JP2009154366A - 樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法 - Google Patents

樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法 Download PDF

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Fumio Kurihara
文夫 栗原
Masamitsu Takami
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Abstract

【課題】ゴム型に生じる変形を抑制することができ、樹脂成形品の生産性を向上できる樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法を提供すること。
【解決手段】樹脂成形用のゴム型2は、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂6を充填するキャビティ22を形成してなるゴム製の成形型である。ゴム型2は、複数の分割型部21を組み合わせてなると共に、分割型部21同士が対面する分割面20にキャビティ22を形成してなる。ゴム型2の分割面20には、ゴム型2を構成するゴムよりも硬度が高い材質からなるランナー用入子3が、着脱可能な状態で埋設してある。ランナー用入子3は、複数の分割入子部31を組み合わせてなると共に、分割入子部31同士が対面する合わせ面30に、キャビティ22内へ熱可塑性樹脂6を導くためのランナー32を形成してなる。
【選択図】図1

Description

ゴム型内に熱可塑性樹脂を充填して樹脂成形品を得るためのゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法に関する。
熱可塑性樹脂は、種々の成形方法によって、所定形状の成形品に成形している。結晶性、非晶性、あるいは溶融粘度の高低に応じて、更に成形品の形状に応じて射出成形、ブロー成形、押し出し成形、プレス成形等種々の成形方法が実用化されている。
例えば、特許文献1においては、ゴム製の成形型を用いて熱可塑性樹脂を成形する樹脂成形方法が開示されている。この樹脂成形方法においては、成形型内に熱可塑性樹脂を充填する際に、成形型の表面から熱可塑性樹脂にピーク波長が0.4〜2μmの電磁波を照射することにより、成形型に対して熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる。これにより、熱可塑性樹脂の温度が低下して、その粘度が増加することを防止している。
また、例えば、特許文献2においては、シリコーンゴム型を用いて熱可塑性樹脂の射出成形を行う樹脂成形方法が開示されている。この樹脂成形方法においては、液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させてシリコーンゴム型を成形し、このシリコーンゴム型をバックアップ体に据え付け、シリコーンゴム型内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出成形している。これにより、表面精度及び表面光沢が良好な樹脂成形品を簡便に成形することができる。
しかしながら、上記従来の樹脂成形方法においては、樹脂成形品の生産性を向上させるための工夫はなされていない。すなわち、上記ゴム型(ゴム製の成形型又はシリコーンゴム型)は、金属製の金型に比べて、熱伝導率が低く、熱可塑性樹脂が充填されて高温に加熱された後には、冷却され難い。そのため、ゴム型内に充填した熱可塑性樹脂の冷却・固化に時間がかかり、ゴム型内に成形した樹脂成形品を取り出すまでに時間を要するため、生産性を向上させるためには十分ではなかった。
また、特に、樹脂成形品の形状に形成したキャビティ内へ熱可塑性樹脂を導くランナー(樹脂導入流路)は、熱可塑性樹脂が充填されるときの充填圧力が最も高く加わる部位であり、熱可塑性樹脂の充填流動が最後に完了する部位でもある。そのため、ランナーに充填された熱可塑性樹脂は、冷却され難い状態にあり、ランナーに充填された熱可塑性樹脂が冷却・固化するまで、ゴム型内から成形後の樹脂成形品を取り出すことができなかった。
キャビティ内における充填不良を解消し、表面精度に優れた樹脂成形品を成形するためには、熱可塑性樹脂の充填圧力を高くすることも考えられる。しかしながら、熱可塑性樹脂の充填圧力を高くすると、ゴム型であるために、特にランナーでの変形が大きくなり、場合によっては型外へ熱可塑性樹脂が漏洩するおそれがある。
特開2007−136747号公報 特許第2906969号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ゴム型に生じる変形を抑制することができ、樹脂成形品の生産性を向上させることができる樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成してなるゴム製のゴム型であって、
該ゴム型は、複数の分割型部を組み合わせてなると共に、該分割型部同士が対面する分割面に上記キャビティを形成してなり、
上記ゴム型の上記分割面には、該ゴム型を構成するゴムよりも硬度が高い材質からなるランナー用入子が、着脱可能な状態で埋設してあり、
該ランナー用入子は、複数の分割入子部を組み合わせてなると共に、該分割入子部同士が対面する合わせ面に、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を導くためのランナーを形成してなることを特徴とする樹脂成形用のゴム型にある(請求項1)。
本発明の樹脂成形用のゴム型は、ゴム型を構成するゴムよりも硬度が高い材質からなるランナー用入子に対してランナーを形成している。これにより、ゴム型におけるランナーの剛性を向上させることができ、キャビティへ熱可塑性樹脂を充填する際に、ランナーに生じる変形を抑制することができる。そのため、ゴム型における分割面から熱可塑性樹脂が漏洩してしまうことを防止することができる。また、ランナーに生じる変形を抑制できることにより、熱可塑性樹脂の充填圧力を適切に確保することができ、キャビティには、表面精度の優れた樹脂成形品を成形することができる。
また、ランナー用入子は、ゴム型の分割面(パーティング面)に、着脱可能な状態で埋設してある。これにより、キャビティ内に充填された熱可塑性樹脂が冷却・固化したときには、ランナー内に充填された熱可塑性樹脂が完全に冷却・固化する前であっても、ゴム型の分割型部同士を分離して、ランナー用入子が取り付いた状態の樹脂成形品をキャビティ内から取り出すことができる。
また、ランナー用入子は、複数の分割入子部を組み合わせてなると共に、分割入子部同士が対面する合わせ面に、ランナーを形成してなる。これにより、ゴム型から取り出した樹脂成形品に対して取り付いたランナー用入子は、このランナー用入子内に成形されるランナー成形物が完全に冷却・固化する前であっても、その分割入子部同士を分離して取り外すことができる。したがって、樹脂成形品の成形に要する時間を短縮することができ、その生産性を向上させることができる。
なお、ランナー成形物が完全に冷却・固化する前の状態であっても、ランナー成形物と、樹脂成形品との境界部分が冷却・固化していれば、樹脂成形品の表面に悪影響が生じないため、樹脂成形品に対してランナー成形物を切除することができる。
それ故、本発明の樹脂成形用のゴム型によれば、ゴム型に生じる変形を抑制することができ、樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
第2の発明は、上記樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置であって、
上記ランナーを介して上記キャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出する射出手段と、
上記ゴム型の上記分割面が開かないよう上記分割型部同士の型締めを行う型締め手段と、
上記ゴム型に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段とを有していることを特徴とするゴム型を用いた成形装置にある(請求項5)。
本発明のゴム型を用いた成形装置は、上記ゴム型の使用に適した成形装置である。そして、本発明においては、特に上記電磁波発生手段を用いることにより、ゴム型に比べてキャビティ内へ充填する熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができ、ゴム型に対する熱可塑性樹脂の充填性を向上させることができる。
また、樹脂成形品を成形する際には、型締め手段によって、ゴム型の分割面が開かないよう分割型部同士の型締めを行い、射出手段によって、ランナーを介してキャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出することができる。
それ故、本発明のゴム型を用いた成形装置によれば、ゴム型に生じる変形を抑制して、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができ、樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
また、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、ゴム型に比べて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる理由としては、以下のように考える。
すなわち、ゴム型の表面に照射された0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、ゴム型に吸収される割合に比べて、ゴム型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多いと考える。そのため、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波による光のエネルギーが熱可塑性樹脂に優先的に吸収されて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができると考える。
第3の発明は、上記樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
上記ゴム型に対して上記ランナー用入子を埋設しておき、
上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、該樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
上記充填工程においては、上記ゴム型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して、該熱可塑性樹脂を加熱し、
上記取出工程においては、上記分割面を開けて上記樹脂成形品を取り出すと共に、上記合わせ面を開けて上記ランナー内に成形されるランナー成形物を取り出すことを特徴とするゴム型を用いた成形方法にある(請求項6)。
本発明のゴム型を用いた成形方法は、上記ゴム型の使用に適した成形方法である。そして、本発明においては、特に上記充填工程において、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波によって熱可塑性樹脂を加熱することにより、ゴム型に比べてキャビティ内へ充填する熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができ、ゴム型に対する熱可塑性樹脂の充填性を向上させることができる。
また、上記取出工程においては、ゴム型における分割面を開けて(複数の分割型部同士を分離して)、樹脂成形品を取り出すと共に、ランナー用入子における合わせ面を開けて(複数の分割入子部同士を分離して)、ランナー内に成形されるランナー成形物を取り出すことができる。
それ故、本発明のゴム型を用いた成形方法によれば、ゴム型に生じる変形を抑制して、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができ、樹脂成形品の生産性を向上させることができる。
なお、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、ゴム型に比べて熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる理由は、上記第2の発明と同様に考える。
上述した第1〜第3の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記分割面に形成したキャビティとは、複数の分割型部に渡ってキャビティが形成されていることをいう。また、上記合わせ面に形成したランナーとは、合わせ面の面内において、ランナーを形成したことをいう。そして、ランナーの形成方向は、合わせ面の面方向に沿って形成することができる。
また、上記ランナー用入子は、その全体を上記ゴム型内に埋設することができ、その一部をゴム型内に埋設することもできる。
上記ゴム型に埋設した状態の上記ランナー用入子の上記合わせ面は、上記ゴム型における上記分割面に対して直交していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、ゴム型にランナー用入子を埋設することによって、ゴム型の壁面を利用して、ランナー用入子における合わせ面が開かないように(分割入子部同士が分離しないように)することができる。そのため、ランナー用入子の型締めを容易に行うことができる。また、ゴム型の分割面が開かないように(分割型部同士が分離しないように)、ゴム型を保持することによって、ランナー用入子の型締めを行うことができる。
また、ランナー用入子における合わせ面が開かないように、ランナー用入子に別途型締め機構を設けることもできる。この型締め機構としては、例えば、一対の分割入子部に連続して斜めにピンを差し込む構成とすることができる。
また、上記ランナー用入子は、ガラス、陶磁器等のセラミックス、又は金属からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、ランナー用入子の剛性を簡単に高めることができる。また、ランナー用入子の熱伝導性を高めることができ、ランナー内に充填された熱可塑性樹脂の冷却時間を短縮することができる。
また、上記ゴム型は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなり、上記ランナー用入子は、ガラスからなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、特に、ゴム型を介して熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して、熱可塑性樹脂を加熱する際に、当該電磁波の多くを、ゴム型及びランナー用入子を透過させて、キャビティ内及びランナー内の熱可塑性樹脂に吸収させることが容易になる。
また、ゴム型に用いるシリコーンゴムの硬度は、JIS−A規格測定において25〜80であることが好ましい。
また、上記取出工程においては、上記樹脂成形品が冷却・固化した後、上記ランナー成形物が完全に冷却・固化する前の状態で、上記ゴム型の上記分割型部同士を分離して、上記ランナー用入子が取り付いた状態の上記樹脂成形品を取り出し、次いで、上記ランナー用入子の上記分割入子部同士を分離して、上記完全に冷却・固化する前の状態のランナー成形物を取り出すことができる(請求項7)。
この場合には、樹脂成形品の成形に要する時間を短縮することができ、その生産性をより向上させることができる。
また、第2、第3の発明において、上記ゴム型を介して上記熱可塑性樹脂に照射する電磁波としては、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波だけでなく、これ以外の領域の電磁波も含まれていてもよい。この場合において、ゴム型を介して熱可塑性樹脂に照射する電磁波又は透過電磁波は、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を、これ以外の領域の電磁波よりも多く含むことが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂の加熱に、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を用いる理由は、この波長の領域の電磁波は、ゴム型を透過し易い性質を有する一方、熱可塑性樹脂に吸収され易い性質を有するためである。
また、上記電磁波は、0.78〜2μmの波長領域に強度のピークを有していることが好ましい。この場合には、電磁波発生手段等の電磁波発生源として、出射する電磁波の波長に所定の分布特性を有するハロゲンヒータ、赤外線ランプ等を用いることができる。
また、上記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)等のABS系樹脂であることが好ましい。この場合には、上記電磁波により、ゴム型をほとんど加熱することなく上記ABS系樹脂を選択的に加熱することができる。
また、上記熱可塑性樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ところで、熱可塑性樹脂の冷却速度は比較的遅くすることが多い。そのため、冷却中に熱可塑性樹脂の結晶性が高くなることがあり、これによって、樹脂成形品の寸法精度が低下したり、樹脂成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、熱可塑性樹脂を非晶性熱可塑性樹脂にしたことにより、上記樹脂成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止することができる。
非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、HIPS樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂、特にブタジエンを含有するもの)、変性ポリフェニレンエーテル等のゴム変性熱可塑性樹脂、又はポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂(PC)、PC/ゴム変性熱可塑性樹脂アロイ等を用いることができる。その中でも、特にゴム変性熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は、ゴム変性熱可塑性樹脂とすることができ、ゴム変性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体をグラフト重合させた重合体を1種又は2種以上含むものが好ましい。
上記ゴム質重合体としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴムを用いることが好ましく、上記ゴム変性熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のABS系樹脂を用いることがさらに好ましい。
以下に、本発明の樹脂成形用のゴム型、並びにこれを用いた成形装置及び成形方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の樹脂成形用のゴム型2は、図1、図2に示すごとく、所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂6を充填するキャビティ22を形成してなるゴム製の成形型である。
このゴム型2は、複数の分割型部21を組み合わせてなると共に、分割型部21同士が対面する分割面(パーティング面)20にキャビティ22を形成してなる。また、ゴム型2の分割面20には、ゴム型2を構成するゴムよりも硬度が高い材質からなるランナー用入子3が、着脱可能な状態で埋設してある。また、ランナー用入子3は、複数の分割入子部31を組み合わせてなると共に、分割入子部31同士が対面する合わせ面30に、キャビティ22内へ熱可塑性樹脂6を導くためのランナー32を形成してなる(図5参照)。
以下に、本例の樹脂成形用のゴム型2、並びにこれを用いた成形装置1及び成形方法につき、図1〜図6を参照して詳説する。
本例においては、熱可塑性樹脂6として、非晶性熱可塑性樹脂であると共にゴム変性熱可塑性樹脂であるABS樹脂を用いる。
また、本例のゴム型2は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなる。このゴム型2は、成形する樹脂成形品61のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムを切り開いて、このシリコーンゴムからマスターモデルを取り出すことによって作製することができる。
また、図1に示すごとく、本例のゴム型2は、1つの分割面20を形成して2つの分割型部21を組み合わせて形成した。これに対し、ゴム型2は、成形する樹脂成形品61の形状が複雑な場合は、3つ以上の分割型部21を組み合わせて形成することもできる。
本例の成形装置1は、ゴム型2に対して熱可塑性樹脂6の射出成形を行う。成形装置1は、図3に示すごとく、ランナー32を介してキャビティ22内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂6を所定の圧力で射出する射出シリンダー52と、ゴム型2の分割面20が開かないよう分割型部21同士の型締めを行う型締め手段51と、ゴム型2に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段4とを有している。本例においては、射出シリンダー52からゴム型2内へ射出する溶融状態の熱可塑性樹脂6の圧力は、0.5〜5MPaとする。
型締め手段51は、一対の型締め用プレート511の間にゴム型2を配置し、加圧シリンダー等の加圧手段によって、一対の型締め用プレート511を介してゴム型2に加圧する構成とすることができる。なお、型締め用プレート511を電磁波発生手段4とゴム型2との間に配置する場合は、型締め用プレート511は、電磁波発生手段4による電磁波(特に近赤外線領域の電磁波)を透過させるために、透明又は半透明のガラス等から構成することができる。
また、図3において、電磁波発生手段4から出射する電磁波を矢印Xで示し、型締め手段51による型締め力を矢印Fによって示す。
本例の電磁波発生手段4は、電磁波(光)の発生源41と、この発生源41による電磁波をゴム型2の方向へ導くリフレクタ(反射板)42とを有している。本例の電磁波発生手段4としては、近赤外線領域内の約1.2μmの付近に光強度のピークを有する近赤外線ハロゲンヒータを用いる。
また、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(光)に対する吸光度(特定の波長の光に対する吸収強度を示す尺度)は、熱可塑性樹脂6として用いるABS樹脂の方が、ゴム製のゴム型2として用いるシリコーンゴムよりも大きくなっている。なお、吸光度は、例えば、島津製作所製UV3100を用いて測定することができる。
また、本例においては、溶融した状態の熱可塑性樹脂6をゴム型2のキャビティ22内に注入し、ゴム型2に上記電磁波を照射することにより、上記溶融した状態の熱可塑性樹脂6の粘度が5000Poise以上になることを防止して、樹脂成形品61を得る。
図6は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける光の透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の光を透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線(0.78〜2μmの波長領域の光)をシリコーンゴム製のゴム型2の表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型2を透過させて熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。そして、ゴム型2に比べて熱可塑性樹脂6を選択的に加熱できることがわかる。
本例のランナー用入子3は、電磁波発生手段4から出射した電磁波を透過し易くするために、ガラスから構成している。図1、図2、図5に示すごとく、ランナー用入子3は、射出シリンダー52の先端が係合する係合凹部33と、この係合凹部33からキャビティ22に向けて形成したランナー32とを形成してなる。そして、ランナー用入子3は、ランナー32の形成方向に沿って合わせ面30を形成して、2つの分割入子部31に分割してある。また、ランナー32は、その形成方向に直交する方向の流路断面積がキャビティ22に向けて縮小している。
また、ランナー用入子3においては、キャビティ22に対して射出シリンダー52を近づけるよう、ランナー32をできるだけ短く形成することが好ましい。
図1、図2に示すごとく、ランナー用入子3をゴム型2に埋設した状態においては、ランナー用入子3の合わせ面30は、ゴム型2における分割面20に対して直交している。すなわち、本例のランナー用入子3は、その合わせ面30が、分割面20に対して直交する状態でゴム型2に埋設されている。ランナー用入子3は、ゴム型2の分割面20に形成した(一対の分割型部21に渡って形成した)埋設用凹部23内に嵌入されている。ゴム型2にランナー用入子3を埋設することによって、埋設用凹部23の壁面を利用して、ランナー用入子3における合わせ面30が開かないように(分割入子部31同士が分離しないように)することができる。
次に、上記ゴム型2及び成形装置1を用いて、樹脂成形品61を成形する方法及び本例における作用効果につき説明する。
まず、準備工程として、図2に示すごとく、埋設用凹部23に対してランナー用入子3を埋設して、一対の分割型部21を閉じてゴム型2の分割面20を閉じる。そして、ゴム型2の分割面20が開かないよう、一対の分割型部21を対面させる方向に加圧する型締め手段51によって型締めを行う(図3参照)。
次いで、充填工程として、図3に示すごとく、ランナー用入子3の係合凹部33に射出シリンダー52を係合し、射出シリンダー52からランナー32を介してキャビティ22内へ溶融状態の熱可塑性樹脂6を射出する。そして、キャビティ22及びランナー32の全体に、熱可塑性樹脂6を充填する。
また、上記充填を行う際には、電磁波発生手段4によって、ゴム型2を介して熱可塑性樹脂6に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、熱可塑性樹脂6を加熱する。このとき、ゴム型2に比べてキャビティ内へ充填する熱可塑性樹脂6を選択的に加熱することができ、熱可塑性樹脂6の温度を高く維持し、その溶融粘度が増加することを防止して、充填性を向上させることができる。
そして、ゴム型2を透明又は半透明のシリコーンゴムから形成し、ランナー用入子3をガラスから形成していることにより、電磁波発生手段4から出射した電磁波の多くを、ゴム型2及びランナー用入子3を透過させ、キャビティ22内及びランナー32内の熱可塑性樹脂6に吸収させることができる。
次いで、冷却工程として、キャビティ22内の熱可塑性樹脂6を冷却して樹脂成形品61を得る。このとき、型締め手段51によってゴム型2の型締めを行った状態を維持して、自然冷却により、ゴム型2、並びにキャビティ22内及びランナー32内に充填した熱可塑性樹脂6を冷却する。
次いで、取出工程においては、図4に示すごとく、分割面20を開けて樹脂成形品61を取り出すと共に、図5に示すごとく、合わせ面30を開けてランナー32内に成形されるランナー成形物62を取り出す。このとき、本例においては、樹脂成形品61が冷却・固化した後、ランナー成形物62が完全に冷却・固化する前の状態で、ゴム型2の分割型部21同士を分離して、ランナー用入子3が取り付いた状態の樹脂成形品61をキャビティ22から取り出す(図4参照)。次いで、ランナー用入子3の分割入子部31同士を分離して、完全に冷却・固化する前の状態のランナー成形物62をランナー32から取り出す(図5参照)。その後、樹脂成形品61からランナー成形物62を切除して、最終製品となる樹脂成形品61を得ることができる。
本例の樹脂成形用のゴム型2は、ゴム型2を構成するゴムよりも硬度が高いガラスからなるランナー用入子3に対してランナー32を形成している。これにより、ゴム型2におけるランナー用入子31の剛性を向上させることができ、キャビティ22へ熱可塑性樹脂6を充填する際に、ランナー32に生じる変形を抑制することができる。そのため、ゴム型2における分割面20及びランナー用入子3における合わせ面30から熱可塑性樹脂6が漏洩してしまうことを防止することができる。また、ランナー32に生じる変形を抑制できることにより、熱可塑性樹脂6の充填圧力を適切に確保することができ、キャビティ22には、表面精度の優れた樹脂成形品61を成形することができる。
また、ランナー用入子3の剛性を高くできることにより、ランナー32の耐圧を高くすることができる。そして、キャビティ22における流路断面積に対する長さの大きい場合、あるいは溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を用いるような場合等の射出圧力が高くなる樹脂成形品61にも対応することができる。
また、ランナー用入子3は、ゴム型2の分割面20に、着脱可能な状態で埋設してある。これにより、上記のごとく、キャビティ22内に充填された熱可塑性樹脂6が冷却・固化したときには、ランナー32内に充填された熱可塑性樹脂6が完全に冷却・固化する前であっても、ゴム型2の分割型部21同士を分離して、ランナー用入子3が取り付いた状態の樹脂成形品61をキャビティ22から取り出すことができる。
また、ランナー用入子3は、複数の分割入子部31を組み合わせてなると共に、分割入子部31同士が対面する合わせ面30に、ランナー32を形成してなる。これにより、上記のごとく、ゴム型2から取り出した樹脂成形品61に対して取り付いたランナー用入子3は、このランナー用入子3内に成形されるランナー成形物62が完全に冷却・固化する前であっても、その分割入子部31同士を分離して取り外すことができる。したがって、樹脂成形品61の成形に要する時間を短縮することができ、その生産性を向上させることができる。
なお、ランナー成形物62が完全に冷却・固化する前の状態であっても、ランナー成形物62と、樹脂成形品61との境界部分が冷却・固化していれば、樹脂成形品61の表面に悪影響が生じないため、樹脂成形品61に対してランナー成形物62を切除することができる。
それ故、本例の樹脂成形用のゴム型2、並びにこれを用いた成形装置1及び成形方法によれば、ゴム型2に生じる変形を抑制して、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品61を得ることができ、樹脂成形品61の生産性を向上させることができる。
実施例における、樹脂成形用のゴム型を示す斜視図。 実施例における、樹脂成形用のゴム型を示す断面説明図。 実施例における、樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置を示す断面説明図。 実施例における、ゴム型の分割面を開けて樹脂成形品を取り出す状態を示す側方説明図。 実施例における、ランナー用入子の合わせ面を開けてランナー成形物を取り出す状態を示す斜視図。 実施例において、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについての光の透過率を示すグラフ。
符号の説明
1 成形装置
2 ゴム型
20 分割面
21 分割型部
22 キャビティ
3 ランナー用入子
30 合わせ面
31 分割入子部
32 ランナー
4 電磁波発生手段
51 型締め手段
52 注入ノズル
6 熱可塑性樹脂
61 樹脂成形品
62 ランナー成形物

Claims (7)

  1. 所定の圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成してなるゴム製のゴム型であって、
    該ゴム型は、複数の分割型部を組み合わせてなると共に、該分割型部同士が対面する分割面に上記キャビティを形成してなり、
    上記ゴム型の上記分割面には、該ゴム型を構成するゴムよりも硬度が高い材質からなるランナー用入子が、着脱可能な状態で埋設してあり、
    該ランナー用入子は、複数の分割入子部を組み合わせてなると共に、該分割入子部同士が対面する合わせ面に、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を導くためのランナーを形成してなることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
  2. 請求項1において、上記ゴム型に埋設した状態の上記ランナー用入子の上記合わせ面は、上記ゴム型における上記分割面に対して直交していることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
  3. 請求項1又は2において、上記ランナー用入子は、ガラス、陶磁器等のセラミックス、又は金属からなることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
  4. 請求項1又は2において、上記ゴム型は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなり、上記ランナー用入子は、ガラスからなることを特徴とする樹脂成形用のゴム型。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂成形用のゴム型を用いた成形装置であって、
    上記ランナーを介して上記キャビティ内へ、溶融状態の熱可塑性樹脂を所定の圧力で射出する射出手段と、
    上記ゴム型の上記分割面が開かないよう上記分割型部同士の型締めを行う型締め手段と、
    上記ゴム型に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する電磁波発生手段とを有していることを特徴とするゴム型を用いた成形装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂成形用のゴム型を用いた成形方法であって、
    上記ゴム型に対して上記ランナー用入子を埋設しておき、
    上記キャビティ内へ溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程と、該樹脂成形品を上記キャビティ内から取り出す取出工程とを行うに際し、
    上記充填工程においては、上記ゴム型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して、該熱可塑性樹脂を加熱し、
    上記取出工程においては、上記分割面を開けて上記樹脂成形品を取り出すと共に、上記合わせ面を開けて上記ランナー内に成形されるランナー成形物を取り出すことを特徴とするゴム型を用いた成形方法。
  7. 請求項6において、上記取出工程においては、上記樹脂成形品が冷却・固化した後、上記ランナー成形物が完全に冷却・固化する前の状態で、上記ゴム型の上記分割型部同士を分離して、上記ランナー用入子が取り付いた状態の上記樹脂成形品を取り出し、次いで、上記ランナー用入子の上記分割入子部同士を分離して、上記完全に冷却・固化する前の状態のランナー成形物を取り出すことを特徴とするゴム型を用いた成形方法。
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