JP2009173338A - レトルト対応小容量ネジ付き缶 - Google Patents

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Abstract

【課題】缶底部のネッキング及び打検適性に優れたレトルト対応小容量ネジ付き缶を提供する。
【解決手段】缶底部2が、缶外方に凸となる断面実質円弧状の接地部5と、この接地部5の外周側から缶胴部3に対して傾斜して立ち上がる傾斜部6と、前記接地部5の内周側から中心軸方向に立上る短円筒状の内壁部7と、その内壁部に連続して設けられ、缶内方に凸となる断面円弧状の環状凹部8と、この環状凹部8の内周側からコーナー部を介して連続する平坦な中央パネル部4とを備え、前記中央パネル部4は、前記傾斜部6と前記缶胴部3との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に位置するように形成されると共に、口頸部12の洗浄加熱処理を通過した後の前記缶底部2の硬度(Hv)が83〜90であり、金属板の元板厚T0に対する前記コーナー部の肉厚Tから、減厚率εが1%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は絞りしごき成形により缶底部と缶胴部を一体成形し、その胴部開口端側に傾斜状の肩部と小径円筒状の口頸部を成形し、その口頸部にネジ部及びカール部を形成したネジ付き缶に関し、特に、内容物の容量が50ml〜160ml程度のアルミニウム合金製のレトルト対応小容量ネジ付き缶に関する。
近年、不活性ガス充填法(液体窒素、ミスト窒素充填等)を利用した缶詰製造技術が開発され、レトルト処理後、室温(20℃)で充填された容器内圧を陽圧状態にすることが可能となった。これにより、品質安全上、レトルト殺菌処理が義務付けられているコーヒー、ミルク入りコーヒー、ミルクティー、ココア、ウーロン茶、紅茶等の茶類、コーンスープ等の低酸性飲料を、液体窒素充填法を利用してツーピース缶に充填する場合、缶内圧力で剛性をもたせるので板厚の薄い素材からなる壁厚の薄い胴部を有する絞り缶、深絞り缶、絞りしごき缶、薄肉化深絞り缶の使用が可能となり、素材の合理化が提案されるようになってきた。
液化ガス充填法によりレトルト飲料を充填したシームレス缶の内圧検査を行う際に、打検適性を有する陽圧用シームレス缶に関し、缶底部を実質平坦面にする構成にして、レトルト処理時の内圧上昇にも耐え、打検機による内圧検査が行えるようにした陽圧用シームレス缶体について本出願人は提案した(特許文献1)。この缶体は、素材厚さ0.1〜0.3mmのアルミニウム板から成形され、胴部と底部が一体に成形されたシームレス缶であって、底部は外周近傍に環状に接地リム部を有し、接地リム部の内周側から缶軸方向に立ち上がる内壁部に環状凹部を構成し、環状凹部の内周側から曲率半径0.2〜1.5mmのコーナー部を介して連続する平坦な中央パネル部を備えた底壁を形成してなる缶体で、缶底の硬度分布の変化率を特定したものである。
このような陽圧用シームレス缶体を用いた不活性ガス封入缶詰は、内容物が加圧状体で充填されているが、缶の密封不良によりレトルト殺菌中あるいはその後の冷却中に、内容物の漏洩あるいは冷却水の吸い込みにより缶内の圧力が低下したり、窒素充填量のバラツキに起因して缶内の圧力が変動したりすることで加圧状態が変動することがある。したがって容器内圧を低い微陽圧に充填する場合には、不良製品と正常品との見分けがつきにくいことがある。そのため、安全性を保証するためにレトルト殺菌前後の缶詰内圧を触圧式検缶機で検査し、例えば見分けがつきにくい40KPa以下の低内圧缶を排除すると共に、カートンケースに詰められた後、倉庫で1週間程度保管しておき、出荷時にケース打検機に通して膨張変敗製品やスローリーク製品の有無を判定し缶内圧に異常がないことを確認の上、出荷する品質保証システムが採られている。
すなわち、内容物の腐敗で発生するガスによる内圧不良については、製造直後には起こらず、カートンケース内に収納して出荷できる状態としてから所定の期間だけ保管した後で初めて判るものであって、その時点でカートンケース内に既に収納されている各密封容器をそれぞれ取り出して検査するわけにはいかないことから、カートンケース内に収納されたままの状態で、カートンケースの外側から各密封容器の内圧をそれぞれ検査することになる。
ところで、ドリンク剤や健康飲料など内容物の容量が50ml〜160ml程度の飲料を販売する目的で使用される容器としては、従来から小型のガラス瓶が用いられている。このような小容量の飲料を販売するためのガラス瓶では、内容量が少ないわりには容器が重たく、また流通過程で落した場合には容器が破損しやすいなどの問題があり、軽くて割れにくい丈夫な容器が求められていた。このような目的に合致する容器として、アルミニウム製のネジ付き缶が知られている(特許文献2、特許文献3)。
このような小容量で缶胴径の小さいアルミニウム合金製のネジ付き缶に、レトルト処理を必要とする内容物を充填、密封した陽圧製品は、充填ラインに設置された触圧式の検缶機を通すことにより、缶胴側壁を加圧ローラを押し込んで、その押し込みに要する力と缶胴の押し込み量との関係から缶内圧を自動検査して内圧不良品を排斥することが従来から行われている。しかしながら、ケース打検を実行する場合は、缶胴側壁に加圧ローラを押し込む方式は採れないので、キャップの天板部あるいは缶底部を打検することになるが、缶底部を打検する構成では、缶の内圧が何らかの要因により通常より上昇或いは下降したときに、容易に缶底部が外側へ膨出変形するため有効な解決手段にはならないとされ、キャップの天板部の反響音に基づいて缶内圧を検査する方法が提案されている(特許文献4)。
特開2000−16418号公報 特開2001−315745号公報 特開2007−153376号公報 特開2005−172607号公報
しかしながら、特許文献4のようにキャップ天面部からの反響音に基づいて内圧を検査する場合、小容量の缶胴径の小さいアルミニウム合金製のネジ付き缶にあっては、キャップ径も小さくなり、受圧面積も減少するため内圧の変化を感度良く固有振動数(以下、振動周波数、打検周波数とも呼ぶ場合がある)に変化させることが難しくなるので、高精度の内圧検査を行うことができない。
また、特許文献1に開示されたシームレス缶体を小容量ネジ付き缶に適用することが考えられるが、ネジ付き缶の場合には、口部にネジ部及びカール部が形成されるため、従来のシームレス缶のように開口端部に缶蓋を巻締めるためのネック・フランジ成形に比べて加工が厳しく、肩部の縮径率も高い。したがって従来のシームレス缶材のような耐力特性をもつ缶用材料(例えば、JlS3004系アルミニウム合金板)ではカール割れが生じ、密封性を低下させたり、直接口を付けて飲むような場合に唇を傷付けたりするなどの心配がある等の問題があり使用することができない。
このため、小容量ネジ付き缶の材料としては、従来の缶用材料に比べて耐力特性を低く抑えた材料を用いることが必要となるが、前述したとおりレトルト処理中に缶内圧が高くなり過ぎた場合に、缶底部が塑性変形を起こしやすく、内圧を取り去っても(漏れを想定したゼロ内圧の状態)、缶底部は元の状態に復帰せずに歪みが残り、底部の打検による正確な内圧検査が行えない。
また、小容量のネジ付き缶は缶胴径が従来缶に比べて小さくなるため(50mm以下)、缶底部を打検する場合、底壁(中央パネル部)も小さくなり、缶内圧の僅かな変化に対して振動周波数の変化の割合が少なく敏感に反応しない。このようなことから、缶胴径が小さくても缶内圧の検査を精度良く行うことを可能とする、打検特性に優れたレトルト対応小容量ネジ付き缶が望まれていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、レトルト殺菌を必要とする内容物であっても、口部成形時における加工性を確保でき、しかも缶底部の打検適性に優れたレトルト対応小容量ネジ付き缶を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、元板厚T0が0.28〜0.32mmのアルミニウム金属板から缶底部と缶胴部とが一体成形された有底円筒缶を成形し、開口端部を縮径加工して肩部と口頸部とを成形し、その口頸部にネジ部及びカール部が形成された内容物160ml以下の小容量ネジ付き缶において、前記缶底部が、缶外方に凸となる断面実質円弧状の接地部と、この接地部の外周側から前記缶胴部に対して傾斜して立ち上がる傾斜部と、前記接地部の内周側から中心軸方向に立上る短円筒状の内壁部と、その内壁部に連続して設けられ、缶内方に凸となる断面円弧状の環状凹部(カウンターシンク部)と、この環状凹部の内周側からコーナー部を介して連続する平坦な中央パネル部とを備え、前記中央パネル部は、前記傾斜部と前記缶胴部との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に位置するように形成されると共に、前記ネジ部及びカール部が形成された後の前記缶底部の硬度(Hv)が83〜90であり、金属板の元板厚T0に対する前記コーナー部の肉厚Tの、下記式で定義される減厚率εが1%以下であることを特徴とするものである。ε=(T0−T)/T0×100(%)
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記缶胴部の直径が50mm以下、前記環状凹部と前記中央パネル部との段差が1.1mm以上であり、且つ、前記コーナー部の曲率半径が1.0〜1.5mmであることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記ネジ部及びカール部が形成された後に施される前記口頸部の洗浄加熱処理を通過した後の前記缶底部の硬度(Hv)が83〜90であることを特徴とするものである。
本発明の構成によれば缶胴径が50mm以下の有底円筒形から成形された160ml以下の小容量であっても、室温で缶内圧が微陽圧となる缶詰用に用いられ、口頸部成形時における加工性を確保するとともに缶底部の打検適性に優れたレトルト対応小容量ネジ付き缶を得ることができる。
以下、本発明のレトルト飲料用小容量ネジ付き缶の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本発明の小容量ネジ付き缶の容器本体は、図1および図2に示すように、容器口部1にキャップをネジによって取り付けられる、いわゆるリシール(再栓)可能な金属製の容器である。つまり、ネジ付き缶は、絞り缶、再絞り缶、ストレッチ缶、絞りしごき缶、インパクト缶などの、缶底部2と缶胴部3とが一体に成形された有底円筒缶の開口端部が縮径され、先端の口頸部12にネジ部が形成されたものであり、キャップがネジによって取り付けられるリシール可能なシームレス缶である。本発明の小容量ネジ付き缶は、上記ネジ付き缶の中でも容量が従来から用いられている小型のガラス瓶と同程度の50ml〜160mlのミニサイズとなるように形成されている。
レトルト処理を必要とする内容物としては、コーヒー、ミルク入りコーヒー、ミルクティー、ココア、ウーロン茶、紅茶等の茶類、コーンスープ等の低酸性飲料、乳飲料、豆乳等の中性の機能性飲料等を充填、密封されるレトルト飲料が挙げられる。また、ネジ付き缶に用いられる缶用素材としては、従来の缶用材料に比べてカール割れ等の加工性の面から耐力特性を低く抑えた金属板が用いられる。
ネジ付き缶にあっては、耐力特性を低く抑えたアルミニウム板を使用することにより、レトルト殺菌処理中に缶内圧が上昇して高い缶内圧で缶底部2が塑性変形を起こし易くなる。このような塑性変形を起こした場合、缶底部2が塑性変形をした後に缶内圧を取り去っても缶底部2は元の状態に復帰せずに歪んだままとなる。このため、レトルト処理中の高い缶内圧により中央パネル部4の膨出が大きくなりすぎて中央パネル部4が塑性変形を起こすのは好ましくない。このような意味から、200℃×20分間の塗装焼き付け後の耐力が220MPaより大きいアルミニウム板が用いられ、好ましくは耐力240MPa程度の3104系アルミニウム合金板からなる缶用材料が用いられる。
一方、小容量ネジ付き缶の缶底部2に接地部5が設けられている。この接地部5は、外周側の傾斜部6と連続し、内周側が内壁部7と連続していて、外方向に凸となる小さな曲率半径からなる略断面円弧状に形成されている。内壁部7は、缶胴部3の軸方向に立ち上がる短円筒状に形成され、その内側は環状凹部8と連続している。この環状凹部8は、缶内方に凸である断面円弧状に形成されていて、この環状凹部8の内周側には、円弧状のコーナー部9を介して実質的に平坦な中央パネル部4が設けられている。
また、小容量ネジ付き缶は、缶胴径(外径)が50mm以下になるので、自ずと中央パネル部4の径も小さくなり、缶底部2からの振動周波数は全体的に高くなる。したがって、缶内圧の僅かな変化に対する振動周波数の変化率が小さくなり、このときは缶内圧の変化に対して敏感に反応しない。しかも窒素充填量のバラツキに起因して振動周波数がばらついて、缶内圧検査を精度良く行うことが難しくなることが判ってきた。
したがって、本実施形態では、樹脂被膜されていないアルミニウム合金板の一例について以下に詳述する。先ず、円筒缶体の開口端部に縮径加工が施された肩部10と、その肩部10に連続している円筒状の小径部11とが形成され、小径部11の先端側である口頸部12にネジ部、カール部、ビード部が成形された後に、後加熱処理工程を設けて、缶底部2の硬度が缶底成形後に積極的に下げるようにする。
上記の後加熱処理工程は、口頸部12の金属粉の洗浄加熱乾燥、あるいは潤滑油除去を兼ねた口頸部12の洗浄加熱処理に相当し、縮径加工、缶底成形の後に缶底部2の硬度を低下させるための加熱処理を指す。具体的には、ネジ付き缶に用いられる缶用素材にもよるが、前述の3104系アルミニウム合金板(元板硬度で100〜105Hv)を用いる場合は、後加熱処理工程に至るまでにすでにキャンウォッシャーの乾燥や塗装、印刷の乾燥焼き付けの熱を受けて硬度は低下しているが、それでも90Hv以上ある。そこで、前述の後加熱処理工程を用いて缶底部2の硬度を90Hvよりも更に下げて缶底部2を柔らかくする。そうすることによって、反響音の振動周波数のレベルが高音域(4000Hz以上)から中音域(2500Hz〜3500Hz)まで下がり缶内圧の僅かな変化に対する缶底部2の振動周波数の変化率を、打検による内圧判別を可能とする程度まで大きくすることが可能となる。かかる意味から缶底部2の硬度を90Hv以下にすることが好ましい。
しかしながら、缶底部2を柔らかくするため缶全体の硬度を下げすぎてしまうと、容器内に内容物を充填して容器の口頸部12にキャップを被せてロールオン成形により密封するときに、キャップを容器口部1へ押し付けるための打栓圧によって、ネジ部や、缶底部2の傾斜部6が座屈するので好ましくない。したがって、3104系アルミニウム合金板からなる場合では、後加熱処理後における缶底部2の硬度を下げるとしても、元板厚の合理化を考慮すれば、缶底部2の耐圧強度と傾斜部6の座屈性の観点から缶底部2の硬度の下限値を83(Hv)以上とするのが好ましい。
また、本実施形態では、缶底部2の中央パネル部4は、傾斜部6と缶胴部3との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に位置するように構成されている。換言すれば、レトルト対応小容量ネジ付き缶を平面に立てた場合に、図1に示すように、交点Pと平面との距離H1が中央パネル部4と平面との距離とほぼ等しくなるように構成されている。つまり、中央パネル部4の振動膜の振動はしっかりと固定された基点を有していないため、中央パネル部4の周辺から缶胴部3のP点までに至る缶底周辺部(環状凹部8、内壁部7、接地部5及び傾斜部6から構成される)の形状が中央パネル部4の振動に影響を及ぼして振動周波数に複数のピークが出現してバラツキ、缶内圧と振動周波数との相関が得られにくくなる。そこで様々の実験を繰り返した結果、缶底部2の中央パネル部4を傾斜部6と缶胴部3との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に位置するように構成することが振動周波数のバラツキの低減に有効的であることを突き止めた。このように構成することにより、中央パネル部4の振動の基点となる位置が安定し、缶底部2の振動周波数のバラツキが少なくなり、缶内圧が60kPa〜120kPaの微陽圧の範囲における缶内圧と振動周波数との相関性が良くなる傾向にあることが判明した。
また、缶底部2は、レトルト処理中に塑性変形しないように缶底耐圧強度を保つ必要があるが、必要以上に環状凹部8を深くし、あるいはコーナー部9の曲率半径を小さくすると、成形時コーナー部9に局所的な薄肉部(くびれ)が発生して、レトルト処理中にその薄肉部が、缶底周辺部と中央パネル部4との区切り部となり、中央パネル部4が元形状から膨出し易くなり、缶底部2自体が外方に凸となる反ドーム形状に塑性変形してしまうことも判明した。例えば、缶胴径が50mm以下の場合で、区切り部を境として中央パネル部4が膨出してその量が1.5mmを超えてしまうと、120KPaの内圧を付加した後、その内圧を取り去っても、缶底部2は元の状態に復帰せずに歪んだままとなり、缶内圧と振動周波数の相関性が崩れ、振動周波数から缶内圧を正確に判別できない。言い換えれば、缶内圧が無負荷の漏れ缶であっても内圧が解除されている0内圧缶にあたるかどうかの判定ができないという問題を生じる。掛かる意味から、内圧120KPaをかけたときの前記中央パネル部4の元形状からの膨出量を1.5mm以下とするような缶底形状にすることが好ましい。
同時に、缶底部2の中央パネル部4の外径は、少なくとも口頸部12のネジ山外径よりも大きくすることにより、打検面を大きくすることが望ましく、そのためにキャップの天板部を打検するよりも缶内圧の微少な変化に対する振動周波数の変化の割合を大きくすることができ効果的である。そのため、缶底周辺部をできるだけ側壁側に寄せた形状にして、内壁部7の傾斜角θが0°〜10°の範囲になるように小さくすることが好ましい。
また、本実施形態では、コーナー部9の曲率半径を1.0mm〜1.5mmとし、減厚率εを1%以下にするのが好ましい。即ち、減厚率εが1%を超えると、コーナー部9がくびれてレトルト処理中において発生する高い缶内圧で中央パネル部4の膨出量が1.5mm超となり、中央パネル部4が反ドーム状に膨出し戻らない傾向がある。即ち、この減厚率εはコーナー部9の曲率半径とも深い関係があり、曲率半径が1.0mmよりも小さくなると、缶底周辺部に成形時におけるコーナー部9の抵抗で部分的な薄肉化現象が発生する。そうなると減厚率εが1%を超える現象が発生する。よって、減厚率を1%以下にするためにはコーナー部9の曲率半径が1.0mm未満にならないようにすることが必要となる。また、この曲率半径を1.5mmより大にすると、中央パネル部4の振動の基点となる位置が安定しなくなり、缶底部2の振動周波数がばらつく。このような観点から、コーナー部9の曲率半径は1.0mm以上で1.5mm以下、かつ減厚率εを1%以下にすることが好ましい。
また、中央パネル部4の深さH2は、環状凹部8(カウンターシンク部)と中央パネル部4との段差H3及びコーナー部9の減厚率εを考慮して決定される。つまり、減厚率εが1%以下の場合であっても、中央パネル部4の深さを深くして段差H3を小さくしすぎると、中央パネル部4の張りが弱くなり反響音の振動周波数のレベルは下がるが缶底部2の耐圧強度が低下し、また0内圧特性も悪くなりやすい。したがって、段差H3は少なくとも1.1mm以上とすることが好ましい。
一方、中央パネル部4の深さを浅くして環状凹部8と中央パネル部4との段差H3を大きくしすぎると、中央パネル部4の張りが強くなり反響音の振動周波数のレベルが高音域となってしまい打検による内圧判別が難しくなるばかりでなく、コーナー部9の減厚率εが1%を超えるため、コーナー部9の外面にひび割れが発生して品質上問題が生じる。そのため、環状凹部8の深さを4.0mmとした場合には、中央パネル部4の深さを2.0mm〜2.6mm(段差H3を2.0mm〜1.4mm)の範囲で適宜決定される。
次に、上述のように構成されたレトルト対応の小容量ネジ付き缶の製造方法の一例について図3に示す例を用いて以下に説明する。小容量ネジ付き缶の製造方法は、カップメーカーでアルミニウム合金板から絞りカップを得て、ボディメーカーで絞りしごき加工して円筒缶体を作成し、この缶体の缶底部2を形成した後、トリマーでエッジ部がトリミング加工される。続いて、キャンウォッシャーで缶体内外面の洗浄・乾燥処理が施され、乾燥後に缶胴外面に印刷・クリア塗装処理が施されてオーブンで焼き付け処理が実行される。そして、インサイドコーターで缶内面側となる面に熱硬化性樹脂塗料がスプレー塗装されて、内面保護塗膜が形成される。そして、この熱硬化性樹脂塗料からなる内面保護塗膜がオーブンで乾燥処理される。その後、ネッカーで開口部に縮径加工が施されて、肩部10と小径部11が成形され、口部成形機で小径部11のエッジ部がトリミング加工され、続いて、小径部11の先端にカール加工が施され、ネジ部とキャップの裾締め用のビード部が形成される。その後、口頸部12の成形時に発生したアルミ粉を除去するため洗浄装置で洗浄処理が施され、オーブンで乾燥処理が行われる。このようにしてレトルト対応のネジ付き缶が得られる。
なお、本実施形態では、缶用素材としてアルミニウム合金板を用いて絞りしごき加工して、印刷・塗装工程を経た後に、口部成形された缶体に、口頸部12の洗浄加熱処理にて缶底部2の硬度を低下させてネジ付き缶を製造する例を示しているが、缶用素材として両面に熱可塑性樹脂フィルム等で被覆したアルミラミネート材を用いることもできる。この場合、上述に示したキャンウォッシャー工程や、内装塗装工程等はなく、また口頸部12の洗浄加熱処理は不要となるため、アルミニウム合金板に樹脂フィルムをラミネートする時の加熱処理や、ネッカーでの縮径加工前に施されるフイルムの非晶質工程での加熱処理等を利用して缶底部2の硬度を下げる調整を行うことで本実施形態と同様な結果が得られた。
以上のように、小容量ネジ付き缶は、いずれのアルミニウム金属板から成形されるにしても元板厚が0.28mm〜0.32mmを有し、傾斜部6と胴部との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に中央パネル部4が位置するように形成されると共に、減厚率εを1%以下にし、製缶工程における熱処理工程の少なくとも一つの加熱処理を利用して缶底部2の硬度を元板硬度から積極的に低下させて83〜90Hvの範囲になるように調整すれば本発明の目的は達成できることは明らかである。
なお、缶胴外面への印刷を、一連の製缶工程で行われずに装飾されたシュリンクラベルを充填工程で缶胴に貼り付けるクリア塗装のみだけの無地の小容量ネジ付き缶としても適用可能である。このシュリンク温度は缶底部2の硬度を低下させる程度の温度範囲にないことは言うまでもない。
以下に実施例を示す。特性の評価方法は以下の通り実施した。
缶底部の硬度
製缶工程を終えて形成された缶体の缶底部2の硬度を、マイクロビッカース硬度計を用いて測定した。測定方法は、缶底部2を樹脂に埋め込み、缶体を圧延方向と平行及び垂直方向に切断し、それぞれの切断端面に直角に硬度計を当てる方法を用いた。測定部位は接地部5から高さ方向に10mmの位置から中央パネル部4の中央までほぼ1mm間隔で複数の点を測定し、その平均値を求めた。
成形性
外径63mmのカップを缶胴径が45mmとなるように絞りしごき加工して円筒缶体を作成し、缶底部2のコーナー部9に薄肉部の発生のない正常な成形を良好「○」、缶底部2のコーナー部9に局部的な薄肉部が発生し、成形不良を起こしたものは「×」を表示した。
減厚率
アルミニウム金属板の元板厚をT0、コーナー部9の肉厚をTとしたとき、下記の式で定義される減厚率εを求めた。
ε=(T0−T)×T0/100(%)
打検特性
先ず、製缶工程を終えて形成されたネジ付き缶体に内容物として、水をヘッドスペース28mlとなるように室温で充填し、キャップで密封する。その際、缶内圧を40KPa,60KPa,80KPa,120KPaの4水準として窒素が充填されている。この窒素充填の後、温度121℃で20分間のレトルト処理が実行される。そして、このレトルト処理の次に、レトルト釜内の圧力を調節して缶内の内容物を冷却する加圧冷却工程が実行される。この工程により、室温において微陽圧となる4水準の小容量ネジ付き缶詰(正常缶)を作成する。
次に、この微陽圧となる小容量ネジ付き缶詰を、図4に示すように、缶底部2を上にした状態で保持し、缶底部2に電磁衝撃インパルスの照射部と缶底部2の振動音を捕えるマイクロフォン13とを備えたプローブにより正常缶の内圧変化に対する固有振動数の周波数変化を測定した。この固有振動数の信号はアンプ14により増幅され、この増幅された周波数を求めた。その後、キャップを緩めてヘッドスペース内のガスを抜き内圧を解除して、再度締め直し、図4に示すように、缶底部2を上にした状態で保持して、各水準における0内圧缶のそれぞれについて打検周波数を内圧解除前と同様に測定した。
一旦缶内に所定の圧力を掛けた後に、その圧力を解除して無負荷にした漏れ缶に相当する0内圧缶の各水準について打検周波数を測定する。この測定結果は図5に示す。図5に示すとおり、正常缶なのか0内圧缶なのか明確に判定可能な周波数のしきい値500Hz以上が缶内圧60KPa〜120KPaの間(斜線領域)でとれるか否かで、0内圧缶の特性の評価を行った。所定の圧力の範囲において正常缶と0内圧缶との間に、明確な判定しきい値がとれる場合は合格として取り扱う。即ち、所定の圧力の範囲において正常缶と0内圧缶との間に、明確な判定しきい値がとれない場合は「×」、明確なしきい値がとれる場合は「○」と表示した。なお、このしきい値は窒素充填量の過少、過多により発生する内圧のバラツキを考慮して、振動周波数の平均値からしきい値として必要な値に設定される。また、120KPa以上の内圧では、缶を開栓する際の初期の内圧逃げのためのキャップのベントスリットから内容物も同時に吹き出す、所謂スプラッシュ現象を引き起こすため、缶内圧のしきい値範囲を60KPa〜120KPaとした。
実施例の製造条件
表1に示すネジ付き缶を、図3に示す製缶工程の通り、3104系アルミニウム合金板から缶胴径が45mm、缶胴部3の壁厚は0.165mmの絞りしごき缶体を得て、印刷・クリア塗装焼き付けを350℃で10秒間行い、スプレー塗装の乾燥を240℃で60秒間行い、開口部に縮径加工が施され肩部10と小径部11が形成され、口部形成されて缶体の高さが106mmの小容量ネジ付き缶を製造した。そして、成形性(ネッキング)と0内圧缶の特性を評価した。その評価結果は、表1に示す。
(缶底部の形状)
環状凹部8の深さ:4.0mm
接地部5の直径にあたる接地径:39.4mm
交点Pの接地部5の接地面からの高さ方向距離H1:2.7mm
Figure 2009173338
本発明のネジ付き缶は、いずれも口部洗浄した後の加熱処理を215℃で120秒行った。それによればコーナー部9における板厚の減少はなく、缶底部2の成形性も良好であり、缶内圧60〜120KPaの微陽圧の範囲において0内圧缶の特性も良好であった。また、中央パネル部4の面と交点Pを基点とする仮想平面とが1.0mmを超えない範囲であれば中央パネル部4の振動の基点はほぼ安定し、缶底部2の振動周波数のバラツキが少なく、缶内圧60〜120KPaの微陽圧の範囲において缶内圧と振動周波数との相関性も良いとの評価が得られた。
また、本発明の範囲内にあるネジ付き缶は、窒素充填による缶内圧のバラツキを設定内圧に対して例えば、±30KPaよりも少なく充填密封したり、板厚を薄めに設定したりすることにより缶内圧の僅かな変化に対して振動周波数が敏感に反応することが可能となり、ケース打検を精度良く行うことが可能となった。
No.5では、合理化を目的としてアルミニウム合金板である3104材の耐力を260MPaに上げている。この時は、缶底部2の硬度が93Hvに上昇するため、振動周波数が高くなり、缶内圧の僅かな変化に対する缶底部2の振動周波数の変化率が小さくなる。そのため、所定の圧力範囲「60KPa〜120KPa」では明確なしきい値500Hzが得られない。したがって、ネッキングについては合格と判断されるものの、0内圧缶の特性については不合格と判断された。
No.6については、アルミニウム合金板である3104材の耐力を220MPaに下げている。これは、缶底部2の硬度の上限に対して下限の調査も合わせて行った。このNo.6については、ネッキングについては合格と判断されるものの、0内圧缶の特性については不合格と判断した。即ち、缶底部2を含む缶全体の硬度が80Hvに降下するため、容器内に内容物を充填して容器の口頸部12にキャップを被せてロールオン成形して装着するときに、キャップを容器口部1へ押し付けるための打栓圧によって、ネジ部や、缶底部2の傾斜部6が座屈する傾向が見られた。また、缶内圧が100KPaを超える当たりから0内圧缶の周波数は上がりはじめ、60KPa時の周波数に近づくことになり、所定の圧力範囲「60KPa〜120KPa」では明確なしきい値500Hzを取ることができない。
No.7については、アルミニウム合金板の元板厚を変更して0.325mmの合金板を使用した。No.7においては、缶内圧の変化に対する打検周波数の変化率が小さくなるため、缶内圧について「60KPa〜120KPa」の範囲では明確なしきい値である500Hzを取ることができない。そのため、0内圧缶の特性は不合格と判断した。
No.8については、アルミニウム合金板の元板厚を変更して0.265mmの合金板を使用した。No.8においては、缶内圧が100KPaを超える当たりから0内圧缶の周波数が上昇するため、缶内圧について「60KPa〜120KPa」の範囲では明確なしきい値500Hzを取ることができない。そのため、0内圧缶の特性は不合格と判断した。
一方で、成形テストを行っていく過程で、0内圧缶特性が中央パネル部4の深さH2に依存することを種々の実験から理解できるようになった。そこで、環状凹部8の深さを4.0mmに固定して、中央パネル部4の深さH2を変化させて缶底中央パネル部4の板材における張力の度合いと0内圧特性との関係を調査した。この評価内容の一例をNo.9に示す。
No.9では中央パネル部4の深さH2については、1.8mmに変更して評価をした。即ち、環状凹部8と中央パネル部4との段差H3を2.2mmとして評価を行った。そして、段差H3が大きくなったことにより中央パネル部4の張りは強くなるが、周囲を構成するコーナー部9で材料が部分的に薄くなり、コーナー部9の減厚率は8%であった。その結果、0内圧特性は良い結果となったが、このネッキング箇所では、ひび割れ等が観察されて外観性が悪く、ひいては漏洩上の問題があり品質上満足できるものではなかった。
また、No.9について、缶底部2の振動周波数のバラツキ度合いも合わせて調査したところ、中央パネル部4の振動膜の振動面がP点を基点とする面に対して高さ方向で1mm程度のズレがあり、そのため中央パネル部4の振動の基点となる位置が安定せず、振動周波数に複数のピークが発生し、どの周波数を評価に用いるのか判断ができなかった。
No.10では、中央パネル部4の深さH2については、2.9mmに変更して評価をした。このときは、内圧が100KPaを超えたあたりから、内圧除荷時のボトム形状が復元しなくなり、0内圧特性が悪くなる。これは、中央パネル部4の張力がゆるんで弱くなり、内圧上昇に伴い変形を規制する力が弱くなった。そのため、環状凹部8と中央パネル部4との段差H3は少なくとも1.1mm以上としなければならないことが判明した。
No.11では、ネッキングの程度を調整するために、中央パネル部4の深さを浅くする代わりに中央パネル部4の周辺を構成するコーナー部9の曲率半径Rを小さくして評価をした。このコーナー部9の曲率半径Rを0.8mmとしてコーナー部9の減厚率を形成された缶底の断面写真から計測調査した。その結果、0内圧缶の特性は良好であったが、コーナー部9の減厚率は2%あり、ネッキングにより漏れに繋がる危険性がある微細なひび割れが観察された。そのため、コーナー部9のRを1.0mm以上、同時に減厚率を1%以下とすることが判明した。
No.12では、口部洗浄した後、温風乾燥を行った。この時は、缶底部2の硬度が低下しない程度の加熱温度であり、後加熱処理前までの硬度92Hvを有しており、缶底部2からの振動周波数は全体的に高くなり、缶内圧の変化に対して振動周波数の変化が小さく敏感に反応しない。そのため、60〜120KPaの範囲では明確なしきい値500Hzが確保できなかった。
本発明にかかる小容量ネジ付き缶の底部付近の拡大断面図である。 本発明にかかる小容量ネジ付き缶の断面図である。 製缶工程を表した模式図である。 本発明にかかる内圧の検査手法の模式図である。 缶の内圧と周波数との関係を表したグラフである。
符号の説明
1…容器口部、 2…缶底部、 3…缶胴部、 4…中央パネル部、 5…接地部、 6…傾斜部、 7…内壁部、 8…環状凹部、 9…コーナー部、 10…肩部、 11…小径部、 12…口頸部、 13…マイクロフォン、 14…アンプ。

Claims (3)

  1. 元板厚T0が0.28〜0.32mmのアルミニウム金属板から缶底部と缶胴部とが一体成形された有底円筒缶を成形し、開口端部を縮径加工して肩部と口頸部とを成形し、その口頸部にネジ部及びカール部が形成された内容物160ml以下の小容量ネジ付き缶において、
    前記缶底部が、缶外方に凸となる断面実質円弧状の接地部と、この接地部の外周側から前記缶胴部に対して傾斜して立ち上がる傾斜部と、前記接地部の内周側から中心軸方向に立上る短円筒状の内壁部と、その内壁部に連続して設けられ、缶内方に凸となる断面円弧状の環状凹部(カウンターシンク部)と、この環状凹部の内周側からコーナー部を介して連続する平坦な中央パネル部とを備え、
    前記中央パネル部は、前記傾斜部と前記缶胴部との交点Pを基点とするほぼ同一平面内に位置するように形成されると共に、前記ネジ部及びカール部が形成された後の前記缶底部の硬度(Hv)が83〜90であり、
    金属板の元板厚T0に対する前記コーナー部の肉厚Tの、下記式で定義される減厚率εが1%以下であることを特徴とするレトルト対応小容量ネジ付き缶。
    ε=(T0−T)/T0×100(%)
  2. 前記缶胴部の直径が50mm以下、前記環状凹部と前記中央パネル部との段差が1.1mm以上であり、且つ、前記コーナー部の曲率半径が1.0〜1.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のレトルト対応小容量ネジ付き缶。
  3. 前記ネジ部及びカール部が形成された後に施される前記口頸部の洗浄加熱処理を通過した後の前記缶底部の硬度(Hv)が83〜90であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレトルト対応小容量ネジ付き缶。
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