JP2009180539A - 病理診断支援装置、病理診断支援方法、およびプログラム - Google Patents

病理診断支援装置、病理診断支援方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】病理診断の支援内容を充実させることが可能な病理診断支援装置を提供すること。
【解決手段】染色された組織標本を示すデジタルカラー画像が入力される病理診断支援装置であって、表示動作を行う表示部と、デジタルカラー画像が入力されると、デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、抽出した細胞核領域、細胞質領域、および腺腔領域のそれぞれの形状の特徴を示す基本特徴量を計測し、輝度値および基本特徴量に基づいて、細胞核領域、細胞質領域、および腺腔領域のそれぞれに、組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、細胞核領域の基本特徴量に基づいて細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、特殊領域が存在する場合には、特殊領域を抽出して構造特徴量および細胞核領域とともに表示部に表示させる画像処理部と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、染色された組織標本を示す病理画像を用いて病理医が病理診断を行う際に必要となる情報を抽出および計測して表示する病理診断支援装置、病理診断支援方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
近年、顕微鏡やデジタルカメラなどを用いてデジタルカラー画像として入力された病理画像から、病理医が病理診断を行う際に必要となる情報を抽出および計測して表示する病理診断支援装置が提案されており、例えば特許文献1(特開2004−286666号公報)に開示されている。
特許文献1に記載の病理診断支援装置は、病理画像から細胞核領域および細胞質領域をそれぞれ特定する核・細胞質分布推定手段と、病理画像から腺腔領域(細胞組織を殆ど含まない領域)を特定する腺腔分布抽出手段と、癌細胞が存在するか否か判定する癌部位推定手段と、癌の進行度を判定する進行度判定手段と、癌細胞の分布図や進行度などを表示する画像表示手段と、を有する。
なお、特許文献1に記載の病理診断支援装置に入力される病理画像には、HE(ヘマトキシリン-エオジン)染色された組織標本が示されている。そのため、細胞核は青色に染色し、細胞質は赤色に染色し、腺腔は染色されない。これにより、病理画像では、細胞核領域は青の輝度値(明るさを示す値)が大きい特徴を有し、細胞質領域は赤の輝度値が大きい特徴を有し、腺腔領域は輝度値が白に対応した値で示される特徴を有する。
特許文献1に記載の病理診断支援装置では、まず、核・細胞質分布推定手段が、病理画像を構成する各画素の輝度値に基づいて細胞核領域および細胞質領域をそれぞれ特定する。すると、癌部位推定手段が、病理画像を予め定められた複数の領域に分割したときの各領域において、癌細胞領域が存在するか否か判定する。ここで、癌部位推定手段が癌細胞領域の存在を判定する動作について詳しく説明する。
癌部位推定手段は、核・細胞質分布推定手段によって特定された細胞核領域および細胞質領域の画素数の和を計測する。そして、癌部位推定手段は、画素数の和が予め定められたしきい値Tsと比較する。その結果、しきい値Tsと等しい、または大きな領域については、癌部位推定手段は、下記の式(1)を用いて癌細胞であるか否か判定するための値であるNC比(Nuclear Cytoplasmic Ratio)を計測する。
NC比=(細胞核領域の画素数)/(細胞質領域の画素数)・・・(1)
癌部位推定手段は、NC比を計測すると、計測したNC比を予め定められたしきい値Trと比較する。そして、癌部位推定手段は、しきい値Trと等しい、または大きな領域を癌細胞領域と特定する。
癌部位推定手段が癌細胞領域を特定すると、腺腔分布抽出手段が病理画像を構成する各画素の輝度値に基づいて腺腔領域を特定する。そして、腺腔分布抽出手段は、特定した腺腔領域ごとに、腺腔領域の形状の特徴を量的に示す特徴量を計測する。特徴量には、面積、腺腔領域の輪郭の長さを示す周囲長、円形との類似性を示す円形度などが含まれる。
腺腔分布抽出手段が特徴量を計測すると、進行度判定手段が、腺腔領域のうち、癌部位推定手段で特定された癌細胞領域に含まれるものについて、癌の進行度を判定する。具体的には、進行度判定手段は、腺腔分布抽出手段が計測した特長量を、癌の進行度に対応付けた特徴量を示すデータと比較し、特徴量が最も類似性の高いデータの進行度を選択する。
進行度判定手段が進行度を判定すると、画像表示手段が、癌部位推定手段により特定された癌細胞領域の分布図や、進行度判定手段によって判定された癌の進行度を表示する。
特許文献1に記載の病理診断支援装置によれば、細胞核および細胞質を定量的に計測し、腺空の特徴量を計測することによって、病理画像から癌細胞領域を抽出したり癌の進行度を判定したりすることが可能となる。
特開2004−286666号公報
特許文献1に記載の病理診断支援装置を用いれば、癌細胞の有無や癌の進行度を知ることが可能となる。しかしながら、病理画像では、悪性腫瘍である癌細胞や正常な細胞の他に、良性腫瘍の細胞が含まれる場合がある。
上記の場合、病理医が病理画像から癌細胞か良性腫瘍の細胞か判断する際には、上述したNC比や腺腔の特徴量に加え、細胞核の配置状態など組織標本の構造の特徴を示す情報が重要な手がかりとなる。また、癌細胞であることを決定付ける根拠となる特殊な細胞(例えば、印環細胞)の有無を示す情報も重要な手がかりとなる。
特許文献1に記載の病理診断支援装置では、上述した情報は取得されていない。そのため、特許文献1に記載の病理診断支援装置で取得される情報だけでは、病理診断の支援内容が十分なものとはいえない。
本発明の目的は、病理診断の支援内容を充実させることが可能な病理診断支援装置、病理診断支援方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による病理診断支援装置は、
染色された組織標本を示すデジタルカラー画像が入力される病理診断支援装置であって、
表示動作を行う表示部と、
前記デジタルカラー画像が入力されると、該デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、抽出した前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれの形状の特徴を示す基本特徴量を計測し、前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに前記表示部に表示させる画像処理部と、
を有する。
また、上記目的を達成するための本発明による病理診断支援方法は、
染色された組織標本を示すデジタルカラー画像を用いて病理診断を支援する方法であって、
前記デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、
前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれの形状の特徴を示す基本特徴量を計測し、
前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、
前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、
前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに表示する。
また、上記目的を達成するための本発明によるプログラムは、
染色された組織標本を示すデジタルカラー画像を処理するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、
抽出した前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域について形状の特徴を示す基本特徴量をそれぞれ計測し、
前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、
前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、
前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに表示する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラムである。
本発明によれば、染色された組織標本がデジタルカラー画像として入力されると、特殊領域の有無が確認され、構造特徴量が表示される。そのため、病理医は病理診断を行う際に有用な情報を数多く得られるようになる。これにより、病理診断の支援内容を充実させることが可能となる。
本実施形態の病理診断支援装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の病理診断支援装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の病理診断支援装置1は、図1に示すように、画像処理部11と、表示部12と、を有する。
まず、画像処理部11の構成について説明する。
図2は、画像処理部11の構成を示すブロック図である。
画像処理部11は、図2に示すように、メモリ20と、画像特徴取得部21と、特徴計測部22と、画像計測部23と、表示制御部24と、を有する。
メモリ20は、病理診断支援装置1に入力される病理画像、画像処理部11の各構成が計測した特徴量などを格納する。
画像特徴取得部21は、病理画像が入力されると、細胞核、細胞質、および腺腔など組織の基本となる基本特徴領域と、印環細胞など組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域とを抽出する。
なお、本実施形態では、病理画像は、HE染色された腺組織標本を顕微鏡で拡大してデジタルカメラで撮像したデジタルカラー画像であり、画像入力装置より供給されてメモリ20に格納される。病理画像はデジタルカラー画像であるため、各画素に対して赤、緑、青の輝度値がそれぞれ示されている。
特徴計測部22は、画像特徴取得部21で抽出された基本特徴領域について、NC比、面積、周囲長、および円形度、方向などを含み形状の特徴を示す基本特徴量を計測する。
画像計測部23は、特徴計測部22の計測結果を用いて腺組織構造の特徴を量的に示す構造特徴量を計測する。
表示制御部24は、表示部12に対して、画像特徴取得部21が抽出した基本特徴領域および特殊領域、特徴計測部22が計測した基本特徴量、ならびに画像計測部23が計測した構造特徴量を表示させる。
次に、表示部12について説明する。
表示部12は、モニタ(ディスプレー)であり、表示制御部24の制御に基づいて表示動作を行う。
次に、本実施形態の病理診断支援装置による画像処理の動作について説明する。
図3は、本実施形態の病理診断支援装置による画像処理の動作を示すフローチャートである。なお、ここでは、病理画像は、メモリ20に既に格納されていることとする。
まず、画像特徴取得部21は、メモリ20に格納されている病理画像について、基本特徴領域を抽出する(ステップS1)。具体的には、画像特徴取得部21は病理画像から細細胞核領域、細胞質領域、および腺腔領域をそれぞれ抽出する。ここで、病理画像から細胞核領域、細胞質領域、および腺腔領域をそれぞれ抽出する動作について、詳しく説明する。
本実施形態では、腺組織標本がHE染色されているため、細胞核は青色に染色し、細胞質は赤色に染色し、腺腔は染色されない。これにより、病理画像では、細胞核領域は青の輝度値が大きい特徴を有し、細胞質領域は赤の輝度値が大きい特徴を有し、腺腔領域は各色の輝度値が白に対応した値で示される特徴を有する。
そこで、画像特徴取得部21は、病理画像における上述した特徴を利用して、青の輝度値が所定のしきい値T1よりも大きな画素が所定の数よりも多く存在する領域については細胞核領域と特定し、赤の輝度値が所定のしきい値T2よりも大きな画素が所定の数よりも多く存在する領域については細胞質領域と特定し、白を示す輝度値の画素が所定の数よりも多く存在する領域については腺腔領域と特定する。これにより、病理画像から細胞核領域、細胞質領域、および腺腔領域がそれぞれ抽出されることとなる。
画像特徴取得部21は、基本特徴領域を抽出すると、続いて特殊領域の有無を確認する(ステップS2)。具体的には、画像特徴取得部21は、印環細胞が存在する印環細胞領域、粘液が存在する粘液領域、および腺腔の中に生じる石やクリスタロイドを示す異物領域が病理画像に存在するか否か確認する。ここで、病理画像から印環細胞領域、粘液領域、および異物領域をそれぞれ抽出する動作について詳しく説明する。
まず、印環細胞領域の抽出動作について、説明する。
印環細胞とは、胃癌を示す病理画像でしばしば見られる細胞である。印環細胞が見つかると病理医は即座に癌と診断できるため、印環細胞の有無は、病理診断において重要な手がかりとなる。
図4は、病理画像で表示される印環細胞の一例を示す図である。
印環細胞には、図4に示す印環細胞400のように形状が円形に近い、円縁に三日月状の細胞核が存在するという特徴がある。また、印環細胞には、染色された粘液を内部に含む特徴がある。
そこで、画像特徴取得部21は、まず、青の輝度値がしきい値T1よりも大きな画素が所定の数よりも多く存在する領域、および赤の輝度値がしきい値T2よりも大きな画素が所定の数よりも多く存在する染色領域を抽出する。続いて、画像特徴取得部21は、抽出した染色領域について、下記の式(2)を用いて円形度を個別に計測する。
円形度=4π*S/(L*L)・・・(2)
上記の式(2)において、Sは染色領域の面積(画素数)を示し、Lは染色領域の周囲長(染色領域の輪郭の長さ)を示す。上記の式(2)で求められる円形度は、円形に対する類似性を示し、0から1までの値をとり、1に近づくにつれて染色領域の形状が円形に近いことを示す。
画像特徴取得部21は、円形度を計測すると、計測した円形度が所定のしきい値T3よりも大きな染色領域を選択する。そして、選択した染色領域について、細胞核領域が輪郭に位置するものを調べる。染色領域の輪郭に細胞核領域が存在する場合、画像特徴取得部21は、下記の式(3)を用いて、ベクトル長を計測する。
ベクトル長=1−(短径/長径)・・・(3)
ここで、図5を参照ながらベクトル長について説明する。
図5は、病理画像で表示される細胞核の形状の一例を示す図である。
上記の式(3)に示す長径および短径は、図5に示す細胞核500の長径501および短径502である。ベクトル長は、上記の式(3)に示すように形状が円形か楕円形か特徴付けるための値であり、1に近づくにつれて楕円形状であることを示し、0に近づくにつれて円形状であることを示す。画像特徴取得部21は、ベクトル長が所定のしきい値T4よりも大きな細胞核領域を含む染色領域を印環細胞領域と特定する。これにより、病理画像から印環細胞領域が抽出されることとなる。
次に、粘液領域の抽出動作について説明する。
粘液は、病理画像で発見されたとしても即座に癌と診断されるものではないが、他の手がかりと組合わされることで癌診断における有用な要素となる。
粘液は、HE染色によって細胞質よりは淡い赤色に染色される。そのため、HE染色された粘液は、病理画像において、細胞質よりは赤の輝度値が小さい特徴を有する。そこで、画像特徴取得部21は、病理画像において赤の輝度値が下限値をT5、上限値を上述したしきい値T2とする所定の範囲内となる画素が所定の数よりも多く存在する領域を粘液領域と特定する。これにより、病理画像から粘液領域が抽出されることとなる。
次に、異物領域の抽出動作について説明する。
石、クリスタロイドには、病理画像において、腺腔領域内で白以外の色に対応した輝度値で示され、形状が通常の生物組織ではあまり見られない四角いという特徴がある。
そこで、画像特徴取得部21は、腺腔領域の中で、まず、輝度値が白以外に対応した領域を抽出する。続いて、画像特徴取得部21は、抽出した領域について、上記の式(2)、式(3)を用いて円形度およびベクトル長を計測する。そして、画像特徴取得部21は、円形度およびベクトル長がそれぞれ所定の値よりも小さくなる領域を、異物領域と特定する。これにより、病理画像から異物領域が抽出されることとなる。
画像特徴取得部21が特殊領域を抽出すると、特徴計測部22が基本特徴量を計測してメモリ20へ格納する(ステップS3)。具体的には、特徴計測部22は、基本特徴領域について、NC比、面積、周囲長、および円形度を計測するとともに、細胞核については方向ベクトルも計測する。
方向ベクトルとは、細胞核の重心を始点として細胞核の形状と方向を示す特徴量であり、形状を示す特徴量は、上記の式(3)を用いて計測されるベクトル長のことである。また、方向を示す特徴量は、長径の向きを示す角度値であり、角度値は、病理画像の水平方向を0度としたときの0度から180度までの角度に対応する。
腺には、細胞が正常および良性の腫瘍である場合に腺管を構成する細胞核の形状は細長く、細胞が癌である場合に円い特徴がある。そのため、方向ベクトルを計測すると、細長い細胞核と円い細胞核を区別できるため、腺癌であるか否か判断することが可能となる。なお、腺管とは、腺腔とともに腺を構成するものであり、腺空を囲む細胞核の集合体のことである。
なお、ステップS3の動作において計測された基本特徴量は、各基本特徴領域に対応付けてメモリ20に格納される。
特徴計測部22が基本特徴量を計測すると、画像計測部23が構造特徴量を計測する(ステップS4)。具体的には、画像計測部23は、腺領域を抽出して、腺領域の密度、細胞核の極性をそれぞれ計測し、細胞核の二層性の有無について判断する。
まず、腺領域を抽出する動作について説明する。
腺は、上述したように、腺空と腺管とで構成される。腺腔は、通常、細胞組織を含まないため、腺腔領域に基づいて腺領域を抽出することは可能である。しかしながら、腺腔は、HE染色の過程で薄く染色されたり、染色された粘液、石、クリスタロイドのような異物が混入されたりすることがある。そのため、単純に腺空領域に基づいて抽出すると、腺領域を見落とす可能性がある。
そこで、画像計測部23は、病理画像では腺管は腺領域のエッジ(輪郭)として示されることを利用して、病理画像において隣接する画素について輝度値の差を計測し、計測した差が所定の値よりも大きな画素で囲まれる領域を腺領域として特定する。これにより、腺領域を確実に抽出できるようになる。
画像計測部23は、腺領域を抽出すると、病理画像全体または面積が予め定められた領域に対する腺領域の数を示す腺密度を計測してメモリ20に格納する。病理画像において、腺密度が高い所は、腺管が密集していることを示す。すなわち、異常な細胞増殖が起こっていることを示す。
画像計測部23は、腺密度を計測すると、腺領域において腺管を構成する細胞核に二層性があるか否か判定する。判定結果は、乳癌や前立腺癌を診断する際に必要となる情報である。細胞核に二層性があると判定されると、腺は正常または良性の腫瘍ということになる。
図6は、病理画像で表示される腺の形状の一例を示す図である。図6(a)および図6(b)は、細胞核が単層の腺について、組織標本が高倍率、低倍率で拡大されたときの形状をそれぞれ示す。また、図6(c)および図6(d)は、細胞核が二層の腺について、組織標本が高倍率、低倍率で拡大されたときの形状をそれぞれ示す。
組織標本が低倍率で拡大された場合、図6(b)および図6(d)を参照すれば、腺管602と腺管601とでは、厚みが異なることがわかる。そこで、画像計測部23は、特定した腺領域ごとに腺管の厚みを計測する。そして、画像計測部23は、計測した厚みが所定のしきい値T6よりも大きな腺管については二層性があると判定し、しきい値T6よりも小さな腺管については二層性がないと判定し、判定結果を各腺領域に対応付けてメモリ20に格納する。
組織標本が高倍率で拡大された場合、図6(a)および図6(c)を参照すれば、細胞核が二層である腺には、細胞核604と細胞核603のように所定の距離内に方向が同じとなる細胞核が2つ存在することがわかる。
そこで、画像計測部23は、腺領域ごとに、各細胞核に対応する方向ベクトルの方向をメモリ20より読み出して、細胞核603、604のような配置関係にある細胞核の有無を調べる。そして、画像計測部23は、所定の距離内に方向が同じとなる細胞核が2つ存在する腺領域に対して二層性があると判定し、存在しない腺領域に対して二層性がないと判定し、判定結果を各腺領域に対応付けてメモリ20に格納する。
画像計測部23は、二層性の判定を行うと、細胞核の極性を計測する。細胞核の極性とは、組織の内側から外側に向けて細胞核の面積や形状の変化量を示す特徴量である。正常および良性の組織では、一定の方向に細胞核の方向や大きさの変化が保持されるが、癌組織では、それらが保持されず乱雑になる。
そこで、画像計測部23は、特徴計測部22で計測された細胞核領域の面積について病理画像全体または予め定められた領域内における分散値(ばらつきを示す値)や、方向ベクトルに示す角度値について病理画像全体または予め定められた領域内における分散値をそれぞれ計測し、計測した分散値を細胞核の極性としてメモリ20に格納する。
画像計測部23が細胞核の極性を計測すると、表示制御部24が表示部12に対して、方向ベクトルに示す角度値およびベクトル長にそれぞれ対応付けて予め設定された色で細胞核領域を表示させ、ステップS3の動作で抽出された特殊領域を表示させる(ステップS5)。ここで、細胞核領域の色表示について説明する。
図7は、方向ベクトルと色との対応を示す図である。
本実施形態では、図7に示すように方向ベクトルに示す角度値に対応付けて表示部12で表示される色が設定されている。例えば、方向ベクトルの角度値が30°の細胞核領域は、黄色で表示される。また、ベクトル長に応じて輝度値が設定され、本実施形態では、ベクトル長が大きくなるにつれて輝度値も大きくなるように設定される。
表示部12が上記のようにして細胞核領域を色表示すると、細胞核の形状および向きの変化の状態、すなわち組織標本の構造の特徴を視覚的にわかりやすく表示することが可能となる。
なお、ステップS5の動作では、細胞核を色表示するだけでなく、例えば、図8に示す表示画像のように病理医によって選択された細胞核の基本特徴量を表示することとしてもよい。この場合、病理診断支援装置1には例えばマウスなどの操作部が設けられ、病理医は操作部を通じて細胞核を選択する。
上記のように細胞核の基本特徴量を表示すれば、病理診断に関して有用な情報をより多く表示できるため、病理診断の支援内容をより一層充実させることが可能となる。なお、図8では、特殊領域の一つである印環細胞801とともに、病理医によって選択された細胞核800の形状および基本特徴量が示されている。
本実施形態では、病理画像がデジタルカラー画像として入力されると特殊領域の有無が確認され、構造特徴量が表示される。そのため、病理医は病理診断を行う際に有用な情報を得られるようになる。これにより、病理診断の支援内容を充実させることが可能となる。
なお、本発明は、上述した画像処理の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに適用することにしてもよい。
本実施形態の病理診断支援装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。 本実施形態の病理診断支援装置において、画像処理部の構成を示すブロック図である。 本実施形態の病理診断支援装置による画像処理の動作を示すフローチャートである。 病理画像で表示される印環細胞の一例を示す図である。 病理画像で表示される細胞核の形状の一例を示す図である。 病理画像で表示される腺の形状の一例を示す図である。 方向ベクトルと色との対応を示す図である。 本実施形態の病理診断支援装置による表示画像の一例を示す図である。
符号の説明
1 病理診断支援装置
11 画像処理部
12 表示部
20 メモリ
21 画像特徴取得部
22 特徴計測部
23 画像計測部
24 表示制御部

Claims (18)

  1. 染色された組織標本を示すデジタルカラー画像が入力される病理診断支援装置であって、
    表示動作を行う表示部と、
    前記デジタルカラー画像が入力されると、該デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、抽出した前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれの形状の特徴を示す基本特徴量を計測し、前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに前記表示部に表示させる画像処理部と、
    を有する病理診断支援装置。
  2. 請求項1に記載の病理診断支援装置において、
    前記画像処理部は、
    前記デジタルカラー画像、前記基本特徴量、および前記構造特徴量を格納するメモリと、
    前記細胞核領域について、円形か楕円形か特徴付けるための値であるベクトル長、および長径の向きを角度に対応付けて示す角度値を前記基本特徴量として計測する特徴計測部と、
    前記細胞核領域を、前記ベクトル長および前記角度値に対応付けて予め定められた色で前記表示部に表示させる表示制御部と、
    を有する病理診断支援装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の病理診断支援装置において、
    前記画像処理部は、
    前記細胞核領域が前記腺腔領域を囲む領域である腺領域を、隣接する画素の輝度値の差に基づいて抽出し、抽出した腺領域の数を前記構造特徴量として計測する画像計測部を、有する病理診断支援装置。
  4. 請求項3に記載の病理診断支援装置において、
    前記画像計測部は、前記デジタルカラー画像において、前記細胞核領域の面積のばらつきを示す分散値、および前記角度値のばらつきを示す分散値を前記構造特徴量としてそれぞれ計測する、病理診断支援装置。
  5. 請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の病理診断支援装置において、
    前記画像処理部は、
    前記輝度値に基づいて前記組織標本において染色された領域を示す染色領域を抽出し、抽出した染色領域について円形に対する類似性を示す円形度を計測し、計測した円形度が所定の値よりも大きな染色領域を選択し、選択した染色領域のうち、前記細胞核領域が輪郭に位置し、かつ前記ベクトル長が所定のしきい値よりも大きい染色領域を印環細胞と特定し、特定した印環細胞を前記特殊領域として抽出する画像特徴取得部を有する、病理診断支援装置。
  6. 請求項5に記載の病理診断支援装置において、
    前記画像特徴取得部は、前記輝度値が所定の範囲内となる画素が所定の数よりも多く存在する領域を粘液領域と特定し、特定した粘液領域を前記特殊領域として抽出する、病理診断支援装置。
  7. 染色された組織標本を示すデジタルカラー画像を用いて病理診断を支援する方法であって、
    前記デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、
    前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれの形状の特徴を示す基本特徴量を計測し、
    前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、
    前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、
    前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに表示する、病理診断支援方法。
  8. 請求項7に記載の病理診断支援方法において、
    前記細胞核領域について、円形か楕円形か特徴付けるための値であるベクトル長、および長径の向きを角度に対応付けて示す角度値を前記基本特徴量として計測し、
    前記細胞核領域を、前記ベクトル長および前記角度値に対応付けて予め定められた色で表示する、病理診断支援方法。
  9. 請求項7または請求項8に記載の病理診断支援方法において、
    前記細胞核領域が前記腺腔領域を囲む領域である腺領域を、隣接する画素の輝度値の差に基づいて抽出し、抽出した腺領域の数を前記構造特徴量として計測する、病理診断支援方法。
  10. 請求項9に記載の病理診断支援方法において、
    前記デジタルカラー画像において、前記細胞核領域の面積のばらつきを示す分散値、および前記角度値のばらつきを示す分散値を前記構造特徴量としてそれぞれ計測する、病理診断支援方法。
  11. 請求項8から請求項10までの何れか1項に記載の病理診断支援方法において、
    前記輝度値に基づいて前記組織標本において染色された領域を示す染色領域を抽出し、抽出した染色領域について円形に対する類似性を示す円形度を計測し、計測した円形度が所定の値よりも大きな染色領域を選択し、選択した染色領域のうち、前記細胞核領域が輪郭に位置し、かつ前記ベクトル長が所定のしきい値よりも大きい染色領域を印環細胞と特定し、特定した印環細胞を前記特殊領域として抽出する、病理診断支援方法。
  12. 請求項10に記載の病理診断支援方法において、
    前記輝度値が所定の範囲内となる画素が所定の数よりも多く存在する領域を粘液領域と特定し、特定した粘液領域を前記特殊領域として抽出する、病理診断支援方法。
  13. 染色された組織標本を示すデジタルカラー画像を処理するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
    前記デジタルカラー画像の画素の輝度値に基づいて細胞核領域、細胞質領域、腺腔領域をそれぞれ抽出し、
    抽出した前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域について形状の特徴を示す基本特徴量をそれぞれ計測し、
    前記輝度値および前記基本特徴量に基づいて、前記細胞核領域、前記細胞質領域、および前記腺腔領域のそれぞれに、前記組織標本の病状に応じて出現が限られる特殊領域が存在するか否か確認し、
    前記細胞核領域の基本特徴量に基づいて前記細胞核領域の配置状態を示す構造特徴量を計測し、
    前記特殊領域が存在する場合には、該特殊領域を抽出して前記構造特徴量および前記細胞核領域とともに表示する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
  14. 請求項13に記載のプログラムにおいて、
    前記細胞核領域について、円形か楕円形か特徴付けるための値であるベクトル長、および長径の向きを角度に対応付けて示す角度値を前記基本特徴量として計測し、
    前記細胞核領域を、前記ベクトル長および前記角度値に対応付けて予め定められた色で表示する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
  15. 請求項14または請求項15に記載のプログラムにおいて、
    前記細胞核領域が前記腺腔領域を囲む領域である腺領域を、隣接する画素の輝度値の差に基づいて抽出し、抽出した腺領域の数を前記構造特徴量として計測する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
  16. 請求項15に記載のプログラムにおいて、
    前記デジタルカラー画像において、前記細胞核領域の面積のばらつきを示す分散値、および前記角度値のばらつきを示す分散値を前記構造特徴量としてそれぞれ計測する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
  17. 請求項14から16までのいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
    前記輝度値に基づいて前記組織標本において染色された領域を示す染色領域を抽出し、抽出した染色領域について円形に対する類似性を示す円形度を計測し、計測した円形度が所定の値よりも大きな染色領域を選択し、選択した染色領域のうち、前記細胞核領域が輪郭に位置し、かつ前記ベクトル長が所定のしきい値よりも大きい染色領域を印環細胞と特定し、特定した印環細胞を前記特殊領域として抽出する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
  18. 請求項17に記載のプログラムにおいて、
    前記輝度値が所定の範囲に含まれる画素が所定の数よりも多く存在する領域を粘液領域と特定し、特定した粘液領域を前記特殊領域として抽出する処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
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