JP2009175116A - 傾斜センサ装置 - Google Patents

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一仁 藺牟田
Koichi Hirayama
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Abstract

【課題】 小型化が容易であり、傾き(傾斜)の検知精度や長期信頼性の高い傾斜センサ装置を提供する。
【解決手段】 柱状の空間1の外側に空間1を囲む複数個のコイル状導体2が長さ方向に配列され、内側に空間1の傾きに応じて複数個のコイル状導体2の間を移動可能な高透磁率体ブロック3が配置されている傾斜センサ装置9である。空間1の傾きに応じて移動する高透磁率体ブロック3により、配列されたコイル状導体2のインダクタンスが順次変化し、このインダクタンスの変化により空間1の傾きを容易に検知することができる。また、コイル状導体2と高透磁率体ブロック3とが直接接触しないので、コイル状導体2の磨耗が抑制され、長期信頼性を高くすることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、携帯電話やPDA(携帯情報端末、Personal Digital Assistant)等の電子機器や、車両等の傾斜(傾き)の方向を検知する傾斜センサ装置に関するものである。
従来、傾斜を検知するための傾斜センサ装置として、樹脂等の電気絶縁体から成る筐体と、線状の金属材料等から成り、筐体の内側から外側に貫通するようにして配設され、互いに電気的に独立した複数の導電ピンと、筐体の内部に封入された導電性の球体とを具備した構造のものが多用されている。筐体は、通常、上板と下板とから構成され、導電性の球体が封入された内部の外周部分に導電ピンが配列されている。この導電ピンは、上板や下板を厚み方向に貫通するようにして取り付けられている。また、上板と下板とを接合するときに、その間に球体を入れておくことにより、上板と下板とから成る筐体の内部に球体が封入される。
このような傾斜センサ装置は、導電ピンのうち筐体の外側に露出している部分が外部電気回路基板の電気回路に半田等を介して電気的に接続される。導電ピンが接続される外部の電気回路は、電流計等の検知器やブザー等を含む検知器等に電気的に接続されている。
そして、傾斜センサ装置の傾きに応じて筐体内で球体が転がって移動し、隣り合う2本の導電ピンの間が導電性の球体で電気的に接続され、この電気的な接続を検知することにより、導電性の球体が移動した方向、つまり傾きの方向を検知することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
また、シリコンオイル等の流動体(誘電体)を容器内に封入し、容器を挟んで対向する上部電極および下部電極の間の静電容量の変化により容器の傾斜の方向を検知する静電容量型の傾斜センサ装置も使用されている(例えば、特許文献2を参照。)。
この傾斜センサ装置を、トラクター等の不整地での作業用の車両の転倒防止装置等の機器を構成する外部電気回路基板に部品として搭載することにより、この傾斜センサ装置が搭載された転倒防止装置(つまり車両等)の傾きの方向を検知することができる。
特開平11−162306号公報 特開平10−160458号公報
しかしながら、従来の傾斜センサ装置においては、導電ピンを筐体の内側から外側に貫通するようにして配設し、この導電ピンを外部電気回路基板上に検知装置等に電気的に接続されるようにして実装する必要があるため、いわゆる表面実装や小型化が難しいという問題があった。
また、球体と導電ピンとが直接接触し合うため、導電ピンに磨耗や変形等が生じて導電ピンと球体とが良好に接触しなくなる可能性があり、長期信頼性を高くすることが難しいという問題もあった。
また、流動体を容器に封入してなる傾斜センサ装置の場合には、容器を小さくすると、流動体の表面張力や容器の壁面に対する濡れ(這い上がり)等による流動体の表面(液面)の変動の影響が大きくなる傾向があるため、静電容量の測定精度が低下して傾きの検知精度が低下する可能性がある。そのため、小型化が難しいという問題があった。
また、容器に加わる振動等のために流動体の液面が変動して静電容量が不規則に変動し、傾きを検知する精度が低下する可能性もある。
特に、近年、このような傾斜センサ装置は、携帯電話やPDA等の小型で、かつ手持ち等の不安定な状態で使用される電子機器に搭載されるようになってきているため、小型で精度の高い傾斜センサ装置に対する需要が高くなっている。
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、小型化が容易であり、傾き(傾斜)の検知精度や長期信頼性の高い傾斜センサ装置を提供することにある。
本発明の傾斜センサ装置は、柱状の空間の外側に前記空間を囲む複数個のコイル状導体が長さ方向に配列され、内側に前記空間の傾きに応じて前記複数個のコイル状導体の間を移動可能な高透磁率体ブロックが配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記空間が絶縁容器に形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記空間が、中央部が低くなるように湾曲していることを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記複数個のコイル状導体は、隣接するもの同士の間隔が、前記高透磁率体ブロックの前記空間の長さ方向の外形寸法よりも小さく、該外形寸法の半分よりも大きいことを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記空間が四角柱状であり、側面から見た外形寸法が前記空間の断面に納まるように円柱状の前記高透磁率体ブロックが配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記高透磁率体ブロックが強磁性体であり、前記空間の中央部の外側に磁石が配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の傾斜センサ装置は、上記構成において、前記複数個のコイル状導体は、巻き数が互いに異なっているとともに、互いに直列に接続されていることを特徴とするものである。
本発明の傾斜センサ装置によれば、柱状の空間の外側にその空間を囲む複数個のコイル状導体が長さ方向に配列され、内側に空間の傾きに応じて複数個のコイル状導体の間を移動可能な高透磁率体ブロックが配置されていることから、空間の傾きに応じて、つまりこの傾斜センサ装置が搭載された機器が傾いた方向の下側に向かって、高透磁率体ブロックが重力(重力の分力)により移動する。コイル状導体のインダクタンスは、その内側の部分の透磁率に応じて、通常は比例して変化するので、内側の空間に高透磁率体ブロックが移動して来たときには高くなる。
そのため高透磁率体ブロックが移動した側(傾きの下側)で、高透磁率体ブロックが移動してきたことを、空間の外側に位置するコイル状導体のインダクタンスの変化により検知することができる。したがって、コイル状導体のインダクタンスを測定して、その変化を検知することにより、高透磁率体ブロックが移動した方向、つまり傾きの方向を容易に、高い精度で検知することができる。
また、傾きの方向は、コイル状導体のインダクタンスの変化で検知することができるので、高透磁率体ブロックがコイル状導体に直接接触する必要はなく、両者が直接接触した場合に発生しやすいコイル状導体の磨耗や変形等を効果的に防止することができる。
また、高透磁率体ブロックの移動によりコイル状導体のインダクタンスを変化させるため、従来の流動体(誘電体)を用いた傾斜センサ装置における問題点を解決する上でも有効である。すなわち、不規則な振動等に起因して流動体の液面が変化し、容量電極を構成する上下の電極の間に介在する誘電体の厚さが変動して、静電容量の変化および傾斜の方向を誤って検知するようなことが防止される。また、高透磁率体ブロックについて表面張力を考慮する必要はなく、高透磁率体ブロックがコイル状導体の内側の空間に存在することにより、そのコイル状導体のインダクタンスを効果的に変化させることができる。そのため、小型化の容易な傾斜センサ装置とすることができる。
従って、本発明の傾斜センサ装置によれば、小型化が容易であり、傾きの検知精度や長期信頼性の高い傾斜センサ装置を提供することができる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、空間が絶縁容器に形成されている場合には、絶縁容器内の空間に高透磁率体ブロックを収容するとともに、空間の長さ方向に配列されるコイル状電極を、空間を形成する絶縁容器の内部や外表面に形成することにより、次のような効果を得ることができる。
すなわち、高透磁率体ブロックを確実に空間内に配置させて、複数のコイル状電極の間を空間の傾きに応じて移動させることができる。そのため、コイル状導体の内側に高透磁率体ブロックをより確実に存在させて、コイル状導体のインダクタンスを効果的に変化させることができる。
また、高透磁率体ブロックとコイル状導体との間に絶縁容器の一部が介在することにより、コイル状導体の高透磁率体ブロックとの直接の接触による磨耗や欠け等を効果的に防止することができる。また、絶縁容器に、隣接するもの同士の電気絶縁性を良好に確保しながら、複数個のコイル状導体を空間の長さ方向に配列形成することが容易である。従って、この場合には、傾斜センサ装置としての信頼性や生産性を向上させることができる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、空間が、中央部が低くなるように湾曲している場合には、空間が真っ直ぐであるような場合に比べて、高透磁率体ブロックの空間の外周部への移動が空間の底面の湾曲によって抑制される。そのため、傾斜センサ装置のわずかな傾きや、誤って加わった振動等による外力(空間の傾きにより作用する重力の分力とは異なる力)により高透磁率体ブロックが空間の外周部へ移動してしまうようなことは抑制される。そして、検知したい所定の角度に空間が傾斜したときに、初めて高透磁率体ブロックが空間内を移動し、移動した部分で外側のコイル状導体のインダクタンスを変化させて傾きが検知される。つまり、この構成の場合には、検知の感度が過敏になることを抑制する上で有効である。
また、この場合には、空間が水平なときには高透磁率体ブロックが湾曲した空間の下面等の内面に沿って中央部に移動し得る。そのため、例えば中央部に対応したコイル状導体を配置して、その中央部のコイル状導体のインダクタンスが変化したときには高透磁率体ブロックが空間の中央部に位置している(空間が傾いておらず水平である)と検知できるようにして、空間が水平であることの検知をより確実なものとすることもできる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、複数のコイル状導体は、隣接するもの同士の間隔が、高透磁率体ブロックの空間の長さ方向の外形寸法よりも小さく、外形寸法の半分よりも大きい場合には、より検知精度の高い傾斜センサ装置とすることができる。
すなわち、隣接するコイル状導体同士の間隔が、高透磁率体ブロックの空間の長さ方向の外形寸法よりも小さい場合には、空間の傾きに応じて移動した高透磁率体ブロックが、隣り合うコイル状導体の間に偶然に入り込み、いずれのコイル状導体においてもインダクタンスの変化が生じないというようなことが効果的に防止される。また、この間隔が外形寸法の半分よりも大きい場合には、例えば隣り合う3個以上のコイル状導体に跨って内側に高透磁率体ブロックが入り込むようなことが防止されるため、多数のコイル状導体でインダクタンスが変化して高透磁率体ブロックの位置の検知精度が低くなる、というようなことが効果的に防止される。
そのため、空間が傾いているにもかかわらず、いずれのコイル状導体においてもインダクタンスが変化せず、傾いていないと誤検知されるようなことや、高透磁率体ブロックの位置を基にした傾斜の検知精度が低下するようなことが効果的に防止され、より検知精度の高い傾斜センサ装置とすることができる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、空間が四角柱状であり、側面から見た外形寸法が空間の断面に納まるように円柱状の高透磁率体ブロックが配置されている場合には、側面から見たときに四角形状である円柱状の高透磁率体ブロックが、大きな隙間を生じることなく四角柱状の空間にちょうど納まっているので、空間内で高透磁率体ブロックが動く範囲が主に空間の長さ方向に制限される。そのため、高透磁率体ブロックが、例えば空間の幅方向や高さ方向に不規則に大きく動いて、空間を構成する部材の内面にぶつかるようなことは抑制される。また、高透磁率体ブロックの側面に、空間を構成する部材の内側面と衝突した際に欠けや亀裂等が生じる可能性の高い、角部分や突起部分がない。
したがって、この場合には、高透磁率体ブロックに機械的な破壊が生じることが抑制され、傾斜センサ装置としての長期信頼性を向上させることができる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、高透磁率体ブロックが強磁性体であり、空間の中央部の外側に磁石が配置されている場合には、高透磁率体ブロックと磁石との間で引き合う磁力が生じるので、高透磁率体ブロックの空間の外周部への移動が抑制される。そのため、傾斜センサ装置のわずかな傾きや、誤って加わった振動等による外力(空間の傾きにより作用する重力の分力とは異なる力)により高透磁率体ブロックが空間の外周部へ移動してしまうようなことが抑制される。そして、検知したい所定の角度に空間が傾斜したときに、初めて高透磁率体ブロックが空間内を移動し、移動した部分で外側のコイル状導体のインダクタンスを変化させて傾きが検知される。つまり、この構成の場合には、検知の感度が過敏になることを抑制する上で有効である。
また、この場合には、空間が水平なときには高透磁率体ブロックが磁力により空間の下面等の内面に沿って中央部に移動し得る。そのため、例えば中央部に対応したコイル状導体を配置して、その中央部のコイル状導体のインダクタンスが変化したときには高透磁率体ブロックが空間の中央部に位置している(空間が傾いておらず水平である)と検知できるようにして、空間が水平であることの検知をより確実なものとすることもできる。
また、本発明の傾斜センサ装置は、複数個のコイル状導体は、巻き数が互いに異なっているとともに、互いに直列に接続されている場合には、直列に接続された複数個のコイル状導体の合計のインダクタンスの変化の程度を検知することにより、どのコイル状導体においてインダクタンスが変化しているか、つまりどのコイル状導体の位置に高透磁率体ブロックが移動しているかを検知して、空間の傾斜を検知することができる。
すなわち、個々のコイル状導体のインダクタンスが、そのコイル状導体の内側部分の透磁率および断面積に比例し、巻き数の2乗に比例するため、それぞれのコイル状導体の内側に高透磁率体ブロックが存在していないとき、複数個のコイル状導体のそれぞれのインダクタンスは互いに異なる。また、コイル状導体の内側に高透磁率体ブロックが移動してきたときのインダクタンスの増加量は、そのコイル状導体の巻き数の2乗に比例して異なる。また、複数個のコイル状導体の合計のインダクタンスは複数個のコイル状導体のインダクタンスの和である。そのため、複数個のコイル状導体の合計のインダクタンスの変化量を検知することにより、どのコイル状導体においてその内側の透磁率が変化しているか、つまり高透磁率体ブロックがどのコイル状導体の位置に存在しているかを容易に検知することができる。
従って、この場合には、複数個のコイル状導体のインダクタンスをそれぞれ測定する必要はなく、より容易に傾斜を検知することが可能な傾斜センサ装置とすることができる。
本発明の傾斜センサ装置について、添付の図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の一例を示す透視図であり、図2は、図1に示す傾斜センサ装置の上面図である。図1および図2において、1は空間、2はコイル状導体、3は空間1の内側に配置された高透磁率体ブロック、4は内部に空間1が形成された絶縁容器、9は傾斜センサ装置である。
この傾斜センサ装置9は、傾斜センサ装置9(空間1)の傾きに応じて空間1の内側に配置した高透磁率体ブロック3が複数個のコイル状導体2の間を移動し、この移動に伴いコイル状導体2の内側の透磁率が変化し、この透磁率の変化に応じて、通常は比例してコイル状導体2のインダクタンスが順次変化することを利用して傾きの方向を検知する。
すなわち、この傾斜センサ装置9によれば、柱状の空間1の外側にその空間1を囲む複数個のコイル状導体2が長さ方向に配列され、内側に空間1の傾きに応じて複数個のコイル状導体2の間を移動可能な高透磁率体ブロック3が配置されていることから、空間1の傾きに応じて、つまりこの傾斜センサ装置9が搭載された機器(図示せず)が傾いた方向の下側に向かって、高透磁率体ブロック3が重力(重力の分力)により移動する。コイル状導体2のインダクタンスは、その内側の部分の透磁率の変化に応じて、通常は比例して変化するので、内側の空間1に高透磁率体ブロック3が存在しているときには高くなる。
そのため高透磁率体ブロック3が移動した側(傾きの下側)で、高透磁率体ブロック3が移動してきたことを、空間1の外側に位置するコイル状導体2のインダクタンスの変化により検知することができる。したがって、コイル状導体2のインダクタンスを測定して、その変化を検知することにより、高透磁率体ブロック3が移動した方向、つまり傾きの方向を容易に、高い精度で検知することができる。
また、傾きの方向は、コイル状導体2のインダクタンスの変化で検知することができるので、高透磁率体ブロック3がコイル状導体2に直接接触する必要はなく、両者が直接接触した場合に発生しやすいコイル状導体2の磨耗や変形等を効果的に防止することができる。
また、高透磁率体ブロック3の移動によりコイル状導体2のインダクタンスを変化させるため、従来の、流動体(誘電体)を用いた傾斜センサ装置(図示せず)における問題点を解決する上でも有効である。すなわち、不規則な振動等に起因して流動体の液面が変化し、容量電極を構成する上下の電極の間に介在する誘電体の厚さが変動して、静電容量の変化および傾斜の方向を誤って検知するようなことが防止される。また、高透磁率体ブロック3について表面張力を考慮する必要はなく、高透磁率体ブロック3が内側の空間1に存在することによりコイル状導体2のインダクタンスを効果的に変化させることができる。そのため、小型化の容易な傾斜センサ装置9とすることができる。
従って、本発明の傾斜センサ装置9によれば、小型化が容易であり、傾きの検知精度や長期信頼性の高い傾斜センサ装置9を提供することができる。
空間1は、高透磁率体ブロック3を配置すること、およびこの高透磁率体ブロック3がそれぞれの間を移動することが可能な複数個のコイル状導体2を長さ方向に配列させることが可能な形状および寸法を有している。
そのため空間1は、例えば、複数個のコイル状導体2を長さ方向に配列させ得る四角柱状や三角柱状,六角柱状等の多角形の柱状または円柱状等の柱状に形成されている。なお、空間1は、これらの形状であって全体的にまたは部分的に湾曲しているようなものや、傾きを検知するための高透磁率体ブロック3の移動を妨げない程度の凹凸が一部に設けられているようなものでもよい。
この図1,2に示す実施の形態の例においては、四角柱状の絶縁容器4を中空状に形成し、その中空状の部分(四角柱状)により空間1を形成している。
なお、空間1は、鉄や銅,アルミニウムまたはこれらの合金等の金属材料等の導電性の材料からなる容器(図示せず)に形成してもよい。この場合には、容器のうち後述するコイル状導体2を形成する部分は、例えば電気絶縁性の材料で被覆して、コイル状導体2の間の電気絶縁性を確保しておけばよい。
コイル状導体2は、その内側の部分における透磁率に比例してインダクタンスが変化する導体線であり、前述したように、このインダクタンスが変化することにより空間1の傾斜の方向を検知するためのものである。
このコイル状導体2は、空間1の外側で空間1を囲むような環状や枠状の導体線であり、一般的な円環状の導体線(コイル)に限らず、空間1の断面形状に応じた形状とすればよいものであって、図1,2に示したような四角枠状のものも含む。なお、コイル状導体2のインダクタンス(L)は、一般に、その内側部分の透磁率(μ)および断面積(S)に比例し、巻き数(空間1を囲む回数)(n)の2乗に比例する(L=μ×n×S)。
コイル状導体2は、高透磁率体ブロック3が移動することによるインダクタンスの変化を検知し、これにより傾きの方向を検知するものであるため、複数個が空間1の長さ方向に配列されている必要がある。すなわち、柱状の空間1の長さ方向に沿って複数個のコイル状導体2が配列されていることにより、どのコイル状導体2のインダクタンスが変化したかを検知すれば、空間1のどの部分に高透磁率体ブロック3が移動しているか、つまり空間1がどのコイル状導体2の方向に傾いているか(または傾きつつあるか)を容易に検知することができる。
この図1,2に示す実施の形態の例では四角柱状の空間1の長さ方向に5個のコイル状導体2が配列されている。また、それぞれのコイル状導体2は、隣り合うもの同士の間隔(隣接間隔)が一定になるように配列されている。複数個のコイル状導体2の隣接間隔を一定にした場合には、高透磁率体ブロック3が隣り合うコイル状導体2の間を移動するのに要した時間の変化を測定して解析することにより、傾斜の程度を検知することもできる。例えば、この場合の時間の変化は高透磁率体ブロック3の移動速度の変化、つまり高透磁率体ブロック3の加速度として検知することができ、加速度を基にして高透磁率体ブロック3に作用した力である傾きの程度に応じた重力の分力を算出することができ、この分力の大きさから傾きの角度を算出することができる。
また、高透磁率体ブロック3は、空間1の傾きに応じて空間1内を移動し、その移動した部分に位置しているコイル状導体2のインダクタンスを大きくする機能を有している。この高透磁率体ブロック3が配置された空間1の外側で空間1を囲むコイル状導体2のインダクタンスを測定し、その変化を検知することにより、高透磁率体ブロック3が移動している方向、つまり空間1の傾斜している方向を検知することができる。
このため、高透磁率体ブロック3は、空間1の傾いた方向に移動できるような形状および寸法で形成されて空間1内に収容されている。空間1内での高透磁率体ブロック3の移動は、例えば四角柱状の空間1の下面上を、空間1の傾きに起因して作用する重力の分力によって滑り、または転がることによるものである。
このような移動を容易とするために、高透磁率体ブロック3は、三角柱状や四角柱状(直方体状)等の多角形の柱状や、円柱状,楕円柱状,球状等に形成されている。なお、高透磁率体ブロック3は、これらの形状であって上下面や側面等が湾曲しているものや、一部に凹凸部分が形成されているものでもよい。
また、高透磁率体ブロック3は、コイル状導体2の内側の空間1に存在したときに、インダクタンスを、検知が容易な程度に変化させることができるような材料および寸法で形成されている。
このような高透磁率体ブロック3を形成する高透磁率の材料は、高透磁率体としては移動する空間1の透磁率よりも高い透磁率を有するものであればよいが、感度・精度よく安定して良好に傾斜を検知する上では、できるだけ透磁率が高い材料がよい。本発明の傾斜センサ装置9においては、例えば、鉄や鉄−ニッケル合金(いわゆるパーマロイ),フェライト等の、比透磁率が例えば約150程度以上と高い材料を用いることができる(比透磁率は、炭素を主とする不純物を約0.2質量%含むいわゆる0.2不純物鉄で約150、ケイ素鋼で約500、純鉄で約5000、鉄−ニッケル合金(いわゆる78パーマロイの場合)で約10000、Mn−Zn系フェライトで約2000〜20000、Ni−Zn系フェライトで約600〜1000である。「金属便覧」650〜651頁参照。)。この高透磁率体ブロック3に用いる高透磁率の材料やその形状は、空間1やコイル状導体2の条件とともに、傾斜センサ装置9に要求される傾斜の検知感度や検知精度等を満たすように選択すればよい。なお、他の材料、例えばアルミニウムや銅,銀,パラジウム,鉛等の材料は、比透磁率が約1で空気とほぼ同じであるため、コイル状導体2のインダクタンスを効果的に変化させる上では適当ではない。
なお、高透磁率体ブロック3の厚さおよび幅(空間1の幅方向の内形寸法に対応する外形寸法)は、空間1を囲むコイル状導体2のインダクタンスを効果的に変化させる上では、空間1内においてスムーズに移動することが可能な範囲で、空間1にうまくはまるように、厚いほど、また広いほど好ましい。これは、コイル状導体2のインダクタンスが、コイル状導体2の内側部分の透磁率の変化に応じて、通常は比例して変化するので、高透磁率体ブロック3がコイル状導体2の内側部分に出入りするときの透磁率の変化を可能な範囲で大きくするためである。コイル状導体2の内側部分で高透磁率体ブロック3の占める割合が大きいほど、その部分の透磁率が(内側の空間1が比透磁率1である空気で満たされている場合に比べて)高くなる。
また、高透磁率体ブロック3の長さ(空間1の長さ方向の外形寸法)は、それぞれのコイル状導体2が空間1の長さ方向において占める長さよりも長いことが好ましい。すなわち、コイル状導体2は、その幅(空間1の長さ方向において占める長さ)が高透磁率体ブロック3の長さを超えるような幅広のものにはしないことが好ましい。高透磁率体ブロック3の長さがコイル状導体2の長さに比べて短い場合には、コイル状導体2の内側部分の透磁率を高くする効果が小さくなるため、コイル状導体2のインダクタンスを変化させる作用が低くなり、傾きの検知が難しくなる傾向がある。
この図1,2に示す実施の形態の例において、高透磁率体ブロック3は、空間1の高さおよび幅よりも若干低く小さい円柱状に形成されている。また、この高透磁率体ブロック3は、その底面が、四角柱状の空間1の下面に接するように配置されている。このような高透磁率体ブロック3の形状,寸法および配置形態にしておけば、空間1内で高透磁率体ブロック3がスムーズに移動することが可能であり、またコイル状導体2の内側部分の大部分を高透磁率体ブロック3が占めるようになって、コイル状導体2のインダクタンスを効果的に変化させることができる。
高透磁率体ブロック3は、例えば、円柱状の場合であれば、原材料となる鉄板に、切断や切削,研磨等の加工を施し、所定の円板状に成形するとともに表面を滑らかにすることにより作製することができる。
高透磁率体ブロック3は、空間1内での移動をスムーズに行なわせるために、その表面に鏡面研磨加工を施したり、光沢ニッケルめっき層やクロムめっき層等のめっき層を被着させたりして、滑らかで磨耗しにくいように加工しておいてもよい。
なお、この実施の形態の例のように、空間1が四角柱状であり、高透磁率体ブロック3が円柱状の場合であれば、例えば、空間1は、幅および高さが約5〜10mm程度の四角柱状であり、高透磁率体ブロック3は、底面の直径および厚さがそれぞれ約4.5〜9.5mm程度の円柱状に形成して、高透磁率体ブロック3の上面および側面と空間1の内面(内側面や上面)との間の距離が約0.2mm程度確保できるようにすればよい。
この場合には、傾斜センサ装置9としての小型化が可能であり、また、高透磁率体ブロック3を空間1の下面に沿ってスムーズに移動させることができる。
また、空間1の長さは、図3に透視図で示すように、少なくとも高透磁率体ブロック3が長さ方向に2個並ぶことができる程度の長さを確保することが好ましい。なお、図3は、本発明の傾斜センサ装置9の実施の形態の他の例を示す斜視図である。図3において、図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
このような長さの空間1の中央部分と両端部分との3箇所にコイル状導体21〜23を配列しておけば、空間1が例えば左側に傾いたときには、左側のコイル状導体21、または左側および中央のコイル状導体21,22のインダクタンスが変化し、空間1が左側に傾いているということが検知できる。この場合、例えば、高透磁率体ブロック3が、底面の直径が約4.5mmの円柱状の場合であれば、空間1の長さは約9mm程度に設定すればよい。
空間1の長さを短くしてコイル状導体2の個数を少なくした場合には、高透磁率体ブロック3の加速度の検知が難しいため前述したような傾斜の角度の検知は難しくなるものの、傾斜センサ装置9の小型化には有効である。
なお、図1および図2に示した例のように、コイル状導体2を5個、ほぼ等間隔になるように配列した場合には、コイル状導体2同士の間の距離を高透磁率体ブロック3の底面の直径と同程度(約4.5mm)に設定したとき、空間1の長さは約18〜20mm程度になる。この場合、絶縁容器4も含めた傾斜センサ装置9の長さは、例えば後述するように酸化アルミニウム質焼結体からなる絶縁容器4の厚さが全域で約1mmになるように形成すれば約20〜22mmになる。また、そのときの空間1の幅および高さは、約7〜12mmになる。
このような傾斜センサ装置9は、例えばこの実施の形態の例のように、空間1が絶縁容器4に形成されている場合には、次のような効果がある。
すなわち、絶縁容器4内の空間1に高透磁率体ブロック3を収容するとともに、コイル状導体2を、空間1を形成する絶縁容器4の内部や外表面に空間1の長さ方向に配列形成することにより、高透磁率体ブロック3を確実に空間1内に配置させて、複数のコイル状導体2の間を空間1の傾きに応じて移動させることができる。そのため、コイル状導体2の内側に高透磁率体ブロック3をより確実に存在させて、コイル状導体2のインダクタンスを効果的に変化させることができる。
また、高透磁率体ブロック3とコイル状導体2との間に絶縁容器4の一部が介在することにより、コイル状導体2の高透磁率体ブロック3との直接の接触による磨耗や欠け等を効果的に防止することができる。また、絶縁容器4に、隣接するもの同士の電気絶縁性を良好に確保して、複数のコイル状導体2を空間1の長さ方向に配列形成することが容易である。従って、この場合には、傾斜センサ装置9としての信頼性や生産性を向上させることができる。
絶縁容器4は、例えば平面視で長方形状(角部が円弧状等に成形されたものも含む)であり、少なくとも、高透磁率体ブロック3を収容し配置するための空間1を設けることができる程度の外形寸法で形成されている。
絶縁容器4を構成する材料としては、酸化アルミニウム質焼結体(酸化アルミニウム質セラミックス)や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体,ガラスセラミック焼結体等のセラミック材料や、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,アクリル樹脂等の樹脂材料、セラミック材料等の無機材料と樹脂材料との複合材料等の電気絶縁性の材料が挙げられる。
また、絶縁容器4は、例えば図4に断面図で示すように、上面に凹部(符号なし)を有する絶縁基体4aの上面に、平板状の蓋体4bが接合されて形成されている。なお、図4は、図1および図2に示したような構成の傾斜センサ装置9について、その断面の一例を示す断面図である。図4において、図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
絶縁基体4aの凹部と蓋体4bとにより、高透磁率体ブロック3を収容する空間1が構成されている。なお、蓋体4bは、絶縁基体4aの凹部4aと対向するような凹部(図示せず)を有しているものでもよい。
また、絶縁容器4のうち空間1の下面となる面は、高透磁率体ブロック3が滑って移動することを容易とするために、研磨加工(例えば、いわゆる鏡面研磨加工)を施して平滑度を高めておいてもよい。この場合、絶縁基体4aを平板状とし、蓋体4bを下面側に凹部(図示せず)を有しているものとしておくと、空間1の下面に相当する、絶縁基体4aの上面の研磨加工がより容易に行なえる。そのため、高透磁率体ブロック3の滑りによる移動が容易で、傾きの検知の精度が高い傾斜センサ装置9の生産性を高める上で有効である。
絶縁容器4は、酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウムの粉末を主成分とし、酸化ケイ素や酸化カルシウム等を添加してなる原料粉末を、有機溶剤,バインダとともにシート状に加工して複数のセラミックグリーンシートを作製し、積層した後焼成することにより、絶縁基体4aおよび蓋体4bを作製し、その後、絶縁基体4aと蓋体4bとをろう材や樹脂接着剤を介して接合することにより製作することができる。
また、絶縁容器4は、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料からなる場合であれば、これらの樹脂材料の未硬化物を、金型を用いて所定の絶縁基体4aや蓋体4bの形状に成型し、硬化させることにより絶縁基体4aや蓋体4bを作製し、これらを樹脂接着剤で接合することにより製作することができる。
この実施の形態において、コイル状導体2は、空間1の外側に位置する絶縁容器4の内部に、空間1を囲んで形成されている。このコイル状導体2は、タングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料により形成される。このような金属材料は、メタライズ層やめっき層,金属箔,蒸着層等の形態で絶縁容器4の絶縁基体4aや蓋体4bに被着される。
コイル状導体2は、例えば、タングステンの金属ペーストを絶縁基体4aや蓋体4bとなるセラミックグリーンシートに印刷しておいて、この印刷した金属ペーストが内部に位置するようにセラミックグリーンシートを積層することにより形成することができる。また、これらのセラミックグリーンシートの適当な位置に貫通孔(図示せず)を形成しておいて、この貫通孔内に金属ペーストを充填しておけば、コイル状導体2のうち絶縁容器4の厚み方向に伸びる部分を形成することができる。
コイル状導体2のインダクタンスは、例えばコイル状導体2をLCR測定器等のインダクタンスの測定が可能な測定器(図示せず)に接続することにより測定することができる。また、インダクタンスの変化は、コイル状導体2のそれぞれに一定の交流電流を通電しておいて、その電流の変化を電流計等で検知することにより検知することもできる。そして、各コイル状導体2のインダクタンスを測定し、その変化を検知することにより、空間1の傾き、つまり傾斜センサ装置9の傾きおよび傾斜センサ装置9が実装される電子機器や車両等の機器(図示せず)の傾きを検知することができる。
なお、交流電流を傾斜センサ装置9に通電する回路(図示せず)は、例えばこの傾斜センサ装置9が実装される外部電気回路基板に形成され、この回路とコイル状導体2とは、はんだ等の導電性接続材(図示せず)を介して電気的に接続される。このような外部電気回路基板は、例えば、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話に組み込まれる回路基板である。傾斜センサ装置9が部品として接続されると、カメラの向き(いわゆる縦位置や横位置)に応じて画像の写し込まれる向きを変え、常に撮影時の上方向を保存されている画像の上方向と一致させるようにして、撮像し保存することができる。
また、デジタルカメラや携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等で画像を見る時も、デジタルカメラや携帯電話等の画像表示機の方向にかかわらず、常に写真の上側が地球の重力の反対側に表示されるように、つまり画像表示機を見ている利用者が写真等の画像を見やすいようにして表示することができる。
この場合、デジタルカメラ等の画像表示の調整等の演算のために、半導体集積回路素子(IC)(図示せず)を絶縁容器4に搭載するようにしてもよい。コイル状導体2のインダクタンスを測定する回路と半導体集積回路素子との間や、半導体集積回路素子と外部電気回路基板の回路との間を電気的に接続する配線導体(図示せず)は、絶縁容器4の内部や外表面に形成することができる。
また、このように空間1が絶縁容器4に形成されている場合には、例えば空間1が金属製の容器に形成されているような場合に比べて、コイル状導体2と外部電気回路基板の回路等との間の電磁的な遮蔽の効果が低くなる。そのため、絶縁容器4の内部にコイル状導体2を形成するとともに、絶縁容器4の外表面に金属層(図示せず)を被着させて、コイル状導体2と外部電気回路基板の回路との間の電磁的な遮蔽の効果を高めるようにしてもよい。
このような、絶縁容器4の外表面に被着させる金属層としては、タングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料からなるものを挙げることができる。このような金属材料は、メタライズ層やめっき層,金属箔,蒸着層等の形態で絶縁容器4の外表面に被着させることができる。
また、この傾斜センサ装置9は、図5に断面図で示すように、空間1が、中央部が低くなるように湾曲している場合には、空間1が真っ直ぐであるような場合に比べて、高透磁率体ブロック3の空間1の端部分への移動が抑制される。そのため、傾斜センサ装置9のわずかな傾きや、誤って加わった振動等による外力(空間1の傾きにより作用する重力の分力とは異なる力)により、高透磁率体ブロック3が空間1の外端側へ必要以上に移動してしまうようなことは抑制される。そして、検知したい所定の角度に空間1が傾斜したときに、はじめて高透磁率体ブロック3が空間1の外端側へ移動し、移動した部分で外側のコイル状導体2のインダクタンスを変化させて傾きが検知される。つまり、検知の感度が過敏になることを抑制する上で有効である。なお、図5は、本発明の傾斜センサ装置9の実施の形態の他の例を示す断面図である。図5において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
このような構成のときには、例えば、自動車の盗難防止装置等に採用した場合に有効である。つまり、風や近くを他の自動車が通過した時の車体(傾斜センサ装置9)の傾きでは反応せず、ドアの開閉や人の乗車による傾きで反応(傾きを検知して信号を発信すること等)するように、角度を設定できる。
また、この場合には、空間1が水平なときには高透磁率体ブロック3が湾曲した内面(この例では下面)に沿って中央部に移動する。そのため、例えば中央部に対応したコイル状導体2を配置して、その中央部のコイル状導体2の静電容量が変化したときには高透磁率体ブロック3が空間1の中央部に位置している(空間1が水平である)と検知できるようにして、空間1が水平であることの検知をより確実なものとすることができる。
また、この傾斜センサ装置9は、複数のコイル状導体2は、隣接するもの同士の間隔が、高透磁率体ブロック3の空間1の長さ方向の外形寸法よりも小さく、外形寸法の半分よりも大きい場合には、より検知精度の高い傾斜センサ装置9とすることができる。
すなわち、隣接するコイル状導体2同士の間隔が、高透磁率体ブロック3の空間1の長さ方向の外形寸法よりも小さい場合には、空間1の傾きに応じて移動した高透磁率体ブロック3が、隣り合うコイル状導体2の間に偶然に入り込み、いずれのコイル状導体2においてもインダクタンスの変化が生じないというようなことが効果的に防止される。また、この間隔が外形寸法の半分よりも大きい場合には、例えば隣り合う3個以上のコイル状導体2に跨って内側に高透磁率体ブロック3が入り込むようなことが防止されるため、多数のコイル状導体2でインダクタンスが変化して高透磁率体ブロック3の位置の検知精度が低くなるようなことが効果的に防止される。
そのため、空間1が傾いているにもかかわらず、いずれのコイル状導体2においてもインダクタンスが変化せず、傾いていないと誤検知されるようなことや、高透磁率体ブロック3の位置を基にした傾斜の検知精度が低下するようなことが効果的に防止され、より検知精度の高い傾斜センサ装置9とすることができる。
また、この傾斜センサ装置9は、空間1が四角柱状であり、側面から見た外形寸法が空間1の断面に納まるように円柱状の高透磁率体ブロック3が配置されている場合には、側面から見たときに四角形状である円柱状の高透磁率体ブロック3が、大きな隙間を生じることなく四角柱状の空間1にちょうど納まっているので、空間1内で高透磁率体ブロック3が動く範囲が主に空間1の長さ方向に制限される。そのため、高透磁率体ブロック3が、例えば空間1の幅方向や高さ方向に不規則に大きく動いて空間1を構成する絶縁容器4等の部材の内面にぶつかるようなことは抑制される。また、高透磁率体ブロック3の側面に、空間1を構成する部材の内側面と衝突した際に欠けや亀裂等が生じる可能性の高い、角部分や突起部分がない。
したがって、この場合には、高透磁率体ブロック3に機械的な破壊が生じることが抑制され、傾斜センサ装置9としての長期信頼性を向上させることができる。
また、この傾斜センサ装置9は、例えば図6に断面図で示すように、高透磁率体ブロック3が強磁性体であり、空間1の中央部の外側(図6に示す例では空間1の中央部の下側の外側)に磁石5が配置されている場合には、高透磁率体ブロック3と磁石5との間で引き合う磁力が生じるので、高透磁率体ブロック3の空間1の外周部への移動が抑制される。そのため、傾斜センサ装置9のわずかな傾きや、誤って加わった振動等による外力(空間の傾きにより作用する重力の分力とは異なる力)により高透磁率体ブロック3が空間1の外周部へ移動してしまうようなことが抑制される。そして、検知したい所定の角度に空間1が傾斜したときに、初めて高透磁率体ブロック3が空間1内を移動し、移動した部分で外側のコイル状導体2のインダクタンスを変化させて傾きが検知される。つまり、この構成の場合には、検知の感度が過敏になることを抑制する上で有効である。なお、図6は、本発明の傾斜センサ装置9の実施の形態の他の例を示す断面図である。図6において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
また、この場合には、空間1が水平なときには、高透磁率体ブロック3が、磁石5の磁力により空間1の下面等に沿って中央部に移動し得る。そのため、例えば中央部に対応したコイル状導体2を配置して、その中央部のコイル状導体2のインダクタンスが変化したときには高透磁率体ブロック3が空間1の中央部に位置している(空間1が傾いておらず水平である)と検知できるようにして、空間1が水平であることの検知をより確実なものとすることもできる。
強磁性体である高透磁率体ブロック3としては、鉄や鉄−ニッケル合金等からなるものが挙げられる。
また、この場合に用いる磁石5としては、空間1が傾いたときの重力により移動することが可能な程度の弱い(磁束密度の小さい)磁石が適している。
例えば、1辺の長さが1cmの立方体状の高透磁率体ブロック3を鉄(密度7.9g/cm)で形成した場合であれば、高透磁率体ブロックに作用する重力(分力)は、傾斜の角度をAとすると、周知のように(7.9×10−3)×9.8×sinA(N)である。このとき、磁石5と高透磁率体ブロック3との間で引き合うように作用する磁力が(7.9×10−3)×9.8×sinA(N)よりも小さければ、高透磁率体ブロック3が空間1の傾斜の下側に向かって移動することができる。
この重力に相当する磁力を生じる磁束は、磁力=k×m/r(k:比例定数6.3×10、m:磁石と高透磁率体ブロック3との間の磁束(Wb)、r:磁石と高透磁率体3との距離(m))であるため、rを0.5cm(0.5×10−2m)とすると、6.3×10×m/(0.5×10−2=7.9×10−3×9.8×sinAより、m≒0.55×10−5×√(sinA)(Wb)になる。つまり、重力と反対方向の磁力を生じる磁束が0.55×10−5×√(sinA)(Wb)程度(磁束密度が約0.055×√(sinA)(Wb/m))以下である磁石が適していることになる。例えば傾斜角30度(sinA=0.5)で検知させる場合であれば、対応する磁束密度は約0.039(Wb/m)程度である。
この場合、より強い(磁束密度の大きい)磁石5を使えば、高透磁率体ブロック3が移動し始めるときの空間1の傾斜角度を大きくすることができ、より弱い磁石5を使えばその傾斜角度を小さくすることができる。
このような磁石5としては、フェライト等の磁石の粉末をゴムや樹脂材料等の有機材料で結合したもの(いわゆるボンド磁石)等の磁石を用いることができる。ボンド磁石は、例えば、未硬化の樹脂材料中に磁石の粉末を添加し、一定の磁場の中で樹脂材料を硬化させることにより製作される。
また、磁石5は、図6の例では、永久磁石を用い、空間1の下面の外側に配置した例を示しているが、空間1の上面や側面の外側に配置したり、下面や上面や側面の外側の複数箇所に配置したり、永久磁石に代えて電磁石を用いたりしてもよい。
なお、このような磁石5を備える傾斜センサ装置9の場合には、空間1が水平になったときに高透磁率体ブロック3が空間1の中央に磁力により戻ることを容易とするために、空間1を構成する部材の表面(絶縁容器4の内表面等)の摩擦係数を静止摩擦係数で約0.1程度以下に低くしておくことが好ましい。この摩擦係数は、例えば空間1が絶縁容器4に形成されているときに、絶縁容器4の空間を構成する面に対して鏡面研磨等の研磨加工を施したり、フッ素樹脂等の摩擦係数の低い材料でコーティングを施したりすることにより低くすることができる。また、潤滑油等の潤滑剤を絶縁容器4の空間1を構成する面と高透磁率体ブロック3との間に介在させてもよい。
また、この傾斜センサ装置9は、複数個のコイル状導体2が、巻き数が互いに異なっているとともに、互いに直列に接続されている場合には、直列に接続された複数個のコイル状導体2の合計のインダクタンスの変化の程度を検知することにより、どのコイル状導体2の位置においてインダクタンスが変化しているか、つまりどのコイル状導体2の位置に高透磁率体ブロック3が移動しているかを検知して、空間1の傾斜を検知することができる。したがって、この場合には複数個のコイル状導体2のインダクタンスをそれぞれ測定する必要はなく、より容易に傾斜を検知することが可能な傾斜センサ装置9とすることができる。
すなわち、個々のコイル状導体2のインダクタンスが、そのコイル状導体2の内側部分の透磁率および断面積に比例し、巻き数の2乗に比例するため、複数個のコイル状導体2のそれぞれのインダクタンスは互いに異なる。また、コイル状導体2の内側に高透磁率体ブロック3が移動してきたときのインダクタンスの増加量も、そのコイル状導体2の巻き数の2乗に比例して異なる。また、複数個のコイル状導体2の合計のインダクタンスは複数個のコイル状導体2のインダクタンスの和である。そのため、複数個のコイル状導体2の合計のインダクタンスの変化を検知することにより、どのコイル状導体2においてその内側の透磁率が変化しているか、つまり高透磁率体ブロック3がどのコイル状導体2の位置に存在しているかを検知することができる。
従って、この場合には、複数個のコイル状導体2のインダクタンスをそれぞれ測定する必要はなく、より容易に傾斜を検知することが可能な傾斜センサ装置9とすることができる。
例えば、図1に示す傾斜センサ装置9において、コイル状導体2の内側の面積(空間1の縦断面の面積)が1cm(1×10−4)であるとき、最も巻き数が少ないコイル状導体2の巻き数をaとし、2×a,3×a,4×a,5×aの順に巻き数を多くして5個のコイル状導体2を配列した場合を例に挙げると、以下のようになる(ただし、aは正の整数である。)。
まず、5個のコイル状導体2の合計のインダクタンスLtは、高透磁率体ブロック3が存在していないと仮定すると、前述したように各コイル状導体2のインダクタンスL=μ×n×Sであり、また互いに直列に接続された複数のコイル状導体2の合計のインダクタンスは個々のコイル状導体2のインダクタンスの和であるので、Lt=(μ×a+μ×(2×a)+μ×(3×a)×μ×(4×a)+μ×(5×a))×(1×10−4)=55×μ×a×10−4(H)になる(ただし、μは空気の透磁率:約1.26×10−6(N/A)である。)。
これに対して、巻き数がaのコイル状導体2の内側に比透磁率が約1000(透磁率が約1000×μ(N/A))の高透磁率体ブロック3が存在した(傾斜に応じて移動してきた)とすると、合計のインダクタンスLtは、Lt≒(1000×μ×a+μ×(2×a)+μ×(3×a)+μ×(4×a)+μ×(5×a))×(1×10−4)=1054×μ×a×10−4(H)になる。
また、巻き数が3×aのコイル状導体2の内側に上記と同様の比透磁率が約1000の高透磁率体ブロック3が存在した(傾斜に応じて移動してきた)とすると、合計のインダクタンスLtは、Lt≒(μ×a+μ×(2×a)+1000×μ×(3×a)+μ×(4×a)+μ×(5×a))×(1×10−4)=9046×μ×a×10−4(H)になる。
つまり、合計のインダクタンスLtの変化量(増加量)は、高透磁率体ブロック3が内側に存在するコイル状導体2の巻き数の2乗にほぼ比例する。そのため、複数個のコイル状導体2の合計のインダクタンスLtの変化を検知することにより、どのコイル状導体2でインダクタンスが変化しているか、つまりどのコイル状導体2の位置に高透磁率体ブロック3が存在しているかを容易に検知することができる。
この場合、a=1から順に、つまり巻き数を1から順に1つずつ増やしていけば、例えば前述したように、コイル状導体2を金属ペーストの印刷により形成するような場合でも、コイル状導体2となる金属ペーストを印刷する手間を抑えることができるので、傾斜センサ装置9としての生産性を良好に確保することができる。
なお、巻き数が異なる複数個のコイル状導体2の配列は、合計のインダクタンスを測定してその変化を検知する上では、どのような順序でもかまわない。
ただし、例えば、図7に示すように、空間1の中央部を挟んで交互に巻き数が増えるようにコイル状導体2(巻き数がaのコイル状導体21〜巻き数が5×aのコイル状導体25)を配列すれば、コイル状導体21〜25を空間1の一方の端部から他方の端部に向かって順に巻き数が大きくなるように配列した場合に比べて、隣り合うコイル状導体2の間のインダクタンスの変化量をより大きくする上で有効である。この場合には、隣り合うコイル状導体2の間を高透磁率体ブロック3が移動したときの、複数個のコイル状導体2の合計のインダクタンスの変化量をより大きくすることができるので、傾斜の検知をより容易にすることができる。なお、図7は、本発明の傾斜センサ装置9の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図である。図7において、図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
なお、傾斜センサ装置9における複数個のコイル状導体2の直列接続は、例えば、絶縁容器4にコイル状導体2と同様の金属材料で接続用の導体6を、隣り合うコイル状導体2同士を直列に接続するように形成しておくことにより行なうことができる。
なお、このような傾斜センサ装置9は、例えば、まず、前述のようにして作製した絶縁基体4aの凹部内に高透磁率体ブロック3を入れ、次に、凹部を塞ぐようにして蓋体4bを絶縁基体4aの上面に接合することにより製作することができる。
なお、この製作の際には、コイル状導体2のうち絶縁基体4aに形成した部分(符号なし)と蓋体4bに形成した部分(符号なし)とを、全体がコイル状の導体になるように接続する必要がある。このような接続は、絶縁基体4aおよび蓋体4bのそれぞれの接合面にコイル状導体2(コイル状導体2となる導体)の端部分を露出させておき、この露出した部分同士をろう材や導電性接着剤等の導電性の接合材を介して直接接続することにより行なうことができる。この場合、絶縁基体4aおよび蓋体4bの外側面等の外表面に、互いのコイル状導体2となる導体の位置を示す位置決め用の凹部等の目印を設けておいてもよい。
また、蓋体4bと絶縁基体4aとの接合は、例えば、有機樹脂接着剤やガラス,ろう材等の接合材を介して接合することにより行なうことができる。この場合、あらかじめ両者の接合面に金属層(図示せず)を形成しておき、この金属層の間をろう材で接合するようにしてもよい。なお、金属層は、容量電極2と同様の金属材料を用い、同様の方法で形成することができる。また、このような金属層は、コイル状導体2同士の電気的な短絡を避けるために、コイル状導体2が形成されている部分およびその周囲には形成しないようにする必要がある。
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更が可能である。例えば、絶縁容器4の少なくとも一部をガラスやアクリル系樹脂,メタクリル系樹脂等の透光性の材料で形成しておいて、外側から高透磁率体ブロック3の位置を視認できるようにしておいてもよい。この場合には、空間1の傾きに応じて高透磁率体ブロック3が正常に移動しているか否かを容易に確認することができ、より高精度で、かつ点検の容易な傾斜センサ装置9とすることができる。
また、このような構造の傾斜センサ装置9を2個、互いに水平に直交するように組み合わせて使用すれば、4方向の傾きを有効に検知することもできる。
本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の一例を示す上面図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の他の例を示す斜視図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。 本発明の傾斜センサ装置の実施の形態の他の例を示す上面図である。
符号の説明
1・・・・空間
2・・・・コイル状導体
21〜25・・コイル状導体
3・・・・高透磁率体ブロック
4・・・・絶縁容器
4a・・・絶縁基体
4b・・・蓋体
5・・・・磁石
6・・・・接続用の導体
9・・・・傾斜センサ装置

Claims (7)

  1. 柱状の空間の外側に前記空間を囲む複数個のコイル状導体が長さ方向に配列され、内側に前記空間の傾きに応じて前記複数個のコイル状導体の間を移動可能な高透磁率体ブロックが配置されていることを特徴とする傾斜センサ装置。
  2. 前記空間が絶縁容器に形成されていることを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
  3. 前記空間が、中央部が低くなるように湾曲していることを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
  4. 前記複数個のコイル状導体は、隣接するもの同士の間隔が、前記高透磁率体ブロックの前記空間の長さ方向の外形寸法よりも小さく、該外形寸法の半分よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
  5. 前記空間が四角柱状であり、側面から見た外形寸法が前記空間の断面に納まるように円柱状の前記高透磁率体ブロックが配置されていることを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
  6. 前記高透磁率体ブロックが強磁性体であり、前記空間の中央部の外側に磁石が配置されていることを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
  7. 前記複数個のコイル状導体は、巻き数が互いに異なっているとともに、互いに直列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の傾斜センサ装置。
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