JP2009155498A - ガソリン燃料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジエン価およびオレフィン類に含まれる鎖状ジオレフィンの含有量を特定の値より低く抑えることにより、より高い清浄効果を得ることができるガソリン燃料組成物を提供する。
【解決手段】ジエン価が0.5以下で、清浄剤が添加され、好ましくは鎖状ジオレフィンの含有量が0.2容量%以下とすることで、実在ガムを規定の範囲に抑えながら、従来のガソリン燃料組成物よりも清浄剤をより多く添加することができ、高い清浄効果を得ることができるガソリン組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等に搭載されるガソリンエンジンに使用されるガソリン燃料を構成するガソリン燃料組成物に関するものである。
ガソリン組成物の重要な性状の一つとしてオクタン価がある。オクタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」で測定され、エンジン内におけるノッキングの発生しにくさの視標となっている。通常、この値は高い程好ましいとされているが、オクタン価を向上させる基材である芳香族類は、環境への影響が大きいものとして海外においては近年その含有量が規制されているところもある。そこで、オクタン価を高める他の基材として、オレフィン類を多く含む分解ガソリンが広く用いられている。
しかしながら、この分解ガソリンは、安定性を悪化させ、或いは臭気を発生させる等の問題点を持っている。そこで、それら分解ガソリンの持つ問題を解決する手段として、例えば、特開2006−104224号公報(特許文献1)に開示された無鉛ガソリン組成物及びその製造方法や、特開2006−206876号公報(特許文献2)に開示されたガソリン組成物が提案されている。
また、ガソリン組成物の重要な性状として、他にも清浄機能がある。ガソリンエンジンの吸気系統、特に吸気バルブにおいては、燃料であるガソリンの重質留分がデポジットとなって付着し、最適な空燃比が保たれず、燃焼性能、排出性能及び運転性能に悪影響を与えることが知られているが、清浄機能を有することにより、このデポジット付着を軽減することができる。
そして、ガソリン組成物に清浄機能を持たせる方法として、清浄剤をガソリンに添加する方法が一般に採用されている。清浄剤はデポジットを除去し或いはその付着を防止する機能を持ち、例えば、石油連盟著「石油製品の品質と規格」(非特許文献1)にも述べられているように、アミン類、アミド類などを有効成分とする界面活性剤をそのような清浄剤として利用できる。なお、清浄剤の有効成分については様々な研究がなされており、そのような文献として、例えば、特表平11−509577号公報(特許文献3)、特表2003−514067号公報(特許文献4)がある。
特開2006−104224号公報 特開2006−206876号公報 特表平11−509577号公報 特表2003−514067号公報 石油連盟著「石油製品の品質と規格」第40頁 昭和59年
一般に、清浄剤による吸気バルブデポジットの清浄効果は添加量が多い程良くなるが、その一方で、高分子化合物である清浄剤の添加量を過度に増加させることは、ガソリン燃料油中の不揮発性物質を増加させ、吸気弁軸のこう着や燃焼室内部でのデポジット(燃焼室デポジット)を増加させるなど、却ってエンジンを不調にさせる傾向が大きくなってしまうという問題がある。この不揮発性物質は燃料油中の実在ガム試験方法のうち、蒸発残留物をヘプタンで洗浄する前の所謂「未洗実在ガム」として評価することができ、前述の問題点の観点から自動車ガソリンのJIS規格(JIS K 2202)では実在ガムとともにこの未洗実在ガムの上限値も定められている。従って、清浄剤を添加できる量はこの未洗実在ガムにより限定され、得られる清浄効果も制限されるという問題があった。
そこで、本発明は、より高い清浄効果を得ることができるガソリン燃料組成物を提供することを目的とする。
本発明に係るガソリン燃料組成物は、ジエン価が0.5以下で、清浄剤が添加され、好ましくは、鎖状ジオレフィンの含有量が0.2容量%以下である。
清浄剤とは、上記の通り、ガソリンエンジンの吸気系統、特に吸気バルブにおいてデポジットを除去し或いはその付着を防止する機能を持つ添加剤である。清浄剤として販売されている市販品を使用することができる。
ジエン価 はUOP法326−82に従って得られる数値であり、すなわち、試料100gと反応する無水マレイン酸と当量のヨウ素のグラム数である。
鎖状ジオレフィンは、JIS K 2536−2「石油製品―成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定した成分のうち、C2n−2の分子構造を有する炭化水素化合物であり、たとえば、1−3,ブタジエン、1−4,ペンタジエン、3−メチル,1−2,ブタジエン、2−メチル,1−4,ペンタジエン、1−5,ヘプタジエンなどが挙げられる。
本発明に係るガソリン燃料組成物によれば、ジエン価が0.5以下、好ましくは鎖状ジオレフィンの含有量が0.2容量%以下とすることで、実在ガムを規定の範囲に抑えながら従来のガソリン燃料組成物よりも清浄剤をより多く添加することができ、結果として高い清浄効果を得ることができる。
通常、オレフィン類はオクタン価の向上に寄与することから、ガソリン燃料組成物には必要な成分といえるが、本発明者は、そのオレフィン類に含まれる鎖状ジオレフィンの含有量が、清浄剤の添加量を増やした場合の未洗実在ガム増加量に関与する事実を見出した。更に、オレフィン類が二重結合を含んでいることから、ジエン価も未洗実在ガム増加量に関与している可能性があると推測しその確認試験を行ったところ、ジエン価についても上記鎖状ジオレフィンの含有量と同様の影響があることを発見した。本発明は、その新たな知見に基づくものである。
なお、既述の特許文献1や特許文献2にも開示されているように、ガソリン組成物のジエン価を低く抑える発想は以前からあったが、それは、ジエン価が、オレフィン類と深い関わり合いを持つことによるものである。すなわち、オレフィン類は、オクタン価を向上するための基材としてほとんどのガソリン組成物に調合されるため、ガソリン組成物の性状的な問題はオレフィン類に起因する可能性が高く、このオレフィン類に起因する問題を解決するためには、ジエン価が関与する可能性が高いからである。本発明も、オレフィン類に起因する問題の解決法であるためジエン価が関与しているが、本発明の特徴は、既述のように、本発明者が見出した新たな知見、すなわち、鎖状ジオレフィン類が清浄剤の添加量を増やした場合の未洗実在ガム増加量に関与する事実に基づいている点にある。そして、鎖状ジオレフィン類を清浄剤の添加量を増やした場合の未洗実在ガム増加量との関係に帰着させることで、結果としてガソリン燃料組成物の清浄効果を高める思想は、従来の発想とは全く異なるものである。
本発明のガソリン燃料組成物は、一般的なガソリン基材を混合することで製造できる。なお、一般的なガソリン基材としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
「脱硫軽質ナフサ」
原油の常圧蒸留装置から得られるナフサを脱硫し、次いで蒸留によって沸点の低い留分に分留して得られる基材である。
「異性化ガソリン」
前記脱硫軽質ナフサを異性化して得られる基材である。
「接触改質ガソリン」
原油の常圧蒸留装置から得られるナフサを脱硫し、前記脱硫軽質ナフサを蒸留によって分留した残りの重質留分を、例えばプラットフォーミング法等の接触改質法により改質して得られる基材である。
「脱ベンゼン軽質接触改質ガソリン」
前記接触改質ガソリンを蒸留によってベンゼンより沸点の低い留分に分留して得られる基材である。
「ラフィネート留分」
前記接触改質ガソリンから蒸留により沸点の高い留分として分留して得られる重質接触改質ガソリンを更に蒸留し、そこからベンゼンを含む留分を分留して得られた留分を、例えばスルフォラン溶剤等を用いてベンゼンを抽出除去した残りとして得られる基材である。
「炭素数7、炭素数8若しくは炭素数9以上の接触改質ガソリン」
前記接触改質ガソリンから蒸留によりベンゼンより沸点の高い留分として分留して得られる重質接触改質ガソリンを更に蒸留し、主に炭素数7の芳香族分を含む留分、炭素数8の芳香族分を含む留分、そして炭素数9以上の芳香族分を含む留分に分留して得られる各基材である。
「接触分解ガソリン」
重油を接触分解して得られる基材である。
「熱分解ガソリン」
重油を熱分解して得られる基材である。
「軽質接触分解ガソリン及び重質接触分解ガソリン」
重油を接触分解して得られた前記接触分解ガソリンを蒸留により沸点の低い留分と沸点の高い留分に分留して得られる各基材である。
「軽質熱分解ガソリン及び重質熱分解ガソリン」
重油を熱分解して得られた前記熱分解ガソリンを蒸留により沸点の低い留分と沸点の高い留分に分留して得られる各基材である。
「アルキレート」
イソブタン等の炭化水素に接触分解装置から副生される低級オレフィンを付加(アルキル化)して得られる基材である。
「ブタン・ブチレン留分」
常圧蒸留装置、ナフサ脱硫装置、接触改質装置、接触分解装置等から副生される石油ガスを精製して得られる基材である。
「アルコール或いはエーテル類の含酸素化合物」
具体的には、アルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられ、エーテル類としては、メチル−ターシャリー−ブチルエーテル(MTBE)、エチル−ターシャリー−ブチルエーテル(ETBE)等が挙げられる。
なお、採用されるガソリン基材の種類は、製油所の装置構成等の条件に応じ適宜選択されるものであり、全ての種類の基材が混合される必要は無い。従って、採用しない種類の混合比率は0容量%となる。また、接触分解ガソリンおよび熱分解ガソリンにはオレフィン類が多く含まれており、鎖状ジオレフィンが多く含まれる可能性がある。従って、鎖状ジオレフィンが多い場合には、その配合比率を低く抑えるか、あるいは公知の方法、たとえば選択的水素化精製プロセス法などにより鎖状ジオレフィンをオレフィンに転化する必要がある。また、鎖状ジオレフィンがそれ程多くない場合であっても、ジエン価が高くなると清浄剤の添加量を増やした場合の未洗実在ガムの発生量が多くなるため、その配合比率はジエン価を考慮して決めることが必要である。
鎖状ジオレフィンの含有量及びジエン価の異なる中間基材を、自動車ガソリンとしての製品性状を満たし、且つ、清浄剤を添加する前の未洗実在ガムが1mg/100ml未満となるように調合したのち、清浄剤の添加による未洗実在ガムの増加量が所定量(ここでは18mg/100ml)となるように清浄剤を添加して得たガソリン燃料組成物について、次の性状試験を実施した。
<密度>
JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容積換算表」により測定した。
<蒸気圧>
JIS K 2258「原油及び燃料油−蒸気圧試験方法−リード法」により測定した。
<蒸留性状>
JIS K 2254「石油製品−蒸留試験法」により測定した。
<オクタン価>
JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」のリサーチ法オクタン価試験方法により測定した。
<未洗実在ガム>
JIS K 2261「石油製品−自動車ガソリン及び航空燃料油−実在ガム 試験方法−噴射蒸発法」により測定した。
<清浄効果>
前述のとおり、未洗実在ガムの増加量が所定量となるように清浄剤を添加したガソリン燃料組成物について、予め所定量のデポジットを付着させた吸気バルブを用いて吸気バルブデポジット(IVD)試験によるデポジットの平均減少量を求め、IVD試験前後のデポジットの減少率を清浄効果として求めた。IVD試験には、直列4気筒、排気量が1998cc、燃料噴射方式がマルチポイントインジェクションのエンジンを用いた。運転条件は、実車60km/h相当でエンジン回転数2000rpm、吸入負圧470mmHgと、実車100km/h相当でエンジン回転数3200rpm、吸入負圧350mmhgとして、図1に示す運転のパターンを1500サイクル(100時間)行い、運転前後における各吸気バルブの重量差から、バルブ1本あたりの平均デポジット減少量を求めた。
<GC組成分析>
JIS K 2536−2「石油製品―成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定した。
<ジエン価>
UOP法326−82に従って測定した。
また、清浄剤として、ポリイソブチレンアミン化合物及び炭化水素溶媒の溶液であるAP114K(製品名、BASF株式会社)を使用した。
上記添加剤の添加量と、上記清浄試験により得られた結果を表1に示す。
Figure 2009155498
表1に示すように、ジエン価が低く、鎖状ジオレフィンも少ない実施例は、各比較例よりも清浄剤の添加量を多くすることができ、結果として、バルブデポジットの清浄効果が高くなることが判る。
吸気バルブデポジット(IVD)試験の運転パターンを示すグラフである。

Claims (2)

  1. ジエン価が0.5以下で、清浄剤が添加されていることを特徴とするガソリン燃料組成物。
  2. 鎖状ジオレフィンの含有量が0.2容量%以下である請求項1に記載のガソリン燃料組成物。
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