JP2009178110A - 育苗方法及びこれに用いられる育苗シート - Google Patents

育苗方法及びこれに用いられる育苗シート Download PDF

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【課題】低コストで育苗でき、育苗に要する作業効率及び育苗性能を向上させることができる育苗方法及びこれに用いる育苗シートを提供する。
【解決手段】育苗箱1の内部に、農薬及び肥料が含浸された育苗シート2を敷設する工程と、当該育苗シート2が敷設された育苗箱1内部に、床土として培土3を充填した後、当該培土3の上に、種籾4を播種する工程と、播種後の育苗箱1内部に、覆土として培土5を充填する工程と、を経て、育苗を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、水稲の乳苗、稚苗、中苗など各種苗の育苗方法及びこれに用いられる育苗シートに関するものである。
従来、水稲の乳苗を育苗するための方法として、特許文献1では、育苗箱の内部に床土として成型培地を充填した後、この成型培地の上に種籾を播種し、その後、播種後の成型培地の上に、覆土の代わりにシート状物を被せる方法が提案されている。
ここで、特許文献1では、成型培地の一例として、木材の繊維分を結合剤と共に水中に分散させ、これを抄造してマット状に成型して得られるパルプマットやピートモスを圧縮成型したピートモスマットなどの有機繊維からなるものや、ロックウール、グラスウール、セラミックファイバーなどをマット状に成型加工した無機繊維からなるものが挙げられている。
また、特許文献1では、シート状物の一例として、例えば、木材の繊維分を結合剤と共に水中に分散させ、これを抄造して紙としたもの(例えば、和紙)や、合成樹脂又は水溶性樹脂をシート状に加工したもの(例えば、ポリスチレンシート)が挙げられている。
このような特許文献1に記載の育苗方法では、播種後の成型培地の上にシート状物を被せることで、重量のある天然土壌(培土)からなる覆土を充填する必要がなくなるため、作業者の負担が軽減されるという利点がある。
特開平5−103554号公報
しかしながら、上述した特許文献1においては、床土として、パルプマットやピートモスマットなどの有機繊維からなる成型培地や、ロックウール、グラスウール、セラミックファイバーなどの無機繊維からなる成型培地を用いているため、育苗箱の内部寸法に合わせて成型する必要があり、成型コストや体積が嵩むため、コスト面及び作業面で未だ改善の余地があった。
また、上述した特許文献1においては、覆土の代わりにシート状物を被せることで育苗箱全体の重さは低減するものの、シート状物をプラスチックシート等の素材で構成すると播種後出芽した段階でシート状物を取り除く作業が必要であり、作業面で未だ改善の余地があった。一方、シート状物を紙等の水溶性素材で構成するとそれ自体のコストが嵩み、且つ、育苗に必要な水分の確保が難しくなるため、コスト面及び育苗性能の面で未だ改善の余地があった。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低コストで育苗でき、且つ、育苗に要する作業効率及び育苗性能を向上させることができる育苗方法及びこれに用いる育苗シートを提供することを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明に係る育苗方法は、育苗箱の内部に、農薬及び肥料の少なくとも一つが含浸された育苗シートを敷設する工程と、当該育苗シートが敷設された前記育苗箱の内部に、床土として培土を充填した後、当該培土の上に、種を播種する工程と、種が播種された前記育苗箱の内部に、覆土として培土を充填する工程と、を備えたことを特徴としている。
なお、本発明に係る育苗方法で使用する育苗シートの素材としては、特に限定されないが、例えば、木材等植物の繊維分を結合剤と共に水中に分散させ、これを抄造して紙としたもの(例えば、和紙・藁半紙)や、合成樹脂又は水溶性樹脂をシート状に加工したもの(例えば、ポリスチレンシート)、さらには廃棄紙を再生したリサイクルペーパーが挙げられ、より好ましくは、水溶性や生分解性を有する素材とすることが好ましい。
また、育苗シートの厚みは、特に限定されないが、必要な農薬及び肥料を確実に含浸可能で、所定の強度を確保することを考慮すると、例えば、0.1mm以上1cm以下とすることが好ましい。
さらに、育苗シートに農薬や肥料を含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、農薬成分や肥料成分を溶解させた水溶液に育苗シートを浸し、農薬や肥料を充分浸透させた後に水溶液から引き上げて乾燥させる方法や、育苗シートの片面又は両面に、農薬成分や肥料成分を溶解させた水溶液を噴霧又は塗布した後に乾燥させる方法が挙げられる。
また、育苗シートに含浸させる農薬や肥料としては、育てる苗種及び生育させる苗丈や、用いる培土に応じて、適宜選択する。
本発明によれば、農薬及び肥料の少なくとも一つが含浸された育苗シートを育苗箱の内部に敷いた後、床土として培土を充填して播種し、さらにその上に覆土として培土を充填するようにしたことにより、床土としてロックウールなどの成型培地を用いた場合と比べて、床土の成型コストが不要で、育苗に要する作業効率を向上させることができる。
また、本発明によれば、播種後に覆土として培土を充填するようにしたことにより、覆土の代わりにシート状物を被せる場合と比べて、育苗箱全体の重さは増加するものの、覆土に要するコストを低減できるとともに、育苗に必要な水分を確保することができるため、低コストで育苗でき、且つ、作業効率及び育苗性能を向上させることができる。
本発明に係る育苗シートは、農薬及び肥料の少なくとも一つが含浸されていることを特徴としている。なお、育苗シートに含浸させる農薬及び肥料は、育てる苗種及び生育させる苗丈や、用いる培土に応じて、適宜変更可能である。
本発明によれば、育苗シート自体に農薬や肥料が含浸させていることにより、育苗箱の内底に敷いて用いることで、培土に農薬や肥料を混合させる工程や、培土を充填した後に農薬や肥料を施す工程が不要となるため、効率よく育苗を行うことができる。
ここで、本発明に係る育苗シートにおいては、前記農薬及び肥料として、育苗時に必要となる量が全て含浸されていてもよい。
この構成によれば、この育苗シートを育苗床に敷設するだけで、床土や覆土となる培土に農薬や肥料を混合させる工程や、床土や覆土となる培土を充填後に農薬や肥料を施す工程が不要となるため、育苗に要する作業効率をさらに向上させることができる。
また、本発明に係る育苗シートにおいては、前記農薬及び肥料として、育苗時に必要となる量のみならず、本田移植から収穫までに必要となる量が全て含浸されていてもよい。
この構成によれば、この育苗シートを育苗箱に敷設するだけで、育苗箱及び本田に農薬や肥料を施す工程が不要となるため、育苗から収穫までに要する作業効率を大幅に向上させることができる。
本発明に係る育苗方法によれば、低コストで育苗でき、且つ、育苗に要する作業効率及び育苗性能を向上させることが可能となる。
また、本発明に係る育苗シートによれば、本発明に係る育苗方法をより効率よく行うことが可能となる。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る育苗方法の各工程を示し、(a)は第一工程の斜視図、(b)は図1(a)のX−X断面図、(c)は図1(a)のX−X断面からみた第二工程の断面図、(d)は図1(a)のX−X断面からみた第三工程を示す断面図である。
本実施形態における育苗方法は、まず、公知の育苗箱(例えば、内部寸法が縦60cm×横30cm×高さ3cm)と、農薬及び肥料が含浸された育苗シート(縦60cm×横30cm×厚さ0.1cm)を用意する。
なお、育苗箱の底面には、水抜き用の貫通孔(図示せず)が複数形成されている。また、育苗シートは、リサイクルペーパーからなり、農薬及び肥料が含浸されている。
次に、図1(a),(b)に示すように、用意した育苗箱1の内底面全体に、用意した育苗シート2を敷設する(第一工程)。
次に、図1(c)に示すように、育苗シート2が敷設された育苗箱1内部に、床土として培土3を充填した後、育苗箱1内部に充填された培土3の上に、種籾(種)4を播種する(第二工程)。
次に、図1(d)に示すように、種4を播種した後の育苗箱1内部に、覆土として培土5を充填する。
そして、これらの工程を経た育苗箱1を複数段重ねた状態で、30℃程度で48時間加温して発芽させて所定の草丈まで育苗し、完成させた乳苗を本田に移植する。
本実施形態における育苗方法によれば、育苗箱1の内底に農薬及び肥料を含浸させた育苗シート2を敷いた後、床土として培土3を充填して種籾4を播種し、さらにその上に覆土として培土5を充填するようにしたことにより、床土としてロックウールなどの成型培地を用いた場合と比べて、成型コストが不要で且つ寸法の異なる各種育苗箱1に適宜対応することができるため、低コストで育苗することが可能になり、且つ、育苗に要する作業効率が良好となる。
また、本実施形態における育苗方法によれば、農薬及び肥料の両方を含浸させた育苗シート2を用いているため、育苗シート2を敷いた後に床土として充填する培土3や、播種後に覆土として充填する培土5に農薬や肥料などを混合させる工程や、これらの培土3,5の他に農薬や肥料を施す工程が不要となる。よって、育苗に要する作業効率がさらに良好になる。
さらに、本実施形態における育苗方法によれば、覆土として培地5を用いていることにより、育苗に必要な水分を確保することができるため、覆土の代わりにシート状物を被せた従来技術と比べて、育苗性能を向上させることができる。
さらに、本実施形態における育苗方法によれば、育苗箱1の内底面全体に育苗シート2を敷いたことにより、育苗箱1の内底面に網などからなる培土漏出防止部材を設置しなくても、育苗箱1の底面に設けられた水抜き用貫通孔からの培土3の漏出を防止することができる。
なお、本実施形態では、育苗シート2として、農薬及び肥料の両方を含浸させたものを用いた場合について説明したが、これに限らず、農薬及び肥料の少なくともいずれか一方を含浸させたものを用いてもよい。
また、本実施形態では、育苗箱1の内底面全体に育苗シート2を敷く場合について説明したが、育苗シート2の敷設部分はこれに限らず、育苗箱1の内底面の一部に敷いてもよいし、育苗箱1の内底面及び側面に敷いてもよい。
さらに、本実施形態で用いた育苗箱1及び育苗シート2の寸法は一例に過ぎず、育てる苗種や生育させる苗丈に応じて、適宜変更可能である。
本発明に係る育苗方法の各工程を示し、(a)は第一工程の斜視図、(b)は図1(a)のX−X断面図、(c)は図1(a)のX−X断面からみた第二工程の断面図、(d)は図1(a)のX−X断面からみた第三工程を示す断面図である。
符号の説明
1 育苗箱
2 育苗シート
3 培土(床土)
4 種籾(種)
5 培土(覆土)

Claims (4)

  1. 育苗箱の内部に、農薬及び肥料の少なくとも一つが含浸された育苗シートを敷設する工程と、
    当該育苗シートが敷設された前記育苗箱の内部に、床土として培土を充填した後、当該培土の上に、種を播種する工程と、
    当該種が播種された前記育苗箱の内部に、覆土として培土を充填する工程と、
    を備えたことを特徴とする育苗方法。
  2. 農薬及び肥料の少なくとも一つが含浸されていることを特徴とする育苗シート。
  3. 前記農薬及び肥料として、育苗時に必要となる量が全て含浸されていることを特徴とする請求項2に記載の育苗シート。
  4. 前記農薬及び肥料として、育苗時に必要となる量のみならず、本田移植から収穫までに必要となる量が全て含浸されていることを特徴とする請求項2に記載の育苗シート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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