JP2009158407A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い出力を得ながらも各膜電極接合体の間の出力を均一にし、膜電極接合体の劣化等を防止する燃料電池を提供する。
【解決手段】アノード11、12、17と、カソード13、14、18と、アノード11、12、17とカソード13、14、18との間に挟持された電解質膜15からなる膜電極接合体10A〜10Dと、膜電極接合体10A〜10Dのアノード11、12、17側に配置され、アノード11、12、17に燃料を供給するための燃料供給機構40と、を備え、燃料供給機構40とアノード11、12、17との間に、気体もしくは液体の流通できるスリットを有する部材32、33を備えている燃料電池。
【選択図】 図1
【解決手段】アノード11、12、17と、カソード13、14、18と、アノード11、12、17とカソード13、14、18との間に挟持された電解質膜15からなる膜電極接合体10A〜10Dと、膜電極接合体10A〜10Dのアノード11、12、17側に配置され、アノード11、12、17に燃料を供給するための燃料供給機構40と、を備え、燃料供給機構40とアノード11、12、17との間に、気体もしくは液体の流通できるスリットを有する部材32、33を備えている燃料電池。
【選択図】 図1
Description
本発明は燃料電池に関し、特に液体燃料を用いた燃料電池に関する。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として期待されている。
DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
アノードに燃料を供給する手段としては、さまざまな方法が採用可能である。例えば、メタノール水溶液等の液体燃料を、アノード導電層の下に直接流通させる方式や、燃料電池の外部で、メタノール等を蒸発させて気体燃料を生じ、その気体燃料をアノード導電層の下に流通させる外部気化型、燃料収容部に純メタノールやメタノール水溶液等の液体燃料を収容し、液体燃料を電池内部で気化させてアノードに供給する内部気化型等が考えられる。
また、カソードに酸化剤である空気を供給する手段としては、空気をファンやブロワにより強制的に供給するアクティブ型や、大気からの自然拡散のみにより供給する自発呼吸(パッシブ)型などが考えられる。
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して特に有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
国際公開第2005/112172号パンフレット
膜電極接合体が平面的に配置された燃料電池において、膜電極接合体の中央部近傍と周辺部近傍とでは、温度や出力が異なることが知られている。
すなわち、平面方向において、膜電極接合体の周辺部近傍では、周囲の大気等への熱の放散が多いため温度が低くなり、アノードおよびカソード触媒層における化学反応が進みにくいため、出力が低くなる傾向がある。
また、燃料電池の内部で燃料を気化させて気体燃料を生じる内部気化型の燃料電池では、燃料を気化させる熱源として、膜電極接合体で発生する熱を利用することが多いが、この場合に、平面方向周辺部では膜電極接合体自体の温度が低いため、燃料を気化させるための熱が充分に得られない場合もある。その場合、周辺部の膜電極接合体では、供給される気体燃料の量が少なくなり、そのために更に出力が低下する。
逆に、中央部近傍の膜電極接合体では、周囲の大気等へ熱を放散しにくいために温度が高くなり、従って燃料の供給も多くなるために出力が高くなる傾向がある。
上記の説明は、膜電極接合体が一つである場合を想定していたが、上記したような傾向は、複数の膜電極接合体を平面方向に並べて配置して、膜電極接合体群を構成している場合に、より顕著に現れる。
一般に、膜電極接合体群を構成する各膜電極接合体は、電気的に直列に接続される。従って、各膜電極接合体に流れる電流は等しい。ここで、上記のように出力の異なる膜電極接合体が直列に接続された場合、出力の高い膜電極接合体は電圧が高く、出力の低い膜電極接合体は電圧が低くなる。この場合に、膜電極接合体の電圧が低くなってゼロ以下になる、いわゆる「転極」を生じると、その膜電極接合体では、特にアノード触媒層を構成する触媒や、触媒を担持する炭素材料等が、電気化学的に異常な反応を生じ、劣化していくことが知られている。
この劣化を防ぐためには、全ての膜電極接合体において転極を生じる可能性が無いほどに、電流値を小さくすることが考えられる。但しこの場合、燃料電池全体として得られる電気的な出力は小さくなってしまう。
また、膜電極接合体の出力に不均一を生じる原因の一つは、温度分布の不均一によって生じる気体燃料の供給量の不均一にある。そこで、膜電極接合体(群)のうち、最も温度が低く、従って気体燃料の供給量が最も少ない部分であっても、気体燃料の不足を生じないよう、燃料を大量に供給することが考えられる。
但しこのようにすると、温度の高い部分では更に気体燃料の供給量が増加し、アノード反応で消費しきれない気体燃料が電解質膜を透過してカソードに拡散していく、いわゆるクロスオーバーが激しくなって、そのために出力が低下したり、膜電極接合体の温度が更に上昇したりする現象が生じる。
膜電極接合体の出力に不均一を生じる他の原因としては、アノードにおける反応で発生する反応生成物(燃料がメタノールである場合はCO2)を外気へ排出するガス排出穴の近傍と、ガス排出穴から離れた位置とでは反応生成物の濃度が異なり、反応生成物の濃度が高い位置ではアノードに供給される気体燃料の量が相対的に減少するため、結果として気体燃料の供給量が不均一を生じる点が挙げられる。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、高い出力を得ながらも各膜電極接合体の間の出力を均一にし、膜電極接合体の劣化等を防止する燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の態様による燃料電池は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜からなる膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードに燃料を供給するための燃料供給機構と、を備え、前記燃料供給機構と前記アノードとの間に、気体もしくは液体の流通できるスリットを有する部材を備えている。
本発明によれば、高い出力を得ながらも各膜電極接合体の間の出力を均一にし、膜電極接合体の劣化等を防止する燃料電池を提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。本実施形態では、アノード触媒層11に燃料を供給する手段として、純メタノールを電池内部で気化させて用いる、内部気化型の燃料電池を例にして説明する。また、カソード触媒層13に酸化剤である空気を供給する手段としては、パッシブ型の燃料電池を例にして説明する。
図1に示すように、燃料電池は、アノード触媒層11およびアノードガス拡散層12を有する燃料極(アノード)と、カソード触媒層13およびカソードガス拡散層14を有する空気極(カソード)と、アノード触媒層11とカソード触媒層13との間に挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜15とから構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly )10A〜10Dを起電部として備えている。複数の膜電極接合体10A〜10Dは、その長辺と略直交する方向(図1に示すX方向)に並んで配置され、膜電極接合体群10を構成している。
アノード触媒層11およびカソード触媒層13に含有される触媒としては、例えば、白金族元素である、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pdなどの単体金属、白金族元素を含有する合金などを挙げることができる。
具体的には、アノード触媒層11として、メタノールや一酸化炭素に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等、カソード触媒層13として、白金やPt−Ni、Pt−Co等を用いることが好ましいが、これらに限られるものではない。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒、あるいは無担持触媒を使用してもよい。
電解質膜15を構成するプロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有する、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体などのフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)など)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、タングステン酸やリンタングステン酸などの無機物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体としての機能も兼ね備えている。一方、カソード触媒層13に積層されたカソードガス拡散層14は、カソード触媒層13に空気等の酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層13の集電体としての機能も兼ね備えている。そして、アノードガス拡散層12の表面には、アノード導電層17が配設され、カソードガス拡散層14の表面には、カソード導電層18が配設されている。
アノード導電層17およびカソード導電層18は、例えば、金、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などで構成される。なお、アノード導電層17およびカソード導電層18は、それらの周縁から燃料や酸化剤が漏れないように構成される。
アノードシール材19は、矩形枠状を有し、アノード導電層17と電解質膜15との間に位置するとともに、アノード触媒層11およびアノードガス拡散層12の周囲を囲んでいる。一方、カソードシール材20は、矩形枠状を有し、カソード導電層18と電解質膜15との間に位置するとともに、カソード触媒層13およびカソードガス拡散層14の周囲を囲んでいる。アノードシール材19およびカソードシール材20は、例えば、ゴム製のOリングなどで構成され、膜電極接合体群10からの燃料漏れおよび酸化剤漏れを防止している。なお、アノードシール材19およびカソードシール材20の形状は、矩形枠状に限られず、燃料電池の外縁形に対応するように適宜に構成される。
一方、カソード導電層18上には、保湿層26が積層され、その上には、酸化剤である空気を取り入れるための空気導入口28が複数個形成されたカバープレート27が積層されている。このカバープレート27は、膜電極接合体群10を含む積層体を加圧して、その密着性を高める役割も果たしているため、例えば、SUS304のような金属材料によって形成される。
保湿層26は、カソード触媒層13において生成した水の蒸散を抑制する役割をなすとともに、カソードガス拡散層14に酸化剤を均一に導入することにより、カソード触媒層13への酸化剤の均一拡散を促す補助拡散層としての機能も有している。この保湿層26は、例えば、ポリエチレン多孔質膜などの材料で構成される。
燃料収容部41には、液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。
燃料供給部42は、配管等で構成される液体燃料Fの流路43を介して燃料収容部41と接続されている。燃料供給部42には、燃料収容部41から流路43を介して液体燃料Fが導入され、導入された液体燃料Fおよび/またはこの液体燃料Fが気化した気化成分は、燃料分配層30およびアノード導電層17を介してアノード触媒層11に供給される。
なお、流路43は、燃料供給部42や燃料収容部41と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料供給部42と燃料収容部と41を積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料Fの流路であってもよい。すなわち、燃料供給部42は、流路等を介して燃料収容部41と連通されていればよい。
燃料収容部41に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路43を介して燃料供給部42まで落下させて送液することができる。また、流路43に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部42まで送液してもよい。さらに、流路43の一部に、燃料供給手段として機能するポンプを介在させて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部42まで強制的に送液してもよい。
燃料分配層30は、例えば、複数の開口部が形成された平板で構成され、アノードガス拡散層12と燃料供給部42との間に挟持される。この燃料分配層30は、液体燃料Fの気化成分や液体燃料Fを透過させない材料で構成され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリイミド系樹脂等で構成される。
また、燃料分配層30は、例えば、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、その気化成分を透過させる気液分離膜で構成されてもよい。気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが用いられる。
本実施形態に係る燃料電池では、燃料分配層30の上に、スリット部材として第1スリット部材32および第2スリット部材33が積層されている。第1スリット部材32は気体もしくは液体の流通できる複数の第1スリット32Aを有し、第2スリット部材33は、気体若しくは液体の流通できる複数の第2スリット33Aを有している。
複数の第1スリット32Aは、その少なくとも1つが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びて設けられている。同様に、第2スリット33Aは、その少なくとも1つが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びて設けられている。
さらに、例えば図2に示すように、第1スリット32Aは、複数の膜電極接合体10A〜10Dの長辺方向(Z方向)と略直交する方向(X方向)に延びて設けられ、これらの膜電極接合体10A〜10Dのうち少なくとも2つ以上を結ぶように配置されている。
また、例えば液体燃料Fとしてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で次の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …式(1)
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、メタノールは、カソード触媒層13で生成した水や電解質膜15中の水と上記した式(1)の内部改質反応によって改質されるか、または水を必要としない他の反応機構により改質される。
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、メタノールは、カソード触媒層13で生成した水や電解質膜15中の水と上記した式(1)の内部改質反応によって改質されるか、または水を必要としない他の反応機構により改質される。
この反応で生成した電子(e−)は、アノードガス拡散層12(集電体)を経由して外部に導かれた後、カソードに導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜15を経てカソードに導かれる。カソードには、保湿層26を介して、酸化剤ガスとして空気が供給される。カソードに到達した電子(e−)とプロトン(H+)は、カソード触媒層13で空気中の酸素と次の式(2)に示す反応を生じる。
(3/2)O2+6e−+6H+ → 3H2O …式(2)
本実施形態に係る燃料電池は、上記式(1)においてアノード側で発生した反応生成物を排出するガス排出穴21(例えば図2に示す)を有している。このようにガス排出穴21が設けられた燃料電池では、第1スリット32Aまたは第2スリット33Aは、アノードで発生する反応生成物の濃度が高い位置の近傍の少なくとも1点と、濃度が低い位置の近傍の少なくとも1点とを結ぶように設けられる。
本実施形態に係る燃料電池は、上記式(1)においてアノード側で発生した反応生成物を排出するガス排出穴21(例えば図2に示す)を有している。このようにガス排出穴21が設けられた燃料電池では、第1スリット32Aまたは第2スリット33Aは、アノードで発生する反応生成物の濃度が高い位置の近傍の少なくとも1点と、濃度が低い位置の近傍の少なくとも1点とを結ぶように設けられる。
なお、本実施形態に係る燃料電池のように複数のスリット部材、すなわち第1スリット部材32と第2スリット部材33とを有する場合には、少なくとも燃料供給機構40側に配置される第1スリット部材32の第1スリット32Aが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びること、および、複数の膜電極接合体10A〜10Dのうち少なくとも2つ以上を結ぶことの少なくとも一方の条件を満たすように設けられることが望ましい。
また、アノード側に配置される第2スリット部材33の第2スリット33Aが、アノードで発生する反応生成物の濃度が高い位置の近傍の少なくとも1点と、濃度が低い位置の近傍の少なくとも1点とを結ぶように設けられることが望ましい。
これら第1スリット部材32および第2スリット部材33によって、燃料分配層30から供給された液体燃料Fの気化成分が、膜電極接合体の温度分布によらず均一に供給され、また、CO2等のアノード反応生成物の濃度が、ガス排出穴の位置によらず均一に分布するように、気体の拡散が行なわれる。
第1スリット部材32および第2スリット部材33として用いられる材料としては、液体燃料Fや液体燃料Fの気化成分、或いは液体燃料Fに微量含まれる酸素や有機酸等によって侵されたり酸化・腐食等の変質を生じたりすることのない材料であればよい。
具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)、シリコーン樹脂等の樹脂材料、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴム、アルミナセラミックス、陶磁器、ガラス等のセラミック類が使用可能である。
また、ステンレス、炭素鋼、銅、アルミニウム、チタン等の金属も使用可能であるが、これら金属材料を用いた場合、液体燃料に微量に溶存する酸素やギ酸等の有機酸等によって酸化、腐食を生じる可能性がある。そのため、上記の金属材料を用いる場合には、酸化、腐食を防ぐために、表面に金メッキや、樹脂もしくはゴムでコーティングを施したり、液体燃料に溶解しない塗料で塗装したりすることが望ましい。
上記の本実施形態に係る燃料電池では、燃料分配層30の上のスリット部材として、第1スリット部材32および第2スリット部材33が積層された構成としたが、単層でスリットを構成、さらには3つ以上のスリット部材で構成しても良い。
前記複数のスリット部材の前記スリットは、少なくとも隣接する前記スリット部材の前記スリットのスリットとは異なる方向及び/又は異なる形状にスリットが形成されていることが好ましい。図2および図3においては、第1スリット部材32の第1スリット32Aと第2スリット部材33の第2スリット33Aは、直行する方向に設けられているが、その方向に限られるものではない。さらには、その形状においても矩形のみに限られるものではない。例えば、膜電極接合体群10の中央部から周辺部に放射状に形成されたスリットであっても良い。
[実施例]
以下、本発明の実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において、前述の燃料電池と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
以下、本発明の実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において、前述の燃料電池と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施例)
以下に第1実施例にかかる燃料電池について図面を参照して説明する。本実施例にかかる燃料電池を以下のように形成した。すなわち、アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。
以下に第1実施例にかかる燃料電池について図面を参照して説明する。本実施例にかかる燃料電池を以下のように形成した。すなわち、アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。
このようにして得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(80mm×10mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
次に、カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。このようにして得られたペーストをカソードガス拡散層14としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層13を得た。
なお、本実施例にかかる燃料電池では、アノードガス拡散層12と、カソードガス拡散層14とは、同形同大であり、これらのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11およびカソード触媒層13も同形同大である。
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層13との間に、電解質膜15として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を配置し、上記したアノード触媒層11とカソード触媒層13とを各4枚ずつ、相互に対向し、かつ隣り合うアノード触媒層同士の間、カソード触媒層同士の間は1mmずつの間隔を隔てて平行するように位置を合わせた状態でホットプレスを施すことにより、膜電極接合体群10を形成した。
続いて、この膜電極接合体群10を、複数の開孔を有する金箔で挟み、アノード導電層17およびカソード導電層18を形成した。また、このアノード導電層17とカソード導電層18は、上記の各4枚ずつのアノード触媒層11とカソード触媒層13が電気的に直列に接続されるように、膜電極接合体群10の外部で配線を施した。
なお、電解質膜15とアノード導電層17との間、電解質膜15とカソード導電層18との間には、アノードシール材19およびカソードシール材20としてのゴム製のOリングをそれぞれ挟持してシールを施した。
この膜電極接合体群10において、電解質膜15のうち、アノード触媒層11とカソード触媒層13にともに接しておらず、かつOリング19、20の内側に相当する位置に、直径0.5mmのガス排出穴21を、図2に示すように8箇所に設けた。
また、保湿層26として、厚さが1.0mmで、透気度が2秒/100cm3(JIS P−8117に規定の測定方法による)で、透湿度が2000g/(m2・24h)(JIS L−1099 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
この保湿層26の上に、空気取り入れのための空気導入口28が形成された厚さが1mmのステンレス板(SUS304)を配置してカバープレート27とした。
燃料分配層30の上には、図1に示すように、第1スリット部材32と第2スリット部材33とを積層した。第1スリット部材32は、厚さ0.5mmのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製の平板から成り、図2および図3に示すように各々の膜電極接合体10A〜10Dの長辺と直交する方向(X方向)に延びる第1スリット32Aを有している。
第2スリット部材33は、第1スリット部材32と同様に、厚さ0.5mmのPEEK製の平板から成り、図2および図3に示すように、各々の膜電極接合体10A〜10Dの長辺と平行な方向(Z方向)に延びる第2スリット33Aを有している。
すなわち、本実施例にかかる燃料電池では、複数の第1スリット32Aは、その少なくとも1つが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びて設けられている。同様に、第2スリット33Aは、その少なくとも1つが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びて設けられている。
さらに、第1スリット32Aは、複数の膜電極接合体10A〜10Dの長辺方向(Z方向)と略直交する方向(X方向)に延びて設けられ、これらの膜電極接合体10A〜10Dのうち少なくとも2つ以上を結ぶように配置されている。
さらに、アノード側に配置される第2スリット部材33の第2スリット33Aが、アノードで発生する反応生成物の濃度が高い位置の近傍の少なくとも1点と、濃度が低い位置の近傍の少なくとも1点とを結ぶように設けられている。すなわち、第2スリット33Aは、式(1)に示すアノードでの反応が進みにくく、反応生成物の濃度が低くなる膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)周辺部と、式(1)に示すアノードでの反応が促進される膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部とを結ぶように延びて設けられている。
第2スリット部材33上には、アノード導電層16が接するように構成した。なおここで、本実施例にかかる燃料電池では、第1スリット部材32と第2スリット部材33とは別体であるが、厚さ1.0mmのPEEK製の平板を切削して、両者を一体として形成した部材を用いても良い。
上記のように作成した第1実施例にかかる燃料電池に、液体燃料Fとして純度99.9%のメタノールを供給し、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、外部負荷としての可変電流電源を接続して、燃料電池に流れる電流をゼロから次第に大きくなるように制御した。
電流の制御は、単位膜電極接合体の面積1cm2あたりに流れる電流の値が、1分間につき10mAずつ増加するように行ない(即ち、例えば電流を流し始めてから15分後には、単位膜電極接合体の面積1cm2あたり、150mAの電流が流れる)、また、各単位膜電極接合体で発生する電圧を測定して、その平均値が0.2V(すなわち、膜電極接合体群の全体で発生する電圧が0.8V)に達したところで、電流の増加を終了させるようにした。このときに、各膜電極接合体で発生する電圧を測定した結果を、図6に示す。
(第2実施例)
次に、第2実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。本実施例にかかる燃料電池は、第1スリット部材32として、図4に示す形状の部材を用いた以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
次に、第2実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。本実施例にかかる燃料電池は、第1スリット部材32として、図4に示す形状の部材を用いた以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
すなわち、図4に示すように、本実施例にかかる燃料電池の第1スリット部材32は、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)において、その中央部から周辺部に放射状に延びる第1スリット32Aを有している。第1スリット32Aのそれぞれは、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部から周辺部に向けて、その幅が大きくなるように開口している。
複数の第1スリット32Aは、その少なくとも1つが、膜電極接合体群10の平面方向(X−Z方向)中央部近傍の少なくとも1点と、周辺部近傍の少なくとも1点とを結ぶように延びて設けられている。さらに、第1スリット32Aは、膜電極接合体10A〜10Dのうち少なくとも2つ以上を結ぶように配置されている。
上記の燃料電池について、上述の第1実施例にかかる燃料電池の場合と同様の条件において各膜電極接合体で発生する電圧を測定した。その結果を図6に示す。
(第3実施例)
次に、第3実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。本実施例にかかる燃料電池は、ガス排出穴21の位置および第2スリット部材33の形状を、図5に示すようにした以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
次に、第3実施例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。本実施例にかかる燃料電池は、ガス排出穴21の位置および第2スリット部材33の形状を、図5に示すようにした以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
すなわち、図5に示すように、本実施例にかかる燃料電池は3つのガス排出穴21を有し、これらのガス排出穴21は、膜電極接合体群10の長辺方向(Z方向)の中央部において、短辺方向(X方向)に並んで配置されている。
また、本実施例にかかる燃料電池の第2スリット部材33は、膜電極接合体10A〜10Dの長辺方向と略平行に延びて配置されている。第2スリット33Aは、膜電極接合体群10の厚さ方向(Y方向)において、膜電極接合体10A〜10Dの少なくとも2つと重なる位置に配置されている。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池の第2スリット33Aは、これらの膜電極接合体10A〜10Dのうち少なくとも2つ以上を結ぶように配置されている。
上記の燃料電池について、上述の第1実施例にかかる燃料電池と同様の条件において各膜電極接合体10A〜10Dで発生する電圧を測定した。その結果を図6に示す。
(比較例)
次に、比較例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。比較例にかかる燃料電池は、第1スリット部材32と、第2スリット部材33とをともに有していない。比較例にかかる燃料電池は、上記の点以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
次に、比較例にかかる燃料電池について図面を参照して以下に説明する。比較例にかかる燃料電池は、第1スリット部材32と、第2スリット部材33とをともに有していない。比較例にかかる燃料電池は、上記の点以外は、第1実施例にかかる燃料電池と同様である。
この比較例にかかる燃料電池について、上述の第1実施例にかかる燃料電池と同様の条件において膜電極接合体10A〜10Dで発生する電圧を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示すように、第1乃至第3実施例にかかる燃料電池では、4つの膜電極接合体10A〜10Dの電圧は常に殆ど等しい。しかし比較例にかかる燃料電池では、膜電極接合体10A、10Dの電圧が早く低下し、膜電極接合体10B、10Cの電圧は高いままであることが分かる。
したがって、比較例にかかる燃料電池では、膜電極接合体10A、10Dでは、発電を行なっている間に転極を生じる可能性がある。転極を避けるために、膜電極接合体10A、10Dで転極を生じない程度に電流の値を小さくすると、膜電極接合体群10全体として得られる出力が減少することになる。
本発明の第1乃至第3実施例にかかる燃料電池では、各膜電極接合体10A〜10Dの電圧が常に殆ど等しいため、大きな電流を流しても転極を生じる恐れがなく、膜電極接合体群10全体として大きな出力を得ることが可能となる。
すなわち、本実施形態に係る燃料電池によれば、高い出力を得ながらも各膜電極接合体の間の出力を均一にし、膜電極接合体の劣化等を防止する燃料電池を提供することができる。
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記の実施形態に係る燃料電池は、第1スリット部材32と第2スリット部材33とを有していたが、複数のスリット部材を有していなくても少なくとも1つのスリット部材を有していれば良い。また、3つ以上のスリット部材を有していても良い。その場合であっても高い出力を得ながらも各膜電極接合体の間の出力を均一にし、膜電極接合体の劣化等を防止する燃料電池を提供することができる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
10A〜10D…膜電極接合体、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…カソード触媒層、14…カソードガス拡散層、15…電解質膜、32…第1スリット部材、33…第2スリット部材、40…燃料供給機構
Claims (7)
- アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜からなる膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードに燃料を供給するための燃料供給機構と、を備え、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に、気体もしくは液体の流通できるスリットを有するスリット部材を備えている燃料電池。 - 前記スリットは、その少なくとも一つが、前記膜電極接合体の中央部近傍の少なくとも1点と、前記膜電極接合体の周辺部近傍の少なくとも1点との間を結ぶように延びて設けられている請求項1記載の燃料電池。
- 複数の前記膜電極接合体を有する膜電極接合体群を有する燃料電池であって、
前記膜電極接合体群は、平面方向に並んで配置された複数の前記膜電極接合体を有し、
前記スリットは、その少なくとも一つが、前記膜電極接合体のうちの少なくとも2つ以上を結ぶように設けられている請求項1または請求項2記載の燃料電池。 - 前記アノードで発生する反応生成物を排出するガス排出穴をさらに有する燃料電池であって、
前記スリットは、その少なくとも一つが、前記アノードで発生する反応生成物の濃度が高い位置の近傍の少なくとも1点と、濃度が低い位置の近傍の少なくとも1点とを結ぶように設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の燃料電池。 - 前記スリット部材は、複数のスリット部材により構成され、
前記複数のスリット部材の少なくとも一つのスリット部材の前記スリットは、前記膜電極接合体の中央部近傍の少なくとも1点と、前記膜電極接合体の周辺部近傍の少なくとも1点との間を結ぶように延びて設けられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の燃料電池。 - 前記複数のスリット部材の前記スリットは、その少なくとも一つが、前記膜電極接合体のうちの少なくとも2つ以上を結ぶように設けられている請求項5記載の燃料電池。
- 前記複数のスリット部材の前記スリットは、少なくとも隣接する前記スリット部材の前記スリットのスリットとは異なる方向及び/又は異なる形状にスリットが設けられている請求項5または請求項6記載の燃料電池。
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