JP2009168326A - 金属細線、ウイック構造体およびそれを用いたヒートパイプ - Google Patents

金属細線、ウイック構造体およびそれを用いたヒートパイプ Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な方法で作製できる、毛細管力が強く、気相の作動液の透過率の高いウィック構造体、およびそれを用いるヒートパイプを提供する。
【解決手段】金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体である。管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管である。
【選択図】図1

Description

この発明は、金属細線、ウイック構造体およびそれを用いたヒートパイプに関し、特にパーソナルコンピュータをはじめとする小型電子機器の冷却に用いるウイック構造体およびそれを用いたヒートパイプに関する。
CPU、素子等の発熱量、発熱密度の増大によって、放熱効率に優れた高性能の冷却技術が求められている。従来、熱の輸送量が大きいヒートパイプを組み合わせたヒートシンクが広く使用されている。ヒートパイプの内部には作動流体の流路となる空間が設けられ、その空間に収容された作動流体が、蒸発、凝縮等の相変化や移動をすることによって、熱の移動が行われる。即ち、ヒートパイプの吸熱側において、ヒートパイプを構成する容器の材質中を熱伝導して伝わってきた被冷却部品が発する熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側においては、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。このように液相状態に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって熱の移動が行われる。
ヒートパイプには、コンテナ内に封入される作動液を、凝縮部から蒸発部へと還流するための、グルーブ、メッシュ、焼結金属体などのウイック構造体が備えられている。一般に、ウイック構造体には、備わっている細孔部の細孔半径が小さいほど毛細管力が強いという一方で、蒸気が流れる場合の流路抵抗が高いというジレンマがある。逆に、細孔半径が大きいほど流路抵抗は低いが、毛細管力が弱くなる。相反する2つの要素、強い毛細管力および低い流路抵抗を備えたウイック構造体の実現が求められている。
特開2003−148886号公報 特開2003−214779号公報 特開2007−056302号公報
特許文献1に開示されたウイック構造体は、密閉状態の中空部を有するパイプ本体と、パイプ本体の内周面に接するように配置された多孔質金属体層と、パイプ本体内に封入された作動流体とを備えている。多孔質金属体層は、その周方向に区画された第1の多孔質部と、第1の多孔質部よりも気孔率が小さい第2の多孔質部とを有している。即ち、ヒートパイプの内周面上に気孔率の高い部分と気孔率の低い部分とを同時に備えて、強い毛細管力と低い流路抵抗(即ち、高い透過率)とを実現しようとしている。
しかし、特許文献1に開示されたウイック構造体では、以下の問題点がある。即ち、パイプ(特に溝のないベア管)の内周面上で一部分のみ、粒径の異なる金属粒子を配置するのは困難である。更に、粒径の異なる金属粒子を焼結するのは困難である。粒径の異なる金属粒子等多くの材料を準備する必要がありコスト高になる。ヒートパイプを使用する際に、毛細管力が強い部分を下向きに配置しなければならない等、ヒートパイプを配置する方向が制限される。ヒートパイプを扁平して使用する際に、異種径金属間で割れが生じやすい。
特許文献2に開示されたヒートパイプは、中空平板状のコンテナ内に、毛細管力を発生させるとともにその毛細管圧力によって作動流体を流通させる通路を構成するウイックを配置した平板型ヒートパイプである。ウイック構造体として、入熱部側に実効毛細管半径の小さいウイックが配置され、かつ放熱部側に作動流体の流通する流路の断面積が大きく実効毛細管半径の大きいウイックが配置され、さらにこれら2つのウイックの流路が互いに連通されている。即ち、放熱部から蒸発部への作動液の還流特性が優れている。
しかし、特許文献2に開示された技術では、以下の問題点がある。即ち、平面型ヒートパイプ以外では、長さ方向に粒径の異なる金属粒子を配置するのは困難である。更に、粒径の異なる金属粒子を焼結するのは困難である。粒径の異なる金属粒子を準備する等、材料が増えるのでコスト高になる。粒径が小さい部分を蒸発部に、粒径が大きい部分を凝縮部に配置しなければならないので、ヒートパイプを使用する際に、蒸発部と凝縮部の向きが制限される。更に、熱源が複数ある場合など、熱源の配置に応じて、ヒートパイプの内部構造を変えなければならない。
特許文献3に開示された焼結ウイックの製造方法は、金属パイプの内壁面に少なくとも平均粒径の異なる2種類の粉末の混合体で未焼結ウイック層を形成し、この未焼結ウイック層を還元性雰囲気下で加熱・焼結するヒートパイプの焼結ウイック層の製造方法である。これにより、生産性がよく、毛細管力が高く、かつ、作動流体の循環性に優れたヒートパイプの実現を図っている。即ち、2種類の焼結金属を混ぜて用いることで、高い毛管力と高い透過率を両立しようとしている。
しかし、特許文献3によると、以下の問題点がある。即ち、粒径の異なる金属粒子を焼結するのは困難である。粒径の異なる金属粒子を準備する等、材料が増えるのでコスト高になる。異なる径の金属粒子を混ぜているが、平均の気孔率は2つの粒子の成分比率によって決まる値となる(即ち、目的とする気孔率の金属粒子を一種類用いることと実質的には同じである。)更に、毛細管力が強い部分と、透過率が高い部分とを分けて存在させることは出来ない。
上述したように、従来技術においては毛細管力が高く、かつ流路抵抗が低いウィック構造体を実現しようとして、2種類以上の異なるウィック構造体を用いる方法が採用されていた。しかしながら、2種類以上のウィック構造体を用いることは、製造工程の複雑化・材料コスト高などの様々な問題点があった。
従って、この発明の目的は、簡易な方法で作製することができる、毛細管力が強く、気相の作動液の透過率の高いウィック構造体、およびそれを用いるヒートパイプを提供することにある。
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、所定の温度で所定の時間、金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元すると、微細間隙部を有しない金属芯部の表面全体に一体的に、微細間隙部を有する金属表面部が形成され、微細間隙部が強い毛細管力を有していることが判明した。
更に、このようにして形成された微細間隙部を有しない金属芯部の表面全体に一体的に、微細間隙部を有する金属表面部が形成された金属細線を、気相の作動液が小さい抵抗で流れるように複数本組み合わせてウイック構造体を形成すると、毛細管力が強く、気相の作動液の透過率の高いウィック構造体が、簡易な方法で作製できることが判明した。この発明は、上述した結果に基づいてなされたものである。
この発明の金属細線の第1の態様は、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた金属細線である。
この発明のウイック構造体の第1の態様は、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体である。
この発明のウイック構造体の第2の態様は、前記金属芯部と前記金属膜部が同一金属からなり、前記微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されていることを特徴とするウイック構造体である。
この発明のウイック構造体の第3の態様は、前記複数の金属細線が網状に編んで形成されていることを特徴とするウイック構造体である。
この発明のウイック構造体の第4の態様は、前記複数の金属細線が重畳配置されていることを特徴とするウイック構造体である。
この発明のウイック構造体の第5の態様は、前記金属膜部における前記微細間隙部によって液相の作動液用の微細流路が形成されていることを特徴とするウイック構造体である。
この発明のウイック構造体の第6の態様は、前記金属膜部が酸化・還元によって形成されていることを特徴とするウイック構造体である。
この発明の金属管の第1の態様は、管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管である。
この発明の金属管の第2の態様は、前記グルーブ壁面部と前記グルーブ金属膜部が同一金属からなり、前記微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されていることを特徴とする金属管である。
この発明の金属管の第3の態様は、前記グルーブ壁面部と前記グルーブ金属膜部が内壁の少なくとも一部に形成されている金属管である。
この発明の金属管の第4の態様は、前記グルーブ金属膜部が酸化・還元によって形成されている金属管である。
この発明のヒートパイプの第1の態様は、管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管からなるコンテナと、前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプである。
この発明のヒートパイプの第2の態様は、密封されたコンテナと、前記コンテナ内に配置された、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプである。
この発明のヒートパイプの第3の態様は、管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管からなるコンテナと、
前記金属管の前記グルーブ金属膜部に載置された、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、
前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプである。
この発明のウイック構造体の製造方法の第1の態様は、複数の金属細線を網状に編んでメッシュを形成し、
所定の温度で、前記メッシュを酸化して前記金属細線の表面に酸化膜を形成し、
還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された前記メッシュを還元して、前記金属細線の金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを形成する、ウイック構造体の製造方法である。
この発明の金属管の製造方法の第1の態様は、管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、
所定の温度で、前記溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、
還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を製造する、金属管の製造方法である。
この発明のヒートパイプの製造方法の第1の態様は、管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、
所定の温度で、前記溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、
還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を調製し、
所定の温度で、金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、
還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元して、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を調製し、
前記複数の金属細線を網状に編んでウイック構造体を調製し、
前記グルーブ表面部の表面に前記ウイック構造体を載置してヒートパイプを製造する、ヒートパイプの製造方法である。
メッシュの剥離部分(即ち、金属膜部)の外周では、従来の剥離部分のないメッシュと同様に細孔半径が大きく、高い透過率を持ったウィック構造体として機能するので、作動液の還流の際に生じる流路抵抗が少なく、作動液は円滑に移動する。一方、メッシュ線の芯部分と剥離部分の間は細孔半径が小さく、高い毛管力を持ったウィック構造体として機能するので、凝縮部から蒸発部へのポンプ圧が強化され、作動液の還流が促進される。上述した、二つの作用により、毛管力が強く、且つ透過率の高いウィック構造体ができる。
また、使用するウィック構造体が一種類であるので、加工が容易であり、コスト低下も図れる。さらに、ヒートパイプは向きに依らず円滑に作動するので、ヒートパイプの配置方向ごとに内部構成を変える必要がない。
この発明のウイック構造体およびそれを用いたヒートパイプを、図面を参照しながら説明する。
この発明の金属細線の1つの態様は、ウイック構造体に使用される金属細線であって、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた金属細線である。
図1は、この発明の金属細線の1つの態様を説明する断面図である。金属細線は例えば銅製の細線である。図1に示すように、この発明の1つの態様の金属細線1は、中央部に位置する金属芯部2と、金属芯部2との間で微細間隙部4を形成する金属膜部3とを備えている。金属膜部3は皮状に金属芯部2の周りを覆うように形成されている。金属芯部と金属膜部は一体的に形成されたものであってもよく、別体として形成されたものであってもよい。金属細線の径は、通常φ0.08mmであり、概ねφ0.05mm〜0.25mmの範囲内であればよい。
図1に示す金属芯部2、微細間隙部4、および金属膜部3が存在する断面の形状が金属細線1の長手方向に概ね続いている。但し、金属芯部2、微細間隙部4、および金属膜部3を含む断面形状そのものが同一形状ではなく、金属膜部3および微細間隙部4の大きさ、形状、位置はそれぞれ変化するものの、金属細線1の長手方向に沿って実質的に金属芯部2の外表面の全周にわたって、図1に示すような断面形状が同様に存在している。金属芯部と金属膜部との間に形成された微細間隙部4は毛細管力に優れ、金属細線1の長手方向に沿って高い毛細管力の微細間隙部4が存在する。
この発明の金属細線は、下記方法によって製造することができる。即ち、所定の温度で所定の時間、金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、 還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元して、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた金属細線を製造する。
本願発明の金属細線の製造方法の1つとして加熱による酸化・還元を用いる方法がある。例えば、先ず高温(650℃、30分程度)で金属細線を酸化する。次いで、還元ガス雰囲気下(550℃、10分程度)で還元する。還元ガスは酸化された金属例えば銅を還元するためのガスで、アルゴンガスおよび水素ガスで水素の含有量が約5%である。高温で金属細線を酸化すると、金属細線は膨張し、元の線径よりも太くなる。次いで、還元ガス雰囲気下(550℃、10分程度)で還元すると、膨張した部分を残し、金属細線は収縮する。収縮した部分が金属細線の金属芯部に、膨張して残った部分が剥離したような形状を示す金属膜部になる。このようにして形成された金属細線の金属芯部と、剥離したような形状の金属膜部との間に形成された狭い間隙の微細間隙部が、強い毛細管力をもたらす。
本願発明の金属細線の製造方法の他の1つとして、薬品を用いた酸化がある。例えば、酢酸銅/硫酸銅/硫化バリウム/塩化アンモニウム系の処理液を用いることにより黄色又は赤色の酸化第1銅を生成する。又は、亜塩素酸ナトリウム/水酸化ナトリウム系の処理液を用いることにより、黒色の酸化第2銅を生成する。次いで、還元ガス雰囲気下(550℃、10分程度)で還元する。
上述したように、金属芯部と金属膜部の間に形成された微細間隙部によって液相の作動液用の微細流路が形成されている。従って、この発明の金属細線は、それ自体で、外表面部に毛細管力の高い微細間隙部を備えており、高い毛細管力を要求される各種分野で適用が可能である。
この発明のウイック構造体の1つの態様は、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体である。即ち、上述した金属細線を複数組み合わせて、例えば網状に編んで形成されている。
図2は、金属細線を複数組み合わせて、網状に編んで形成されているウイック構造体を説明する部分平面図である。図2に示すように、複数の金属細線を交互に組み合わせ、格子状に編んでいる。図に示すように、金属細線の表面には微細な凹凸が存在しているが、個々の金属細線は、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備え、金属芯部と金属膜部が同一金属からなり、微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されている。図では、複数の金属細線を格子状に交互に編んで形成された一枚のメッシュが示されているが、格子状に編んだ金属細線のメッシュが複数枚重ね合わされて配置されてもよい。
ウイック構造体は、上述したと同様に製造される。即ち、複数の金属細線を網状に編んだメッシュを形成し、所定の温度で所定の時間(例えば、650℃、30分程度)、網状に編んだメッシュを形成する金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、還元ガス雰囲気下で所定の温度で所定の時間(例えば、550℃、10分程度)、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元して、金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線からなるウイック構造体を形成する。
図3は、ウイック構造体の1つの態様を説明する部分断面図である。図4はその詳細を説明する摸式断面図である。図において、横方向に伸びている線状の部分が1つの金属細線1の縦断面であり、その近傍に位置する円形状の部分が別の金属細線1の横断面である。図3、4に示すように、金属細線1の縦断面において、縦長の金属細線1の金属芯部2の外表面に沿って薄い金属膜部3が形成されている。金属膜部3と金属芯部2の間に微細間隙部4が形成されている。
この図から明らかなように、ウイック構造体を形成する金属細線の長手方向に沿って外表面に微細間隙部が存在している。縦断面で示された縦長の金属細線の全長にわたって、上述した微細間隙部が形成されている。必ずしも1つの微細間隙部が全長にわたって形成されているのではなく、複数の微細間隙部が連絡しあうように形成され、結果的に全長にわたって毛細管力の強い部分が金属細線の表面部に形成されている。上述したように、縦断面で示された縦長の金属細線に近接して、横断面で示される別の金属細線が配置されている。
図3、4に示す、横断面で示される別の金属細線に明確に示されているように、中央の金属芯部の外表面に、金属膜部が形成されている。微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されている。図から明らかなように、微細間隙部は形状、大きさ、位置において異なっているが、金属芯部の回りに、強い毛細管力を有する微細間隙部が形成されていることがわかる。
図2から図4に示すウイック構造体においては、ウイック構造体を形成する個々の金属細線の金属芯部の外表面の全体にわたって強い毛細管力を有する微細間隙部が形成され、他方で、このように形成された個々の金属細線の配置を適切にすることによって、蒸発した作動液が流れる、流路抵抗の小さい流路が形成される。従って、毛細管力が強く、気相の作動液の透過率の高いウィック構造体が得られる。
この発明のヒートパイプの1つの態様は、密封されたコンテナと、コンテナ内に配置された、金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプである。
図5は、この発明のヒートパイプの1つの態様を説明する摸式図である。図5(a)はヒートパイプを説明する横断面図である。図5(b)は、図5(a)の点線で示す部分の拡大図である。
図5(a)に示すように、ヒートパイプ10は、密閉されたコンテナ11と、コンテナ11内に配置された、金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体12とを備え、コンテナ内には水等の作動液が封入されている。コンテナの一方の平らな面に発熱体が熱的に接続される吸熱部があり、コンテナの他の部分に放熱フィンが熱的に接続される放熱部がある。
図5(b)に示すように、コンテナ11の内壁にウイック構造体12が設置されている。ウイック構造体12は、金属細線1が格子状に配置され、網状に相互に組み合わされてメッシュ状に形成されている。金属細線1には、図2から4を参照して説明したように、縦断面で示された縦長の金属細線の金属芯部2の外表面に、全長にわたって、金属膜部3が形成され、金属膜部3と金属芯部2の間には、微細間隙部4が形成されている。横断面で示される別の金属細線に示されているように、中央の金属芯部2の外表面に、金属膜部3が形成されている。微細間隙部4が、金属芯部2から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片3と金属芯部2の表面との間に形成されている。
この態様のヒートパイプに示すように、例えば、メッシュ状のウイック構造体が配置された図5(a)に点線で示す部分のコンテナの外面に発熱体が熱的に接続され、図示しない別の箇所に放熱フィンを熱的に接続すると、コンテナ内に封入された作動液が、伝導した発熱体の熱によって蒸発し、メッシュの空間を通って放熱フィンが熱的に接続された部分に移動して、放熱フィンによって冷却されて液相に戻り、ウイック構造体の上述した微細間隙部を通って発熱体が熱的に接続された吸熱部に還流する。微細間隙部は毛細管力が強いので、放熱部から吸熱部へ作動液が急速に移動し、発熱体の発熱密度が高くても、所謂ドライアウトが生じることは無い。他方、ウイック構造体の金属細線を適宜配置することによって、蒸発した作動液が高い透過率で流れる、即ち、流路抵抗が小さい状態が実現される。図6に他の態様のヒートパイプを部分拡大した断面を示す。図6では、ウイック構造体が、メッシュを積層して形成されている。
この発明の金属管の1つの態様は、管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管である。即ち、管の内壁に形成された溝部に、酸化・還元によって、金属細線と同様に金属膜部に対応するグルーブ金属膜部を形成する。
図7は、この発明の金属管の1つの態様を説明する部分模式断面図である。図7(a)は部分断面図を示し、図7(b)はその詳細を説明する図である。図7(a)に示すように管の内壁に、管の長手方向に沿って等間隔で概ねV字形の溝部が形成されている。管の内壁に形成された断面V字形の溝部の鋭角部分が毛細管力を発揮する。この発明では、このように形成されたV字形の溝部に酸化・還元を施して、毛細管力をより一層強くしている。図7(b)に示すように、金属管21は、溝部を形成するグルーブ壁面部22、22と、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部24を形成するグルーブ金属膜部23とを備えている。図7(b)に示すように、溝部の傾斜した2つの表面の全体にわたって、微細間隙部24が形成されている。
金属管は、下記の方法によって製造することができる。即ち、管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、所定の温度で所定の時間(例えば、650℃、30分程度)、溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、還元ガス雰囲気下で所定の温度で所定の時間(例えば、550℃、10分程度)、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を製造する。
この発明のヒートパイプの他の1つの態様は、管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管からなるコンテナと、
金属管のグルーブ金属膜部に載置された、金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、
コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプである。
図8は、この発明のヒートパイプの他の1つの態様の部分拡大図である。図8に示すように、コンテナである管の内壁に図7を参照して説明した、グルーブ壁面部と、グルーブ金属膜部との間に、毛細管力の高い微細間隙部備え、グルーブ金属膜の上に、更に、図2から図4を参照して説明した金属芯部と金属膜部との間に毛細管力の高い微細間隙部を備えた、複数の金属細線からなるウイック構造体を組み合わせている。グルーブと、金属細線の配置を適切にすることによって、高い毛細管力を備え、同時に、気相の作動液が低い流路抵抗で流れる高い透過率を備えたヒートパイプを得ることができる。
この態様のヒートパイプは、次の方法によって製造することができる。即ち、管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、所定の温度で、溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を調製し、
所定の温度で、金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元して、金属芯部と、金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を調製し、
複数の金属細線を網状に編んでウイック構造体を調製し、グルーブ表面部の表面にウイック構造体を載置してヒートパイプを製造する。
この発明によると、簡易な方法で作製することができる、毛細管力が強く、気相の作動液の透過率の高いウィック構造体、およびそれを用いるヒートパイプを提供することができる。
図1は、この発明の金属細線の1つの態様を説明する断面図である。 図2は、金属細線を複数組み合わせて、網状に編んで形成されているウイック構造体を説明する部分平面図である。 図3は、ウイック構造体の1つの態様を説明する部分断面図である。 図4は、図3のウイック構造体の詳細を説明する摸式断面図である。 図5は、この発明のヒートパイプの1つの態様を説明する摸式図である。 図6は、この発明のヒートパイプの他の1つの態様を説明する摸式図である。 図7は、この発明の金属管の1つの態様を説明する部分模式断面図である。図7(a)は部分断面図を示し、図7(b)はその詳細を説明する図である。 図8は、この発明のヒートパイプの他の1つの態様の部分拡大図である。
符号の説明
1 金属細線
2 金属芯部
3 金属膜部
4 微細間隙部
10 ヒートパイプ
11 コンテナ
12 ウイック構造体
21 金属管
22 グルーブ壁面部
23 グルーブ金属膜部
24 微細間隙部


Claims (15)

  1. 金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた金属細線。
  2. 金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体。
  3. 前記金属芯部と前記金属膜部が同一金属からなり、前記微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のウイック構造体。
  4. 前記複数の金属細線が網状に編んで形成されていることを特徴とする請求項12または3に記載のウイック構造体。
  5. 前記複数の金属細線が重畳配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載のウイック構造体。
  6. 管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管。
  7. 前記グルーブ壁面部と前記グルーブ金属膜部が同一金属からなり、前記微細間隙部が、金属芯部から剥がれるように立ち上がって形成された金属薄片と金属芯部の表面との間に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の金属管。
  8. 前記グルーブ壁面部と前記グルーブ金属膜部が前記管の内壁の少なくとも一部に形成されている請求項6または7に記載の金属管。
  9. 前記グルーブ金属膜部が酸化・還元によって形成されている請求項6から8の何れか1項に記載の金属管。
  10. 管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管からなるコンテナと、前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプ。
  11. 密封されたコンテナと、前記コンテナ内に配置された、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプ。
  12. 管の内壁に形成された溝部を形成するグルーブ壁面部と、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管からなるコンテナと、
    前記金属管の前記グルーブ金属膜部に載置された、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を組み合わせて形成されたウイック構造体と、
    前記コンテナ内に封入された作動液を備えたヒートパイプ。
  13. 複数の金属細線を網状に編んでメッシュを形成し、
    前記メッシュを酸化して前記金属細線の表面に酸化膜を形成し、
    還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された前記メッシュを還元して、前記金属細線の金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを形成するウイック構造体の製造方法。
  14. 管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、
    所定の温度で、前記溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、
    還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を製造する、金属管の製造方法。
  15. 管の内壁に長手方向に沿って溝部を形成し、
    所定の温度で、前記溝部を備えた管の内壁を酸化して、溝部を形成するグルーブ壁面部の表面に酸化膜を形成し、
    還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成されたグルーブ壁面部を還元して、前記グルーブ壁面部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成するグルーブ金属膜部とを備えた金属管を調製し、
    所定の温度で、金属細線を酸化して金属細線の表面に酸化膜を形成し、
    還元ガス雰囲気下で所定の温度で、表面に酸化膜が形成された金属細線を還元して、金属芯部と、前記金属芯部との間で、毛細管力の高い微細間隙部を形成する金属膜部とを備えた複数の金属細線を調製し、
    前記複数の金属細線を網状に編んでウイック構造体を調製し、
    前記グルーブ表面部の表面に前記ウイック構造体を載置してヒートパイプを製造する、ヒートパイプの製造方法。


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