを積層した状態を示す説明図。 実施例1における、中間積層体を示す説明図。 実施例1における、スリット部の配設例を示す説明図。 実施例1における、スリット部の配設例を示す説明図。 実施例2における、グリーンシートに各材料を塗布する様子を示す説明図。 実施例2における、(a)打ち抜き領域に各材料を塗布する様子を示す説明図、(b)打ち抜き領域に各材料を塗布した状態を示す説明図。 実施例2における、中間積層体を示す説明図。 実施例3における、積層型圧電素子の構造を示す説明図。 実施例3における、セラミック積層体の構造を示す説明図。 実施例3における、(a)印刷領域に各材料を塗布する様子を示す説明図、(b)印刷領域に各材料を塗布した状態を示す説明図。 実施例4における、積層型圧電素子の構造を示す説明図。 実施例4における、セラミック積層体の構造を示す説明図。 実施例4における、(a)印刷領域に各材料を塗布する様子を示す説明図、(b)印刷領域に各材料を塗布した状態を示す説明図。 実施例5における、インジェクタの構造を示す説明図。
符号の説明
1 積層型圧電素子
10 セラミック積層体
101、102 側面
103 外周面
108 駆動部
109 非駆動部
11 圧電セラミック層
20 内部電極層
21 駆動内部電極部
22 非駆動内部電極部
24 クラック形成部
241 クラック
29 スリット部
33 外部電極
6 インジェクタ

Claims (16)

  1. 圧電材料よりなる圧電セラミック層と導電性を有する内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と、該セラミック積層体の外周面に形成した一対の側面にそれぞれ設けられ、上記内部電極層に順次交互に導通される一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において、
    上記セラミック積層体は、積層方向に透視した場合に、すべての上記内部電極層が重合する領域である駆動部と、少なくとも一部の上記内部電極層しか重合しない、あるいは全く重合しない領域である非駆動部とを有しており、
    上記内部電極層は、上記駆動部に存在する駆動内部電極部と、上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部とを有しており、
    該非駆動内部電極部は、その内部に空隙よりなるスリット部を有し、該スリット部を介した二重構造を呈しており、かつ、上記スリット部は、上記セラミック積層体の外周面に露出するように形成されていることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 請求項1において、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の厚みは、上記駆動内部電極部の厚みよりも大きいことを特徴とする積層型圧電素子。
  3. 請求項1又は2において、上記スリット部の厚みは、1〜8μmであることを特徴とする積層型圧電素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記積層型圧電素子は、インジェクタの駆動源として用いられるインジェクタ用圧電アクチュエータであることを特徴とする積層型圧電素子。
  5. 圧電材料よりなる圧電セラミック層と導電性を有する内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と、該セラミック積層体の外周面に形成した一対の側面にそれぞれ設けられ、上記内部電極層に順次交互に導通される一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において、
    上記セラミック積層体は、積層方向に透視した場合に、すべての上記内部電極層が重合する領域である駆動部と、少なくとも一部の上記内部電極層しか重合しない、あるいは全く重合しない領域である非駆動部とを有しており、
    上記内部電極層は、上記駆動部に存在する駆動内部電極部と上記非駆動部に存在する非駆動内部電極部とを有しており、
    該非駆動内部電極部は、その少なくとも一部に上記駆動内部電極部を構成する材料よりも外部応力によってクラックが入り易い材料からなるクラック形成部を有し、上記積層型圧電素子の駆動によって上記クラック形成部の内部に平面方向にクラックが形成されるよう構成されていることを特徴とする積層型圧電素子。
  6. 請求項5において、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部は、上記駆動内部電極部と同一平面上に連続して設けられており、そのすべてが上記クラック形成部により構成されていることを特徴とする積層型圧電素子。
  7. 請求項5において、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部は、上記駆動内部電極部と同一平面上に連続して設けられ、該駆動内部電極部を構成する材料と同じ材料からなる通常部と、該通常部上に設けられた上記クラック形成部とにより構成されていることを特徴とする積層型圧電素子。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項において、上記積層型圧電素子は、インジェクタの駆動源として用いられるインジェクタ用圧電アクチュエータであることを特徴とする積層型圧電素子。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
    上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記圧電セラミック層となるグリーンシートを作製するシート作製工程と、
    上記グリーンシートに対して、上記内部電極層となる部分に内部電極材料を配設すると共に、上記スリット部を形成する部分に焼成により焼失する焼失材料からなるスリット形成用材料を配設する材料配設工程と、
    上記内部電極材料及び上記スリット形成用材料を配設した上記グリーンシートを積層して中間積層体を作製する積層体作製工程と、
    上記中間積層体を焼成し、上記スリット形成用材料を焼失させることによって上記スリット部を形成した上記セラミック積層体を作製する焼成工程とを有することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  10. 請求項9において、上記スリット形成用材料は、カーボン粒子、樹脂粒子又は炭化有機物粒子の少なくともいずれかを含有する焼失材料よりなることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  11. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
    上記セラミック積層体を作製するに当たっては、上記圧電セラミック層となるグリーンシートを作製するシート作製工程と、
    上記グリーンシートに対して、上記内部電極層となる部分に内部電極材料を配設する材料配設工程と、
    上記内部電極材料を配設した上記グリーンシートを積層して中間積層体を作製する積層体作製工程と、
    上記中間積層体を焼成して上記セラミック積層体を作製する焼成工程とを有し、
    上記材料配設工程では、上記内部電極層の上記非駆動内部電極部の上記クラック形成部となる部分に、上記駆動内部電極部となる部分に配設する上記内部電極材料よりも外部応力によってクラックが入り易い上記内部電極材料であるクラック形成用材料を配設することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  12. 請求項11において、上記クラック形成用材料は、導電材料と上記圧電セラミック層を構成する圧電材料とを含有することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  13. 請求項12において、上記クラック形成用材料は、上記導電材料の含有量を100重量部とした場合に、上記圧電材料の含有量が10〜60重量部であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  14. 請求項12又は13において、上記クラック形成用材料は、さらに焼成により焼失する焼失材料を含有しており、上記導電材料の含有量を100重量部とした場合に、上記焼失材料の含有量が6重量部以下であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  15. 請求項14において、上記焼失材料は、カーボン粒子、樹脂粒子又は炭化有機物粒子の少なくともいずれかを含有することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  16. 請求項11において、上記クラック形成用材料は、導電材料と上記圧電セラミック層を構成する圧電材料よりも焼成後の強度が低いセラミック材料とを含有することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
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